JP4180920B2 - 縫合糸のループ化を防止する心臓弁ホルダー - Google Patents

Description

【０００１】
（発明の分野）
本発明は、一般的に医療デバイス、およびより特別には、心臓弁、特に僧帽弁の生体人工器官置換体の埋め込みを容易にする器具、ならびに関連する方法論に関する。
【０００２】
（発明の背景）
哺乳動物において、心臓は、４つのポンピングチャンバーを有する中空の筋肉の器官である：それらチャンバーは、左心房および右心房ならびに左心室および右心室であり、各々その独自の一方向弁を備える。天然の心臓弁は、大動脈弁、僧帽弁（または二尖弁）、三尖弁および肺動脈弁として同定され、リーフレットを有し、心臓を通って指向性の血流を制御する。この弁は、各々環中にマウントされ、この環は、心房性筋線維および心室筋線維へ直接的または間接的のどちらかで結び付けられている密集線維環を含む。種々の外科技術は、疾患にかかった弁または損傷を受けた弁の修復に利用され得る。弁置換手術において、損傷リーフレットは切除され、環は弁置換を受容するように整形される。
【０００３】
心臓弁置換体または心臓弁人工器官の二つの基本型は、公知である。一つは機械型心臓弁で、ボールおよび籠の配置またはピボットのついた機械的閉鎖具を使用し、一方向の血流を提供する。他方は、組織型弁または「生体人工器官」弁で、この弁は天然組織弁リーフレットで構築され、このリーフレットは天然のヒト心臓弁により類似して機能し、可撓性の心臓弁リーフレットの自然な動きを模倣する。この心臓弁リーフレットは、交連を形成し、互いにシールし、一方向の血流を保証する。組織弁において、異種移植弁（例えば、ブタ）全体または多数の異種移植弁のリーフレット（例えば、ウシ心膜）は、周囲のステント構造内にマウントされた閉塞表面を提供する。人工器官弁の両方の型において、生体適合性の布で覆われた縫い物（ｓｅｗｉｎｇ）または縫合（ｓｕｔｕｒｅ）環は、機械型人工器官弁については弁体または組織型人工器官弁についてはステントの流入末端に提供される。
【０００４】
組織型人工器官弁を僧帽弁の位置に置く場合、交連ポストは、弁の死角にあり、前もって取り付けられた縫合糸と絡み合うようになり得、送達の間、環または組織を傷つけ得る。外科手術が、最小侵襲性のアクセスチャネルを通す（より通常になっている技術）場合、送達の仕事の困難さは、いっそう大きくなる。からまりの問題は、「縫合糸のループ化」と称され、心臓組織へ弁を接着またはマウントするのに使用する縫合糸が、一つ以上の交連ポストチップの内部のまわりに、不注意に巻きつけられることを意味する。この巻きつけが引き起こされる場合、ループ化された縫合は、きつく結び付けられる場合に組織リーフレットの一つを損傷し得、または少なくとも、埋め込み手順もしくは弁操作を妨害し得、弁リーフレットの最大癒合を防止し得、その結果、人工器官僧帽弁の欠損を得る。
【０００５】
いくつかの試みが、人工器官僧帽弁に対する現在のホルダーにおけるこれらの問題に打ち勝つためになされた。そのようなホルダーの例は、Ｃａｒｐｅｎｔｉｅｒらの米国特許第４，８６５，６００号であり、参考として本明細書中に援用される。Ｃａｒｐｅｎｔｉｅｒは、埋め込み前に、交連ポストを内部に圧縮する圧縮機構を有するホルダーを提供する。Ｃａｒｐｅｎｔｉｅｒのデバイスは、弁／弁ホルダーの組合せの埋め込まれている間の保持、そして交連ポストの内部への圧縮の両方のための、細長ハンドルを提供する。この弁は、一つ以上の縫合糸を使用して、製造業者によって弁ホルダーと結合され、この組合せは一単位として、輸送および保存される。弁置換手順の間、外科医は、ハンドルをホルダーに結合し、固定ナットを固定し、所定の圧縮された位置へ縫合ポストを固定する。次いで、この外科医は、弁の縫い物環を天然の弁環へ、環に前もって埋め込まれており、体の外部へ延長された一連の縫合を用いて接着する。次いで、この弁を、一連の縫合に沿って、所望の埋め込み位置へ前進させ、縫合を結びつける。ホルダーが自由に切られる場合、交連ポストは解放されて拡張して、ホルダーをハンドルを使用して除去し得る。しかし、交連ポストが圧縮される場合でも、例えば、一連の縫合のたるみは、布で覆われた交連ポストの一つのまわりでの縫合糸のループ化を誘導し得、これは、埋め込み手順を妨害する。
