JP4174318B2 - 音響再生システム - Google Patents

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Description

【0001】
この発明は音響再生システムに関連するものである。
この発明は特に、しかしながらこれに限らず、記録空間内の例えばある概念的な頭の耳の位置で記録された信号が、複数のスピーカ・チャンネルを通して再生されることにより聴取空間内に再現されるような音の立体的再生に関係するものである。
【0002】
記録空間内で得られる聴覚上の効果に相当する効果を聴取空間内に合成することを目的とするシステムである。
1.はじめに
1.1発明の背景
架空の(その場には現実には存在しない)音環境を聴取者に提示するためにバイノーラル技術 [1]−[3] がしばしば用いられる。この技術の原理は、聴取者の耳の位置で再現された音場が仮に聴取者が目的とする(現実の)音場にいた場合に生み出される音場と一致するように音場を制御することである。これを達成する一つの方法は、一対のスピーカ(電気音響変換器)を聴取空間内の異なる位置に置き、信号処理の助けを借りて適当なバイノーラル(両耳)信号が聴取者の耳で得られるようにすることである。[4]−[8]
後の第2章において、このようなスピーカを用いたバイノーラル合成に伴うマルチ・チャンネル・システム逆変換に起因する数多くの問題点について議論する。自由音場伝達関数モデルによる基本的な解析により、このようなシステムがもつ根本的な問題点を説明する。システム逆変換に要求される増幅量は、ダイナミックレンジの損失につながる。得られた逆フィルタは、たちの悪い周波数の周辺で大きな誤差を持ちやすい。実用的なフィルタを設計するためにレギュラライゼーション(規正化)という手法がよく用いられるが、これはまたたちの悪い周波数の周辺で制御効果の低下をもたらす。聴取者の体(耳介、頭部など)が存在する条件下において聴取者の耳の位置で音響信号が制御されているような、より現実的なプラント(系)行列を用いた解析でも以上のことが問題であるということを示す。
【0003】
1.2発明の概略
発明の一側面によると、一つの音響再生システムは電気音響変換部と、複数チャンネルの音響信号に応じて電気音響変換器を駆動するための変換器駆動部を含み、電気音響変換器は相互に距離をおいて配置して用いられる複数の音響放射器を含み、変換器駆動部は音響放射器の特性や予定する聴取者の耳との相対的な位置関係を考慮して、また聴取者の頭部伝達関数を考慮して、仮想の録音空間内の聴取者の耳の位置に存在するであろう局所的な音場近似した音場を聴取者の場所に再生する目的で設計・構成されたフィルタ部を含み、この中で電気音響変換器は少なくとも2対の音響放射器を含み、前記の音響放射器対のうち第1のペアは、前記の第2の音響放射器対よりも広い間隔に配置することを意図し、前記の第1の前記の放射器対は比較的低音域での使用に適し、前記の第2の放射器対は比較的高音域での使用に適し、その配置は前記の低音域の駆動出力信号は前記の第1の放射器対を励振し、前記の第2の周波数帯域の駆動出力信号は前記の第2の音響放射器対を励振するように構成されている。
ここで、変換器の有効間隔/周波数範囲が、
f=(n±ν)c0/4ΔrSin(Θ/2)
の式によって定められ、ここで、変換器間隔Θは視聴者からみた、ある変換器対の開き角であり、nは奇数であり、c0 は音速であり、Δrは両耳の間の等価間隔であり、ν≦0.7である。
【0004】
従って、聴取者からみた開き角が異なる音響放射器対を用意し、その角度は異なるペアにより放射される音の周波数帯域に依存する。
音響放射器は在来のスピーカのような不連続な形でもよいし、引き伸ばされたような変換器の一部分の面で構成されていてもよい。
【0005】
この発明はサブウーファーのような付加的な電気音響変換器の使用を除外するものではないことを認識すべきである。
変換器の有効間隔・周波数範囲は次式で決定される。
【0006】
【数3】
Figure 0004174318
(a)
すなわち、
【0007】
【数4】
Figure 0004174318
(b)
前述の等式(a)においてだいたいn=1であることが理想であり、間隔・周波数範囲にある幅を生み出すために例えば±0.7の「許容値」を適用することができる。このようにn=1を所望の周波数幅の中心周波数にあててもよい。
【0008】
の式は自由音場モデルから得られた等式(a)と(b)の周波数・間隔特性を頭部による回折が存在するような現実的な状況に合わせるための補正係数である。
【0009】
【数5】
Figure 0004174318
Δr0:両耳間の距離 (約0.12〜0.25m)
有効周波数・間隔範囲を定義するための信号レベルは理想的には受聴位置(耳)で検知されたものであるべきであることに注意しなくてはならない。 なぜならある変換器対の出力信号の有効周波数範囲外には、プラント(系)行列の特性によりお互いに打ち消しあい、耳の位置では小さな信号レベルとなるが、比較的大きなレベルの出力信号が含まれているかも知れないからである。(クロスオーバー・フィルタがない場合に比べれば小さいものの、システム逆変換を用いない在来のマルチ・ウェイ方式のステレオ再生に比べると大きいかもしれない
【0012】
当な周波数帯域の信号を適当な音響放射器対に分配するためにクロスオーバー・フィルタを用いてもよい。クロスオーバー・フィルタが前述のフィルタのうち逆フィルタ (Hh,Hl)の出力に応答するように構成してもよい。あるいは前述のフィルタのうち逆フィルタ (Hh,Hl)がクロスオーバー・フィルタの出力(dH,dl)に応答するように構成してもよい。
【0013】
第2の音響放射器対は5.5°から10°の変換器間隔を持つことが好ましい。
第2の音響放射器対は6°から8°の変換器間隔を持つことがより好ましい。
【0014】
第1の音響放射器対は60°から180°の変換器間隔を持つことが好ましい。
第1の音響放射器対が110°から130°の変換器間隔を持つことが好ましいことがある。
【0015】
また、第1の音響放射器対が60°から180°の変換器間隔を持ち、第2の音響放射器対が30°から34°の変換器間隔を持ち、第3の音響放射器対が6°から8°の変換器間隔を持つような、3対の音響放射器が配置されることが好ましい場合がある。
【0016】
可聴範囲の低域側の周波数範囲でレギュラライゼーションを駆動出力信号に加えるようフィルタを構成してもよい。
非常に低い可聴周波数に応答するためにサブウーファーを用意してもよい。
【0017】
音響放射器が引き伸ばされたような(伸張した)変換器の一部分の面で構成されている場合には、この伸張した変換器は、細長い音響放射部のペアで構成され、各部の音響放射面は基端と末端を持ち、基端はお互いに近接しておかれ、駆動出力信号に応じて放射部に振動を伝えるための励振器が前記の放射部の前記の基端に隣接する部分に据え付けられ、放射部の振動伝達特性は放射部に沿って末端に向かう高い周波数の振動伝達が抑制されることによって前述の放射面の基端は末端より高い周波数で振動させられるように選ばれることが好ましい。
