JP4219226B2 - 長管を用いた水底管敷設工法 - Google Patents

長管を用いた水底管敷設工法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、離島給水用の海底配管や河川・湖沼、湾内において水底管を敷設する工法に関する。
【0002】
【従来技術と課題】
(1)従来の水底(海底)管の敷設工法の代表的なものとしては、(a)敷設船工法、(b)浮遊曳航法、(c)海底曳航法がある。これらの工法については、「新日鐵の海底配管」(発行:新日本製鐵株式会社)に紹介されているが、概要を示すと以下のとおりである。
【0003】
(a)敷設船工法。
この工法は、短管を敷設船上で溶接しながら敷設船を移動して管を沈設する工法である。数十km〜数百kmの長大な海底配管の敷設に適したもので、石油・ガスの海底配管に多くの実績がある。作業能率を上げるために溶接、検査、防食等を多ステージとし、また水中において適切な敷設曲線を得るためテンショナーやスティンガーを備えた専用敷設船とされている。また、通常パイプ輸送船、タグボート、アンカーボートを加えた船団を組む。
【0004】
(b)浮遊曳航法。
この工法は、短管を多数接続して長管としたものを敷設ラインの一方側の陸上または海上の台船上で接合し、水面上に浮上した状態で対岸または沖合の曳船で曳き出した後、水底に沈設する。比較的小規模(数km)な水底管敷設に対して経済的な工法である。
【0005】
(c)海底曳航法。
この工法は、陸上に長管製作ヤードを設け、ガイドローラーを配置した進水設備を通して対岸または曳船のウインチによって水底を曳航して敷設する工法で、比較的小規模(数km)な水底管敷設に対して経済的な工法である。長管にしたものを曳きだし敷設するため能率がよく、また、比較的海気象条件に影響を受け難く、航路内等船舶の往来が頻繁な所にも適用できる。
【0006】
(2)また、長尺管を高能率に水底に敷設する先行技術として、特開昭64−55004号公報(特許文献1)に開示されたものがある。この水底管敷設工法はパイプを巻き取った大径のドラムを敷設船に搭載し、敷設船を移動しながらドラムを回転してパイプを解きながら繰り出し水面下に敷設するパイプラインの敷設方法である。
【0007】
【非特許文献1】
「新日鐵の海底配管」新日本製鐵株式会社発行、1984.6版
【特許文献1】
64−55004号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来技術において、前記(a)の敷設船工法は、12mまたは24m程度の短尺のパイプを敷設船状で溶接接合しながら敷設するため能率が悪く、能率を上げるために溶接ステージを多数設けると設備コストが高額になる課題があった。また、敷設船の他にタグボート、アンカーボート等の船団を組む必要があり大掛かりな作業編成となる。
【0009】
また、前記(b)の浮遊曳航法は、長管にしたものを接合するため現地作業の能率はよいが、施工にあたっては敷設ルートを横断する船舶の往来を禁止する必要があり、船舶の往来が多い航路を横断するルートには適用できない課題があった。また敷設作業にあたっては、比較的静穏な海気象条件を要する。
【0010】
また、前記(c)の海底曳航法は、敷設ルートを横断して船舶の往来があっても支障ないが、敷設ラインの後背地に長管製作ヤードや進水設備を設置するスペースがないと採用できない課題があった。
【0011】
また、特開昭64−55004号公報に開示された先行技術は、設備が大掛かりとなる課題があると共に、ドラムに巻いたパイプが扁平座屈しないようにするため、ドラム径Dとパイプ径dの関係(d/D)から実用的には100mm以下の小径パイプに限定される。
【0012】
本発明は、上記従来技術の課題を解消して、高能率且つ低コストで水底管を敷設可能とする長管を用いた水底管敷設工法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)短管を複数本接合した長管を水底にアンカーされた台船の後方に移送し、前記長管の前部を台船に配設した複数のガイドローラー上に引き込み、前記長管の前端と既設の長管後端とを前記台船に設けた溶接ステージにて溶接接合した後、既設の長管前端に取り付けた曳索に張力を加えて敷設ラインに沿って移動する作業を繰り返して水底管を敷設延長する長管を用いた水底管敷設工法であって、前記複数のガイドローラーと溶接ステージは、台船の舷側に配設し、各ガイドローラーの高さを敷設曲線に合せて設定し、且つ溶接ステージを敷設曲線の最上位置に設け、台船の舷側に配設した前記複数のガイドローラーと溶接ステージは、舷側上端コーナーに係止したL字形の架台に取り付ける。
【0014】
【作用】
本発明では、(1)海気象条件に左右されやすい海上作業の期間を短縮するために、長管を用いて現地における溶接接合時間を数分の1〜十分の1程度に減らし現地作業の能率を著しく向上させることができる。
(2)また、従来の浮遊曳航法や海底曳航法においては、長管製作ヤードが敷設ラインの後背地に特定されていたが、本発明では、水底管の敷設ラインとは無関係な場所で製作した長管を移送して接合延長して敷設するようにし、敷設ラインの後背地にスペースがない場合でも長管敷設を可能としている。
