JP4245379B2 - ガス抜きキャップ付き容器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、容器内で発生したガスを容易に排出するガス抜きキャップと、該ガス抜きキャップの使用により可能となる肉薄で軽量かつ剛性のあるガス抜きキャップ付き容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の技術としては、キャップを装着した容器の膨張を防止すると共に、内容物の漏出を確実に防止することを目的として、特開平7−277353号に開示された技術(図示せず)がある。すなわち、キャップ本体と、キャップ本体内にガス抜き穴を形成した中栓と、該中栓に装着されてガス抜き穴を螺旋状スプリングの弾発力にて閉止可能とする可動弁と、キャップ本体の天面及び胴部に連続して形成されるガス抜き溝とからなる熱可塑性樹脂にて形成したガス抜きキャップであって、減容化することなく容器の内圧が所定圧以上になった時に可動弁が開弁するよう構成されている。そして、従来技術に於いて、当該キャップ付き当該容器は例えば2(mm)以上の如く比較的厚肉かつ重量が重く構成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の技術に於けるガス抜きキャップは叙上の構成であるので、次の課題が存在した。
すなわち、当該従来の技術は、容器内に充填された内容物に例えば、次亜塩素酸ソーダや過酸化水素水等の場合、ガスを発生し、容器内に内圧をかけるので該容器をいわゆる風船状に膨張させる結果となり、容器の形態をなさないという問題点があった。
【0004】
また、当該従来の技術は、金属製スプリングの弾発力により可動弁を抑止していたそれまでの技術に対し、スプリングを可動弁と共に熱可塑性樹脂により一体成形しているので、金属製スプリングが容器内の次亜塩素酸ソーダ等と反応してガス発生量の増加することを防止する効果があった。しかしながら、容器の内圧が所定圧以上となり、可動弁が開弁しているときに何らかの理由により容器が傾斜ないし転倒すれば、容器内の液が漏出するという問題点があった。
また、容器内の液の重量によっては、該重量がスプリングの弾発力を上回り、容器が倒立した際に可動弁が開弁してしまうおそれがあった。
更に、可動弁の開弁、閉弁の繰り返しにより、スプリングを形成する熱可塑性樹脂に経年疲労が蓄積され耐久性の問題があると共に、破損した場合に補修や取り換えを行うのに手間を要するという問題点があった。
また、従来の技術に於いて、比較的厚肉であって、その重量が例えば500(g)の如く重い容器に充填される内容物、例えば、次亜塩素酸ソーダ等の場合、その分解作用によりガスの発生量が増加するに従い、内容物が漏出するという問題点があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、微多孔質フィルムからなるガス抜きシート等を用いて可動部のないガス抜きキャップを提供し、併せて、例えば0.7(mm)程度の肉薄で軽量かつ剛性のあるガス抜きキャップ付き容器を提供することを目的としたものであって、次の構成、手段から成立する。
【0006】
請求項1記載の発明によれば、減容化可能な肉薄状であって、所定の寸法を有する合成樹脂容器の出口部に嵌合すると共に、ガスの流路としての螺旋状溝を備えたキャップ本体と、ガス抜きシート、押さえ中栓及び止め部品からなり、該キャップ本体の天面部に挿装した止め部材と、キャップ本体の内壁に形成した前記螺旋状溝と前記止め部品の突起部との間に介装した多孔質パッキン材とから構成され、該止め部材は、ガス抜き穴を設けた止め部品に、微多孔質フィルムからなるガス抜きシートを載置し、ガス抜き穴を設けた押さえ中栓を止め部品に嵌合してガス抜きシートを固定し、押さえ中栓のガス抜き穴から排出されるガスの流路として、止め部品のキャップ本体天面側の表面にスリットを設けたものであることを特徴とするガス抜きキャップ付き容器である。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明に係るガス抜きキャップ付き容器の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0008】
【発明の実施の形態1】
図1は本発明に係るガス抜きキキャップ付き容器の一例であって、(a)は全体を示した斜視図、(b)は(a)の矢視I方向からみた容器内に次亜塩素酸ソーダを充填する前の容器と次亜塩素酸ソーダを充填した後の容器を示した側面図である。
【0009】
