JP4230241B2 - 触圧センサ、把持ロボット - Google Patents

触圧センサ、把持ロボット Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、装着面に加わっている力(圧力)を検知する触圧センサ、および触圧センサを触圧検知に用いる把持ロボットに係り、特に、精度よく小さな力から3分力(X方向、Y方向、Z方向)を検知するのに適する触圧センサおよびこれを用いる把持ロボットに関する。
【0002】
【従来の技術】
指先に装着できるような触圧センサとしては、例えば、特開平8−323678号公報に記載の「柔軟物体把持装置」に用いられているものがある。このセンサは、微小なON/OFFスイッチを多数設置し接触面積を検出するものである。検出された接触面積と指先の開き量との関係から物体の大きさや柔軟度を認識し、最適な物体把持が行なわれるよう意図する。センサは、基本的に、装着面に垂直な方向(Z方向)の力を検知する。
【0003】
市場に供給されている製品としては、ニッタ株式会社の「BIG−MAT」面圧測定システムがあり、このシステムでは面内の圧力分布を測定するのにセンサシートを用いている。センサシートにより高密度の圧力分布の測定するよう意図されているが、やはりZ方向の圧力分布のみが測定される。
【0004】
特開2002−181640号公報に記載の「力検出装置」では、静電容量型の力検出が示されている。この検出装置では、Z方向の力のほかに、X方向の力をも検出することができる。Z方向の力検出は、ON/OFFスイッチを基本として行なわれ、力検出としては限定的である。
【0005】
特開2000−266620号公報に記載の「力覚センサ」は、3方向の力と3軸まわりのモーメントの計6分力を検出できるように構成されている。構造として、立体十字型の剛体に歪ゲージを取り付けた構成となっている。この構成では、皮膚や指先の面に装着することは不可能であり、また剛体を用いることから精度よく小さな力を検知するには適さないと考えられる。
【0006】
【特許文献1】
特開平8−323678号公報
【特許文献2】
特開2002−181640号公報
【特許文献3】
特開2000−266620号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の状況を考慮してなされたもので、装着面に加わっている力(圧力)を検知する触圧センサ、および触圧センサを触圧検知に用いる把持ロボットにおいて、精度よく小さな力から3分力(X方向、Y方向、Z方向)を検知することが可能な触圧センサおよびこれを用いる把持ロボットを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本発明に係る触圧センサは、円板状の第1の起歪部と、前記第1の起歪部の周縁をほぼ等角度で4分割する位置より板状に延設され、前記第1の起歪部の脚となって前記第1の起歪部を支持する構造の第2ないし第5の起歪部と、前記第2ないし第5の起歪部それぞれより前記第1の起歪部とは異なる側に延設された第1ないし第4の足部と、前記第1の起歪部の円板面上に着設されたダイアフラム状の第1の歪ゲージと、前記第2ないし第5の起歪部の板面上にそれぞれ着設された第2ないし第5の歪ゲージとを具備することを特徴とする。
【0009】
第1の起歪部に着設された第1の歪ゲージによりZ方向(装着面に垂直の方向)の力(圧力)を検知し、第1の起歪部を支える構造の第2ないし第5の起歪部にそれぞれ着設された第2ないし第5の歪ゲージによりX方向、Y方向(それぞれ、装着面に平行な方向(せん断方向))の力(圧力)を検知する。起歪部それぞれは板状であり曲がりが生じやすいので、小さな力から検知ができる。また、それぞれの方向の力検知に専用の歪ゲージを具備し、例えば互いの干渉を小さくして検知精度の向上を図ることができる。
【0010】
また、本発明に係る触圧センサは、上記の触圧センサがエレメントとしてアレー状に配列されていることを特徴とする。上記の触圧センサは、例えば、板材のプレス・打ち抜きにより微小に製作することが可能であり、したがって、これをアレー状に配列することが容易である。アレー状にすることにより、ある程度の装着面積をカバーする触圧センサとすることができる。これにより、さらに、装着面内での触圧検知を高精度に行なうことが可能になる。
【0011】
