JP4222692B2 - 無機材料固化体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内装材、外装材等の建材、路盤、躯体床、躯体壁、建造物等に利用可能な無機材料固化体に関する。
【0002】
【従来の技術】
内装材や外装材等に用いられるタイル等の陶磁器や煉瓦等の耐火物に代表される従来のセラミックス製品は、一般的には、天然に産出される粘土等の無機材料原料を水とともに所定割合で調合・混練して所定形状に成形し、こうして得られる成形体を高温に加熱することにより固相反応、焼結、溶融、結晶成長等を生じしめて固化させている。
【0003】
また、ブロックを成形したり、生コン等としてコンクリート製の躯体床や躯体壁等を施工する際に用いられたりするセメントは、一般的には、SiO2、Al2O3、Fe2O3、CaOを含む原料を所定割合で調合し、こうして得られる調合物を溶融するまで高温に加熱することによりクリンカーとし、このクリンカーをセッコウ(CaSO4・2H2O)とともに粉末状に粉砕してなる。このセメントは、砂や小石等を骨材とし、水等とともに混練されてセメントペーストとされる。そして、セメントペーストは、セメントを構成するC2S(2CaO・SiO2)、C3S(3CaO・SiO2)、C3A(3CaO・Al2O3)、C4AF(4CaO・Al2O3・Fe2O3)等の鉱物が水和反応してC3S2H3(3CaO・2SiO2・3H2O)等のセメント鉱物水和物を生じ、凝結及び硬化により固化する。この際、セッコウは凝結の時間調整を行う。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のセラミックス製品は所定形状で固化させるため、またセメントはクリンカーを得るために、高温に加熱しなければならない。このため、これらにより内装材、外装材、路盤、躯体床、躯体壁、建造物等の固化体を得ようとする場合には、大量のエネルギーの消費を生じ、環境上好ましくない。
【0005】
本発明は、上記従来の実状に鑑みてなされたものであって、高温に加熱する必要なく得られる無機材料固化体を提供することを解決すべき課題としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の無機材料固化体は、クリンカーの粉砕物であるセメントを構成する鉱物を含まず、風化した花崗岩の粉末が固化され、3CaO・Al 2 O 3 ・CaCl 2 ・10H 2 Oであるフリーデル氏塩及び3CaO・Al 2 O 3 ・CaCO 3 ・11H 2 Oである炭酸水和物を含むことを特徴とする。
本発明の無機材料固化体(以下、単に固化体という。)は、炭酸化反応と水和反応とにより固化されている。ここで、炭酸化反応とは、一般的には水酸化カルシウム(消石灰、Ca(OH)2)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)等のアルカリ土類水酸化物が炭酸化反応により炭酸カルシウム(CaCO3)、炭酸マグネシウム(MgCO3)等のアルカリ土類炭酸塩を生成する反応である。また、水和反応とは、一般にはCSH(CxSyHz;xCaO・ySiO2・zH2Oの意である。x、y及びzは固体水和物として存在し得る正数。)、CAH(CxAyHz;xCaO・yAl2O3・zH2Oの意である。x、y及びzは固体水和物として存在し得る正数。)、CASH(CwAxSyHz;wCaO・xAl2O3・ySiO2・zH2Oの意である。w、x、y及びzは固体水和物として存在し得る正数。)等の固体水和物を生成する反応である。炭酸化反応及び水和反応のためには温度が高い程好ましい。しかし、炭酸化反応及び水和反応はともに水を介しての溶解析出反応であり、100°C以上の温度では水分が乾燥して反応が進み難くなるので、100°C未満で行われることが好ましい。かかる炭酸化反応と水和反応とは、同時期又はほぼ同時期に進行し、互いに他方の反応を促進し合うと考えられる。
