JP4188410B2 - 蓄電用炭素材料用原料炭 - Google Patents

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Description

本発明は蓄電用炭素材料用原料炭に関する。特に本発明は、電気二重層キャパシタ電極用の活性炭として残存アルカリ金属を除去し易い活性炭を与える原料炭に関する。
近年、炭素材料は、電分野に幅広く利用されている。このような蓄電用炭素材料としては、例えば、比較的表面積の大きな活性炭が電気二重層キャパシタの電極に用いられ、また、比較的表面積の小さなコークスは、リチウムイオン二次電池の負極として用いられている。なかでも、バックアップ電源、補助電源などとして電気二重層キャパシタが注目を集めており、活性炭の電気二重層キャパシタ用の電極としての性能に着目した開発が広くなされている。活性炭を分極性電極として使用した電気二重層キャパシタは静電容量に優れるため、エレクトロニクス分野の発展と共に、電気デバイス電極用途などの需要も急成長している。さらに、最近では、従来のメモリーバックアップ電源等の小型化に加え、モーター等の補助電源に使われるような大容量製品の開発なども行われている。
これら活性炭の製造方法としては、炭素質材料をガス賦活処理もしくは薬剤賦活処理、例えば賦活助剤としてアルカリ金属水酸化物を用いたアルカリ賦活処理を行い、その後に、賦活処理物からアルカリ金属や重金属を除去するために、塩酸、硝酸、硫酸等の強酸で中和洗浄することが一般的に行われている。
電気二重層キャパシタの高性能化が要求されるに伴い、電気二重層キャパシタ電極用の活性炭中の残留アルカリ金属を一層低減するニーズが生じてきている。しかし、特許文献1(特開2005−123462号公報)に記載されているように、水洗や酸洗の繰り返しによりある程度の濃度まではアルカリ金属を除去できても、それ以上の除去は困難である。そのため、アルカリ賦活後の炭素材を用いた電気二重層キャパシタは、初期のキャパシタ容量は優れているものの、長時間使用したときにキャパシタ容量の低下が大きいという経時劣化の問題がある。
一方、洗浄操作の観点から見ると、洗浄操作は出来るだけ簡単、すなわち、洗浄回数は出来る限り少ない方がコスト的にも望ましい。特許文献2(国際公開第2004−011371号パンフレット)においては、易黒鉛化炭素質材料をアルカリ賦活処理し、得られた賦活処理物を、熱水、炭酸水、熱塩酸、アンモニア水、熱塩酸および熱水の順で洗浄することにより活性炭を得ることが記載されているが、洗浄操作が煩雑であることから、残存アルカリ金属が除去され易い構造をもつ活性炭の開発が強く望まれていた。
特開2005−123462号公報 国際公開第2004−011371号パンフレット
本発明者らは、特定の構造を有する原料炭をアルカリ賦活して得られた活性炭は、洗浄時において、洗浄液の出入りが容易となり、その結果、活性炭中の残存アルカリ含有量を低減でき、また洗浄操作も簡略化できることを見出した。
なお、本発明において「原料炭」とは、重質油や残渣油等の原料油をコーキング処理して得られる、活性炭の原料となる炭化物をいう。
すなわち、本発明は、硫黄分2質量%以上の重質油を水素化脱硫して得られる初留点が200℃以上、飽和分が60質量%以上、硫黄分が0.5質量%以下およびアスファルテン分が5質量%以下である第1の重質油と、炭化水素油を流動接触分解して得られる初留点が150℃以上および硫黄分が0.5質量%以下である第2の重質油とを含有する原料油組成物を、300〜800kPa、400〜600℃でコーキング処理することにより得られ、不活性ガス雰囲気下、2800℃の温度で黒鉛化した場合の黒鉛化物の結晶子の大きさと格子定数の比が、002面で350以下、110面で1500以下となる構造を有することを特徴とする電気二重層キャパシタ用活性炭用原料炭に関する。
また、本発明は、Ni−Mo触媒および/またはCo−Mo触媒の存在下、反応温度300〜500℃、水素/油比400〜3000NL/L、全圧16MPa以上、水素分圧7〜20MPa、液空間速度(LHSV)0.1〜3h −1 の条件下に、硫黄分2質量%以上の重質油を水素化分解率が30%以下となるように水素化脱硫することを特徴とする前記記載の電気二重層キャパシタ用活性炭用原料炭に関する。
また、本発明は、硫黄分2質量%以上の重質油が、原油、原油の蒸留により得られる常圧蒸留残油、減圧蒸留残油、ビスブレーキング油、タールサンド油、シェールオイル、またはこれらの混合油から選ばれる重質油であることを特徴とする前記記載の電気二重層キャパシタ用活性炭用原料炭に関する。
また、本発明は、シリカ・アルミナ触媒、ゼオライト触媒、あるいはこれらの触媒に白金を担持した触媒の存在下、反応温度480〜550℃、全圧1〜3kg/cm G(98〜294kPaゲージ圧)、触媒/油比1〜20wt/wt、接触時間1〜10秒の条件下に、炭化水素油を流動接触分解することを特徴とする前記記載の電気二重層キャパシタ用活性炭用原料炭に関する。
また、本発明は、前記炭化水素油が、常圧蒸留残油、減圧蒸留残油、シェールオイル、タールサンドビチューメン、オリノコタール、石炭液化油、これらを水素化精製した重質油、直留軽油、減圧軽油、脱硫軽油、または脱硫減圧軽油であることを特徴とする前記記載の電気二重層キャパシタ用活性炭用原料炭に関する。
また、本発明は、原料油組成物における第1の重質油の含有割合が5質量%以上95質量%以下であることを特徴とする前記記載の電気二重層キャパシタ用活性炭用原料炭に関する。