【０００６】
従って、必要とされるものは、縫い目のループ化を防ぐ、弁の流入末端へ接着可能な改良型組織型人工器官弁ホルダーである。
【０００７】
（発明の要旨）
本発明は、流入末端および流出末端ならびにその間に流れ軸を有する組織型人工器官心臓弁に対するホルダーを提供する。弁は、この弁の閉塞組織表面を支持する、流れ軸のまわりで円周方向に間隔を空けたポストを有する、流入末端でステントに接着する、環状縫合環を含む。この型の弁において、ポストはほぼ流出方向に一端が突出している。
【０００８】
本発明は、交連ポストが弁の前端を形成する方向で埋め込まれる、組織型心臓弁の交連ポストのまわりでの縫合糸のループ化を防止するための改善されたホルダーシステムを提供する。例えば、本発明は、僧帽弁に対する改善されたホルダーを提供する。一般に、本発明は、弁の交連ポスト間に延長する可撓性材料の配置に対する改善を提供する。各々の可撓性材料は、軸方向に、望ましくは、弁を通って延長し、弁の流入末端を支える剛直なホルダー構造へ２点で接続される。付着点の１つの近くで可撓性材料を切断することは、第２の付着点によって、剛直な構造と共に、弁からの材料全体の除去を可能にする。好ましい実施形態において、この剛直な構造は、可撓性材料を引っ張るための機構を組み込み、弁の交連ポストを内側へ屈曲させる。
【０００９】
１つの特定の実施形態において、縫合糸のループ化を防止するための、弁の流出末端を横切ってピンと張った様式で延長する、複数本の可撓性材料であって、この材料の各々が、直接、隣接する交連ポスト間に延長し、交連ポストに隣接する材料各々の近くで交差する第１のセグメントを有する材料を含む、ホルダーを提供する。可撓性材料は、縫合糸であり得、またはポリエステルのような生体適合性材料のバンドを含み得る。後の例では、材料のバンドは、各々の交連ポストを完全に覆い得、材料の隣接するバンドは、交差し得る。
【００１０】
本発明の他の実施形態において、このホルダーは、縫合糸のループ化を防止するための、弁の流出末端を横切ってピンと張った様式で延長する、複数本の可撓性材料であって、各材料が、厚いというよりも実質的により広いバンドで、直接的に隣接する交連ポスト間に延長する、第１のセグメントを有する材料を含む。可撓性材料の各々は、２つの隣接する交連ポストに沿って第２のセグメントで延長し、２点で剛直な構造に付着され得る。望ましくは、この交連ポストは、布で覆われており、第２のセグメントは、第１のセグメントほどの広さではない配置の布の覆いの下を通過する。
【００１１】
本発明のさらなる局面において、このホルダーは、リーフレットの流入側から流出側への弁の軸に沿って延びる中央の直立する部材を含む。複数本の可撓性材料は、縫合糸のループ化を防止するための弁の流出末端を横切ってピンと張った様式で延長し、第１のセグメントを有する各々の可撓性材料は、交連ポストの１つから、中央の直立する部材へ放射状に内側へ延長する。中央の直立する部材は、中空であり得、この部材の中に入りそして通過する各々の可撓性材料を有し得る。
【００１２】
あるいは、この直立する部材は、中実であり得、可撓性材料の第１のセグメントの中点を受容するための切れ込みを含み得る。この場合、各々の第１のセグメントは、交連ポストの一つから放射状に内側へ、この直立する部材に延長し、そして切れ込みを介して、放射状に外側へ隣接する交連ポストに延長する。この直立する部材は、縫い物環を支える、ホルダーの剛直な構造に付着される末端の広い基部を含む。細いシャフト部は、広い基部から延長し、リーフレットの間を通ってその流出側へ移動する。細いシャフトは、三角形のような、非円形横断面を有し得、長期の保存によるリーフレットの変形を減少する。
【００１３】
