JP4213377B2 - 自動テンショナ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本願発明は、エンジンのカムチェーンあるいはタイミングベルトのような巻掛伝導機構の無端体を、緊張方向に押圧して緩みを自動的に吸収することにより、所定のテンションを付与する自動テンショナに関し、特に、ボールを利用したロッド戻り阻止機構を備えた自動テンショナに関する。
【0002】
【従来の技術】
図4は従来のボール式ロッド戻り阻止機構を備えたエンジンのカムチェーン用自動テンショナを示している。自動テンショナは、ロッド支持孔114を有するテンショナボディ101と、ロッド支持孔114にロッド軸芯方向移動可能に支持されたプッシュロッド102と、該プッシュロッド102をカムチェーン104側(前方側)に付勢するテンション用コイルばね105と、プッシュロッド102の後退移動を阻止するボール式のロッド戻り阻止機構110を備えている。
【0003】
プッシュロッド102はロッド支持孔114の前端P1から片持ち状に前方へ突出し、ガイドシュー108のロッド受部108aに当接している。ガイドシュー108は弓形に形成されると共にカムチェーン移動方向Aとは反対側の端部が支持軸109を介してエンジンに回動自在に支持され、カムチェーン104に一定の圧力で摺接している。
【0004】
ロッド戻り阻止機構110は、プッシュロッド102の外周に配置された複数のボール120と、該ボール120をロッド径方向移動可能に保持するリテーナ121と、内周にテーパー面122を有するカラー123とから構成され、カラー123はテンショナボディ101の前半筒部に圧入固定されている。リテーナ121は前記テンション用コイルばね105により後方に付勢され、ボール120をテーパー面122に当接させることにより、常に後退阻止力を発生しうる環境を与えている。すなわち、プッシュロッド102が後退方向への移動力を受けた時には、ボール120はプッシュロッド102に連動し、即座にテーパー面122とプッシュロッド外周面の間に噛み込み、楔作用によりプッシュロッド102の後退移動を阻止するようになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
エンジン運転中、ガイドシュー108は、カムチェーン104に作用する張力の変化により、チェーン移動方向Aと概ね直角方向(ロッド軸芯方向)に振動すると共に、上記力の変動により弓形の曲率に変化が生じ、それによりロッド受部108aの位置が略A方向にも振動する。また、カムチェーン104との摩擦によりチェーン移動方向Aに繰返し引っ張られ、支持軸109における径方向の隙間によってもチェーン移動方向Aに振動する。このようなガイドシュー108のチェーン移動方向Aの振動は、ロッド受部108aを介してプッシュロッド102にロッド径方向の振動を発生させ、ロッド戻り阻止機構110における不快な音の発生の原因となりうる。
【0006】
(1)ところが図4のように、テーパー面122を有するカラー123をテンショナボディ101にリジットに固着する構造を採用している場合には、製造誤差から生じるロッド軸芯及びリテーナ中心とテーパー面122の中心とのずれを吸収するために、ロッド支持孔114とプッシュロッド102の外周面の隙間C4を大きく確保しなければならず、そうするとテンショナボディ101に対するプッシュロッド102のロッド径方向のがたつきが大きくなり、前記不快な音の発生を増大させる原因となる。一方、上記隙間C4を小さく抑えると、組付け時において、前記製造誤差及びカラー123の固着によるロッド軸芯及びリテーナ中心とテーパー面122の中心とのずれを吸収できなくなり、高い組立精度が保てなくなることにより、テーパー面122で全部のボール120を均等に押圧することが困難になる。
【0007】
