JP4191291B2 - レーザ波長調整機構 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はレーザ波長調整機構、特にレーザ発振管の端部に設けられたミラー位置を微調整する機構に関する。
【0002】
【従来の技術】
He−Neレーザ等のガスレーザの波長を安定化させる場合、レーザ発振管に外部ミラーを用いる場合と内部ミラーを用いる場合がある。前者の場合、ミラー位置をPZTなどの発電素子で制御するが、外部鏡のため光軸調整が難しく発振が不安定になりやすい問題がある。一方、後者の場合には、共振器長をヒータやファン、駆動電流等で制御するが、変調をかけようとしても速い応答速度が得られない問題がある。レーザ波長安定化方法としては、一般に2モード法ゼーマン法、ラムディップ法、分子飽和吸収法等があるが、ラムディップ法や分子飽和吸収法を用いる場合には変調をかけて1次微分、3次微分成分を得る必要がある。したがって、応答性の観点からは外部ミラーを用いるのが望ましいが、波長帯によっては、発振効率が悪く外部ミラーが使用できずに内部ミラーを使用せざるを得ない場合もあり、応答速度を向上させることが課題となる。
【0003】
たとえば、実開昭59−39959号公報には、光共振器の一方の端部に内部鏡としての調整ミラーが配置され、調整ミラーの背面にはそれぞれ薄板であって直径の異なる円環状をなす外側圧電素子と内側圧電素子が同心円上に設けられる構成が開示されている。外側及び内側の圧電素子には、それぞれ逆位相の電圧が印加される。そして、外側圧電素子が伸長し、内側圧電素子が収縮した場合には、調整ミラーの肉薄部分がこの伸長及び収縮により弾性変形し、調整ミラーの反射面位置が変化することで光共振器の光路長(共振管の他方に設けられたミラーと調整ミラー間の距離)を調整することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、所望の共振光路波長で安定な共振状態を得るためには、共振光路上のミラーの光軸調整とミラー間の間隔(共振光路長)の調整がともに必要であり、上記従来技術では調整ミラーの肉薄部分の弾性変形により反射面位置を変化させているため共振光路長の調整の際に調整ミラーの反射面が光路に対しわずかに傾き、発振が停止することもあり得る。すなわち、上記従来技術では、ミラーの光軸調整と共振光路長調整が独立に行われないため、一方の調整が他方に影響を与え、両者を最適化することが困難で調整に時間を要する問題があった。
【0005】
また、調整ミラーに円環状圧電素子を取り付けると調整ミラーにレーザ発振管の管軸方向(スラスト方向)以外の力が印加され、レーザ発振管と調整ミラーの溶着結合に歪みが生じ、破損しやすく外気が流入して使用不可能となりやすく、さらに調整ミラーに圧電素子を取り付けることで調整ミラーに鉛直下方の荷重がかかり共振光路のずれや発振の不安定、発振の停止が生じやすい問題もあった。
【0006】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みなされたものであり、その目的は、ミラー光軸の調整と光路長の調整と独立に行うことができ、高速かつ高精度の波長安定化を実現できるレーザ波長調整機構を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、レーザ波長調整機構であって、レーザ発振管の端部にスリーブとして設けられるミラー支持体と、前記ミラー支持体の端部に前記ミラー支持体を封止するように固定される反射ミラーと、前記ミラー支持体に設けられる第1、第2及び第3フランジと、前記第1フランジと前記第2フランジ間に設けられる弾性変形自在な第1溝と、前記第2フランジと前記第3フランジ間に設けられる弾性変形自在な第2溝と、前記第2フランジに設けられ、前記第1溝を弾性変形させることで前記反射ミラーの光軸を調整する光軸調整手段と、前記第3フランジに設けられ、前記第2溝を弾性変形させることで前記反射ミラーの管軸方向位置を調整する光路長調整手段とを有し、前記ミラー支持体、第1、第2及び第3フランジは一体として前記レーザ発振管の端部に設けられることを特徴とする。
【0008】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記光路長調整手段は、前記レーザ発振管の管軸に沿って伸縮する圧電素子であることを特徴とする。
【0009】
また、第3の発明は、第1の発明において、前記光軸調整手段は、前記レーザ発振管の管軸に沿って設けられたネジであることを特徴とする。
【0010】
また、第4の発明は、第2の発明において、さらに、前記圧電素子に管軸に沿って負荷を印加する印加手段を有することを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
【0012】
<第1実施形態>