1はガス抜きキャップ付き容器であって、該容器1内に次亜塩素酸ソーダ等ガスを発生する内容物を充填している。2は該容器1の注出用出口に螺着されているガス抜きキャップである。容器1は手による持ち運びのための取手3と、所定の剛性を付与するための横リブ4及び縦リブ5を備えている。該横リブ4は、図1(a)に示すように、容器1の胴部の上部及び下部に於ける所定の位置に正面と背面から側面側に延びるように形成しており、また、該縦リブ5は両方の側面に上端下端にそれぞれY字状の分岐部5a、5bを有して形成している。
【0010】
容器1の材質は、低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンを所定の混合割合で混合した柔軟かつ例えば0.7(mm)程度の肉薄であって軽量の合成樹脂からなっており、次亜塩素酸ソーダ等の液状内容物を充填した際に、柔軟かつ肉薄の容器1でも所定の剛性を得るように横リブ4及び縦リブ5を容器1の内部側へ突出して形成してある。そして、該容器1は、上下の横リブ4、4を折り目とし、側面の縦リブ5、5を支持軸として正面又は背面の同一側に扁平に折り畳むことにより、不使用時若しくは廃棄処分時の減容化を図ることとしている。
【0011】
然るに、容器1内に次亜塩素酸ソーダや過酸化水素水等の液状内容物を充填すれば、自然に気化することにより、また、金属片や釘一本を混入すると化学反応を誘起して気化が促進されることにより、容器1の空隙部分にガスが充満して、図1(b)に示すように、容器1が膨張し、その内圧によりキャップが吹き飛ぶことや、甚だしい場合には容器1自体が破裂するおそれがある。この際、容器1の材質を変化させて、すなわち高密度ポリエチレンの混合割合を増加させて、容器1自体の剛性を高める方法もある。しかしながら、これでは柔軟かつ肉薄であって軽量で折り畳み可能つまり減容化可能な容器1を提供することが困難となるため、適切なガス抜きキャップ2を用いることにより、容器1内のガスを排出する必要がある。
【0012】
容器1の膨張の程度を測定する指標は、図1(b)に示すように、底面からの高さHに於ける次亜塩素酸ソーダ等の液状内容物を充填する前の容器1の胴部寸法をL1、次亜塩素酸ソーダ等の液状内容物を充填後の容器1の胴部寸法をL2として、胴部寸法変化率α(%)=((L2―L1)/L1×100)で表される。容器1が膨張する様子の詳細は、本発明の実施の形態2と併せて試験結果として後述する。
【0013】
図2は本発明に係るガス抜きキャップ付き容器の実施の形態1に於けるガス抜きキャップであって、(a)は一部を切欠したガス抜きキャップの拡大断面図、(b)は(a)の矢視J方向からみたガス抜きキャップの内部に装着した止め部材の底面図である。
【0014】
2はガス抜きキャップであって、該ガス抜きキャップ2の外面には該ガス抜きキャップが容器1の出口部に着脱する際に把持する滑り止め2aが設けられている。ガス抜きキャップ2は、図2(a)に示すように、キャップ本体6の他に、該キャップ本体6の天面内側に係止した止め部材7及び該止め部材7とキャップ本体6との間隙に挿入した多孔質パッキン材8とから構成されている。キャップ本体6の上部の内壁には、ガスの流路となる螺旋状溝9、止め部材7及び多孔質パッキン材8を係止してその脱落を防止するための環状突起10、容器1の出口部(図示せず)に螺着させるための雌ねじ11が形成されている。
止め部材7は、止め部品12、ガス抜きシート13及びシート押さえ中栓14とから構成されている。止め部品12の平面形状は円形であって、中央に所定の径のガス抜き穴12aを設け、該ガス抜き穴12aを取り囲むように設けた中央部分に形成した窪みにガス抜きシート13を載置すると共に、該止め部品12の外方には多孔質パッキン材8を嵌合するための突起部12bを垂下周設している。ガス抜きシート13は微多孔質フィルムからなっており、その上に該ガス抜きシート13を固定するためのシート押さえ中栓14が止め部品12に嵌合されている。該シート押さえ中栓14には、ガス抜きシート13を通過してきたガスを排出するための所定の径のガス抜き穴14aが複数個、本実施例では4個設けられている。また、該ガス抜き穴14aからガスが排出され、そのガスの流路として、前記止め部品12に於けるのキャップ本体6の天面側表面には、所定の幅と深さを有したスリット12cが複数個、すなわち本実施例では4個設けられている。
【0015】
