以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における車両周囲監視装置のブロック構成図を示したものである。
図1において、車両周囲監視装置100は、タイミング制御部101と、電波を送信する送信部102と、複数のビームをもつ送信アンテナ103と、受信アンテナ104と、アンテナのビーム方向を切り替えるビーム方向指定手段105と、反射信号を受信する受信部106と、処理部107を備えている。送信部102、ビーム方向指定手段105、受信部106、処理部107は、タイミング制御部101からのタイミング信号に基づいて制御される。送信アンテナ部103は、送信アンテナ素子111と、送信アンテナ素子111に給電する2つの給電部、第1の給電部112および第2の給電部113を備えている。同様に、受信アンテナ部104は、受信アンテナ素子121と、受信アンテナ素子121に給電する2つの給電部、第1の給電部122および第2の給電部123を備えている。
次に、図1を用いて、本実施の形態1の車両周囲監視装置100の動作について説明する。
タイミング制御部101からのタイミング信号に基づいて、ビーム方向指定手段105が、給電切替スイッチ110、120を制御し、第1の給電部112、122に給電する場合と、第2の給電部113、123に給電する場合を切り替えて、所定の方向にビームが形成されるようにする。なお、車両周囲監視装置100は、本発明の監視装置の一例であり、送信アンテナ103および受信アンテナ104は、それぞれ、本発明の送信アンテナ部および受信アンテナ部の一例である。また、ビーム方向指定手段105は、本発明のビーム切り替え手段の一例である。
同じくタイミング信号に基づいて、送信部102から伝達される信号が、送信アンテナ103から送出される。周囲に検出対象が存在する場合、送出された信号は、検出対象に当たって反射する。ここで、検出対象とは、本車両周囲監視装置100が搭載される車両の周囲に位置する車両、物体や人体を意味する。
このような検出対象からの反射信号は、受信アンテナ104から受信部106に伝達され、処理部107で処理されて、検出対象の有無、検出対象との距離、検出対象の速度の情報を得る。そして、これらの情報が、車両周囲監視装置100に接続された出力手段108によって、表示、音声出力等で出力される。
次に、本実施の形態1における車両周囲監視装置100の送信アンテナ103および受信アンテナ104の構成するアンテナについて説明する。
図2は、本発明の実施の形態1に係るアンテナ装置の構成を示す図である。以下、アンテナを例えばεr=2.26の誘電体基板上に作成した場合について、その動作周波数を25GHz、1波長(1実効波長)を8.6mmとして説明する。また、説明の都合上、図2に示すような座標軸を定義している。
図2(a)は、本発明の実施の形態1に係るアンテナ装置の構成を示す平面図である。この図において、線状素子201a〜201d、202a〜202d、203a〜203dは、素子長L1が約1/3波長(2.8mm)で、素子幅が例えば0.2mmの導体である。これらの線状素子201a〜201d、202a〜202d、203a〜203dは、図2(a)に示すように正方形形状に配置される。
線状連結素子204a〜204dは、素子長L2が約2/5波長(3.3mm)で、素子幅が例えば0.2mmの導体である。線状連結素子204aは、線状素子201aと線状素子202bの間に接続され、線状連結素子204bは、線状素子201bと線状素子203aの間に接続され、線状連結素子204cは、線状素子201cと線状素子202dの間に接続され、線状連結素子204dは、線状素子201dと線状素子203cの間に接続される。
線状迂回素子205a及び205bは、全長が約2/5波長(3.3mm)で、長さL3が約1/5波長(1.7mm)の折り返し形状の導体であり、素子幅が例えば0.2mmである。線状迂回素子205aは、線状素子202aと線状素子202cの間に接続され、線状迂回素子205bは、線状素子203bと線状素子203dの間に接続される。
給電部206aは、線状素子201aと201bの間に設けられ、給電部206bは、線状素子201cと201dの間に設けられる。なお、線状素子202aと202b、線状素子202cと202d、線状素子203aと203b、線状素子203cと203dは接続されている。
以上のように構成された、線状素子201a〜201d、202a〜202d、203a〜203dと、線状連結素子204a〜204dと、線状迂回素子205a及び205bと、給電部206a及び206bにより、ひし形アンテナ部を接続しアレー構成にした線状アンテナ素子が構成される。
給電部206aから線状アンテナ素子が励振される場合、給電部206bは短絡され、線状素子201cと201dは接続するように動作する。逆に、給電部206bから線状アンテナ素子が励振される場合、給電部206aは短絡され、線状素子201aと201bは接続するように動作する。このように給電部を切り替えて線状アンテナ素子を励振させることにより、1つの線状アンテナ素子で主ビームを2方向に切り替えることが可能となる。
図2(b)は、本発明の実施の形態1に係るアンテナ装置の構成を示す矢視図であり、図2(a)の+X側から見た図である。この図において、誘電体基板207は厚みtが約0.05波長(0.4mm)であり、線状アンテナ素子が配置された面(XY平面)に平行に−Z側に配置される。また、反射板208は、線状アンテナ素子が配置された面(XY平面)から距離hが約0.6波長(5mm)だけ−Z側に離れた位置に配置された導体板である。
次に、上述したアンテナ装置の動作について、図3を用いて説明する。図3は、給電部206aを励振、給電部206bを短絡とした場合における線状アンテナ素子上の電流分布を示す図であり、図3(a)は電流振幅特性、図3(b)は電流位相特性を示している。なお、図3の横軸に示されている記号(A)〜(F)は、図2に示されている記号(A)〜(F)の位置と対応している。
図3(a)において、電流振幅特性301aは、線状素子203a及び203b上の電流振幅を示しており、(E)点で電流振幅がピーク値を取ることが確認できる。以下同様に、特性301bは線状素子201a及び201b上の電流振幅、特性301cは線状素子202a及び202b上の電流振幅、特性301dは線状素子202c及び202d上の電流振幅、特性301eは線状素子201c及び201d上の電流振幅、特性301fは線状素子203c及び203d上の電流振幅を示しており、それぞれ(A)点、(C)点、(D)点、(B)点、(F)点でピーク値を取ることが確認できる。
また、図3(b)において、電流位相特性302はY方向成分の電流位相を示している。ここで、位相303a、303b、303c、303d、303e、303fは、それぞれ(E)点、(A)点、(C)点、(D)点、(B)点、(F)点における電流位相である。
