JP4243351B2 - ガスタービンエンジンの気化冷却されるローターの構成 - Google Patents

ガスタービンエンジンの気化冷却されるローターの構成 Download PDF

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Description

発明の背景
本発明は、一般的にはガスタービンエンジンに関し、より具体的には、ガスタービンエンジン用の改善された気化冷却されるローターに関連する。
ガスタービンエンジンは、航空機、船及び他の乗り物を動力で動かすために、及び固定設置された状態でシャフトに動力を与えるために使用されるが、通常、コンプレッサー部、燃焼室及びタービン部を備えている。特定の用途に依存して、吸気ディフューザを備える追加のフロー部(flow components)、パワータービン及びノズルを組み込むこともできる。
エンジン動作の間、空気がコンプレッサー部によって吸い込まれるが、このコンプレッサー部は通常、交互の列をなす、回転ブレードと静止ブレードを備えている。圧縮された空気がコンプレッサーを出ると、その空気は通常、圧力回復のために減速され、一つ以上の燃焼室に配送される。そこで燃料が空気内に注入され、空気/燃料混合物がほぼ一定の圧力で燃焼される。燃焼後に高温の燃焼ガスが、エントリーノズルを通常備えるタービン部を通って膨張する。このエントリーノズルには、高温のガスの膨張から機械的な動力を取り出すための、一つ以上の組の回転ブレード及び静止ブレードの列が続いている。この取り出された動力は、シャフトを回転させるために使用され、シャフトが次に、コンプレッサーの回転ブレードを駆動する。
基本的な飛行機の推力への応用においては、この高温ガスは、次に、さらに膨張されて、ノズルを通って高速度で排出され、エンジンに十分な推力を与える。コンプレッサーのブレードを回転させることに加えて、タービン部は、ターボファンエンジン内のファン、ターボシャフトエンジン内のプロペラ、または固定された電力システム内の電気発生器のような、他の装置を駆動するための駆動部を備えることができる。
ガスタービンエンジン内の燃焼に対する最適な熱力学的温度は、化学当量(stoichiometric)の燃料/空気比にほぼ対応し、これによって燃焼ガス温度は、2477Kかそれより高い程度のものになる。しかしながら、従来のガスタービンは、エンジンの特定の用途にもよるが、通常は、タービンの入口の温度がこれよりかなり低い温度である、約1477Kから1922Kまでの範囲で動作する。動作温度におけるこの制限は、高速回転するタービン部から、及び燃焼生成物によって与えられる過酷な(刺激の強い)酸化環境によって生じる強烈なストレスに加えて、化学当量の、または化学等量に近い高い燃焼温度に耐えることができる、タービン部内で使用するための材料がないことが主たる原因である。その結果、従来のガスタービンは、しばしば、高価な高温用超合金をタービン部内で使用するが、それでも依然として、より高いレベルの燃料/空気化学当量で達成できる結果に比較すると、単位空気流あたりの動力及び、燃料効率が比較的低い状態で動作する。
同様に、より高い圧力比で動作する高性能のタービンエンジンの開発により、コンプレッサーの高圧段階における空気の温度は、好適な構造材料に対する許容可能な制限を越えうるものとなっている。従って、このようなエンジン設計では、コンプレッサー部の一部分においても、能動的な冷却または高価な超合金を使用することが必要とされる場合がある。
これらの制限を克服しようとする試みでは、実際の試みは、タービン部の部品を、高温の燃焼ガスの温度より十分に低い温度に冷却することに、主に向けられてきた。ほとんどのガスタービンエンジンでは、例えば、コンプレッサーからの「冷たい」ブリードエア(抜き取り空気)の流れを(燃焼室をバイパスすることによって)、中空のタービンのブレードの方に向ける。タービンのブレードは、さらに、「冷たい」ブリードエアが、ブレードの内側からブレードの表面上に流れ出ることができるようにするための一続きのピンホールを、ブレード表面に沿って備えており、これによって、ブレードの外部表面上に冷たい空気の薄い膜を作り出す。このブリードエアの流れは、次に、タービン部内の高温燃焼ガスの膨張による流れと混合して、エンジンのノズルを通って排出される。このタイプのブレード冷却により、通常、上記した従来の動作温度におけるタービンのブレード(以下、タービンブレード)の温度は、ほぼ1255Kかそれより低い温度まで下がる。
しかし、このアプローチには、多くの欠点がある。第1に、ブリードエアを抜くことによって、エンジンの動作効率が下がってしまう。詳しくは、タービンブレードを冷却するために使用されるブリードエアは、燃焼プロセスの間に燃焼されなかったので、タービン部内では、燃焼ガスの本流よりも極めて少ない膨張作用しか生じない。それにもかかわらず、タービンの動力は、この空気を圧縮するために費やされる。従って、ブリードエアの許容可能な最適な量は、タービン部内で実行される膨張動作レベルの低下と、より高い燃焼ガス温度による利益をバランスさせることによって決定される。さらに、このアプローチでは、タービン部内に高価な超合金材料をもはや必要としない温度まで、ブレードの温度を下げることは通常は不可能である。
検討済みの、または開発中の他の設計アプローチは、外部ソースからタービンブレードを通る、種々の形態の押し込み式の液体またはガスの流れを含んでいる。コンプレッサーのブリードエアで冷却するのに類似した、水の循環及び蒸気の貫通流を含む、タービンブレード内の閉流路及び開流路の2つの流路が検討されている。しかし、これらのアプローチは、冷却剤の重量が加わるために、飛行機にとっては魅力がない。さらに、これらのアプローチでは、冷却剤を固定された供給源から回転部に配送することが必要となるので、エンジンがさらに複雑になってしまい、据え付けのまたは水陸上用の乗り物にとっても望ましくないものとなる。
燃料を燃焼させる前に、タービンブレードを通して燃料を循環させることによって冷却を行うこともまた、開発中である。これらの設計では、制御された吸熱反応による分解、すなわち、例えば、蒸気でメタンを改質することによって、熱は、単純な熱量として燃料によって吸収される。しかしながら、これらのどの選択肢においても、回転部への液体の配送及び回転部からの液体の除去が必要であり、さらに、特定の燃料、触媒または熱条件も必要となる。
タービンブレードを冷却するために使用される別のシステムを図1に示す。このシステムは、その全体の開示内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5,299,418号に開示されているものであり、各タービンのローター18の密封された内部キャビティ34内に配置された冷却用流体(以下、冷却流体)Fを使用するものである。ローター18は、エンジンの回転軸A−Aに近接したハブまたは円形部28と、ハブ28から外側に延びて、それによって支持されるブレード部30を備えている。高温の燃焼ガスは、通常、ブレード部30を通過して流れる。ローター18は、さらに、キャビティ34を画定する壁32を備えている。キャビティ34は、さらに、ハブ28に配置された液化部(凝結部)36と、ブレード30の外に配置された気化部38に分割されている。