【0018】
1.3これ以降この発明がさらに、しかしあくまでも単なる一例として、添付図を引用しながら記述される。
1.4システム逆変換を用いた複数チャンネル音響制御の原理
複数チャンネル音響制御にシステム逆変換がよく用いられる。このようなシステムの原理を、後の解析の便宜上、スピーカによる2チャンネルのバイノーラル再生を例として以下に記述するとともに図1に示す。(聴取者の両耳など)2点における(バイノーラル音響信号のような)2つの信号の独立制御は、変換器への入力信号をプラントの伝達関数行列の逆行列でフィルタリング(濾波)することにより、(スピーカのような)2つの電気音響変換器を用いて達成できる。関連する信号と伝達関数を次のとおり定義する。2個のモノポール変換器(制御音源)が複素ベクトルの要素 v=[ν1(jω)ν2(jω)]Tで定義される音源の強さを持っている。これが両耳(制御点)でベクトルの要素 w=[w1(jω)w2(jω)]Tで与えられる音圧信号を生み出す。Cを音源と制御点の間の伝達関数行列とすると
w = Cv (1)
である。受音点にて合成したい2つの音響信号は複素ベクトルの要素 d=[d1(jω)d2(jω)]Tで定義される。オーディオへ応用する場合、通常これらの信号は両耳に供給されたときに所望の仮想聴覚感覚を生み出すような信号である(図1)。これらは、例えば、録音頭を用いて音源信号uを空間特性Aとともに録音したり、合成バイノーラル・フィルタ行列Aで信号uをフィルタリングしたりすることで得られる。従って、逆フィルタを含むフィルタ行列Hを v=Hdとなるよう導入する。ここで、
【0019】
【数6】
Figure 0004174318
(1)
であり、すなわち
w = CHd (2)
である。
【0020】
また後の解析の便宜上、
R = CH (3)
で与えられる制御効果行列Rを定義する。
ベクトルwがベクトルdをよく近似するように、適当な遅延を用いてフィルタ行列Hを設計することができる。[9][10]
2.既存のシステムの根本的な問題点
これに伴うシステム逆変換は、例えばダイナミック・レンジの損失や誤差を増幅するなど、数多くの問題点を引き起こす。ここではまずはじめに自由音場下で2つのモノポール変換器(音源)を用いて2つのモノポール受音器を制御するような簡単な例を考える。システム逆変換に内在する根本的な問題点はこのように行路差の影響が支配的であるような単純な条件を用いて説明することができる。頭部伝達関数(HRTF)行列もより現実的なプラントの例として解析される。このような場合には、(耳介、頭、胴体などの)人体の音響応答も影響することとなる。システムの基礎的な特性を調べることが目的なので、受音点間軸が音源間軸に平行で左右対称である条件で解析を行う。制御音源と制御点の位置関係を図2に示す。
【0021】
2.1逆フィルタ行列
自由音場内の場合、プラント伝達関数行列は以下のようにモデル化できる。
【0022】
【数7】
Figure 0004174318
(4)
ここでは、時間依存性ej ω t が k=ω/c0とともに仮定されており、ρ0 とc0は密度と音速である。1つの音源と2つの受音点を結ぶ行路の比と差をg=l1/l2,Δl=l2−l1と定義すると、
【0023】
【数8】
Figure 0004174318
(5)
である。ここで
【0024】
【数9】
Figure 0004174318
(6)
である場合を考える。すなわち、それぞれもう一方の音源の妨害(クロストーク)なしに近いほうの単一の音源(それぞれD1(jω)またはD2(jω))により生成される音圧信号が所望の信号がであるという場合である。これにより解が因果律を満たすとともに逆変換の影響のみを抽出(基準化)できる。逆フィルタ行列Hの要素はCの逆行列そのものから得られ、
【0025】
【数10】
Figure 0004174318
(7)
と書くことができる。 l>>Δrのとき、2θを音源間隔とすると Δl≒Δrsinθ と近似することができ(よって0<θ≦(π/2))、この条件下では、
【0026】
【数11】
Figure 0004174318
(8)
となる。Hの各要素の振幅(|Hmn(jω)|)はHに含まれるそれぞれの逆フィルタにより要求される所望の信号の必要増幅量を表す。音源の強さの最大増幅量はHの2ノルムにより求めることができ、これはHの特異値のうち最大のもので、これらの特異値はσiとσoで表す。よって
【0027】
【数12】
Figure 0004174318
(9)
ただし
【0028】
【数13】
Figure 0004174318
である。σiとσoはHの直交成分である。σoは所望の信号の逆相成分の増幅係数であり、σiは所望の信号の同相成分の増幅係数である。kΔrsinθの関数としてのσo,σiと||H||を図3に示す。式(9)と図3からわかる通り、周波数や変換器間隔が変わるにつれて||H||は交互にまた周期的に振幅を大きく変え、kとθが次の関係を偶数値nで満たすところでピークを持っている。
【0029】
【数14】
Figure 0004174318
(10)
特異値σoはシステムが所望の信号の逆相成分を再生することが困難なn=0,4,8,…でピークを持ち、特異値σiはシステムが所望の信号の同相成分を再生することが困難なn=2,6,10,…でピークを持っている。
【0030】
2.2ダイナミック・レンジの損失
現実には||H||maxで与えられる音響出力の最大値は、クリッピングを避けるために装置全体の能力内でなくてはならない。従って図4に見られるように、要求される増幅量はそのままダイナミック・レンジの損失となる。音源の出力信号(v)のレベルとその結果としての音圧(w)のレベルが、システムの最大出力レベルとダイナミック・レンジが同じであると仮定してシステム逆変換が用いられる場合とそうでない場合の両者ともに示されている。||H||が大きい周波数では変換器が大きなレベルの音を放出し、そのほとんどは打ち消されて小さなレベルのバイノーラル信号が合成される。装置全体のダイナミック・レンジはシステム逆変換とバイノーラル聴覚空間合成、そして最も重要ともいえる音源信号そのものに使われる残りのダイナミック・レンジに分配されることになる。ピークのある周波数はダイナミック・レンジの損失量に影響せず、ピークの大きさが影響する。この場合、ダイナミック・レンジの損失量は単一モノポール音源による受音点での信号レベルとシステム逆変換を用いて前者と同じ最大音源出力能力を持つ2つの音源により生み出される信号レベルの差により定義できる。ここで||H||は式(6)によりシステム逆変換を用いない場合と規準化されているため、ダイナミック・レンジの損失量Γは
【0031】
【数15】
Figure 0004174318
(11)
で与えられる。式(11)で与えられるダイナミック・レンジ損失量を音源間隔を関数として図5に示す。g≒1−Δrsinθ/lであるため、Γはθの関数として
【0032】
【数16】
Figure 0004174318
(12)
と近似することができる。図5と式(12)は、音源間隔が大きいほどダイナミック・レンジの損失が小さいことを示している。