また、本発明に係る把持ロボットは、上記のアレー状の触圧センサを触圧検知のため具備することを特徴とする。アレー状の触圧センサは、装着状態で、ある程度の面積を占めまた装着面の丸みに追従して装着され得る。よって、把持ロボットでは、例えばこれを指先に装着することにより、精度よく小さな力から3分力が検知できることとあいまって、好適な触圧検知を行なうことができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の実施態様としての触圧センサは、前記第2ないし第5の起歪部の板面の両面それぞれに歪ゲージが着設されるように、前記第2ないし第5の歪ゲージのほかに第6ないし第9の歪ゲージをさらに具備する。第2ないし第5の起歪部の板面の両面それぞれに歪ゲージが着設されると、面の一方が圧縮、他方が引張の出力を示し、感度を向上することができる。よって、なお、精度よく小さな力から3分力を検出することができる。さらに、両面の歪ゲージを組み合わせることで第1の起歪部が検知する力からの干渉を避けることができる。
【0013】
また、実施態様としての触圧センサにおいて、前記第2ないし第5の起歪部が前記第1の起歪部を支持する前記構造における前記第1の起歪部の円板と前記第2ないし第5の起歪部の板との角度は、90度ないし130度である。この角度は、触圧センサとしての高さを小さく抑えるとともに第2ないし第5の起歪部の板面に歪ゲージを着設する面積が確保されるように設計され得る。構造の単純さでは90度が最も普通の角度と言えるが、これよりやや大きな角度にすることにより高さを高くせずに板面面積の確保が容易になる。
【0014】
また、実施態様としての触圧センサは、前記第1の起歪部から前記第2ないし第5の起歪部への延設境界付近に、前記第1の起歪部の円板面積または前記第2ないし第5の起歪部の板面積を狭くするように凹部が形成されている。このような凹部を設けることにより、検知する必要のない方向の歪が第2ないし第5の起歪部の板面に生じる割合を減少させることができる。したがって、検知方向ごとの干渉の少ないより高精度の力検知が可能になる。これにより検出精度も向上される。
【0015】
また、実施態様としての触圧センサは、前記第2ないし第5の起歪部から前記第1ないし第4の足部への延設境界付近に、前記第2ないし第5の起歪部の板面積を狭くするように凹部が形成されている。これも、上記と同旨である。
【0016】
また、実施態様としての触圧センサは、前記エレメントとしての触圧センサそれぞれに配設された歪ゲージそれぞれの端子に電気的配線を供給する配線基板をさらに具備し、前記配線基板は、多層の配線層を有し、配線層ごとに接続される前記エレメントとしての触圧センサが一定である。アレー状の触圧センサのエレメントそれぞれに接続される配線を多層の配線基板により供給するものである。ここで、配線層ごとに接続される触圧センサが一定であるので、多層配線基板の構造を単純化することができる。例えば多層でありながらスルーホールを一切用いない構造のものを用いることができる。
【0017】
以上を踏まえ、以下では本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る触圧センサの模式的な構造を示す図である。図1(a)は斜視図、図1(b)はX方向(X方向の力の方向)を横に見る断面図である。
【0018】
図1に示すように、この触圧センサは、円板状の起歪部1が、その周縁をほぼ4分割する位置から延設された板状の起歪部2a、2b、3a、3bに支持された形状になっている。板状の起歪部2a、2b、3a、3bは、円板状の起歪部1の脚となっており、それぞれ起歪部1側と反対の側には装着面に固定するための足部12a、12b、13a、13bが設けられている。
【0019】
円板状の起歪部1の下面にはダイアフラム状の歪ゲージ8a、8b、8c、8dが着設されており、板状の起歪部2a、2b、3a、3bのそれぞれ両面には、歪ゲージ4a、4b、4c、4d、5a、…(計8つ)が着設されている。ダイヤフラム状の歪ゲージ8a、8b、8c、8dについては、のちに図2を参照してさらに説明する。板状の起歪部2a、2b、3a、3b上の歪ゲージ4a、4b、4c、4d、5a、…は、起歪部1周縁から足部12a、12b、13a、13bに向かう方向の各板における曲げなどの変形に対して歪を検知するように、その方向に長手方向が平行となるように着設される。
