JP4226694B2 - 多速度発電電動機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、揚水発電のポンプ水車に用いるのに好適な、極数変換法により二速度またはそれ以上の複数の設定回転速度で運転できるようにした発電電動機に関する。
【0002】
【従来の技術】
過去において発電電動機の二速度化は変落差が大きな揚水発電所を実現する必須の技術として将来の発展が嘱望されていた。例えば黒又川第二発電所(P/T,19.9/19.2MW,333/300rpm但し最低揚程時は300rpm,1964年運開)や合衆国開拓局のFlatiron(P/T,8.35/8.95MW,300/257rpm,1954年運開)では、小容量機ながら実現されている。
しかしながら、その後の揚水発電機器の高落差大容量化の流れの中で、利用例が少ないと言える。その主な理由は、極数変換に伴う発電電動機の構造(磁極とその結線方法)が複雑になること、及び極の切り替えが機械式のため信頼性や保守上の面から敬遠されたこと、磁束の利用率が悪く、また高調波磁束が多いため機械の体格が大きくなり発電機効率が単一速度機に比べ低下すること等によるとされている。
一方、原理的に揚水機器を二速度化すれば、原動機であるポンプ水車に対しては大きなメリットが見込まれる。すなわち、水車特性とポンプ特性を最適化することによる、水車効率の上昇、運転範囲の拡大、キヤビテーションや振動の減少、ランナ体格の最適化等のメリットである。
【0003】
なお、同様の技術として、可変速機の採用があるが、▲1▼可変速用変換装置と巻線形発電電動機が非常に高価である。▲2▼実用的に可変速幅が±5%程度しかとれない。▲3▼可変速装置の損失が大きく水車の効率向上分を相殺する。等の理由から、単なる効率向上策としてはかなり無理があると考えられる。
一方、二速度機の場合、可変速機に比べて、▲1▼装置代はかなり安い。▲2▼極数が小さい場合、かなり大幅に回転数が変えられる(例えば12極と14極では回転数が+17%変化する)。▲3▼二速度化に伴う発電電動機の効率の低下は、可変速機の変換器損失よりは小さいと予想される。といった点がメリットとして見込まれる。但し、デメリットとしては、速度が二値しかとれず、また停止しないと回転速度は切り替えられないので、運転や特性のフレキシビリティーについては可変速機のほうがはるかに良好である。
また、発電電動機の出力波形が歪み、高調波の発生の回避が困難であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記の問題点に鑑みてなされたものであって、極数変換に伴う発電電動機の構造(磁極とその結線方法)を簡単化し、及び極の切り替えの回路構成を簡単化し、さらに、磁束の利用率の向上と高調波磁束発生を抑制できる極数変換に基づく二速度機などの多速度発電電動機を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
まず、二速度化によるポンプ水車の効率上昇について説明する。
図3にフランシス形可逆ポンプ水車の特性を示すが、一個のランナで水車とポンプの両運転を行うため、水車の最高効率点(図中のηTmax)近傍から実際の水車連転領域が大きく離れている。これは、ポンプ水車の特性上、ポンプの最高効率点ηPmaxを示す揚程Hpは水車の最高効率点ηTmaxを得られる落差Htより必ず低くなる(図3ではn11=N/√Hとしており、ηTmaxを示すn11位置(n11ηTmax)はηPmaxのそれ(n11ηPmax)より必ず左側になる。)。一方、水車運転では水路損失等により有効落差はポンプの揚程より必ず低くなることから、ポンプの運転領域より水車の運転領域はn11軸上で右側になる。ポンプ水車はポンプ中心の設計とせざる得ないので、ポンプの運転領域をポンプ最高効率点を含むように設計し、この結果、どうしても水車は効率の低い領域で使うことになる。
【0006】
通例、n11ηPmax/n11ηTmax=1.1から1.2の範囲になる。このため、二速度機として、ポンプを水車の1.1から1.2倍の回転速度で運転すると、水車は最高効率点付近で運転でき、効率アップが見込める。また、ポンプ水車の体格は所定のポンプ吐出圧を得られる遠心力を発生できるように最大外形が決められるので、回転速度をポンプ側で高くすれば、最大外形を小さくしても所定の遠心力が得られるので、ランナのコンパクト化が期待できる。
【0007】