【0033】
2.3プラントや逆フィルタに内在する誤差に対するロバスト性
式(1)は、プラントC(測定によって得られることが多く小さな誤差は避けがたい)の条件数κ(C)が大きい場合に、想定されたCに内在する小さな誤差にシステム逆変換(vついてはHの設計に影響する)が非常に影響されやすいということを暗示している。それに加えて、
【0034】
【数17】
Figure 0004174318
(13)
でκ(C-1)=κ(C)であるから、κ(C)が大きい場合に、合成信号wはプラント行列の逆行列C-1、すなわちHの小さな誤差に弱い。
【0035】
行列Cの条件数は
【0036】
【数18】
Figure 0004174318
(14)
で与えられ、図6に示す。式(14)や図6に見られるように、κ(C)は式(10)が偶数値nで満たされるところでピークを持っている。κ(C)のピークを与える周波数は||H||のピークと同じである。
【0037】
κ(C)が大きい周波数の周辺では、システムはCやHに含まれる誤差に非常に弱く、これらの誤差が小さくても大きな誤差に増幅される。計算された逆フィルタ行列Hは、Cに内在する小さな誤差に起因する大きな誤差を含んでいることが多く、受音点で合成された信号wに大きな誤差が含まれることなる。仮にCが全く誤差を含んでいないとしても、受音点での音響合成は逆フィルタ行列H内の小さな誤差に弱すぎて実用的ではない。これとは逆に、式(10)が奇数値nで満たされる周波数の周辺ではκ(C)が小さい。この周波数の周辺では、実用的で理想に近い逆フィルタ行列Hを容易に得ることができる。同一のnの値に対しては、音源間隔が広くなるにつれてロバストな周波数範囲は低くなる。線形周波数軸でみれば一見音源間隔が小さいほうがロバストな周波数範囲が広いように見えるが、人の聴覚器官の特性と一致する対数周波数軸でみると、nの値が同じであればロバストな逆変換の周波数範囲は音源間隔が異なってもほぼ一定である。
【0038】
2.4レギュラライゼーション
過大な増幅、ひるがえってダイナミック・レンジの損失をレギュラライゼーションによって抑制することが可能である。ここで、擬似逆フィルタ行列Hは
【0039】
【数19】
Figure 0004174318
(15)
で与えられ、βはレギュラライゼーション・パラメータである。レギュラライゼーション・パラメータはHが大きな値をとることを抑制し、それによりシステムのダイナミック・レンジの損失を抑制する。||H||は式(6)によりシステム逆変換を用いない場合と規準化されているため、レギュラライゼーション・パラメータはダイナミック・レンジの損失をおよそ
【0040】
【数20】
Figure 0004174318
(16)
以下に限定する。しかしながら、レギュラライゼーション・パラメータは逆変換の過程に意識的に、よって必然的に、小さな誤差を導入するものである。これのことはκ(C)が大きい周波数におけるフィルタ設計に問題を引き起こす。この現象の一例を図7に示す。レギュラライゼーションにより、ダイナミック・レンジの損失は図7aの約27dB(レギュラライゼーションを行わない場合)から図7bの約14dB(β=10-2)に減少している。しかしながら、式(10)が偶数値nで満たされる周波数の周辺でシステムの制御効果が悪化していることがはっきりとわかる。(ほんの1%の誤差でもクロストーク成分が大きくなり、制御効果がほとんど失われている。)正しい所望の信号(R11とR22)の寄与はほんの少ししか減少していないが、誤った所望の信号(R12とR21,クロストーク成分)の寄与が著しく増大している。言い換えれば、システムはこれらの周波数周辺ではほとんど制御(クロストーク抑制)が出来ていないということである。低い周波数帯域(式(10)においてn<1)ではクロストーク抑制の効かない範囲が広いという意味で、高い周波数帯域(式(10)においてn>1)ではプラントの状態が悪い周波数が数多く存在するという意味でこの問題が顕著である。ダイナミック・レンジの損失量が同程度の場合、音源間隔を広げることは低周波数での制御効果を良くするが、高周波数での制御効果を悪くすることにつながる(図8a)。これとは逆に、音源間隔を狭くすることは高周波数での制御効果を良くするが、低周波数での制御効果を悪くすることにつながる(図8b)。
【0041】
3.この発明による典型的なシステム
以上に議論された通り、ダイナミック・レンジとロバスト性、制御効果の間にはトレード・オフが存在する。しかしながら、これらの根本的な問題点を克服することを目的とするシステムが以下に提案されており、便宜上これを最適分散音源システムと呼ぶ。
【0042】
3.1提案するシステムの原理
3.1.1最適分散音源(「OSD」)システムの原理
式(10)は音源間隔2θに関して以下のように書き換えることができる。
【0043】
【数21】
Figure 0004174318
(17)
前記の解析からわかるように、式(17)のnが奇数である音源間隔を持つシステムが最高の制御効果とロバスト性を与える。このことは最適の音源間隔は周波数の関数として変動しなくてはならないということを暗示している。さてここで、周波数が変化するにつれて式(17)のnが奇数であるという必要条件を満たしながら連続的に間隔が変化するモノポール変換器対という概念を導入する。この変換器の間隔と周波数の関係を図9に示す。これはσi=σoとなる関係でもある。周波数が高くなるにつれて音源間隔が小さくなる。この概念を導入することにより、式(8)の逆フィルタ行列は次式のとおり周波数依存性がなくなり非常に単純になる。
【0044】
【数22】
Figure 0004174318
(18)
ここで全ての周波数にわたって
【0045】
【数23】
Figure 0004174318
であることに注目していただきたい。従って、システム逆変換によるダイナミックレンジの損失はなく、実際には所望の信号に含まれる2つの直交成分の位相は90度ずれているため3dBダイナミック・レンジが稼げる。またすべての周波数においてκ(C)=1となり、これは条件数のとりうる最小の値で、OSD方式は逆フィルタに内在する、あるいはHRTFsを含む聴取空間に内在するすべての誤差に強いことを示している。
【0046】
また、l>>Δrのときg≒1であるため、
【0047】
【数24】
Figure 0004174318
(19)
であることは注目に値する。これはOSD方式では入力信号(所望のバイノーラル信号)の90度の位相変化と単純加算だけで、両耳位置での信号の独立制御がほぼ達成できることを示唆している。
【0048】
この原理は周波数が変化するにつれて連続的に位置が変化するモノポール変換器対を必要とする。例えばこれは、平板の各所を個別に加振する変換器、幅と剛性が連続的に変化する三角形板の一端を加振する変換器、幅が連続的に変化する隙間を持った導波管式変換器、などによって実現できる可能性がある。いずれの場合もその要件は、特定の周波数の振動がある幅を持った特定の位置を最も強く励振し、その位置からその周波数の音が重点的に放射されることである(図10)。