冷却流体Fは、ブレード部30のローター壁32のその部分を気化によって冷却する。冷却流体Fは、壁32が、ローター18を膨張して通過する高温の燃焼ガスと共に動作するのに適した温度で気化するという物理的な特性を有している。
さらに詳しくは、ローター18の回転により、冷却流体Fを液体状態で、矢印40の方向に流れるようにする遠心力場(centrifugal field、以下単に遠心力とも記載)が生じる。ローター18は、一連の半径方向に隔置されたキャプチャシェルフ(捕捉用棚部)46を備えており、このシェルフは、気化部38の壁32の内部表面に沿って配置されている。各キャプチャシェルフ46は、回転軸A−Aに面するくぼみ(井戸)50を備えている。冷却流体Fは、液化部36から、壁32の内部表面に沿って気化部38に向かって流れ、そこで、第1のキャプチャシェルフ46のくぼみ50に入る。
理想的には、より多くの冷却流体Fが、第1のキャプチャシェルフ46に入り、そのシェルフ46内の冷却流体Fのレベルが、シェルフ46の内部のへり(lip)48に到達するまで上昇する。次に、冷却流体Fは、第1のキャプチャシェルフ46のへり48を越えて、第2のキャプチャシェルフ46のくぼみ50の中に、同様にしてその次にと、各キャプチャシェルフ46が、理論上、安定した冷却流体Fの溜まりを収容するまで、こぼれ落ち始める。
ローター壁32を通過して流れる高温の燃焼ガスからの熱流束によって、それぞれのキャプチャシェルフ46内の冷却流体Fの一部が気化し、それによって、そのキャプチャシェルフ46に隣接するローター壁32の部分から熱を奪う。より多くの冷却流体Fが気化する(蒸発する)に従い、気化部38内の局所的な蒸気圧は、液化部36内の蒸気圧に対して増加する。蒸気圧のこの差によって、気化部38内の気化した冷却流体は、遠心力場に反して、矢印42で示すように、半径方向の内側に、液化部36に向かって押し上げられる。蒸気は、液化部36内のより温度の低い壁32の内部表面に向かって流れ、そこで、凝結(液化)して冷却流体Fに戻る。こうして、高温のブレード構造に対する冷却液の、及び液化部36に対する蒸気の、連続的で自己調整型の再循環流が維持される。気化した冷却流体が、液化部36で再び液化するときに発生する熱は、いくつかの従来方法によって除去することができる。
十分な数の適切に隔置されたキャプチャシェルフ46と、十分な量の冷却流体Fを設けることによって、この設計が、より効率の高いガスタービンの動作に関連する、より高い温度に耐えることが可能なローター18を提供するものであるということが予想された。しかし、解析的な研究によって(この研究はその後に実験を通して裏付けられたものであるが)、前記特許に開示された内部の幾何学的形状に基づく制限があることが判明した。第1に、矢印40で示すように、液化部36の壁32の内部の平坦な表面に沿って移動する冷却流体Fは、タービンの高速回転により急速に加速される。従って、冷却流体Fが第1のキャプチャシェルフ46に到達するまでには、冷却流体Fはかなりの速度で移動しているだろう。実際には、流体Fの速度は非常に大きいので、流体Fは、安定した溜まりとして第1のキャプチャシェルフ46に捕捉されるのではなく、実際には、第1のキャプチャシェルフ46によって向きを変えられて、そこから吐き出されてしまう。従って、第1のキャプチャシェルフ46内で利用可能な冷却流体Fの量は、ローター壁32の対応する部分を気化によって冷却するには不十分なものとなる。
さらに、冷却流体Fは、第1のキャプチャシェルフ46内に溜まることができないので、冷却流体Fが一つのキャプチャシェルフ46から次のキャプチャシェルフにこぼれ落ちることはほとんどないか、または全くないであろう。その代わりに、第1のシェルフ46からローターキャビティ34の中央部に向かって吐き出された、冷却流体Fの大部分は、制御されない方法でまき散らされて、ローター18の先端部に集まるだろう。さらに、一つのキャプチャシェルフ46から次のキャプチャシェルフ46にこぼれ落ちる任意の冷却流体Fは、また、それが、遠心力に従って次のキャプチャシェルフ46に向かって半径方向の外側に流れるときに、急速に加速されるだろう。その結果、この流体Fは、次のシェルフ46から同様に吐き出されて、冷却液の分布は、ローター18の全体に渡って乏しいものとなる。
流体Fはさらに、ローター壁32から分離し、それによって、一つのキャプチャシェルフ46から次のキャプチャシェルフへの流れも途絶されるだろう。例えば、キャプチャシェルフ46のへり48上を流れる流体Fの一部は、流れの方向が突然変化するために、ローター壁から分離するだろう。流体Fに回転の加速を与えるのは、ローター壁32との流体の接触部であるので、このように分離されることによって、流体Fの半径方向の加速もまた低減され、流れの方向は不確定なものになる。さらに、ローター18は通常、回転面に対して高いアタック角度で、タービン部内に取り付けられているので、ローター18の回転の間、冷却流体Fに作用するコリオリの力によって、冷却流体Fはさらに、ローター壁32から分離される。特に、回転軸及び見かけ上の運動方向の両方に垂直に作用するコリオリの力によって、流体Fは、ローター壁32から円周方向に分離されるであろう。各キャプチャシェルフ46内に冷却流体Fの安定な溜まりが無い状態では、ローター壁32から十分な量の熱を排除する、または、ブレード部30上を均一に冷却する、システムの能力は低減される。
発明の要約
本発明の目的は、上述のローター設計に改良を加えることである。
本発明の他の目的は、冷却流体が、ローターの第1のキャプチャシェルフ内の安定な溜まり内に集まるように、冷却流体の流れに改良を加えることである。
本発明のさらに他の目的は、一つのキャプチャシェルフから次のキャプチャシェルフまでの冷却流体の流れに改良を加えて、各キャプチャシェルフが、ローター全体を気化冷却するための冷却流体の安定な溜まりを収容することができるようにすることである。
簡単に言うと、本発明は、封止された内部キャビティを画定する壁を有するローターを備えている。冷却流体は、内部キャビティ内に配置される。既知のシステムによれば、キャビティは、液化部と気化部に分けらる。さらに、一連のキャプチャシェルフが、気化部内の壁に沿って配置される。しかし、従来技術のシステムとは異なり、本発明は第1の態様において、液化部内の壁の内部表面上に配置された少なくとも一つの防壁をさらに備える。この防壁は、冷却流体が遠心力により半径方向の外側に流れるときに、その冷却流体の流路を横切るように配置される。防壁は冷却流体の流れに対する障害となるので、流体は防壁を越えて流れるか、または、それを通過して流れるかすることになり、従って、その流れは一時的に減速させられるか、及び/または停止させられる。防壁は、流れを減速することによって、または、一つ以上のほとんど流れのない溜まり場を形成することによって、冷却流体が第1のキャプチャシェルフに入るときの冷却流体の速度を十分に減速させるものである。