また、揚水機に限らず、落差変動の大きな地点での水車特性の改善にも、二速度機化は非常に効果的である。特に、近年、ダムの嵩上げによる再開発プロジェクトがいくつがあるが、嵩上げ完了までの期間は、低い有効落差で運転することになり、最高効率点から大きく離れて運転することになり、効率は低くならざるを得ない。こうした地点で二速度機を採用すれば、嵩上げ完了前は低い回転速度で運転し、嵩上げ完了後は高い回転速度に切り替えることにより、嵩上げの前後を通じて高い効率で運転できる。また、巨大な海外プロジェクトではダムの湛水完了まで数年間も要する例も多く、こうした地点では低落差専用の水車・発電機を湛水完了後、高落差機に変更することもあり、ここでも二速度機とすれば、こうした変更なしに対応できる。
以上のメリットは、一般的なもので必ずしも全てのプロジェクトにあてはまる訳ではなく、詳細は個別の設計諸元に合わせた検討が不可欠であるが、原理的に二速度化すれば、大きなメリットが見込める可能性を示している。
【0008】
従来の二速度機の原理について説明する。
二速度機は、発電電動機の極数:pを変更して、同期速度:Ns=120f/pを変えるものである(f:周波数)。50Hz系で14/12極の二速度機を考えると、同期速度Nsは429/500min-1となり、17%速度が変化する。これは、上記のポンプ水車の効率特性改善に都合の良い値である。
従来、実用化された二速度機は、1極分の励磁コイルと半極分の励磁コイルを適切に組み合わせ、回転速度に応じて、各励磁コイルの極性を逆にしたり、励磁をしないことにより、等価的に所要の極致を得ている。14/12極機の二速度機を例にすると、図4に示す通り、14極機を基本にN極とS極を交互に配置する。3番目のN極は半極のN極を2個組み合わせて作り、また、4番目のS極は半極のS極を2個組み合わせて作る。同様に、5、11番目のN極および10,12番目のS極も半極2個で作る。そして、5つのスリップリングに各極のコイルを対称性を考慮して直列にして接続する。
例えば、図4では、最左側のスリップリングaから1番目N極,2番目S極,3番目右N極,4番目右S極,11番目左N極,12番目左S極,13番目N極,14番目S極、左側のスリップリングbに直列接続する。この左側のスリップリングbを共通にして3番目左N極,5番目右N極,10番目左S極,12番目右S極を,中央のスリップリングcに直列接続する。そして、右側スリップリングdから11番目右N極,10番目右S極,9番目N極,8番目S極,7番目N極,6番目S極,5番目左N極,4番目左S極を最右側のスリップリングeに接続している。
また、励磁電源Exの+,−のうちの一方極をスリップリングaに繋ぎ、他方極を三路スイッチSwによりスリップリングdあるいはeに繋ぐようになっている。
【0009】
この二速度機を、全ての励磁コイルを直列になるようにスリップリングの外で接続(この場合、スイッチSwをすべて右に入れる)すると、14極機になる。直流励磁電源ExをスリップリングとSwを経由して外部から供給する。
一方、12極機に変更するには、2極分の磁極を減らす必要がある。このため、例えば図5に示すように、14極の3、5、10、12番目の半極コイルを無励磁として遊ばせる。また、遊んだコイルの後で極性をそろえる必要から、4番左、5番左、6番、7番、8番、9番、10番右、11番右のコイルの極性を反転して、12極を構成する。これらの極性を逆にする回路は、三路スイッチSwをすべて左に入れて構成できる。
【0010】
どのコイルを半極にしたり、極性を逆転あるいは無励磁とするか、もう少し理論的に考察してみた。
12極と14極の最小公倍数は、3×4×7=84であり、二速度機に84個の微小な部分コイル(微小コイル)を用い、それら微小コイルを7コイルずつまとめれば12極機、6コイルずつまとめれば14極機となる。このように、微小コイルを数個ずつまとめて、1極を構成すれば、波形歪みの少ない理想的な二速度機が実現できる。しかし、コイルの数が非常に多く、またその接続が非常に複雑になることが、容易に想像できる。
【0011】
この84個の微小コイルによる二速度機を理想モデルとし、図4と図5の12/14極機を現実モデルとして図6に示すように模式図を作成した。
この2速度機は14極機がベースになっており、図6の左に示す通り、3個の緻小コイルをまとめて半コイルあるいは6個の微小コイルをまとめ全コイルとし、これを直列接続している。これを12極機にする場合、図6の右のように、いくつかのコイルを不使用にする。すなわち、No.13,14,15のコイルのように、理想的には14極のN,N,Nを12極ではS,S,Nとする必要があるが、すぐ直前にS2があり、S極が大きくなりすぎるといった半コイルを不使用にしている。同様に、No.28,29,30、No.55,56,57、No.70,71,72が不使用である。また、半コイルはS4→N3’,N5→S4’,SlO’→N9,N11’→SlO,全コイルはS6→N5、N7→S6,S8−N7、N9→S8のように極性を反転させる。