図3(b)より、図2における−X側に配置された線状素子上のピーク点、すなわち(A)点、(C)点、(E)点における位相303a、303b、303cがほぼ一致しており、+X側に配置された線状素子上のピーク点、すなわち(B)点、(D)点、(F)点における位相303d、303e、303fがほぼ一致していることが確認できる。このとき、位相303a、303b、303cと、位相303d、303e、303fの間には、約140度の位相差が生じていることが確認できる。これにより、本発明の実施の形態1におけるアンテナ装置は、給電部206aにより励振された場合、+X側へチルトしたビームが得られ、ビームチルトアンテナとして動作することになる。なお、給電部206bにより励振される場合は、−X側へチルトしたビームが得られることになる。
図4は、本発明の実施の形態1に係る車両周囲監視装置のアンテナの指向性を示す図である。図4(a)は、垂直(XZ)面の指向性を、図4(b)は仰角θが70度における円錐面の指向性を示している。
図4(a)において、実線で示す指向性401aは、給電部206aから線状アンテナ素子を励振し、給電部206bを短絡したときの水平偏波(Eφ)成分の指向性を示しており、仰角θが70度の方向にチルトした主ビームを得られることが確認できる。また、点線で示す指向性401bは、給電部206bから線状アンテナ素子を励振し、給電部206aを短絡したときの水平偏波(Eφ)成分の指向性を示しており、仰角θが70度の方向にチルトした主ビームが得られることが確認できる。
図4(b)において、実線で示す指向性402aは、図4(a)の指向性401aと同様に、給電部206aから線状アンテナ素子を励振し、給電部206bを短絡したときの水平偏波(Eφ)成分の指向性を示しており、主ビームが+X方向に向いていることが確認できる。また、点線で示す指向性402bは、図4(a)の指向性401bと同様に、給電部206bから線状アンテナ素子を励振し、給電部206aを短絡したときの水平偏波(Eφ)成分の指向性を示しており、主ビームが−X方向に向いていることが確認できる。このとき、指向性402a及び402bのどちらも、主ビームの指向性利得は14dBi、円錐面の半値角は20度、F/B比(主ビームとバックローブの比)は11dBである。
ここで、図2に示す様な3つのひし形アンテナ部を接続したアレー構成に対する比較として、図27に示すような単一のひし形アンテナ素子を示す。同図に示すように、単一のひし形アンテナ素子は、2701a〜2701dの線状素子から構成され、線状迂回素子2702aが、線状素子2701aと線状素子2701cの間に接続され、線状迂回素子2702bが、線状素子2701bと線状素子2701dの間に接続され、給電部2703aが、線状素子2701aと2701bの間に設けられ、給電部2703bが、線状素子2701cと2701dの間に設けられた構成で、指向性利得が10.5dBi、円錐面の半値角が約60度である。両者を比較することで、本実施の形態1に示す監視装置のアンテナのように、ひし形アンテナ部を接続しアレー構成にすることにより、高利得化・狭指向性化を実現できることがわかる。
図5は、線状連結素子204a〜204dの長さを2.8mm〜3.7mmまで変化させたときの指向性利得とF/B比の関係を示す図である。この図より、指向性利得501の変化幅は小さいが、F/B比502の変化幅が大きいことが確認できる。これにより、指向性利得501が12.5dBi以上、F/B比502が8dB以上となる、線状連結素子204a〜204dの長さは、3.1mm(略0.36波長)〜3.4mm(略0.40波長)であることが確認できる。
このように本実施の形態によれば、ひし形アンテナ部を接続してアレー構成にし、線状アンテナ素子から所定の距離を隔てて反射板を配置することにより、路車間通信や車車間通信用アンテナに適した平面かつ小型な構成で、高利得化・狭指向性化を実現できる。また、2つの給電部を切り替えることにより、2方向に主ビームを切り替えることができるので、車両の走行状態に合わせてビームを切り替えることにより伝送品質を高めることができる。さらに、線状アンテナ素子の1点を給電することで動作可能なため、分配給電を用いた複雑なアレー構成と比較して、アンテナ装置の省スペース化を図ることができるだけでなく、給電ロスも減らすことができる。
図6は、本実施の形態1における車両周囲監視装置の配置とその監視領域の一例を示したものである。図6(a)は、車両周囲監視装置の配置を示す図であり、図6(b)は、その監視領域を上から示した図である。
図6(a)において、車両周囲監視装置600は、車両の前方の中央部付近、例えば電波を透過する樹脂製のバンパー内に、図2におけるZ軸は地面に対して垂直方向に、Y軸は車両前進方向になるように設置される。なお、車両周囲監視装置600は、図1に示した車両周囲監視装置100と同じものである。
また、アンテナのビームはできるだけ90度に近いチルトをさせる状態になるようにする。これにより、図6(b)に示すような監視領域601と監視領域602の2つの監視領域を、1つの車両周囲監視装置600で検知できる構成になる。これにより、見通しの悪い交差点やT字路などを走行する際に、車両左右方向の近距離領域を監視できる。
以上の構成によって、車両の交差点やT字路などへの進入を最小限に留め、接近車両や自転車、通行人の確認を補助することが1つの車両周囲監視装置で可能となる。
なお、上記では、車両周囲監視装置を図6に示す位置に設置することとしたが、必ずしも図1に示す車両周囲監視装置100の構成の全てを図6に示す位置に設置する必要はない。送信アンテナ部103および受信アンテナ部104のみが図6の位置に設置されていればよく、車両周囲監視装置100のその他の構成部分については車両の他の位置に設置されてもよい。
なお、本実施の形態1の図1に示す車両周囲監視装置100の構成においては、送信アンテナ部103も受信アンテナ部104と同様にビームを切り替える構成としたが、送信側は任意のアンテナ、たとえばパッチアンテナ等で構成してもよい。
図7は、送信側をパッチアンテナとした場合の車両周囲監視装置700の構成図を示している。図1に示す車両周囲監視装置100の送信アンテナ部103の部分が、送信アンテナ703となっている点のみが異なる。送信アンテナ703は、広い指向性を有するパッチアンテナである。なお、図1と同じ構成部分については、同じ符号を用いている。
また、図1に示す車両周囲監視装置100の構成においては、送信アンテナ部103と受信アンテナ部104を個別に備える構成としたが、アンテナ部を送受で共用し、信号の送受信を切り替える構成としてもよい。
図8は、送信アンテナ部と受信アンテナ部を共用した場合の車両周囲監視装置850の構成図を示している。図1に示す車両周囲監視装置100とは、送受切替スイッチ800を備え、送信アンテナ部と受信アンテナ部を共用とした点が異なる。なお、図1と同じ構成部分については、同じ符号を用いている。
