JP4191307B2 - ゴムスポンジ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、金属イオン汚染性が少なく、白色や明色が可能で、かつ物性の良好なゴムスポンジに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のゴムスポンジは、原料ゴムに架橋剤、加硫促進剤等を配合し、発泡成形し、加硫によりゴム弾性を付与し製造している。架橋剤としては硫黄を使用し、加硫促進剤としては、MZ(2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩)などのチアゾール系促進剤と共に、EZ(ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛)などのジチオカルバメート系促進剤やTT(テトラメチルチウラムジスルフィド)などのチウラム系促進剤を組み合わせて使用し、加硫は比較的低温で行われている。これによって、チアゾ−ル系促進剤単独使用では達成できない、強度と伸びが大きく、ゴム弾性の良好な、白色、明色のスポンジが得られている。
【0003】
しかしながらこのスポンジは、銅、銀、クロムなどの重金属イオンと遭遇することによってスポンジが変色するという金属イオン汚染性が知られている。化粧用、洗浄用スポンジの用途では洗浄時に使用する水に微量含まれる金属イオン、特に給湯設備より溶出した銅イオンや、抗菌処理された用具からの銅および銀イオンに汚染され褐色に変色する。これにより汚れが付着したかのような外観となり、汚れが未だ落ちていないかの錯覚をしたり、真の汚れと見誤ったりする。また、砲金、黄銅、燐青銅などの銅合金との直接接触にても変色が起こる。これは、製造工程上にもこれら金属と接しないように注意しなければならない。この金属イオン汚染性は、主に、加硫促進剤として配合されるEZなどのジチオカルバメート化合物が重金属と反応し暗褐色の重金属塩となる為である。
【0004】
一方、キサントゲン化合物は、キサントゲン酸の亜鉛塩に加硫促進作用があることが知られており、各種キサントゲン酸の亜鉛塩がこの目的にされている。しかし、ゴムスポンジ用途にはこの化合物は特有の不快な臭気があり、ほとんど使われてはいない。また、この化合物は重金属と不溶性の塩を形成し特有の色を発するため、これを使用したゴムスポンジには金属イオン汚染性がある。
【0005】
これに対して、▲1▼特開昭63−234041号公報記載の発明では、加硫促進剤にジチオカルバメート系促進剤を使用しないでチアゾール系促進剤を使用し、高温長時間加硫をすることで汚染性の少ないスポンジを得たとしている。これは、金属イオン汚染は、スポンジに配合されるジチオカルバメート系促進剤が原因となっているからであるとしている。またこれとは別に、▲2▼特開昭61−48308号公報記載の発明では、化粧用パフを酸化漂白剤に浸漬処理して防汚加工を施すことが提案されている。この防汚加工はジチオカルバメート系促進剤などの硫黄化合物を酸化分解しようというものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記▲1▼の方法によれば、確かに、促進剤にジチオカルバメート系促進剤を配合したときより格段に金属イオン汚染性は改善されるが、高温長時間加硫のためスポンジが暗黄色を帯びたくすんだ色となり、白色のスポンジが製造できない、自由な着色ができないといった問題がある。また、物性面でもEZを使用したスポンジに及ばなく、強度や弾性が十分でない。また、この加硫には高圧蒸気缶等の高温加硫用の設備が必要になり、製造面での不利もある。また上記▲2▼の方法によれば、汚染性では十分ではあるが、硫黄化合物と供にスポンジに配合される各種の配合物も酸化分解してしまう問題がある。この配合物としては、腐敗防止やかび防止の為に配合される抗菌剤があげられ、防汚加工後にその効果が全く無くなってしまうという問題がある。この為、予め配合量を大過剰とし有効な量が残留するようにする、あるいは防汚加工後にその抗菌剤を含浸させる、等の手段を取っており、材料の無駄と工程の繁雑さを生じている。
【0007】