【0020】
円板上の起歪部1と各脚たる板状の起歪部2a、2b、3a、3bとの角度は、この実施形態では、105度としている。これは、90度よりやや大きくすることで、触圧センサとしての高さをあまり高くすることなく板状の起歪部2a、2b、3a、3bの面積を確保するためである。なお、さらに鈍角にすると、触圧センサとしての高さが低くはなるが、平面方向に大きくなるので触圧センサとしての配置密度は小さくならざるを得ない。高さに代表される大きさをある程度小さく抑え、配置密度も確保するためには、この角度は、90度から130度程度に設計するのが適切と考えられる。その中でも、100度から110度程度にすれば板状の起歪部2a、2b、3a、3bの大きさの確保に寄与し、これにより歪ゲージ4a、4b、4c、4d、5a、…の取り付けに都合がよい。
【0021】
具体的な寸法は、例えば、高さとして1mmから3mm程度、足部12a、12b、13a、13bを含めたX方向、Y方向の全長として5mmから15mm程度である。起歪部1、2a、2b、3a、3bの板厚は、例えば0.05mmから0.3mm程度、その材質としては、例えばステンレスなどの金属や樹脂など適度の剛性のあるものを用いることができる。金属の場合には、例えば、プレスおよび打ち抜きにより曲げを含めて容易に加工、製作することができる。樹脂の場合には、例えば金型を用いたモールドにより製作することができる。
【0022】
また、図示するように、円板上の起歪部1と板状の起歪部2a、2b、3a、3bとの境界付近には、これらの円板および板の面積を狭くするように凹部6が形成されている(狭くするのは円板、板の一方でもよい。)。また、板状の起歪部2a、2b、3a、3bと足部12a、12b、13a、13bとの境界付近にも、これらの板の面積を狭くするように凹部7が形成されている。これらの凹部6、7は、板状の起歪部2a、2b、3a、3bに発生する歪であって歪ゲージ4a、4b、4c、4d、5a、…に検知されるものをできるだけ大きくするため設けられたものである。
【0023】
すなわち、例えばX方向の力に対しては、起歪部2a、2bが曲がりやすい方が感度よい圧力検出に好ましい。しかしX方向の力に対しては、起歪部3a、3b面の法線まわりの曲げ応力が起歪部3a、3bに発生するのでかなりの高剛性となる。そこで、上記のように凹部6、7を設けると、起歪部3a、3b面の法線まわりの曲げ応力が集中して曲がりやすく(X方向に変形しやすく)なる。Y方向で考えても同様である。これらにより、より小さな力でも検知できるようになる。
【0024】
なお、図1では図示省略しているが、円板状の起歪部1の上面には例えばウレタンゴムのような弾性のある素材を接着し加重緩衝の機能を得るようにしてもよい。
【0025】
図2は、円板状の起歪部1の下面に着設されたダイヤフラム状の歪ゲージ8a、8b、8c、8dの構成を模式的に拡大して示す図である。図2において、図1に示した構成要素と対応する部位には同一番号を付してある。
【0026】
図2に示すように、歪ゲージ8a、8b、8c、8dは、全体として円状のシート20上に設けられている。歪ゲージ8a、8b、8c、8dを構成する線の配置は、接続パッド21から、シート20の半径方向に長手方向が配設された歪ゲージ8aを経て接続パッド22に至り、さらに接続パッド22から、シート20の円周方向に長手方向が配設された歪ゲージ8dを経て接続パッド23に至り、さらに接続パッド23から、シ−ト20の半径方向に長手方向が配設された歪ゲ−ジ8bを経て接続パッド24に至り、さらに接続パッド24からシ−ト20の円周方向に長手方向が配設された歪ゲ−ジ8cを経て接続パッド25に至っている。
【0027】
シート20の半径方向に長手方向が配設された歪ゲージ8a、8bは、シート20上で対向するようにシート20の周縁に近い側に設けられる。シート20の円周方向に長手方向が配設された歪ゲージ8c、8dは、互いに対向するようにシート20の中心に近い側に設けられる。
【0028】
周縁側の歪ゲージ8a、8bと中心側の歪ゲージ8c、8dとは、起歪部1の変形により互いに反対の歪(すなわち圧縮歪と引張歪)を検知するものである。これについては次述する。なお、図示するように、以後、一方の周縁側歪ゲージ8aの抵抗値をZ1aで、他方の周縁側歪ゲージ8bの抵抗値をZ1bで、一方の中心側歪ゲージ8cの抵抗値をZ2aで、他方の中心側歪ゲージ8dの抵抗値をZ2bで、それぞれ表わす。