(2)また、図4のようにロッド支持孔114がロッド戻り阻止機構110よりも後方に形成され、かつ、プッシュロッド102がロッド支持孔114の前端P1から片持ち状に長く突出している構造では、プッシュロッド102の曲げモーメント長が大きくなり、これによってもプッシュロッド102の径方向の振動の発生を助長し、不快な音を増大させる原因となる。また、プッシュロッド102の前方突出量が変化すると、プッシュロッド102の軸芯方向の支持長さL3も変化する。
【0008】
【発明の目的】
本願発明は、製造誤差に関係なく、ボールの楔作用によるロッド戻り阻止力を全周に亘って均等化できるようにすると共に、無端体側からプッシュロッドに伝達されるロッド径方向の振動を軽減し、ロッド戻り阻止機構における不快な音の発生を解消することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、テンショナボディにロッド軸芯方向移動可能に支持されたプッシュロッドと、該プッシュロッドを巻掛伝導機構の無端体側に付勢する付勢手段と、前記プッシュロッドの後退移動を阻止するためのボール式ロッド戻り阻止機構とを備えた自動テンショナにおいて、前記プッシュロッドを支持する前記テンショナボディの円筒形のロッド支持孔を、前記ロッド戻り阻止機構よりも前記無端体側に形成すると共にプッシュロッド先端近傍まで延設し、前記ロッド支持孔と前記プッシュロッドとの径方向の隙間(C3)を、前記プッシュロッドの軸芯方向の移動は許すが径方向に遊びが生じない程度に設定し、前記プッシュロッドの前記ロッド戻り阻止機構よりも反無端体側の部分を、前記ロッド支持孔の内径よりも大きい内径のロッド挿入孔に挿入し、該ロッド挿入孔と前記プッシュロッドとの径方向の隙間(C2)を、前記プッシュロッドが殆ど摩擦抵抗を受けることなく移動できる程度に設定し、前記ロッド戻り阻止機構は、前記プッシュロッドの前進方向へ向けて拡開するテーパー面を有するカラーと、前記テーパー面と前記プッシュロッドの外周面の間に配置された複数のボールと、該ボールを保持するリテーナと、前記ボールが前記テーパー面に当接するように前記リテーナを付勢するリテーナ付勢手段を備え、前記カラーは、前記テンショナボディとは別体に形成されると共に前記テンショナボディのカラー嵌合孔内に径方向の所定の隙間を有して嵌合している。
【0010】
これにより、プッシュロッドのロッド軸芯方向の支持範囲を広げることができると共にプッシュロッドの片持ち状の突出量を必要最小限まで短くすることが可能となり、プッシュロッドの径方向の振動を抑制することができ、戻り阻止機構における不快な音の発生を軽減できる。
【0012】
また、製造誤差等に関係なく、組立時においてテーパー面の中心線とプッシュロッドの軸芯線及びリテーナの中心線を自動的に一致させることができ、ロッド戻り阻止機構の全ボールをテーパー面によって均等に押圧できるようになると共に、戻り阻止機構における不快な音の発生を軽減することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
[自動テンショナの配置]
図3はエンジンのカム駆動用巻掛伝導機構に本願発明による自動テンショナTを装備した例であり、巻掛伝導機構は、クランク軸2と1対のカム軸3,4に渡って無端体のカムチェーン1を巻き掛けてあり、クランク軸2の回転により矢印A方向に移動するようになっている。上記カムチェーン1には自動テンショナ用のガイドシュー7が摺接しており、該ガイドシュー7は弓形に形成されると共にカムチェーン移動方向Aとは反対側の端部が支持軸11を介してエンジンに回動自在に支持されている。
【0014】
自動テンショナTは、エンジン本体(シリンダ等)の一部を形成する壁8に固定されたテンショナボディ9と、該テンショナボディ9内にロッド軸芯方向摺動可能に支持されたプッシュロッド10等から構成されている。
【0015】
[自動テンショナの構造]
(テンショナボディの構造)