図1には、本実施形態の構成図が示されている。図1(A)は縦断面図、図1(B)は背面図である。ガスレーザ発振管1の端部にはスリーブとしての円筒状ミラー支持体4が設けられ、このミラー支持体4の端部に反射内部ミラー3がミラー支持体4を封止するように固定される。ミラー支持体4は、例えばコバールで構成することができる。ガスレーザ発振管1の図示しない他方の端部(図中左方)に固定ミラーが設けられ、ガスレーザ発振管1内で発振されたレーザ光は固定ミラーと反射内部ミラー3との間で反射を繰り返しつつ発振し、その一部が固定ミラーを通過して外部に放射される。固定ミラーと反射内部ミラー3との間の距離が共振光路2の光路長であり、反射内部ミラー3を管軸方向(図中矢印方向)に沿って移動させることで、この共振光路長を調整することができる。
【0013】
また、ミラー支持体4にはガスレーザ発振管1と反射内部ミラー3との間に第1フランジ5、第2フランジ6及び第3フランジ7が順次設けられている。第1フランジ5及び第2フランジ6は管軸方向に対してほぼ垂直、かつほぼ同量に突き出している。一方、第3フランジ7は第1フランジ5あるいは第2フランジ6よりもその突出量が少なく、図1(B)の背面図に示されるように、第3フランジ7は第1フランジ5及び第2フランジ6と異なりナット構造を有している。ミラー支持体4の第3フランジ7が形成されている部位にはネジ部が形成されており、ナット構造の第3フランジ7を回転させることで第3フランジ7はレーザ発振管1の方向に移動する。
【0014】
また、第1フランジ5と第2フランジ6の間のミラー支持体4には光軸調整用の溝(第1溝あるいは肉薄部)8が形成され、第2フランジ6にはガスレーザ発振管1の管軸に沿って光軸調整用ネジ10が設けられている。この光軸調整用ネジ10の先端は第1フランジ5に突接し、図1(B)の背面図に示されるように、第2フランジ6の3回対称位置(それぞれ120度をなす位置)に3箇所設けられている。
【0015】
また、第2フランジ6とナット構造の第3フランジ7の間にはPZTなどの円筒状圧電素子11がガスレーザ発振管1の管軸に沿って設けられている(すなわち、ミラー支持体4の外周を被覆するように設けられる)。圧電素子11の両端はそれぞれ第2フランジ6及び第3フランジ7に接着しており、ナット構造の第3フランジ7を締めつけることにより管軸方向に沿った力が印加され、圧電素子11の全周がほぼ同一の力で管軸方向に沿ってプリロードされる。
【0016】
さらに、第2フランジ6と第3フランジ7の間のミラー支持体4には共振光路長制御用の溝(第2溝あるいは肉薄部)9が設けられる。なお、光軸調整用溝8及び共振光路長制御用溝9の深さは任意である。
【0017】
このような構成において、反射内部ミラー3の調整を行う際には、まず、上述したようにナット構造の第3フランジ7を締め付けて圧電素子11をプリロードする。このプリロードは、圧電素子11に電圧を印加した場合に、圧電素子11の伸縮が第2フランジ6及び第3フランジ7を介してミラー支持体4に与える力(この力は具体的には共振光路長制御用溝9の弾性変形を引き起こす)を均一化するためである。プリロードを行った結果、反射内部ミラー3の反射面が光軸からずれる可能性があるため、次に第2フランジ6に設けられた3つの光軸調整用ネジ10のいずれか、あるいは全てを回転操作し、第1フランジ5と第2フランジ6との間に設けられた光軸調整用溝8に弾性変形を引き起こす。ミラー支持体4に生じたこの弾性変形は反射内部ミラー3に伝わり、反射内部ミラー3の反射面と光軸とのなす角度が変化して光軸調整が行われる。この光軸調整の結果、反射内部ミラー3が光軸に垂直に向くと、レーザ発振が行われる。
【0018】
光軸調整が終了した後、共振光路長を調整する場合には、第2フランジ6と第3フランジ7との間に設けられた圧電素子11に電圧を印加してガスレーザ発振管1の管軸方向に沿って圧電素子11を伸縮させる。すると、圧電素子11の伸縮により共振光路長制御用溝9が弾性変形し、この変形が反射内部ミラー3の変位を引き起こす。圧電素子11は管軸方向に沿って伸縮するため、反射内部ミラー3は管軸方向に沿ってのみ変位し、共振光路長が所望の値に調整される。
【0019】
このように、本実施形態においては光軸調整と共振光路長調整を独立に行うことができ、圧電素子11による共振光路長調整の際にスラスト方向(管軸方向)以外に力を生じさせないので、光軸調整及び共振光路長調整が高速化される。
【0020】
<第2実施形態>
図2には、本施形態の構成が示されている。図2(A)は縦断面図であり、図2(B)は背面図である。図1に示されたレーザ波長調整機構においては、第3フランジ7をナット構造とし、これを締めつけることで圧電素子11に管軸方向に沿ったプリロードを印加させたが、圧電素子11の機械的寸法が確保されていない場合には全周にわたって一様なプリロードを印加することができなくなるため、本実施形態においてはナット構造の第3フランジ7にさらにプリロード用のネジ13が設けられている。
