近年、ケーブルテレビ加入者の増加に伴って、放送を各家庭まで分配するためのケーブル分配網も大規模化し、また、ケーブルテレビのデジタル化も進んでいる。デジタル化のためには新たな設備投資が必要であるが、設備コストを低減するために、複数のケーブル事業者で設備を共有化する傾向にある。特に、マスター局のデジタル放送送信装置を共有し、各ケーブル事業者で、番組を編成し直して放送する形態があり、大規模化したケーブル分配網の中には、あるサービスに対する周波数の割当てが異なる複数のサブケーブル分配網から構成されるような階層化されたケーブル分配網が存在する。ここで、サービスとは、デジタル放送で放送される連続して編成された複数の番組のことをいう。
図26は、そのようなサブケーブル分配網から構成される階層化されたケーブル分配網の例を示す図であり、ケーブル分配網101は、複数のサブケーブル分配網111〜115から構成される。デジタル放送は、ケーブルマスター局121からサブケーブル分配網111に送信され、ケーブルサブ局122は、サブケーブル分配網111からのデジタル放送を、次のサブケーブル分配網112に送信する。しかし、サブケーブル分配網111と次のサブケーブル分配網112との周波数割当が異なると、ケーブルサブ局122は、サービスを伝送する周波数をサブケーブル分配網112に割当てられている周波数に変換して送信する。したがって、サブケーブル分配網が異なると、同じサービスでも、そのサービスを伝送する周波数は、同じであるとは限らない。
図27は、サービスを識別するためのサービスIDとそのサービスが伝送される周波数とを周波数割当毎に示す図であり、あるサービスがどの周波数で伝送されているかを周波数割当毎に示している。サブケーブル分配網111、112、113にて用いている周波数割当は、それぞれ、周波数割当1、2、3であり、例えば、サービスIDが101のサービスについては、周波数割当1、2、3に対し、それぞれ、506、412、324MHzという周波数を用いて伝送されていることが分かる。
このようなケーブル分配網では、サブケーブル分配網が異なる周波数割当を用いていれば、チャネル選局情報用にサブケーブル分配網毎に送出されるNIT(Network Information Table)の内容が異なるため、ケーブルサブ局において、NITの書き換えが行なわれる。NITには、そのサブケーブル分配網に送出されるサービスのサービスIDと、そのサービスが伝送される周波数とが含まれる。このNITは、ISO/IEC13818−1で規定されているTS(Transport Stream、トランスポートストリーム)に含まれる情報で、映像や音声が圧縮されたデジタルデータと共に伝送される。
図28は、NITに含まれる情報を説明するための図であり、図中、301、302、303は、それぞれ、周波数割当1、2、3用のNITで、それぞれ、対応する周波数割当を採用しているサブケーブル分配網で用いられる。NITの内容については、例えば、周波数割当2用NIT302を例にとると、サービスID101、102、103と、これらのサービスIDを持つサービスが伝送される周波数412、406、424MHzとが対応付けられて記述されている。これらの周波数は、図27の周波数割当2の欄の周波数に対応している。また、テーブルIDは、このテーブルの種類を示すIDであり、NITの場合「0x40」である。
図29は、ケーブルマスター局内の従来技術によるデジタル放送送信装置の構成図であり、デジタル放送送信装置400は、ケーブルマスター局121に設置され、サブケーブル分配網111に放送を送信する。このデジタル放送送信装置400は、BSトランスモジュレーション方式のデジタル放送送信装置であり、アンテナにてBSデジタル放送を受信し、これをBSデジタル復調器412で復調し、トランスポートストリームを発生する。NIT書き換え器414は、このトランスポートストリームに含まれるBSデジタル放送のNITを、周波数割当1用NIT発生器421で発生させた周波数割当1用のNITに書き換える。書き換えられたトランスポートストリームは、ケーブル変調器415で変調され、サブケーブル分配網111へ送信される。
図30は、ケーブルサブ局内の従来技術によるデジタル放送送信装置の構成図であり、サブケーブル分配網112に放送を送信するデジタル放送送信装置を示している。サブケーブル分配網112、113用のデジタル放送送信装置は、それぞれ、ケーブルサブ局122、123に設置される。図30において、デジタル放送送信装置500は、サブケーブル分配網111用に送信された信号をケーブル復調器512で復調し、トランスポートストリームを発生する。NIT書き換え器414は、このトランスポートストリームに含まれる周波数割当1用のNITを、周波数割当2用NIT発生器422で発生させた周波数割当2用のNITに書き換える。書き換えられたトランスポートストリームは、ケーブル変調器415で変調され、サブケーブル分配網112へ送信される。変調の際、必要な周波数変換も行なわれる。
図31は、従来技術によるデジタル放送受信機(「受信機」と略す)の選局時のフローチャートであり、以下、サブケーブル分配網113に存在するデジタル放送受信機133の受信時の選局動作を例にして説明する。ユーザが、サービスIDを入力する(ステップS001)と、デジタル放送受信機133は、現在受信中のTS(トランスポートストリーム)からPAT(Program Association Table)を取得する(ステップS002)。PATには、このTSに含まれるサービスのサービスIDとそのサービスIDに対応したPMT(Program Map Table)を取得するために必要な情報、すなわち、PMTの所在を示す識別子とがリストされている。
PAT内のそのリストに、ユーザにより入力されたサービスIDと同じサービスIDが存在するかどうかスキャンする(ステップS003)。もし有れば、このTS中に該当サービスが存在すると判断して、ステップS008に進み、無ければ、存在しないと判断してステップS004に進み、TSからNITを取得する(ステップS004)。デジタル放送受信機133の場合は、サブケーブル分配網113が、周波数割当3を用いているため、周波数割当3用NIT303が得られる。