この発明は上記事情に鑑みなされたもので、金属イオン汚染性が低減された、白色、明色が可能で、物性の良好なゴムスポンジを提供するものであり、特殊な製造設備を不要とし、従来からの製造設備にて製造可能とするものである。またさらに、配合した抗菌剤が残留するゴムスポンジを提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、この発明のゴムスポンジは、加硫促進剤としてチアゾール系促進剤と共にキサントゲンスルフィド化合物を配合したことを特徴とする。また、これに加えて、配合時に抗菌剤を配合する場合もある。
【0009】
【発明の実施の形態例】
以下、この発明を詳細に説明する。
この発明に使用される原料ゴムとしては、天然ゴム、合成ゴムが挙げられる。原料ゴムはラテックス又は固形ゴムである。
原料がラテックスの場合、原料ラテックスは、架橋剤、加硫促進剤、酸化亜鉛、起泡剤、ゲル化剤等を配合し、機械撹拌により気体混合にて発泡しゲル化後加硫し、ゴム弾性のあるスポンジとなる。
架橋剤としては、沈降硫黄などの硫黄系架橋剤を使用し、硫黄換算で、ゴム固形分100重量部に対して、1重量部から5重量部使用する。
加硫促進剤としては、チアゾール系促進剤とキサントゲンスルフィド化合物を組み合わせて使用する。チアゾール系促進剤とキサントゲンスルフィド化合物とを組み合わせて使用することで加硫が促進され、この発明の目的とする金属イオン汚染性の良好で、白色、明色のゴム弾性のあるスポンジが得られる。
【0010】
チアゾール系促進剤としては、MZ(2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩)、DM(ジベンゾチアジルジスルフィド)、2−メルカプトベンゾチアゾールのナトリウム塩などが挙げられる。
キサントゲンスルフィド化合物としては、エチルまたプロピルまたはブチルキサントゲンスルフィド、エチルまたはプロピルまたはブチルキサントゲンジスルフィドなどが挙げられる。これらの化合物は公知の方法によって得られ、例えば、対応するアルキル基を持つアルコールに水酸化アルカリを溶かし、二硫化炭素を加えてキサントゲン酸アルカリとした後、これを酸性酸化して得られる。
【0011】
これらの促進剤は、ゴム固形分100重量部に対して、約0.5重量部から約7重量部使用する。これより少なければ、加硫が進まず十分なゴム弾性を持つスポンジが得られない。また、これより多くても加硫が急速に進行し安定した製造ができない。チアゾール系促進剤とキサントゲンスルフィド化合物との割合は、チアゾール系促進剤:キサントゲンスルフィド化合物比で、0.3:9.7から9:1の範囲で組み合わせるのが好ましい。この範囲内では、加硫物の物性がよく、高強度と伸び率が大きい良好なゴム弾性が得られる。チアゾール系の比が0.3より小さいとき(キサントゲンスルフィド類化合物が多量の場合)は、金属イオン汚染性が見られ、加硫物の物性が貧弱となり、十分なゴム弾性が得られない。また、この比が9より大きいとき(チアゾール系促進剤が多量の場合)は、加硫物の物性が貧弱となり、十分なゴム弾性が得られなく、スポンジが暗黄色を帯び、白色、明色のスポンジができない。
【0012】
加硫促進剤は、チアゾール系促進剤とキサントゲンスルフィド化合物を組み合わせてさらに、ヘキサメチレンテトラミンやN,N’−ジエチルチオ尿素などのチオウレア系促進剤と組み合わせることもできる。また、金属イオン汚染性を損なわない範囲で、他の促進剤や金属石ケンと組み合わせることもできる。
チアゾール系加硫剤とキサントゲンスルフィド化合物が組み合わされた時にこのような優れた効果を生じる理由は明らかではないが、発明者は、キサントゲンスルフィド化合物が多量の場合、チアゾール化合物がキサントゲンスルフィド化合物を活性化し架橋反応を進行させつつ、キサントゲンスルフィド化合物自身は分解していくと考えている。また、チアゾール系加硫剤が多量の場合、キサントゲンスルフィド化合物の分解中間体としてキサントゲン酸塩が生じ、これがチアゾール化合物を活性化すると考えている。この2つの機構で、広い範囲で相乗効果となっていると考えている。
【0013】
起泡剤としては、オレイン酸カリウムなどの界面活性剤が使用できる。ゲル化剤としては、ケイフッ化ナトリウムが挙げられ、これは化学的にゲル化させるものである。他に、熱的にゲル化させる方法でゲル化させることもできる。また、トリメンベース(ユニロイヤル社製、商品名)等のゲル化調整剤を併用することができる。発泡後ゲル化することで、ラテックス配合物は発泡した状態を保ったまま凝固する。