以上の構成からなっている本発明実施の形態1のガス抜きキャップ2の動作を説明すれば、容器1内で発生したガスは、自らの圧力によって止め部品12に設けたガス抜き穴12aに侵入し、ガス抜きシート13を通過した後、シート押さえ中栓14に設けたガス抜き穴14aを経てスリット12cに流れ込む。そして、キャップ本体6の胴部内壁に刻まれた螺旋状溝9を流れて、容器1とキャップ本体6を螺着したキャップ本体6の嵌合部6aを経由して大気中に排出される。
【0016】
【発明の実施の形態2】
本発明に係るガス抜きキャップ付き容器の実施の形態2について説明する。
【0017】
容器1は、上述の発明の実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0018】
発明の実施の形態2に於けるガス抜きキャップ(図示せず)は、径が例えば4(mm)の天面穴を有するキャップ本体の他に、該キャップ本体の天面内側に貼付したガス抜きシート及び該ガス抜きシートとキャップ本体との間隙に挿入した多孔質パッキン材とから構成されている。
尚、該ガス抜きキャップの外面には該ガス抜きキャップが容器1の出口部に着脱する際に把持する滑り止めが設けられている。
【0019】
以上の構成からなっている発明の実施の形態2に於けるガス抜きキャップの動作を説明すれば、容器1内で発生したガスは、自らの圧力によってキャップ本体に貼付したガス抜きシートを通過した後、キャップ本体6の天面に設けた天面穴を経由して大気中に排出される。
【0020】
次に、上述に於ける本発明の実施の形態1及び本発明の実施の形態2の双方について、その試験結果を図3、図4及び図5に基づき説明する。
図3は本発明の実施の形態1及び実施の形態2に於けるガス抜きキャップについて、ガス抜き試験結果を示し比較した図である。
図4は本発明の実施の形態1及び実施の形態2に於けるガス抜きキャップについて、液漏れ試験結果を示し比較した図である。
図5は本発明の実施の形態1及び実施の形態2に於けるガス抜きキャップについて、酸素透過性試験結果を示した折線グラフの図である。
【0021】
試験内容は次のとおりである。
(1)まず、ガス抜き試験及び液漏れ試験からなる保存試験を、検体数Nは3、保存条件は40℃―75%RHで各2週間保存、キャップ締めトルクは248cN・m(25kg/cm)として行った。
(2)次に、ガス抜きキャップの酸素透過性試験を、検体数Nは3、容器にガス抜きキャップを螺着した状態、保存条件は室温、キャップ締めトルクは248cN・m(25kg/cm)として行った。
【0022】
試験結果は次のとおりとなった。
【0023】
(1)まず、ガス抜き試験について説明する。
容器1に充填する内容物は、次亜塩素酸比率が12%、6%、3%の3種でそれぞれ5000(g)の次亜塩素酸ソーダと、ガス発生促進のための長さ50×径3(mm)の丸鉄釘1本とし、パッキンに内容物を浸透させるために充填後5分間容器1を倒立させた後、正立させて容器1の変化を測定した。測定項目は前記胴部寸法変化率α(%)と重量変化率(%)の2つで行い、本発明の実施の形態1及び本発明の実施の形態2のガス抜きキャップのガス抜き性能は、胴部寸法変化率α(%)の数値により同等と評価できることが判明した。
すなわち、図3に示すように、それぞれ3つの検体の平均値でみると、次亜塩素酸比率12%の場合の測定開始1週間後及び2週間後に於ける本発明の実施の形態1及び本発明の実施の形態2についての胴部寸法変化率α(%)が、それぞれ7%−9%と6%−9%、同じく次亜塩素酸比率6%の場合が、それぞれ5%−6%と5%−5%、同じく次亜塩素酸比率3%の場合が、それぞれ3%−4%と5%−5%となっていた。
ここで、胴部寸法変化率α(%)の測定に当たり、図1(b)に示す底面からの高さHは、容器1の膨れつまり次亜塩素酸ソーダ等の液状内容物を充填した後の胴部寸法L2が略最大となる10(cm)の位置に設定しており、測定作業の容易性と測定結果比較の確実性を確保している。
【0024】
(2)次に、液漏れ試験について説明する。
容器1に充填する内容物は、次亜塩素酸比率が12%、6%、3%の3種でそれぞれ5000(g)の次亜塩素酸ソーダとし、充填後容器1を横倒しの状態にて保存して、漏れの有無を目視により確認する方法で行った。液漏れが発生した時点で試験を中止することとして試験を開始したところ、図4に示すように、次亜塩素酸比率12%の場合、本発明の実施の形態1に於いては3つの検体すべてが試験開始後14日目に液漏れが発生し、本発明の実施の形態2に於いては1つの検体が9日目に、残る2つが14日目に液漏れが発生した。次亜塩素酸比率6%と3%の場合はいずれも14日目までの間は液漏れが発生しなかった。
【0025】
(3)最後に、酸素透過性試験について説明する。