次に、ユーザにより入力されたサービスIDのサービスが伝送される周波数をNITから取得する(ステップS005)。デジタル放送受信機133の場合、入力されたサービスIDが、「102」であれば、周波数割当3用NIT303から、318MHzが得られる。得られた周波数にチューナを同調させ、ユーザにより入力されたサービスIDのサービスを含むTSを受信し(ステップS006)、新たに受信したTSのPATを取得する(ステップS007)。次に、PAT内の情報を元にPMTを取得し、さらに、これを元に必要なビデオ用とオーディオ用のES(Elementary Stream)を取得して、映像と音声を復号する(ステップS008)。
類似する従来技術として、放送主局から送信する複数のエリアに分配されるデジタル放送のトランスポートストリーム(TS)に含まれるNIT内のエリアコード領域にTSを送信する全てのサービスエリアを示すエリア情報を付与することで、他のエリアに中継する放送支局におけるエリアコードの書き換えを不要にして中継処理を大幅に簡略化できることが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
引用した特許文献を次に示す。
特開2002−57998号公報(第2−22頁、第4図)
しかしながら、前述の従来技術では、周波数割当の異なるサブケーブル分配網毎に各ケーブルサブ局において該当する周波数割り当て用のNITを発生させ、RF(Radio Frequency)信号を復調して、一旦トランスポートストリームに変換し、そこに含まれているNITを、発生させたNITに書き換え、再度RF信号に変調する必要があり、ケーブルサブ局の設備が複雑化、高コスト化する問題があった。
また、特許文献1に記載の技術は、地上波デジタル放送向けの技術であり、ケーブル分配網への適用はできないという問題があった。
本発明は、以上のような複数のサブケーブル分配網から構成されるケーブル分配網における問題点を解決するための、当該ケーブル分配網に対するデジタル放送送信装置及び、当該ケーブル分配網におけるデジタル放送受信機を提供することを目的とする。
本発明により、ケーブルサブ局においては周波数変換を行うのみで済み、NITの書き換え処理等が不要になり、ケーブルサブ局の設備を簡略化、低コスト化できる。
第1の発明は、サービスに対する伝送周波数の割当てが異なる、複数のサブケーブル分配網から構成されたケーブル分配網に対し、デジタル放送信号を送信するデジタル放送送信装置において、該デジタル放送送信装置は、複数の前記サブケーブル分配網における周波数割当を識別するための周波数割当IDと、該周波数割当IDによって識別される周波数割当に従ってサービスを識別するためのネットワークID及びサービスIDと、該ネットワークID及びサービスIDによって識別されるサービスに割り当てられた伝送周波数とを示す、前記複数のサブケーブル分配網に対応するチャネル選局情報を生成し、送信するデジタル放送信号に前記生成したチャネル選局情報を付加する手段を備えたデジタル放送送信装置とすることを特徴とする。
また第2の発明は、前記第1の発明に記載のデジタル放送送信装置において、前記チャネル選局情報を、一つ以上の特定のトランスポートストリームに含めて送信することを特徴とする。
また、第3の発明は、前記第2の発明に記載のデジタル放送送信装置において、前記デジタル放送送信装置は、前記周波数割当IDと、該周波数割当IDを有するチャネル選局情報のバージョンを表すバージョン番号と、該周波数割当IDを有するチャネル選局情報を含む前記特定のトランスポートストリームの伝送周波数と、を有する追加チャネル選局情報を生成し、送信するデジタル放送信号に前記生成した追加チャネル選局情報を付加する手段を備えたことを特徴とする。
また、第4の発明は、前記第1〜3の発明のいずれかに記載のデジタル放送送信装置において、前記チャネル選局情報はISO/IEC 13818−1で定義されるプライベートセクションシンタックスに従うチャネル選局情報であり、前記周波数割当IDは前記プライベートセクションシンタックスにおけるテーブル識別拡張であることを特徴とする。
また、第5の発明は、前記第1〜4の発明に記載のデジタル放送送信装置において、前記チャネル選局情報は、ネットワークに関する情報を記述するネットワーク情報記述部を複数備え、前記ネットワーク情報記述部は、前記ネットワークを識別するネットワークIDと、前記サービスIDのうち前記ネットワークに属するサービスのサービスIDと、前記伝送周波数のうち前記ネットワークに属するサービスに前記周波数割当によって割り当てられた伝送周波数と、を備えることを特徴とする。
また、第6の発明は、サービスに対する伝送周波数の割当てが異なる、複数のサブケーブル分配網から構成されたケーブル分配網から送信される、複数の前記サブケーブル分配網における周波数割当を識別するための周波数割当IDと、該周波数割当IDによって識別される周波数割当に従ってサービスを識別するためのネットワークID及びサービスIDと、該ネットワークID及びサービスIDによって識別されるサービスに割り当てられた伝送周波数とを示す、前記複数のサブケーブル分配網に対応するチャネル選局情報を含むデジタル放送信号を受信するデジタル放送受信機であって、該デジタル放送受信機は、前記周波数割当IDに基づいて受信したデジタル放送信号における前記チャンネル選局情報から、該デジタル放送受信機が接続されたサブケーブル分配網に適合するチャネル選局情報を抽出する適合チャネル選局情報抽出手段を備え、該適合チャネル選局情報抽出手段が抽出したチャネル選局情報を、受信したいサービスが伝送される伝送周波数を取得するための選局用データとして使用するデジタル放送受信機とすることを特徴とする。
また、第7の発明は、前記第6の発明に記載のデジタル放送受信機において、前記適合チャネル選局情報抽出手段は、あらかじめ設定された周波数割当IDと一致する周波数割当IDを有するチャネル選局情報を抽出することを特徴とする。
また、第8の発明は、前記第6の発明に記載のデジタル放送受信機において、前記適合チャネル選局情報抽出手段は、あらかじめ設定された周波数において伝送される特定のトランスポートストリームから、あらかじめ設定された周波数割当IDと一致する周波数割当IDを有するチャネル選局情報を抽出することを特徴とする。