【0012】
本発明に係る界磁コイルの並列接続化について説明する。
従来の二速度機では上述の図4、図5に示したように、全コイルと半コイルを分布させ、しかる後にN極とS極を交互に一筆書きの要領で直列接続することで実現している。しかし、図4等に示したように、かなり錯綜した接続が回転側で必要になる。また、全コイルと半コイルの2種類の形状をした界磁コイルが必要で、さらには三路スイッチSwも必要になる。
このため、大容量機にこの技術を適用するには、信頼性や経済性において若干、疑問である。また、高調波磁束発生の間題もある。
このような点を改善するべく本発明はなされたものである。
【0013】
すなわち、本発明は、極数変換法により複数の設定回転速度で運転できるようにした発電電動機において、発電電動機は回転界磁型であって、発電電動機の界磁の全磁極を複数の小磁極に分割し、これらの分割磁極はコイル端子を引き出しており、複数の設定回転速度に対応して予め定めた複数種類の磁極配列の種類毎にスリップリング対を設け、予め定めた磁極配列の種類に対応する分割磁極のコイル端子を、対応するスリップリング対にスイッチを介さずに並列接続し、上記予め定めた複数種類の磁極配列のうちで一つの設定回転速度に対応した磁極数を他の設定回転速度に対応した磁極数よりも少なくするのを、複数の分割磁極のうちでそのコイル端子をスリップリング対に接続しないものを設けることにより行うものである。
したがって、本発明は、上記の分割磁極を、複数の設定回転速度に対応して予め定めた複数種類の磁極配列になるように、各分割磁極のコイル端子と界磁用電源とを並列接続可能にしたものである。
本発明によれば、発電電動機の界磁の全磁極を複数の小磁極に分割したので、界路コイルは一種類で済み、コイル構造が簡単化し、かつ、ユニット化による大量生産ができるようになって、コストダウンができる。
また、極数の切り替えは、上記の分割磁極を、複数の設定回転速度に対応して予め定めた複数種類の磁極配列になるように、各分割磁極のコイル端子と界磁用電源とを並列接続すればよいので、従来の三路スイッチが不要になる。
したがって、この点でも発電電動機の構造を簡単化できる。
また、本発明の多速度発電電動機を揚水発電のポンプ水車に用い、かつ、ポンプ運転時の磁極数を水車運転時の磁極数よりも少なくすることができる。
また、発電電動機は回転界磁型であって、複数の設定回転速度に対応して予め定めた複数種類の磁極配列の種類毎にスリップリング対を設け、予め定めた磁極配列の種類に対応する分割磁極のコイル端子を、対応するスリップリング対にスイッチを介さずに並列接続し、前記分割磁極のコイル端子のスリップリング対への並列接続は、複数種類の磁極配列の界磁回路を構成するように+極と−極の接続向きおよび非接続を設定することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1、図2は、実施形態に係る極数変換法により複数の設定回転速度(同期回転速度)で運転できるようにした二速度発電電動機のコイル模式図、コイル接続説明図である。
図1〜図2に示すように、この二速度発電電動機は、その界磁の全磁極を複数の小磁極(例えば2つ)に分割し、これらの分割磁極を2つの設定回転速度に対応して予め定めた2種類の界磁回路構成になるように、該分割磁極のコイル端子を界磁用電源と並列接続可能にしたものである。なお、図1,図2に示すものは、各磁極は6つの微小コイル(例えばNo.1〜6,No7〜12,…)で構成され、半磁極では3つの微小コイル(例えばNo.1〜3,No.4〜6,…)構成される。
【0015】
また、前記二速度発電電動機は、好適には、揚水発電のポンプ水車に用い、かつ、ポンプ運転時の磁極数を水車運転時の磁極数よりも少なくする。例えば、二速度発電電動機は12/14極機であり、ポンプ運転時は12極として、水車運転時は14して、ポンプ運転時の回転速度を水車運転時の回転速度より高くできるものである。
また、前記二速度発電電動機は回転界磁型であって、界磁回路構成の種類毎にスリップリング対を設け、分割磁極のコイル端子のスリップリング対(14極「+」側,14極「−」側,12極「+」側,12極「−」側)への並列接続は、複数種類の界磁回路を構成するように+極と−極の接続向きおよび非接続を設定した。