図1は自動テンショナTの縦断面拡大図であり、ロッド軸芯方向の無端体側(ガイドシュー側)を前方として説明する。テンショナボディ9は前後一対のボディ部材9a,9bから構成されている。前側ボディ部材9aには、前後方向に貫通する円筒状のロッド支持孔14が形成されると共に、後端にフランジ15及び円筒状のいんろう部16が形成されており、上記ロッド支持孔14の後側には環状段面17を介してばね収納孔18が形成されている。後側ボディ部材9bには、後端に底壁9cが形成されると共に前端にフランジ20が形成されており、後半部内周にはロッド挿入孔36が形成され、該ロッド挿入孔36の前側には環状段面21を介して円筒状のカラー嵌合孔22が形成され、該カラー嵌合孔22は前面が開口している。また、後側ボディ部材9bの後半部外周壁にはロッド仮止用のねじ25が螺挿され、さらに前端フランジ20の外周端には、両ボディ部材9a,9bを仮組みするためのフック23が形成されている。なお、両ボディ部材9a,9bを仮組みする手段として、上記フック23の代わりに、ボルト等を利用したねじ止め構造を採用してもよい。
【0016】
前側ボディ部材9aのロッド支持孔14はプッシュロッド10の前端近傍まで延設されており、ロッド支持孔14の前端P1はプッシュロッド10の前端近傍に位置している。ロッド支持孔14とプッシュロッド10との径方向の隙間C3は、プッシュロッド10の軸芯方向の移動は許すが径方向に遊びが生じない程度に小さく設定されている。一方、後側ボディ部材9bのロッド挿入孔36の内径は、上記ロッド支持孔14の内径よりも大きく、プッシュロッド10が殆ど摩擦抵抗を受けることなく移動できる程度の径方向の隙間C2を確保している。
【0017】
前側ボディ部材9aのいんろう部16は後側ボディ部材9bのカラー嵌合孔22にいんろう嵌合し、これにより両ボディ部材9a,9bの軸芯を合わせている。両ボディ部材9a,9bのフランジ15,20はOリング27を介して重なり合っており、前側ボディ部材9aが壁8の取付孔33に挿入され、各フランジ15,20のボルト挿通孔30,31に挿通した共通のボルト32により、壁8の取付面34に固定されている。
【0018】
(プッシュロッドの構造)
プッシュロッド10は前側ボディ部材9aのロッド支持孔14に前後方向摺動可能に嵌合支持されており、プッシュロッド10の軸芯部には後端開口状のばね収納用軸芯孔35が形成され、後端部外周にはロッド仮止用の環状溝37が形成されている。プッシュロッド10の後部は後側ボディ部材9bのカラー嵌合孔22を通過してロッド挿入孔36内に至っている。
【0019】
プッシュロッド10の軸芯孔35の前端面と後側ボディ部材9bの底壁9cの間にはワッシャ39を介してテンション用コイルばね40が縮設されており、該コイルばね40でプッシュロッド10を前方に付勢することにより、プッシュロッド10の前端がガイドシュー7のロッド受部7aに所定の荷重で当接している。
【0020】
(ロッド戻り阻止機構)
ロッド戻り阻止機構29として、カラー嵌合孔22とプッシュロッド10の外周面との間に、内周テーパー面42を有するカラー43と、ボール挿入孔44を有するリテーナ45と、上記ボール挿入孔44に挿入された複数のボール(鋼球)47を配置してあり、ばね収納孔18内にリテーナ用コイルばね48を配置してある。
【0021】
カラー43のテーパー面42はロッド軸芯方向の前方に行くに従い拡開するように形成されると共に、浸炭焼き入れ等により硬化処理されており、カラー43の外周面は、カラー嵌合孔22に対して所定の径方向の隙間C1を有して嵌合している。この隙間C1は径方向の最大製造誤差を吸収できる程度に確保されている。リテーナ45はプッシュロッド10の外周面に対して軸芯方向にスライド可能となる程度に嵌合しており、リテーナ45の前面と前側ボディ部材9aの段面17の間に上記リテーナ用コイルばね48が縮設され、該リテーナ用コイルばね48によりリテーナ45は後方に付勢され、ボール47をテーパー面42に当接させている。上記リテーナ用コイルばね48の荷重は、ボール47をテーパー面42に軽く押し当てる程度の大きさであり、プッシュロッド10の後退方向への移動力がかかった時に、即座にボール47の楔作用が発揮できる環境を与えている。なお、上記リテーナ用コイルばね48の荷重は任意の値に調節可能であるが、上記のようにテーパー面42に軽く押し当てる程度の大きさが望ましい。
