JP4234838B2 - 超音波流量計 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、超音波の送信器と受信器とを有し、呼吸気の流量を測定する超音波流量計に関する。
【0002】
【従来の技術】
酸素消費量計は、運動時に体内で消費される酸素量や体内から排出される二酸化炭素量を測定することを目的として使用され、肺機能評価、代謝量の測定、基礎体力の解析、最適運動負荷量の選択などに有力なデータを提供する医療評価機器として定着している。
以前の酸素消費量計は、ある時間の運動負荷に対して、その時間内の平均的な運動量に対しての酸素消費量が測定されていたが、近年になって、より詳細な解析が必要になり、ブレスバイブレス方式と呼ばれる、一呼吸毎のデータが要求されるようになってきた。
酸素消費量計は、主に、呼吸気の流量計、二酸化炭素濃度計、酸素濃度計から構成され、上記のように一呼吸毎のデータが要求されるようになると、これらの構成要素についてもより高機能化が求められるようになってきている。
【0003】
これまでに酸素消費量計の流量計として、実用化されているものは、熱線式流量計、層流式流量計、タービン式流量計がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の各種流量計は以下のような問題点がある。
熱線式は、熱伝達特性を良好にするために、機械的に強固な構造を取り難い。
また、層流式は、微小な細管を束ねた絞り機構により呼吸気の流れを強制的に層流にするために、圧力損失が大きい。このため、呼吸気の量が、実際よりも大幅に低下することがある。加えて、呼気ガスに含まれる飽和蒸気が細管に結露し、閉塞するという不具合が懸念される。
さらに、タービン式は、回転する可動部の経時的な劣化が避けられず、また機械動作の慣性により応答性が低く、特に、呼気と吸気が切り替わったときに正確に流量を測定できない懸念がある。
また、これらの流量計は、流路中に呼吸気の流れの障害となる構造を配置せざるをえないので、使用後の滅菌作業に適さない構造となっている。
【0005】
一方、一般に使用されている流量計として超音波流量計があり、工業用や実験用に広く使用されている。この超音波流量計は、流体が通る管路に1組以上の超音波送受信器を設け、送信器から発せられた超音波が受信器によって受信されるまでの伝播時間に基づいて流体の流量を測定するものである。
具体的には、次のように2種類知られている。
1つは、2組の送受信器を、管路中の異なる箇所に設け、一方の組の送信器から他方の組の受信器に向けて、次に前記他方の組の送信器から前記一方の組の受信器に向けて、パルス波を発し、それぞれの組の受信器にパルス波が伝播する時間の差に基づいて流量を求めるものである。
もう1種類は、送信器から連続波としての超音波を発し、複数の受信器が受信する受信波の位相差に基づいて検出するものである。
しかしながら、これら超音波流量計のうち前者は、計測される時間差がごくわずかな値であることから、測定には種々の工夫を要し、複雑な回路構成となり、高価であるので、酸素消費量計には適用しにくい。
また、後者は、連続波であることから、管内の反射波や漏洩波が問題となり、目的とする送信器から直接送信された超音波のみS/N比よく検出することが困難であった。このため、測定対象となる流体は、音響インピーダンスが大きく、伝播する超音波の受信時の振幅が大きい液体に限定され、流体として呼吸気が対象である酸素消費量計には適用しにくい。
【0006】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、上記の各種問題を解決し、酸素消費量計に好適に用いることができる超音波流量計を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、呼吸気が流れる流路の壁部の開孔に、1個の超音波送信器とこの超音波送信器に対向するように3個の超音波受信器とが設けられ、前記3個の超音波受信器のうち第1の超音波受信器は、この超音波受信器と前記超音波送信器とを結ぶ直線が呼吸気の流れる方向に対して+θの角度を有するように設置され、第2の超音波受信器は、この超音波受信器と前記超音波送信器とを結ぶ直線が前記方向に対して−θの角度を有するように設置され、第3の超音波受信器は、この超音波受信器と前記超音波送信器とを結ぶ直線が前記方向に対してほぼ直交するように設置され、呼吸気が前記流路を流れているときに前記超音波送信器より超音波をバースト波として送信し、前記第1の超音波受信器と前記第2の超音波受信器との受信信号の位相差である第1の位相差と、前記第3の超音波受信器の受信信号と基準波との位相差である第2の位相差とを検出し、前記第1の位相差と前記第2の位相差に基づいて、前記呼吸気の流量を求めることを特徴とする超音波流量計である。