【0007】
本発明の固化体はこれらの反応によりフリーデル氏塩及び炭酸水和物を含むこととなる。セメントを用いた一般的なコンクリート等の固化体では、セメントを構成するC2S等の鉱物が水和反応したCSH等のセメント鉱物水和物が強度発現成分である。これに対し、本発明の固化体は、セメントを構成する鉱物を含まないことから、フリーデル氏塩及び炭酸水和物が強度発現成分であると考えられる。但し、本発明の固化体においてコンクリートがら等を再生骨材とする場合には、この固化体中には再生骨材中のセメント鉱物水和物が含まれることとなるが、その場合でもその再生骨材中に未水和のC2S等の鉱物が含まれていない限り、かかるセメント鉱物水和物はその固化体の強度発現成分たり得ない。
【0008】
発明者らの試験結果によれば、本発明の固化体は、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化マグネシウム(MgCl2)、塩化カルシウム(CaCl2)等の塩化物の添加によりフリーデル氏塩を含む。
発明者らの試験結果によれば、フリーデル氏塩は3CaO・Al2O3・xCaCl2・yH2O(xは3又は1、yは1、6、10又は30)である。このフリーデル氏塩は、0°C未満では3CaO・Al2O3・3CaCl2・30H2Oが安定相であり、0〜28°Cではα−3CaO・Al2O3・CaCl2・10H2Oが安定相であり、28〜200°Cではβ−3CaO・Al2O3・CaCl2・10H2Oが安定相であり、200〜500°Cでは3CaO・Al2O3・CaCl2・6H2Oが安定相であり、500°Cを超えると3CaO・Al2O3・CaCl2・H2Oが安定相である。このため、常温〜100°C未満の温度条件下で固化体とされれば、特に3CaO・Al2O3・CaCl2・10H2Oが強度発現成分として大きく寄与すると考えられる。これらのフリーデル氏塩は、密度(真比重)が2.1〜2.2g/cm3程度であり、風化した花崗岩の粉末中に含まれる密度(真比重)が2.6〜2.8g/cm3程度の石英や長石に比べて小さく、嵩高い物質であることから、固化体における粒子間を埋めることによる強度向上の効果が期待されるからである。
【0009】
発明者らの知見によれば、フリーデル氏塩は、NaCl又はCaCl2の水溶液(電解液)により、以下のように生成される。まず、AFm(セメント鉱物の1種であり、alminate ferrite monoの略)構造の[Ca2Al(OH)6・2H2O]+の相間に水溶液中のCl-が吸着し、Cl-の存在がバインディングの役割を果たす。そして、AFm構造の[Ca2Al(OH)6・2H2O]+に存在するOH-とCl-とがイオン交換され、Cl-の存在がさらにバインディングの役割を果たす。
【0010】
また、発明者らの知見によれば、CaCl2を添加する方がNaClを添加するよりも、Cl-のバインディングの効果が大きい。また、CaCl2は水に対する溶解度が大きく、溶解したCa2+はCa(OH)2の析出を起こし、残されたCl-がAFm構造の[Ca2Al(OH)6・2H2O]+の相間に吸着又はイオン交換して容易にバインダとなり得る。さらに、CaCl2を添加すれば、Ca2+がCa(OH)2を析出する際にOH-を消費するため、系全体のpHを下げる。また、CSH系の化合物(ゲル)が共存する場合、チャージバランスをとるためにCa2+やNa+がCSH中に取り込まれる。
【0011】
他方、発明者らの試験結果によれば、本発明の固化体は、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化マグネシウム(MgCl2)、塩化カルシウム(CaCl2)等の塩化物の不添加により炭酸水和物を含む。また、塩化物とともにAl(OH)3が添加されている場合、炭酸水和物も生成する傾向がある。
発明者らの試験結果によれば、炭酸水和物は3CaO・Al2O3・CaCO3・11H2Oである。
【0012】