また、本発明は、原料油組成物が、前記第1の重質油、前記第2の重質油および減圧蒸留残渣油を含有してなり、該減圧蒸留残渣油の含有割合が10〜70質量%であり、第1の重質油および第2の重質油の含有割合が各々10質量%以上であることを特徴とする前記記載の電気二重層キャパシタ用活性炭用原料炭に関する。
また、本発明は、硫黄分が0.3質量%以下および嵩比重が0.55以上であることを特徴とする前記記載の電気二重層キャパシタ用活性炭用原料炭に関する。
また、本発明は、前記の原料炭または該原料炭を常圧下、550〜900℃で熱処理して得られる原料炭熱処理物をアルカリ金属水酸化物で賦活して得られる活性炭に関する。
また、本発明は、前記の活性炭を電極材料に用いた電気二重層キャパシタに関する。
本発明の原料炭をアルカリ賦活して得られる活性炭は、洗浄液が出入りし易く、その結果、同じ洗浄操作でも残存アルカリ金属量が少なくなるため、それを電極材料に用いた電気二重層キャパシタのサイクル特性が向上する。また、洗浄操作が簡略化されるため、活性炭をより安価に製造でき、その工業的価値は極めて大きい。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の原料炭は、不活性ガス雰囲気下、2800℃の温度で黒鉛化した場合の黒鉛化物の結晶子の大きさと格子定数の比が、002面で350以下、110面で1500以下となる構造を与えるものである。002面における結晶子の大きさと格子定数の比が350を超えるものや、110面における結晶子の大きさと格子定数の比が1500を超えるものは、原料炭の結晶子に占めるエッジ面の割合が少なくなると考えられ、このため、賦活処理後の洗浄で洗浄液がエッジ面を通じての結晶子間への浸入が出来なくなり、洗浄効果が減少するため活性炭中の残存カリウム量が多くなり好ましくない。
ここで、微結晶炭素の層間距離d002(格子定数)及び微結晶炭素の結晶子の大きさLc002は、日本学術振興会第117委員会において制定された「人造黒鉛の格子定数および結晶子の大きさ測定法」に従いX線回折法により以下のようにして求める。
すなわち、試料粉末(原料炭を2800℃で黒鉛化処理したもの)を試料ホルダーに充填し、グラファイトモノクロメーターにより単色化したCuKα線を線源としX線回折図形を得る。この回折図形のピーク位置は重心法(回折線の重心位置を求め、これに対応する2θ値でピークの位置を求める方法)により求め、標準物質用高純度シリコン粉末の(111)面の回折ピークを用いて補正する。そして、CuKα線の波長を0.15418nmとし、下記式(1)で表されるBraggの公式により微結晶炭素の層間距離d002を計算する。
002=λ/(2sinθ) (1)
そして、試料中の黒鉛構造の形成の有無は、例えば、試料の粉末X線回折パターンにおいて2θが約25°付近に明白なピークを持つことにより確認することができる。すなわち、黒鉛はいわゆるベンゼン環状の平面網目構造を有する層を複数積層した構造を有しており、粉末X線回折による測定において、C002に基づく回折ピークが層間距離d002=0.335nmに鋭く尖鋭なピーク(2θが約25°付近)として観測される。また、回折線図形からその半価幅(β)を測定し結晶子の大きさを下記の式(2)で求める。
Lc002=91/β (2)
本発明の原料炭を2800℃で熱処理したものは、X線回折パターンを比較すると、きわめて黒鉛の構造に近いのが特徴である。
本発明においては、上記の条件を満足する原料炭が得られればその原料油および製造法は特に限定されないが、原料油としては、好ましくは石油精製過程で得られる水素化脱硫油、流動接触分解残油および減圧蒸留残渣油から選ばれる原料油の少なくとも2種以上をブレンドした原料油組成物が好ましい。
本発明における原料油組成物としては、特に、硫黄分2質量%以上の重質油を水素化脱硫して得られる特定性状を有する重質油(以下、第1の重質油という。)と炭化水素油の流動接触分解により得られる特定性状を有する重質油(以下、第2の重質油という。)の混合物からなるものが好ましい。
本発明に係る第1の重質油は、硫黄分2質量%以上の重質油を、全圧16MPa以上の条件下、水素化分解率が30%以下となるように水素化脱硫して得られる初留点200℃以上の重質油である。
第1の重質油の原料油として用いられる重質油の硫黄分は、前述の通り2質量%以上であり、好ましくは2.5質量%以上、より好ましくは3質量%以上である。上限は特に限定されないが5質量%以下が好ましく、より好ましくは4質量%以下である。
第1の重質油の原料油として用いられる重質油は、硫黄分が上記条件を満たすものであれば特に制限されず、例えば、原油、原油の蒸留により得られる常圧蒸留残油又は減圧蒸留残油、ビスブレーキング油、タールサンド油、シェールオイル、並びにこれらの混合油等が挙げられる。これらの中でも、常圧蒸留残留及び減圧蒸留残油が好ましく用いられる。
また、第1の重質油を得るための水素化脱硫は、全圧16MPa以上、好ましくは17MPa以上、より好ましくは18MPa以上の条件で行われる。全圧が16MPa未満の場合、水素化脱硫による重質油の分解が過剰に進行し、本発明の原料炭を得るための原料油組成物として好適な重質油を得ることができない。上限は特に限定されないが25MPa以下が好ましく、より好ましくは22MPa以下である。