【0016】
実施形態に係る二速度発電電動機は、図2に示すように、全ての磁極(14極ベース)を半コイル(見かけは28極機)で構成して、これらを14極機用のスリップリングと12極機用のスリップリングに並列接続して所定の磁極配列としたものである。図2の(b)に示すように、各半磁極のコイルの両端子には、端子1,3と端子2,4とを割り当てて、それら端子1〜4に14極機と12極機の各分割コイルの極性(N極,S極)、および、使用・不使用に応じてスリップリングへ接続をする。例えば14極機で分割コイルがN極であったものを12極機でN極と使用するときは端子1は14極「+」側に、端子2は14極「−」側に、端子3は12極「+」側に、端子4は12極「−」側にそれぞれ接続する。また、14極機で分割コイルがS極であったものを12極機で不使用とするときは端子1は14極「−」側に、端子2は14極「+」側に、端子3と端子4はいずれもスリップリングには接続しない。
【0017】
上記のようにすれば、コイルは半磁極の1種類で済むし、また14極と12極の切替えはそれぞれのスリップリングに励磁するか否かだけで済むので、複雑な回路構成は一切不要となる。
このため、大容量機でも、信頼性の高い二速度機の実現が期待できる。また、一極を2個よりも多数の小コイル(前述の6個および7個のような理想値)に分割し界磁回路を適切に構成して、合成した磁界を電機子に作用させれば、高調波磁束の発生を相当抑制できる可能性がある。特に、本発明では図4に示したような3路スイッチは不要のため、回転体上での接続を設計すればよいため、比較的容易に行えるものである。
さらには、ニーズの問題もあるが、磁極を2個よりも多く分割し分割磁極とスリップリングを3対以上にする等すれば三速度機以上の多速度機も実施可能可能である。
また、発電電動機としては回転界磁型のみならず、ニーズおよび容量や構造の点で要請があれば界磁の固定取れた回転電機子型等の種々のもので実施可能である。
いずれにしても、近年の電磁界解析技術の進展は著しいものがあるので、高調波磁束の抑制は改善が期待される。
【0018】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明によれば、極数変換に伴う発電電動機の構造(磁極とその結線方法)を簡単化し、及び極の切り替えの回路構成を簡単化し、さらに、磁束の利用率の向上と高調波磁束発生を抑制できるという、優れた効果を奏する。
また、本発明は、揚水機に限らず、落差変動の大きな地点での水車特性の改善にも、多速度機化は非常に効果的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る二速度発電電動機の磁極コイルの理想モデルと対比した模式説明図である。
【図2】(a)、(b)は実施形態にかかる発電電動機のコイルとスリップリングの接続状態を説明した界磁回路構成の説明図である。
【図3】ポンプ水車の特性説明図である。
【図4】一般的な二速度機の14極運転時の界磁回路構成の説明図である。
【図5】図4の二速度機の12極運転時の界磁回路構成の説明図である。
【図6】図4の二速度機のコイル配置例の理想モデルと現実モデルの説明図である。

Claims (3)

  1. 極数変換法により複数の設定回転速度で運転できるようにした発電電動機において、
    発電電動機は回転界磁型であって、発電電動機の界磁の全磁極を複数の小磁極に分割し、
    これらの分割磁極はコイル端子を引き出しており、複数の設定回転速度に対応して予め定めた複数種類の磁極配列の種類毎にスリップリング対を設け、予め定めた磁極配列の種類に対応する分割磁極のコイル端子を、対応するスリップリング対にスイッチを介さずに並列接続し、
    上記予め定めた複数種類の磁極配列のうちで一つの設定回転速度に対応した磁極数を他の設定回転速度に対応した磁極数よりも少なくするのを、複数の分割磁極のうちでそのコイル端子をスリップリング対に接続しないものを設けることにより行うことを特徴とする多速度発電電動機。
  2. 請求項1の多速度発電電動機を揚水発電のポンプ水車に用い、かつ、ポンプ運転時の磁極数を水車運転時の磁極数よりも少なくしたことを特徴とする多速度発電電動機。
  3. 前記分割磁極のコイル端子のスリップリング対への並列接続は、複数種類の磁極配列の界磁回路を構成するように+極と−極の接続向きおよび非接続を設定したことを特徴とする請求項1または2に記載の多速度発電電動機。
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