こうして、常温〜100°C未満の温度条件下で本発明の固化体とされているため、高温に加熱する必要がない。このため、内装材、外装材、路盤、躯体床、躯体壁、建造物等の固化体を得るためのエネルギーの消費を極力抑制することができ、優れた環境保全性を発揮することができる。
本発明の固化体は、インターブロッキングブロック等のブロック形状又は内装タイル若しくは外装タイル等のタイル形状とされ得る。かかるブロック形状又はタイル形状の固化体は、自然的な表面粗さが構造物の意匠性を発揮する。また、屋外において雨水等に曝されれば、表面から比較的容易に崩れてさらに自然的な表面粗さを増し、美観を呈することができる。
【0013】
なお、固化体は所望の強度を発揮すべく骨材を含むことができる。この骨材としては、砂、小石、ガラス繊維等を採用し得る他、コンクリートがら、陶磁器がら、カレット等の無機廃棄物を採用することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の固化体は、水酸化カルシウム(消石灰、Ca(OH)2)と、Al2O3が7〜17質量%(より好ましくは9〜15質量%)、アルカリ金属酸化物又は/及びアルカリ土類金属酸化物が2〜10質量%(より好ましくは3〜9質量%)、灼熱減量(Ignition loss。以下、Iglossという。)が1〜6質量%(より好ましくは1〜3質量%)、SiO2が実質残部の原料の粉末とを調合し、固化させることにより得られる。実質とはFe2O3、TiO2等を含み得る意である。ここで、コンクリート廃材、スラグ、鉱物廃泥等をこの原料の粉末として採用することもできる。
【0015】
発明者らが確認した結果、この原料の粉末としては、風化した花崗岩の粉末(砂婆土、真砂土、ヘナ土ともいう。)として得ることができる。風化した花崗岩の粉末として容易に入手可能なものの組成(質量%)を表1に示す。
【0016】
【表1】
【0017】
表1に示されるように、風化した花崗岩の粉末は、アルカリ金属酸化物としてはNa2O及びK2Oを含み、アルカリ土類金属酸化物としてはCaO及びMgOを含む。なお、アルカリ金属酸化物としてLi2Oを含むもの、アルカリ土類金属酸化物としてBeO、SrO又はBaOを含むものも採用し得る。また、Fe2O3、TiO2を含むものも採用し得る。風化した花崗岩の粉末の主な構成相は、XRD観察によれば、石英、ソーダ長石、正長石、雲母、カオリン鉱物及び緑泥石である。また、この粉末は角閃石を構成相として含むこともできる。また、表1に示した風化した花崗岩の粉末の一部の粒度分布(頻度(%)、積算量(%))を図1に示す。
【0018】
発明者らが確認した結果、花崗岩の粉末は風化の程度の小さいものであることが固化体の強度確保の点で好ましい。風化とは、風雨や気温の変化等の影響及び植物やバクテリアの存在により岩石が変質し、分解される過程である。この風化は構成相の部分的な粘土化として表れていると考えられる。構成相の部分的な粘土化は、まず大きな粒径の粉末の表面で水和物の生成を生じ、これにより小さな粒径の粉末を生じ、さらに全体の粉末の表面で水和物を生じて進行していくものと考えられる。表1に示すIglossが粉末に存在する水和物の量を相対的に示すと考えられ、Iglossの量が多い程、風化が進行していると考えられる。また、発明者らがTG−DTA観察により上記花崗岩の粉末の脱水挙動を確認した結果、60°C付近及び150°C付近にピークをもつ脱水反応が得られたことから、これら花崗岩の粉末の風化は粉末の表面にハロイサイト又はモンモリロナイトを生成することで進行していると考えられる。
【0019】
したがって、アルカリ土類水酸化物の他の原料の粉末としては、SiO2、Al2O3並びにアルカリ金属酸化物又は/及びアルカリ土類金属酸化物を種々の原料の粉末により上記組成範囲を構成するとともに、カオリナイト等の粘土により上記組成範囲を構成することもできると考えられる。
