JP4188142B2 - スクロール圧縮機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、固定スクロール部品の渦巻きラップと旋回スクロール部品の渦巻きラップとを噛み合わせて圧縮室を形成し、旋回スクロール部品を自転拘束機構によって自転を拘束して円軌道に沿って旋回させ、固定スクロール部品の渦巻きラップと旋回スクロール部品の渦巻きラップとの間に形成される圧縮室が、容積を変えながら移動することで、吸入した冷媒を圧縮して吐出するスクロール圧縮機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
家庭用又は業務用の冷凍空調分野では、冷凍空調用密閉型圧縮機として、レシプロ式圧縮機、ロータリ式圧縮機、及びスクロール式圧縮機が使用されている。これらのレシプロ式圧縮機、ロータリ式圧縮機、及びスクロール式圧縮機は、コストや性能面でのそれぞれの特徴を活かして開発が行われている。
防音とメンテナンスフリーを目的とした場合には、圧縮機構および電動機構を容器に収納した密閉型圧縮機が用いられ、この密閉型圧縮機では、スクロール式圧縮機とロータリ式圧縮機が主流となっている。
従来のスクロール圧縮機を例に挙げて示す。図8はスクロール圧縮機の断面図である。
スクロール圧縮機は、固定スクロール部品2と旋回スクロール部品4によって圧縮室5を形成している。固定スクロール部品2は、鏡板2bから渦巻きラップ2aが立ち上がって構成され、旋回スクロール部品4は、鏡板4bから渦巻きラップ4aが立ち上がって構成されている。圧縮室5は、鏡板2bと鏡板4bとの間に、渦巻きラップ2aと渦巻きラップ4aとが噛み合わさって形成される。旋回スクロール部品4は、自転拘束機構によって自転が拘束され、円軌道に沿って旋回する。圧縮室5は、この旋回スクロール部品4の旋回動作によって容積を変えながら移動する。そして圧縮室5において、吸入した冷媒を圧縮し、圧縮した冷媒を吐出する。なお、旋回スクロール部品4の外周部及び渦巻きラップ背面に、所定の背圧を印加することで、旋回スクロール部品4が固定スクロール部品2から離れて転覆しないように構成している。
吸入管1より吸い込まれた冷媒ガスは、固定スクロール部品2の吸入室3を経て、固定スクロール部品2と旋回スクロール部品4とがかみ合わさってできる圧縮室5に閉じ込められ、固定スクロール部品2の中心に向かって圧縮室5の容積を減少させながら圧縮され、吐出ポート6より吐出される。背圧室8は、固定スクロール部品2と軸受7に囲まれて形成される。この背圧室8は、旋回スクロール部品4が固定スクロール部品2から引き離されないだけの背圧を常に有する必要があるが、この背圧が過剰になると、旋回スクロール部品4が固定スクロール部品2に強く押し付けられ、スクロール摺動部の異常磨耗や入力増加を招くことになる。そこで、背圧を常に一定に保つために背圧調整機構9を設けている。この背圧調整機構9は、背圧室8から固定スクロール部品2の内部を通って吸入室3へと連通している通路10に、バルブ11を設けて構成されている。そして、背圧室8の圧力が設定圧力より高くなるとバルブ11が開き、背圧室8のオイルが吸入室3に供給され、背圧室8内を一定の中間圧に維持する。旋回スクロール部品4の背面には前述の中間圧が印加され、運転中に転覆しないように抑えている。吸入室3に供給されるオイルは、旋回スクロール部品4の旋回運動とともに圧縮室5に移動し、圧縮空間の冷媒の漏れ防止に役立っている。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−207979号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、二酸化炭素を冷媒として用い、臨界圧以上の圧力で運転した場合、圧縮機の吐出圧力と吸入圧力の圧力差は、フロンを冷媒とする従来の冷凍サイクルの圧力差の約7〜10倍以上高い。このため、固定スクロール部品2と旋回スクロール部品4との間に形成される圧縮室5では、各ラップ部2a、4aの歯先面からの漏れが増大し、性能低下を招くという問題を有していた。