このホルダーは、弁の流入側で縫合環を支えるように、サイズを決められ、形どられた弁台部分を含み得る。このホルダーは、さらに、交連ポスト圧縮機構と作動可能に接続されるよう適合されたハンドルによって作動される場合、弛緩された位置から圧縮された位置まで、放射的に内へ交連ポストを圧縮するために適した交連ポスト圧縮機構を含み得る。ハンドルが除去された後、圧縮される位置で、交連ポスト圧縮機構を保持する、保持機構もまた提供され得る。
【００１４】
１つの実施形態において、交連ポスト圧縮機構は、調整する部分と弁台部分の間の距離を調整するために適した調整する部分および調整する部材ならびに調整する部分に付着され、調整する部分の遠位において交連ポストの末端を通って縫合される１つ以上のフィラメント含む。調整する部材が、調整する部分を弁台部分から分離するために操作される場合、調整する部位がフィラメントを引っ張る。そのフィラメントは、次に、調整する部分の遠位側の交連ポストの末端を、放射状内向きに、圧縮される位置へ、動かす。
【００１５】
弁台部分は、平板形状であり得、弁台部分に実質的に相補的な平板形状の調整部分を伴う。弁台部分の平板形状は、中心体から縫合環の部分の覆いへ広がる複数の突起部を含むことが好ましい。このように、十分な数の縫合環は、露出したままであり、縫合環をネイティブの環へ縫合することを可能にする。
【００１６】
弁台部分と調整部分の間の距離の調整は、調整部分の中心のねじ山付きの穴、およびこのねじ山付きの穴と共同する調整部材を提供することによって達成され得る。この構成において、弁台部分に隣接する調整部材の末端は、操作の間、弁台部分を支える。この調整部材が、調整部分の中心の穴を介して前進する場合、この調整部材は、弁台部分を押し、そしてこれら２つの部分が離れる。
【００１７】
ハンドルは、調整部材に適切に作用するように接続され、外部にねじ山の付いた末端部分を有するハンドルおよびこのハンドルのねじ山付きの末端を受容するように大きさを決められた、ねじ山の付いた穴を中心に縦方向に有する調整部材を提供することによって、この調整部材を回転させる。ハンドルが、穴に導入された場合、そのハンドルは第１の方向に回転され、調整部材のねじ山の付いた穴に取り付ける。調整部材のさらなる回転は、調整部分を弁台部分から分離し、上記に記載のように、交連ポストが、内側へ圧縮されるようにする。
【００１８】
本発明の性質および利点のさらなる理解は、特に、類似の部分が類似の参照数を有する添付の図面に関して考慮する場合、以下の発明の詳細な説明および特許請求の範囲に示される。
【００１９】
（好ましい実施形態の説明）
本発明は、移植を容易にし、縫合糸がもつれる可能性を減少する、組織型人工器官心臓弁に対する改善型心臓弁ホルダーを提供する。本発明のホルダーは、それらの間に可撓性のリーフレットを支持する交連ポストを流出側に有する人工器官僧帽心臓弁に対して、特に有用である。僧帽弁の位置は、流出側（および交連ポスト）が、移植の間に、左心室に向かって遠位に突き出すような位置である。従って、ホルダーを、弁の流入（すなわち、接近しやすい）側に取り付けなければならない。弁の僧帽弁の位置への送達は、輪の周りに前もって取り付けられ、そして、弁縫い物環を通り抜ける複数のまたは一連の縫合糸に沿って、弁を滑らせることを含む。本発明のホルダーは、交連ポストを、放射状に内部へ圧縮し、これによって、一連の、前もって取り付けられた縫合糸において、ポストのもつれを防止することを補助する。従って、この利点は、心臓弁の流出側および交連ポストが、送達の間、遠位で拡張され、弁の前端を形成する場合、特に利点であり、これは、人工器官僧帽弁移植においてそうである。それにも関わらず、本発明のホルダーは、僧帽弁の位置以外の心臓弁の移植に対して有用であり、そして、本発明は、それに適用可能であることを、証明し得る。
【００２０】
