JP4204725B2 - 定位脳手術支援システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、定位脳手術を実施するに際して、手術標的点の座標を求めるに当たっての、基準となる位置座標を容易に求められるようにした定位脳手術支援システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
頭部に発生した腫瘍などを治療するための手術手法として、定位脳手術が患者の負担を比較的軽くできるものとして適用されるケースが増えている。その理由の一つとして、X線CT装置やMRI装置のようなコンピュータを用いて、断層画像を再構成することのできる画像診断装置の進歩によって、先鋭な断層画像から病巣を明瞭に認識することができ、その画像から病巣の位置座標を正確に求めることができるようになったことが挙げられる。
そこで先ず、定位脳手術を実施する際における、ターゲットとなる病巣の位置座標の求め方の従来の方法について、図5ないし図10を参照して説明する。なお、図5には、画像診断装置としてX線CT装置を用いたものが示めされているが、これはMRI装置であってもよい。
【0003】
すなわち、X線CT装置1の寝台2に患者Pを載せて、その頭部PHに輪状に形成された固定フレーム3を固定するとともに、この固定フレーム3を寝台2に固着する。固定フレーム3には、例えば図6に示すように、患者Pの頭部PHに固定するためのねじ4が、外周側から内周側へ向けて貫通するように4ケ所に設けられている。さらに固定フレーム3には、頭部PHの両側に位置するように、一対のゲージ板5が、固定フレーム3のなす平面と直交するように設けられている。
ゲージ板5には、固定フレーム3の基準面を原点として3方向へ広がる3本の線状のマーカ6を有している。このマーカ6は図7に示すように、中央部のマーカ6aが固定フレーム3の基準面3aから鉛直方向へ延びるように配置されている。そして、他のマーカ6b、6cは、マーカ6aの任意の点をP0とし、基準面3aから点P0までの距離をαとしたとき、この点P0をとおりマーカ6aに垂直な直線がマーカ6b、6cと交わる点P1、P2間の距離βが、距離αに等しくなるように配置されている。なお、このマーカ6は、ゲージ板5のCT値と異なるCT値を呈するものが使用され、3本のマーカ6a、6b、6cのCT値は略等しいことが望ましい。
【0004】
図5に戻って、X線CT装置1は、ガントリ7、コンソール8、表示器9を有している。そして、架台7の中には、被検体Pへ向けてX線を曝射するX線管10と、被検体Pを透過したX線を検出する検出器11とが、対向して配置されており、これらは被検体Pの周りを回転する。検出器11で検出された信号は、コンソール8へ送られ、ここでコンピュータによって断層画像が再構成されて、その画像が表示器9に表示される。よって、ここで再構成された断層画像には、図8に示すような、被検体Pの頭部PHとともにゲージ板5やマーカ6も写し込まれている。なお図8に表示されている頭部PHは、輪郭のみが模式的に示されている。
また、コンソール8は脳手術支援装置12に接続されている。脳手術支援装置12は、X線CT装置1で撮影された複数枚の断層画像の内、脳手術支援を行うために最初の1枚目の画像を表示器9に表示させたときに、その画像中に存在するマーカ6に対して関心領域(region of interest:以下ROIと称する)を設定するROI設定部13と、ここで設定されたROIに基づきマーカの位置座標を演算するとともに、新たにROIを設定すると、先に演算して求めたマーカの位置座標を基に、新たなROIの位置座標を演算する演算部14と、2枚目以降の画像に対して初期画像に設定した位置にROIを自動的に配置するROI自動配置処理部15とを有している。
【0005】
このように構成された従来の脳手術支援装置12によって、手術標的点は次のようにして設定されていた。
先ず、初期画像に対する手術標的点の設定の手順を、図9にフローチャートで示してある。すなわち、ステップ11として、表示器9を見ながら、断層画像中に被検体Pの頭部PHとともに表示されているゲージ板5のマーカ6にROIを設定する。このROIの設定は、コンソール8の操作部に配置される入力手段としてのマウスなどを手動操作することによって行われる。また、左右のゲージ板5にそれぞれ3個のマーカ6a、6b、6cがあるので、都合6個のマーカ6についてROIを設定し、それぞれの位置座標を演算する。
次に、ステップ12として、ターゲットとなる病巣の位置にROIを手動で配置することにより、ステップ13として、先に演算された6個のマーカ6a、6b、6cの位置座標を基に、演算部14において病巣の位置座標を演算する。そして、ステップ14として、演算を終了するか否かを判定し、NOであればステップ11またはステップ12へ戻ってROIの設定をやり直し、OKであれば一連の処理を終了とする。これにより、最初の画像における、手術標的点(ターゲット)としての病巣位置がROI自動配置処理部15に保存される。