例えば、特許文献1記載のスクロール圧縮機では、相手側の鏡板とラップ部の歯先面との間からの漏れを低減させるために、スクロールのラップ部の歯先面に、チップシール溝が形成され、その中にチップシールが装着されている。しかしながら、チップシールが接触することによる摺動損失の増大や、部品点数の増加及び加工工程の増加により生産性を低下させるという問題を有していた。
【0005】
そこで、本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたもので、二酸化炭素を冷媒として用いた場合に、簡単で低コストを図った構成としながらも、高効率および高信頼性を有するスクロール圧縮機を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の本発明のスクロール圧縮機は、固定スクロール部品の渦巻きラップと旋回スクロール部品の渦巻きラップとを噛み合わせて圧縮室を形成し、前記旋回スクロール部品を自転拘束機構によって自転を拘束して円軌道に沿って旋回させ、前記固定スクロール部品の渦巻きラップと前記旋回スクロール部品の渦巻きラップとの間に形成される圧縮室が、容積を変えながら移動することで、吸入した冷媒を圧縮して吐出するスクロール圧縮機において、前記冷媒として二酸化炭素を用い、前記固定スクロール部品と前記旋回スクロール部品と軸受に囲まれた背圧室を形成し、前記背圧室から前記固定スクロール部品の内部を通って吸入室へと連通している通路に、バルブを設けて背圧調整機構を構成し、油溜まりに溜まった潤滑油は、シャフトの内部に形成された通路を通って、前記シャフトの上端部に導かれ、前記シャフトの上端部に導かれた前記潤滑油は、前記旋回スクロール部品内に設けられた連通路を通り、前記連通路に取り付けられた絞り孔で減圧された後に前記背圧室に供給され、前記背圧室の圧力が設定圧力より高くなると前記バルブを開いて前記背圧室のオイルを吸入室に供給し、前記絞り孔を別部材として前記連通路内に組み付けることで、前記圧縮室内に供給する潤滑油量を、前記冷媒の吸入行程完了時に前記圧縮室内に閉じこめられている冷媒量に対して、2重量%以上20重量%未満の割合としたことを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載のスクロール圧縮機において、前記固定スクロール部品の吸入室の容積が、前記圧縮室の押しのけ容積の20%以上であることを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項1又は請求項2に記載のスクロール圧縮機において、前記潤滑油としてポリアルキレングリコールを主成分とするオイルを用いたことを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項1又は請求項2に記載のスクロール圧縮機において、前記潤滑油としてポリオールエステルを主成分とするオイルを用いたことを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明による第1の実施の形態は、固定スクロール部品の渦巻きラップと旋回スクロール部品の渦巻きラップとを噛み合わせて圧縮室を形成し、旋回スクロール部品を自転拘束機構によって自転を拘束して円軌道に沿って旋回させ、固定スクロール部品の渦巻きラップと旋回スクロール部品の渦巻きラップとの間に形成される圧縮室が、容積を変えながら移動することで、吸入した冷媒を圧縮して吐出するスクロール圧縮機において、冷媒として二酸化炭素を用い、固定スクロール部品と前記旋回スクロール部品と軸受に囲まれた背圧室を形成し、背圧室から固定スクロール部品の内部を通って吸入室へと連通している通路に、バルブを設けて背圧調整機構を構成し、油溜まりに溜まった潤滑油は、シャフトの内部に形成された通路を通って、シャフトの上端部に導かれ、シャフトの上端部に導かれた潤滑油は、旋回スクロール部品内に設けられた連通路を通り、連通路に取り付けられた絞り孔で減圧された後に背圧室に供給され、背圧室の圧力が設定圧力より高くなるとバルブを開いて背圧室のオイルを吸入室に供給し、絞り孔を別部材として連通路内に組み付けることで、圧縮室内に供給する潤滑油量を、冷媒の吸入行程完了時に圧縮室内に閉じこめられている冷媒量に対して、2重量%以上20重量%未満の割合としたものである。本実施の形態によれば、圧縮室に供給された潤滑油はシールオイルとして作用し、ラップ部の歯先面からの漏れと側壁からの漏れを低減させることができる。また、吸入加熱による損失の増大を最小限にすることができる。また、チップシールを設けなくても良いので部品点数を増やすことがなく、コストを低く抑えることができる。