また、第9の発明は、前記第6の発明に記載のデジタル放送受信機において、前記適合チャネル選局情報抽出手段は、受信したデジタル放送信号から、請求項3に記載の追加チャネル選局情報を抽出する手段と、抽出した追加チャネル選局情報から、あらかじめ設定された周波数割当IDと一致する周波数割当IDにより特定されるトランスポートストリームの伝送周波数とチャネル選局情報のバージョン番号とを抽出する手段と、を備え、以前取得したチャネル選局情報が正しく保存されていない場合、又は、以前取得したチャネル選局情報のバージョン番号より、抽出した前記バージョン番号の方が新しい場合は、抽出した前記伝送周波数を用いて伝送されるトランスポートストリームからチャネル選局情報を抽出することを特徴とする。
また、第10の発明は、前記第6〜9の発明に記載のデジタル放送受信機において、チャネル選局情報を利用するか否かを示すフラグ設定手段を有し、当該フラグがチャネル選局情報を利用することを示している場合、前記適合チャネル選局情報抽出手段にてチャネル選局情報を抽出し、該チャネル選局情報を前記選局用データとして使用することを特徴とする。
また、第11の発明は、前記第6〜10の発明に記載のデジタル放送受信機において、前記チャネル選局情報はISO/IEC 13818−1で定義されるプライベートセクションシンタックスに従うチャネル選局情報であり、前記周波数割当IDは前記プライベートセクションシンタックスにおけるテーブル識別拡張であることを特徴とする。
また、第12の発明は、前記第6〜11の発明に記載のデジタル放送受信機において、前記チャネル選局情報は、ネットワークに関する情報を記述するネットワーク情報記述部を複数備え、前記ネットワーク情報記述部は、前記ネットワークを識別するネットワークIDと、前記サービスIDのうち前記ネットワークに属するサービスのサービスIDと、前記伝送周波数のうち前記ネットワークに属するサービスに前記周波数割当によって割り当てられた伝送周波数と、を備えることを特徴とする。
本発明によれば、ケーブルサブ局にてNITを書き換える必要が無くなるため、ケーブルサブ局の設備を簡素にすることができ設備コストを低減することが出来る。また、チャネル選局情報即ちNITや拡張NITをケーブルマスター局で集中管理することができ、ケーブルサブ局での管理は不要になる。
また、チャネル選局情報即ち拡張NIT専用のトランスポートストリームを用いることにより、全拡張NITの伝送容量を減少させることができる。
また、チャネル選局情報即ち拡張NITのバージョン番号とこの拡張NITを含む拡張NIT専用のトランスポートストリームの伝送周波数とを含む拡張NIT記述子を用いることにより、デジタル放送受信機の選局時間を減少させることができ、また、あらかじめ拡張NIT専用のトランスポートストリームの伝送周波数を設定しておく手間が省ける。
また、チャネル選局情報即ち拡張NITのシンタックスをISO/IEC 13818−1で定義されるプライベートセクションシンタックスに従うものとすることにより、トランスポートストリームからセクションを抽出するICや抽出されたセクションの構文解析を行なうソフトウエア等を汎用のものを利用することができ、受信機の製造コストを低減させることができる。
また、チャネル選局情報即ち拡張NITは、各ネットワークに関する情報を記述したネットワーク情報記述部を複数備えることにより、該チャネル選局情報が伝送されるトランスポートストリームにアクセスするだけで、全てのネットワークの情報を取得することができ、より短い時間で全てのネットワークの情報を取得することができる。
図1は、ケーブルマスター局内に設置される本発明のデジタル放送送信装置の実施例の構成図であり、デジタル放送送信装置700は、図26のケーブル分配網において、ケーブルマスター局121に配置され、図29のデジタル放送送信装置400に置き換わるものである。デジタル放送送信装置400との違いは、拡張NIT発生器722、723を新たに備えている点である。これらの拡張NIT発生器722、723は、それぞれ、周波数割当2、3用の拡張NIT(仮称)(チャネル選局情報)を発生する。
また、サブケーブル分配網114と115の周波数割当が3と4であれば、さらに、周波数割当4用の拡張NIT発生器を備える必要がある。用意すべき拡張NIT発生器の数は、以下のように決める。例えば、ケーブル分配網を構成する全てのサブケーブル分配網111〜115で用いている周波数割当が、1、2、3、3、4であれば、周波数割当の種類は1、2、3、4の4種類であり、これらの種類の数だけ拡張NIT発生器を用意すればよい。ただし、この中の1個はNIT発生器でも良い。2種類以上の周波数割当に対応する複数の種類のNITが1つのTS中に含まれていると、受信機ではこれらを区別できないため、NIT発生器は、2個以上存在してはならないが、拡張NITは、複数存在しても良い。この場合、拡張NIT発生器を4個用意すれば良いが、NIT発生器を1個と拡張NIT発生器を3個用意しても良い。図1では、NIT発生器を用いた場合を示しており、以下この構成を基に説明するが、NIT発生器421の代わりに、拡張NIT発生器を用いても良い。NIT発生器を用いず、4個全て拡張NIT発生器を用いる場合、受信機は、拡張NITのみに対応するように機能を簡素化することもできる。
NIT書き換え器414aは、BSデジタル復調器412から出力されたトランスポートストリームに含まれるNITを、NIT発生器421で発生させたNITと拡張NIT発生器722、723等で発生させた拡張NITとに書き換える。この場合、書き換えられる前のトランスポートストリームにはBSデジタル放送のNITが含まれ、書き換え後のトランスポートストリームには、周波数割当1用NIT、周波数割当2用拡張NIT、周波数割当3用拡張NIT、・・・が含まれることになる。書き換えられたトランスポートストリームは、ケーブル変調器415で変調され、サブケーブル分配網111へ送信される。