また、水素化脱硫における全圧以外の条件は、水素化分解率が30%以下であれば特に制限されないが、各種条件を以下のように設定することが好ましい。すなわち、水素化脱硫の温度は、好ましくは300〜500℃、より好ましくは350〜450℃であり、水素/油比は、好ましくは400〜3000NL/L、より好ましくは500〜1800NL/Lであり、水素分圧は、好ましくは7〜20MPa、より好ましくは8〜17MPaであり、液空間速度(LHSV)は、好ましくは0.1〜3h−1、より好ましくは0.15〜1.0h−1、更に好ましくは0.15〜0.75h−1である。
また、水素化脱硫に用いられる触媒(水素化脱硫触媒)としては、Ni−Mo触媒、Co−Mo触媒、あるいは両者を組合せた触媒などが挙げられ、これらは市販品を用いても良い。
上記の水素化脱硫により得られる水素化脱硫油のうち、初留点が200℃以上、好ましくは250℃以上の重質油が第1の重質油として用いられる。初留点の上限は特に限定されないが450℃以下が好ましく、より好ましくは400℃以下である。
また、第1の重質油の硫黄分は、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.4質量%以下、さらに好ましくは0.35質量%以下、特に好ましくは0.3質量%以下、最も好ましくは0.25質量%以下である。第1の重質油の硫黄分が0.5質量%を超えると、早期コーキングを誘引する傾向にあり、その結果、得られる原料炭は結晶性の低い構造となり、該原料炭をアルカリ賦活して得られる活性炭中の残存アルカリ金属が多くなるため好ましくない。
また、第1の重質油のアスファルテン分は、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。第1の重質油のアスファルテン分が5質量%を超えると、早期コーキングが促進され、その結果、得られる原料炭は結晶性の低い構造となり、該原料炭をアルカリ賦活して得られる活性炭中の残存アルカリ金属が多くなるため好ましくない。
また、第1の重質油の飽和分は、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは65質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。一方、上限は好ましくは85質量%以下であり、より好ましくは80質量%以下である。第1の重質油の飽和分が60質量%未満であると、メソフェーズの配向性が悪くなり、原料炭は結晶性の低い構造となるため好ましくない。
また、第1の重質油の15℃における密度は、好ましくは0.85〜0.89g/cmである。
本発明に係る第2の重質油は、炭化水素油を流動接触分解して得られる初留点150℃以上、および硫黄分0.5質量%以下の重質油である。
ここで、「流動接触分解」とは、固体酸触媒などを用いて高沸点留分を分解する処理を意味する。かかる処理に用いられる流動接触分解装置はFCC(Fluidized Catalytic
Cracking)装置とも呼ばれる。
第2の重質油の原料油である炭化水素油としては、流動接触分解により初留点および硫黄分が上記条件を満たす重質油を得ることが可能なものであれば特に制限されないが、15℃における密度が0.8g/cm以上である炭化水素油が好ましい。
このような炭化水素油としては、直留軽油、減圧軽油、脱硫軽油、脱硫減圧軽油、常圧蒸留残油、減圧蒸留残油、シェールオイル、タールサンドビチューメン、オリノコタール、石炭液化油、これらを水素化精製したもの、及びこれらの混合物などが挙げられる。本発明においては、減圧軽油及び脱硫減圧軽油が特に好ましく用いられる。
また、流動接触分解の条件は、初留点及び硫黄分が上記条件を満たす重質油を得ることが可能であれば特に制限されないが、例えば、反応温度480〜550℃、全圧1〜3kg/cmG(98〜294kPaゲージ圧)、触媒/油比1〜20wt/wt、接触時間1〜10秒とすることが好ましい。
また、流動接触分解に用いられる触媒としては、例えば、シリカ・アルミナ触媒、ゼオライト触媒、あるいはこれらの触媒に白金などの金属を担持したものなどが挙げられる。これらの触媒は市販品を用いてもよい。
このようにして得られる第2の重質油の初留点は150℃以上であることが必要であり、好ましくは200℃以上であり、より好ましくは220℃以上である。なお、初留点が150℃未満であると原料炭の収率が低下し、また得られる原料炭は非晶質な構造となり、該原料炭をアルカリ賦活して得られる活性炭中の残存アルカリ金属量が多くなり好ましくない。初留点の上限は350℃以下であることが好ましく、より好ましくは300℃以下である。
また、第2の重質油の硫黄分は0.5質量%以下であることが必要であり、好ましくは0.4質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。硫黄分が0.5質量%を超えると、早期コーキングを誘引する傾向にあり、得られる原料炭は結晶性の悪いコークス構造となり、該原料炭をアルカリ賦活して得られる活性炭中の残存アルカリ金属量が多くなり好ましくない。
また、第2の重質油の窒素分は特に限定されないが、0.2質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.15質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下である。