本発明による第2の実施の形態は、第1の実施形態におけるスクロール圧縮機において、固定スクロール部品の吸入室の容積が、圧縮室の押しのけ容積の20%以上であるものである。本実施の形態によれば、冷媒が圧縮される前に潤滑油と冷媒を十分に混合させることができるので、圧縮室のシール性を更に高め、漏れを低減させる効果を高めることができる。
本発明による第3の実施の形態は、第1又は第2の実施形態におけるスクロール圧縮機において、潤滑油としてポリアルキレングリコールを主成分とするオイルを用いたものである。本実施の形態によれば、全運転領域に対して機械効率を向上させ、かつ、漏れ損失も低減させることができるので、更に高効率なスクロール圧縮機を提供することができる。
本発明による第4の実施の形態は、第1又は第2の実施形態におけるスクロール圧縮機において、潤滑油としてポリオールエステルを主成分とするオイルを用いたものである。本実施の形態によれば、冷媒循環量が多い運転条件に対しては、圧縮室のシール性が高まり、更に高効率なスクロール圧縮機を提供することができる。
【0008】
【実施例】
図1に第1の実施例によるスクロール圧縮機の断面図を示す。
スクロール圧縮機は、密閉容器20内に圧縮機構部と電動機構部とを備えている。圧縮機構部は密閉容器20内の上方に配置され、電動機構部は圧縮機構部よりも下方に配置されている。密閉容器20の上部には、吸入管1と吐出管21が設けられている。密閉容器20内の下部には、潤滑油を溜める油溜まり22を有している。
圧縮機構部は、固定スクロール部品2と旋回スクロール部品4により、複数の圧縮空間からなる圧縮室5を形成している。固定スクロール部品2は、鏡板2bから渦巻きラップ2aが立ち上がって構成され、旋回スクロール部品4は、鏡板4bから渦巻きラップ4aが立ち上がって構成されている。圧縮室5は、鏡板2bと鏡板4bとの間に、渦巻きラップ2aと渦巻きラップ4aとが噛み合わさって形成される。旋回スクロール部品4は、自転拘束機構22によって自転が拘束され、円軌道に沿って旋回する。圧縮室5を構成する複数の圧縮空間は、この旋回スクロール部品4の旋回動作によって容積を変えながら移動する。なお、旋回スクロール部品4の外周部及び渦巻きラップ背面に、所定の背圧を印加することで、旋回スクロール部品4が固定スクロール部品2から離れて転覆しないように構成している。
【0009】
吸入管1より吸い込まれた冷媒ガスは、固定スクロール部品2の吸入室3を経て、固定スクロール部品2と旋回スクロール部品4とがかみ合わさってできる圧縮室5に閉じ込められ、固定スクロール部品2の中心に向かって容積を減少させながら圧縮され、吐出ポート6より吐出される。背圧室8は、固定スクロール部品2と軸受7に囲まれて形成され、旋回スクロール部品4が固定スクロール部品2から引き離されないだけの背圧を常に有する必要がある。なお、軸受7の上面であって、旋回スクロール部品4と対向する面には、リング状のシール部材7aを設けている。背圧調整機構9は、旋回スクロール部品4の背圧を常に一定に保つ機構である。背圧調整機構9は、背圧室8から固定スクロール部品2の内部を通って吸入室3へと連通している通路10に、バルブ11を設けて構成されている。そして、背圧室8の圧力が設定圧力より高くなるとバルブ11が開き、背圧室8のオイルが吸入室3に供給され、背圧室8内を一定の中間圧に維持する。旋回スクロール部品4の背面には前述の中間圧が印加され、運転中に転覆しないように抑えている。吸入室3に供給されるオイルは、旋回スクロール部品4の旋回運動とともに圧縮室5に移動し、圧縮室5を構成する複数の圧縮空間からの冷媒の漏れ防止に役立っている。