【0029】
図3は、図1に示した触圧センサがZ方向の力を検知する原理を説明する図である。図3において、すでに説明した図の中の構成要素に対応するものには同一符合を付してある。
【0030】
図3(a)に示すように、Z方向の力Fzが触圧センサに印加されるとダイアフラム状の歪ゲージ8a、8b、8c、8dに歪に応じた変化が発生する。すなわち、中心側歪ゲージ8c、8dは引張に応じた変化であり、周縁側歪ゲージ8a、8bは圧縮に応じた変化である。周縁側歪ゲージ8a、8bが圧縮に応じた変化をするのは、中心側歪ゲージ8c、8dと周縁側歪ゲージ8a、8bとの間に中立となる位置が存在するためである。この中立点より中心側では、起歪部1が下に凸に曲がり、中立点より周縁側では、起歪部1が上に凸に曲がる。
【0031】
歪ゲージ8a、8b、8c、8dは、図3(b)に示すように、ブリッジを構成するように接続される。ブリッジの入力端子対34、35から入力電圧(電流でもよい)が印加され、出力端子対21、23間に出力を得る。歪ゲージ8a、8b、8c、8dに何ら変化のないときに、ブリッジ回路の平衡条件:Z1a・Z1b=Z2a・Z2b(=対向する要素間のインピーダンス積が同一)が満たされるように歪ゲ−ジ8a、8b、8c、8dの抵抗を調整しておくと、歪ゲージ8a、8b、8c、8dが抵抗変化したときに平衡がくずれる。
【0032】
上記のように、中心側歪ゲージ8c、8dは引張に応じて抵抗が増加し、周縁側歪ゲージ8a、8bは圧縮に応じて抵抗が減少する。したがって、起歪部1がZ方向の力を検知すると接続パッド21と端子23との間に電圧が生じる。この電圧(またはこの電圧による電流)の検出によりZ方向の力が検知できる。この力の検知は、起歪部1の弾性限界内ではFzによく比例する。
【0033】
図3(c)は、Z方向の力Fzが印加されたときに生じる、X方向の力を検知するための歪ゲージ4a、4b、4c、4dの変化を説明する図である(なお、この説明はY方向の力を検知するための歪ゲージ5a、…についても同様である)。
【0034】
Z方向の力Fzが印加されると、歪ゲージ4a、4b、4c、4dが取り付けられている起歪部2a、2bについても歪が発生する。この歪は、図3(a)に示す構造からわかるように、外側の歪ゲージ4a、4dは引張、内側の歪ゲージ4b、4cは圧縮となるような歪である。
【0035】
ここで、歪ゲージ4a、4b、4c、4dは、図3(c)に示すように、ブリッジを構成するように接続されている。すなわち、対向する起歪部2a、2bの一方の内側に取り付けられた歪ゲージ4bと他方の外側に取り付けられた歪ゲージ4dとが一方の対向するブリッジの要素になり、一方の外側に取り付けられた歪ゲージ4aと他方の内側に取り付けられた歪ゲージ4cとが他方の対向するブリッジの要素になる接続である。そして、このブリッジの入力端子対44、45から入力を加え、出力端子対42、43間に出力を得る。
【0036】
このようなブリッジの構成では、上記のような歪により、歪ゲージ4bの抵抗X1が減少、歪ゲージ4aの抵抗X1*が増加、歪ゲージ4cの抵抗X2が減少、歪ゲージ4dの抵抗X2*が増加となり、ブリッジ回路の平衡条件:X1・X2*=X2・X1*は保持されたままになる。この意味で、Fz検知からFx検知(Fy検知)への干渉が大きく軽減される。この実施形態の大きな利点である。
【0037】
図4は、図1に示した触圧センサがX方向の力を検知する原理を説明する図である。図4において、すでに説明した図の中の構成要素に対応するものには同一符合を付してある。(なお、この図4の説明は、Y方向の力を検知する原理を説明する場合も同様である。)
【0038】
図4(a)に示すように、X方向の力Fxが触圧センサに印加されると、対向する起歪部2a、2bに取り付けられた歪ゲージ4a、4b、4c、4dに歪に応じた変化が発生する。すなわち、図示するように、力Fxの出力方向側における起歪部2aの外側の歪ゲージ4aおよび入力方向側における起歪部2bの内側の歪ゲージ4cは圧縮に応じた変化であり、力Fxの出力方向側における起歪部2aの内側の歪ゲージ4bおよび入力方向側における起歪部2bの外側の歪ゲージ4dは引張に応じた変化である。
【0039】