今、図１に関して、組織型心臓弁２２に接着された、本発明の例示的なホルダー２０を示す。心臓弁２２は、流入側の環状縫い物環２４、およびほぼ流出方向に軸方向に突き出す複数の交連ポスト２６を含む。ホルダー２０は、弁２２の流入側で縫い物環２４に付着し、それはまた、移植の間近位（すなわち、接近しやすい）側にある。つまり、交連ポスト２６は、弁２２の流外側に向かって遠位に突き出し、移植の間に弁の前端を規定する。
【００２１】
心臓弁２２は、さらに、交連ポスト２６によって支持され、そしてそれらの間に延びる複数の可撓性リーフレット２８を含む。リーフレット２８は、弁２２の閉塞表面を提供し、例えば、ウシ心膜の個々の断片から作製され得る。あるいは、リーフレット２８は、全異種移植片、または同種移植片の一部であり得る。前者の例において、天然のブタ（ｐｏｒｃｉｎｅ）（ブタ（ｐｉｇ））の弁が、特に有用である。従って、リーフレット２８は、種々の材料から形成され得、その材料はどれも本発明について、どのような制限も与えないことを理解するべきである。さらに、好ましくは、３つの交連ポスト２６に対応するそのような３つのリーフレット２８が存在する。
【００２２】
心臓弁２２に対する種々の構成は、公知であり、それは、金属またはプラスチックのステント要素、縫い物環２４に対する、シリコーンまたはウレタンのインサート、一つ以上の要素の周りを覆う生体適合性布地（すなわち、ポリエステル）などである。好ましい実施形態において、心臓弁２２は、直立する交連によって複数の弓形の尖頭が接続された波状の形態を有する、内部の金属ワイヤーフォーム（示さず）を含む。ワイヤーフォーム交連は、弁の交連ポスト２６について内部構造を提供し、そして、内部に曲げ得るかまたは内部に一端を飛び出し得るように、いくぶん可撓性である。本発明のホルダー２０は、この屈曲を容易にするが、本発明は、交連ポストの内部への動きを引き起こすことなく、最も広い意味で行われ得る。本発明のホルダー２０が同様に機能し得る可動性の交連ポストを有する、心臓弁２２の他の内部の構成が、同様に有用であることに、留意するべきである。
【００２３】
本発明の例示的なホルダー２０は、３つの相対的に可動な要素の剛直な構造体を備える。板状の弁台部分４０は、縫い物環２４の流入側に横たわり、その周辺部あたりに複数の通し穴を含む。板状交連調整部分４４は、弁台部分４０の形状をほぼそっくり模倣し、複数の周辺通し穴４６もまた含む。さらに、調節部分４４は中心に位置し、そして、他の部分はほぼ平面の調整部分から近位の方向に突出する、内部にねじをきられた突出部４８を含む。最後に、それの上に外部ねじを有する調整部材５０は、突出部４８の内部ねじと嵌合する大きさをしている。弁交連を収縮させる際のホルダー２０の機能は、示されるホルダーとは異なる構造を用いて達成され得ることが理解されるべきである。
【００２４】
交連ポスト２６のチップ６２の間で、部分的に延長する、複数本の可撓性物質６０を、図１〜図３に示す。好ましい実施形態において、可撓性物質６０は、モノフィラメント縫合糸またはポリフィラメント縫合糸を含み、この例示的命名法は、本明細書中で使用される。３つの交連ポスト２６が存在するので、正三角形配置において、それらの間で延長する少なくとも３本の縫合線６０が存在する。縫合糸６０の各々は、２つの交連ポスト２６の間にまたがる第１セグメント６１を含む。各々の縫合糸６０の第２のセグメント６３は、チップ６２からポスト２６に沿って、近位の方向に軸方向に延長し、そのセグメントは、縫い物環２４を通り抜け、ホルダー２０に付着される。これは、図１の斜視図において最もよく見られる。具体的には、両方の第２のセグメント６３は、弁台部分４０の穴を通り抜け、例えば、各々の縫合糸の自由端を結びつけることによって、別々の付着点で調整部分４４へ付着する。この方法では、各々の縫合糸６０は、調整部分４４への付着点の１つの近くに密着し得、残りの接着点によってホルダー２０と共に弁２２から自由に引かれ得る。この配置のさらなる特性は、２０００年７月２７日に出願された、同時係属中の米国出願番号第０９／６２６，５７０号、および本願と同日に出願された第０９／６２６，５７０号の部分係続出願に見られ得る（これらの全体の開示は、参考として特に本明細書中に援用される）。