【0010】
油溜まり22に溜まった潤滑油は、シャフト13の内部に形成された通路23を通って、シャフト13の上端部に導かれる。シャフト13の上端部に導かれた潤滑油は、シャフト13と旋回スクロール4との摺動面及びシャフト13と軸受7との摺動面を潤滑する。また潤滑油の一部は、旋回スクロール部品4内に設けられた連通路24を通り、連通路24に取り付けられた絞り孔12で減圧された後、背圧室8に供給される。背圧室8の圧力が設定圧力より高くなるとバルブ11が開き、背圧室8の潤滑油が吸入室3に供給され、背圧室8に溜まった潤滑油は、シールオイルとして作用する。また、本実施例では吸入管1及び吸入室3と背圧調整機構9が重なるために、便宜的にシャフト13を中心にして左右に分けて図示する。
表1に4つの異なる運転条件の吐出圧力、吸入圧力、圧縮比、回転数を示す。
【0011】
【表1】
【0012】
図2に表1に示される4つの異なる運転条件での、吸入した冷媒量に対する潤滑油の供給割合と成績係数比を示す。吸入した冷媒量とは、スクロール圧縮機が吸入行程を完了した時に閉じ込めた冷媒量を意味している。成績係数比は、それぞれの条件での成績係数を、成績係数の最大値で除したものである。図2から分るように、吸入した冷媒量に対して、2重量%以上20重量%未満の割合で圧縮室5に潤滑油を供給すると成績係数が最大になる。二酸化炭素を冷媒として用いた場合は、潤滑油の供給量が少ないと、シール性が悪くなり、圧縮室5の漏れ損失が増大し、潤滑油の供給量が多いと、吸入時に冷媒が過熱されて、閉じ込めることのできる冷媒量が減少して圧縮機の効率が低下することを示している。
【0013】
一方、冷媒としてR410Aを用いた場合と、冷媒として二酸化炭素を用いた場合を比較したものを図3に示す。二酸化炭素を用いた場合の、吸入した冷媒量に対する潤滑油の供給割合と成績係数比は、条件2で測定されたものである。また、R410Aを用いた場合の、吸入した冷媒量に対する潤滑油の供給割合と成績係数比は、二酸化炭素を用いた場合の条件2と冷凍能力及び周波数がほぼ同等となるように設計されたスクロール圧縮機で測定されたものである。図3から、従来のフロン系冷媒であるR410Aを用いた場合は、吸入した冷媒量に対する潤滑油の供給割合は、少なければ少ないほど成績係数比は向上することが分る。従って、二酸化炭素を冷媒として用いる場合は従来のフロン系冷媒を用いる場合とは異なり、適切な割合で圧縮室に潤滑油を給油する必要があることが分る。
【0014】
本実施例では、絞り孔12を適切に調節することによって、吸入した冷媒量に対して、2重量%以上20重量%未満の割合で圧縮室5に潤滑油を供給し、冷媒として二酸化炭素を用い、高圧側圧力が臨界圧以上となるように運転した場合でも、高効率なスクロール圧縮機を提供することができる。また、絞り孔12を別部材として連通路24内に組み付けることで、吸入した冷媒量に対して、2重量%以上20重量%未満の割合で圧縮室5に潤滑油を供給する手段を安価に実現できる。また、図1に示す第1の実施例では、吸入管1及び吸入室3が背圧調整機構9と重なるために、便宜的にシャフト13を中心にして左右に分けて図示されているので、図4に固定スクロール部品2と吸入室3と旋回スクロール部品4と圧縮室5の断面を拡大したものを示す。従来のR410Aを冷媒として用いるスクロール圧縮機の場合、吸入室3の容積が、圧縮室5の押しのけ容積の約14%となっている。ここで、圧縮室の押しのけ容積とは、旋回スクロール部品の1回転中、冷媒を吸入する空間の全容積である。また、吸入室3の容積とは、冷媒の吸入行程が終了した時点での、吸入管と圧縮空間との間に生じる空間の容積である。しかしながら、冷媒として二酸化炭素を用いた場合は、R410Aを冷媒として用いる場合と比較して、吸入時の冷媒粘度が約1.4倍高くなるために、潤滑油と冷媒の混合が十分に行われず、圧縮室5のシールオイルとしての働きが低下する。そこで、吸入時の冷媒粘度の分だけ大きい吸入室3を形成し、固定スクロール部品2の吸入室3の容積が、圧縮室5の押しのけ容積の20%以上の場合には、冷媒が圧縮される前に潤滑油と冷媒を十分に混合させることができるので、圧縮室5のシール性を高め、漏れを低減させる効果を更に高めることができる。