図2は、ケーブルサブ局内に設置されるデジタル放送送信装置の実施例の構成図であり、ケーブルサブ局122に設置されるデジタル放送送信装置800を示している。このデジタル放送送信装置800は、図30の従来技術によるデジタル放送送信装置500の代わりに設置される。デジタル放送送信装置500では、NITの書き換えを行う必要があったが、デジタル放送送信装置800では、その必要が無くなり、周波数変換器810でサービスを伝送する周波数の変換を行うのみとなる。この周波数変換器810は、周波数割当1を周波数割当2に変換するため、図27に示した対応にしたがい、周波数506、512、556MHzを、それぞれ、412、406、424MHzに変換する。
図3は、本発明で用いるNITと拡張NITを説明するための図であり、図中、902と903は、それぞれ、周波数割当2と3用の拡張NITである。これらは、それぞれ、図28の周波数割当2、3用NIT302、303に対応し、拡張NITは、NITに含まれるサービスIDとそのサービスIDのサービスが伝送される周波数のほかに、周波数割当を識別するための周波数割当IDを含む。また、拡張NITのテーブルIDは、拡張NITを示すIDをあらかじめ決定しておき、その値を用いる。この例では、「0xXX」(例えば、0x90(16進数表記))としている。尚、拡張NITに含まれるサービスIDとそのサービスIDのサービスが伝送される周波数は、NITのものと同じである。
異なる周波数割当用のNITは、受信機において区別できないが、拡張NITは、区別できる。例えば、周波数割当2用NIT302と周波数割当3用NIT303とは、周波数割当IDが無いために区別できず、単なるNITとしか認識されない。しかし、周波数割当2用拡張NIT902と周波数割当3用拡張NIT903は、周波数割当IDの値が異なるので区別できる。また、NITと拡張NITとは、テーブルIDの値が異なるので区別できる。
図4は、デジタル放送受信機の選局時のフローチャートであり、図31の従来技術によるデジタル放送受信機の選局時のフローチャートとの違いは、新たにステップS101、S102、S103が追加された点である。入力されたサービスIDと同じサービスIDが記述されているかPAT内をスキャンし(ステップS003)、無かった場合、ステップS101に進み、拡張NIT(チャネル選局情報)を利用するか否かを示すあらかじめ設定されたフラグ、つまり、拡張NIT使用フラグを調べる(ステップS101)。拡張NIT使用フラグが拡張NITを用いることを示していれば、ステップS102に進み、用いないことを示していれば、ステップS004に進む。拡張NITを用いる場合は、あらかじめデジタル放送受信機に設定された周波数割当IDと、同じ周波数割当IDを持つ拡張NITをTSから取得し(ステップS102)、取得した拡張NITから入力されたサービスIDのサービスが伝送される周波数を取得し(ステップS103)、ステップS006に進む。以上のように、あらかじめ拡張NIT使用フラグと周波数割当IDをデジタル放送受信機に設定しておいて、拡張NITを使用する場合は、NITの代わりにあらかじめ設定された周波数割当IDを持つ拡張NITから周波数を得るようにする。即ち、図4は、当該デジタル放送受信機が接続されたサブケーブル分配網に適合するチャネル選局情報を抽出する適合チャネル選局情報抽出手段を提供すると共に、抽出したチャネル選局情報から、受信したいサービスが伝送される伝送周波数を取得する手段を提供している。
図5は、デジタル放送受信機に拡張NIT使用フラグと周波数割当IDを設定するためのフローチャートであり、最初、拡張NITを用いるか否かをユーザに入力させる(ステップS111)。ユーザの入力にしたがい拡張NIT使用フラグを設定し、設定した拡張NIT使用フラグを不揮発性メモリに保存する(ステップS112)。次に、保存した拡張NIT使用フラグをチェック(ステップS113)して、拡張NITを用いない場合は、周波数割当IDを設定する必要が無いので終了する。拡張NITを用いる場合は、周波数割当IDをユーザに入力させ(ステップS114)、入力した周波数割当IDを不揮発性メモリに保存し(ステップS115)、終了する。
尚、ユーザは、「デジタル放送受信機を設置する場所で放送を受信するために、拡張NITを用いる必要があるか否かということ」と、「拡張NITを用いる必要がある場合の周波数割当ID」とを、ケーブル事業者から、知らせてもらい、図5のフローチャートにしたがって、それぞれ、拡張NIT使用フラグおよび周波数割当IDとしてデジタル放送受信機に設定する。例えば、サブケーブル分配網113に接続している受信機133のユーザには、拡張NITを用いることと、周波数割当IDは、「3」であることを知らせておき、また、サブケーブル分配網111に接続している受信機131のユーザには、拡張NITを用いないことを知らせておき、ユーザは、この情報に従って受信機を設定する。
図6は、本発明の他の実施例を適用したケーブル分配網を示す図であり、ケーブル分配網1201は、サブケーブル分配網1212〜1215から構成される。サブケーブル分配網1212〜1215は、それぞれ、周波数割当1、3、1、2が割当てられている。ケーブルサブ局1222〜1225は、それぞれ、サブケーブル分配網1212〜1215へデジタル放送を送信している。ケーブルマスター局1221からケーブルサブ局1222〜1225へは、光ファイバ1211によってデジタル放送を配信している。受信機1233は、図26の受信機131、132、133と同じ構成である。
図7は、ケーブルマスター局に設置される本発明のデジタル放送送信装置の他の実施例の構成図であり、デジタル放送送信装置701は、ケーブルマスター局1221に設置される。図1に示すデジタル放送送信装置700と異なる点は、ケーブル変調器415を光変換器2415に置き換えている点であり、この光変換器2415は、NIT書き換え器414aの出力を光信号に変換し光ファイバに送信する。