加硫としては蒸気加硫、熱空気加硫等が挙げられる。加硫温度は80°Cから140°Cで行われる。このうち、加硫温度110°C以下で蒸気加硫を行なうのは白色スポンジが得られる点で好ましい。さらに、加硫温度を100°C以下とすることは、白色スポンジを得ると云う点に加え、加圧蒸気缶を必要としない点でより好ましい。加硫時間は加硫温度や成形物の大きさによって調整するが、10cmφの柱状の場合、100°Cにて60分間が標準である。
【0014】
固形ゴム原料の場合、架橋剤、加硫促進剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、発泡剤、発泡助剤を配合し、モールド中で加硫発泡させたり、押出し成形後、加硫発泡させ、ゴム弾性のあるスポンジとなる。
架橋剤、加硫促進剤は、前述のものを使用する。発泡剤は、OBSH(P,P’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド))などのヒドラジン系、DPT(ジニトロソベンタメチレンテトラミン)などニトロソ系、ADCA(アゾジカルボンアミド)などのアゾ系などが使用できる。発泡助剤は、尿素化合物などを使用することができる。
加硫としては、モールド中で行うことも、気体中で行うこともでき、熱板、熱空気、蒸気、高周波などの加硫が行われる。
【0015】
このように製造したスポンジは、金属イオン汚染性が極わずかで、ゴム弾性があり、強度、伸びともに大きく、白色度が高い。
【0016】
この発明のスポンジは、前述の配合剤に加えて抗菌剤を配合することができる。抗菌剤は各種の中から適宜選択できるが、効果の持続性と人体に体する安全性の面からZPT(ビス(2−ピリジルチオ−1−オキシド)亜鉛)、TBZ(2−(4−チアゾリル)−ベンズイミダゾール)、プレベントール(バイエル社製商品名)、バイナジン(Ventron社製商品名)などの亜鉛系、有機系、有機塩素系、有機砒素系の抗菌剤が好ましく、1種或いは2種以上を混合して配合できる。配合量は、ゴム原料100重量部当たり約0.1重量部から約3.0重量部配合することが好ましく、これより少ないと抗菌効果が無く、これより多いとスポンジの気泡が粗くなる。
【0017】
また、この発明のスポンジは、必要に応じて、老化防止剤、金属不活性剤、紫外線吸収剤、滑剤、可塑剤、充填剤、着色剤、難燃剤、付香剤を配合することができる。金属イオン汚染性を低減するための前述の防汚加工を行う必要がないため、これらの添加物が防汚加工工程で消失することはない。
また、この発明によれば、ニトロソアミンの成生物質を低減したゴム製品にも適用できる。
【0018】
【実施例】
実施例1
固形分濃度60%のハイアンモニア天然ゴムラテックスのアンモニアの一部を気散除去し、アンモニア濃度を0.2%とした。このラテックスの樹脂固形分100重量部当たりに次の配合を行った。
硫黄 2.0、MZ 1.5、イソプロピルキサントゲンジスルフィド 1.0、酸化亜鉛 3.0、オレイン酸カリ 2.0、トリメンベース 1.0、ケイフッ化ナトリウム 1.5、老化防止剤 1.0、防菌剤 0.5(いずれも不揮発分重量部)
MZ:2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩
トリメンベース:エチルクロライド、ホルムアルデヒドおよびアンモニアの反応生成物(ユニロイヤル社製、商品名)
老化防止剤:2,6−ジーtert−ブチル−4−メチルフェノール
防菌剤:ビス(2−ピリジルチオ−1−オキシド)亜鉛
配合物を調理用ハンドミキサにて空気混合し、発泡した。発泡した混合物を直径8cmの円柱状容器に入れゲル化後、100°Cで60分間蒸気加硫を行った。容器より取り出し、水洗、脱水をし、8mm厚となるよう断裁し乾燥をおこない、ゴム弾性を示すラテックススポンジを得た。発泡倍率は約8倍であった。なお、チアゾール化合物(MZ)とキサントゲンスルフィド化合物(イソプロピルキサントゲンジスルフィド)の比は、6:4であり、加硫促進剤としては総量2.5重量部である。
【0019】
実施例2、3