第2の態様では、本発明は、キャビティ内に配置されて、気化部内の冷却シェルフのへりに近接して半径方向に延びるバッフルを備える。はねかけ防止部として作用するバッフルは、冷却流体が、キャビティの中央部に向かって吐き出されるのを防止し、かわりに、冷却流体を安定な溜まりを形成するシェルフ内に戻るように導く。バッフルは、冷却流体の気化による蒸気が、バッフルを自由に通り抜けて液化部に流れるように、好ましくは、通気性(多孔性)であるかまたは穴のついたものである。
バッフルは、冷却流体がキャプチャシェルフのへりの上を越えてこぼれるのを阻止することができ、それによって、ひとつのシェルフから次のシェルフに流れるのを阻止することができるので、各シェルフのへりは、好ましくは、隣り合うシェルフ間で流体連絡を行う少なくとも一つの通路すなわちチャンネルを備える。所定のキャプチャシェルフ内の冷却流体のレベル(水位)が、対応するチャンネルの入口の上まで上昇すると、その冷却流体は、そのチャンネルに入って、次のキャプチャシェルフ内に流れ込む。バッフルは、好ましくは、各キャプチャシェルフのへりに沿って延びているので、冷却流体がチャンネルすなわち通路を通って移動した後、次のキャプチャシェルフの外にはねかかるのを防止する。バッフルはまた、冷却流体がローター壁から分離するのを防止し、流れを妨害しがちなコリオリの力に対抗する。従って、バッフルによって、冷却流体は、各シェルフ内の安定な溜まりとして集まることができるようになる。
代替の実施態様では、本発明は、キャビティ内に配置され、ローターの対抗する側面間を円周方向に延びる、半径方向に配列されたブリッジ(橋)を備える。ブリッジは、好ましくは弓形をしており、各ブリッジの中央部が、ローターの対向する側面に接しているブリッジの端よりも、ローターの軸の方に近くなっている。好ましくは、キャプチャグルーブ(捕捉溝)が、各ブリッジの内部表面に沿って形成され、冷却流体が半径方向の外側に流れるときに、その冷却流体を捕捉する。ブリッジは弓形であるので、冷却流体は、回転の間、ローターの側面に最も近いキャプチャグルーブ部内に集まる。半径方向に配列されたブリッジは、好ましくは、さらに、互いに位置をずらして配置されており、一つのキャプチャグルーブの縁を越えて流れる余分の冷却流体が、次のブリッジのキャプチャグルーブ内に捕捉されるようにしている。気化部において、これらのブリッジは、コリオリの加速効果に影響されない、均一に壁を冷却するための制御された流体の流れ及び流体の分布をもたらす。これらのブリッジは、ブレード壁間の全間隙を埋めるので、それらは、また、前にあるブリッジからはねかけられた冷却流体を効果的に捕捉し、ローターの先端部での冷却流体のロスを防止する。
第2の代替の実施態様では、キャプチャシェルフのへりは、まっすぐか、またはほぼまっすぐのエッジ(縁)を備えるのではなくて、その外形が半径方向に変化するエッジを備えている。すなわち、このへりは、冷却流体が、一つのキャプチャシェルフから次のキャプチャシェルフにこぼれ落ちるときに、この冷却流体用の排水路を画定する、少なくとも一つの浅い領域を備える。次のキャプチャシェルフのへりのエッジは、好ましくは、さらに、溢れ出た冷却流体を捕捉するために、この浅い領域の下に配置されたより高い部分を備える。シェルフの内部表面は、好ましくは、さらに、溢れ出た冷却流体との接触を維持するために、回転方向において前方に傾けられる。
従って、本発明は、従来技術による設計において既に認識されている制限を解決し、ガスタービンエンジンのローターを冷却するための改善されたシステムを提供するものである。従って、エンジンを化学当量の燃焼温度で、あるいはほぼそれに近い温度で動作させることができ、従って、エンジン効率と比動力(specific power)を改善することができる。さらに、ローターブレードの動作温度を下げることによって、本発明はまた(あるいは代替的に)、ローター、燃焼室及び/またはコンプレッサー部内における、より簡単な製造技術で足りる、より低価格の材料及び/または複数の材料を、製造業者が利用することができるようにするものである。実際に、多くの超合金よりも高い熱伝導率を有する標準的な合金を使用することは、より多くの熱を温度勾配が低い状態で、ブレード壁を通して伝達するためには好ましいことである。
【図面の簡単な説明】
本発明の上述の、及び他の利点は、添付の図面と共に以下の説明を参照することによって、より明瞭に理解されるであろう。
図1は、上述の、従来技術の気化冷却されるローターの断面図である。
図2は、本発明の改善された気化冷却されるローターを備えるガスタービンエンジンの概略図である。
図3は、本発明に従う、改善された気化冷却されるローターの断面図である。
図4は、図3に示す改善されたローターのライン4−4に沿った端面図である。
図5A〜5Eは、いくつかのチャンネルの断面を示す。
図6Aは、本発明のバッフルの別の態様を示す部分断面図である。
図6Bは、本発明のバッフルの別の態様を示す部分断面図である。
図6Cは、本発明のバッフルの別の態様を示す部分断面図である。
図7は、単一のキャプチャシェルフの拡大断面図である。
図8Aは、本発明の改善された気化冷却されるローターの別の実施態様の部分断面図である。
図8Bは、図8Aの改善されたローターのライン8B−8Bに沿った端面図である。
図9Aは、本発明の改善された気化冷却されるローターの別の実施態様の部分断面図である。
図9Bは、図9Aの改善されたローターの端面図である。
好ましい実施態様の説明
図2は、本発明を取り入れたガスタービンエンジン200の概略図である。回転の中心軸B−Bを有するガスタービンエンジン200は、吸気口またはディフューザ210、コンプレッサー部212、燃焼室214、タービン部216、及びノズル218を備えている。動作時は、空気が吸気口またはディフューザ210を通ってエンジン200に入り、コンプレッサー部212に流れ込む。このコンプレッサー部は、通常、軸B−Bに軸合わせされたシャフト224に取り付けられた、交互に配置された一連の静止ブレード220及び回転ブレード222を備えている。
圧縮された空気は、燃焼室214に送られ、そこで燃料が加えられて、燃料/空気の混合物が燃焼される。燃焼プロセスによって生じた高温のガスは、タービン部216を通って膨張する。このタービン部もまた、交互に配置された一連のステータ226及びローター228を備えている。急速に膨張する高温ガスは、ローター228に作用して、それらを高速で回転させる。ローター228はシャフト224に取り付けられており、それによって、エンジン200のコンプレッサー部212を駆動する。タービン部216を通過した後、高温の燃焼ガスは、ノズル218を通って流れ、エンジン200から排出される。