図8は、ケーブルサブ局に設置されるデジタル放送送信装置の他の実施例の構成図であり、デジタル放送送信装置801は、ケーブルサブ局1223に設置され、光ファイバによって配送されてきたデジタル放送を光同軸変換器820によってRF信号に変換し、同軸ケーブルを通してケーブル分配網1213に送信する。RF信号に変換する際には、周波数割当3の割当てになるように周波数も変換する。すなわち、図27の周波数割当に従って、サービスID101、102、103のサービスが、それぞれ、周波数324、318、306 MHzを用いて伝送されるように変換される。
このように、ケーブルマスター局1221とケーブルサブ局1222〜1225の間が光ファイバで結ばれているような場合でも、本発明を適用できる。この結果、図8に示すデジタル放送送信装置801において、周波数割当3用のNITを発生させる必要が無くなり、図30のNIT発生器422やNIT書き換え器414が必要なくなる。
図9は、本発明の実施例におけるTS(トランスポートストリーム)の概念図であり、デジタル放送がトランスポートストリームTS1、TS2、TS3から構成されることを示している。サービスIDが101、102、103のサービスは、それぞれ、トランスポートストリームTS1、TS2、TS3に含まれる。周波数割当1用NIT、周波数割当2用拡張NIT、周波数割当3用拡張NITは、全てのTSに含まれ、周波数は、TS単位に割当てられる。例えば、周波数割当1の場合、図27の周波数割当より、サービスIDが101、102、103のサービスは、それぞれ、周波数506、512、556MHzに割当てられており、トランスポートストリームTS1、TS2、TS3を、それぞれ、周波数506、512、556MHzに割当てることによって実現する。
ところが、サブケーブル分配網の数がさらに多くなり、周波数割当の種類の多いケーブル分配網では、さらに多くの種類の拡張NITを必要とする。すると、拡張NITは、全てのTSについて挿入する必要があるため、多くのTSを放送しているケーブル分配網ほど拡張NITに割当てる伝送容量が大きくなる。例えば、BSデジタル放送では、TSの数は、10個存在し、NITの伝送容量は、1TS当たり約500bpsである。1種類の拡張NITの伝送容量、つまり、1周波数割当に対応する拡張NITの伝送容量は、周波数割当IDが追加されている分だけ若干大きいもののNITとほぼ同じ伝送容量である。よって、周波数割当が1種類増加した時、これに対応する拡張NITに必要なTS10個分の伝送容量は、500×10=5Kbpsとなる。標準画質の画像の伝送容量は、約6Mbpsであるから、1200個の周波数割当に関する拡張NITを伝送すると標準画質の画像が1個伝送できなくなり大きな問題となる。
図10は、ケーブルマスター局内に設置される本発明のデジタル放送送信装置のさらに他の実施例の構成図であり、デジタル放送送信装置702は、上述した問題を解決するために、拡張NIT用TS(拡張NITを含んだ特定のトランスポートストリーム)を発生できるように改良が加えられている。図26のケーブル分配網101において、ケーブルマスター局121に設置されるデジタル放送送信装置は、図1のデジタル放送送信装置700の代わりに、図10に示すデジタル放送送信装置702のような構成とする。図1のデジタル放送送信装置700との相違点は、拡張NIT用TSを発生させる拡張NIT用TS発生器1414を設けている点である。拡張NIT用TSには、周波数割当2、3、・・・用拡張NIT発生器722、723、・・・で発生させた拡張NITが含まれる。図1のNIT書き換え器414aは、入力したトランスポートストリームのNITを削除し、周波数割当1用NIT、周波数割当2、3用拡張NITを挿入していたが、図10のNIT書き換え器414は、元のNITを削除し、周波数割当1用NITを挿入する。
図11は、ケーブルマスター局内に設置される本発明のデジタル放送送信装置のさらに他の実施例の構成図であり、デジタル放送送信装置703は、周波数割当1に関する情報を、NITではなく拡張NITで伝送する場合に用いられる。この場合、周波数割当1用拡張NIT発生器721の出力は、他の拡張NIT発生器722、723と共に拡張NIT用TS発生器1414aに接続する。また、NIT書き換え器414には、ダミーのNIT発生器1920を接続する。
図12は、本発明の他の実施例におけるTSの概念図であり、同図と、図9に示したTSの概念図との差は、拡張NIT用TSが新設されている点である。拡張NITは、トランスポートストリームTS1、TS2、TS3には含まれずに、拡張NIT用TSに含まれるが、拡張NIT用TSには、サービスは含まれない。例えば、前述した全てのTSが10個で、NITの伝送容量が500bpsであった場合、周波数割当1種類当たりに必要となる拡張NITの伝送容量の合計は、500×1=0.5Kbpsとなり、前述した実施例の時と比べて大幅に減少する。
図13は、各周波数割当において、拡張NIT用TSが伝送される伝送周波数を示す図であり、周波数割当が、1、2、3のとき、それぞれ、周波数562、430、336MHzを用いて拡張NIT用TSが伝送されることを示している。
図14は、デジタル放送受信機の選局時の他のフローチャートであり、図4のフローチャートと比較すると、ステップS1501が追加されている点が異なっている。拡張NIT使用フラグを調べ(ステップS101)、拡張NITを使用することを示している場合、あらかじめ設定された拡張NIT用TSの伝送周波数にチューナを同調させ、拡張NIT用TSを受信し(ステップS1501)、ステップS102に進む。その他は、図4と同じである。このデジタル放送受信機では、あらかじめ拡張NIT用TSの伝送周波数を設定しておき、選局時に、その伝送周波数にチューナを同調させることによって拡張NIT用TSを取得する。
図15は、デジタル放送受信機に拡張NIT使用フラグと周波数割当IDを設定するための他のフローチャートであり、図5のフローチャートに対応するもので、拡張NIT用TSの伝送周波数の設定を可能としている。相違点は、ステップS1601とS1602が追加された点である。ステップS111での入力結果が拡張NITを用いる場合は(ステップS113)、ユーザに拡張NIT用TSの伝送周波数を入力させ(ステップS1601)、ユーザにより入力された拡張NIT用TSの伝送周波数を不揮発性メモリに保存し(ステップS1602)、ステップS114に進む。すなわち、拡張NITを用いる場合には、周波数割当IDを設定し、さらに、拡張NIT用TSの伝送周波数を設定する。「拡張NIT用TSの伝送周波数」については、「拡張NITを使用するか否かということ」と、「周波数割当ID」と共に、ケーブル事業者からユーザに通知してもらう。