容器1にガス抜きキャップを締めた状態に於いて、大型ガス置換装置により経時的に酸素濃度β(%)を測定したところ、図5に示すように、本発明の実施の形態1に於ける3つの検体の平均値が0.6%であり、本発明の実施の形態2に於ける3つの検体の平均値が4.2%となり、約7倍の開きがあることが判明した。
【0026】
【発明の効果】
本発明に係るガス抜きキャップ付き容器は上記の構成、作用を備えているので、次の効果がある。
【0027】
請求項1記載の発明によれば、減容化可能な肉薄状であって、所定の寸法を有する合成樹脂容器の出口部に嵌合すると共に、ガスの流路としての螺旋状溝を備えたキャップ本体と、ガス抜きシート、押さえ中栓及び止め部品からなり、該キャップ本体の天面部に挿装した止め部材と、キャップ本体の内壁に形成した前記螺旋状溝と前記止め部品の突起部との間に介装した多孔質パッキン材とから構成され、該止め部材は、ガス抜き穴を設けた止め部品に、微多孔質フィルムからなるガス抜きシートを載置し、ガス抜き穴を設けた押さえ中栓を止め部品に嵌合してガス抜きシートを固定し、押さえ中栓のガス抜き穴から排出されるガスの流路として、止め部品のキャップ本体天面側の表面にスリットを設けたものであることを特徴とするガス抜きキャップ付き容器を提供する。
このような構成としたので、容器内の内容物から発生するガスを容器の出口部から適切に外部に放出させ、容器をいわゆる風船状にすることなく容器の形態を保持しつつ減容化可能とする効果がある。また、減容可能な柔軟かつ肉薄であって軽量な合成樹脂容器を構成し、その内容物を例えば次亜塩素酸ソーダを気化させることにより発生したガスを円滑にガス抜きキャップの嵌合部から排出することができ、容器の膨張を一定程度までに抑制してガス抜きキャップの吹き飛びや脱落又は容器自体の破裂を防止する効果がある。さらに、当該ガス抜きキャップが可動部のない部材により形成されているので、容易に実施化できると共に、耐久性に優れたガス抜きキャップを提供できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るガス抜きキャップ付き容器の一例であって、(a)は全体を示した斜視図、(b)は(a)の矢視I方向からみた内容物に次亜塩素酸ソーダを充填する前の容器と次亜塩素酸ソーダを充填した後の容器を示した側面図である。
【図2】本発明に係るガス抜きキャップ付き容器の実施の形態1に於けるガス抜きキャップであって、(a)は、一部を切欠したガス抜きキャップの拡大断面図、(b)は(a)の矢視J方向からみたガス抜きキャップの内部に装着した止め部材の平面図である。
【図3】本発明に係る実施の形態1及び実施の形態2に於けるガス抜きキャップについて、ガス抜き試験結果を示し比較した図である。
【図4】本発明に係る実施の形態1及び実施の形態2に於けるガス抜きキャップについて、液漏れ試験結果を示し比較した図である。
【図5】本発明に係る実施の形態1及び実施の形態2に於けるガス抜きキャップについて、酸素透過性試験結果を示した折線グラフの図である。
【符号の説明】
1 ガス抜きキャップ付き容器
2 ガス抜きキャップ
2a 滑り止め
3 取手
4 横リブ
5 縦リブ
5a、5b 縦リブの分岐部
6 キャップ本体
6a キャップ本体の嵌合部
7 止め部材
8 多孔質パッキン材
9 螺旋状溝
10 環状突起
11 雌ねじ
12 止め部品
12a ガス抜き穴
12b 突起部
12c スリット
13 ガス抜きシート
14 シート押さえ中栓
14a ガス抜き穴
H 容器の胴部寸法測定の底面からの高さ
L1 内容物充填前の容器の胴部寸法
L2 内容物充填後の容器の胴部寸法
α 胴部寸法変化率
β 酸素濃度

Claims (1)

  1. 減容化可能な肉薄状であって、所定の寸法を有する合成樹脂容器の出口部に嵌合すると共に、ガスの流路としての螺旋状溝を備えたキャップ本体と、ガス抜きシート、押さえ中栓及び止め部品からなり、該キャップ本体の天面部に挿装した止め部材と、キャップ本体の内壁に形成した前記螺旋状溝と前記止め部品の突起部との間に介装した多孔質パッキン材とから構成され、該止め部材は、ガス抜き穴を設けた止め部品に、微多孔質フィルムからなるガス抜きシートを載置し、ガス抜き穴を設けた押さえ中栓を止め部品に嵌合してガス抜きシートを固定し、押さえ中栓のガス抜き穴から排出されるガスの流路として、止め部品のキャップ本体天面側の表面にスリットを設けたものであることを特徴とするガス抜きキャップ付き容器。
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