エンジン200が、さらに、プロペラ、ファン、電気発生器等のような他の装置を駆動するための、パワータービン部を備えることができるということは明らかである。そのような追加の構成要素もまた、タービン部216によって駆動することができる。
図3は、本発明による改善されたローター228の断面図である。ローター228は、冷却流体Fの閉循環、相転移サイクルを利用した内部冷却システムを使用する。ローター228は、ハブ部230を備えているが、このハブ部は、回転軸B−Bに対してハブ230から外側に配置されているブレード部232を支持するためのものである。ローター228は、さらに、内部表面235を有する壁233を備えている。壁233は密閉されており、それによって、ローター228内に内部キャビティ234を画定する。内部キャビティ234は、ローター228のハブ部234に配置された液化部236と、ブレード部232に配置された気化部238に分割されている。
キャビティ234の中には、ローター228のブレード部232を冷却するための冷却流体Fが収容される。熱は、液体から気体へ相転移される冷却流体Fによって、ブレード部232から除去される。ナトリウムやカリウムのような種々の金属、または、臭素やヨウ素のようなハロゲン化合物が、冷却流体Fとして使用するのに適している。他の適切な冷却流体についても、当業者にとっては明らかである。
ローター228は、さらに、ブレード部232内のローター壁233の内部表面235に沿って、半径方向に配置された一連のキャプチャシェルフ240を備えている。各キャプチャシェルフ240は、冷却流体Fを受けるための、形状が好ましくは凹形のくぼみ241と、壁233に対向するへり242とを備えている。各キャプチャシェルフ240は、好ましくは、回転軸B−Bから一定の半径でブレード部232の内周全体に渡って延びている。バッフル244は、各キャプチャシェルフ240のへり242に取り付けられている。ほぼ半径方向を向いた(及び、下記するように、好ましくは通気性であるか、または穴があいている)バッフル244は、ブレード部232の内周を完全に周回して延びている。
バッフル、及び/またはバッフルの支持部は、代替として、液化部内に延びて、キャプチャシェルフではなくブレードの基部で支持されるようにすることができるということは明らかである。さらに、バッフルは、ブレードの先端部に構造的に接続することができるということも明らかである。
少なくとも一つの防壁246が、液化部236内の壁233の内部表面235に取り付けられており、それは、ローター壁233から液化部236に向かって内側に延びている。好ましくは、防壁246は、透過性の、穴のついたまたは通気性の部材からなる一つ以上の段部247から形成され、この段部247のそれぞれは、回転軸B−Bから一定の半径に配置されて、防壁が、内側に延びる一連のリッジ(隆起部)248を備えるようにしている。防壁部材は、壁233の内部表面235に結合してもよく、液化部236の内周を完全に周回して延びるように構成してもよい。
エンジン200の動作時、ローター228の回転により、冷却流体Fを、液化部236から、壁233の内部表面235に沿って気化部238に向けて流すようにする遠心力が発生する。しかし、冷却流体Fはすぐに防壁246にぶつかる。冷却流体Fを、段部247を通って通過させ、または、リッジ248を越えて通過させることによって、この防壁は、本質的に、冷却流体Fの流れを各段部247において一時的にゆっくりしたものにするか、または停止させる。防壁248の一つの段部247を通過すると、冷却流体Fは、それから、次の段部247まで加速され、そこで、再び減速されるか、または停止させられる。冷却流体Fが、壁233の内部表面235に沿って、気化部238に向かって移動するときに、冷却流体Fの加速と停止が繰り返されることにより、冷却流体Fの速度が、従来の設計で生じる高速度となることが阻止される。従って、冷却流体Fが、第1のキャプチャシェルフ240に到達するとき、その速度は、図1のローターで生じる速度よりも極めて遅いものとなる。防壁246は、また、液化部236内の有効表面を増加させ、それによって、所定の表面温度に対する熱流速の能力を増加させる。
さらに、図3を参照するが、冷却流体Fが第1のキャプチャシェルフ240に到達するときに、冷却流体Fは、キャプチャシェルフ240によって向きを変えられて、ローター228の中央部に向かって吐き出されるのに十分な速度を、依然として有する可能性がある。しかし、バッフル244が、第1のキャプチャシェルフ240によって、冷却流体Fが吐き出されるのを防止し、先ず、液化部236の方に冷却流体Fの向きを再び変えて、結局、キャプチャシェルフ240のくぼみ241内に冷却流体Fが戻るようにする。第1のキャプチャシェルフ240内に留まるようにすることによって、冷却流体Fは、第1のキャプチャシェルフ240のくぼみ241の中の安定した溜まりに蓄積する。バッフル244は、好ましくは、シェルフのへり242と接しているので、冷却流体Fは、へり242を越えてこぼれ落ちることはできず、図1の設計と同様に、次のシェルフ240に入ることはできない。
一つのシェルフ240から次のシェルフに、冷却流体Fが流れることができるようにするために、少なくとも一つのチャンネル250が、対応するへり242のすぐ近く(直近)の各キャプチャシェルフ240を貫通して形成される。従って、各チャンネル250により、隣り合うキャプチャシェルフ240間の流体連絡が可能となる。特に、各チャンネル250は、好ましくは、へり242の近くに入口252を、及び、次のシェルフ240のルーフ(屋根)部256内に配置された排出端部254を備えており、排出端部254が、軸B−Bに対して入口252よりも半径方向に離れた場所に位置するようになっている。所定のシェルフ240内の冷却流体Fの水位が、対応するチャンネル250の入口252に達すると、冷却流体Fは、チャンネル250内に入って、冷却流体Fに作用する遠心力によって、次のキャプチャシェルフ240内に流れ込む。
チャンネル250が、各キャプチャシェルフ240のへり242を貫通して延びるのではなく、(またはこれに加えて)キャプチャシェルフ240の背面のローター壁233を貫通して、またはくぼみ241の打ち抜き穴のようなものを通って延びることもできるということは明らかである。