なお、拡張NIT用TSの伝送周波数については、規格等によって、あらかじめ決めておいても良い。この場合は、図15のフローチャートを用いて拡張NIT用TSの伝送周波数を設定する必要は無くなる、また、伝送周波数の候補を複数個決めておいても良い。送信装置では、この候補のなかから伝送周波数を決める。受信機では、あらかじめ設定された周波数割当IDを持つ拡張NITを受信できるまでこの候補の周波数に順番に同調して行き、拡張NITを受信できた周波数を伝送周波数として記憶しておけばよい。
このように、拡張NITを全てのTSに配置せずに、拡張NIT用TSに配置することで、拡張NITの全伝送容量を減少させることができる。
拡張NIT用TSは、複数存在しても良い。例えば、周波数割当が1、2、3、4の4種類存在する時、周波数割当IDが1、2用の拡張NITを拡張NIT用TS1に配置し、周波数割当IDが3、4用の拡張NITを拡張NIT用TS2に配置することもできる。このような場合、ケーブル事業者は、「拡張NIT用TSの伝送周波数」として、対応する周波数割当ID用の拡張NITを含む拡張NIT用TSが伝送されている周波数をユーザに通知する。この例では、周波数割当が「3」の場合、周波数割当3用の拡張NITを含む拡張NIT用TS2の伝送周波数を通知する。
図14に示すフローチャートに基づいて選局を行うデジタル放送受信機は、拡張NITを用いて選局を行う際、PAT内に希望のサービスが無い場合は、拡張NITを取得するために、拡張NIT用TSの伝送周波数にチューナを同調させて拡張NIT用TSを受信し(図14のステップS1501)、さらに、希望のサービスが伝送されている周波数にチューナを同調させる(図14のステップS006)というように、2回の同調動作が必要であり、選局に時間がかかるという問題がある。また、ユーザは、「拡張NITを用いるか否かということ」と「周波数割当ID」のほかに、「拡張NIT用TSの伝送周波数」をあらかじめ設定しておく必要があり、手間がかかるという問題がある。
図16は、NITの中に拡張NIT記述子(追加チャネル選局情報)を記述した時のNITの概念図であり、同図の拡張NIT記述子は、図10のデジタル放送送信装置702中の周波数割当1用NIT発生器421で発生させるNITの中に記述される。
周波数割当1用の周波数割当情報をNITではなく拡張NITで受信機に供給する場合は、図11のデジタル放送送信装置703のような構成になるが、この場合は、NIT発生器1920で発生させるNITの中に、拡張NIT記述子を記述する。すなわち、図12の概念図において、拡張NIT用TS以外のTS1、TS2、TS3の中に拡張NIT記述子が含まれるようにすればよい。
図17は、拡張NIT記述子に含まれる項目の対応を示す図であり、拡張NIT記述子は、周波数割当IDと、この周波数割当IDをもつ拡張NITを含む拡張NIT用TSが伝送される伝送周波数と、この拡張NITのバージョン番号との対応表として記述されている。例えば、周波数割当IDが「1」に対する拡張NITである周波数割当1用拡張NITを含む拡張NIT用TSの伝送周波数は、562MHzであり、周波数割当1用拡張NITのバージョン番号は、「3」であることを示している。このような情報を、ケーブル分配網内で利用している全ての周波数割当について記述する。ただし、拡張NITに含まれる周波数割当情報を、拡張NITではなく、NITを用いて受信機に供給する周波数割当に関しては記述しない。言い換えると、図17の拡張NIT記述子は、図11に示すデジタル放送送信装置703から送出される場合の拡張NIT記述子であり、図10に示すデジタル放送送信装置702から送出される拡張NIT記述子は、図17の拡張NIT記述子の項目のうち、ID=1の周波数割当に関する項目が削除されたものとなる。
図18は、拡張NITに含まれるバージョン番号を説明するための図であり、バージョン番号が記述された周波数割当1、2、3用拡張NITを示している。図3に示した周波数割当2、3用拡張NIT902、903をさらに詳細に記述したものが、図18の2202、2203である。拡張NITは、NIT、PAT、PMTと同じくテーブル(セクション)形式の構造をしており、必ずバージョン番号を含んでいる。このバージョン番号は、5ビットで表わされる非負の整数であり、10進数で「0」から「31」までの値をとる。あるテーブル(セクション)の内容が変化した時、そのテーブル(セクション)に含まれるバージョン番号を「1」増加させる。値が「31」で更新する場合は、「0」に戻す。このバージョン番号は、受信側でテーブル(セクション)が更新されたかどうかを判断する目的で使用される。
図19、図20は、デジタル放送受信機の選局時のさらに他のフローチャートであり、拡張NIT記述子を用いて選局する動作を示している。図14のフローチャートと比べると、ステップS101にて、拡張NIT使用フラグを調べた結果、拡張NITを使用する場合以降の処理が大きく異なっている。拡張NITを使用する場合、NITを取得し(ステップS2300)、NIT中に記述されている拡張NIT記述子から、あらかじめ設定された周波数割当IDを元に、対応する拡張NITを含む拡張NIT用TSの伝送周波数と対応する拡張NITのバージョン番号を取得し(ステップS2301)、前回取得した拡張NITが正しく保存されているか否かを調べる(ステップS2302)。
保存のために不揮発性メモリを用いていて、工場出荷時の状態のままで以前に一度も拡張NITを取得したことが無い場合や、受信機の電源を入れてから一度も拡張NITを取得したことが無い場合や、以前に拡張NITを取得したことがあるが何らかの事情で保存内容が消失してしまった場合などは、拡張NITは、正しく保存されていないと判断してステップS2306へ進む。以前に拡張NITを取得したことがあり、保存内容を正しく読み出せた場合は、拡張NITは、正しく保存されていると判断して、ステップS2301にて取得したバージョン番号と保存しておいた拡張NITのバージョン番号を比較して(ステップS2303)、比較結果により分岐する(ステップS2304)。取得したバージョン番号の方が新しければステップS2306へ進み、新しくなければ保存しておいた拡張NITから、入力されたサービスIDのサービスが伝送される周波数を取得し(ステップS2305)、ステップS006に進む。