【0021】
このプリロード用ネジ13は、図2(B)に示されるように、第2フランジ6に設けられた3回対称の光軸調整用ネジ10と同様に第3フランジ7の3回対称位置に3つ設けられており、これら3つのプリロード用ネジのいずれか、あるいは全てを締め付けることで圧電素子11の全周にわたって一様なプリロードを印加することができる。
【0022】
本実施形態における調整の手順も第1実施形態と同様であり、まず第3フランジ7をある程度締め付けた後、プリロード用ネジ13を締め付けて圧電素子11に管軸方向に沿った一様なプリロードを印加する。その後、光軸調整用ネジ10を操作して反射内部ミラー3の光軸を調整し、最後に圧電素子11に電圧を印加して共振光路長を調整すればよい。
【0023】
<第3実施形態>
図3には、本実施形態の構成図が示されている。図3(A)は縦断面図、図3(B)は背面図である。図1に示されたレーザ波長調整機構と異なる点は、PZTなどの圧電素子11を支持する円筒状のPZT支持カバー12が第2フランジ6にPZT支持カバー止めネジ12で設けられ、圧電素子11はこのPZT支持カバー12の内部に支持されている点、及び第3フランジ7がナット構造ではなく、第1フランジ5及び第2フランジ6と同様の突出部(突出量は第3フランジ7が少ない)である点である。PZT支持カバー12は図3(B)に示されるように6つのPZT支持カバー止めネジ120で第2フランジ6に取り付けられ、第3フランジ7、圧電素子11及び反射内部ミラー3を内包する。PZT支持カバー12の端面には、プリロード用ネジ13が3回対称位置に設けられており、圧電素子11の両端は、第3フランジ7とPZT支持カバー12に接着される。
【0024】
本実施形態においても、まずPZT支持カバー12に設けられたプリロード用ネジ13を締め付けることで圧電素子11を管軸方向に沿って一様にプリロードし、次に光軸調整用ネジ10を操作して反射内部ミラー3の光軸調整を行い、さらに圧電素子11に電圧を印加して共振光路長を調整することができる。
【0025】
また、本実施形態においては、圧電素子11は第2フランジ6と第3フランジ7との間に設けられのではなく、第3フランジ7とPZT支持カバー12との間に設けられるため、第2フランジ6と第3フランジ7との間隔を短くでき、したがってミラー支持体4の全長を短く設定してガスレーザ発振管1の共振器長を短くすることが可能である。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば光軸調整と共振光路長調整を独立に行うことができ、また共振光路長調整の際にスラスト方向の力が印加されないため、レーザ波長安定化を高速かつ高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態の構成図である。
【図2】 本発明の第2実施形態の構成図である。
【図3】 本発明の第3実施形態の構成図である。
【符号の説明】
1 ガスレーザ発振管、2 共振光路、3 反射内部ミラー、4 ミラー支持体(スリーブ)、5 第1フランジ、6 第2フランジ、7 第3フランジ、8光軸調整用溝、9 共振光路長制御用溝、10 光軸調整用ネジ、11 圧電素子、13 プリロード用ネジ。
Claims (4)
- レーザ波長調整機構であって、
レーザ発振管の端部にスリーブとして設けられるミラー支持体と、
前記ミラー支持体の端部に前記ミラー支持体を封止するように固定される反射ミラーと、
前記ミラー支持体に設けられる第1、第2及び第3フランジと、
前記第1フランジと前記第2フランジ間に設けられる弾性変形自在な第1溝と、
前記第2フランジと前記第3フランジ間に設けられる弾性変形自在な第2溝と、
前記第2フランジに設けられ、前記第1溝を弾性変形させることで前記反射ミラーの光軸を調整する光軸調整手段と、
前記第3フランジに設けられ、前記第2溝を弾性変形させることで前記反射ミラーの管軸方向位置を調整する光路長調整手段と、
を有し、前記ミラー支持体、第1、第2及び第3フランジは一体として前記レーザ発振管の端部に設けられることを特徴とするレーザ波長調整機構。 - 請求項1記載のレーザ波長調整機構において、
前記光路長調整手段は、前記レーザ発振管の管軸に沿って伸縮する圧電素子であることを特徴とするレーザ波長調整機構。 - 請求項1記載のレーザ波長調整機構において、
前記光軸調整手段は、前記レーザ発振管の管軸に沿って設けられたネジであることを特徴とするレーザ波長調整機構。 - 請求項2記載のレーザ波長調整機構において、さらに、
前記圧電素子に管軸に沿って負荷を印加する印加手段
を有することを特徴とするレーザ波長調整機構。
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