チャンネル250は、回転軸B−Bにほぼ垂直に延びることができ、そのために、チャンネル250の排出端部254を出る冷却流体Fは、次のシェルフ240のくぼみ241内に形成された溜まりの中に移動する前に、そのシェルフのへり242にぶつかる。代替的には、チャンネル250の排出端部254が、入口252よりも、隣接するローター壁233により近く配置されるように、チャンネル250を傾けることができる。しかし、次の冷却流体Fの溜まり内の冷却流体Fの分量が少なくなるのを防止するためには、冷却流体Fが、高速の集中的なストリーム、すなわち噴流として排出されることも、次の溜まりを吐き出すチャンネル250に向かうこともないように、チャンネル250は配置されなければならないということは明らかである。代わりに、以下で説明するように、好ましくは、次のシェルフ240内の冷却流体Fの分量が一定量になるように、及び、冷却流体Fが、バッフル244に向かって直接はねかかることが無いように、チャンネル250を通る冷却流体Fの流れが設計される。
ライン4−4に沿った図3の一連のキャプチャシェルフ240の端面図である図4に示すように、各キャプチャシェルフ240は、好ましくは、少なくとも一対のチャンネル250を備えている。これらのチャンネル250は、その2つのチャンネルの排出端部254が互いに、入口252よりも近づくように、内側に傾けられている。好ましくは、これらのチャンネルは、遠心力の方向に対してほぼ30°の角度で傾けられている。チャンネル250をわずかに傾けて形成することによって、チャンネル250から出る冷却流体Fが、次のシェルフ240に既に溜まっている冷却流体Fをかき混ぜて、上記した冷却流体Fのはねかかりを防ぎながら、気化プロセスを促進させることになる。
図5A〜5Eにチャンネル250の種々の断面の幾何学的形状を示す。図5Aに示すように、チャンネル250は、へり242とバッフル244との間の境界面からずれた円形の断面を有することができる。代替的には、チャンネル250の断面は、図5B及び5Cに示すように、バッフル244に接した、丸みのある、または四角(正方形)の断面であってもよい。図5D及び5Eにそれぞれ示すように、チャンネル250の断面は、いずれの断面もまたバッフル244に接した、細いスリット状の断面か、または、浅い長方形状の断面であってもよい。これら以外の断面及びその配置もまた、本発明の目的を達成するために使用することができる。
明らかなことであるが、各シェルフ240ごとのチャンネル250の数と、特定の流路を含む、実際のチャンネル250の構成は、各シェルフ240内への冷却流体Fの空間的な分布を最適化するように、また、各シェルフ240内の冷却流体Fの効果的な攪拌を起こすように選択されるだろう。さらに、冷却流体Fは、それがローター228の先端部に向かって移動するにつれて除々に気化するために、最初のいくつかのシェルフ240内では液体の流量率は高く、最後のいくつかのシェルフ240ではその率はより低くなるが、これらの液体の高い流量率とより低い流量率に適応するように、ブレード部232の全範囲にわたってチャンネル250の数と特定の流路の設計を変えることができるということもまた、明らかである。
図3を参照すると、バッフル244は、好ましくは、冷却流体Fが、任意の特定のキャプチャシェルフ240から吐き出されないようにするために、すべての列のキャプチャシェルフ240に半径方向に近接して延びている。従って、冷却流体Fは、次の各キャプチャシェルフ240のくぼみ241内に留められ、そこで、安定な溜まりを生じる。気化した冷却流体Fからの蒸気が、キャプチャシェルフ240から漏れ出て、気化部238に入ることができるようにするために、バッフル244は、好ましくは通気性のものであり、それによって、各キャプチャシェルフ240内に液体の冷却流体Fを留めたままで、その蒸気がバッフル244を通過することができるようにする。バッフル244を通過することによる圧力のロスは、好ましくは最小にされて、気化した冷却流体Fが、キャプチャシェルフ240から気化部238に自由に流れることができるようにする。上述したように、気化部238と液化部236の間の局所的な蒸気圧の差によって、蒸気は、液化部236に向かって半径方向の内側に押し出される。
明らかなことであるが、バッフル244は、通気性のものではなくて、キャプチャシェルフ240内に液体の冷却流体Fを保持したまま、気化した流体が通過することができる、他の幾何学的形状及び特性を備えたものであってもよい。
例えば、図6Aを参照すると、バッフル244は、ローター228のキャプチャシェルフ240と気化部238の間に蒸気の連絡路を設ける、一連の打ち抜き穴612を備えることができる。この打ち抜き穴612は、好ましくは、断面積が小さく、矢印Aで示すように、気化した冷却流体が依然としてバッフル244を通って流れることができるようにしたままで、液体の冷却流体Fの有意の量が、バッフル244を通過することを阻止するように、配向されている。さらに、バッフル244をシェルフのへり242に取り付けるのではなくて、ローター228の先端部または基部のどちらかで支持することによって、バッフル244は、また、シェルフ240に対して追加の構造的支持部を提供することができる。とりわけ、この構成では、バッフル244は、片持ち梁状に突き出たシェルフ240に対する第2の支持部として作用し、それによって、シェルフの基部614にかかる曲げ負荷を低減させる。
キャビティ234(図3)は、気化した冷却流体が、気化部238から液化部236に流れることができるようにするために、ローター228の対向する側面間に十分な空間を提供するだけのものであるが、さらに、バッフル244が、そのキャビティ234の多くの部分を占めるようにすることができるということは明らかである。
バッフル244は、代替的には、複数の固体パネルから構成することができる。例えば、図6Bに示すように、バッフル244は、日除け用のブラインド状に配置された一連の固体パネル620から形成することができる。パネル620は、好ましくは、矢印Bで示すように、気化した冷却流体が、バッフル244を通って流れることができるように、間隔をおいて配置される。パネル620は、半径方向に延びるリブまたはフレーム部材(不図示)で支持することができる。図6Cは、さらに別の構成を示すものであり、バッフル244は、各シェルフ240に関連した単一のパネル622から構成されている。各パネル622は、好ましくは、中心から離れたエッジ624を備えており、このエッジは、回転軸B−B(図3)に対して、内側のエッジ626より半径方向に遠くの位置に配置されている。各パネル622は、さらに好ましくは、中心から離れたエッジ624が、内側のエッジ626よりも壁232に近くなるように傾けられ、それによって、液体の冷却流体Fの有意の量が、バッフル244を通過することを防止し、同時に、気化した冷却流体が、矢印Cで示すように、バッフル244を通って流れることができるようにする。
図7は、単一のキャプチャシェルフ240の拡大図である。本発明の基本的な熱除去メカニズムは、好ましくは、表面沸騰や、各キャプチャシェルフ240の液体溜まりを画定するシェルフ壁の少なくとも部における核沸騰のような、冷却流体Fの気化によるものである。尚、表面沸騰は、加速領域における液体密度の差、及び前のシェルフからこぼれ出た液体の流れによる攪拌のようなメカニズムによって生じる溜まり液体内部の対流によって維持される。しかし、膜沸騰は、少なくとも熱伝達の主要なメカニズムとしては避けるのが好ましい。なぜなら、膜沸騰により、壁構造と冷却材の間の温度差が相当大きくなり、結果として、本発明の熱除去能力が低下するか、または、固体壁の温度が上昇するからである。