また、本発明の固化体は、砂、小石、ガラス繊維、タイル廃材、カレット等の骨材を含むことにより強度が向上すると考えられる。この意味において、風化した花崗岩の粉末の最大粒径が固化体に作用する荷重方向の寸法に対して1/5程度であることが固化体の強度確保の点で好ましい。
【0020】
固化体は、通常、5MPa以上の圧縮強度を必要とするため、本発明の固化体は消石灰が5重量%以上混合されて固化していることが好ましい。他方、消石灰は比較的高価であり、消石灰が30重量%程度で固化体の圧縮強度はほぼ飽和状態となるため、本発明の固化体は消石灰が30重量%以下混合されて固化していることが好ましい。
【0021】
【実施例】
以下、本発明を具体化した実施例1、2を図面を参照しつつ説明する。
(実施例1)
「調合物の調製」
表2に示す割合(質量%)で原料1と消石灰とをモルタル混合用のミキサーを用いて混合し、各調合物1〜17を得る。このときに、一度に混合する量は最大5kgとした。ここで、原料1は表1に組成を示す風化した花崗岩の粉末である。
【0022】
但し、調合物13、14では、粉末状の水酸化アルミニウム5質量部を85質量部の原料1及び10質量部の消石灰に対して同時に添加した。
【0023】
【表2】
【0024】
「混練物の調製」
次いで、ミキサー中の調合物1〜17に水等を添加する。このとき、各調合物1〜17に対して水が8質量%となるようにしている。そして、ミキサーにて混練し、各調合物1〜17に対応して各混練物1〜17を得る。
但し、調合物3、6、14では、水82.5gにNaCl15g及びMgCl22.5gを溶解した水溶液としてNaCl及びMgCl2を添加した。この水溶液は海水を濃縮したものに近い組成を有しており、無尽蔵にある海水の有効利用及び製造コストの低減を図るために用いている。
【0025】
調合物5では、水96.5gにNaCl3g及びMgCl20.5gを溶解した水溶液としてNaCl及びMgCl2を添加した。この水溶液も海水に近い組成を有している。
調合物7では、水96.5gにMgCl23.5gを溶解した水溶液としてMgCl2を添加した。
【0026】
調合物8では、水82.5gにMgCl217.5gを溶解した水溶液としてMgCl2を添加した。
調合物9では、濃度0.12%で水中にSiO2を含む水溶液として珪酸イオンを添加した。この水溶液はスラグを処理して生じる高Si液である。
調合物10では、上記高Si液96.5gにNaCl3g及びMgCl20.5gを溶解した水溶液として珪酸イオン、NaCl及びMgCl2を添加した。
【0027】
調合物11では、上記高Si液82.5gにNaCl15g及びMgCl22.5gを溶解した水溶液として珪酸イオン、NaCl及びMgCl2を添加した。
調合物12では、上記高Si液82.5gにNaCl15g、MgCl22.5g及び濃度30%でNH3を含むアンモニア水2gを溶解した水溶液として珪酸イオン、NaCl、MgCl2及びNH4OHを添加した。
【0028】
調合物15に添加した硬化剤はコンクリートの硬化のために用いられる液体(pH10.5程度であり、水中にCl-、Na+、K+、NH4+、NO3-等を含み、pH緩衝能力を有する。)であり、調合物15による混練物15が酸性条件下で炭酸カルシウム及び固体水和物を生成しにくくなることを防止するために用いている。硬化剤中の水分が100質量部の調合物15に対して3質量部となるように、市販の原液を混練時に添加した。
【0029】
調合物16では、濃度50%で市販の水ガラス(JIS K1408の3号に準ずるソーダ系水ガラス;SiO2が28〜30質量%、Na2Oが9〜10質量%、Fe2O3が0.02質量%未満、水が残部)を含む水溶液として水ガラスを添加した。
調合物17では、水82.5gにNaCl15g、MgCl22.5g及び濃度30%でNH3を含むアンモニア水2gを溶解した水溶液としてNaCl、MgCl2及びNH4OHを添加した。
「混練物の成形・固化」