【0049】
3.1.2伸張した変換器
図10に示したような、伸張した変換器の変換器の幅が変化するということは、低周波数を変換器の幅広い部分から効率的に放射し、狭い部分から高周波数を放射することを可能にする。それは低い周波数において良い放射効率を得るためには放射面積を音の波長と比較して大きくすることが必要であるということが音響学の分野では良く知られているからである。もちろんこのような分散変換器の表面の振動は、高周波数の振動は図10に示した変換器の幅の狭い一端のほうに集中し、低周波数の振動は幅の広い端のほうに集中していることがより望ましい。
【0050】
振動する変換器の物理的ダンピングを慎重に選択することにより(例えば平板の)振動する表面がこのように振舞うようにすることが可能である。従って、例えば変換器の一端が励振されたときに、低周波振動をもう一方の端まで伝播させつつ高周波振動が急激に減衰するように、振動する変換器のダンピングを選択しても良い。
【0051】
同様の効果は、例えば、平板の剛性をその長さ方向に沿って変化させることで得ることもできる。(図10に示したように幅が変化するのではなく)厚さが変化する平板を構成し厚い固定端を励振することができる。これは低周波数で薄い端がより大きく振動しながら高周波振動は厚い側に集中する結果となる。また厚さの変化する平板に沿って振動の正しい空間的分布を得るためにダンピングを慎重に選択することが必要かもしれない。
【0052】
図10に示した幅の変化する平板の放射効率の効果と剛性の変化する平板の効果を組み合わせることも有効かもしれない。
平板の剛性を変えるためには、長さ方向に沿ってある間隔で構造体にリブを付け加えたり、平板の厚さを連続的にではなく離散的な間隔で変化させたりといった他の方法を用いても良い。
【0053】
「拘束層」の使用や構造体を製作する材料の選択など、このような構造体にダンピングを加える方法は数多くある。
(例えばカーボン・ファイバー素材から製作する)複合材料構造の層状組織を選択することで剛性とダンピングが制御されているような複合材料構造を設計することも可能である。
【0054】
3.1.3提案するシステムの側面的特長
式(17)により、図9に見られる通り音源間隔の範囲は制御対象の周波数範囲により決まる。同じ周波数では小さな値のnほど小さな音源間隔を与える。それゆえ、同じ高周波限界に対する最小音源間隔θhはn =1で与えられ、両耳間の距離(KEMAR擬似頭では約0.13m)で隔てられた音場内の2点を周波数20kHzまで制御するためにはこの間隔は約4°である。
【0055】
式(10)はまた以下のように周波数に関して書き換えることもできる。
【0056】
【数25】
Figure 0004174318
(20)
最小のnが、ある音源間隔に対して最も低い周波数限界を与える。sinθ≦1であるから、
【0057】
【数26】
Figure 0004174318
(21)
となり、すなわち物理的に最大の音源間隔である2θ=180°がこの原理に伴う低周波限界、flを与える。
【0058】
小さな値のnほどより低い低周波限界を与えるので、さまざまな奇数値nで与えられるシステムの中で、n =1で与えられるシステムが通常最も有用である。両耳間の距離で隔てられた音場内の2点を制御するために設計されたシステムでn=1で与えられる低周波限界はおよそfl=300〜400Hzである。
【0059】
3.2現実的な離散システム
実際には周波数によって位置(間隔)が連続的に変化するような概念的なモノポール変換器対は現在のところ市販されていない。しかしながら、変換器間隔を離散化することにより、この原理に基く実用的なシステムを実現することができる。ある変換器間隔において、増幅量が比較的小さくプラント行列の性質がよい周波数領域は、最適周波数の周辺に比較的広く広がっている。したがって、nにある幅±ν(0<ν<1)を持たせることにより、少しのダイナミック・レンジ損失やロバスト性のわずかな低下など小さな性能低下と引きかえに、システムの制御効果とロバスト性がまだかなり良い周波数範囲をある固定の変換器位置に対して割り当てることができる。結果として、連続的に変化する変換器間隔を有限個の不連続の変換器間隔に離散化することができる。この現実的なシステムは、ある変換器間隔で使用される周波数範囲を限定することで、状態の良い周波数のみを利用してたちの悪い周波数を排除していると解釈することもできる。異なる周波数範囲で異なる変換器間隔を用いることで、数ペアの在来の変換器ユニット対とクロスオーバーを使用して、幅広い周波数帯域(実際には可聴周波数帯域のほぼ全域)をカバーできる現実的なシステムを構築することが可能である。
【0060】
単独で全可聴周波数帯域を扱える変換器は実質的に存在しないのでこの原理は非常に有用で現実的である。ゆえにこの原理はまた、扱う周波数帯域を最大限にするマルチ・ウェイ方式のスピーカによるバイノーラル合成に、理想的な理論的背景を提供する。これは依然として、あらゆる形の仮想的な聴覚感覚空間を合成するためにたった2つの独立制御信号しか必要としない、簡単な「2チャンネル」の制御システムであることを強調しておく。このシステムは原理上は無限個の異なる音源信号を持つ仮想音源を、あらゆる種類の空間の音響応答をともなって合成できる。従来の2チャンネルのシステムとの違いは、2つの制御信号が複数の周波数帯域に分配され、それぞれ異なる間隔に配置された異なるドライバー・ユニット対に供給されるということである。
【0061】
3.2.1離散化された変換器対の周波数範囲と間隔
図11はプラント行列の条件数κ(C)を可聴帯域(20Hz〜20kHz)で周波数と音源間隔の関数としてプロットしたものである。可能な限り幅広い周波数帯域にわたって、条件数ができるだけ小さくなるようにシステムを設計することが重要である。よって、flより高い全ての周波数範囲にわたってνの値の最大値ができるだけ小さくなるように、それぞれの周波数範囲の変換器対の変換器間隔を決定することができる。(3.2.2節参照)
また、図12はより現実的なHRTFを含むプラント行列の条件数を示している。このHRTFはKEMAR擬似頭を用いてMIT[11]で実測されたものであるが、スピーカの特性は別途取り除いてある。自由音場の場合とよく似た傾向がはっきりと見て取れる。しかしながら、自由音場では見られなかった別の「たちの悪い周波数」がHRTFが極小値をもつ9kHzと13kHz近辺に観察される。元にしたデータの信号/ノイズ比がこれらの周波数近辺であまり良くない可能性がある。入射角θが小さいところではHRTFプラント行列で得られたピーク周波数が、受音点間隔がΔr≒0.13の自由音場の場合とほぼ同じであることにも注意しなくてはならない。これはKEMAR擬似頭の外耳道入り口間の直線距離に相当する。しかしながら、入射角θが大きいところではHRTFプラント行列で得られたピーク周波数が、受音点間隔がΔr≒0.25の自由音場の場合とほぼ同じであることに注意しなくてはならない。これはKEMAR擬似頭の外耳道入り口間の直線距離よりかなり大きく、おそらく頭部まわりの回折伝播の結果である。以上OSD原理のもつ性質は現実的な制御空間の場合も本質的に同じであることがわかる。
