JP4206056B2 - 低yr高張力鋼板及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、板厚が70mm以上であり、引張強度590MPa以上かつ優れた大入熱継手靭性を有する低YR高張力鋼板及びその製造方法に関するものである。
近年、中高層ビル、橋梁などの大型建築構造物に使用される溶接用鋼材の材質特性に対する要望は厳しさを増している。さらにそのような構造物を建造する際、溶接の効率化を促進するため、フラックス−銅バッキング溶接法、エレクトロガス溶接法、エレクトロスラグ溶接法などに代表されるような大入熱溶接法の適用が希望されており、鋼材自身の靭性と同様に、HAZの靭性への要求も厳しさを増している。また、大型建築構造物は、耐震性が要求されるため鋼材自身の低YR(YP/TS)特性及び高い引張強さ590MPa以上の鋼が必要とされている。
ミクロ組織条件下で引張強さ590MPa以上を達成するには、鋼成分系では、特にCを高め、Cu・Ni添加およびNb添加が必要とされるが、これらの成分調整を行うと、超大入熱溶接継手靭性が低下するという問題が発生する。
大入熱溶接時の鋼材のHAZ靭性を向上する方法として、種々の方法が提案されている。
微細なTi窒化物を鋼中に確保することによって、HAZのオーステナイト粒を小さくし、靭性を向上させる方法、Ti窒化物とMnSとの複合析出物をフェライトの変態核として活用し、HAZの靭性を向上させる方法が提案されている。しかしながら、Ti窒化物は、HAZのうち最高到達温度が1400℃を超える溶接金属との境界(溶接ボンド部と称する)近傍ではほとんど固溶してしまうので靭性向上効果が低下してしまう。
溶接ボンド部近傍の靭性を改善する方法として、Ti酸化物を含有した鋼が厚板、形鋼などの様々な分野で使用されている(特許文献1、特許文献2)。Ti酸化物を含有した鋼は大入熱溶接部靭性向上に非常に有効である。この原理は、鋼の融点においても安定なTi酸化物をサイトとして、溶接後の温度低下途中にTi窒化物、MnS等が析出し、さらにそれらをサイトとして微細フェライトが生成し、その結果靭性に有害な粗大フェライトの生成が抑制され、靭性の劣化が防止できるというものである。
しかしながら、このようなTi酸化物は鋼中へ分散される個数をあまり多くすることができない。その原因はTi酸化物の粗大化や凝集合体であり、Ti酸化物の個数を増加させようとすれば5μm以上の粗大なTi酸化物、いわゆる介在物が増加してしまう。この5μm以上の介在物は構造物の破壊の起点となって有害であり、靭性の低下を引き起こす。したがって、さらなるHAZ靭性の向上を達成するためには、粗大化や凝集合体が起こりにくく、Ti酸化物よりも微細に分散する酸化物を活用する必要がある。
最近、建設業界等においては、大型の建築用構造材を溶接することが求められていて、500kJ/cm以上、大きいものでは1000kJ/cmものさらなる溶接入熱の増加が進められており、より一層のHAZ靭性を有する高張力鋼材が必要とされている。この際、特に溶接融合部近傍の靭性向上が必要となる。また、大型の建築用構造材には耐震性も要求されることとなるから、80%以下の低YR特性を有する鋼材とすることも必要とされる。
特許文献3には、入熱500kJ/cm以上の超大入熱の溶接時においても、優れたHAZ靭性を実現した低YR特性(YR≦80%)の600MPa級鋼を実現できる発明が記載されている。YR≦80%を達成するため、ミクロ組織がフェライトとベイナイトとの二相でフェライト分率が25〜75%とする。TS≧590MPaを達成するため鋼の成分としてCを高め、Cu、Ni、Nbの添加が必要となるが、これらの元素は超大入熱溶接継手靭性を低下させる。この超大入熱溶接継手靭性の低下を酸化物分散によって防止する。そのため、鋼中に円相当径で0.005〜2.0μmの酸化物粒子を単位面積当たりの個数密度で100〜3000個/mm2含有する。多量の酸化物を形成するためにCaを活用する。