【0006】
また、2枚目以降の断層画像を表示器9に表示したときには、図10に示すフローチャートに従い、手術標的点にROIが設定される。すなわち、ステップ21として、ROIの自動配置機能を使用するかどうかを決め、使用しない(NO)ときは、ステップ22へ進んで初期画像に対する場合と同様の手順により、6個のマーカ6にROIを設定し、その位置座標を演算し、ステップ23へ進むことになる。
しかし、ROIの自動配置機能を使用する(YES)ときはステップ24へ進み、ROI自動配置処理部15が作動するように指示した上でステップ23へ進む。従って、ステップ22の操作をすることなく、1枚目の断層画像によって演算された座標位置にROIが自動的に配置される。ただし、断層画像が基準面3aからマーカ6aに沿って頭頂方向へ移動するに従い、手術標的点の位置がずれてくることが予想されるので、ステップ23としてオペレータは、2枚目以降の断層画像について、それぞれ病巣位置がずれた分だけROIの配置を修正する操作を実施する。そして、ROIの修正位置を確定すれば、ステップ25として、2枚目以降の断層画像における新たな病巣位置の位置座標を演算する。次に、ステップ26として、演算を終了するか否かを判定し、NOであればステップ21またはステップ22へ戻ってROIの設定をやり直し、OKであれば一連の処理を終了とする。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように従来は、最初の断層画像にあっては手術標的点に直接ROIを設定することができず、必ずゲージ板5のマーカ6にROIを設定する操作から始める必要があった。これは、ある意味では、手術標的点を探し出しその位置座標を計算すための画像なので、ROIが自動的に配置できなくても当然と言えるものであった。しかも、6個のマーカ6へそれぞれ手動で設定したROIの位置に基づき座標系を形成することになるので、座標系を形成するのに十分な位置であることを必要とし、ソフトウェアによる厳しいチェックに耐えるようにROIを設定するには、オペレータにとって極めて慎重な操作を余儀なくされ、多大のストレスを与えていた。同時に、このための操作に長時間を要していた。
本発明は、このような問題を解決するためになされてものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、被検体の頭部の両側に基準位置を示すマーカが写し込まれた複数スライスの断層画像を表示する表示手段と、この表示手段に表示される任意の1スライスの前記断層画像に対して、前記断層画像に含まれている前記マーカを含む近傍に関心領域を手動操作によって設定する第1の関心領域設定手段と、この第1の関心領域設定手段によって設定された関心領域内のCT値に基づき、前記任意の1スライスの前記断層画像に対して、前記マーカの位置を演算するマーカ位置演算手段とを具備することを特徴とするものである。
これにより、マーカ近くにROIを設定するだけで、後はマーカの座標位置を正確に自動的に確定することができるので、1枚目の断層画像であってもROIの設定が容易となり、位置座標の設定に要する時間が短縮される。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、被検体の頭部の基準面を形成する当該頭部に固定されたフレームに前記頭部の両側に位置するようにマーカ部材を取付けた状態で、当該頭部の複数スライスの断層画像を取得する断層画像取得手段と、この断層画像取得手段で取得された断層画像を表示する表示手段と、この表示手段に表示される任意の1スライスの前記断層画像に対して、前記断層画像に含まれている前記マーカを含む近傍に関心領域を手動操作によって設定する第1の関心領域設定手段と、この第1の関心領域設定手段によって設定された関心領域内のCT値に基づき、前記任意の1スライスの前記断層画像に対して、前記マーカの位置を演算するマーカ位置演算手段とを具備することを特徴とするものである。
これにより、断層画像取得手段を有するものにおいても、請求項1に記載の発明と同様に、マーカ近くにROIを設定するだけで、後はマーカの座標位置を正確に自動的に確定することができるので、1枚目の断層画像であってもROIの設定が容易となり、位置座標の設定に要する時間が短縮される。
【0010】
