JP4234975B2 - 短繊維入りゴムシート体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、短繊維を厚さ方向に配向させた短繊維入りゴムシート体、特にタイヤのトレッドゴムとして好適な短繊維入りゴムシート体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
スタッドレスタイヤでは、氷上性能を向上させるために、路面掘り起こし摩擦や粘着摩擦を増加させる必要があり、従来から、トレッドゴムの氷路面に対する摩擦係数を上げる種々の研究が試みられている。その一つとして、トレッドゴム中に短繊維を配合することが提案されており、特に短繊維をトレッド厚さ方向(タイヤ半径方向)に配向させることにより、路面掘り起こし能力が高まり、より高い摩擦力が得られることが知られている。
【0003】
ところで、図5(A)に示すように、トレッドゴムは、通常、カレンダーロールや押出し機によって連続的に押出し成形される帯状のゴム部材g1により形成される。そのため、ゴム中の短繊維fは、ゴム流れによって押出し方向(長さ方向)に沿って配向してしまい、このゴム部材g1をそのままトレッドゴムTgに使用した場合、短繊維fはタイヤ周方向に沿って配向してしまうこととなる。
【0004】
そこで、短繊維を厚さ方向に配向させるために、図5(B)の如く、押出し成形される薄いゴム部材g2を、トレッドゴムTgの厚さtに相当する振幅でジグザグ状に折り畳む手法(特許文献1)、及び図5(C)の如く、薄いゴム部材g2をトレッドゴムTgの厚さtに相当する巾で切断し、得られた切断片g2aを並び替えて重ね合わせる手法(特許文献2)などが提案されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平2001−310396号公報
【特許文献2】
特開2002−210842号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしこれら手法では、ゴム部材g2の折り畳み、及び切断片g2aの重ね合わせに高い精度が要求されるため、作業に多くの時間と労力が必要となり、量産化を難しいものとしていた。又表面に凹凸ができる他、外形寸法にバラツキが生じるなど、寸法精度及び表面性に優れる高品質のトレッドゴムTgを安定して形成することが難しいという問題がある。
【0007】
そこで本発明は、押出し成形される棒状ゴム基体を、押出し方向に小間隔で順次切断して平板状のペレットを形成し、このペレットをプレス金型のゴムシート体成形用キャビティ内に複数層に敷き詰めた後、プレス成形することを基本として、短繊維を厚さ方向に配向させた短繊維入りゴムシート体を、容易にかつ効率よくしかも優れた寸法精度及び表面性を有して形成でき、その量産化に大きく貢献しうる短繊維入りゴムシート体の製造方法の提供を目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本願請求項1の発明は、短繊維をゴムシート体の厚さ方向に配向させた短繊維入りゴムシート体の製造方法であって、
短繊維入りの未加硫ゴム材料を押出して前記短繊維を実質的に押出し方向に配向した棒状ゴム基体を形成する押出し工程と、
この棒状ゴム基体を押出し方向に所定の間隔で順次切断することにより前記短繊維が厚さ方向に配向する平板状の複数のペレットを形成するペレット形成工程と、 ゴムシート体を成形しうるキャビティを凹設したプレス金型の前記キャビティ内に、前記ペレットを複数層に敷き詰めて配置することによりペレット積層体を形成する積層工程と、
このペレット積層体を前記キャビティ内でプレス成形することにより各ペレットが一体に接合しかつ短繊維が厚さ方向に配向するゴムシート体を形成するプレス工程とを含むことを特徴としている。
【0009】
又請求項2の発明では、前記ペレットは、円盤状をなすことを特徴としている。
【0010】
又請求項3の発明では、前記ゴムシート体は、タイヤ製造用のトレッドゴムであることを特徴としている。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の一形態を、図示例とともに説明する。
図1、2は、本発明の短繊維入りゴムシート体の製造方法を概念的に示す工程図である。
【0012】
図1、2において、短繊維入りゴムシート体の製造方法は、
