JP4204357B2 - 光熱変換材料の加工方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、導電性を有したパターンを印刷などで形成するためのインク、もしくは帯電防止、耐熱性、放熱性、機械的強度等の物理的な特性の向上ために用いられる光熱変換材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ナノテクノロジー技術が将来の社会に大きな影響を及ぼすであろうと期待されている。ナノ材料の中でも、その特異的な構造に由来した様々な物性を有するカーボンナノチューブ(CNT)が大きく注目を浴びている。例えば、CNTの導電性を利用したもの(特開2002−075102号、特開2003−034751号等)、電界電子放出性を利用したもの(特開2001−035362号、特開2003−063814号等)、帯電防止材料(特開2002−067209号等)、放熱性を利用したもの(特開平10−168502号等)、機械強度や耐腐食性を向上させたもの(特開2002−097375号等)等、数多くの検討事例を列挙することができる。ただし、CNTに強いレーザ光を照射することにより大きな発熱が得られることを利用した事例はなかった。
【0003】
またCNTは、ドデシル硫酸ナトリウムといった界面活性剤に分散する方法が知られているものの、一般的な有機溶媒にあまり溶けず分散性が悪いため、工業的に広く用いられる塗布、印刷などの湿式成膜法等に関する具体的な応用例はほとんどなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、レーザ光を吸収して効率的に熱変換する材料を提供することを目的とする。また、光熱変換材料のハンドリング性や加工性を向上させることを目的とする。
【0005】
【課題を解決する手段】
本発明者らは、カーボンナノチューブがレーザ光を吸収して発熱する現象を見出し、本発明に至った。すなわち本発明は、少なくともカーボンナノチューブとイオン性液体からなるゲル状組成物であり、レーザ光を吸収することにより発熱する光熱変換材料にレーザ光を照射し、カーボンナノチューブ以外の組成を除去することによりカーボンナノチューブを濃縮することを特徴とする光熱変換材料の加工方法である。カーボンナノチューブ以外の組成を除去する手段は、組成を構成する材料により気化、溶融蒸発、もしくは分解が考えられる。
【0006】
これにより選択的にカーボンナノチューブからなる箇所を作ることができ、例えば配線パターンなどが形成できる。また、粘性のあるゲル状組成物であることにより、下地材上にスクリーン印刷により塗布成膜する、あるいはノズルから吐出することにより下地材の所定の箇所にのみ塗布を行うことができる。
【0007】
本発明によれば、レーザ光を照射した箇所だけ選択的に発熱するので、局所的な熱加工や熱変形を与えることができる。あるいは必要な部分にのみ導電性、耐熱性、機械強度等のCNT特有の物性を付与することもできる。ちなみに不要なゲル状組成物はエタノール等の溶剤により洗い流すことが可能である。
【0008】
さらに本発明の光熱変換材料はつぎのような用途に利用できる。
例えば、印刷原版の作製において、従来の版下からポジ若しくはネガフィルムを作成して平版印刷原版に焼き付ける方法に対して、直接版材にレーザー等で印字し製版する、所謂コンピューター・トゥ・プレート(CTP)タイプの平版材が登場するに至っている。(特開平11−115144号、特開2002−264557号、特開平2002−35107号、特開2003−011534号等)その中では、感熱性タイプのものが通常の室内(明室)で取り扱う装置が小型で安価であることから精力的に検討されているが、光を熱に変換するいわゆる高効率な光熱変換材料として本発明の光熱変換材料を用いることができる。ここでは光熱変換材料を発熱による改質もしくは変形等を行うために用いても良いし、印刷版に固着させ導電性等のCNTの物性を付与するために利用しても良い。
【0009】
また、半導体ICは飛躍的に高性能化が進められてきたものの、現状ではリソグラフィー技術の限界が見え始め、リソグラフィー技術の限界を破った微細化した配線構造を形成することができる新たな技術が望まれている。そこで、CNTの約1nmといった極細のチューブ径を利用した研究が多く行われているが(特開平2002−329723号等)、逆にCNTのその細さ故、加工性が非常に悪くまだ実用化にはほど遠い。しかし、本発明によれば光熱変換材料の吐出ノズル径等に依存した塗布幅、もしくはレーザビーム径の幅だけ基板に固着し配線を形成することができるため、これまでにない極細の配線パターンを容易に形成することが可能である。