【0008】
本発明によれば、呼吸気が流れる流路の壁部の開孔に、1個の超音波送信器と3個の超音波受信器を設置した超音波流量計であることから、従来酸素消費量計に用いられていた熱線式、層流式、タービン式による流量計が有する各種問題点を解決することができる。すなわち、流路の壁部の開孔に受信器、送信器を埋め込んだ構造であるので、構造が単純で流路上障害物がないことから、機械的に強固な構造にしやすく、圧力損失が生じず通常の呼吸気の勢いそのままで計測でき、飽和蒸気などで閉塞するといったことも生じにくい。また、滅菌操作も容易である。さらに、タービン式のように機械的な動作がほとんどないことから、経時的な劣化もほとんどなく、応答性の点でも改善される。
【0009】
また、本発明は、3つの受信器を用い2種類の位相差を検出する方式なので、従来の時間差方式の超音波流量計と比較して、簡単な回路構成で済み、コストを抑えることができる。さらに、送信波としてバースト波を用いているので、連続波を用いていた従来の位相差方式の超音波流量計と比較して、目的とする受信波のみ効率よく検出することが可能となり、流体が気体であっても十分に適用可能となる。
【0010】
ここで、バースト波とは、限られた一定時間連続する連続波であって、連続波と連続波との間がある程度間隔がある波のことである。また、角度θは、90度以外の値である。さらに、基準波とは、呼吸気の流れがないときに送信器より発信されたバースト波である。この場合、基準波の位相データについては、実際に受信器により受信された受信信号から得てもよいし、計算により求めることも可能であるので信号発生回路等から得るように構成してもよい。
【0011】
また、本発明は、上記の超音波流量計において、前記第1の超音波受信器と前記第2の超音波受信器の受信信号の位相を比較しその結果を出力する第1の位相比較器と、前記第3の超音波受信器の受信信号と前記基準波に相当する基準波信号の位相を比較しその結果を出力する第2の位相比較器と、前記第1の位相比較器の出力のうち、前記超音波送信器から送信され呼吸気を伝播してきた前記バースト波が受信されると予想される時間帯に、前記第1及び第2の超音波受信器により受信された信号に対応する出力のみサンプリングする第1のサンプルホールド回路と、前記第2の位相比較器の出力のうち、前記時間帯に前記第3の超音波受信器により受信された信号に対応する出力のみサンプリングする第2のサンプルホールド回路と、を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、サンプルホールド回路により、位相比較器の出力のうち、前記超音波送信器から送信され呼吸気を伝播してきたバースト波が受信されると予想される時間帯に受信された信号に対応する出力のみサンプリングされることから、受信信号のうち流路の壁部を伝播する信号や反射信号等の各種ノイズが除かれて、目的とする信号のみ取り出され、以後の演算処理を正確に行うことができる。
【0013】
また、本発明は、上記の超音波流量計において、前記3個の超音波受信器により前記バースト波が受信されない時間帯に、前記第1の位相比較器に対して、90度の位相差を有する2つの模擬信号を入力し、前記第2の位相比較器に対して、前記基準波信号と、この基準波信号と90度の位相差を有する模擬信号を入力することを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、バースト波が受信されていない時にも、第1および第2の位相比較器には、90度の位相差を有する2つの信号が入力されることから、これにより、第1および第2の位相比較器の動作を安定化させることができる。
【0015】
また、本発明は、上記の超音波流量計において、前記第1の位相比較器の出力のうち、直流成分をカットするフィルタを備えることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、フィルタにより第1の位相比較器の出力のうち直流成分をカットすることから、この超音波流量計に備えられる回路内部で発生するオフセット電圧の影響や、信号の時間的な不安定さによる演算誤差の影響が除かれ、第1の位相差について安定した出力を取り出すことができる。
【0017】