さらに、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の定位脳手術支援システムにおいて、前記マーカ位置演算手段により求められた前記マーカ位置に基づき、他のスライスの断層画像を前記表示手段に表示させたときに前記関心領域を所定位置に表示させる関心領域自動配置処理手段を具備することを特徴とするものである。
これにより、2枚目以降のスライスの断層画像には、所定位置に関心領域を自動的に表示させるので、操作が極めて容易となる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る定位脳手術支援システムの一実施の形態について、図1ないし図4を参照するとともに、ターゲットとなる病巣の位置座標の求め方の従来の方法の説明に参照した、図5ないし図9も適宜引用して詳細に説明する。
図1は、本発明により、断層画像に対して最初に手術標的点を設定する場合の手順を示したフローチャートである。
先ず、ステップ1として、表示器9を見ながら、断層画像中に被検体Pの頭部PHとともに表示されているゲージ板5のマーカ6の近くに、手動操作によってROIを設定する。この操作は、従来の図9に示したステップ11の操作に類似しているが、従来のような厳密な設定操作ではなく、単にROIを形成する円の内にマーカ6が入ればよい。
次に、ステップ2へ進み、ここでマーカの位置座標を確定することにより、マーカ6上の正確な位置にROIを置き直す。そこで、表示器9には図8に示すような断層画像が表示されているので、これを図2に示すような座標系に置き換えて、手術標的点の座標系を設定する。
すなわち、頭部PHの左側にあるゲージ板5のマーカ6a、6b、6cをそれぞれML、AL、PLとし、頭部PHの右側にあるゲージ板5のマーカ6a、6b、6cをそれぞれMR、AR、PRとする。そして、両側の中央部MLとMRを通る線をX軸、MLとMRとの中点0と直交し断面(スライス面)に平行な線をY軸、中点0を通り断面(スライス面)に垂直な線をZ軸とする。そして、このような座標系におけるMLとMRとを通る平面をX−Z平面とする。
従って、図2に示す手術標的点QのX座標は、上記座標系のY−Z平面と手術標的点Qとの距離となり、同じくそのY座標は、上記座標系のX−Z平面と手術標的点Qとの距離となる。また、固定フレーム3の基準面3aすなわち原点0からスライス面までの距離Zは、ALとPLとの距離をHl、ARとPRとの距離をHrとすれば、Z=(Hl+Hr)/2として表される。このことは、図7において、α=βとしたことからも明らかである。なお、距離Zを手術標的点QのZ座標とする。
【0012】
このような座標系において、AL、ML、PL、AR、MRおよびPRの正確な位置座標を、それぞれ次のようにして求める。ただし、各位置座標の求め方はそれぞれについて同じ手順で実施するものであり、求める順番は適宜でよい。
すなわち、図3に示すように、マーカ6の直径をrとし、このマーカ6を囲むROIは半径がrで中心の座標が(x0,y0)の円Aだとする。また、円Aに囲まれた部分の各点(xi,yi)のCT値をp(xi,yi)とする。さらに、マーカ6を埋め込んだゲージ板5のCT値をp0とする。そして、マージンをε、円A内の重みをq(xi,yi)とする。なお、CT値とは、物質のX線吸収係数を、基準物質からの相対値として表したもので、一般に基準物質としての水のCT値を0としたとき、空気のCT値を−1000としている。
【0013】
そこで、ステップ1で設定したROIの円Aの中心の座標は(x0,y0)であるとみなして、円A内のCT値を調べ、マーカ6のCT値と推定される点にのみ、次のように重みを与える。すなわち、各点の重みq(xi,yi)は、
【数1】
【数2】
とする。
【0014】
その結果として、重みを与えたCT値の中心すなわち重心が、ROIの円Aの中心(x0,y0)からどれだけずれているかを調べる。ここで、円Aの中心(x0,y0)に対するX軸方向の重心とのずれをx’とし、Y軸方向の重心とのずれをy’とすると、x’およびy’は次式で表される。
【数3】
【数4】
よって、ROIを設定したマーカ6の位置座標は、次式から求められる。
【数5】
【0015】
そこで、上記数式5で求められたROIを設定したマーカ6の位置座標(x,y)を中心とする新たな円A’を想定し、この新たな円A’についても同様の演算を行い、これを所望の回数繰り返すことにより、マーカ6の正確な位置座標が確定する。このようにして、1ケ所のマーカ6の位置座標を確定すると、同様の手順で順次他のマーカ6について、その位置座標を確定していき、6ケ所全部のマーカ6の位置座標を確定する。