図8に示す送受信アンテナ部804は、図1に示す受信アンテナ部104と同じ構成である。送受切替スイッチ800は、送受信アンテナ部804における電波の送受信のタイミングに応じて、給電切替スイッチ820との接続を切り替える制御を行う。
送受切替スイッチ800は、送受信アンテナ部804から電波を送出させる際には、送信部102が給電切替スイッチ820に接続されるように制御し、送受信アンテナ部804で電波を受信させる際には、受信部106が給電切替スイッチ820に接続されるように制御する。このようにして、送受信アンテナ部804を送受信で共用させることができる。なお、送受切替スイッチ800は、本発明の送受切り替え手段の一例である。
さらに、本実施の形態1において、車両周囲監視装置を車両前方に設置した前方監視装置で説明したが、車両後方に設置した後方監視装置としても良い。
なお、本実施の形態では、3素子の迂回素子装荷ループアンテナの迂回素子間を接続する場合について説明したが、前述した動作原理に基づく範囲であれば、素子数はいくつであってもよい。
なお、本実施の形態では、ひし形形状のアンテナ素子を接続した場合について説明したが、円形形状のアンテナ素子としても同様な効果を得ることができる。
さらに、本実施の形態では、給電部は、線状素子201aと201bの間と、線状素子201cと201dの間に設けられたが、線状素子202aと202bの間と、線状素子202cと202dの間に設けてもよい。その場合、線状素子201aと201b、線状素子201cと201d、線状素子203aと203b、線状素子203cと203dは接続されている。
あるいは、給電部は、線状素子203aと203bの間と、線状素子203cと203dの間に設けてもよい。その場合、線状素子201aと201b、線状素子201cと201d、線状素子202aと202b、線状素子202cと202dは接続されている。
また、給電部を、線状素子201aと201bの間、線状素子202aと202bの間、線状素子203aと203bの間、線状素子201cと201dの間、線状素子202cと202dの間、線状素子203cと203dの間に設けてもよい。その場合の実施例を次に図面を用いて詳細に説明する。
図9は、本発明の実施の形態に係るアンテナ装置の構成を示す図である。図9(a)は、アンテナ装置の構成を示す平面図であり、各ひし形アンテナ部の対向する頂点に給電部901a、901b、902a、902b、903a、903bを設け、給電部を切り替える構成としている。また、図9(b)はアンテナ装置の構成を示す矢視図であり、図9(a)の+X側から見た図である。ただし、これらの図において、図2と共通する部分には図2と同一の符号を付し、その説明を省略する。以下、アンテナを例えばεr=2.26の誘電体基板上に作成した場合について、その動作周波数を25GHz、1波長(1実効波長)を8.6mmとして説明する。また、説明の都合上、図に示すような座標軸を定義している。
ここで、本実施の形態のアンテナ装置に係る給電部の切り替えの一例について、図10に示すフローチャートを用いて説明する。
はじめに、アンテナ装置の−X側か+X側のどちらを給電するかを選択する(S1000)。−X側を給電する場合、S1001へ進む。S1001では、−X側の給電部の中でいずれかの給電部を選択する。ここで、給電部901aを選択した場合、給電部901aを励振する(S1002a)。このとき、同時に給電部902a、903a、901b、902b、903bを短絡する(S1002b)。以上より、給電部901aから線状アンテナ素子が励振されることになり、給電部206aを励振した場合と同等の結果が得られる。
また、給電部902aを選択した場合、給電部902aを励振する(S1003a)。このとき、同時に給電部901a、903a、901b、902b、903bを短絡する(S1003b)。以上より、給電部902aから線状アンテナ素子が励振されることになる。
また、給電部903aを選択した場合、給電部903aを励振する(S1004a)。このとき、同時に給電部901a、902a、901b、902b、903bを短絡する(S1004b)。以上より、給電部903aから線状アンテナ素子が励振されることになる。
次に、+X側を給電する場合を考える。S1005において、+X側の給電部の中でいずれかの給電部を選択する。ここで、給電部901bを選択した場合、給電部901bを励振する(S1006a)。このとき、同時に給電部901a、902a、903a、902b、903bを短絡する(S1006b)。以上より、給電部901bから線状アンテナ素子が励振されることになり、給電部206bを励振した場合と同等の結果が得られる。
また、給電部902bを選択した場合、給電部902bを励振する(S1007a)。このとき、同時に給電部901a、902a、903a、901b、903bを短絡する(S1007b)。以上より、給電部902bから線状アンテナ素子が励振されることになる。
また、給電部903bを選択した場合、給電部903bを励振する(S1008a)。このとき、同時に給電部901a、902a、903a、901b、902bを短絡する(S1008b)。以上より、給電部903bから線状アンテナ素子が励振されることになる。
このように本実施の形態によれば、複数の給電部を設けそれらを切り替えることで、垂直面及び円錐面において主ビーム方向を切り替えることができる。
さらに、図11及び図12は、本発明の実施の形態1に係る別のアンテナ装置の構成を示す図である。図11(a)は、アンテナ装置を+Z側から見た平面図であり、図11(b)は、アンテナ装置を+X側から見た矢視図である。また、図12は、反射板208を除いて−Z側から見たアンテナ装置の平面図である。以下、動作周波数を25GHzとして説明する。また、説明の都合上、図11及び図12に示すような座標軸を定義している。
図11において、誘電体基板1101は、比誘電率εrが例えば3.45で、厚さt2が0.04波長(0.3mm)であり、寸法L11×L12は2波長×4.3波長(14.5mm×31mm)である。この時、1波長(1実効波長)は7.2mmとする。
銅箔層1102は、誘電体基板1101の+Z面側に接着された銅箔である。スロット素子1103a〜1103d、1104a〜1104d、1105a〜1105dは銅箔層1102を削剥して形成された空隙(銅箔パターン)であり、素子長L4が約1/3波長(2.4mm)、素子幅が例えば0.2mmである。これらのスロット素子1103a〜1103d、1104a〜1104d、1105a〜1105dが図11(a)に示すように正方形形状に配置される。