ステップS2302で前回取得した拡張NITが正しく保存されていないと判断した場合は、ステップS2301にて取得した拡張NIT用TSの伝送周波数にチューナを同調させ、拡張NIT用TSを受信し(ステップS2306)、拡張NIT用TSの中からあらかじめ設定された周波数割当IDを持つ拡張NITを取得する(ステップS2307)。取得した拡張NITをメモリに保存し(ステップS2308)、その拡張NITから、入力されたサービスIDのサービスが伝送される周波数を取得して(ステップS2309)、ステップS006に進む。
以上のように、取得した拡張NITを、メモリに保存しておき、次に必要になった際に、拡張NIT記述子に記述されているバージョン番号と保存しておいた拡張NITのバージョン番号とを比較することによって、拡張NITの内容に変更がある場合のみ該当する拡張NITを含む拡張NIT用TSが伝送されている周波数にチューナを同調させるようにする。これによって、選局時、PAT内に希望のサービスIDのサービスが無い場合のチューナの同調動作の回数は、必ず2回であったものが、以前に取得した拡張NITが正しく保存されており、その後拡張NITが新しくなっていなければ、チューナの同調動作の回数は、1回で済み、選局時間が短縮される。
また、拡張NIT記述子に拡張NIT用TSの伝送周波数を記述しているので、ユーザがデジタル放送受信機に拡張NIT用TSの伝送周波数をあらかじめ設定しておく必要が無くなる。したがって、デジタル放送受信機への拡張NIT使用フラグと周波数割当IDとの設定は、図15ではなく、図5のフローチャートにしたがって行なわれる。
なお、拡張NIT記述子を備えたNITを送信装置が送信している場合において、受信機でこの記述子を無視し図14のフローチャートを用いて選局を行っても良い。
以上の実施例では、本発明を適用したデジタル放送送信装置を用いたケーブル分配網、及び、本発明を適用していないデジタル放送送信装置を用いたケーブル分配網の、いずれにおいても、同一の受信機が適用できるように、拡張NITを用いるかどうかを判断するための「拡張NIT使用フラグ」をデジタル放送受信機に設定し、この「拡張NIT使用フラグ」を用いて本発明が適用されているかどうかを判断している。しかし、すべてのデジタル放送送信装置が本発明を適用している場合は、この「拡張NIT使用フラグ」を用いる必要はない。この場合、図4、図14、図19、図20のデジタル放送受信機の選局時のフローチャートにおける「拡張NITを用いるか」どうかの判断(ステップS101)は、不要であり、常に、図4では、ステップS102、図14では、ステップS1501、図19、図20では、ステップS2300に進む。したがって、いずれの図でも、ステップS004、ステップS005は、不要になる。さらに、図5と図15に示したデジタル放送受信機に拡張NIT使用フラグと周波数割当IDを設定するためのフローチャートでは、「拡張NIT使用フラグ」の設定が必要なくなり、ステップS111、ステップS112、ステップS113は、不要になる。
次に、拡張NIT(チャネル選局情報)の一例である、FAT(Frequency Allocation Table)(仮称)について述べる。図22はFATがトランスポートストリームパケットに挿入される際のセクション(frequency_allocation_section)のシンタックス構造を説明するための図である。このシンタックスはISO/IEC 13818−1で定義されるプライベートセクションシンタックスに従っている。比較のために、図21にNITのシンタックス構造を示す。図22において、table_id2811はテーブルIDであり、例えば、前述した例であれば、「0x90」となる。frequency_allocation_id2812は周波数割当IDであり、前記プライベートセクションシンタックスにおけるテーブル識別拡張(table_id_extension)に相当する。ネットワーク情報記述部2805には図21に示すNITの内容がほぼそのまま記述される。network_id2802には図21のNITのnetwork_id2702が、バージョン番号等記述部2803には図21のNITのバージョン番号等記述部2703が、ネットワーク及びTS等記述部2804には図21のNITのネットワーク及びTS等記述部2704が記述される。また、ネットワーク情報記述部2805は、ループ構造のため、複数個記述可能となっている。よって、network_id2702が異なる複数のNITに記述されている内容を、1個のFATに含めることを可能としている。なお、ネットワークID(network_id)の「ネットワーク」とケーブル分配網の「網」は全く異なる概念である。
以上のFATのように、前記プライベートセクションシンタックスに従うことによって、このシンタックスに対応した様々な汎用の部品、例えば、TSからセクションを抽出するICや、抽出したセクションの構文を解析するソフトウエア等を利用することが出来、受信機の開発コスト、製造コストを低減させることが出来る。また、前記プライベートセクションシンタックスにおけるテーブル識別拡張を周波数割当IDとすることで、セクション抽出時にテーブルIDとテーブル識別拡張のみを用いてしか抽出を希望するセクションの指定が出来ないようなセクション抽出用ICをハードウエアとして利用し、他の複雑な処理をソフトウエア(すなわちCPU)で処理するような設計の受信機においても、所望の周波数割当IDを持つFATのセクションを、ハードウエアを用いて抽出することが出来、この結果、CPUの負荷を軽減することが出来るので、より低性能なCPUを用いることが出来、受信機の開発コスト、製造コストを低減させることが出来る。