本発明の原料油組成物は、好適には、前記した第1の重質油と第2の重質油を混合することにより得られる。また、本発明の原料油組成物は、前記した第1の重質油と第2の重質油の他に、さらに減圧蒸留残渣油を混合しても良い。
前記の減圧蒸留残渣油としては、石油類を減圧蒸留したときに残渣油として得られる初留点300℃以上、アスファルテン分12質量%以下、飽和分50質量%以上、硫黄分0.3質量%以下の重質油であることが好ましい。この石油類としては、例えば、原油、原油の蒸留により得られる減圧蒸留残油、およびこれらの混合油等が挙げられる。上記石油類を減圧蒸留するときの処理条件は、得られる減圧蒸留残渣油の沸点、アスファルテン分、飽和分および硫黄分がそれぞれ上記条件を満たす限りにおいて特に制限されないが、圧力は30kPa以下が好ましく、温度は400℃以上が好ましい。
第1の重質油と第2の重質油の混合割合としては、電気二重層キャパシタ用電極材料に用いる活性炭を製造する場合は、得られる原料油組成物における第1の重質油の含有割合が、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%、さらに好ましくは15質量%以上であり、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下となるように配合する。
また、第1の重質油と第2の重質油と減圧蒸留残渣油との組み合わせの場合は、減圧蒸留残渣油の含有割合が、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下となるようにブレンドする。このとき、第1の重質油および第2の重質油は、各々10質量%以上になるようにブレンドする。
次に、本発明の原料油組成物をコーキング(炭化)処理する。
原料油組成物をコーキングする方法としては、ディレードコーキング法、ビスブレーキング法、フレキシコーキング法、ユリカプロセス、H−Oilなどが挙げられるが、これらの中でも特にディレードコーキング法が好ましい。
ディレードコーキング法においては、原料油組成物をディレードコーカーに入れ、加圧下で熱処理する。ディレードコーカーの圧力は300〜800kPaが好ましい。温度は好ましくは400〜600℃、より好ましくは450〜550℃であり、時間は好ましくは24〜72時間、より好ましくは36〜60時間である。
かかるコーキング処理により、原料炭となる炭化物(生コークス)が得られる。
本発明の原料炭は、不活性ガス雰囲気下、2800℃の温度で黒鉛化した場合に黒鉛化物の結晶子の大きさと格子定数の比が、002面で350以下であり、110面で1500以下、より好ましくは1300以下となる構造を有する。
本発明の原料炭の硫黄分は通常0.3質量%以下であり、嵩比重は通常0.55以上である。
また、本発明の原料炭は、不活性ガス雰囲気下、2800℃の温度で黒鉛化した場合に黒鉛化物の真比重が2.23以上であることが好ましく、より好ましくは2.24以上である。真比重が2.23未満であると、結晶子の配列が乱雑に並んだ状態となり、エッジ面がお互いの結晶子面で閉ざされた状態となり好ましくない。
本発明においては、前記第1の重質油単独、もしくは第1の重質油と第2の重質油との混合油を500℃で熱処理したときに、原料炭中に存在する10μm以下のモザイク組織の割合は2%以下と小さいものであり、好ましくは1%以下である。ここで、原料炭中に10μm以下のモザイク組織の割合が小さいことは、メソフェーズと呼ばれる液晶の成長状態が良好であることを意味する。メソフェーズは、原料油の熱処理に伴い熱分解と重縮合が起こることによって生成する中間生成物であり、同一平面に沿って芳香族環の連なりが発達したものである。
なお、原料炭中のモザイク組織の測定方法については、「炭素化工学の基礎」真田雄三、大谷杉郎(オーム社)147頁に記載のとおりである。
従来、原料油中に飽和分、特に脂肪族分が多く含まれると、コーキング時に芳香族成分の重合及び重縮合以外に架橋反応が起こるため、三次元構造の結晶が成長してメソフェーズが十分に成長せず、結晶性の劣る構造となり、その結果、ニードルコークスの熱膨張係数が大きくなると考えられており、また、活性炭中の残存アルカリ金属量が多くなると考えられている。この点を鑑みれば、上記第1の重質油の飽和分が50質量%以上であっても10μm以下のモザイク組織が全く存在しないか、存在しても2%以下である原料炭が得られることは驚くべき結果である。
コーキング処理により得られた原料炭は、次いでアルカリ賦活処理することにより活性炭とすることができる。また、アルカリ賦活処理するにあたり、前記原料炭を不活性雰囲気下、常圧下、550〜900℃、好ましくは600〜850℃で一旦熱処理したのちアルカリ賦活処理することも好ましく採用される。
本発明においては、このようにして得られる活性炭を電気二重層キャパシタ用の電極材料として用いる。
上記原料炭または原料炭熱処理物の賦活方法としては、賦活炉を用いて、窒素ガスや不活性ガス雰囲気中で金属水酸化物と共に、原料炭または原料炭熱処理物を500〜1200℃で加熱する方法を挙げることができる。金属水酸化物としては、具体的には、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物や、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物を挙げることができる。また、これらを1種のみならず、2種以上を組み合わせて使用することもできる。これらのうち、特に水酸化カリウムが、微細孔を効率よく形成できる点で好ましい。