本発明に係る超音波流量計は上記のように優れた作用・効果を有することから、酸素消費量計に好適に用いることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態について、図1〜図5の図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の超音波流量計の基本的な構成を示す図である。図1の超音波流量計1は、酸素消費量計に備えられるもので、マスク3、プラスチック製の流路2とから主に構成され、流路2の壁部に形成された複数の開孔(図2に1つだけ図示)に、1つの送信器(超音波送信器)4と、3つの受信器(超音波受信器)5a、5b、5cが対向するように設けられている。受信器(第3の超音波受信器)5bは、送信器4の正面に位置するように設けられ、受信器5a、5c(第1、第2の超音波受信器)は、送信器4と受信器5a、5cを結ぶ直線が流路2の呼吸気の流れの方向に対して、±θの角度を有するように、受信器5bの左右に設けられている。
送信器4は一定の間隔で超音波を発し、その超音波を受信器5a、5b、5cが受信するようになっている。送信器4が発する超音波は、限られた一定時間連続する連続波であって、連続波と連続波との間がある程度間隔があり、ここではバースト波という。
【0019】
送信器4と、受信器5a〜5cは、ほぼ同様の構造を有し、図2にそれらの構造の概略を示した。
送信器4(受信器5a〜5c)は、流路2内の開孔2a内に填め込まれた金属ホルダ12内部に、超音波を発する圧電素子14が接着剤13を介して固定されてなるもので、防滴構造となっている。金属ホルダ12と開孔2aの間は、ゴム等の材質のOリング11,11によりシールされている。開孔2aの上部、すなわち金属ホルダ12の上部は、ゴム等からなる弾性板10によって被われ、この弾性板10上は固定板18によって被われている。そして、金属ホルダ12は、固定板18、弾性板10を貫通して流路2の壁部2bにねじ込まれた締結ネジ17,17により、開孔2a内に固定されている。圧電素子14と接続されるリード線18、18は弾性板10、固定板18を貫通して送受信器の外部に延出している。なお、前記弾性板10は、流路2を経由して送受信器間を伝播する超音波成分を軽減するため、設けられている。
【0020】
ここで、図1で示す送信器4から受信器5a〜5cに送信される超音波の伝播について、次のように解析される。
この超音波流量計1では、超音波を発生させる際、前記圧電素子13に対して、駆動電圧を印加し(図4(a))、それを受けて、発信器4から(送信波)は、図4(b)に示すように、一定時間連続したバースト波としての超音波が発せられる。
【0021】
ある時刻に送信器4からバースト波が発生した時、流体(ここでは吸気)を伝播して受信器5a〜5cに超音波が到達するまでの時間は、受信器5a、5b、5cそれぞれに到達した時間を、Ta、Tb、Tcとすると、
Ta=L/(C1+V1cosθ) (1)
Tc=L/(C1−V1cosθ) (2)
Tb=D/C1 (3)
である。ここで、Lは送信器4と受信器5a、5cとの距離、Dは流路2の径、C1は吸気時の音速、V1は吸気の流速である。
また、Ta−TcをΔTとすると、
ΔT=−2Dcotθ・V1/(C12−V12cos2θ) (4)
ここで、C12≫V12cos2θであるから、
ΔT=−2Dcotθ・V1/C12 (5)
となる。
【0022】
呼気時において、受信器5a、5b、5cそれぞれに到達した時間を、Ta’、Tb’、Tc’とすると、上記と同様に表され、
Tb’=D/C2 (6)
ΔT’=2Dcotθ・V2/C22 (7)
である。ただし、C2は呼気時の音速、V2は呼気の流速、ΔT’=Ta−Tcである。
【0023】
式(5)、式(7)から明らかなように、呼吸気の流速V1、V2は、ΔT、ΔT’と、C1、C2と、図1に示すD、θの値から、求めることができる。
【0024】
前述のように、送信波が限られた一定時間連続であることから、受信器5a〜5cが受信する超音波(受信波)もある程度の時間連続である。その受信波が連続している時間内における、受信器5a、5cが受信する受信波の位相差(第1位相差とする)Δφ(吸気時)、Δφ’(呼気時)は、受信波の角周波数をωとすると、(8)式、(9)式のように表すことができる。
Δφ=ωΔT (8)
Δφ’=ωΔT’ (9)
本実施の形態では、時間差ΔT、ΔT’を、これらをω倍した第1位相差Δφ、Δφ’として検出し、高感度に検出できるようになっている。
【0025】