【0010】
また、従来鉛を含む半田を使って行われてきた半導体素子の金属フレームへの接着や外部電極との接続に、人体に有害な鉛を含まない金属フィラーを高充填してペーストにする方法などが検討されている。(特開平05−325635号、特開平09−245523号 、特開2001−014944号、特開2003−016838号等)この導電性ペーストは、回路基板用の導体として用いられているだけでなく、最近ではプリント回路基板の電磁波シールド材料として導電性ペーストを使用する試みも行われ始めている。しかし、長い間使用していると接点に使用されている金属表面に酸化膜が形成されるため、接触抵抗値が大きく不安定になり、接点の信頼性が極端に低下する可能性があった。従って、酸化膜や腐食膜を形成しない安定な導電材料が望まれていた。本発明の光熱変換材料を熱可塑性樹脂もしくは熱硬化性樹脂等と組合せて金属同士の接着箇所に塗布し、レーザ光を照射することにより、接着と導電性を付与することができ、鉛を含まないハンダの代替となる。
【0011】
また更に、光記録媒体としてポリカーボネート基板に本発明による光熱変換材料を塗布し、これに記録レーザ光を照射する。レーザ光が照射された箇所が発熱し基板のポリカーボネート基板の表面にピット状の熱変形をもたらし、記録ピットを形成することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明において用いられるCNTとは、炭素六角網面が円筒状に閉じた単層構造あるいはこれらの円筒構造が入れ子状に配置された多層構造をした材料のことである。単層構造のみから構成されていても多層構造のみから構成されていても良く、単層構造と多層構造が混在していてもかまわない。また部分的にカーボンナノチューブの構造を有している炭素材料も使用できる。チューブ径、長さ、構造等を特に限定するものではないが、単層のようなチューブ径が細く、且つ長いようなアスペクト比が大きいものがより望ましい。
【0013】
本発明において用いられるイオン性液体は、特に限定するものはなく従来知られた各種のイオン性液体を使用することができるが、常温または可及的に常温に近い温度において液体を呈し、安定なものが好ましい。また、下記の一般式(I)〜(IV)で表されるカチオンと陰イオン(X−)よりなるイオン性液体が特に好ましい。
【0014】
【化1】
(I)
Figure 0004204357
【0015】
【化2】
(II)
Figure 0004204357
【0016】
【化3】
(III)
Figure 0004204357
【0017】
[NRx4-x+
【0018】
【化4】
(IV)
Figure 0004204357
【0019】
[PRx4-x+
上記の式(I)〜(IV)において、Rは炭素数10以下のアルキル基またはエーテル結合を含み、炭素と酸素の合計数が10以下のアルキル基を表す。式(I)においてR1は炭素数1〜4のアルキル基または水素原子を表し、炭素数1のメチル基がより好ましい。また式(I)において、RとR1は同一ではないことが好ましい。式(III)及び(IV)において、Xは1〜4の整数である。
【0020】
陰イオン(X−)としては、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸、ビス(トリフロロメチルスルホニル)イミド酸、過塩素酸、トリス(トリフロロメチルスルホニル)炭素酸、トリフロロメタンスルホン酸、ジシアンアミド、トリフロロ酢酸、有機カルボン酸、またはハロゲンイオンより選ばれた少なくとも1種である。これらは1種類のみ用いても良いし、複数のイオン性液体を用いても良い。
【0021】
CNTのイオン性液体への添加量は特に制限はないが、イオン性液体に対するCNTの量は重量比で1%程度が好ましい。またCNTの純度が悪くなるほどゲル化しにくくなるため触媒等の不純物が少ないものが好ましく、CNTの純度が70%程度以上のものがより好ましい。
【0022】
また更に、イオン性液体の他に有機材料、無機材料、金属等と組合せても良く、この場合もその重量に特に制限はないが、レーザ光が透過しない不透明な材料中に混合もしくは分散した分散した場合には、CNTが材料表面もしくは表層近くにあることが好ましい。
【0023】
照射するレーザ波長は特に限定するものはないが、より大きな発熱を得るためには高出力であることが好ましい。また、レンズ等で集光した光を照射することが特に好ましい。