非特許文献1には、熱間圧延終了後、Ar3温度以上から水冷焼入れを行い、その後フェライト+オーステナイトの二相域温度に再加熱して再度急冷を行う方法を用いることにより、室温でフェライト+ベーナイトの二相組織を得て低降伏比を達成する方法が記載されている。
特開昭61−79745号公報 特開昭62−103344号公報 特開2002−256377号公報 富田幸男ら著「建築用HT60の降伏点に及ぼす各種プロセスの影響」、CAMP−ISIJ、Vol.1(1988)、第88頁
超高層ビルなどの大型建築構造物に使用される溶接用鋼材として、板厚が70mmを超える鋼材が要求されている。このような鋼材においても、引張強度590MPa以上、降伏比80%以下の低YRで、かつ優れた大入熱継手靭性を有することが必要である。
特許文献3に記載の方法で板厚70mm以上の鋼板を製造しようとすると、板厚中心部の強度が不足して所定の品質を得ることが困難である。
非特許文献1に記載のように、熱間圧延終了後、Ar3温度以上から水冷焼入れを行い、その後フェライト+オーステナイトの二相域温度に再加熱して再度急冷を行う方法を用いれば、室温でフェライト+ベーナイトの二相組織を得て低降伏比を達成し、板厚70mm以上の鋼板でも低降伏比、高張力、継手靭性を満足する鋼を製造することが可能である。しかし、熱間圧延後に再加熱・焼き戻しを行うために生産性が悪化し、製造コストの上昇が避け得ない。
本発明は、熱間圧延後に再加熱・焼き戻しを行わずに、引張強度590MPa以上、降伏比80%以下の低YRで、かつ優れた大入熱継手靭性を有する高張力鋼板及びその製造方法を提供することを目的とする。
鋼中にBを含有させてCとBとの成分範囲を特定し、熱間圧延後にAr3点以上の温度から急冷することによって、たとえ鋼板の板厚が70mm以上であっても鋼のベーナイト分率を50%以上とすることができる。鋼のベーナイト分率を50%以上とすれば、焼入れままでも板厚方向の強度差を生じさせずに高強度化することができると同時に、ベーナイト組織の可動転位によりYRを低減することができる。
本発明は上記知見に基づいてなされたものであり、その要旨とするところは以下の通りである。
(1)質量%で、C:0.04〜0.20%、Si:0.05〜0.35%、Mn:0.50〜2.50%、Al:0.003〜0.03%、Ti:0.001〜0.02%、B:0.0002〜0.003%、Ca:0.0003〜0.0025%を含有し、N:0.006%以下であり、残部Fe及び不可避不純物からなり、C+100×Bの値が0.1%以上0.32%以下であり、板厚方向で、板表面下5mmまでを除いた領域においてベーナイト分率が50%以上であり、板厚が70mm以上であることを特徴とする低YR高張力鋼板。
(2)さらに質量%で、Ni:0.001〜0.9%、Cr0.001〜0.3%、Mo:0.001〜0.04%、V:0.001〜0.05%、Nb:0.001〜0.05%の1種又は2種以上を含有することを特徴とする上記(1)に記載の低YR高張力鋼板。
(3)鋼中に円相当径で0.005〜2.0μmの酸化物粒子を単位面積当たりの個数密度で100〜3000個/mm2含有し、その酸化物粒子の組成が少なくともCa、Al、Oを含み、Oを除いた元素が質量比で、Ca:5%以上、Al:5%以上を含有することを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の低YR高張力鋼板。
(4)耐力440MPa以上、引張強度590MPa以上、降伏比80%以下で優れた大入熱継手靭性を有することを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の低YR高張力鋼板。
(5)上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の成分を有する鋼板を、熱間圧延終了後、Ar3温度以上から水冷焼入れを開始し、150℃以下まで水冷することを特徴とする低YR高張力鋼板の製造方法。