そして、受信器5bが吸気の流れがあるときに受信した受信波と、基準波との位相差をΔφC1とし、呼気の流れがあるときに受信した受信波と基準波との位相差をΔφC2とすると、
ΔφC1=ωΔTb (10)
ΔφC2=ωΔTb’ (11)
となる。
【0026】
後述する信号処理回路80においては、前記基準波は、校正時の受信信号に対して90度の位相差になるように設定されている。よって、実際に位相比較器36(図3)の出力であるΔφC1について、吸気の場合を例にすると、
となる。ただし、C0は機器の流量校正時の音速(既知)で、C1=C0+ΔC1である。また、ΔC1はC0に対する音速の変化幅を表し、C0≫ΔC1である。
すなわち、位相比較器36の出力は音速の変化(ΔC1)に対応するものである。C0は既知であることから、これによりC1は算出される。呼気の場合のΔφC2も同様に求められる。
なお、当然のことながら、基準波の音速は予想される呼吸気の音速変化幅のほぼ中央付近に選択されることが望ましい。
【0027】
そして、第2位相差ΔφC1、ΔφC2から音速C1、C2が、第1位相差Δφ、Δφ’からΔT、ΔT’が求められると、前述のように、式(5)あるいは式(7)より、流速V1、V2が求められるようになっている。
【0028】
図3は、超音波流量計1の信号処理回路80の構成を示すブロック図である。この信号処理回路80は、超音波を送受信し、それにより、上記で説明したΔφ、Δφ’、ΔφC1、ΔφC2を検出するものである。
信号処理回路80は、主に、ブロック50、60、70とから構成される。
ブロック50は、送信器4に超音波を発信させるとともに、各種演算用信号および制御信号を発生する機能を有する。
ブロック60は、主に、受信器5a、5b、5cが受信した受信波を波形整形する機能を有する。
また、ブロック70は、主に、上記位相差Δφ、Δφ’、ΔφC1、ΔφC2に対応する信号のみを取り出す機能を有する。
【0029】
次に、図3の各部の機能を、信号処理回路80の動作と関連づけながら説明する。
はじめに、Δφ、Δφ’の検出について説明する。
まず、信号発生回路23からの指示信号に基づき、駆動回路22から図4(a)に示すような大きな振幅を有し一定時間連続する駆動電圧が、発振器21で決定される周期で、送信器4に対して印加される。ここで駆動電圧が印加される周期は、流路2内の反射波が十分に減衰し受信器5a〜5cによって受信されなくなるような間隔であり、通常、10〜20m秒である。
駆動電圧が印加されると送信器4からは、図4(b)に示すような連続した波形を有するバースト波が発せられ、受信器5a〜5cによって受信される。
受信器5a、5cによって受信されると、受信信号はブロック60の増幅器24、30で増幅され、増幅器24の出力は移相器25を介して波形整形回路26に送られ、増幅器30からの出力は波形整形回路31に送られる。波形整形回路26、31は、入力された波形を、整形し矩形波に変換する。ここでの矩形波の立ち上がりの時間は、吸気の場合Ta、Tcに相当し、呼気の場合Ta’、Tc’に相当する。
【0030】
波形整形回路26,31から出力された矩形波は、ブロック70の位相比較器(第1の位相比較器)32に入力する。この位相比較器32では、「ωΔT」あるいは「ωΔT’」なる演算、つまりΔφまたはΔφ’を求める演算処理が行われる。この演算処理において、連続した入力波の場合、リニアな出力が得られる入力位相差は180°の範囲に限定される。よって、流量(呼吸気)ゼロ時の動作基準点を90°とすると、入力範囲を最も大きく確保することができる。
受信器5aと受信機5cは送信器4に対して等しい距離に位置することから、流量ゼロの時には、受信器5a、5cの受信波は同相である。そこで、ブロック60に移相器25を設け、位相比較器32において流量ゼロの時に入力の位相差が90°になるように、受信器5cの受信波の移相を移相器25によりシフトさせるようになっている。
【0031】
なお、送信器4から発せられる超音波はバースト波であることから、受信信号のみを位相比較器32へ入力するように構成すると、入力信号が離散的なものになってしまい、ほとんどの時刻では入力信号はないことになってしまう。そこで、位相比較器32の動作を安定化するため、入力信号がないときには、前記信号発生回路23から前記波形整形回路26、31に対して、信号線P1、P2に示すように、90°の位相差を有する模擬信号を入力するようになっている。
このような模擬信号を入力することによって、図5に示すように位相比較器32には常に信号が入力することになり、受信器5a、5cが受信波を受信していないときには、図5中の点線で示すように、90°位相がずれた信号が入力し、受信器5a、5cが受信波を受信すれば、図5中の実線で示すように、前記位相差ΔφまたはΔφ’を有する信号が入力する。