実施例1のMZとイソプロピルキサントゲンジスルフィドとの比を、実施例2では9:1、実施例3では0.3:9.7とし、2つの総量としては実施例1と同様の2.5重量部とし、実施例1と同様にスポンジを作成した。
【0020】
比較例1、2
実施例1と同様にしたが、促進剤として、MZのみを2.5重量部として作成したが、満足な加硫がされず、圧縮するとそのまま変形する状態であった。そこで、オートクレーブを使い、加硫条件を120°Cにて60分とし、これを比較例1とした。また実施例1と同様にしたが、促進剤として、イソプロピルキサントゲンジスルフィドのみを2.5重量部としたものを比較例2とした。
比較例3
実施例1と同様にしたが、イソプロピルキサントゲンジスルフィドに替えてジチオカルバメート系促進剤のEZ(ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛)とした。
【0021】
実施例1から3、及び比較例1から3のスポンジを、金属イオン汚染性、ゴム弾性、白色度について以下の方法で評価し、結果を表にまとめた。
金属イオン汚染性
銅イオン濃度50ppmの硫酸銅水溶液を含浸し、スポンジの着色を見た。含浸前との色差値dE*10未満を良、10以上30未満をやや良、30以上を不良とした。
ゴム弾性
スポンジに1cm2あたり10kgの荷重で圧縮し、荷重を取り去ったときすぐにほぼ原形まで復元するものをゴム弾性良とした。復元しないものは不良とした。引張強さ
JIS K 6251による。
白さ
ASTM E 313 による白色度で、25以上を良とし、25未満は色名を記した。
【0022】
Figure 0004191307
この結果、チアゾール系促進剤単独でも、キサントゲンスルフィド化合物単独でもこの発明の目的とする白色度があり、ゴム弾性が良好で強度のある金属イオン汚染性の良好なゴムスポンジが得られず、両者を組み合わせて使用することで上記目的が達成されることが判った。また、出来上がったスポンジには、キサントゲン酸塩を使用したときのような不快な臭気はなかった。
【0023】
また、実施例1、比較例3の抗菌剤の含有量を調べところ、実施例1、比較例3ではそれぞれ抗菌剤が0.37%含有されており、添加量に対して約70%残留している。しかし、比較例3を、過炭酸ナトリウムの10%溶液に浸漬する防汚加工を行なったところ、金属イオン汚染性は前述の試験法にて、11となりほぼ良好となったが、抗菌剤は流失し、0.06%しか含有されず、抗菌性は期待できなかった。
【0024】
実施例4
合成NBR N230SL(日本合成ゴム株式会社製)100重量部当たりに次の配合を行なった。
硫黄 2.0、MZ 1.5、イソプロピルキサントゲンジスルフィド 1.0、酸化亜鉛 3.0、ステアリン酸 2.0、発泡剤 10.0、発泡助剤 5.0、老化防止剤 1.0、抗菌剤 0.5(いずれも重量部)
発泡剤:DTP(ジニトロソペンタメチレンテトラミン)
発泡助剤:尿素
老化防止剤:2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール
抗菌剤:ビス(2−ピリジルチオ−1−オキシド)亜鉛
配合物は5mm厚のシートとし、150°Cのオーブン中で20分間発泡加硫を行なった。シートは厚みが約2倍に膨脹し、ゴム弾性を得た。切断すると独立気泡型のスポンジとなっていた。また表面のスキン層を切り取り、前述の金属イオン汚染性を調べると、色差が8.5と良好であった。また白色度は30と良好であった。引張強さは2.5〔Kgf/cm2〕であった。抗菌剤は0.4%含有されていた。固形ゴムの成形にもこの発明が適用でき、上記ラテックスの場合と同様の効果があることがわかる。
【0025】
【発明の効果】
この発明によれば、金属イオン汚染性が低減され、白色や明色が可能で、物性の良好なゴムスポンジを提供することができる。さらに、添加した抗菌剤が有効に残留するスポンジを提供することができる。

Claims (2)

  1. 硫黄架橋がされているゴムスポンジにおいて、加硫促進剤にチアゾール系促進剤及びキサントゲンスルフィド化合物を配合したことを特徴とする、ゴムスポンジ。
  2. 抗菌剤を配合したことを特徴とする、請求項1記載のゴムスポンジ
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