本発明は、鋼中のC:0.04〜0.20%、B:0.0002〜0.003%、C+100×Bの値が0.1%以上0.32%以下とし、熱間圧延終了後、Ar3温度以上から水冷焼入れを開始し、150℃以下まで水冷することにより、板表面直下を除いて板厚のどの位置においてもベーナイト分率が50%以上とし、板厚が70mm以上であっても焼入れままで、耐力440MPa以上、引張強度590MPa以上、降伏比80%以下で優れた大入熱継手靭性を有する低YR高張力鋼板を提供することが可能となる。
従来の、熱間圧延後の強冷却を用いた焼入れでフェライトとベーナイトの二相組織とし、フェライト分率を25〜75%とする焼入れままの鋼では、板厚を70mm以上とした場合、板厚方向に強度差が生じ、板厚中心部の強度が確保できず、一方では表層部の硬さが過剰になる傾向があった。また、焼入れまま降伏比を抑制しようとすると、Cを高めて硬質相であるセメンタイト周辺の応力集中を生じさせ、そこでの降伏を誘起することを用いているが、単純にCを高めると近年の大入熱溶接継手靭性を確保するのが困難である。
本発明では、鋼中のCを0.04%以上、Bを0.0002%以上、C+100×Bの値を0.1%以上0.32%以下とし、熱間圧延終了後、Ar3温度以上から水冷焼入れを開始し、150℃以下まで水冷することにより、、たとえ鋼板の板厚が70mm以上であっても、板表面直下を除いて板厚のどの位置においてもベーナイト分率が50%以上とすることができ、これらの課題を解決した。
ベーナイト組織は変態ままの状態では可動転位を多く含み、応力負荷下ではそのような可動転位から先に降伏が開始するので、降伏比を低減することができる。またベーナイト組織はC+100×B≦0.32%の条件では炭化物を微細に分散し、これらに応力集中することも降伏比の低減に寄与する。
本発明は鋼中のCを0.04%以上、Bを0.0002%以上、C+100×Bの値を0.1%以上として鋼組織をベーナイト組織にすることにより、降伏強度を440MPa以上、引張強度を590MPa以上とする。特に板厚が70mmを超える厚手材であっても、焼入れままで板厚中心部まで強度を確保することが可能となる。
一方、C、Bともに溶接熱影響部(HAZ)の焼入性を増大させるので、C+100×Bを0.32%以下に限定し、これによってHAZの硬さを低減し、HAZの靭性を確保することができる。特にCは脆化相である粗大なセメンタイトを多く形成するので、C≦0.20%に限定して靭性の確保を図っている。
本発明は、1400℃以上に加熱されるHAZ領域の再加熱オーステナイト細粒化を、酸化物を利用して達成することにより、HAZ靭性を向上させる。
再加熱オーステナイト粒を細粒化するためには高温でのオーステナイト粒成長を抑制することが必要である。その手段として最も有効な方法は、分散粒子によりオーステナイトの粒界をピンニングし、粒界の移動を止める方法である。そのような作用をする分散粒子の一つとしては、従来、Ti窒化物と酸化物が有効であると考えられていた。しかしながらTi窒化物は1400℃以上の高温では固溶する割合が大きくなるため、ピンニング効果が小さくなる。これに対し、高温で安定な酸化物をピンニング粒子として活用することが必要である。また、分散粒子による結晶粒界のピンニング効果は、分散粒子の体積率が大きいほど、一個の粒子径が大きいほど大きい。ただし、分散粒子の体積率は鋼中に含まれる粒子を構成する元素の濃度によって上限があるので、体積率を一定と仮定した場合には、粒子径はある程度小さい方がピンニングには有効である。
酸化物の体積分率を大きくする手段として、酸素との溶解度積が小さい元素を活用することができる。酸素との溶解度積が小さい、すなわち強脱酸元素として、一般的にはAlが用いられる。しかしながら、Alだけでは酸素を充分利用するには不充分で、さらにAlよりも強い脱酸元素が必要で、鉄鋼の脱酸工程で汎用的に使用されるCaを活用することが重要である。Caは酸素との溶解度積が小さいため、同量の酸素に対してAlよりも一層多量の酸化物を生成することができる。鋼中に生成する酸化物粒子の組成として、Caが5%以上、Alが5%以上含まれることで、鋼中に円相当径で0.005〜2.0μmの酸化物粒子を単位面積当たりの個数密度で100〜3000個/mm2含有させ、酸化物の体積分率すなわち酸化物量を大きくすることが可能となる。