【0015】
図5に第2の実施例を示す。この実施の形態のスクロール圧縮機は、図1の実施の形態における絞り孔を、旋回スクロール部品4の駆動によって、間欠的に潤滑油を供給する構成としたものである。すなわち図5に示すように、絞り孔12の開口部を、旋回スクロール部品4の下面であって、軸受7に対向する面に設けている。そして、この絞り孔12の開口部は、旋回スクロール部品4の駆動にともない、軸受7のシール部材7Aを跨いで、シール部材7Aの内周側と外周側とに位置することとなる。そして、シール部材7Aの外周側に位置した場合に、背圧室8へ潤滑油を供給する。なお、シール部材7Aの内周側に位置した場合には、背圧室8への潤滑油の供給は行われない。
【0016】
表1に示されている4つの異なる条件に関して、冷媒循環量に対する圧縮室5に潤滑油を供給する最適な割合を図6に示す。図6から、4つの異なる条件では、さまざまな漏れに関するパラメータを異なるように設定しているにも関わらず、圧縮室5に潤滑油を供給する最適な割合は、冷媒循環量に対して強い相関関係があることが分る。このスクロール圧縮機では、圧縮室5に間欠的に潤滑油を供給する絞り孔12を備えているので、圧縮室5に給油される潤滑油量は以下の式に表わすことができる。
【0017】
【数1】
【0018】
ここで、Qは給油量、Cは定数、ΔPは差圧、fは周波数、vは動粘度、dは絞り孔直径、Toは1回転当りの給油時間である。上式から分るように、圧縮室5に給油される潤滑油量を適切に調節することができるので、吸入した冷媒量に対して、2重量%以上20重量%未満の割合で圧縮室5に潤滑油を供給し、かつ、冷媒循環量の変化に対しても給油量を調節することができるので、更に高効率なスクロール圧縮機を提供することができる。
【0019】
図7に第3および第4の実施例を示す。図7は潤滑油としてポリアルキレングリコールを主成分とするオイルを用いた場合と、ポリオールエステルを用いた場合の圧縮機の性能を比較したものである。ポリアルキレングリコールを主成分とするオイルを用いた場合は、二酸化炭素に対して相溶性が低いので、圧縮開始前に冷媒と潤滑油を十分に混合しておかないとシール性が低下する。一般的にポリアルキレングリコールは摺動部の潤滑性を良好に保つことができるので、吸入した冷媒量に対して、2重量%以上20重量%未満の割合で圧縮室5に潤滑油を供給し、かつ、固定スクロール部品2の吸入室3の容積が、圧縮室5の押しのけ容積の20%以上とするときに、全運転領域に対して機械効率を向上させ、かつ、漏れ損失も低減させることができるので、更に高効率なスクロール圧縮機を提供することができる。一方、ポリオールエステルを主成分とするオイルを用いた場合は、二酸化炭素に対して相溶性が高いので、各隙間で潤滑油が冷媒と一緒に洗われてシールオイルとしての作用が低下する。この効果は冷媒循環量が少ない条件で特に顕著に表れる。しかしながら、吸入した冷媒量に対して、2重量%以上20重量%未満の割合で圧縮室5に潤滑油を供給し、かつ、固定スクロール部品2の吸入室3の容積が、圧縮室5の押しのけ容積の20%以上とするときは、冷媒循環量が多い運転条件に対しては、圧縮開始前に冷媒と潤滑油を十分に混合させることができるので、各隙間で潤滑油が冷媒と一緒に洗われてシールオイルとしての作用が低下するよりも早く、新たに潤滑油が各隙間に供給されてシール性を格段に高めることができる。特に冷媒循環量が多い条件で、更に高効率なスクロール圧縮機を提供できる。
【0020】
【発明の効果】
本発明によれば、圧縮室に供給された潤滑油はシールオイルとして作用し、ラップ部の歯先面からの漏れと側壁からの漏れを同時に低減させることができる。また、吸入加熱による損失の増大を最小限にすることができる。
また本発明によれば、固定スクロール部品の吸入室の容積を、圧縮室の押しのけ容積の20%以上とすることで、冷媒が圧縮される前に潤滑油と冷媒を十分に混合させることができるので、圧縮室のシール性を更に高め、漏れを低減させる効果を高めることができる。