【0032】
位相比較器32において求められたΔφ、Δφ’に対応する信号は、ローパスフィルタ33に送られる。該ローパスフィルタ33は、位相比較器32から出力された矩形状の波形をアナログ電圧に変換し、サンプルホールド回路34に出力する。
【0033】
サンプルホールド回路34は、ローパスフィルタ33から入力された信号のうち、目的とする、呼吸気を伝播した信号位相差に比例した信号のみをサンプルホールドするものである。
受信信号には、図4(c)に示すように、目的とする信号成分(B部分)の他に、誘導ノイズや流路2を構成する管を介して伝播するノイズ(A部分)、流路2壁部からの反射ノイズ(C部分)などが含まれている。しかし、図4からも明らかなように、A部分のノイズは駆動電圧(図4(a))とほぼ同時刻に受信され、またC部分のノイズは流路2内を径方向において3回以上伝播した後に受信されることから、目的のB部分の信号と、時間的に異なる時間に受信される。そこで、サンプルホールド回路34は、位相比較器32の出力のうち、目的とするB部分の信号が受信されると予想される時間帯に、受信器5a、5cにより受信された信号に対応する出力のみサンプリングする。
【0034】
このサンプルホールド回路34が前記サンプルホールドを行うタイミングと時間は、前記信号発生回路23からのサンプルホールド信号(信号線P5)に従っている。このサンプルホールド信号は図4(d)に示すタイミングと時間で出力される。図4(d)で示す、t1、t2は、計算上は、t1=L/C1あるいはt1=L/C2、t2=3D/C1あるいはt2=3D/C2であるが、前記圧電素子14からの超音波の発生が、慣性による影響で図4(b)のように駆動電圧の発生に対して少し遅れて生じ急激に立ち上がらないことや、あるいは接着剤13や金属ホルダ12の影響等も考慮し、前記計算結果よりやや大きな値に設定される。
【0035】
サンプルホールド回路34から出力された信号は、DCカット回路35に送られる。DCカット回路35は、直流成分である低周波数成分(カット周波数をfc以下とする)をカットし、交流成分のみ通過させるフィルタとしての役目を担う。呼気と吸気では、流れの方向が逆であり、流速(流量)を求めるためには、交流成分のみでよいため、このような処理を行うことができる。
このDCカット回路35における処理により、回路内部で発生するオフセット電圧の影響や、ブロック70で発生する各種信号の時間(1/fc以上)に対する不安定さによる演算誤差の影響が除去される。
ここで、前記fc値としては、想定される安静時の最低呼吸周波数に対して十分に小さい値が設定される。
【0036】
DCカット回路35から出力された信号は、A/D(アナログ・デジタル)変換器39に入力し、デジタル値に変換される。
【0037】
次に、ΔφC1、ΔφC2の検出について説明する。
これは、既に述べたように、基準波と受信器5bの受信信号を比較して、両者の位相差を求めることである。信号処理回路80の各部で行われる具体的な処理は、前記のΔφ、Δφ’を求める場合とほぼ同様である。以下には、Δφ、Δφ’を求める場合とは異なる点を中心に述べる。
受信器5bにより受信された信号は、増幅器27で増幅され、移相器28で基準波と90°位相がずれた信号に変換される。次に、波形整形回路29で矩形波に整形され、一方、受信器5bからの受信信号がないときには、信号線P3で示すように、波形整形回路29に、基準波に対して90°の位相差を有する模擬信号が入力される。
【0038】
次に、位相比較器(第2の位相比較器)36に対して、信号線P4に示すように、信号発生回路23より基準波に対応する基準波信号が出力される。これにより、波形整形回路29から出力された信号と基準波とが比較され、ωΔTb(ωΔTb‘)を求める演算処理が行われる。なお、受信信号が位相比較器36に入力していないときにも、波形整形回路29を介して基準波に対して90°位相がずれた模擬信号が入力されることから、位相比較器36には、基準波信号と模擬信号の2つの信号が入力する。
位相比較器36における比較結果がローパスフィルタ37に出力され、サンプルホールド回路38を介して、A/D変換器40に出力され、該A/D変換器40においてデジタル値に変換され、音速C1、C2の演算に用いられる。サンプルホールド回路38の機能は、前記サンプルホールド回路34と同様であり、信号発生回路23からのサンプルホールド信号(信号線P6)に基づいて、ノイズ以外の受信信号のみサンプリングするようになっている。