タービンの熱伝達及びタービンの回転速度の両方の全動作範囲にわたって、これらの熱伝達の目的を実現するために、各キャプチャシェルフ240のくぼみ241は、好ましくは、ブレードの熱流速が最大かつエンジンシャフトの回転速度が最低の状態で、溜まりの下部に対流または核沸騰を起こすのに十分な範囲の冷却剤の静圧(static pressure)を、深さ全体に与えるのに十分な深さDを有している。尚、エンジンシャフトの回転速度が最低の状態では、深さDでの冷却剤の流体静力学的圧力は最低になる。これらの状態下では、溜まりの浅い領域に、より低い静圧による、局所的な膜沸騰を起こすことができ、これによって、ブレード構造の温度に悪影響を与えることなく、冷却剤の沸点が局所的に低下する。従って、冷却流体Fは、各シェルフ240内に比較的深い溜まりを形成する。さらに、くぼみ241は、好ましくは、ローター壁233に沿って、勾配のある、すなわち傾斜した断面241Aを備えている。この勾配のある断面241Aによって、溜まりとローター壁233の間の有効表面積が増加し、従って、壁233から冷却流体Fへの熱伝達が改善される。また、勾配のある断面241Aによって、エンジン200(図2)の熱的動作及び力学的動作の全範囲にわたって、冷却流体Fへの熱伝達が、核沸騰または溜まりの沸騰(pool boiling)により支配されるということが確保される。
図8A及び8Bに、本発明の他の実施態様を示す。図8Aは、気化部238内のローター228のブレード部232の断面を示す。半径方向に配置された一連のブリッジ構造260が、ローター228の対向する壁233にかかっている。各ブリッジ構造260は、回転軸B−Bに対して内側に向く面262と、2つの端部264を備える。ブリッジ構造260は、好ましくは、各ブリッジ260の中心点Cが、ブリッジ構造260の対応する端部264よりも、回転軸B−Bに近くなるように、内側に弓形に曲げられる。
キャプチャグルーブ266が、各ブリッジ構造260の内側の面262に沿って形成される。ライン8B−8Bに沿った図8Aのローター228の端面図である図8Bを参照すると、キャプチャグルーブ266は、好ましくは、凹形であり、それによって、各グルーブ266に沿って、くぼみ268と一対のエッジ270を画定する。ローター228は、好ましくは、それぞれの指定されたスパン方向の位置において、列272a〜272cの中に形成された、複数のブリッジ構造260を備える。さらに、272aと272b、272bと272c等の隣り合う列は、好ましくは、第1の列272aのエッジ270が、次の列272bのくぼみ268の上にくるように互いにずらされている。
動作時は、冷却流体Fは、ローター228の内壁235に沿って、気化部238内のブリッジ構造260に向かって流れる。冷却流体は、ブリッジ構造260の第1の列272aのキャプチャグルーブ266に入る。冷却流体Fは、冷却流体Fのレベル(水位)が、ローター壁233の内側表面235との境界面にあるグルーブ266のエッジ270に達するまで、キャプチャグルーブ266内に溜まり続ける。次に、冷却流体Fは矢印274によって示す遠心力により、グルーブ266のエッジ270を越えてこぼれ出る。ブリッジ構造260の次の列272bは、そのくぼみ268が、第1の列272aのエッジ270の下にあるように配置されているので、こぼれ出た冷却流体Fは、ブリッジ構造260の第2の列272bのキャプチャグルーブ266の中に捕捉される。こうして、冷却流体Fは、ブリッジ構造260の一つの列272aから次の列へ流れる。各列内のブリッジ構造260は、好ましくは、さらに、互いに十分に近接して配置されており、そのため、次の列のキャプチャグルーブ266の中に捕捉されない場合には、あるブリッジ構造260のキャプチャグルーブ266またはくぼみ268からはねかかる冷却流体Fが、隣り合うブリッジ構造260によって遮られるようにしている。
冷却流体Fの一部は、一つの列272aから次の列272bにこぼれ出ることに加えて、さらに、ブリッジ構造260の各列272aから気化する。ブリッジ構造260は、内側に曲がっているので、冷却流体Fは、ローター壁233に隣接するグルーブ266のその部分に集まる。ローター壁233に隣接する冷却流体Fの気化によって、ローター壁233のその部分が冷却される。上述したように、気化部238内の蒸気圧が上昇するために、気化した冷却流体は、半径方向の内側に押し出されて液化部に向かい、そこで、再液化して、再び、冷却プロセスを開始するために使用される。
キャビティ234を横断して円周方向に延びるブリッジ構造260は、ローター228を冷却するのに加えて、気化部238内のロータ228に、構造的な保全性を付加する。
明らかなことであるが、さらに、ブリッジ構造260を、ローターの液化部236内に配置することができ、それによって、気化した冷却流体Fの凝結を促進し、一連の防壁248(図3)に関して上述したのと同じようにして、冷却流体Fの外側に向かう流速を制御することができる。
図9A及び9Bに、本発明の別の実施態様を示す。図9Aは、気化部238内のローター228のブレード部232の部分断面図である。一定の形状のエッジ910を有するずらりと並んだキャプチャシェルフ240が、ローター228の壁233内に形成される。各シェルフ240は、さらに、くぼみ241を備える。図9Bは、図9Aのキャプチャシェルフ240の一定の形状のエッジ910の端面図である。特に、それぞれのシェルフのへり242が、ブレード壁233に対向する、一定の形状のエッジ910を画定する。図9Bに示すように、一定の形状のエッジ910は、好ましくは、交互に配置された高い方の部分302と低い方の部分303を備える。
動作時は、上述したように、冷却流体Fが第1のキャプチャシェルフ240を満たす。次に、冷却流体Fは、第1のシェルフ240のへり242を、その最も低いポイント、すなわち低い方の部分303で越えてこぼれ出る。それぞれの低い方の部分303は、従って、冷却流体Fが、次のシェルフ240に向かってこぼれ出るときに、その冷却流体Fに対する排水路310を提供する。次のシェルフ240の高い方の部分302は、さらに、好ましくは、図9Bに最も良く示すように、前のシェルフ240の対応する低い方の部分303の下に配置される。さらに、高い方の部分302は、好ましくは、こぼれ出た冷却流体Fをよりよく捕捉するために、低い方の部分303を越えて、ローター壁233の反対側の内側に突き出ている。従って、冷却流体Fは、それが排水路310を通ってキャプチャシェルフ240の間をこぼれ出るときに、次のシェルフ240の高い方の部分302によって、そのシェルフ240のくぼみ241内に導かれて、そこで、安定な溜まりを形成する。