また本発明によれば、旋回スクロール部品内に圧縮室に潤滑油を流通させる絞り孔を備えたことで、吸入した冷媒量に対して、2重量%以上20重量%未満の割合で前記圧縮室に潤滑油を供給する手段を安価に実現できる。
また本発明によれば、旋回スクロール部品の駆動によって、圧縮室に間欠的に潤滑油を流通させる絞り孔を備えたことで、吸入した冷媒量に対して、2重量%以上20重量%未満の割合で前記圧縮室に潤滑油を供給し、かつ、冷媒循環量の変化に対しても給油量を調節することができるので、更に高効率なスクロール圧縮機を提供することができる。
また本発明によれば、潤滑油としてポリアルキレングリコールを主成分とするオイルを用いたことで、全運転領域に対して機械効率を向上させ、かつ、漏れ損失も低減させることができるので、更に高効率なスクロール圧縮機を提供することができる。
また本発明によれば、潤滑油としてポリオールエステルを主成分とするオイルを用いたことで、冷媒循環量が多い運転条件に対しては、圧縮室のシール性が高まり、更に高効率なスクロール圧縮機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例を示す固定スクロール部品及び旋回スクロール部品の断面図
【図2】 吸入した冷媒に対する潤滑油の供給割合と性能の関係を表すグラフ
【図3】 吸入した冷媒に対する潤滑油の供給割合と性能の関係をR410Aと二酸化炭素で比較したグラフ
【図4】 固定スクロール部品と旋回スクロール部品と吸入室の拡大図
【図5】 本発明の一実施例を示す固定スクロール部品及び旋回スクロール部品の断面図
【図6】 吸入した冷媒に対する潤滑油の最適な供給割合と冷媒循環量の関係を表すグラフ
【図7】 オイルの違いによる性能の関係を表すグラフ
【図8】 従来例を示すスクロール圧縮機の断面図
【符号の説明】
1 吸入管
2 固定スクロール部品
2a ラップ部
2b 鏡板
3 吸入室
4 旋回スクロール部品
4a ラップ部
4b 鏡板
5 圧縮室
6 吐出ポート
7 軸受
8 背圧室
9 背圧調整機構
10 連通路
11 バルブ
12 絞り孔
13 シャフト
Claims (4)
- 固定スクロール部品の渦巻きラップと旋回スクロール部品の渦巻きラップとを噛み合わせて圧縮室を形成し、前記旋回スクロール部品を自転拘束機構によって自転を拘束して円軌道に沿って旋回させ、前記固定スクロール部品の渦巻きラップと前記旋回スクロール部品の渦巻きラップとの間に形成される圧縮室が、容積を変えながら移動することで、吸入した冷媒を圧縮して吐出するスクロール圧縮機において、
前記冷媒として二酸化炭素を用い、
前記固定スクロール部品と前記旋回スクロール部品と軸受に囲まれた背圧室を形成し、
前記背圧室から前記固定スクロール部品の内部を通って吸入室へと連通している通路に、バルブを設けて背圧調整機構を構成し、
油溜まりに溜まった潤滑油は、シャフトの内部に形成された通路を通って、前記シャフトの上端部に導かれ、
前記シャフトの上端部に導かれた前記潤滑油は、前記旋回スクロール部品内に設けられた連通路を通り、前記連通路に取り付けられた絞り孔で減圧された後に前記背圧室に供給され、
前記背圧室の圧力が設定圧力より高くなると前記バルブを開いて前記背圧室のオイルを吸入室に供給し、
前記絞り孔を別部材として前記連通路内に組み付けることで、前記圧縮室内に供給する潤滑油量を、前記冷媒の吸入行程完了時に前記圧縮室内に閉じこめられている冷媒量に対して、2重量%以上20重量%未満の割合としたことを特徴とするスクロール圧縮機。 - 前記固定スクロール部品の吸入室の容積が、前記圧縮室の押しのけ容積の20%以上であることを特徴とする請求項1に記載のスクロール圧縮機。
- 前記潤滑油としてポリアルキレングリコールを主成分とするオイルを用いたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のスクロール圧縮機。
- 前記潤滑油としてポリオールエステルを主成分とするオイルを用いたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のスクロール圧縮機。
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