【0039】
そして、本実施の形態の超音波流量計では、A/D変換器39、40からのデジタルデータに基づき、流速V1、V2が求められ、流速V1、V2に、流路2の断面積を乗じることによって、流量を求めるようになっている。
【0040】
なお、超音波流量計1で、毎秒ごとに得られる信号のサンプル数は、50〜100個であり、呼吸気流量の変化を再現するために十分な数である。
【0041】
以上の超音波流量計1によれば、流路2の壁部の開孔2a内に送信器4と受信器5a、5b、5cを埋め込んだ単純な構造であることから、従来の酸素消費量計に用いられていた熱線式、層流式、タービン式による流量計が有する各種問題点を解決することができる。
すなわち、構造が単純で流路上障害物がないことから、機械的に強固な構造にしやすく、圧力損失が生じず通常の呼吸気の勢いそのままで計測でき、飽和蒸気などで閉塞するといったことも生じにくい。また、滅菌操作が容易である。さらに、機械的な動作部がないことから、経時的な劣化もほとんどなく、応答性も改善される。
【0042】
また、3つの受信器5a〜5cを用い位相差を検出する方式なので、従来の時間差方式の超音波流量計と比較して、簡単な回路構成で済み、コストも抑えることができる。
さらに、送信波としてバースト波を用いているので、連続波を用いていた従来の位相差方式の超音波流量計と比較して、目的とする受信波のみ効率よく検出することが可能となり、流体が気体であっても十分に適用できる。
【0043】
さらに、信号発生回路23からのサンプルホールド信号にしたがって、サンプルホールド回路34、38により、位相比較器32、36の出力のうち、呼吸気中を伝播した前記バースト波が3個の超音波受信器5a〜5cによって受信されると予想される時間帯に受信された信号のみサンプリングされ、演算処理を正確に行うことができる。
【0044】
加えて、信号発生回路23からの模擬信号にしたがって、位相比較器32、36には受信信号が受信されていない時にも、90度の位相差を有する2つの信号が入力するように構成され、これにより、位相比較器32、36の動作が安定化する。
【0045】
また、DCカット回路35により、位相比較器32の出力のうち直流成分がカットされることから、信号処理回路80内で発生するオフセット電圧の影響や、信号発生回路23から出される信号についての時間的な不安定さによる演算誤差の影響が除去される。
【0046】
以上のように、超音波流量計1は、従来の流量計にはない顕著な作用・効果を有することから、酸素消費量計に好適に用いることができる。
【0047】
なお、本発明の超音波流量計は、特に、酸素消費量計に好適に用いることができるものであり、酸素消費量計としては、さらに酸素濃度計、二酸化炭素濃度計、呼吸気を採取するサンプリング装置等が必要である。
また、本発明の超音波流量計は、酸素消費量計以外の各種装置、機器等において流体の流量計として適用できることは勿論である。
【0048】
【発明の効果】
本発明によれば、呼吸気が流れる流路の壁部の開孔に、1個の超音波送信器と3個の超音波受信器を設置した超音波流量計であることから、従来酸素消費量計に用いられていた熱線式、層流式、タービン式による流量計が有する各種問題点を解決することができる。すなわち、流路の壁部の開孔に受信器、送信器を埋め込んだ構造であるので、構造が単純で流路上障害物がないことから、機械的に強固な構造にしやすく、圧力損失が生じず通常の呼吸気の勢いそのままで計測でき、飽和蒸気などで閉塞するといったことも生じにくい。また、滅菌操作も容易である。さらに、タービン式のように機械的な動作がほとんどないことから、経時的な劣化もほとんどなく、応答性の点でも改善される。
【0049】
また、本発明によれば、3つの受信器を用い2種類の位相差を検出する方式なので、従来の時間差方式の超音波流量計と比較して、簡単な回路構成で済み、コストを抑えることができる。さらに、送信波としてバースト波を用いているので、連続波を用いていた従来の位相差方式の超音波流量計と比較して、目的とする受信波のみ効率よく検出することが可能となり、流体が気体であっても十分に適用可能となる。
【0050】
また、本発明によれば、上記の効果に加えて、サンプルホールド回路により、位相比較器の出力のうち、前記超音波送信器から送信され呼吸気を伝播してきたバースト波が受信されると予想される時間帯に受信された信号に対応する出力のみサンプリングされることから、受信信号のうち流路の壁部を伝播する信号や反射信号等の各種ノイズが除かれて、目的とする信号のみ取り出され、以後の演算処理を正確に行うことができる。