スロット連結素子1106a〜1106d、スロット迂回素子1107a、1107bも、銅箔層1102を削剥して形成された空隙(銅箔パターン)であり、それぞれ素子長L5が約0.43波長(3.1mm)、素子長L6が約0.14波長(1mm)、素子幅が例えば0.2mmである。スロット連結素子1106aは、スロット素子1103aと1104bの間を、スロット連結素子1106bは、スロット素子1103bと1105aの間を、スロット連結素子1106cは、スロット素子1103cと1104dの間を、スロット連結素子1106dは、スロット素子1103dと1105cの間を接続する。また、スロット迂回素子1107aは、スロット素子1104aと1104cの間を接続し、スロット素子1107bは、スロット素子1105bと1105dの間を接続している。なお、スロット素子1103aと1103b、スロット素子1103cと1103d、スロット素子1104aと1104b、スロット素子1104cと1104d、スロット素子1105aと1105b、スロット素子1105cと1105dはそれぞれ接続されている。
接続導体1108a〜1108dは、スロット素子1103a〜1103dに、例えば銅箔パターンで正方形形状に形成され、スロット素子1103a〜1103dのほぼ中央でそれぞれのスロット素子1103a〜1103dを分断するように、スロット素子の内側と外側の銅箔層を接続している。このように、接続導体1108a〜1108dによりスロット素子1103a〜1103dを分断することで、インピーダンス整合が容易にとれ、F/B比が良好なアンテナ装置を実現することが可能となる。
以上のように構成された、スロット素子1103a〜1103d、1104a〜1104d、1105a〜1105dと、スロット連結素子1106a〜1106dと、スロット迂回素子1107a及び1107bと、接続導体1108a〜1108dにより、ひし形スロットアンテナ部を接続しアレー構成にしたスロットアンテナ素子が構成される。
スイッチ1201は、2つの入力端子1202a及び1202bと、2つの出力端子1202c及び1202dを有したDPDT(Double Pole Double Throw)スイッチである。このスイッチ1201は、入力端子1202aが出力端子1202cと接続される時、入力端子1202bと出力端子1202dが接続され、また入力端子1202aが出力端子1202dと接続される時、入力端子1202bと出力端子1202cが接続されるように動作する。
入力端子1202aには、マイクロストリップライン1203を介して給電部1204が接続され、入力端子1202bは銅箔パターン1205に接続され、スルーホール1206を介して接地導体である銅箔層1102に接地される。また、出力端子1202cには、マイクロストリップライン1207aが接続され、出力端子1202dにはマイクロストリップライン1207bが接続される。上記マイクロストリップライン1203及び銅箔パターン1205は、誘電体基板1101の−Z側面に形成された銅箔パターンである。
マイクロストリップライン1207aは、誘電体基板1101の−Z側面に銅箔パターンにより形成され、一端はスロット素子1103aとスロット素子1103bの接続部を通過するように配置され、他端はスイッチ1201の出力端子1202cに接続されている。同様に、マイクロストリップライン1207bも、誘電体基板1101の−Z側面に銅箔パターンにより形成され、一端はスロット素子1103cとスロット素子1103dの接続部を通過するように配置され、他端はスイッチ1201の出力端子1202dに接続されている。
マイクロストリップライン1207a及び1207bの幅W1は、特性インピーダンスが50Ωになるように0.6mmに設定されている。また、マイクロストリップライン1207aの先端からスロット素子1103aとスロット素子1103bの接続部までの距離L7及びマイクロストリップライン1207bの先端からスロット素子1103cとスロット素子1103dの接続部までの距離L7は0.45mmに設定されている。
ここで、図11及び図12に示す本実施の形態のアンテナ装置は、図2に示すアンテナ装置の線状素子をスロット素子に置き換えたものとほぼ同等と考えることができるため、その動作は電界と磁界を置き換えて説明することができる。したがって、図2に示すアンテナ装置の主偏波成分は水平(Eφ)成分であるのに対して、図11及び図12に示すアンテナ装置の主偏波成分は垂直(Eθ)成分となる。
次に、上述した構成を有するアンテナ装置において、マイクロストリップライン1207aからアンテナ装置を励振する場合の動作について説明する。給電部1204から励振された信号は、スイッチ1201の入力端子1202aに入力される。このときスイッチ1201は、入力端子1202aと出力端子1202c、入力端子1202bと出力端子1202dがそれぞれ接続されるように動作する。このため、入力端子1202aに入力された信号は、出力端子1202cを介してマイクロストリップライン1207aに入力される。
一方、マイクロストリップライン1207bは、入力端子1202b及び出力端子1202dを介して接地される。ここで、アンテナ素子がスロット素子で構成されているため、線状素子の場合の電界と磁界を置き換えて考えると、マイクロストリップライン1207bとスロット素子との結合部の位置では開放状態、すなわちマイクロストリップライン1207bの他端を接地する必要がある。このため、マイクロストリップライン1207bとスロット素子との結合部から接地点までの長さ、つまりマイクロストリップライン1207b及び銅箔パターン1205、スルーホール1206、スイッチ1201の全体の電気的な長さを1/4波長の奇数倍に設定しなければならない。これにより、指向性利得が高く、F/B比を良好とすることができる。
同様に、マイクロストリップライン1207bからアンテナ装置を励振する場合、スイッチ1201は、入力端子1202aと出力端子1202d、入力端子1202bと出力端子1202cがそれぞれ接続されるように動作する。このとき、マイクロストリップライン1207aとスロット素子との結合部の位置で開放状態とする必要があるため、マイクロストリップライン1207aとスロット素子との結合部から接地点までの長さを1/4波長の奇数倍に設定しなければならない。
図13は、図11及び図12に示すアンテナの指向性を示す図である。図13(a)は垂直(XZ)面の指向性を、図13(b)は仰角θが45度における円錐面の指向性を示している。
図13(a)において、実線で示す指向性1301aは、マイクロストリップライン1207aからアンテナ装置を励振したときの垂直偏波(Eθ)成分の指向性を示しており、仰角θが45度の方向にチルトした主ビームが得られることが確認できる。また、点線で示す指向性1301bは、マイクロストリップライン1207bからアンテナ装置を励振したときの垂直偏波(Eθ)成分の指向性を示しており、仰角θが45度の方向にチルトした主ビームが得られることが確認できる。