【００２５】
記載したように、台部分４０、調整部分４４、および調整部材５０は、相対的に可動である。つまり、調整部分５０は、台部分４０と調整部分４４の間の相対的軸変位を（好ましくは、ハンドル５２をそれらに接続することによって）引き起こすように適合される。台部分４０は、縫い物環２４に対してとどまっているので、調整部分４４は、台部分から離れて近位に並進し、弁２２に付着される。縫合糸６０が、調整部分４４に付着しているので、これらもまた、近位の方向に引っ張られる。さらに、縫合糸６０の長さの第１のセグメント６１が、２つの交連ポスト２６の間にまたがるので、調整部分４４および接着された第２のセグメント６３の近位の動きは、交連ポスト２６を縫い物環２４に隣接した弁２２内のこれらの構造的付着点からほぼ内側に屈曲させて、チップ６２の放射状の内側への動きを引き起こす。
【００２６】
交連ポストチップ６２の内側への屈曲は、チップのまわりの縫合糸のループ化の可能性を減少するが、本発明の特定の局面が、チップの屈曲さえも伴わずに、縫合糸のループ化を減少することは、はっきりと理解されるべきである。すなわち、縫合糸６０は、交連のたわみを引き起こす相対的に動く要素を伴わずに、単に弁と隣接するホルダーの剛直な構造に付着し得る。
【００２７】
図１〜図３に関して、別々の縫合６０の配置は、今、記載される。望ましくは３つの等しい長さの縫合糸が存在し、各々その２つの自由端で、調整部分４４にしっかりと留められる。記載されるように、第２のセグメント６３は、調整部分４４および台部分４０の配列された穴４６を通り抜け、そして、縫い物環２４を通り抜け、第１の交連ポスト２６に達する。そこから、第２のセグメント６３は、ほぼ軸方向に、近位の交連ポスト２６のチップ６２に続き、そして、第１のセグメント６１は、弁２２の流出側に斜めにまたがって、２つのチップを構造的に連結する。各々の交連ポスト２６は、望ましくは、布の覆いを有し、そして、縫合糸６０は、少なくとも１回、チップ６２でまたは各々のポスト２６に沿って布の覆いを通り抜けることを留意するべきである。例えば、図３は、チップ６２で布の覆いの下を通過する第１のセグメント６１を示し、そして図１は、少なくとも１回、その布を通り抜ける第２のセグメント６３を示す。この糸を通された通路は、これらの前もって決定された通路に沿って縫合糸６０を導く。これら縫合糸を布の覆いから離して引くことによって、ホルダーと共に縫合糸６０を弁２２から除去することは、単純な問題である。
【００２８】
図２および図３に最もよく見られるように、各々の縫合糸６０の第１セグメント６１は、送り先のチップから最も遠くにある、それぞれの交連ポストチップ６２の周辺側から延長する。すなわち、３本の縫合糸６０ａ、６０ｂ、６０ｃは、３つの交連ポストチップ６２ａ、６２ｂ、６２ｃ（時計回りの命名法を使用する）の間に延長することが、図２で見られる。第１の縫合糸６０ａの第１のセグメント６１は、第１の交連ポストチップ６２ａの反時計回り側から、第２の縫合ポストチップ６２ｂの時計回り側に延長する。従って、他の２本の縫合糸は、それぞれの交連ポストチップ６２を通り抜ける（すなわち、そのチップから放射状に内側へ）直前に、各２本の隣接する縫合糸が交差する（ｃｒｏｓｓ ｏｖｅｒ）（すなわち、交差する（ｉｎｔｅｒｓｅｃｔ））ように、配置される。縫合糸６０の交差は、各々の交連ポストチップ６２に厳密に近位の、平面部または滑動部を規定する。交差された縫合糸６０によって形成される平面部または滑動部は、縫合糸のループ化の防止を補助する。なぜなら、各々のポストチップ６２にわたる緩い縫合糸を導くある種の障壁を提供するからである。
【００２９】