各混練物1〜17をモルタル試験用の3連型に同一質量充填し、油圧式プレスにより30MPaで1軸加圧成形する。これにより各混練物1〜17の粒子間の間隙を小さくして粒子の界面を接近させる。こうして、各混練物1〜17に対応して210×105×約60mm3のブロック形状の成形体1〜17及び160×40×約20mm3のタイル形状の成形体1〜17を得る。
【0030】
そして、温度25°C、湿度(RH)80%の恒温恒湿器中において、7〜28日間、各成形体1〜17の養生を行う。こうして、各成形体1〜17に対応してブロック形状及びタイル形状の固化体1〜17を得る。
「評価」
各固化体1〜17について、養生日数の増加に伴う曲げ強度(MPa)、圧縮強度(MPa)及び嵩密度(g/cm3)の測定並びに生成相の確認を行った。
【0031】
なお、曲げ強度の測定は、材料試験機(A&D TENSILON RTM−500)を使用し、支点間隔120mm、クロスヘッドスピード0.5mm/分で3点曲げにて行った。圧縮強度の測定は、電子式万能試験機(CATY YONEKURA)を用い、曲げ強度試験後の一の固化体を使用し、クロスヘッドスピード0.5mm/分で行った。生成相の確認は、粉末X線回折装置(RIGAKU RAD−B)を用いてXRDにより行った。
【0032】
測定した曲げ強度を表3及び図2に示す。
【0033】
【表3】
【0034】
測定した圧縮強度を表4及び図3に示す。
【0035】
【表4】
【0036】
表3、4及び図2、3より、何ら添加物を添加していない調合物1に比して、他の調合物では時間の経過とともに固化体の圧縮強度が向上していくことがわかる。また、固化体3、5、6、7、8、10、11、12、14、17では、これらの調合物に塩化物を添加しているため、高い圧縮強度を発揮できることもわかる。さらに、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を添加すれば、時間の経過による固化体の圧縮強度の向上度合いを小さくしつつ、炭酸化反応の促進により安定した固化体の圧縮強度を確保できることもわかる。また、ケイ酸塩又はアルミン酸を添加すれば、時間の経過による固化体の圧縮強度の向上度合いを大きくしつつ、水和反応の促進により安定した固化体の圧縮強度を確保できることもわかる。
【0037】
測定した密度を表5及び図4に示す。
【0038】
【表5】
【0039】
表5及び図4より、原料1に対して消石灰の量が増すと、消石灰の真比重に起因して固化体の嵩比重が低下することがわかる。また、原料1に10質量%消石灰を混合した調合物による固化体では、28日間養生することにより、嵩密度が1.97〜2.02g/cm3であり、消石灰を10質量%混合すれば、固化体の嵩密度は1.95〜2.05g/cm3で落ち着くと思われる。こうして消石灰を10質量%混合すれば固化体の嵩密度にさほどの変化はないが、他の成分の含有、特にAl(OH)3の添加により、固化体の強度が著しく増加する。これにより、他の成分、特にAl(OH)3が固体水和物の生成に起因する可能性がある。
【0040】
生成相を確認したところ、固化体1、2、4、9、13、14、16において、炭酸水和物としての3CaO・Al2O3・CaCO3・11H2Oの生成が確認された。
また、固化体1、2、4では、Ca(OH)2及びCaCO3のピーク強度が増加していた。これは消石灰の含有割合が増加しているためである。他方、固化体3、5、6、7、8、10、11、12、14、15、17では、フリーデル氏塩としての3CaO・Al2O3・CaCl2・10H2Oの生成が確認された。これは塩化物を添加しているからであり、このフリーデル氏塩が強度発現成分となっていると考えられる。また、これらCaCO3のピーク強度から、塩化物の添加により定性的にCaCO3の生成が促進されていると思われる。
【0041】
したがって、各調合物1〜17によれば、常温下で固化が進行して固化体1〜17を得ることができることがわかる。このため、かかる調合物1〜17を用いれば、高温に加熱する必要なく内装材等の固化体を得ることができることから、固化体を得るためのエネルギーの消費を極力抑制することができ、優れた環境保全性を発揮することができる。