(1) 短繊維fが実質的に押出し方向に配向した棒状ゴム基体G1を形成する押出し工程S1と、
(2) 前記棒状ゴム基体G1を、押出し方向に所定の間隔tで順次切断することにより、前記短繊維fが厚さ方向に配向する平板状のペレットG2を形成するペレット形成工程S2と、
(3) 前記ペレットG2を、プレス金型2のキャビティ3内に敷き詰めて配置することにより、ペレット積層体G3を形成する積層工程S3と、
(4) 前記ペレット積層体G3を、前記キャビティ3内でプレス成形することにより、各ペレットG2が一体に接合しかつ短繊維fが厚さ方向に配向するゴムシート体G0を形成するプレス工程S4と、を含んで構成される。
なお本例では、前記ゴムシート体G0がタイヤ製造用のトレッドゴムTgとして形成される場合を例示している。
【0013】
詳しくは、押出し工程S1では、例えばスクリュー押出機などの周知構造のゴム押出機を用い、短繊維入りの未加硫ゴム材料を押出し成形することにより、短繊維fが実質的に押出し方向に配向した棒状ゴム基体G1を連続的に形成する。この棒状ゴム基体G1は、積層工程S3におけるペレットG2の敷き詰め作業性の観点から、断面円形形状の棒状体として押出し成形するのが好ましい。
【0014】
なお短繊維入りの未加硫ゴム材料としては、例えばゴム成分100重量部に対して短繊維fを0.5〜20重量部を配合するのが望ましく、その他適宜必要な添加剤、加硫促進剤などの薬品と合わせて配合され混練される。前記ゴム成分としては、ジエン系ゴムが好ましく、例えば天然ゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴムなどの1種又は2種以上をブレンドして用いることができる。
【0015】
又前記短繊維fとして、有機物、無機物のいずれも採用しうる。しかし、本例の如くトレッドゴムTgの場合には、路面を傷つける恐れがなく、かつゴムとの摩耗速度の差が比較的小さいカーボンファイバ、グラスファイバ等の非金属の短繊維fを使用することが、氷路面に対する優れた接地性を確保する上でも好ましいものとなる。特に、前記グラスファイバーまたはカーボンファイバーは、ゴムを混練りする過程で適度な長さに折れて短くなるため、ゴム中に均一に分散および配向させやすい点でも好ましい。
【0016】
次に、ペレット形成工程S2では、前記棒状ゴム基体G1を、押出し方向に所定の間隔tで順次切断し、平板状(本例では円盤状)のペレットG2を形成する。このとき、前記ゴム押出機の前端に、カッタ歯を有する切断具を取り付け、ゴム押出機の吐出口から押出される棒状ゴム基体G1を前記吐出口の位置で順次切断するのが、切断精度及び切断効率などの観点から好ましい。なおゴム押出機の前端に、所謂ペレタイザーを設けてペレットG2を形成することもできる。
【0017】
又積層工程S3では、ゴムシート体成形用のキャビティ3を割面sに凹設したプレス金型2(図3に示す)を用い、下金型2L側のキャビティ3内に、前記ペレットG2を複数層に敷き詰めて配置し、これによってペレット積層体G3を形成する。又前記プレス金型2は、下金型2Lと上金型2Uとからなる上下分離の割金型であって、各割面sを当接させることにより前記キャビティ3、3からなる閉じた成形室4を形成する。なお下金型2Lのみにキャビティ3を形成することもできる。
【0018】
ここで、前記ペレット積層体G3では、ペレットG2をできるだけ密に配置しすることが好ましい。そのために、本例の如くペレットG2が円盤状の場合には、図4(A)に示す如く、各ペレットG2を行方向(図ではゴムシート体の巾方向)及び列方向(図ではゴムシート体の長さ方向)に夫々揃えて配列する、或いは図4(B)に示す如く、ペレットG2を一行毎に或いは一列毎にペレットG2の半径分位置ズレさせて配列させることが好ましい。なお前者の場合には、ペレットG2、G2間の隙間Y内に、充填用の補助ゴムKを挿入するのがさらに好ましい。この補助ゴムKとしては、ペレットG2と同様、短繊維を配向させたものであっても良く、又短繊維を含まないゴムのみで形成されたものでも良い。
【0019】
又本例において前記ペレットG2を円盤状としたのは、これによって配置の向きに規制がなくなり、自在な向きで配置しうるなど敷き詰め作業効率を向上できるからである。しかし、図4(C)の如く、ペレットG2を正方形状等の矩形状に形成することもでき、係る場合には、ペレットG2のより密な配置が可能となる。
【0020】