次に、ステップ3へ進み、ターゲットとなる病巣の位置にROIを手動で配置することにより、ステップ4として、先に演算された6ケ所のマーカAL、ML、PL、AR、MRおよびPRの位置座標を基に、図5に示した脳手術支援装置12の演算部14において病巣の位置座標を演算する。これらステップ3およびステップ4の作用は、図9に示した従来のステップ12およびステップ13の作用と同じである。そして、ステップ5として、演算を終了するか否かを判定し、NOであればステップ1またはステップ3へ戻ってROIの設定をやり直し、OKであれば一連の処理を終了とする。これにより、手術標的点(ターゲット)としての病巣位置がROI自動配置処理部15に保存される。
【0016】
なお、2枚目以降の断層画像については、従来と同様に、図10に示したフローチャートに従って、ROIの自動配置を選択すれば、自動的に前回配置した手術標的点QにROIが配置されるので、その修正操作を実施するだけでよく、その説明は省略する。
また、確定した手術標的点Qの位置座標のデータは、図4に示すように、表示器9に表示されている断層画像に対して、手術標的点Qが画面の上部にあれば、画面の下側に表示される。逆に、手術標的点Qが画面の下部にあれば、位置座標のデータは画面の上側に表示される。そして、表示器9に表示された位置座標のデータは、ドラッキングすることにより、表示位置を画面内の任意の位置に変更することができる。
【0017】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、完全な自動配置ではないものの、マーカ近くにROIを設定するだけで、後はマーカの位置座標を正確に自動的に確定することができるので、1枚目の断層画像であってもROIの設定が容易となり、位置座標の設定に要する時間が短縮され、オペレータの負担を極めて軽減することができる。よって、定位脳手術を速やかに実施することができ、患者への負担も軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る定位脳手術支援システムにおける、断層画像に対して最初に手術標的点を設定する場合の手順を示したフローチャートである。
【図2】手術標的点の座標系の設定手段を説明するために示した説明図である。
【図3】マーカの位置座標の求め方を説明するために示した説明図である。
【図4】本発明に係る定位脳手術支援システムにおける、表示器に表示された画像の一例を示した図である。
【図5】定位脳手術支援システムの概略的な構成を示した構成説明図である。
【図6】固定フレームとゲージ板の構成例を示した斜視図である。
【図7】ゲージ板に設けられているマーカの配置を説明した説明図である。
【図8】表示器に表示された断層画像を模式的に示した図である。
【図9】従来の定位脳手術支援システムにおける、初期画像に対する手術標的点の設定の手順を示したフローチャートである。
【図10】従来の定位脳手術支援システムにおける、2枚目以降の画像に対する手術標的点の設定の手順を示したフローチャートである。
【符号の説明】
1 X線CT装置
3 固定フレーム
5 ゲージ板
6 マーカ
9 表示器
12 脳手術支援装置
13 ROI設定部
14 演算部
15 ROI自動配置処理部
Claims (3)
- 被検体の頭部の両側に基準位置を示すマーカが写し込まれた複数スライスの断層画像を表示する表示手段と、
この表示手段に表示される任意の1スライスの前記断層画像に対して、前記断層画像に含まれている前記マーカを含む近傍に関心領域を手動操作によって設定する第1の関心領域設定手段と、
この第1の関心領域設定手段によって設定された関心領域内のCT値に基づき、前記任意の1スライスの前記断層画像に対して、前記マーカの位置を演算するマーカ位置演算手段とを具備することを特徴とする定位脳手術支援システム。 - 被検体の頭部の基準面を形成する当該頭部に固定されたフレームに前記頭部の両側に位置するようにマーカ部材を取付けた状態で、当該頭部の複数スライスの断層画像を取得する断層画像取得手段と、
この断層画像取得手段で取得された断層画像を表示する表示手段と、
この表示手段に表示される任意の1スライスの前記断層画像に対して、前記断層画像に含まれている前記マーカを含む近傍に関心領域を手動操作によって設定する第1の関心領域設定手段と、
この第1の関心領域設定手段によって設定された関心領域内のCT値に基づき、
前記任意の1スライスの前記断層画像に対して、前記マーカの位置を演算するマーカ位置演算手段とを具備することを特徴とする定位脳手術支援システム。 - 前記マーカ位置演算手段により求められた前記マーカ位置に基づき、他のスライスの断層画像を前記表示手段に表示させたときに前記関心領域を所定位置に表示させる関心領域自動配置処理手段を具備することを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の定位脳手術支援システム。
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