記載されたように、そして図１に見られるように、各々の縫合糸６０の第２のセグメント６３は、それぞれの交連ポスト２６に沿って軸方向に続き、それの上にある布の覆いの内外に通り抜け得る。望ましくは、第２のセグメント６３の第２の交差を、交連ポスト２６に提供し、各々の末端を適切な方向で調整部分４４に留めることを保証する。従って、図１に見られるように、見られる２つの交連ポスト２６の間に延長して見える縫合糸６０は、弁２２およびホルダー２０を上向きに通り抜けて延長し、最も近い配列された穴４６から（図示されるように）現れ、そして切断ガイドに留められる。従って、この２重の交差は、外科医が、どの交連ポスト２６の間に、どの縫合糸６０が延長したかを同定するのを補助する。
【００３０】
図４および図５は、図１から図３の交差された繊維状の材料に類似して、交連チップの上の平面の防護物もまた提供する、縫合糸のループ化を防止するための、本発明の心臓弁ホルダーの第２の実施形態を例示する。一般的に、図４〜図５のホルダーは、縫合糸６０の代わりに、可撓性のバンド７０ａ、７０ｂ、７０ｃの置換を伴って、上記のホルダーと同一である。このバンド７０は、ポリエステルテープまたは縫合糸に類似する他の適切な生体適合性の材料で作られ得る。一つの実施形態において、バンド７０は、厚いというよりも実質的に広く（例えば、テープまたは平坦な細長い一片において形成される）、望ましくは、各々の交連ポストチップ６２の円周の幅にほぼ等しい幅を有する。
【００３１】
図５に最もよく見られるように、バンド７０の第１のセグメント７２は、平板化された配置で、交連ポストチップ６２の間に延長し、チップで、またはチップからわずかに内側で、各々の隣接するバンドと交差する。交連ポストチップ６２の外側への延長後、各々のバンド７０は、折り曲げられ、撚られ、または、そうでなければ、第２のセグメント７４で狭められ、交連ポスト２６に沿って、一つ以上の布のトンネル７６を通り抜ける。最後に、各々の狭められた第２のセグメント７４は、上記のように、台部分４０および調整部分４４中の配列された穴を通り抜け、調整部分に留められる。図４〜図５のホルダー２０についての機構は、台部分４０および調整部分４４の分離が、バンド７０の狭められた第２のセグメント７４を引っ張り、交連ポストチップ６２の間の平板化された第１のセグメント７２を短くする点で、上記に記載の機構と類似する。各々の第２のセグメント７４が引っ張られる場合、第１のセグメント７２は、それが交連ポスト２６の布の覆いを通り抜けるにつれて、追随し、そして折り曲げられるかまたは、他の様式で、狭められる。さらに、ホルダーが除去される場合、各々のバンド７０の第２のセグメント７４の１つは、ホルダーへのセグメントの付着点の近くで切断され、そしてこのバンド７０は、ホルダーへの残存する付着によって、弁から制限を受けずに引っ張られ得る。このことについて、バンド７０は、ＴＥＦＬＯＮ（登録商標）（ＰＴＦＥ）であり、弁中の布のトンネルを通る滑動を容易にすることが可能である。
【００３２】
平板化されたかまたは他の様式で平面状配置であるバンド７０に起因して、交連ポストチップ６２のまわりの縫合糸のループ化は、大いに減少される。すなわち、バンド７０に接触する縫合糸は、各々の交連ポストチップ６２を超えて外側へ導かれる。バンド７０は、交連ポストチップ６２の上の、ゆるんだ縫合糸を導くある種の滑動部を提供し、そして、好ましい実施形態において、バンドは、チップを完全に覆い、滑らかな平らな表面を提示する。
【００３３】
図６〜図８は、縫合糸のループ化を防止する心臓弁ホルダーの実施形態をさらに提供する。図７に最もよく見られるように、複数本の縫合糸８０は、まず中央の直立する部材８２に延長し、交連ポストチップの上方に縫合糸を上げるが、それらの縫合糸は、前記のように、弁の流出側を横切って、交連ポストチップ６２の間に延長する。直立する部材８２は、縫合糸８０が通り抜ける、部材の中の複数の溝または切れ込みを有する上端８４を有する。直立する部材８２は、交連ポストチップ６２を軸方向に越えて上がるように示されるが、減少された縫合糸のループ化のいくつかの利点は、その部材がポストチップと同じ軸方向の高さを有する場合に、実現され得る。
【００３４】