歪ゲージ4a、4b、4c、4dは、すでに説明したように、図4(b)に示すように、ブリッジ構成の接続がされている。よって、上記の変化により、歪ゲージ4bの抵抗X1が増加、歪ゲージ4aの抵抗X1*が減少、歪ゲージ4cの抵抗X2が減少、歪ゲージ4dの抵抗X2*が増加となり、ブリッジ回路の平衡条件:X1・X2*=X2・X1*がくずれる。よって、出力端子対42、43間に電圧が発生する。この電圧(またはこの電圧による電流)の検出によりX方向の力が検知できる。この力の検知は、起歪部2a、2bの弾性限界内ではFxによく比例する。
【0040】
図4(c)は、X方向の力Fxが印加されたときに生じる、Z方向の力を検知するための歪ゲージ8a、8b、8c、8dの変化を説明する図である。X方向の力Fxが印加されても、図4(a)に示すように、歪ゲージ8a、8b、8c、8dが取り付けられている起歪部1については歪がほとんど発生しない。
【0041】
したがって、すでに説明したZ方向の力を検知するブリッジ回路は、図4(c)に示すように、歪ゲージ8a、8b、8c、8dに抵抗変化がほとんどないため、ブリッジ回路の平衡が保たれる。すなわち、Fx検知(またはFy検知)からFz検知への干渉はほとんどないことになる。
【0042】
以上説明したように、この実施形態では、起歪部1、2a、2b、3a、3bを板状にし、起歪部同士または他の部位との境界付近に凹部を設け、脚となる起歪部2a、2b、3a、3bの両面に歪ゲージ4a、4b、4c、4d、5a、…(計8つ)を取り付けこれらを2つのブリッジ回路として接続した。これらにより、相互干渉を大きく軽減して精度よく小さな力から3分力(X方向、Y方向、Z方向)を検知することができる。
【0043】
なお、図4(a)に示したブリッジ接続の構成は、以下のようなブリッジ構成に変えてもよい。すなわち、図4(a)の4aの位置に4aおよび4c(つまりX2+X1*を配置)を、図4(a)の4dの位置に4dおよび4b(つまりX1+X2*を配置)を、それぞれ接続し、残る4b、4cの位置には外付けの固定抵抗を接続してなるブリッジである。このようにしても同様な検知感度が得られ、かつ図3(c)において説明した、Z方向の力Fzからの干渉を避ける効果がある。
【0044】
【実施例1】
以下では実施例について説明する。実施例1として、0.1mm厚の金属板を十字形にプレスで打ちぬき、中央平面部を残したまま折り曲げ加工して図1に示すような触圧センサを作った。触圧センサの高さは1.6mmとした。
【0045】
歪ゲージ4a、4b、4c、4d(5a、…)によるブリッジ回路への入力電圧を5Vとした。また、歪ゲージ4a、4b、4c、4d(5a、…)それぞれの名目抵抗値は350Ωである。この触圧センサの4つの足部12a、12b、13a、13bの底面を装着面に固定しX方向にFx=250gの力を加えた。評価項目は、ブリッジ回路の出力電圧、Fx検知とFy検知との干渉、Fx検知のリニアリティ(直線性)の3点である。
【0046】
得られた結果として、ブリッジ回路の出力電圧は1.7mVないし1.8mV、Fx検知とFy検知との干渉は20%以内、リニアリティは±1%以内であった。この結果は、以下説明する他の実施例より、ブリッジ回路の出力電圧は、比較的大きく検出され、Fx検知とFy検知との干渉およびリニアリティは、比較的小さい。
【0047】
【実施例2】
実施例2では、歪ゲ−ジを起歪部2a、2b、3a、3bの片面のみに張り付け(外側の歪ゲージ4a、4d、5a、…のみにする)、その他の構造は実施例1と同じ構造のものとした。この構造を図5に示す。図5は、本発明の別の実施形態に係る触圧センサの構造を模式的に示す図であり、すでに説明した構成要素と同一のものには同一符合を付してある。
【0048】
歪ゲージ4a、4dによるブリッジ回路は、図4(b)に示すブリッジ回路において、歪ゲージ4b、4cに対応する要素を外付けの固定抵抗に代える。このときに、実施例1と同様にX方向にFx=250gの力を加えた。得られた結果として、ブリッジ回路の出力電圧は0.85mVないし0.9mV、Fx検知とFy検知との干渉は20%以内、リニアリティは±1%以内であった。歪ゲージが起歪部2a、2b、3a、3bの片面のみに取り付けられているので出力が減少し検知感度が約半分になっている。
【0049】
【実施例3】