隣接するキャプチャシェルフ240間の冷却流体Fの安定な流れを、動作条件の広い範囲にわたって提供するために、へり242の低い方の部分303は、好ましくは、V字形の断面を有して形成される。代替的には、所定のキャプチャシェルフ240の低い方の部分303の深さは、一様なすなわち一定の深さではなく、2つ以上の深さにわたって変化させることができ、それによって、低い液体量率及び高い液体量率の両方において冷却流体Fのあふれを制御することができる。
図9Aを参照すると、各シェルフのへり242は、さらに、壁233の反対側にシェルフ面912を備えている。シェルフ面912の半径方向またはスパン方向の配向は、好ましくは、キャプチャシェルフ240の間の冷却流体Fの流量率を改善するように選択される。とりわけ、それぞれの低い方の部分303に関連する第1の面部912Aは、好ましくは、回転方向Rに対して前方に向けられている。すなわち、第1の面部912Aの、遠心力加速度Gに対して内側の部分916は、外側の部分918よりもローター壁233により近い。各第1の面部912Aを前方に傾けて設けることによって、冷却流体Fは、面部912Aに接触して保持され、冷却流体Fの加速効果を改善して、冷却流体Fが次のキャプチャシェルフ240に入るときに、その流れを制御することができる。シェルフ面912の配向は、また、ブレード壁233におけるコリオリの差分加速度(differential coriolis acceleration)を補償するように選択される。
図9A及び9Bに示す本発明の実施態様が、さらに、前述した防壁及びバッフル部を備えることができるということは明らかである。
これまでの説明は、本発明の特定の実施態様について述べたものである。しかしながら、説明した実施態様に対して、それらのいくつかのまたは全ての利点を達成しつつ、他の変更及び修正を行うことができるということは明らかであろう。従って、本発明の真の思想及び範囲内にある、そのような変更及び修正をすべて含むようにすることが、添付の特許請求の範囲の目的である。

Claims (37)

  1. 回転軸のまわりに回転するよう構成され、及び内部表面を画定する内部キャビティを有し、及び液化部から前記回転軸に対して半径方向の外側に配置された気化部を備える、気化冷却されるローターであって、該ローターが、さらに、
    前記回転軸からほぼ一定の半径に配置され、前記ローターの回転の間に生じる遠心力場において、前記内部キャビティ内に収容されている冷却流体を捕捉して、半径方向の外側に流すための、前記気化部内の少なくとも一つのキャプチャ手段であって、前記冷却流体の流れを制限して、前記気化部内の前記ローターの内部表面上に冷却流体を配分する、キャプチャ手段と、
    前記ローターの内部表面から外側に突き出て、当該ローターの内部キャビティ内に延びる、前記液化部内の流体の流れを減速させる手段
    とからなること。
  2. 前記減速手段が、前記流体の流れを横切る、前記ローターの内部表面上に配置された少なくとも一つの防壁からなる、請求項1の気化冷却されるローター。
  3. 前記キャプチャ手段が、さらに、
    各シェルフが、前記回転軸からほぼ一定の半径に配置されたへりと、流れている冷却流体を捕捉するための、該へりに隣接したくぼみ部を備える、半径方向に配列した複数のキャプチャシェルフからなる請求項2の気化冷却されるローター。
  4. 前記減速手段が、前記液化部内の複数の防壁から構成されており、各防壁が、前記回転軸からほぼ一定の半径に配置される、請求項1の気化冷却されるローター。
  5. 各防壁が、前記内部キャビティの周囲全体を周回して延びる、請求項4の気化冷却されるローター。
  6. 前記防壁が、波形状であり、かつ、前記冷却流体が前記ローターの前記液化部から前記気化部に流れるときに、該冷却流体の流れを一時的に遅くするか、または停止させるための複数のリッジを備える、請求項2の気化冷却されるローター。
  7. 前記防壁が、微細な網目のある遮蔽板から形成される請求項6の気化冷却されるローター。
  8. 前記防壁が、穴のあいた部材から形成される請求項6の気化冷却されるローター。
  9. 前記防壁が、多孔性部材から形成される請求項6の気化冷却されるローター。
  10. 回転軸のまわりに回転するよう構成され、及び液化部から該回転軸に対して半径方向の外側に配置された気化部を備える内部キャビティを有する、気化冷却されるローターであって、該ローターが、さらに、
    各キャプチャシェルフが、前記回転軸からほぼ一定の半径に配置されたへりと、冷却流体を捕捉するための該へりに隣接したくぼみを備える、前記気化部内に半径方向に配列した複数のキャプチャシェルフと、
    各キャプチャシェルフのへりに近接して半径方向に延びるバッフルであって、半径方向に流れる冷却流体が、前記キャプチャシェルフから吐き出されないようにするために周囲に延びる、バッフルと、
    半径方向に配列した隣接するシェルフ間に流体連絡を設けるための手段
    とからなること。
  11. 前記流体連絡手段が、隣接するキャプチャシェルフ間をほぼ半径方向に延びる、少なくとも一つのチャンネルから構成される、請求項10の気化冷却されるローター。
  12. 前記バッフルが穴をあけられていて、該バッフルが、各キャプチャシェルフのくぼみ内に前記冷却流体を保持して、気化した冷却流体からの蒸気が該バッフルを通過することができるようになっている、請求項10の気化冷却されるローター。
  13. 前記バッフルが通気性であって、該バッフルが、各キャプチャシェルフのくぼみ内に前記冷却流体を保持して、気化した冷却流体からの蒸気が該バッフルを通過することができるようになっている、請求項10の気化冷却されるローター。
  14. 前記少なくとも一つのチャンネルが、前記バッフルからずらされた円形の断面を有する、請求項11の気化冷却されるローター。
  15. 前記少なくとも一つのチャンネルが、前記バッフルと接触した丸みのついた断面を有する、請求項11の気化冷却されるローター。
  16. 前記少なくとも一つのチャンネルが、前記バッフルと接触した四角形の断面を有する、請求項11の気化冷却されるローター。
  17. 前記少なくとも一つのチャンネルが、前記バッフルと接触した細いスリット状の断面を有する、請求項11の気化冷却されるローター。
  18. 前記少なくとも一つのチャンネルが、前記バッフルと接触した浅い、長方形の断面を有する、請求項11の気化冷却されるローター。
  19. 前記少なくとも一つのチャンネルを出る前記冷却流体が、前記半径方向の配列における次のキャプチャシェルフのへりにぶつかるように、該少なくとも一つのチャンネルがほぼ半径方向に延びる、請求項11の気化冷却されるローター。
  20. 前記少なくとも一つのチャンネルが、前記半径方向の配列において、対応する前記キャプチャシェルフのへりに配置された入口と、その次のキャプチャシェルフのくぼみの上に配置された排出端部を備え、該チャンネルの該排出端部が、対応する前記入口よりも、該バッフルから周囲に離れて配置されるように傾けられている、請求項11の気化冷却されるローター。