上記原料炭または原料炭熱処理物および金属水酸化物の使用量としては、原料炭または原料炭熱処理物/金属水酸化物の質量比で1/0.5〜1/10とすることができ、好ましくは1/1〜1/5である。
原料炭または原料炭熱処理物/金属水酸化物の質量比を1/0.5以下とすることにより、活性炭に微孔を十分に形成することができ、十分な表面積を有する活性炭を得ることができる。また、原料炭または原料炭熱処理物/金属水酸化物の質量比を1/10以上とすることにより、かさ密度が低下することなく、賦活反応を効率よく行うことができる。
また、賦活反応においては、原料炭または原料炭熱処理物および金属水酸化物の他に、水等が共存していてもよい。
上記原料炭または原料炭熱処理物の賦活において、賦活の温度としては、例えば500〜1200℃の範囲を挙げることができ、好ましくは600〜1000℃、より好ましくは600〜800℃の範囲を挙げることができる。賦活温度が上記範囲であれば、十分な微細孔を有する活性炭を効率よく得ることができる。賦活処理時間としては、温度等の条件との関連において適宜選択することができ、例えば3〜6時間を挙げることができる。
賦活を行う際の不活性ガスとしては、不活性ガスや窒素ガスを挙げることができ、例えば、賦活雰囲気の酸素濃度を100容量ppm以下に保持できるような供給することが好ましい。
賦活物の洗浄は、賦活物を洗浄液により洗浄して固液分離を行う洗浄であり、賦活物を洗浄液に浸漬し、必要に応じて攪拌、加熱などを行い洗浄液と混合した後、洗浄液を除去する方法を挙げることができる。洗浄液としては、水及び酸水溶液を用いることが好ましく、例えば、水による洗浄、酸水溶液による洗浄、更に水による洗浄など、適宜組み合わせて用いることができる。酸水溶液としては、塩酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸などのハロゲン化水素酸、硫酸、炭酸などの無機酸を好ましいものとして挙げることができる。酸水溶液の濃度は、例えば、0.01〜3Nを挙げることができる。これらの洗浄液による洗浄は必要に応じて、複数回反復して行うことができる。
上記洗浄液を用いた洗浄工程の最終の洗浄後、洗浄液から固液分離を行い、適宜加熱、風乾などを行い、水分を除去し乾燥した活性炭を得ることができる。
本発明の原料炭または原料炭熱処理物をアルカリ賦活して得られる活性炭は、従来の活性炭に比較して、同じ洗浄操作で洗浄した場合、残存アルカリ金属が少なくなる特徴を有する。残存アルカリ金属が低減する理由としては、本発明に係る原料炭および原料炭熱処理物は賦活剤の金属水酸化物が浸入し易く、また抜けやすい結晶構造になっており、さらに、得られた活性炭は洗浄液の浸入および脱出が容易になる結晶構造になっていることによると考えられる。
また、これに加え、本発明による活性炭を電気二重層キャパシタの電極に用いた場合、充放電時の電解質イオンの出入りも容易となり、サイクル特性試験での静電容量保持率が向上する特徴を有する。
本発明の電気二重層キャパシタは、本発明の原料炭または原料炭熱処理物から得られる活性炭を電極材料として用いたものである。
本発明の電気二重層キャパシタの電極としては、上記活性炭を含むものであれば、特に制限を受けるものではないが、結着剤、導電剤などを含有してもよく、集電体と一体化したものであってもよい。
結着剤としては、公知のものを使用することができ、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、フルオロオレフィン/ビニルエーテル共重合体架橋ポリマーなどのフッ素化ポリマー、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース類、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなどのビニル系ポリマー、ポリアクリル酸などを挙げることができる。結着剤の電極材料中の含有量としては、具体的には、0.1〜30質量%などとすることができる。
導電剤としては、具体的には、カーボンブラック、アセチレンブラック、粉末グラファイトなどの粉末を挙げることができる。導電剤の電極材料中の含有量としては、1〜50質量%の範囲が好ましく、より好ましくは2〜30質量%である。
これらの材料を用いて電極を作製するには、例えば、上記結着剤を溶解する溶媒に上記活性炭、結着剤、導電剤を添加しスラリー状としてシート状の集電体に塗布する方法、溶媒を使用せずに上記活性炭、結着剤、導電剤を混練し常温または加熱下で加圧成形する方法などを挙げることができる。
集電体としては、公知の材質、形状のものを使用することができ、具体的には、アルミニウム、チタン、タンタル、ニッケルなどの金属や、ステンレスなどの合金などを挙げることができる。
本発明の電気二重層キャパシタは、上記電極を正極及び負極として1対を、セパレーターを介して対向して設け、電解液中に浸漬した単位セルとして作製することができる。セパレーターとしては、ポリプロピレン繊維製、ガラス繊維製などの不職布や、セルロース紙などを用いることができる。