図13(b)において、実線で示す指向性1302aは、図13(a)の指向性1301aと同様に、マイクロストリップライン1207aからアンテナ装置を励振したときの垂直偏波(Eθ)成分の指向性を示しており、主ビームが+X方向に向いていることが確認できる。また、点線で示す指向性1302bは、図13(a)の指向性1301bと同様に、マイクロストリップライン1207bからアンテナ装置を励振したときの垂直偏波(Eθ)成分の指向性を示しており、主ビームが−X方向に向いていることが確認できる。このとき、指向性1302a及び1302bのいずれも、主ビームの指向性利得は13.54dBi、円錐面の半値角は27度、F/B比は11.2dBである。
このように本実施の形態によれば、マイクロストリップラインを用いてインピーダンス整合と給電を容易にしたアンテナ装置を得ることができる。さらに、スイッチ回路を用いてマイクロストリップラインへの給電を切り替えることで、2方向に主ビームを切り替えることが可能となる。
なお、本実施の形態では、スロット素子を誘電体基板上の銅箔パターンによって形成しているが、例えば導体板に空隙を設けてスロット素子を形成しても同様な効果が得られる。
また、本実施の形態では、接続導体をスロット素子内に銅箔パターンで形成し、スロット素子のほぼ中央で分断するようにスロット素子内の内側の銅箔層と外側の銅箔層を接続するものとして説明したが、接続導体をマイクロストリップラインと同一平面上に形成し、スルーホールを介して内側の銅箔層と外側の銅箔層を接続しても同様の効果が得られる。
なお、本実施の形態では、接続導体を中央のひし形スロットアンテナ部にのみ配置する構成について説明したが、両端のひし形スロットアンテナ部に接続導体を設置してもよい。
また、本実施の形態では、接続導体を中央のひし形スロットアンテナ部にのみ配置する構成について説明したが、複数のひし形スロットアンテナ部に接続導体を設置してもよい。
なお、本実施の形態では、スイッチとして1つのDPDTスイッチを用いて説明したが、例えば、SPDT(Single Pole Double Throw)を3つ用いて構成するように複数のスイッチを用いてもよい。
また、本実施の形態では、スイッチの一端子を接地し、マイクロストリップラインとスロット素子との結合部から接地点までの長さを1/4波長の奇数倍として説明したが、例えば、スイッチの一端子を開放とし、マイクロストリップラインとスロット素子との結合部から接地点までの長さを1/2波長の整数倍とする構成でも、指向性利得が高く、F/B比を良好とすることができる。
さらに、図14及び図15は、本発明の実施の形態1に係る別のアンテナの構成を示す図である。図14はアンテナ装置を+Z側から見た平面図であり、図15は反射板を除いて−Z側から見た平面図である。ただし、図14及び図15において、図11と共通する部分には図11と同一の符号を付し、その説明を省略する。また、ここでは図示していないが、誘電体基板面と略平行に所定の間隔を隔てて反射板208を配置するものとする。以下、動作周波数を25GHzとして説明する。また、説明の都合上、図14及び図15に示すような座標軸を定義している。
スイッチ1402は、1つの入力端子と2つの出力端子を有するSPDT(Single Pole Double Throw)スイッチである。1つの入力端子はマイクロストリップライン1403を介して給電部1401と接続され、2つの出力端子はマイクロストリップライン1404a及び1404bに接続されている。ここで、マイクロストリップライン1403とマイクロストリップライン1404a及び1404bは誘電体基板1101の−Z側面に形成された銅箔パターンである。
スイッチ1405a及び1405bは、1つの入力端子と3つの出力端子を有するSP3T(Single Pole 3 Throw)スイッチである。スイッチ1405aにおいて、1つの入力端子はマイクロストリップライン1404aに接続されており、3つの出力端子はそれぞれマイクロストリップライン1406a〜1406cに接続されている。ここで、マイクロストリップライン1406a〜1406cは、誘電体基板1101の−Z側面に形成された銅箔パターンである。また、スイッチ1405bにおいて、1つの入力端子はマイクロストリップライン1404bに接続されており、3つの出力端子はそれぞれマイクロストリップライン1411a〜1411cに接続されている。ここで、マイクロストリップライン1411a〜1411cも、誘電体基板1101の−Z側面に形成された銅箔パターンである。
スイッチ1407a〜1407cは、1つの入力端子と2つの出力端子を有するSPDT(Single Pole Double Throw)スイッチである。スイッチ1407aにおいて、1つの入力端子はマイクロストリップライン1406aに接続されており、2つの出力端子は銅箔パターン1408a及びマイクロストリップライン1410aに接続されている。なお、銅箔パターン1408aはスルーホール1409aを介して接地導体1102に接地される。また、スイッチ1407bにおいて、1つの入力端子はマイクロストリップライン1406bに接続されており、2つの出力端子は銅箔パターン1408b及びマイクロストリップライン1410bに接続されている。なお、銅箔パターン1408bはスルーホール1409bを介して接地導体1102に接地される。また、スイッチ1407cにおいて、1つの入力端子はマイクロストリップライン1406cに接続されており、2つの出力端子は銅箔パターン1408c及びマイクロストリップライン1410cに接続されている。なお、銅箔パターン1408cはスルーホール1409cを介して接地導体1102に接地される。ここで、銅箔パターン1408a〜1408c及びマイクロストリップライン1410a〜1410cは、誘電体基板1101の−Z側面に形成された銅箔パターンである。
同様に、スイッチ1412a〜1412cも、1つの入力端子と2つの出力端子を有するSPDT(Single Pole Double Throw)スイッチである。スイッチ1412a〜1412cにおいて、1つの入力端子はそれぞれマイクロストリップライン1411a〜1411cに接続されており、2つの出力端子はそれぞれ銅箔パターン1413a及びマイクロストリップライン1415a、銅箔パターン1413b及びマイクロストリップライン1415b、銅箔パターン1413c及びマイクロストリップライン1415cに接続されている。なお、銅箔パターン1413a〜1413cは、それぞれスルーホール1414a〜1414cを介して接地導体1102に接地される。ここで、銅箔パターン1413a〜1413c及びマイクロストリップライン1415a〜1415cは、誘電体基板1101の−Z側面に形成された銅箔パターンである。
以上のように構成されたアンテナ装置において、スイッチ回路の動作に伴うアンテナ装置への給電について、図16のフローチャートを用いて説明する(なお、図16において
マイクロストリップラインをMSLと表記している)。