実施例3では、起歪部1と4つの脚である起歪部2a、2b、3a、3bとの境界付近、および起歪部2a、2b、3a、3bと足部12a、12b、13a、13bとの境界付近に凹部を設けないようにした。その他は実施例1と同じ構成である。この構造を図6に示す。図6は、本発明のさらに別の実施形態に係る触圧センサの構造を模式的に示す図であり、すでに説明した構成要素と同一のものには同一符合を付してある。
【0050】
実施例1と同様にX方向にFx=250gの力を加えた。得られた結果として、ブリッジ回路の出力電圧は0.5mVないし0.55mV、Fx検知とFy検知との干渉は30%以内、リニアリティは±2%以内であった。凹部がない分、起歪部2a、2b、3a、3bの剛性が増加しており、変形しにくいので歪に対応する出力値は小さい値になっている。また、Fx検知とFy検知との干渉、リニアリティも上記の実施例よりは劣る。
【0051】
次に、本発明のさらに別の実施形態に係る触圧センサについて図7を参照して説明する。図7は、本発明のさらに別の実施形態に係る触圧センサの構造を模式的に示す図である。図7(a)は上面図、図7(b)は正面図である。
【0052】
この実施形態に係る触圧センサ70は、図1に示した触圧センサをアレー状に配列させて装着面上の力の分布を検知可能にしたものである。例えば、指先面等に装着して接着等で固定し指先面全体に加えられる3分力を分力ごとに積算して、全3分力を求めることができる。図7に示すように、この触圧センサ70は、各触圧センサの足部が十字状になって隣りの触圧センサにつながっており、この場合には全体として4×3の計12個のアレーとなっている。このようなアレー構成についても、例えば、一枚の板材のプレスと打ち抜きで製作することができる。
【0053】
具体的な寸法は、例えば横方向Aが10mmないし30mm程度(より具体的には例えば15mm)、縦方向Bが15mmないし45mm程度(より具体的には例えば20mm)である。また、高さHは例えば1mmないし3mm程度(より具体的には例えば1.6mm)である。
【0054】
また、縦方向の各列を構成する触圧センサの下側には、円板上の起歪部1の凸形状にはまり込むようにリボン状の配線基板71a、71b、71cがそれぞれ伴なわれている。配線基板71a、71b、71cは、エレメントとしての触圧センサに取り付けられた歪ゲージに電気的配線を供給する。歪ゲージと配線基板71a等とはリード線を用い例えばはんだで接続されるが、ここでは図示省略している。
【0055】
図8は、配線基板71a(71b、71c)の構造を示す図である。図8(a)は上面図、図8(b)は側面図である。図8に示すように、この配線基板は一種の多層配線板であり、絶縁層91、92、93、94、…と配線層81、82、83、…とが交互に積層された構造である。絶縁層91、92、93、94、…は例えばポリイミドのようなフレキシブルな絶縁材料であり、配線層81、82、83、…は例えば銅のような導電材料である。配線層81、…の数は、図7(a)に示す縦方向のエレメントの数に一致させる。
【0056】
図8において、最も下側の配線層81は最も先端側(図で上側)で露出し、以下配線層として上側のものになるほど先端側より離れた各位置で露出するようになっている。露出部分が各歪ゲージとの接続端になる。このような配線基板71aの構成によれば、各エレメントとしての触圧センサに装着された歪ゲージ4a、4b、4c、4d、5a、…、8a〜8dについての配線を、各エレメントごとにひとつの配線層により担当させることができる。配線基板として非常に単純な構造になり、多層基板でありながらスルーホールのような構造を必要とせず廉価なものにすることができる。
【0057】
図9は、図8に示したアレー状の触圧センサ70を把持ロボットの指部分100の指先に装着したときの構成を示す図である。図9(a)は側面図、図9(b)は正面図であり、図8、図9に示した構成要素と対応するものには同一符合を付してある。
【0058】
図9に示すように、アレー状の触圧センサ70は、人の指先のような微小な曲面を有する面上にも追従して装着することができる。したがって、各種の把持ロボットとしての触圧検知に適している。把持ロボットは、今後、産業用のみならず洗濯機、自動販売機、調理器など種々の分野で応用されることが期待される。