また、電解液としては、水系電解液、非水系電解液を使用することができるが、非水系電解液を用いることが好ましい。かかる非水系電解液としては、有機溶媒に電解質を溶解したものを挙げることができ、溶媒としては、具体的には、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、スルホラン、3−メチルスルホランなどスルホラン誘導体、1,2−ジメトキシエタンなどジメトキシエタン、アセトニトリル、グルタロノトリル、バレロニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、メチルフォルメート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどを挙げることができ、これらを1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また電解液の電解質としては、アルカリ金属塩、アルカリ土金属塩などの無機イオン塩、4級アンモニウム塩、環状4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩類などを挙げることができ、具体的には、(CNBF、(C(CH)NBF、(CPBF、(C(CH)PBFなどを挙げることができる。電解液中の電解質濃度は、0.1〜5mol/Lとすることができ、好ましくは0.5〜5mol/Lである。
本発明の電気二重層キャパシタの形状としては、例えば、セパレーターを介して厚さ50〜500μmのシート状、またはディスク状の1対の電極を金属製ケースに収納したコイン型、1対の電極をセパレーターを介して捲回した捲回型、セパレーターを介して設けた1対の電極を多層に設けた積層型などを挙げることができる。
本発明の電気二重層キャパシタにおいては、上記活性炭を電極材料に用いたため、サイクル特性を向上させ、優れた耐久性、および優れた容量保持率を示す。
なお、本発明において「硫黄分」とは、油の場合はJIS K2541に従い測定される値を、コークスの場合はJIS M 8813に従い測定される値を、それぞれ意味する。また、「窒素分」とは、油の場合はJIS K 2609に従い測定される値を、コークスの場合はJIS M 8813に従い測定される値を、それぞれ意味する。また、「飽和分」及び「アスファルテン分」は薄層クロマトグラフを用いて測定される値を意味する。
本発明の原料炭は、電気二重層キャパシタ電極用の活性炭製造用として好適に用いられる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
(1)原料油組成物の調製
中東系の硫黄分2.5質量%の常圧蒸留残油を、Ni−Mo触媒の存在下、水素化分解率が25%以下となるように水素化脱硫して脱硫重質油(以下、「水素化脱硫油A」という。)を得た。水素化脱硫条件は、全圧22MPa、水素分圧20MPa、温度380℃、水素/油比590NL/L、液空間速度(LHSV)0.17h−1とした。
また、減圧蒸留残油と脱硫減圧軽油を原料油として、シリカ・アルミナに白金(Pt)を担持した触媒を用い、反応温度を520℃、全圧0.2MPa、触媒/油比を7、接触時間を3秒として流動接触分解残油(以下、「流動接触分解残油A」という。)を得た。
ついで、水素化脱硫油Aと流動接触分解残油Aを質量比5:5で混合し原料油組成物Aを得た。
(2)原料炭の調製
次に原料油組成物Aを窒素下、400kPa下、500℃で40時間コーキング処理を行い、コークス(原料炭A)を得た。この原料炭Aを窒素下、2800℃で熱処理して黒鉛化物を得た。この黒鉛化物のX線回折測定結果(学振法117委員会)を表1に示す。
(3)原料炭の賦活
原料炭Aの1質量部と水酸化カリウム(KOH)2.5質量部とを混合し、ニッケル製反応容器に入れ、窒素下700℃で1時間加熱し、賦活処理を行った。
賦活処理後、反応容器内部の反応混合物を250℃まで冷却し、窒素に替えて二酸化炭素を流し、金属カリウムを失活させた。この後、反応物2kgに20kgの水を加え、室温で1時間攪拌の後、加圧ろ過した。この操作を2回行った。続いて、0.3N塩酸溶液を20kg加え、3時間攪拌し、加圧ろ過した。さらに20kgの水を加え、1時間攪拌の後、加圧ろ過した。この操作も2回行った。得られた固形物を130℃で乾燥して電気二重層キャパシタ電極用活性炭を得た。活性炭の比表面積、残存カリウム量および真比重を表2に示す。
(4)電気二重層キャパシタの作製
上記で得られた活性炭(0.8g)、ケッチェンブラック(0.1g)およびポリテトラフルオロエチレン(0.1g)を乳鉢にて混合した。この混合物を0.1mm厚のトリアセテートフィルム2枚の間に挟み、幅160mm、上下ロール間隔0.7mm、加圧力23.0MPaとしたニップロールの間に20回通して圧延した。圧延したシートから直径16mmの円形を2枚打ち抜き、炭素電極とした。炭素電極は真空乾燥機にて、2時間乾燥した。
電解液(プロピレンカーボネート1リットル中に(C)(CH)NBFを1モル溶解させたもの)を含浸させた2枚の電極間に厚さ50μmのセルロース製セパレータを挟み、直径20mmのSUS316製コインセルの中に封入した。この際、厚さ20μmアルミ箔表面に集電体用カーボン塗料を塗布したものを集電体として、炭素電極とセルとの間に、塗料側を炭素電極に面するように挟んだ。
このようにして作製した電気二重層キャパシタセルの静電容量およびサイクル特性(1000回充放電を繰り返した後の静電容量の保持率)を表2に示す。
<実施例2>
硫黄分3.0質量%の常圧蒸留残油を、加熱炉出口温度360℃、圧力1.3kPaの条件下で減圧蒸留し、初留点410℃、アスファルテン分8質量%、飽和分50質量%、硫黄分0.1質量%、窒素分0.3質量%の減圧蒸留残渣油Aを得た。