本発明では、鋼中にCaを0.0003%以上含有することにより、上記のとおり鋼中に酸化物粒子を分散させ、これによってHAZ靭性を大幅に向上する。
以下、本発明の成分をはじめとする限定理由について説明する。%は質量%を意味する。
Cは鋼の強度を向上させる有効な成分であるとともに、焼入れ組織をベーナイト組織とするために必要である。Cが0.04%未満ではベーナイト分率を50%以上とすることが難しく、母材強度が不足するので、下限を0.04%とする。一方、過剰の添加は、鋼材の溶接性やHAZ靭性などを著しく低下させるので、上限を0.20%とした。
Siは母材の強度確保、脱酸などに必要な成分であり、0.05%以上含有することでその効果を発揮させることができる。一方、HAZの硬化により靭性が低下するのを防止するため上限を0.35%とした。
Mnは母材の強度、HAZ靭性の確保に有効な成分として0.50%以上含有させる。一方、Mn含有量が高すぎるとHAZ靭性が低下するので、上限を2.50%とした。
Alは重要な脱酸元素であり、下限値を0.003%とした。また、Alが多量に存在すると、鋳片の表面品位が劣化するため、上限を0.03%とした。また、Al含有量をこの範囲内とすることにより、HAZ靭性を確保することができる。
TiはNと結合してTi窒化物を形成させるために0.001%以上添加する。しかし、固溶Ti量が増加するとHAZ靭性が低下するため、0.02%を上限とした。また、Ti含有量をこの範囲内とすることにより、HAZ靭性を確保することができる。さらにTiを含有させることは、ベイナイト分率を確保する上でも有効である。
Bは焼入れ組織をベーナイト組織とするために必要であり、Bが0.0002%未満では、特に板厚が70mm以上の鋼板においてベーナイト分率を50%以上とすることが難しく、母材強度が不足するので、下限を0.0002%とする。一方、過剰の添加は、HAZ靭性を低下させるので、上限を0.003%とした。
本発明においては、C+100×Bの値を0.1%以上0.32%以下とする。ここでCはC含有量(質量%)、BはB含有量(質量%)を意味する。C+100×Bの値が0.1%未満では、焼入れ組織をベーナイト組織とすることができず、強度の目標である降伏強度440MPa以上、引張強度590MPa以上を達成することができない。特に本件のように70mmを超える厚鋼板の場合には板厚中心部の強度が不足する。一方、C、Bともに溶接熱影響部(HAZ)の焼入性を増大させるので、C+100×Bの値が0.32%を超えると、HAZの硬さが課題となり、靭性が低下する。C+100×Bの値は0.30%以下とするとより好ましい。0.24%以下とするとさらに好ましい。
CaはCa系酸化物を生成させるために0.0003%以上の添加が必要である。しかしながら、過剰の添加は粗大介在物を生成させるため、0.0025%を上限とした。Ca含有量をこの範囲内とすることにより、微細なCa含有酸化物を分散させ、これによってHAZ領域の再加熱オーステナイトを細粒化させ、HAZ靭性を確保することができる。
Nはマトリックスに固溶してその靭性を低下させると共に、Bと結合することでBが有する効果を阻止するため、上限を0.006%とする。
次に選択元素の好ましい含有範囲について説明する。
Niは鋼材の強度および靭性を向上させるために有効であり、0.001%以上の含有でその効果を得ることができる。一方、Ni含有量が0.9%を超えるとYRが大きくなるとともに、Ni量の増加は製造コストを上昇させるので、0.9%を上限とした。
Cr、Mo、Vは鋼の強度及び靭性を向上させる効果を有するので、必要に応じてそれぞれ0.001%以上含有させる。一方、過剰な添加はHAZ靭性を著しく低下させるため、それぞれ0.3%、0.04%、0.05%を上限とした。
Nbは焼入れ性を向上させることにより鋼の強度および靭性を向上させるために有効な元素であり、必要に応じて0.001%以上含有させる。一方、過剰な添加はHAZ靭性を著しく低下させるため0.05%を上限とした。