【0062】
図13はダイナミック・レンジの損失量を周波数と音源間隔の関数として示す。許容できるダイナミック・レンジ損失量の見地から、離散化、すなわち変換器間隔とそれぞれのドライバ・ユニットが担当すべき周波数範囲(すなわちnの範囲)を決定することも可能である。ここではダイナミック・レンジ損失量は離散化されたそれぞれの変換器対により与えられる値の中の最大値により与えられる。
【0063】
3.2.2変動音源間隔の離散化の影響
なお式(21)では奇数値nで与えられていたOSD原理は、離散化により奇数値以外の周波数・変換器間隔領域も用いるようになるため、低周波数限界flが低域側に移動し、有効周波数範囲が拡大することをここで確認しておく。例えばn=1の理想的なシステムから離散化された現実的なシステムは、1−ν<n<1+νの領域を使うことができるので、その低周波限界はn=1−νで与えられる。
【0064】
図9に見られるように、音源間隔が非常に小さい高周波数帯域では、変換器間隔の小さなずれに対してカバーする周波数範囲が非常に敏感に変化する。反対に、低周波数帯域では音源間隔のずれにほとんど影響されない。結果として低周波数ユニット間隔の実用的範囲は非常に広く、実際上ほんの少しflが高くなるだけで60°から180°の間のどこでもよい。
【0065】
また対数軸の図11〜図13に見られるように、同じ性能であれば小さなnによるシステムほど広い領域を与え、n = 1によって与えられるシステムが低周波限界、離散化による性能低下が小さいなどの面で最も有利である。
3.2.3低周波限界以下の領域の取り扱い
||H||,κ(C)ともに他の領域より大きくなるfl(n<1−ν)の低周波限界以下の周波数領域では、システムのロバスト性やダイナミック・レンジ損失に対する要求が他の周波数に比べて厳しくなる。バイノーラル再生においては低い周波数では両耳での差はあまり重要ではないので、fl が十分に低ければこの領域で要求される余分なダイナミック・レンジ損失を避けるためにシステム逆変換を行わず、この周波数領域を単に1個のサブウーファーに受け持たせることもできる。
【0066】
レギュラライゼーションを利用して増幅量を制限した上で、最も低い周波数帯域用のユニット対にこの低周波限界以下の周波数領域を受け持たせることもできる。この方法によれば過大なダイナミック・レンジ損失を被ることも、他の周波数帯域でのロバスト性を犠牲にすることもない。fl より低い周波数帯域ではプラント行列Cの性質が悪く、誤差に対するロバスト性とクロストーク抑制効果はレギュラライゼーションのため他の周波数ほど良くはない。しかしながら、それでも十分なクロストーク抑制が得られることがある。
【0067】
この領域のクロストーク抑制性能は、割り当てられたダイナミック・レンジの損失量に影響される。仮にダイナミック・レンジの損失が少ししか許されなければ逆フィルタの振幅を抑制するためにより大きなレギュラライゼーション・パラメータが必要となり、これがクロストークの増大につながる。したがって、所望の低周波数帯域におけるクロストーク抑制性能を選択することによりシステムを設計することができる。一例として、図14は20dBのダイナミック・レンジがシステム逆変換のために割り当てられた(失われる)場合のクロストーク抑制効果を周波数と音源間隔の関数として示している。より大きなダイナミック・レンジ損失が許されれば、この低周波数域を含めた全周波数/間隔領域にわたってより大きなクロストーク抑制効果が得られる。
【0068】
大きなダイナミック・レンジをシステム逆変換に割り当てることができない場合には、大きな値のレギュラライゼーション・パラメータが必要である。仮に、十分なクロストーク抑制性能が得られなくても、最も低い周波数域用のユニット対はサブ・ウーファーとして作用することができる。この場合、独立制御効果は極端に悪化するが、||R||すなわち再生信号のノルムはレギュラライゼーションを行わない場合と同じである。この領域では所望の信号の逆相成分を合成するのは難しいが、同相成分の生成にはまったく問題がない。この性質はバイノーラル再生に有益である。なぜなら通常、非常に低い周波数帯域では2つの所望の信号間の差はそれほど大きくなく、しばしば無視できるからである。
【0069】
3.3離散(マルチ・ウェイ方式)「OSD」システムの例
3.3.1「3ウェイ」以上のシステム
0<n<2の3ウェイ・システムの例を図15に示す。この例では、条件数が可能な限り広い周波数範囲にわたってできるだけ小さくなるように設計されている。したがって、高周波ユニットと低周波ユニットの変換器間隔(2θ)は両極端に位置し、これによりν=0.7となる。高周波ユニット対は6.2°の間隔を持ち20kHzまで取り扱える一方、低周波ユニット対の180°間隔はできるだけ低い周波数まで取り扱えるよう選ばれた。中域ユニットの間隔は32°となった。3対のユニットを用いることで、ダイナミック・レンジの損失は約7dBで済んだ(図16)。この構成ではfl ≒110Hzとなり、これより低い周波数を取り扱うためにサブ・ウーファを加えても良い。クロスオーバー周波数はおよそ600Hzと4kHzである。
【0070】
レギュラライゼーションを用いて、flより低い周波数に対する低周波ユニット対の増幅量を約7dBに制限することで、この低周波ユニット対は約100Hzまで20dB以上という十分なクロストーク抑制効果を、それ以下の領域はやや劣る両耳差を確保しながら低周波限界以下の周波数領域も取り扱うことができる(図17)。
【0071】
さらに大きなダイナミック・レンジ損失が許される場合にはより小さなレギュラライゼーション・パラメータを用いることができ、よって低周波数でのクロストーク抑制性能は向上する(図18)。たとえば約13dBのダイナミック・レンジ損失を許容することで、180°間隔の低周波ユニットは約20Hzまで20dB以上というクロストーク抑制効果を保持することができる。
【0072】
あるいは、前の例(図18)のように低周波数域のクロストーク抑制性能に余裕がある場合には、これを犠牲にして高いほうの周波数帯域におけるシステムのロバスト性を向上させるためにより小さな変換器間隔、すなわちより小さなν、を用いることもできる。この方策の例は次の「2ウェイ」システムのセクションで説明する。
【0073】
例えば4ウェイや5ウェイなど、変動変換器間隔をより細かく離散化するにつれて、nの幅(±ν)はより小さくなる。したがって、システムはfl より高い周波数においてより高性能になる。しかしながら、性能の向上度合いはドライバー・ユニットの数が増えるにつれて徐々に小さくなる。離散化が細かくなるほど連続的な変動変換器間隔の原理に近くなるのは明白である。しかし、ドライバ対の数が増大し、よって性能向上と費用のトレード・オフがより顕在化してくる。
【0074】
3.3.2「2ウェイ」システム