【0022】
リテーナ45のボール挿入孔44は、たとえば図2に示すように周方向に等間隔をおいて8個形成されており、各ボール挿入孔44に径方向移動可能にボール47が挿入されている。
【0023】
【組立及び取付方法】
後側ボディ部材9bを上向きとし、該後側ボディ部材9b内にテンション用コイルばね40及びプッシュロッド10を挿入し、仮止めねじ25をプッシュロッド10の環状溝37に係合することにより、プッシュロッド10を仮止めする。
【0024】
カラー43と、ボール47を保持したリテーナ45と、リテーナ用コイルばね48を、プッシュロッド10の外周側に順次嵌めると共にカラー嵌合孔22内まで挿入し、前側ボディ部材9aにOリング27を嵌め、前側ボディ部材9aのいんろう部16をカラー嵌合孔22にいんろう嵌合する。この時、両ボディ部材9a,9bをロッド軸芯線回りに相対的にずらしておき、コイルばね48を圧縮した後、正常な相対回動位置に戻すことにより、後側ボディ部材9bのフック23を前側ボディ部材9aのフランジ15に係合する。これにより、両ボディ部材9a、9b同士を仮結合状態とし、前側ボディ部材9aを取付孔33に挿入し、共通のボルト32により、両ボディ部材9a、9bを取付面34に共締めする。このように、共通のボルト32により、両ボディ部材9a、9b同士を結合すると同時に壁8に取り付けることができ、組立用の部品点数を減らすことができ、組付作業も容易になる。
【0025】
テンショナボディ9を壁8に取り付けた後は、仮止めねじ25を緩めることによりプッシュロッド10のロック(仮止め)を解除し、テンション用コイルばね40の弾性力によりプッシュロッド10を前方に突出させ、ガイドシュー7のロッド受部7aに当接させる。
【0026】
上記組立時、リテーナ用コイルばね48とテンション用コイルばね40はそれぞれ独立に組み付けられるので、テンション用及びリテーナ付勢用にそれぞれ適した荷重に設定することができ、使用中もお互いに影響し合うこともない。
【0027】
[ロッド戻り阻止機構の自動調芯]
製造誤差等により、カラー嵌合孔22の中心と、いんろう部16及びロッド支持孔14の中心とにずれが生じ、結果的にプッシュロッド10の軸芯とカラー嵌合孔22の中心とがずれていても、カラー43の外周面とカラー嵌合孔22との間に、最大製造誤差を吸収できる程度の所定の隙間C1を確保してあるので、該隙間C1により上記芯ずれは吸収され、テーパー面42とリテーナ45とプッシュロッド10は自動調芯される。すなわち、組付後は、カラー43のテーパー面42の中心はリテーナ45及びプッシュロッド10の軸芯と一致しており、前述のような製造誤差があっても、カラー43のテーパー面42は全部のボール47を均等に押圧し、全ボール47はプッシュロッド10を全周に亘って均等に楔作用を発揮し、プッシュロッド10を把持することができる。
【0028】
【作用】
[テンショナの作用]
テンション用コイルばね40でプッシュロッド10を前方に付勢することにより、ガイドシュー7はカムチェーン1に所定の荷重で押圧され、これによりカムチェーン1に一定のテンションが付与される。
【0029】
[ロッド戻り阻止機構の作用]
エンジン運転中、プッシュロッド10にはカムチェーン1からガイドシュー7を介して後方への反力が加わるが、ボール47がプッシュロッド10に連動してテーパー面42とプッシュロッド外周面に噛み込み、ボール47の楔作用により、プッシュロッド10の戻り(後退移動)は阻止される。一方、カムチェーン1の伸びによる緩みに対しては、コイルばね40の付勢力により、カムチェーン1の緩み量に応じてプッシュロッド10は徐々に前方に移動し、適切なテンションを維持する。この場合、ボール47は、プッシュロッド10により前方に引っ張られ、プッシュロッド10に対する押圧は解除され、プッシュロッド10の前進移動が可能となる。
【0030】