次に本発明の鋼板が有する金属組織について説明する。
本発明の鋼板は、板厚方向で、板表面下5mmまでを除いた領域においてベーナイト分率が50%以上である。鋼のベーナイト分率を50%以上とすれば、焼入れままでも板厚方向の強度差を生じさせず、板厚が70mm以上であっても板厚の全範囲で高強度化することができると同時に、ベーナイト組織の可動転位によりYRを低減することができる。ベーナイト分率を60%以上とするとより好ましい。これにはC及びBを調整してC+100×Bの値を0.15%以上とすることにより、ベーナイト分率を60%以上とすることができる。ベーナイト分率を70%以上とするとさらに好ましい。これには上記同様にしてC+100×Bの値を0.20%以上とする。なお、板表面下5mmまでの領域については、ベーナイト+マルテンサイトが主体となった組織が形成される。
本発明では、鋼中のCを0.04%以上、Bを0.0002%以上、C+100×Bの値を0.1%以上0.32%以下とし、熱間圧延終了後、Ar3温度以上から水冷焼入れを開始し、150℃以下まで水冷することにより、板表面直下を除いて板厚のどの位置においてもベーナイト分率を50%以上とすることができる。これにより、板厚が70mm以上であっても、焼入れ後に焼き戻し熱処理を行うことなく、焼入れままで耐力440MPa以上、引張強度590MPa以上、降伏比80%以下で優れた大入熱継手靭性を有する低YR高張力鋼板を提供することが可能となる。
熱間圧延後の鋼板の水冷焼入れについては、冷却速度を4〜7.5℃/sec、好ましくは5〜6.5℃/secとすればよい。水冷終了時の鋼板温度については、150℃以下であれば良く、通常は室温まで水冷することとすればよい。
最後に、HAZ領域の再加熱オーステナイト細粒化を実現してHAZ靭性を改善するために必要な酸化物粒子の好ましい大きさ及び個数について説明する。
酸化物粒子の円相当径が0.1μmより小さくなるとピンニング効果は徐々に減少し、0.005μmより小さくなるとほとんどピンニング効果を発揮しない。また、2.0μmより大きい酸化物粒子はピンニング効果はあるものの、脆性破壊の起点となることがあるため鋼材の特性上不適である。この結果より、必要な粒子径を0.005〜2.0μm、その中でも特に0.1〜2.0μmとした。
酸化物粒子個数が多いほど組織単位は微細になり、粒子個数が多いほどHAZ靭性が向上するが、鋼材に要求されるHAZ靭性は、その用途、使用される溶接方法などによって複雑に異なる。特に要求特性が厳しいと考えられる高強度の造船用鋼で大入熱溶接施工される場合に要求されるHAZ靭性、例えば、試験温度−40℃において吸収エネルギー50J以上を満足するためには、円相当径が0.005〜2.0μmの酸化物粒子数が100個/mm2以上であると好ましい。ただし、粒子数が多くなるほど、その靭性向上効果は小さくなり、必要以上に粒子個数を多くすることは靭性に有害な粗大な粒子が生成する可能性が高くなることを考えると、粒子数の上限は3000個/mm2が適切である。
この酸化物粒子の大きさおよび個数の測定は、例えば以下の要領で行なう。母材となる鋼板から抽出レプリカを作製し、それを電子顕微鏡にて10000倍で20視野以上、観察面積にして1000μm2以上を観察することで該酸化物の大きさおよび個数を測定する。大きさの測定は、例えば粒子を撮影した写真をもとに、その円相当径を求める。このとき鋼板の表層部から中心部までどの部位から採取した抽出レプリカでもよい。また、粒子が適正に観察可能であれば、観察倍率を低くしてもかまわない。
本発明により、板厚が70mm以上の鋼板について、焼き戻しを行うことなく焼入れままで、耐力440MPa以上、引張強度590MPa以上、降伏比80%以下で優れた大入熱継手靭性を有する低YR高張力鋼板を実現することができる。少なくとも板厚100mmまでの鋼板については、本発明により上記品質を有する鋼板を実現することができる。