はじめに、給電部1401の信号がスイッチ1402へ入力される(S1600)。次に、スイッチ1402の出力先を決定する(S1601)。スイッチ1402の出力端子がマイクロストリップライン1404aと接続している場合、S1602へ進む。S1602では、スイッチ1405aの出力先を決定する。ここで、スイッチ1405aの出力端子がマイクロストリップライン1406aと接続している場合、マイクロストリップライン1410aが励振される(S1603a)。このとき、同時にマイクロストリップライン1410b、1410c、1415a〜1415cは、それぞれスルーホールを介して接地される(S1603b)。以上より、スロット素子1103aと1103bの接続部をマイクロストリップライン1410aにより励振し、アンテナ装置に給電を行うことができる。
また、スイッチ1405aの出力端子がマイクロストリップライン1406bと接続している場合、マイクロストリップライン1410bが励振される(S1604a)。このとき、同時にマイクロストリップライン1410a、1410c、1415a〜1415cは、それぞれスルーホールを介して接地される(S1604b)。以上より、スロット素子1104aと1104bの接続部をマイクロストリップライン1410bにより励振し、アンテナ装置に給電を行うことができる。
また、スイッチ1405aの出力端子がマイクロストリップライン1406cと接続している場合、マイクロストリップライン1410cが励振される(S1605a)。このとき、同時にマイクロストリップライン1410a、1410b、1415a〜1415cは、それぞれスルーホールを介して接地される(S1605b)。以上より、スロット素子1105aと1105bの接続部をマイクロストリップライン1410cにより励振し、アンテナ装置に給電を行うことができる。
次に、スイッチ1402の出力端子がマイクロストリップライン1404bと接続している場合を考える。S1606では、スイッチ1405bの出力先を決定する。ここで、スイッチ1405bの出力端子がマイクロストリップライン1411aと接続している場合、マイクロストリップライン1415aが励振される(S1607a)。このとき、同時にマイクロストリップライン1410a〜1410c、1415b、1415cは、それぞれスルーホールを介して接地される(S1607b)。以上より、スロット素子1103cと1103dの接続部をマイクロストリップライン1415aにより励振し、アンテナ装置に給電を行うことができる。
また、スイッチ1405bの出力端子がマイクロストリップライン1411bと接続している場合、マイクロストリップライン1615bが励振される(S1608a)。このとき、同時にマイクロストリップライン1410a〜1410c、1415a、1415cは、それぞれスルーホールを介して接地される(S1608b)。以上より、スロット素子1104cと1104dの接続部をマイクロストリップライン1415bにより励振し、アンテナ装置に給電を行うことができる。
また、スイッチ1405bの出力端子がマイクロストリップライン1411cと接続している場合、マイクロストリップライン1415cが励振される(S1609a)。このとき、同時にマイクロストリップライン1410a〜1410c、1415a、1415bは、それぞれスルーホールを介して接地される(S1609b)。以上より、スロット素子1105cと1105dの接続部をマイクロストリップライン1415cにより励振し、アンテナ装置に給電を行うことができる。
このように本実施の形態によれば、スイッチ回路とマイクロストリップラインで実現された給電切替構成により、垂直面及び円錐面において主ビーム方向を切り替えることが可能となる。
なお、上述した各実施の形態では、線状素子及びスロット素子の長さを約1/3波長として説明したが、線状素子及びスロット素子の長さを変化させることにより指向性利得とF/B比を変化させることができる。したがって、線状素子及びスロット素子の長さは、指向性利得を高くしF/B比を良好にするために、略1/4波長から略3/8波長の範囲で選択することが望ましい。
(実施の形態2)
図17は、本発明の実施の形態2における車両周囲監視装置1750のブロック構成図を示したものである。
本実施の形態2の車両周囲監視装置1750は、図1に示す実施の形態1の車両周囲監視装置100とは、車両の走行状態情報を格納する走行状況情報格納部1700を具備した点が異なる。図17において、図1と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。なお、走行状況情報格納部1700は、本発明の走行情報格納部の一例である。
走行状況情報格納部1700は、車両に備えられた車速センサ1701や舵角センサ1702や方向指示器などのスイッチ1703からの車両の走行状態情報を格納する。そして、走行状況情報格納部1700に格納されたその走行状況情報に基づいて、ビーム方向指定手段1705が、送信アンテナ部103および受信アンテナ部104のビーム方向を決定する。
図18は、本実施の形態2の車両周囲監視装置1850の配置例と、そのときの監視領域を示した図である。
図18において、車両周囲監視装置は車両の側面、より具体的には例えばドアミラー内に設置される。図18に示す車両周囲監視装置1800および1810は、図17に示す車両周囲監視装置1750と同じものである。各車両周囲監視装置1800、1810の送信アンテナ部103および受信アンテナ部104のビームは、鉛直方向に対してできるだけ90度に近いチルトをさせる状態になるようにする。
具体的に説明すると、図2に示す構成の場合には、アンテナ素子200および反射板208の距離を0.4〜0.5波長(動作周波数24GHzの場合は、5.00〜6.25mm)に設定する。このアンテナはアンテナ素子と反射板の距離を変えることにより、ビーム方向を変えることができる。
これにより、車両の左側に設置された車両周囲監視装置1800は、左側前方領域1801と、左側後方領域1802を監視領域とし、車両の右側に設置された車両周囲監視装置1810は、右側前方領域1811と、右側後方領域1812を監視領域とする。
以上の構成により、車両周囲監視装置を設置できる位置が限られる車両側方の監視において、1つの車両周囲監視装置で2つの方向(前後方向)をカバーすることが可能となる。
なお、ドアミラーは、本発明のサイドミラーの一例である。サイドミラーとは、ドアミラー以外の、例えばフェンダーミラーなどであってもよい。
次に、複数の監視領域を監視状態にする手順について説明する。
一般的には、車両周囲監視装置1800および車両周囲監視装置1810の給電を、所定の時間毎に交互に切り替え、監視領域1801と監視領域1802を交互に監視する、あるいは、監視領域1811と監視領域1812を交互に監視する状態とする。しかし、走行シーンに応じて、スイッチ等を通じた運転者からの入力により、監視状態とする領域をコントロールすることも可能である。