【0059】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明よれば、第1の起歪部に着設された第1の歪ゲージによりZ方向(装着面に垂直の方向)の力(圧力)が検知され、第1の起歪部を支える構造の第2ないし第5の起歪部にそれぞれ着設された第2ないし第5の歪ゲージによりX方向、Y方向(それぞれ、装着面に平行な方向(せん断方向))の力(圧力)が検知される。起歪部それぞれは板状であり曲がりが生じやすいので、小さな力から検知ができる。また、それぞれの方向の力検知に専用の歪ゲージを具備し、例えば互いの干渉を小さくして検知精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る触圧センサの模式的な構造を示す図。
【図2】図1中における円板状の起歪部1の下面に着設されたダイヤフラム状の歪ゲージ8a、8b、8c、8dの構成を模式的に拡大して示す図。
【図3】図1に示した触圧センサがZ方向の力を検知する原理を説明する図。
【図4】図1に示した触圧センサがX方向の力を検知する原理を説明する図。
【図5】本発明の別の実施形態に係る触圧センサを模式的に示す図。
【図6】本発明のさらに別の実施形態に係る触圧センサを模式的に示す図。
【図7】本発明のさらに別の実施形態に係る触圧センサの構造を模式的に示す図。
【図8】図7中に示した配線基板71a(71b、71c)の構造を示す図。
【図9】図8に示したアレー状の触圧センサ70を把持ロボットの指部分100の指先に装着したときの構成を示す図。
【符号の説明】
1…円板状の起歪部 2a、2b、3a、3b…板状の起歪部 4a、4b、4c、4d、5a、……歪ゲージ 6、7…凹部 8a、8b…周縁側の歪ゲージ 8c、8d…中心側の歪ゲージ 12a、12b、13a、13b…足部 20…ダイアフラム状の歪ゲージのシート 21、22、23、24…接続パッド 34、35…ブリッジの入力端子 42、43…ブリッジの出力端子 44、45…ブリッジの入力端子 70…触圧センサ 71a、71b、71c…配線基板 81、82、83…配線層 91、92、93、94…絶縁層 100…把持ロボットの指部分

Claims (8)

  1. 円板状の第1の起歪部と、
    前記第1の起歪部の周縁をほぼ等角度で4分割する位置より板状に延設され、前記第1の起歪部の脚となって前記第1の起歪部を支持する構造の第2ないし第5の起歪部と、
    前記第2ないし第5の起歪部それぞれより前記第1の起歪部とは異なる側に延設された第1ないし第4の足部と、
    前記第1の起歪部の円板面上に着設されたダイアフラム状の第1の歪ゲージと、
    前記第2ないし第5の起歪部の板面上にそれぞれ着設された第2ないし第5の歪ゲージと
    を具備することを特徴とする触圧センサ。
  2. 前記第2ないし第5の起歪部の板面の両面それぞれに歪ゲージが着設されるように、前記第2ないし第5の歪ゲージのほかに第6ないし第9の歪ゲージをさらに具備することを特徴とする請求項1記載の触圧センサ。
  3. 前記第2ないし第5の起歪部が前記第1の起歪部を支持する前記構造における前記第1の起歪部の円板と前記第2ないし第5の起歪部の板との角度は、90度ないし130度であることを特徴とする請求項1記載の触圧センサ。
  4. 前記第1の起歪部から前記第2ないし第5の起歪部への延設境界付近に、前記第1の起歪部の円板面積または前記第2ないし第5の起歪部の板面積を狭くするように凹部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の触圧センサ。
  5. 前記第2ないし第5の起歪部から前記第1ないし第4の足部への延設境界付近に、前記第2ないし第5の起歪部の板面積を狭くするように凹部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の触圧センサ。
  6. 請求項1記載の触圧センサがエレメントとしてアレー状に配列されていることを特徴とする触圧センサ。
  7. 前記エレメントとしての触圧センサそれぞれに配設された歪ゲージそれぞれの端子に電気的配線を供給する配線基板をさらに具備し、
    前記配線基板は、多層の配線層を有し、配線層ごとに接続される前記エレメントとしての触圧センサが一定である
    ことを特徴とする請求項6記載の触圧センサ。
  8. 請求項6記載の触圧センサを触圧検知のため具備することを特徴とする把持ロボット。
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