この直立する部材８２の例示的な実施形態を、図８Ａ〜図８Ｃに示す。この部材８２は、広い基部８６、および上端８４で終結する狭いシャフト部８８を含む。３つのほぼ放射状の溝９０は、互いに関して約１２０°で配置されて、上端８４に形成される。これらの溝９０は、交連ポストチップ６２の１つと、互いに位置を調整され、それから延長する縫合糸８０を受ける。この直立する部材８２の下部のピン９２は、弁台部分４０の中心に提供される中心の穴内に適合する。あるいは、この直立する部材８２は、弁台部分４０と一体的に成形され得る。広い基部８６は、直立する部材８２を補強し、シャフト部８８は、交連ポスト２６の上方に、軸方向に突き出す長さを有する。
【００３５】
図７に見られるように、直立する部材８２の上端８４の溝９０に縫合糸８０を通すことによって、ある種のテント状物が提供される。この縫合糸テントは、交連ポストチップ６２のまわりでの縫合糸のループ化を防止する役に立つ。つまり、任意の、ある角度に曲がった縫合糸８０に接触する、誤った縫合糸を、最隣接の交連ポストチップ６２の上およびそれにわたって導く。
【００３６】
直立する部材８２’の代替的な実施形態を、図８Ｄに例示する。前出の実施形態と同様に、この部材８２’は、広い基部８６’。および上端８４’で終結する狭いシャフト部８８’を含む。この上端８４’は、互いに関して約１２０°で配置される３つのほぼ放射状の溝９０’を有する。このシャフト部８８’は、弁およびホルダーのアセンブリで周囲のリーフレットとよりよく一致するように、円形の横断面とは対照的に三角形の横断面を有する。すなわち、３つのリーフレットは、望ましくは、弁の軸において、一緒になって正三角形になり、直立する部材８２’は、三角形のシャフト部８８’の角が、各々の弁交連のほうへ突出し、従って、２つのリーフレットを二又に分けるような方向にされる。この方向で、各々のリーフレットの自由縁の中点は、シャフト部８８’の平坦な側面を支え、保存溶液中での長期の保存の間に、シャフト部８８’との延長された接触由来の、その中点でのリーフレットの任意の変形を最小にする。
【００３７】
図９および図１０は、中央の直立する部材１００を同様に使用するが、この部材１００は中空であり、縫合糸１０２は、部材を通って軸方向に延長し、弁台部分４０または調整部分４４のいずれかに接続される、本発明の心臓弁ホルダーをさらに例示する。縫合糸１０２は、フィラメントもしくは撚り糸であり得、または図４〜図５に関して上記に記載されるように、より広いバンドであり得る。直立する部材１００は、弁台部分４０内に固定された、またはそれと共に成形された中空のチューブ状構造であり得る。さらに、直立する部材１００の軸方向の高さは、縫合糸１０２が、弁の流出末端を横切ってテント状になるように、交連ポスト２６の軸方向の高さよりも高い。
【００３８】
本発明は、図面に示されるような特定の実施例または好ましい実施形態を参照して、本明細書の上記に記載されたことは理解される。種々の追加、削除、変更および改変は、本発明の意図される真意および範囲から逸脱することなく、上記の実施形態および実施例になされ得る。それに応じて、そのような追加、削除、変更および改変全ては、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【図１】 図１は、組織型心臓弁の流入側に組み立て、本発明の心臓弁ホルダーの斜視図である。
【図２】 図２は、図１の弁およびホルダーの流出末端の平面図である。
【図３】 図３は、図１で示される弁の交連の一つの切取斜視図である。
【図４】 図４は、本発明の代替の心臓弁およびホルダーの、流出側の平面図である。
【図５】 図５は、本発明の代替の心臓弁およびホルダーの、斜視図である。
【図６】 図６は、中央の直立する部材を有する、本発明の、さらに代替的な心臓弁およびホルダーの、流出側の平面図である。
【図７】 図７は、中央の直立する部材を有する、本発明の、さらに代替的な心臓弁およびホルダーの、斜視図である。
【図８】 図８Ａ〜８Ｃは、図６および図７のホルダーにおける直立する部材のいくつかの図である。
図８Ｄは、図６および図７のホルダーの、三角形の断面を有する代替的な直立する部材の斜視図である。