又前記ペレットG2では、その直径D(正方形状のときはその巾D)の整数倍がゴムシート体G0の所定の巾Wとなるように、予め、前記押出し工程S1において前記直径Dが設定される。又ペレット積層体G3では、その実質的な体積V(隙間の容積を含まない)が、ゴムシート体G0の体積V0(プレス金型2における成形室4の容積に相当)よりも大となるように、その積層高さH1及び積層数が設定される。なお前記ペレットG2の厚さtである前記切断の前記所定の間隔tは、その積層高さH1がゴムシート体G0の所定の厚さt0(前記成形室4の高さに相当)100〜150%となる厚さが好ましく、又ペレットG2の取り扱い性の観点から、5mm以上とするのも好ましい。
【0021】
次に、プレス工程S4では、前記ペレット積層体G3を前記成形室4内でプレス成形する。このとき、プレス圧力により、各ペレットG2が一体に接合されるとともに、ペレットG2のゴムの一部が流動して前記隙間Y内に充填される。その結果、空気溜まりのないゴムシート体G0を形成できる。そのために、前記プレス金型2には、空気及び余剰のゴムを排出するための排出孔(図示しない)を形成する。又前記プレス工程S4では、プレス成形における前記ゴムの流動がわずかであるため、短繊維fの配向性が損なわれることがなく、従って、ゴムシート体G0において、その厚さ方向に沿った短繊維の配向を維持させることができる。
【0022】
このように、本発明のゴムシート体の製造方法は、短繊維fが厚さ方向に配向するペレットG2を、キャビティ3内で複数層に敷き詰めてペレット積層体G3を形成した後、該ペレット積層体G3を所定サイズのゴムシート体G0にプレス成形している。
【0023】
従って、プレス成形中のゴムの流動が抑えられ、短繊維の厚さ方向への配向を保持することができる。又プレス成形により優れた寸法精度及び表面性が確保されるため、ペレットG2の敷き詰め作業に高い精度が不要となり、作業効率が向上する。そしてこれらの相乗作用によって、短繊維が厚さ方向に配向するゴムシート体を高品質かつ安定して効率よく製造することができる。
【0024】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【0025】
【発明の効果】
本発明は叙上の如く構成しているため、短繊維を厚さ方向に配向させたゴムシート体を、容易にかつ効率よくしかも優れた寸法精度及び表面性を有して形成でき、その量産化に大きく貢献しうる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の短繊維入りゴムシートの製造方法における押出し工程、ペレット形成工程及び積層工程を概念的に示す工程図である。
【図2】前記製造方法におけるプレス工程を示す工程図である。
【図3】それの用いるプレス金型を略示する斜視図である。
【図4】(A)〜(C)は、キャビティ内でのペレットの配置を例示する線図である。
【図5】(A)〜(C)は、従来技術を説明する線図である。
【符号の説明】
2 プレス金型
3 キャビティ
f 短繊維
G0 ゴムシート体
G1 棒状ゴム基体
G2 ペレット
G3 ペレット積層体
S1 押出し工程
S2 ペレット形成工程
S3 積層工程
S4 プレス工程
Tg トレッドゴム
Claims (3)
- 短繊維をゴムシート体の厚さ方向に配向させた短繊維入りゴムシート体の製造方法であって、
短繊維入りの未加硫ゴム材料を押出して前記短繊維を実質的に押出し方向に配向した棒状ゴム基体を形成する押出し工程と、
この棒状ゴム基体を押出し方向に所定の間隔で順次切断することにより前記短繊維が厚さ方向に配向する平板状の複数のペレットを形成するペレット形成工程と、
ゴムシート体を成形しうるキャビティを凹設したプレス金型の前記キャビティ内に、前記ペレットを複数層に敷き詰めて配置することによりペレット積層体を形成する積層工程と、
このペレット積層体を前記キャビティ内でプレス成形することにより各ペレットが一体に接合しかつ短繊維が厚さ方向に配向するゴムシート体を形成するプレス工程とを含むことを特徴とする短繊維入りゴムシート体の製造方法。 - 前記ペレットは、円盤状をなすことを特徴とする請求項1記載の短繊維入りゴムシート体の製造方法。
- 前記ゴムシート体は、タイヤ製造用のトレッドゴムであることを特徴とする請求項1又は2記載の短繊維入りゴムシートの製造方法。
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