ついで、上記の減圧蒸留残渣油Aが30質量%になるように、実施例1の水素化脱硫油Aと流動接触分解残油Aの組成物を混合し、原料油組成物Bを得た。
次に原料油組成物Bを窒素下、400kPa下、500℃で40時間コーキング処理を行い、コークス(原料炭B)を得た。この原料炭Bを窒素下、2800℃で熱処理して黒鉛化物を得た。この黒鉛化物のX線回折測定結果(学振法117委員会)を表1に示す。
原料炭Aの替わりに原料炭Bを用いた以外は実施例1と同様の操作で、賦活反応およびキャパシタの作製を行った。活性炭の比表面積、残存カリウム量および真比重、並びにキャパシタセルの静電容量およびサイクル特性(1000回充放電を繰り返した後の静電容量の保持率)を表2に示す。
<比較例1>
実施例1で用いた流動接触分解残油Aを窒素下、400kPa下、500℃で40時間コーキング処理を行い、コークスを得た。ついで、このコークスを窒素下、2800℃で熱処理した。この熱処理物のX線回折測定結果(学振法117委員会)を表1に示す。また該コークスを実施例1の条件でアルカリ賦活して得られた活性炭の比表面積、残存カリウム量および真比重、並びにキャパシタセルの静電容量およびサイクル特性(1000回充放電を繰り返した後の静電容量の保持率)を表2に示す。
<比較例2>
実施例2で用いた減圧蒸留残渣油Aを窒素下、400kPa下、500℃で40時間コーキング処理を行い、コークスを得た。ついで、このコークスを窒素下、2800℃で熱処理した。この熱処理物のX線回折測定結果(学振法117委員会)を表1に示す。また該コークスを実施例1の条件でアルカリ賦活して得られた活性炭の比表面積、残存カリウム量および真比重、並びにキャパシタセルの静電容量およびサイクル特性(1000回充放電を繰り返した後の静電容量の保持率)を表2に示す。
表1および表2より、2800℃熱処理物の002面および110面における結晶子の大きさと格子定数の比が002面で350以下、110面で1500以下である場合に、KOHにより賦活して得られた活性炭中に残存するカリウム量が少なく、また、そのような活性炭を用いて得られた電気二重層キャパシタのサイクル特性、すなわち1000回の充放電を繰り返した後の静電容量の保持率が高く、キャパシタ特性が優れていることが明らかである。
Figure 0004188410
Figure 0004188410
<実施例3>
(1)原料油組成物の調製
先ず、硫黄分3.5質量%の常圧蒸留残油を、Ni−Mo触媒の存在下、水素化分解率が30%以下となるように水素化脱硫し、脱硫重質油(以下、「水素化脱硫油B」という。)を得た。水素化脱硫条件は、全圧18.5MPa、水素分圧16.5MPa、温度370℃、水素/油比590NL/L、液空間速度(LHSV)0.17h−1とした。得られた水素化脱硫油Bの初留点は260℃であり、硫黄分は0.3質量%、窒素分は0.1質量%、アスファルテン分は2質量%、飽和分は70質量%であった。
この水素化脱硫油Bを試験管に入れ、常圧、500℃で3時間熱処理を行いコークス化した。生成したコークスを市販の樹脂に埋め込み偏光顕微鏡で観察したところ、10μm以下のモザイク組織は認められなかった。
また、脱硫減圧軽油(硫黄分500質量ppm、15℃における密度0.88g/cm)を流動接触分解し、流動接触分解残油(以下、「流動接触分解残油B」という。)を得た。得られた流動接触分解残油Bの初留点は210℃であり、硫黄分は0.1質量%、窒素分は0.1質量%、アスファルテン分は0質量%、飽和分は30質量%であった。
この流動接触分解残油Bを試験管に入れ、常圧、500℃で3時間熱処理を行いコークス化した。生成したコークスを市販の樹脂に埋め込み偏光顕微鏡で観察したところ、10μm以下のモザイク組織の存在は認められなかった。
(2)原料炭の調製
次に、水素化脱硫油Bと流動接触分解残油Bとを質量比2:8で混合し、原料油組成物Cを得た。この原料油組成物Cを、400kPa下、500℃で40時間熱処理を行いコークス化し、コークス(原料炭C)を得た。この原料炭Cを市販の樹脂に埋め込み偏光顕微鏡で観察したところ、10μm以下のモザイク組織は認められなかった。
(3)原料炭の賦活
原料炭Cの1質量部と、水酸化カリウム(KOH)2.5質量部とを混合し、ニッケル製反応容器に入れ、窒素下750℃で1時間加熱し、賦活処理を行った。
賦活処理後、反応容器内部の反応混合物を300℃まで冷却し、窒素に替えて二酸化炭素を流し、金属カリウムを失活させた。この後、反応物2kgに20kgの水を加え、室温で1時間攪拌の後、加圧ろ過した。この操作を2回行った。続いて、0.3N塩酸を20kg加え、3時間攪拌し、加圧ろ過した。さらに20kgの水を加え、1時間攪拌の後、加圧ろ過した。この操作も2回行った。得られた固形物を130℃で乾燥して電気二重層キャパシタ用活性炭を得た。活性炭の比表面積および残存カリウム量を表3に示す。
(4)電気二重層キャパシタの作製
上記で得られた活性炭を用いた以外は実施例1と同様の操作で電気二重層キャパシタを作成した。このようにして作製した電気二重層キャパシタセルの静電容量、およびサイクル特性(1000回充放電を繰り返した後の静電容量の保持率)を表3に示す。
<実施例4>