(3)水底管敷設作業に際しては、台船の後方に浮上させた長管を、台船の舷側に配設した敷設曲線に合せて高さを設定した複数のガイドローラーでガイドしながら管の敷設ができるので、管の曲げ応力を許容応力内に管理しながら敷設可能としている。
ガイドローラーおよび溶接ステージはL字形の架台に取り付け、台船の舷側上端コーナーに前記架台を係止するようにしているため、特に水没部への設置等、台船への取り付け・取り外しが容易に出来る。
【0015】
また、各ガイドローラーを取り付けるL字形の架台の垂直材高さHと配置間隔Bを選択することによって所望の敷設曲線を容易に設定できる。
さらに、ガイドローラーを台船の舷側に設けているため、長管の敷設完了時や工事中の台風襲来時などの緊急避難時に敷設途中の長管を水底に降ろす際にクレーンで吊上げて舷側から容易に降ろせる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る水底管の敷設方法の施工手順を説明する。
【0017】
(長管の製作)
(1)工場内、ドックまたは陸上ヤード等で多数の短管(単管と同意で、例えば、8m、12m、16m、24m等の定尺管)を直列に約10本〜20本程度溶接接続して長管を製作する。長管の長さは長くする程、現地作業の能率を高めることができるが、あまり長くしすぎると移送が困難となるため、100m〜200m程度にするのが望ましい。溶接接続部は加熱収縮チューブ等によって防食被覆を行っておく。
【0018】
(2)長管を浮上曳航して現地に移送する場合は、長管の前後に管内を密封可能な蓋を取り付けて中空状態とする。長管の前後に取り付ける前記蓋には前方の長管を敷設する際、後方の長管を引き込むための連結具を連結するための連結材を設けておく。
【0019】
(敷設設備の準備)
(1)水底管の敷設計画ラインの一方に、図1に示すような台船1をアンカー2し、他方(対岸または沖合の曳船)には、長管3を水底曳航するウインチ等の牽引設備(図示省略)を配置する。
(2)台船1の舷側4には、長管3を敷設する際に許容曲げ応力内に収まるよな敷設曲線を描くように位置決めした複数のガイドローラー5を間隔をおいて配置し、前記敷設曲線の最上位置に溶接ステージ6を設ける。各ガイドローラー5は、図2に示すように水平ガイドローラー7と左右に配置した縦ガイドローラー8を備えた構成とするか、または2本のガイドローラーをV字形に配置したV字形ガイドローラー(図示を省略した)としてもよい。
【0020】
前記ガイドローラー5と溶接ステージ6は、図2,図3に示すようにL字形の架台9を用いるとその下辺に容易に取り付けることができ、また、各L字形の架台9は、台船1における舷側4のコーナー部10のデッキ11上に溶接した固定具12に、架台9の水平部9b先端フランジ等をボルト止め13して、容易に取り付けることができるため、L字形の架台9を介して前記ガイドローラー5と溶接ステージ6を台船1の舷側4に容易に取り付けることができる。各ガイドローラー5は取り付けるL字形の架台9の垂直材9aの高さHと配置間隔Bを組み合わせることによって所望の敷設曲線に容易に設定できる。
【0021】
(3)また、台船1の前方には、図1に示すように敷設途中の水底管14の敷設曲線における台船1の最前端ガイドローラー5aと水底15との間に水中フローター16とアンカー錘17で位置保持した水中ガイドローラー18を配置する。この水中ガイドローラー18は、図4に示すように、前記の台船1に配置したガイドローラー5と同様な構成の水平ガイドローラー18aと縦ガイドローラー18bとを備えたものを水中フローター16の浮力とアンカー錘17で水中の所定深さに保持している。この水中フローター18は,水深が深い場合は複数配置し浅い場合は省略することができる。
【0022】
また、水中ガイドローラーの代わりに敷設船工法に用いるスティンガーを台船1に取り付けてもよい。
【0023】
(水底管の敷設施工)
(1)長管の移送:
陸上ヤード等で製作した長管3の前後に、孔付連結材26を備えた密閉蓋19を取り付けて中空状態とし(図5参照)、水上に浮上して敷設場所に曳航して移送する。なお、水中重量が重くて沈む場合は図5に示すように適宜間隔毎にフローター20を取り付ける。管内21が中空状態で水面に浮上するような大径管の場合はフローターは不要である。長管3を浮上曳航する場合、複数本の長管3を並列状に固縛していかだ状として移送してもよい。
【0024】
また、長管3の製作場所と敷設場所が遠い場合や途中の海域の曳航条件が厳しい場合は、多数の長管3をまとめて台船1に搭載して移送してもよい。
【0025】
(2)長管の敷設作業
1本目の長管3を台船1の後方(R)に適宜移送して配置し、クレーンやウインチを用いて長管3の前端を舷側4のガイドローラー5上に呼び込み、水中ガイドローラー18を通過して水底面15に到達させる。
【0026】
水底面15に達したらダイバー作業によって長管3の前端に水底曳航用の曳索(ワイヤロープ)22を連結し、敷設ラインの対岸または、途中に配置した作業船からウインチ等の牽引設備(図示省略した)によって張力を加えることによって、長管3をガイドローラー5上および水底面15上を移動させて敷設する。