【0024】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。
【0025】
(実施例1)
単層のCNT(HiPco:Carbon Nanotechnologies社製)とイオン性液体1-ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート(式V)(Fluka社製)とを重量比でCNTが1wt%となるように混合し、乳鉢に加えて約15分磨り潰したところ黒色ゲル状組成物が得られた。このゲルをポリカーボネイト(パンライト:帝人化成株式会社製)基板上へスクリーン印刷により塗布し、978nmのレーザを300mWで照射したところ、ポリカーボネイト基板上に固着した。固着部分は完全に固化しており且つ導電性があった。また、この固着前後では電気抵抗に著しい差が見られているため、単層CNTが濃縮されていると考えられる。レーザを照射せずゲル状組成物として残っている部分はエタノールで除去することができた。
【0026】
【化5】
(V)
Figure 0004204357
【0027】
R : CH3
R1: n−C49
X : PF6
(実施例2)
実施例1と同様に、単層のCNT(HiPco:Carbon Nanotechnologies社製)とイオン性液体1-ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート(式1)(Fluka社製)とを重量比でCNTが1wt%となるように混合して黒色ゲル状組成物を得た。今度はこのゲルをポリカーボネイト(パンライト:帝人化成株式会社製)基板上へノズルから吐出しながら掃引した。978nmのレーザを300mWで照射したところ、ポリカーボネイト基板上に固着し導電性のある配線を形成することができた。
【0028】
(実施例3)
実施例1と同様に、単層のCNT(HiPco:Carbon Nanotechnologies社製)とイオン性液体1-ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート(式1)(Fluka社製)とを重量比でCNTが1wt%となるように混合して黒色ゲル状組成物を得た。このゲル状組成物を熱硬化性エポキシ樹脂(ストラクトボンドE−413、三井化学株式会社製)表面にノズルを用いて塗布し、978nmのレーザを300mWで照射したところ、熱硬化性樹脂は硬化し且つ導電性があった。
【0029】
(実施例4)
実施例1と同様に、単層のCNT(HiPco:Carbon Nanotechnologies社製)とイオン性液体1-ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート(式1)(Fluka社製)とを重量比でCNTが1wt%となるように混合して黒色ゲル状組成物を得た。その後ポリカーボネイト(パンライト:帝人化成株式会社製)基板上にスクリーン印刷により薄膜を形成した。今度は405nmのレーザを7.5mWで照射したところ、ポリカーボネイト基板表面が熱変形し、所謂記録ピットを形成することができた。
【0030】
(実施例5)
単層のCNT(HiPco:Carbon Nanotechnologies社製)とイオン性液体1-ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレイト(式VI)(Fluka社製)とを重量比でCNTが1wt%となるように混合し、乳鉢に加えて約15分磨り潰したところ黒色ゲル状組成物が得られた。実施例1と同様に、978nmのレーザを300mWで照射したところ、ポリカーボネイト基板上に固着し、且つ導電性があった。
【0031】
【化6】
(VI)
Figure 0004204357
【0032】
R : CH3
R1: n−C613
X : BF4
【0033】
【発明の効果】
本発明によれば、高効率の光熱変換材料であり、且つ前記熱変換材料に含まれるカーボンナノチューブの導電性、放熱性、機械的強度等の特異な物性を利用することができる。また、CNTをゲル化することによりハンドリング性、加工性を向上させることが可能となる。

Claims (1)

  1. 少なくともカーボンナノチューブとイオン性液体から成るゲル状組成物であり、レーザ光を吸収することにより発熱する光熱変換材料に、レーザ光を照射し、カーボンナノチューブ以外の材料を除去することにより、カーボンナノチューブを濃縮することを特徴とする光熱変換材料の加工方法。
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