【図９】 図９は、中空の、中央の直立する部材を有する、本発明の、なおさらに代替的な心臓弁およびホルダーの、流出側の平面図である。
【図１０】 図１０は、中空の、中央の直立する部材を有する、本発明の、なおさらに代替的な心臓弁およびホルダーの、斜視図である。

Claims (10)

1. 外科的送達ハンドルに付着可能な、組織型人工器官心臓弁のためのホルダーであって、
   該心臓弁は、流入末端および流出末端ならびにそれらの間の流れ軸を有し、
   該弁は、
   該流入末端の環状縫合環、および
   該弁の閉塞組織表面を支持する、該流出末端のまわりで円周方向に間隔を空けた、ほぼ軸方向に延長する複数の交連ポスト
   を含み、
   該ホルダーは：
   縫合糸のループ化を防止するために、該弁の該流出末端を横切ってピンと張った様式で延長する、複数本の可撓性材料であって、該可撓性材料の各々が、第１のセグメントを有し、該第１のセグメントが、
   直接、隣接する交連ポスト間で延長し、
   隣接する各材料と、それらの間の該交連ポストから放射状にすぐ内側で交差する、
   材料
   を含む、ホルダー。
2. 請求項１に記載のホルダーであって、前記可撓性材料が縫合糸を含むことで特徴付けられる、ホルダー。
3. 請求項１に記載のホルダーであって、前記弁の前記流入末端において環状縫い物環を支える剛直な構造によって特徴付けられ、
   前記可撓性材料が、
   ２つの隣接する交連ポストに沿って第２のセグメントにおいて軸方向に各々延長し、 そして各々のセグメントが、該剛直な構造への付着点の１つの近くで切断され得、残りの付着点によって該剛直な構造と共に該弁から離して引かれ得るように、２点で該剛直な構造に付着する、
   ホルダー。
4. 請求項３に記載のホルダーであって、前記剛直な構造が、該剛直な構造の方へ前記第２のセグメントを引っ張るための機構を含み、
   該引っ張りが、前記第１のセグメントを短くし前記交連ポストを互いに向かって内側に屈曲させる
   ことで特徴付けられる、ホルダー。
5. 各々の可撓性材料の前記第１のセグメントが、バンドを含むことで特徴付けられ、該バンドの幅方向の長さは、該バンドの厚さ方向の長さよりも実質的に長い、請求項１に記載のホルダー。
6. 請求項５に記載のホルダーであって、前記弁の前記流入末端において環状縫い物環を支える剛直な構造によって特徴付けられ、
   ３本の前記可撓性材料が、
   ２つの隣接する交連ポストに沿って第２のセグメントにおいて軸方向に各々延長し、そして
   各々のセグメントが、該剛直な構造への付着点の１つの近くで切断され得、残りの付着点によって該剛直な構造と共に該弁から離して引かれ得るように、２点で該剛直な構造に付着する、
   ホルダー。
7. 請求項６に記載のホルダーであって、前記交連ポストが布で覆われており、前記第２のセグメントがそれぞれの交連ポストの布の覆いの下を通過し、該第２のセグメントが、前記第１のセグメントほど広くない配置を有することで特徴付けられる、ホルダー。
8. 請求項１に記載のホルダーであって、
   前記可撓性材料が、２つの隣接する交連ポストに沿って、第２のセグメントで各々軸方 向に延長し、前記弁の前記流入末端で、環状縫い物環を支える構造に付着することで特徴付けられ、
   ここで、２つの隣接する可撓性材料の第２のセグメントが、該構造に付着する前に、共通の交連ポストに沿って２回目に交差する、
   ホルダー。
9. 請求項８に記載のホルダーであって、
   各々の可撓性材料が、剛直な構造への付着点の１つの近くで切断され得、そして残りの付着点によって該剛直な構造と共に前記弁から離して引かれ得るように、２点で該剛直な構造に付着する
   ことで特徴付けられる、ホルダー。
10. 請求項５に記載のホルダーであって、前記バンドがポリテトラフルオロエチレン（ＰＴＦＥ）であることで特徴付けられる、ホルダー。

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