0<n<2の2ウェイ・システムの例を図19と図20に示す。再びこの例(本発明の範囲内ではない)では条件数が可能な限り広い周波数範囲にわたって小さくなるように設計されており、そのため変換器間隔は6.9°と120°が選ばれ、ν≒0.9となった。たった2対のユニットに離散化するだけでもダイナミック・レンジの損失はレギュラライゼーションを用いることなくても18dBで済む。中高周波数域ユニット対は6.9°の間隔を持ち20kHzまで取り扱える一方で、120°間隔の低中周波数域ユニット対は約20Hzというfl の値を持つ。クロスオーバー周波数はおよそ900Hzである。
【0075】
離散化が荒くなるにつれて、より多くの周波数帯域でプラント行列の性質が悪くなる。低周波数におけるクロストーク抑制性能を犠牲にして高いほうの周波数帯域におけるシステムのロバスト性を向上させるために変換器間隔をより小さくすることも可能である。図21は前のセクションで説明した3ウェイ・システム(ν≒ 0.7)からウーファー・ユニット対を省略して得られたような2ウェイ・システムの例(本発明による)を示している。この例ではレギュラライゼーションを用いて、ダイナミック・レンジ損失量が先の(図20の)2ウェイ・システムの例と同じになるように維持されている。高周波数域ユニット対は6.2°の間隔を持つ。低中周波数域ユニット対の間隔は32°でこれは20dB以上のクロストーク抑制効果をもってfl ≒600Hzより低い周波数帯域をも取り扱う。低中周波ユニット対はクロストーク抑制効果が20dB以下となる200Hz以下の範囲もカバーする。この場合クロスオーバー周波数はおよそ4kHzである。fl ≒600Hzより高い周波数帯域の状態は先の3ウェイ・システムと同じで、図20に示された先の例と比べて条件数が非常に小さくなっていることがわかる。
【0076】
3.3.3「1ウェイ」システム
図22と図23に示された0<n<2(本発明の範囲ではない)の1ウェイの仮想音環境創生システムの例は最も粗い離散化の例といえる。変換器間隔は7.2°である。この原理により1ウェイ・システムにもたらされる利点は非常に限られている。1組の変換器対が取り扱わなくてはならない周波数範囲は全可聴周波数帯域(20Hz〜20kHz)であり、nの幅はほとんど±1(ν≒0.998)である。40dB以上のダイナミック・レンジの損失があり、低い周波数と高い周波数の幅広い範囲で非常に大きな条件数が観察できる。レギュラライゼーションを用いてダイナミック・レンジの損失を18dBに抑えた場合、1kHz以下におけるクロストーク抑制性能は20dB以下である(図24)。
【0077】
これだけの周波数範囲にわたって使用できる実用的な単一変換器は手に入らないので、この方法はどちらにしても実用的ではない。nの幅(±ν)を小さくして市販のフルレンジ・ユニットが取り扱えない高周波数域と低周波数域を犠牲にする妥協案を設計することは可能である。
【0078】
3.4マルチ領域システム
2つ以上のnの領域を利用するような更なる妥協案も可能である。その場合には既存のシステムとの明確な区別はなくなる。しかし、それでも上記の同じような議論を用い、それを複数のnの領域に拡張することでその性能を最適化することが可能である。この方法は少数の変換器対でより幅広い周波数範囲を取り扱いたいような場合に有用である。10°の変換器間隔をもつ「ステレオ・ダイポール」システム[12]はこのようなシステムの一例である。最も簡単な例として、1対の変換器対が0<n<2と2<n<4の領域を使用する例が図25と図26に示されている。20Hz〜20kHzの周波数帯域が、14°の間隔を持つ1対の変換器対により取り扱われている。要求増幅量は約40dBなので、この例ではダイナミック・レンジ損失量が18dBとなるようにレギュラライズされている。低周波数帯域のクロストーク抑制効果は図24の1ウェイ・システムより向上していることがわかる。この例では20dB以上のクロストーク抑制効果が約400Hzまで(図24では1kHzまでであった)得られている。しかしながら、制御がほとんど利かず、ロバストではない使用不能領域 (1+ν<n<3−ν)が10kHz近辺に現れている。
【0079】
この使用不能領域を、HRTFが極小値(||C||が小さい)をもつ周波数に合わせることも可能である。この極小値の補正(逆変換)にはHのさらなる増幅とダイナミック・レンジの損失が要求されるからである。加えて、この高周波数帯域の極小値の位置は個人間でかなり大きく異なる。[13]したがって、フィルタ設計に用いられるHRTFが極小値を持つこれらの周波数で逆変換を行うことはもともと実用的ではないかもしれない。
【0080】
3.5 クロスオーバー・フィルタと逆フィルタに対する考察
クロスオーバー・フィルタ(ローパス,ハイパス,またはバンドパス)は適切な周波数帯域の信号をマルチ・ウェイ「OSD」システムの適当なドライバー・ユニット対に分配する。周波数領域で矩形窓を持つような理想的なフィルタは現実的には実現できないため、クロスオーバー周波数の近辺の周波数帯域では複数のドライバー・ユニット対が再生信号wの合成に寄与している。よってこの「クロスオーバー領域」がこの原理の範囲に入るようにすることも重要である。
【0081】
3.5.12行2列のプラント行列
図27に示されているようにクロスオーバー・ネットワークを含めてプラント行列Cを得た場合、それはクロスオーバー・ネットワークの応答とクロスオーバー周波数近辺における異なるドライバー・ユニット対の間の干渉を含め、逆フィルタ行列Hの2つの出力と2つの受音点の間の単一の2行2列の電気音響伝達関数行列となる。逆フィルタ設計のためのプラント行列Cは変換器の応答や、人体および周辺環境の音響応答などを含んでいても良い。このプラント行列Cから設計された2行2列の逆フィルタ行列Hは、聴取者の耳で所望の信号を合成するために自動的に先の様々な応答を補正する。
【0082】
3.5.2複数の2行2列のプラント行列
あるいは、それぞれのドライバー・ユニット対のプラント行列C1,C2,...に対して、それぞれ別々に逆フィルタ行列H1,H2,...を設計することができる(図28)。それぞれのドライバー・ユニット対のためのクロスオーバー・フィルタはその特定のユニット対に対応する周波数帯域を含む信号を供給するようにする。この場合、クロスオーバー周波数の周辺では、仮想音環境は2つの異なる逆フィルタ行列により合成されることとなる。それぞれのドライバー・ユニット対により両耳で合成される再生信号は両方とも正しいので、クロスオーバー・フィルタが正しく振舞う限り、2つの(全く同一だがレベルは異なる可能性がある)所望の信号の単純な和として正しい所望の信号が両耳で再生される。ここではシステム逆変換がクロスオーバー・フィルタから独立しているため、信号が逆フィルタへ入力する前にクロスオーバー・フィルタを適用しても良いし、後でも良いし(図28)、バイノーラル合成の前に適用してもかまわない。
【0083】
3.5.3“2行(2×複数)列”のプラント行列
mをドライバー対の数とするとき、プラント行列Cを2行2×m列の行列として得ることもできる(図29)。システムは決定条件不足の状態となり2×m行2列の擬似逆フィルタ行列Hは
【0084】
【数27】
Figure 0004174318
(22)