【0051】
また、本発明によれば、バースト波が受信されていない時にも、第1および第2の位相比較器には、90度の位相差を有する2つの信号が入力されることから、これにより、第1および第2の位相比較器の動作を安定化させることができる。
【0052】
また、本発明によれば、フィルタにより第1の位相比較器の出力のうち直流成分をカットすることから、この超音波流量計に備えられる回路内部で発生するオフセット電圧の影響や、信号の時間的な不安定さによる演算誤差の影響が除かれ、第1の位相差について安定した出力を取り出すことができる。
【0053】
また、本発明に係る超音波流量計は、酸素消費量計に、好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一例としての超音波流量計の基本的な構成を示す図である。
【図2】送受信器の概略構造を示す図である。
【図3】図1の超音波流量計の信号処理回路の構成を示すブロック図である。
【図4】図1の超音波流量計における各種信号のタイミングを説明するための図であり、(a)は駆動電圧、(b)は送信波、(c)は受信波、(d)はサンプルホールド信号について示す。
【図5】図1の位相比較器に入力する信号を示す図である。
【符号の説明】
1 超音波流量計
2 流路
2a 開孔
4 送信器(超音波送信器)
5a 受信器(第1超音波受信器)
5b 受信器(第3超音波受信器)
5c 受信器(第2超音波受信器)
22 駆動回路
23 信号発生回路
24、27、30 増幅器
25、28 移相器
26、29、31 波形整形回路
32 位相比較器(第1の位相比較器)
36 位相比較器(第2の位相比較器)
33、37 ローパスフィルタ
34 サンプルホールド回路(第1のサンプルホールド回路)
38 サンプルホールド回路(第2のサンプルホールド回路)
35 DCカット回路(フィルタ)
39、40 A/D変換器
Claims (4)
- 呼吸気が流れる流路の壁部の開孔に、1個の超音波送信器とこの超音波送信器に対向するように3個の超音波受信器とが設けられ、
前記3個の超音波受信器のうち第1の超音波受信器は、この超音波受信器と前記超音波送信器とを結ぶ直線が呼吸気の流れる方向に対して+θの角度を有するように設置され、
第2の超音波受信器は、この超音波受信器と前記超音波送信器とを結ぶ直線が前記方向に対して−θの角度を有するように設置され、第3の超音波受信器は、この超音波受信器と前記超音波送信器とを結ぶ直線が前記方向に対してほぼ直交するように設置され、
呼吸気が前記流路を流れているときに前記超音波送信器より超音波をバースト波として送信し、前記第1の超音波受信器と前記第2の超音波受信器との受信信号の位相差である第1の位相差と、前記第3の超音波受信器の受信信号と基準波との位相差である第2の位相差とを検出し、
前記第1の位相差と前記第2の位相差に基づいて、前記呼吸気の流量を求める超音波流量計であり、
前記第1の超音波受信器と前記第2の超音波受信器の受信信号の位相を比較しその結果を出力する第1の位相比較器と、
前記第3の超音波受信器の受信信号と前記基準波に相当する基準波信号の位相を比較しその結果を出力する第2の位相比較器と、
前記第1の位相比較器の出力のうち、前記超音波送信器から送信され呼吸気を伝播してきた前記バースト波が受信されると予想される時間帯に、前記第1及び第2の超音波受信器により受信された信号に対応する出力のみサンプリングする第1のサンプルホールド回路と、
前記第2の位相比較器の出力のうち、前記時間帯に前記第3の超音波受信器により受信された信号に対応する出力のみサンプリングする第2のサンプルホールド回路と、を備えることを特徴とする超音波流量計。 - 前記3個の超音波受信器により前記バースト波が受信されない時間帯に、前記第1の位相比較器に対して、90度の位相差を有する2つの模擬信号を入力し、前記第2の位相比較器に対して、前記基準波信号と、この基準波信号と90度の位相差を有する模擬信号を入力することを特徴とする請求項1に記載の超音波流量計。
- 前記第1の位相比較器の出力のうち、直流成分をカットするフィルタを備えることを特徴とする請求項1または2に記載の超音波流量計。
- 酸素消費量計に備えられることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の超音波流量計。
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