  21. 前記少なくとも一つのキャプチャシェルフが、該少なくとも一つのキャプチャシェルフのへりを通って延びる一対のチャンネルを備え、各チャンネルが、前記半径方向の配列において、前記少なくとも一つのキャプチャシェルフのへりに配置された入口と、その次のキャプチャシェルフのくぼみの上に配置された排出端部を備え、
    前記2つのチャンネルの前記排出端部が、該2つのチャンネルの対応する前記入口よりも互いに近づくように、各チャンネルが向き合って傾けられている、請求項10の気化冷却されるローター。
  22. 前記冷却流体が、前記一対のチャンネルの前記排出端部を出ると、次のキャプチャシェルフ内の冷却流体をかき混ぜる、請求項21の気化冷却されるローター。
  23. 前記バッフルが、複数の半径方向に隔置されたパネルから構成される、請求項10の気化冷却されるローター。
  24. 気化した冷却流体からの蒸気が、前記バッフルを通って流れることができるように、前記パネルが配向されて、隔置される請求項23の気化冷却されるローター。
  25. 前記バッフルが、各キャプチャシェルフに関連するパネルから構成される、請求項10の気化冷却されるローター。
  26. 気化した冷却流体からの蒸気が、前記パネルを通って流れることができるように各パネルが配向される、請求項25の気化冷却されるローター。
  27. 回転軸のまわりに回転するよう構成され、及び液化部から前記回転軸に対して半径方向の外側に配置された気化部を備える内部キャビティを有する、気化冷却されるローターであって、該ローターが、さらに、
    各キャプチャシェルフが、前記回転軸からほぼ一定の半径に配置されたへりと、冷却流体を捕捉するための該へりに隣接したくぼみを有する、前記気化部内に半径方向に配列した複数のキャプチャシェルフと、
    冷却流体の流れが、前記キャプチャシェルフから吐き出されないように、各キャプチャシェルフのへりに近接して半径方向に延びるバッフルと、
    前記半径方向の配列内の隣接するキャプチャシェルフ間の流体連絡を可能とするために、各キャプチャシェルフを通ってほぼ半径方向に延びる少なくとも一つのチャンネルと、
    流体の流路を横切る、前記液化部内のローターの内部表面上に配置された少なくとも一つの防壁
    とからなること。
  28. 回転軸のまわりに回転するよう構成され、及び内部キャビティを画定するローター壁を有する、気化冷却されるローターであって、該内部キャビティは、液化部から前記回転軸に対して半径方向の外側に配置された気化部を備えており、該ローターが、さらに、
    各キャプチャシェルフが、前記回転軸からほぼ一定の半径に配置されたへりと、冷却流体を捕捉するための該へりに隣接したくぼみを有する、前記気化部内の前記ローター壁に沿って半径方向に配列した複数のキャプチャシェルフから構成されており、
    ここで、少なくとも一つのキャプチャシェルフのくぼみが、前記ローター壁に隣接した勾配のあるスロープを有し、この勾配のあるスロープが、前記液化部から離れるにしたがって内側に傾いていること。
  29. 回転軸のまわりに回転するよう構成され、及び液化部から前記回転軸に対して半径方向の外側に配置された気化部を備える内部キャビティを有する、気化冷却されるローターであって、該ローターが、さらに、
    前記内部キャビティを画定する壁と、
    前記ローターの対向する壁部の間に延びており、中央部のポイントと2つの端部を有する、半径方向に配列されたブリッジ構造であって、各ブリッジは、前記中央部のポイントが、前記端部よりも前記回転軸により近いように弓形に曲げられており、各ブリッジが、さらに、前記回転軸に対して該ブリッジの内側の面内に形成されたキャプチャグルーブを備えて、これによって、該グループが流れている冷却流体を捕捉するようする、ブリッジ構造
    とからなること。
  30. 各キャプチャグルーブが、くぼみと2つのエッジを画定し、前記配列されたブリッジ構造が、該配列の第1の列内にある各グループの前記2つのエッジが、前記回転軸に対して、該配列の第2の列内にある各グルーブのその次のくぼみの上にあるように配置される、請求項29の気化冷却されるローター。
  31. 前記液化部内の流体の流れを減速させるための手段からさらに構成される、請求項29の気化冷却されるローター。
  32. 前記減速手段が、流体の流れを横切る、前記ローターの内部表面上に配置された少なくとも一つの防壁から構成される、請求項31の気化冷却されるローター。
  33. 前記減速手段が、前記液化部内の前記ローターの対向する壁部の間に延びる、半径方向に配列されたブリッジ構造から構成され、中央部のポイントと2つの端部を有し、各ブリッジは、前記中央部のポイントが、前記端部よりも前記回転軸により近いように弓形に曲げられており、各ブリッジが、さらに、前記回転軸に対して該ブリッジの内側の面内に形成されたキャプチャグルーブを備えて、これによって、該グループが流れている冷却流体を捕捉するようにする、請求項31の気化冷却されるローター。
  34. 回転軸のまわりに回転するよう構成され、及び液化部から前記回転軸に対して半径方向の外側に配置された気化部を備える内部キャビティを有する、気化冷却されるローターであって、該ローターが、さらに、
    各キャプチャシェルフが、前記回転軸からほぼ一定の半径に配置されたへりと、冷却流体を捕捉するための、該シェルフのへりに隣接したくぼみを備える、前記気化部内に半径方向に配列した複数のキャプチャシェルフから構成されており、
    ここで、各キャプチャシェルフに関連するシェルフのへりが、少なくとも一つの低い方の部分と、少なくとも一つの高い方の部分を備えており、前記シェルフのへりの低い方の部分が、遠心力場の方向において、前記シェルフのへりの高い方の部分よりも前記回転軸から離れて配置され、これによって、キャプチャシェルフの間にこぼれ出る冷却流体が、前記シェルフのへりの前記低い方の部分の上を流れるようにすること。
  35. 次のシェルフのへりの高い方の部分が、前のシェルフのへりの低い方の部分に半径方向に整列しており、これによって、前記前のシェルフのへりの低い方の部分を越えてこぼれ出る冷却流体が、前記次のシェルフの高い部分に導かれる、請求項34の気化冷却されるローター。
  36. 少なくとも一つのシェルフのへりの低い方の部分が、V字形の断面を有する、請求項35の気化冷却されるローター。
  37. 各シェルフのへりが、該シェルフのへりの低い方の部分に関連する内側の面を有しており、該内側の面が、回転方向に対して前方に傾けられて配向されている、請求項34の気化冷却されるローター。
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