【0027】
1本目の長管3の後端部3bが台船1の後部1bに近づいたら2本面の長管3を敷設ラインの後方に配置し、前端3aを1本目の長管3の後端に図6に示すような着脱自在な連結具24で連結する。そして、前記牽引設備によって2本目の長管3をガイドローラー5上に引き込む。1本目長管3と2本目の連結部25が溶接ステージ部6に到達したら連結具24を取り外し、両方の長管3,3の端部を切断して端部同士を引き寄せ芯合せクランプした状態で溶接接合Wする。
以下、同様にして全ての長管を敷設する。
【0028】
また、本発明を台船1の前方に向かって牽引敷設する場合と後方に向かって牽引敷設する場合にそれぞれに適用してもよく、例えば、台船1の前方に牽引敷設された水底管14の後端部と、台船1の後方に牽引敷設された水底管の前端部を溶接接合する形態に適用してもよい。
【0029】
この場合、例えば、前方に牽引敷設された水底管14の後端部を台船1におけるガイドローラー5または溶接ステージ6の横方向あるいは台船上に退避移動させるか、長管3の並列可能なガイドローラー5または溶接ステージ6を備えたL字形の架台9を予め使用し、水中ガイドローラー18を後方に配置すると、台船1の前方に水底管14を牽引敷設した後、台船1の向きを変えないで、前方から後方Rに向かって水底管を敷設すべく、新たな長管を順次台船1における溶接ステージ6上で接続した後、前記実施形態と同様に、台船1の後方に向かって牽引移動する敷設作業を繰り返して後方Rに向かって水底管を敷設し、前方に移動して敷設した水底管の後端部と、後方に移動して敷設した水底管の前端部とを、台船1における溶接ステージ6上で適宜切断して、芯合わせした後、溶接接合してもよい。
【0030】
本発明のように一台の台船1の舷側4に、ガイドローラー5と溶接ステージ6を備えていると、既設の水底管14または長管3の後端部と新たに接続すべき長管3の先端部は、同じ台船1に支承されているので、芯合わせおよび溶接接合が容易になる。
【0031】
【発明の効果】
本発明によれば、以下の効果がある。
(1) 長管にして敷設するため現地作業の能率がよい。
(2) 敷設曲線を描くように配設した複数のガイドローラー上に引き込み、既設の敷設管後端と溶接ステージにて突き合せ溶接接合して敷設するため、最初の長管をガイドローラー上にセットする以降はクレーンなしで長管の敷設延長作業ができる。
(3) 台船の舷側に複数のガイドローラーと溶接ステージを設けると、敷設曲線を描くようしたガイドローラーの位置、溶接ステージの高さを低く設置できる。また、長管の延長接合を完了後、水底に降ろす際にクレーンで吊上げて舷側から容易に降ろせる。
(4) 舷側上端コーナーに係止したL字形の架台を用いると、舷側の水没部にも容易にセットすることができる。敷設曲線を描くように複数のガイドローラーを配設する場合、各ガイドローラーを取り付けるL字形の架台の垂直材高さHと配置間隔Bを選択することによって所望の敷設曲線に設定できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る水底管の敷設方法を説明する全体図。
【図2】台船の舷側に取付けたガイドローラーを示す図。
【図3】溶接ステージを示す図。
【図4】台船の前方の水中に配置した水中ガイドローラーを示す図。
【図5】長管を浮上させるフローターを取付け図である。
【図6】長管を連結する連結具によって長管相互を連結した状態を示す図。
【符号の説明】
1 台船
2 アンカー
3 長管
4 舷側
5 ガイドローラー
5a 最前端ガイドローラー
6 溶接ステージ
7 水平ガイドローラー
8 縦ガイドローラー
9 L字形の架台
9a 垂直材
9b 水平部
10 コーナー部
11 デッキ
12 固定具
13 ボルト止め
14 敷設途中の水底管
15 水底
16 水中フローター
17 アンカー錘
18 水中ガイドローラー
18a 水平ガイドローラー
18b 縦ガイドローラー
19 密閉蓋
20 フロ−ター
21 管内
22 曳索
24 連結具
25 連結部
26 孔付連結材
W 溶接

Claims (1)

  1. 短管を複数本接合した長管を水底にアンカーされた台船の後方に移送し、前記長管の前部を台船に配設した複数のガイドローラー上に引き込み、前記長管の前端と既設の長管後端とを前記台船に設けた溶接ステージにて溶接接合した後、既設の長管前端に取り付けた曳索に張力を加えて敷設ラインに沿って移動する作業を繰り返して水底管を敷設延長する長管を用いた水底管敷設工法であって、前記複数のガイドローラーと溶接ステージを台船の舷側に配設し、各ガイドローラーの高さを敷設曲線に合せて設定し、且つ溶接ステージを敷設曲線の最上位置に設け、台船の舷側に配設した前記複数のガイドローラーと溶接ステージは、舷側上端コーナーに係止したL字形の架台に取り付けたことを特徴とする長管を用いた水底管敷設工法。
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