で与えられる、ここでβはレギュラライゼーション・パラメータである。この解は、聴取者の耳に所望の信号を供給するにあたって変換器が「最小の努力」(最小出力)をすることを保証する。その結果を全体としてみたときには3.5.1節で説明した単一の2行2列の逆行列変換と同じような結果である。
【0085】
3.5.4フィルタの種類
いずれの場合においても、クロスオーバー・フィルタはパッシヴ,アクティヴ,またはディジタル・フィルタのいずれでも良い。クロスオーバー・フィルタを逆フィルタの前に適用する場合には、図1のバイノーラル合成フィルタAの前に適用しても良いことは明白である。仮にこれらがディジタル・フィルタの場合、バイノーラル合成フィルタを逆フィルタと合わせて一つのフィルタとしても良いのと同様に、クロスオーバー・フィルタも逆フィルタと合わせて一つのフィルタとしてしまっても良い。式(19)が示唆するとおり、細かい離散化や図10に示したような理想的な変動変換器を用いることで「OSD」原理が大体よく近似できている場合には、逆フィルタ行列Hをアナログ(アクティヴまたはパッシヴ)フィルタとして実現しても良い。
【0086】
3.6 マルチ・チャンネル方式に対する注釈
クロスオーバー・フィルタが使用されない場合は、マルチ・ウェイ方式である「OSD」方式とは対照的に、従来からあるマルチ・チャンネル方式となる。この場合mをドライバー対の数とすると、チャンネルの数は2×mで、プラント行列は再び逆フィルタ行列Hの2×m個の出力と2つの受音点の間の2行2×m列の電気音響伝達関数行列である。擬似逆フィルタ行列Hは式(22)で与えられる。得られた逆フィルタ行列Hは2×m行2列の行列で、要求される努力(出力)が最小となるよう自動的に異なるドライバーに信号を分配する。1例として、ν=0.7の3ウェイ「OSD」システムの例で用いられたドライバー位置と同じ場所に6チャンネルの変換器がある場合のHの要素の振幅(|Hmn(jω)|)を図30に示す。状態が悪かったりHRTFが極小値を持つような問題のある周波数が自動的に避けられるというマルチ・チャンネル・システム逆変換の性質は有益である。一方、クロスオーバー・フィルタが無いため、「OSD」方式が持つメリットの幾つかをマルチ・チャンネル方式は持っていない。
【0087】
「OSD」方式の持つ重要な利点の一つは、マルチ・ウェイ方式であることである。マルチ・チャンネルのシステム逆変換は低周波数の信号のほとんどを、最も大きな間隔のユニット対に分配する。それは、この組み合わせによる条件数が、より間隔の狭い他のスピーカの組み合わせによる条件数より常に小さいからである。しかしながら、かなりの高周波数の信号もこの大きな間隔をもつユニット対に分配される。それはプラント行列の条件数の周期的な性質により、大きな間隔がたまたま小さな条件数を与えることが数多くあるからである。このことは、この大きな間隔をなすペアに非常に広い周波数帯域の信号を再生することを要求するが、これは現実的ではない。
【0088】
マルチ・チャンネル方式では、「OSD」方式のもう一つの利点である2チャンネルのシステムであると利点が失われてしまう。パッシヴ・クロスオーバーの「OSD」システムでは、たった2つの独立出力信号、したがって増幅器等がたった2チャンネル分しか必要ではないのに対し、マルチ・チャンネル方式ではドライバー・ユニットのチャンネル数と同数の増幅器等が常に必要である。
【0089】
4.まとめ
変動変換器間隔を利用することによりシステム逆変換に起因する根本的な問題点を解決する新しい2チャンネルの音響制御システムが説明された。
【0090】
理論的な連続的に変化する変換器間隔を離散化することにより、このシステムを非常に簡単に実現することができる。(これによりマルチ・ウェイ音響制御システムとなる)
2チャンネルのシステムを一例として基礎的な原理や特徴を説明してきたが、同じ原理はより多くのチャンネルを持つ場合にも適用できる。(マルチ・チャンネルのマルチ・ウェイ方式となる)
理想的な変動変換器間隔がよく近似できている場合には、簡単な利得と位相変化で仮想音源合成が達成できる可能性がある。
【0091】
文 献
[1] J. ブラウエルト, 空間を聴く; 人間の音の定位に関する心理生理学(MIT出版, ケンブリッジ, MA, 1997)
[2] H. ミュラー, “バイノーラル技術の基礎,” アプライド・アクースティックス 36, 171−218 (1992)
[3] D. R. ベゴウルト, ヴァーチャル・リアリティとマルティメディアのための3−D 音響 (AP プロフェッショナル, ケンブリッジ, MA, 1994)
[4] M. R. シュレーダー, B. S. アタル, “室内の音響伝達に関するコンピュータ・シミュレーション,” IEEE Intercon. Rec. Pt7, 150−155 (1963)。
【0092】
[5] P. ダマスケ, “頭部2チャンネル立体音響再生,” アメリカ音響学会誌. 50, 1109−1115 (1971)
[6] H. ハマダ, N. イケショージ, Y. オグラ と T. ミウラ, “直交立体音響装置の物理特性と水平面位置特定の関係,” 日本音響学会誌, (E) 6, 143−154, (1985)
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[12] O. カークビー, P. A. ネルソン, と H. ハマダ, “ステレオ・ダイポール,” 英国特許申請, 9603236.2, 1996
[13] T. タケウチ, P.A. ネルソン, O. カークビーと H. ハマダ, “仮想音環境創生システムに対する頭部伝達関数の個人差の影響”, 104th AES コンヴェンション プレプリント 4700 (P4−3)
【図面の簡単な説明】
【図1】 システム逆変換によるマルチ・チャンネル音響制御のブロック図である。
【図2】 解析を行う2音源2受音点システムの位置関係を示す図である。
【図3】 kΔrsinθの関数としての逆フィルタ行列Hのノルムと特異値、a)対数軸、b)線形軸を示す図である。
【図4】 システム逆変換によるダイナミック・レンジの損失を示す図である。
【図5】 音源間隔の関数としてのダイナミック・レンジの損失を示す図である。
【図6】 kΔrsinθの関数としての条件数κ(C)を示す図である。
【図7】 レギュラライゼーションによるダイナミック・レンジの改善と制御効果の喪失を示す図である。
【図8】 音源間隔を変えることの影響、a)音源間隔大.b)音源間隔小を示す図である。
【図9】 「OSD」システムの原理.幾つかの異なる奇数値nに対する音源間隔と周波数の関係を示す図である。
【図10】 位置(間隔)/周波数が変動する変換器を示す図である。
【図11】 音源間隔と周波数の関数としての自由音場プラント行列Cの条件数κ(C)を示す図である。
【図12】 音源間隔と周波数の関数としてのHRTFを含むプラント行列Cの条件数κ(C)を示す図である。
【図13】 音源間隔と周波数帯域の関数としてのダイナミック・レンジの損失を示す図である。