【0042】
養生7日の固化体1、8について、CO2定量(JIS R9011)を行い、添加物による炭酸化促進の有無を評価した。CO2定量は各固化体1、8のCO2質量含有率(%)で求めた。また、各固化体1、8中のCO2が全てCaと反応していると仮定して計算したCaとCO2とのモル反応率(%)も求めた。結果を表6に示す。
【0043】
【表6】
【0044】
表6等より、塩化物による固化体の強度発現の傾向として、塩化物添加により固化体の強度が増強し、塩化物の添加量を増すことで固化体の養生初期の強度発現を促進できることがわかる。この理由として、調合物への塩化物の添加により、固化体は炭酸化物の生成が促進されることが考えられる。海中における炭酸化物の生成は溶解しているアルカリ等が原因となってCO2の溶解度が上昇するために起こると考えられているため、塩化物を添加した調合物中のNa、Mgにより、調合物中でCO2の溶解度が上昇し、Ca2+とCO3 2-との反応析出が促進されたものと考えられる。
(実施例2)
「調合物の調製」
実施例1と同様、表7に示す割合(質量%)で原料1と消石灰とを混合し、各調合物18〜23を得る。ここで、原料1は表1に組成を示す風化した花崗岩の粉末である。
【0045】
【表7】
【0046】
「混練物の調製」
次いで、実施例1と同様、各調合物18〜23に対して水が8質量%となるように調合物18〜23に水を添加し、各調合物18〜23に対応して各混練物18〜23を得る。
「混練物の成形・固化」
また、実施例1と同様、各混練物18〜23を1軸加圧成形し、各混練物18〜23に対応して成形体18〜23を得る。
【0047】
そして、温度25°C、湿度(RH)80%の恒温恒湿器中において、7日間、各成形体18〜23の養生を行う。こうして、各成形体18〜23に対応して固化体18〜23を得る(n=3)。
「評価」
各固化体18〜23により、消石灰の割合(質量%)と圧縮強度(MPa)との関係を求めた。結果を表7及び図5に示す。図5中のエラーバーはn=3における最大値及び最小値を示している。なお、圧縮強度の測定は、電子式万能試験機(CATY YONEKURA)を用い、クロスヘッドスピード0.5mm/分で行った。
【0048】
表7及び図5より、固化体18では圧縮強度が非実用的な1.0MPaであるのに対し、固化体19〜23では圧縮強度が実用的な5MPa以上である。また、消石灰が30重量%の固化体21付近で圧縮強度がほぼ飽和状態となっている。このため、消石灰が5重量%以上混合されてなる調合物で固化体を製造することが好ましいことがわかる。特に、消石灰は比較的高価であるため、消石灰が30重量%以下混合されてなる調合物により固化体を製造することが好ましいことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】風化した花崗岩の粉末の粒度分布に係り、(A)は粒径と頻度との関係を示すグラフ、(B)は粒径と積算量との関係を示すグラフである。
【図2】実施例1に係り、養生日数の増加に伴う固化体の曲げ強度の変化を示すグラフである。
【図3】実施例1に係り、養生日数の増加に伴う固化体の圧縮強度の変化を示すグラフである。
【図4】実施例1に係り、養生日数の増加に伴う固化体の嵩密度の変化を示すグラフである。
【図5】実施例2に係り、消石灰の割合と固化体の圧縮強度との関係を示すグラフである。
Claims (1)
- クリンカーの粉砕物であるセメントを構成する鉱物を含まず、風化した花崗岩の粉末が固化され、3CaO・Al 2 O 3 ・CaCl 2 ・10H 2 Oであるフリーデル氏塩及び3CaO・Al 2 O 3 ・CaCO 3 ・11H 2 Oである炭酸水和物を含むことを特徴とする無機材料固化体。
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