鋼を転炉溶製し、RH真空脱ガス装置によって真空脱ガス時に脱酸を行い、表1に示す成分を有する鋼を試作した。連続鋳造により280mm厚の鋳片に鋳造した後、1150℃で加熱後、表2に示す条件で厚板圧延を経て水冷し室温まで冷却し、板厚100mmの鋼板とした。S1〜S29が本発明鋼、S30〜S51が比較鋼である。得られた鋼板を汎用の溶接材料を用いて1パスのエレクストロスラグ溶接を行った。入熱は約900kJ/cmである。
表3には母材特性、ベーナイト分率、HAZ靭性を示す。母材特性及びベーナイト分率の計測は板厚中心および板厚の1/4の位置により代表的に評価した。HAZ靭性評価のためのシャルピー吸収エネルギーは、フュージョンライン部位で試験温度0℃にて6本の試験を行い、その平均値を記入した。
Figure 0004206056
Figure 0004206056
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表3から明らかなように、S1〜S29の本発明鋼はベーナイト分率が板厚中心および板厚の1/4の位置のいずれにおいても50%以上となり、吸収エネルギーが70J以上の優れたHAZ靭性、ならびにYRが80%以下の優れた低YR特性を有する0.2%耐力(0.2%PS)が440MPa以上、引張強度(TS)が590MPa以上の高強度鋼であることがわかる。
一方、比較例のS30はCが過小でベーナイト分率が不足し、母材強度が不足した。S31、34はC+100×Bが過大で、HAZ靭性が不足した。S32はC+100×Bが過小でベーナイト分率が不足し、母材強度が不足した。S33はBが過小でベーナイト分率が不足し、HAZ靭性が不足した。S35はCが過大でHAZ靭性が不足した。S36はSiが不足し、S38はMnが不足し、いずれも母材強度、HAZ靭性が不足した。S37はSiが過大で、S39はMnが過大で、S40はAlが過小で、S41はAlが過大で、S42はTiが過小で、S43はTiが過大で、S44はCaが過小で、S45はCaが過大で、いずれもHAZ靭性が不足した。S46はNiが過大でYRが過大となった。S47はCrが過大で、S48はMoが過大で、S49はVが過大で、S50はNbが過大で、いずれもHAZ靭性が不足した。S51は圧延後の水冷開始温度が低すぎて、母材強度、HAZ靭性が不足した。

Claims (5)

  1. 質量%で、C:0.04〜0.20%、Si:0.05〜0.35%、Mn:0.50〜2.50%、Al:0.003〜0.03%、Ti:0.001〜0.02%、B:0.0002〜0.003%、Ca:0.0003〜0.0025%を含有し、N:0.006%以下であり、残部Fe及び不可避不純物からなり、C+100×Bの値が0.1%以上0.32%以下であり、板厚方向で、板表面下5mmまでを除いた領域においてベーナイト分率が50%以上であり、板厚が70mm以上であることを特徴とする低YR高張力鋼板。
  2. さらに質量%で、Ni:0.001〜0.9%、Cr0.001〜0.3%、Mo:0.001〜0.04%、V:0.001〜0.05%、Nb:0.001〜0.05%の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の低YR高張力鋼板。
  3. 鋼中に円相当径で0.005〜2.0μmの酸化物粒子を単位面積当たりの個数密度で100〜3000個/mm2含有し、その酸化物粒子の組成が少なくともCa、Al、Oを含み、Oを除いた元素が質量比で、Ca:5%以上、Al:5%以上を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の低YR高張力鋼板。
  4. 耐力440MPa以上、引張強度590MPa以上、降伏比80%以下で優れた大入熱継手靭性を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の低YR高張力鋼板。
  5. 請求項1乃至3のいずれかに記載の成分を有する鋼板を、熱間圧延終了後、Ar3温度以上から水冷焼入れを開始し、150℃以下まで水冷することを特徴とする低YR高張力鋼板の製造方法。
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