【図14】 レギュラライゼーションでダイナミック・レンジ損失が20dBに抑えられた場合の、音源間隔と周波数の関数としてのクロストーク抑制効果を示す図である。
【図15】 n≒1,ν=0.7のシステムの周波数/間隔領域と、3ウェイ・システムのための離散化の例を示す図である。
【図16】 n≒1,ν=0.7の3ウェイ・システムの例を示す図である。
【図17】 レギュラライゼーションでダイナミック・レンジ損失が7dBに抑えられた場合の3ウェイ・システムの例を示す図である。
【図18】 レギュラライゼーションでダイナミック・レンジ損失が13dBに抑えられた場合の3ウェイ・システムの例を示す図である。
【図19】 n≒1,ν=0.9のシステムの周波数/間隔領域と、2ウェイ・システムのための離散化の例を示す図である。
【図20】 n≒1,ν=0.9の2ウェイ・システムの例を示す図である。
【図21】 レギュラライゼーションでダイナミック・レンジ損失が18dBに抑えられた場合のn≒1,ν=0.7の2ウェイ・システムの例を示す図である。
【図22】 n≒1,ν=0.998のシステムの周波数/間隔領域と、1ウェイ・システムのための離散化の例を示す図である。
【図23】 n≒1,ν=0.998の1ウェイ・システムの例を示す図である。
【図24】 レギュラライゼーションでダイナミック・レンジ損失が18dBに抑えられた場合のn≒1,ν=0.998の1ウェイ・システムの例を示す図である。
【図25】 n≒1とn≒3で、ν=0.7のマルチ領域システムの周波数/間隔領域と、1ウェイ・システムのための離散化の例を示す図である。
【図26】 レギュラライゼーションでダイナミック・レンジ損失が18dBに抑えられた場合のn≒1とn≒3で、ν=0.7の1ウェイ・システムの例を示す図である。
【図27】 1組の2行2列のプラント行列Cが逆フィルタの設計に用いられる場合のクロスオーバー・フィルタと逆フィルタのブロック図である。
【図28】 m(ドライバ対の数)組の2行2列のプラント行列Cが別々にm組の逆フィルタ行列の設計に用いられる場合のクロスオーバー・フィルタと逆フィルタのブロック図である。
【図29】 1組の2行2×m列のプラント行列Cが逆フィルタの設計に用いられる場合のクロスオーバー・フィルタと逆フィルタのブロック図である。
【図30】 マルチ・チャンネル方式(6チャンネル)の逆フィルタの例を示す図である。

Claims (14)

  1. 電気音響変換部と、複数チャンネルの音響信号に応じて電気音響変換器を駆動するための変換器駆動部を含み、電気音響変換器は相互に距離をおいて配置して用いられる複数の音響放射器を含み、変換器駆動部は音響放射器の特性や予定する聴取者の耳との相対的な位置関係を考慮して、また聴取者の頭部伝達関数を考慮して、仮想の録音空間内の聴取者の耳の位置に存在するであろう局所的な音場近似した音場を聴取者の場所(w1,w2)に再生する目的で設計・構成されたフィルタ部(H)を含み、この中で電気音響変換器は少なくとも2対の音響放射器を含み、前記の音響放射器対のうち第1のペアは、前記の第2の音響放射器対よりも広い間隔に配置することを意図し、前記の第1の前記の放射器対は比較的低音域での使用に適し、前記の第2の放射器対は比較的高音域での使用に適し、その配置は前記の低音域の駆動出力信号は前記の第1の放射器対を励振し、前記の第2の周波数帯域の駆動出力信号は前記の第2の音響放射器対を励振するように構成されていて、
    変換器の有効間隔/周波数範囲が次式で決定され、
    Figure 0004174318
    ここで変換器間隔Θは聴取者からみた、ある変換器対の開き角であり、nは奇数であり、 c0: 音速であり、
    Δr: 両耳の等価間隔であり、ν≦0.7である、
    音響再生システム。
  2. 請求項1記載の音響再生システムにおいて、頭部による回折の補正係数が次式
    Figure 0004174318
    ここで、Δr0は実際の両耳間の距離である、
    を用いて等価両耳間隔の値に適用された音響再生システム。
  3. 請求項1又は2記載の音響再生システムにおいて、n=1である音響再生システム。
  4. 請求項1ないし3のいずれかに記載の音響再生システムにおいて、音響放射器が伸張した変換器の一部分である音響放射面で構成されている音響再生システム。
  5. 請求項4記載の音響再生システムにおいて、この伸張した変換器が、細長い音響放射部のペアで構成され、各部の音響放射面は基端と末端を持ち、基端はお互いに近接しておかれ、駆動出力信号に応じて放射部に振動を伝えるために励振器が前記の放射部の前記の基端に隣接する部分に据え付けられ、放射部の振動伝達特性は放射部に沿って末端に向かう高い周波数の振動伝達が抑制されることによって前述の放射面の基端は末端より高い周波数で振動させられるようになっている音響再生システム。
  6. 請求項4又は請求項5記載の音響再生システムにおいて、伸張した変換器対の放射部の間隔が周波数に応じて連続的に変化する間隔を離散化して、離散化した間隔に、伸長した変換器対の放射部が配置されている音響再生システム。
  7. 請求項1から4までのいずれかに記載の音響再生システムにおいて、適当な周波数帯域の信号を適当な音響放射器対に分配するためにクロスオーバー・フィルタを含むもので、クロスオーバー・フィルタが前述のフィルタのうち逆フィルタ (Hh ,Hl)の出力に応答するようになっている音響再生システム。
  8. 請求項1から4までのいずれかに記載の音響再生システムにおいて、適当な周波数帯域の信号を適当な音響放射器対に分配するためにクロスオーバー・フィルタを含むもので、前述のフィルタのうち逆フィルタ (Hh,Hl)がクロスオーバー・フィルタの出力(dH,dl)に応答するようになっている音響再生システム。
  9. 請求項1から4までのいずれか、あるいは請求項6または請求項7に記載の音響再生システムにおいて、第2の音響放射器対が5.5°から10°の変換器間隔を持つ音響再生システム。
  10. 請求項9記載の音響再生システムにおいて、第2の音響放射器対が6°から8°の変換器間隔を持つ音響再生システム。
  11. 請求項9又は請求項10記載の音響再生システムにおいて、第1の音響放射器対が60°から180°の変換器間隔を持つ音響再生システム。
  12. 請求項11記載の音響再生システムにおいて、第1の音響放射器対が110°から130°の変換器間隔を持つ音響再生システム。
  13. 請求項1から4までのいずれか、あるいは請求項7または請求項9記載の音響再生システムにおいて、3対の音響放射器を含み、第1の音響放射器対が60°から180°の変換器間隔を持ち、第2の音響放射器対が30°から34°の変換器間隔を持ち、第3の音響放射器対が6°から8°の変換器間隔を持つ音響再生システム。
  14. 請求項1ないし13のいずれかに記載の音響再生システムにおいて非常に低い可聴周波数に対応するためにサブウーファーを含む音響再生システム。
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