運転中、ガイドシュー7は、前記従来技術の課題で述べた内容と同様に、カムチェーン1に作用する張力の変化により、チェーン移動方向Aと概ね直角方向に振動すると共に、上記力の変動により弓形の曲率に変化が生じ、それによりロッド受部7aの位置が略A方向にも振動する。また、カムチェーン1との摩擦によりチェーン移動方向Aに繰返し引っ張られ、支持軸11における径方向の隙間によってもチェーン移動方向Aに振動する。このような径方向の振動に対し、図1の構造では、ロッド支持孔14の全長L1が長く形成されると共にロッド支持孔14の前端P1がプッシュロッド10の前端近傍に位置し、プッシュロッド10の前方突出量L2が短く制限され、さらにプッシュロッド10はロッド支持孔14に殆ど径方向の遊びがない状態で嵌合しているので、プッシュロッド10径方向の振動は抑制される。なお、ロッド支持長さL1はプッシュロッド10の突出量L2が変化しても変わらない。
【0031】
上記のようにプッシュロッド10の径方向の動きが抑制されることから、当然リテーナ45及びボール47の径方向の動きも抑制され、ロッド戻り阻止機構29における不快な音の発生は抑制される。
【0032】
リテーナ用コイルばね48を備えているので、プッシュロッド10の軸芯方向の振動により、ボール47がテーパー面42あるいはプッシュロッド10の外周面から浮くように離間した場合でも、素早く当接状態に戻すことができる。しかも、リテーナ用コイルばね48をテンション用コイルばね40とは独立に備えているので、テンションの設定荷重に関係なく、リテーナ45のセット荷重を自由に設定でき、ロッド戻り阻止機構29の作動性を向上させることができる。また、リテーナ用コイルばね48を、プッシュロッド10を押圧するテンション用コイルばね40とは別部材としていることにより、プッシュロッド10の振動に伴うリテーナ用コイルばね48の振動及び荷重変動を抑制することができる。さらに、使用によりプッシュロッド10の突出量L2が変化しても、リテーナ用コイルばね48の荷重が変化することはなく、ロッド戻り阻止機構29のリテーナ45の姿勢を常に一定に保つことができる。
【0033】
また、コイルばね48の前端は、前側ボディ部材9aの段面17にワッシャ等を介して支持されているので、上記コイルばね48の荷重の安定性は維持される。
【0034】
【その他の実施の形態】
(1)本願発明が適用される巻掛伝導機構の無端体として、カムチェーンの他に、タイミングベルト等にも利用することができる。
【0035】
(2)本願発明は自動二輪車用のエンジンには限定されず、各種車輌用エンジンあるいはその他のエンジンに適用できる。
【0036】
(3)ボール47の個数は図2のように8個程度が望ましいが、4個あるいは6個でも可能であり、少なくとも3個以上は必要である。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように本願発明は、テンショナボディ9にロッド軸芯方向移動可能に支持されたプッシュロッド10と、該プッシュロッド10を巻掛伝導機構の無端体側に付勢するテンション用コイルばね40等の付勢手段と、プッシュロッド10の後退移動を阻止するためのボール式ロッド戻り阻止機構29を備えた自動テンショナにおいて、次のような利点がある。
【0038】
(1)請求項1記載の発明は、プッシュロッド10を支持するテンショナボディ9の円筒形のロッド支持孔14を、ロッド戻り阻止機構29よりもロッド軸芯方向のカムチェーン側(無端体側)に形成すると共にプッシュロッド10の前端近傍まで延設し、前記ロッド支持孔と前記プッシュロッドとの径方向の隙間(C3)を、前記プッシュロッドの軸芯方向の移動は許すが径方向に遊びが生じない程度に設定し、前記プッシュロッドの前記ロッド戻り阻止機構よりも反無端体側の部分を、前記ロッド支持孔の内径よりも大きい内径のロッド挿入孔に挿入し、該ロッド挿入孔と前記プッシュロッドとの径方向の隙間(C2)を、前記プッシュロッドが殆ど摩擦抵抗を受けることなく移動できる程度に設定しているので、プッシュロッド10のロッド軸芯方向の支持範囲を広げることができると共にプッシュロッド10の片持ち状の突出量を必要最小限まで短くすることができる。これにより、プッシュロッド10の径方向の振動を抑制することができ、ロッド戻り阻止機構29における不快な音の発生を軽減できる。