上記水素化脱硫油Bと流動接触分解残油Bとを質量比8:2で混合し、原料油組成物Dを得た。この原料油組成物Dを400kPa下、500℃で40時間熱処理を行いコークス化し、コークス(原料炭D)を得た。原料炭Dの1質量部と、水酸化カリウム(KOH)2.5質量部とを混合し、ニッケル製反応容器に入れ、窒素下750℃で1時間加熱し、賦活処理を行った以外は、実施例3と同様の操作を行い、電気二重層キャパシタ用活性炭を得た。活性炭の比表面積および残存カリウム量を表3に示す。また、上記活性炭を用いて、実施例1と同様の操作で電気二重層キャパシタを作製した。電気二重層キャパシタセルの静電容量およびサイクル特性(1000回充放電を繰り返した後の静電容量の保持率)を表3に示す。
<比較例3>
実施例3で得られた流動接触分解残油Bのみを、400kPa下、500℃で40時間熱処理を行いコークス化し、しかる後、実施例3と同様の操作で、アルカリ賦活処理を行い、得られた活性炭を用いて電気二重層キャパシタを作製した。活性炭の比表面積および残存カリウム量、並びに、電気二重層キャパシタセルの静電容量およびサイクル特性(1000回充放電を繰り返した後の静電容量の保持率)を表3に示す。
<比較例4>
常圧蒸留残油(密度0.92g/cm、硫黄分0.35質量%)を、加熱炉出口温度350℃、圧力1.3kPaの条件下で減圧蒸留し、初留点410℃、アスファルテン分9質量%、飽和分61質量%、硫黄分0.1質量%の減圧蒸留残渣油(以下、「減圧蒸留残渣油B」という。)を得た。上記減圧蒸留残渣油Bを400kPa下、500℃で40時間熱処理を行いコークス化し、しかる後、実施例3と同様の操作で、アルカリ賦活処理を行い、得られた活性炭を用いて電気二重層キャパシタを作製した。活性炭の比表面積および残存カリウム量、並びに、電気二重層キャパシタセルの静電容量およびサイクル特性(1000回充放電を繰り返した後の静電容量の保持率)を表3に示す。
表3より明らかなように、水素化脱硫油と流動接触分解残油を混合して得られる本発明の原料油組成物を用いることにより、得られる活性炭中に残存するカリウム量を大幅に低減させることができ、その結果、それを用いた電気二重層キャパシタの静電容量保持率を向上させることができた。
Figure 0004188410

Claims (10)

  1. 硫黄分2質量%以上の重質油を水素化脱硫して得られる初留点が200℃以上、飽和分が60質量%以上、硫黄分が0.5質量%以下およびアスファルテン分が5質量%以下である第1の重質油と、炭化水素油を流動接触分解して得られる初留点が150℃以上および硫黄分が0.5質量%以下である第2の重質油とを含有する原料油組成物を、300〜800kPa、400〜600℃でコーキング処理することにより得られ、不活性ガス雰囲気下、2800℃の温度で黒鉛化した場合の黒鉛化物の結晶子の大きさと格子定数の比が、002面で350以下、110面で1500以下となる構造を有することを特徴とする電気二重層キャパシタ用活性炭用原料炭。
  2. Ni−Mo触媒および/またはCo−Mo触媒の存在下、反応温度300〜500℃、水素/油比400〜3000NL/L、全圧16MPa以上、水素分圧7〜20MPa、液空間速度(LHSV)0.1〜3h −1 の条件下に、硫黄分2質量%以上の重質油を水素化分解率が30%以下となるように水素化脱硫することを特徴とする請求項1に記載の電気二重層キャパシタ用活性炭用原料炭。
  3. 硫黄分2質量%以上の重質油が、原油、原油の蒸留により得られる常圧蒸留残油、減圧蒸留残油、ビスブレーキング油、タールサンド油、シェールオイル、またはこれらの混合油から選ばれる重質油であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気二重層キャパシタ用活性炭用原料炭。
  4. シリカ・アルミナ触媒、ゼオライト触媒、あるいはこれらの触媒に白金を担持した触媒の存在下、反応温度480〜550℃、全圧1〜3kg/cm G(98〜294kPaゲージ圧)、触媒/油比1〜20wt/wt、接触時間1〜10秒の条件下に、炭化水素油を流動接触分解することを特徴とする請求項1に記載の電気二重層キャパシタ用活性炭用原料炭。
  5. 前記炭化水素油が、常圧蒸留残油、減圧蒸留残油、シェールオイル、タールサンドビチューメン、オリノコタール、石炭液化油、これらを水素化精製した重質油、直留軽油、減圧軽油、脱硫軽油、または脱硫減圧軽油であることを特徴とする請求項1又は4に記載の電気二重層キャパシタ用活性炭用原料炭。
  6. 原料油組成物における第1の重質油の含有割合が5質量%以上95質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の電気二重層キャパシタ用活性炭用原料炭。
  7. 原料油組成物が、前記第1の重質油、前記第2の重質油および減圧蒸留残渣油を含有してなり、該減圧蒸留残渣油の含有割合が10〜70質量%であり、第1の重質油および第2の重質油の含有割合が各々10質量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の電気二重層キャパシタ用活性炭用原料炭。
  8. 硫黄分が0.3質量%以下および嵩比重が0.55以上であることを特徴とする請求項1に記載の電気二重層キャパシタ用活性炭用原料炭。
  9. 請求項1〜のいずれかに記載の原料炭または該原料炭を常圧下、550〜900℃で熱処理して得られる原料炭熱処理物をアルカリ金属水酸化物で賦活して得られる活性炭。
  10. 請求項9に記載の活性炭を電極材料に用いた電気二重層キャパシタ。
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