例えば、低速のクルーズコントロール状態で走行している場合においては、車両周囲監視装置1800の監視領域1801と、車両周囲監視装置1810の監視領域1811の、前方だけを監視状態にするよう制御する。これにより、割り込み車両をいち早く検知し、車両を的確に制御することが可能となる。
逆に、運転者の意思で運転しかつ高速で走行している場合においては、車両周囲監視装置1800の監視領域1802と、車両周囲監視装置1810の監視領域1812の後方だけを監視状態にするよう制御する。これにより、後方車両や死角内に存在する車両をいち早く認知し運転者に知らせることにより、右左折の際の巻き込みや車線変更の際の衝突を防ぐことができる。特に、運転者が左右いずれかの車線変更を意図し方向指示器で方向を示唆した場合は、当該方向の後方、すなわち右に車線変更する場合は監視領域1812のみを、左に車線変更する場合は監視領域1802のみを動作させてもよい。
さらには、ハンドルを左に切りながら前進する場合は、車両周囲監視装置1800は監視領域1801と監視領域1802を交互に監視し、車両周囲監視装置1810は監視領域1811のみを監視状態とする、あるいは、逆にハンドルを右に切りながら前進する場合は、車両周囲監視装置1800は監視領域1811と監視領域1812を交互に監視し、車両周囲監視装置1810は監視領域1801のみを監視状態とする。
これにより、曲がる方向の後方を監視領域とすることにより、巻き込み事故を防ぐとともに、前方のうち運転者が注視する方向とは反対側も常にセンサが監視状態となることで、右左折の際の見落とし衝突事故を低減することが可能となる。
かかる構成によれば、車両の走行状態に応じて車両周囲監視装置への給電を制御することにより、監視領域を切り換えることが可能となり、衝突の可能性の高い方向に監視領域を向けることができる。
図19は、本実施の形態2の車両周囲監視装置の他の配置例と、そのときの監視領域を示したものである。
図19において、車両周囲監視装置1900、1910、1920、1930は車両の各コーナーに設置される。車両周囲監視装置1900、1910、1920、1930は、いずれも図17に示す車両周囲監視装置1750と同じものである。
このように設置することにより、車両の左前方に設置された車両周囲監視装置1900によって、前方左側の監視領域1901および左側前方の監視領域1902を、車両の右前方に設置された車両周囲監視装置1910によって、前方右側の監視領域1911および右側前方の監視領域1912を、車両の右後方に設置された車両周囲監視装置1920によって、後方右側の監視領域1921および右側後方の監視領域1922を、車両の左後方に設置された車両周囲監視装置1930によって、後方左側の監視領域1931および左側後方の監視領域1932を、車両の監視領域にできる。
車両が高速で走行する場合は、各車両周囲監視装置への給電を制御することにより、監視領域1901と監視領域1911と監視領域1921と監視領域1931が監視される状態とする。
また、ハンドルを切る場合は、切る方向と切る角度によって、動作させる監視領域を変えることもできる。例えば、前進しながら左に小さくハンドルを切る場合は監視領域1901を監視状態とし、さらに大きく切る場合は監視領域1902を監視状態とする。この際、同時に1922を監視領域としても構わない。他の方向に移動する場合も同様である。
あるいは、発車時のように一旦できるだけ全周囲を監視し確認したい場合においては、1901と1912を同時に監視領域として動作させ、次に1902と1911を同時に監視領域として動作させる。
以上の構成によって、各車両周囲監視装置が互いに干渉をすることなく、車両周囲の広い範囲を効率的に監視することが可能となる。
なお、図18においてはドアミラー内に、図19においては車両の各コーナー部に、それぞれ車両周囲監視装置を設置することとしたが、これらの設置位置には、車両周囲監視装置のアンテナ部分、つまり図17に示す送信アンテナ部103および受信アンテナ部104が少なくとも設置されていればよく、車両周囲監視装置のそれ以外の構成部分は、車両の他の部分に設置されてもよい。
(実施の形態3)
図20は、本発明の実施の形態3における車両周囲監視システムのブロック構成図を示したものである。図20を用いて、本実施の形態3の車両周囲監視システムの構成とともに動作について説明する。なお、図20に示す車両周囲監視システムは、本発明の周囲監視システムの一例である。
図20において、本実施の形態3の車両周囲監視システムは、複数の車両周囲監視装置、一例として6個の車両周囲監視装置2010、2020、・・・、2060と、中央制御演算部2070と、車速センサ2081や舵角センサ2082や方向指示器などのスイッチ2083からの車両の走行状態情報を格納する走行状況情報格納部2080と、表示部2090とを備えている。
各車両周囲監視装置2010、2020、・・・、2060は、実施の形態1の図1の車両周囲監視装置100、図7の車両周囲監視装置700、図8の車両周囲監視装置850の、いずれかと同様の構成の車両周囲監視装置である。図20では、一例として、図1の車両周囲監視装置100と同じ構成で示している。
中央制御演算部2070は、中央タイミング制御部2071、中央処理部2072および中央ビーム方向指定手段2073を備えている。
中央タイミング制御部2071は、各車両周囲監視装置2010〜2060のタイミング制御部、ビーム方向指定手段に接続されている。また、図8の構成の場合には、送受切替スイッチ(800)にも接続されており、これらは、中央タイミング制御部2071からの制御信号に基づいて動作する。
また、中央処理部2072は、各車両周囲監視装置2010〜2060の、受信部(106)または処理部(107)に接続されている。そして、受信部(106)または処理部(107)は、中央処理部2072へ、受信信号または受信信号を処理した結果を送る。
中央処理部2072は、各車両周囲監視装置2010〜2060の受信部(106)または処理部(107)からの、対象を検出した情報をもとに、障害物や周囲の人、別の車両との衝突の危険度を判断し、ドライバーが認識しやすいデータに加工したうえで、表示部2090によってその結果を運転者に報知する。
図21は、本実施の形態3における車両周囲監視システムの車両周囲監視装置2010〜2060の配置例と、それらの監視領域の一例を示した図である。
図21において、車両周囲監視装置2010、2020、2030が、車両の後方の、例えばバンパー内部に設置される。また、図21には示していないが、車両周囲監視装置2040、2050、2060が、同様に車両の前方のバンパー内に設置されている。ここでは、車両の後方に設置した車両周囲監視装置2010、2020、2030について説明する。
図21では、車両の後方の、左端、中央、右端の3箇所に車両周囲監視装置2010、2020、2030が、それぞれ設置されており、各車両周囲監視装置2010、2020、2030がそれぞれ2方向(例えば、車両周囲監視装置2010の場合は、監視領域2101および2102)をカバーするため、全部で6方向、すなわち監視領域2101、2102、2111、2112、2121、2122をカバーする構成となっている。