【0039】
(2)また、請求項1記載の発明は、上記構成に加え、プッシュロッド10の前進方向へ向けて拡開するテーパー面42を有するカラー43と、上記テーパー面42とプッシュロッド10の外周面の間に配置された複数のボール47と、該ボール47を保持するリテーナ45と、ボール47が上記テーパー面42に当接するようにリテーナ45を付勢するリテーナ用コイルばね(リテーナ用付勢手段)48よりなるロッド戻り阻止機構29を備え、上記カラー43を、テンショナボディ9とは別体に形成すると共にテンショナボディ9のカラー嵌合孔22内に径方向の所定の隙間C1を有して嵌合していると、製造誤差等によりプッシュロッド10の軸芯とカラー嵌合孔22の中心がずれていても、組立時、カラー嵌合孔22とカラー43の外周面との径方向の隙間C1により芯ずれは吸収され、組立後、テーパー面42は全部のボール47に対して均等な圧力で当接し、全ボール47の均等な楔作用により、プッシュロッド10の全周を均等な荷重で押圧できる。
【0040】
(3)上記のようにカラー嵌合孔22とカラー43との隙間C1で製造誤差を吸収する構造としていることにより、テンショナボディ9のロッド支持孔14とプッシュロッド10との径方向の間C3は、プッシュロッド10の軸芯方向の移動に最小限必要な小さな寸法に抑えることができ、これによりプッシュロッド10のロッド径方向の振動は抑制され、ロッド戻り阻止機構29における不快な音の発生を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本願発明を適用した自動テンショナの縦断面図である。
【図2】 図1のII-II断面図である。
【図3】 本願発明の自動テンショナをエンジンのカムチェーンに備えた状態を示す正面略図である。
【図4】 従来例の縦断面図である。
【符号の説明】
1 カムチェーン(無端体)
7 ガイドシュー
9 テンショナボディ
14 ロッド支持孔
22 カラー嵌合孔
40 テンション用コイルばね(テンション用付勢手段)
42 テーパー面
43 カラー
44 ボール挿入孔
45 リテーナ
47 ボール
48 リテーナ用コイルばね(リテーナ用付勢手段)
Claims (1)
- テンショナボディにロッド軸芯方向移動可能に支持されたプッシュロッドと、該プッシュロッドを巻掛伝導機構の無端体側に付勢する付勢手段と、前記プッシュロッドの後退移動を阻止するためのボール式ロッド戻り阻止機構とを備えた自動テンショナにおいて、
前記プッシュロッドを支持する前記テンショナボディの円筒形のロッド支持孔を、前記ロッド戻り阻止機構よりも前記無端体側に形成すると共にプッシュロッド先端近傍まで延設し、
前記ロッド支持孔と前記プッシュロッドとの径方向の隙間(C3)を、前記プッシュロッドの軸芯方向の移動は許すが径方向に遊びが生じない程度に設定し、
前記プッシュロッドの前記ロッド戻り阻止機構よりも反無端体側の部分を、前記ロッド支持孔の内径よりも大きい内径のロッド挿入孔に挿入し、該ロッド挿入孔と前記プッシュロッドとの径方向の隙間(C2)を、前記プッシュロッドが殆ど摩擦抵抗を受けることなく移動できる程度に設定し、
前記ロッド戻り阻止機構は、前記プッシュロッドの前進方向へ向けて拡開するテーパー面を有するカラーと、前記テーパー面と前記プッシュロッドの外周面の間に配置された複数のボールと、該ボールを保持するリテーナと、前記ボールが前記テーパー面に当接するように前記リテーナを付勢するリテーナ付勢手段を備え、
前記カラーは、前記テンショナボディとは別体に形成されると共に前記テンショナボディのカラー嵌合孔内に径方向の所定の隙間を有して嵌合していることを特徴とする自動テンショナ。
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