次に、ネットワーク情報記述部2805を複数持つFATの運用例を示す。図23はこの運用例の放送の内容を示す概念図である。本運用例の放送は、network_id=0x4、0x7FE0、0x7FE1である3つのネットワーク(2901〜2903)から構成されている。ネットワーク2901は、2つのTS(2911、2912)から構成される。TS2911については、transport_stream_id(TSID)は0x40F0、original_network_id(ONID)は0x4であり、周波数割当ID=1と2の2つのFATと、サービスID=200のサービスを含んでいる。一方、TS2912については、transport_stream_id(TSID)は0x40F1、original_network_id(ONID)は0x4であり、サービスID=101と102の2つのサービスを含んでいる。
TS2911とTS2912とは、周波数割当ID=1の周波数割当においては、周波数767MHzを用いて伝送され、周波数割当ID=2の周波数割当においては、周波数747MHzを用いて伝送される。すなわち、サービスID=101、102、200の3つのサービスに関して、周波数割当ID=1では伝送周波数767MHzが割り当てられ、周波数割当ID=2では伝送周波数747MHzが割り当てられている。残り2つのネットワーク(2902、2903)についても、図23のとおりである。また、全てのTSにはNITは含まれておらず、代わりに、TS2911に含まれているFATを用いてサービスに割り当てられた伝送周波数を送信装置から受信機に知らせる。なお、FAT(拡張NIT)を特定のTSに含めて送信する場合、FAT用TS発生器(拡張NIT用TS発生器)を用いてFAT(拡張NIT)専用のTSを発生させなくてもよく、本運用例のように、サービスを含むTS2911のようなTSに含めてFAT(拡張NIT)を送信してもよい。
図24は、TS2911に含まれる周波数割当ID=1のFAT 3001の概要を示したものである。比較のために、周波数割当ID=1の周波数割当用のNITを図25に示す。FAT3001には、例えば、図23の運用例の場合、図24に示すように、3つのネットワーク(2901〜2903)に対応して、ネットワーク情報記述部(2805a〜2805c)がそれぞれ存在し、これらには、それぞれのネットワークに関する情報が記載されている。もし、FATを使わずに、NITを使った場合、図25に示すように、3つのネットワーク(2901〜2903)にそれぞれ対応した3つのNIT(3101〜3103)が必要となる。図25に示す3つのNIT(3101〜3103)は、それぞれのネットワークに含まれるTSに配置される。すなわち、NIT3101はTS2911とTS2912の双方に、NIT3102、3103はそれぞれTS2913、TS2914に配置される。
ところで、従来例では、NITは選局時に図31のステップS004において取得している。しかし、本運用例のようにネットワークが複数存在するような場合は、放送されている全てのネットワークのNITを、受信機を最初に使用する際に取得し、取得したNITに含まれるネットワークに関する情報は受信機の不揮発性メモリに保存しておき、選局の都度、NITを取得する代わりに、不揮発性メモリに保存した情報を使用するのが一般的である。このような場合、例えば、図23の運用例に示すネットワークの場合において、受信機の初期使用時に、3つのネットワークに関する情報を全て得るためには、3つのネットワークにそれぞれアクセスする必要が発生する。すなわち、周波数割当ID=1の周波数割当を採用しているサブケーブル分配網に接続している受信機においては、初期使用時に、ネットワーク2901の情報を得るために、まず、周波数767MHzに同調し、NITを受信できるまで待ち、NITを受信できたら、次のネットワーク2902の情報を得るために、チューナを761MHzに同調し、・・・といった手順が必要となる。
一方、本発明のように、FATを用いれば、FATの中に全てのネットワークの情報が記載されているので、FATが伝送されているTS(図23の運用例ではTS2911)にアクセスし、FATを取得するだけで、全てのネットワークの情報を取得することが出来、ネットワークの情報をより短い時間で取得することが可能となる。なお、前述したように、受信機は、初期使用時に、このようにして受信したネットワークの情報、すなわち、サービスを特定するためのnetwork_idとサービスIDと該サービスが伝送される周波数との対応関係、を不揮発性メモリに蓄えておき、選局の際に、network_idとサービスIDとで特定される或るサービスの伝送周波数を知るために用いる。
101…ケーブル分配網、111〜115…サブケーブル分配網、121…ケーブルマスター局、122〜125…ケーブルサブ局、131〜133…デジタル放送受信機(受信機)、301〜303…周波数割当用NIT、400、500…デジタル放送送信装置、412…BSデジタル復調器、414、414a…NIT書き換え器、415、415a…ケーブル変調器、421、422…周波数割当用NIT発生器、512…ケーブル復調器、700〜703、800、801…デジタル放送送信装置、721〜723…周波数割当用拡張NIT発生器、810…周波数変換器、820…光同軸変換器、902、903…周波数割当用拡張NIT、1201…ケーブル分配網、1211…光ファイバ、1212〜1215…サブケーブル分配網、1221…ケーブルマスター局、1222〜1225…ケーブルサブ局、1233…デジタル放送受信機(受信機)、1414、1414a…拡張NIT用TS発生器、1920…NIT発生器、2201〜2203…周波数割当用拡張NIT、2415…光変換器、2702…network_id、2703…バージョン番号等記述部、2704…ネットワーク及びTS等記述部、2802…network_id、2803…バージョン番号等記述部、2804…ネットワーク及びTS等記述部、2805、2805a〜2805c…ネットワーク情報記述部、2811…テーブルID、2812…周波数割当ID、2901〜2903…ネットワーク、2911〜2914…TS、3001…周波数割当ID=1のFAT、3101〜3103…周波数割当ID=1の周波数割当用のNIT。