この場合、受信アンテナ部のビームは車両周囲監視装置の中心部も検知領域とするため、ここがヌルポイントになってはいけない。従って、1つのビームに対してあまりチルトをさせない状態になっており、具体的に主ビームのチルト角はビームの半値角程度に設定される。これにより、同じビーム幅をもつ車両周囲監視装置を用いた場合、図25に示すように従来は6つの車両周囲監視装置が必要になるところを、本実施の形態3では、3つの車両周囲監視装置2010、2020、2030でカバーすることが可能になる。
以上の構成によって、車両後方の広い領域を、数少ない車両周囲監視装置で監視することができる。
次に、複数の監視領域を監視状態にする手順について説明する。
一般的に各々の監視領域は、時分割で動作させることによって、互いの干渉を防ぐことができる。しかし、干渉の影響がない場合または許容される範囲内の場合において、同時に監視状態として動作させる領域を増やすと、より効率的に車両の周囲を監視することができ、システムの応答を早くすることができる。
具体的には、図22に示すようなタイミングで各監視領域の検知を行わせる。図22は、図21に示す車両周囲監視装置2010〜2030をアクティブな状態にさせる時間変化、つまり、車両周囲監視装置2010〜2030がパルスを送受信するパルスレーダであるとすると、それぞれの車両周囲監視装置2010〜2030がパルスを送信するタイミングの一例を示した図である。
図22に示すように、監視領域2101を動作させている場合(送信タイミング2201)は、監視領域2111、2121を同時に動作させ(送信タイミング2211、2221)、監視領域2102を動作させている場合(送信タイミング2202)は、監視領域2112、2122を同時に動作させる(送信タイミング2212、2222)。これにより、互いに干渉させることなく、かつ効率的に障害物の検知が可能となる。
以上の構成によって、車両周囲監視装置への給電を制御し監視領域を切り換えることによって、車両周囲監視装置が互いに干渉をすることなく、車両周囲の広い範囲を効率的に監視することが可能となる。
なお、本実施の形態3においては、車両周囲監視装置を車両後方に設置した場合についてのみ説明したが、車両前方に設置した車両周囲監視装置についても同様に制御される。また、車両の後方のみ、または前方のみに車両周囲監視装置が設置されるようにしてもよい。
なお、図20に示す本実施の形態3では、車両周囲監視装置2010〜2060がタイミング制御部(101、801のいずれか)を備える構成としたが、これを、中央制御演算部2070の中央タイミング制御部2071と共用させる構成としてもかまわない。
また、車両周囲監視装置2010〜2060が処理部(107)を備える構成としたが、これを、中央制御演算部2070の中央処理部2072と共用させる構成としてもかまわない。
また、図20に示す車両周囲監視装置2010〜2060の構成を、送信モジュールと受信モジュールに分けた構成にしてもよい。図23は、送信モジュールと受信モジュールに分けた構成とした、本実施の形態3の車両監視システムの構成図を示している。
図23の車両監視システムは、1つの送信モジュール2300と、複数の受信モジュール2310〜2360で構成される。
送信モジュール2300は、例えば、図1、図7、図8に示される車両周囲監視装置の送信部分の構成であればよく、受信モジュール2310〜2360は、例えば、図1、図7、図8に示される車両周囲監視装置の受信部分の構成であればよい。
図23では、その一例として、図7に示す車両周囲監視装置700の送信部分の構成を送信モジュール2300とし、受信部分の構成を受信モジュール2310〜2360としている。
図23に示す、送信部2302、送信アンテナ2303、給電切替スイッチ2312、受信アンテナ部2313は、それぞれ、図7に示す、送信部102、送信アンテナ703、給電切替スイッチ120、受信アンテナ部104と同様の構成である。また、タイミング制御部2301は、図7のタイミング制御部101の送信側のタイミング制御を行う機能を有しており、タイミング制御部2311は、図7のタイミング制御部101の受信側のタイミング制御を行う機能を有している。
また、表示部2390、走行状況情報格納部2380、車速センサ2381、舵角センサ2382、スイッチ2383、表示部2390は、それぞれ、図20に示す、表示部2090、走行状況情報格納部2080、車速センサ2081、舵角センサ2082、スイッチ2083、表示部2090と同様の構成である。また、中央制御演算部2370に備えられた、中央タイミング制御部2371および中央処理部2372は、それぞれ、図20の、中央タイミング制御部2071および中央処理部2072と同様の機能を有する。
この場合、受信モジュール2310〜2360側はビーム方向を切り替えるアンテナで構成され、給電切替スイッチ2312を含む構成であるが、送信モジュール2300側は任意のアンテナ、たとえばパッチアンテナ等で構成してもよい。
なお、各実施の形態では、本発明の監視装置を車両に設置する場合について説明したが、他の場所に設置してもよい。例えば、建物の内外に設置すれば、セキュリティー用途や入室退室の人数計測等に利用することもできる。
なお、本発明に関連する発明のプログラムは、上述した本発明の監視装置の、前記走行情報格納部に格納されている前記走行状態情報に基づいて、複数の前記監視領域のうち、いずれの監視領域をどのタイミングでアクティブにするかを決定し監視領域を制御する前記ビーム切り替え手段の機能をコンピュータにより実行させるためのプログラムであって、コンピュータと協働して動作するプログラムである。
また、本発明に関連する発明の記録媒体は、上述した本発明の監視装置の、前記走行情報格納部に格納されている前記走行状態情報に基づいて、複数の前記監視領域のうち、いずれの監視領域をどのタイミングでアクティブにするかを決定し監視領域を制御する前記ビーム切り替え手段の機能をコンピュータにより実行させるためのプログラムを記録した記録媒体であり、コンピュータにより読み取り可能かつ、読み取られた前記プログラムが前記コンピュータと協働して利用される記録媒体である。
また、本発明に関連する発明のプログラムの一利用形態は、コンピュータにより読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータと協働して動作する態様であっても良い。
また、記録媒体としては、ROM等が含まれる。
また、上述した本発明に関連する発明のコンピュータは、CPU等の純然たるハードウェアに限らず、ファームウェアや、OS、更に周辺機器を含むものであっても良い。
なお、以上説明した様に、本発明の構成は、ソフトウェア的に実現しても良いし、ハードウェア的に実現しても良い。