JP4166603B2 - フエルト製靴底とその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、魚釣りや運動等のレジャ−に用いるフエルト製靴底とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
川や海などの水辺や水中を歩行するときに苔などに足を取られやすいため、フエルト製の靴底を有する靴が用いられている。
例えば、釣りにおいては、フエルト製の靴底を有する短靴、長靴、足袋、サンダル、ウエ−ダ−(バカ長靴)など様々な種類の靴が用いられている。
これらの靴は、その靴底の形状に合致した形状に形成された板状のフエルト製の靴底を有し、靴本体に接着されていたり、着脱して交換できるようになっており、交換用靴底も販売されている。
この様なフエルト製の靴底の靴を使用すると、歩行中の滑りはなくなるが、フエルトの減りが早いという問題がある。
そこで、従来以下の提案がされている。
【0003】
【特許文献1】
実開平5−93204号公報
【0004】
特許文献1の公報にはフエルト製の靴底の接地面に複数の孔を設け、この孔の内部表面を溶融硬化させたことが記載されている。
ところがこの様な構成では、孔周辺の減りは防止できるが靴底の繊維が倒れるように動いてしまい繊維がほつれやすく、減るのが早い。
また、孔の表面だけ溶融硬化され、孔の内部は空洞で溶融硬化された部分は孔の内側から支えられていないため、溶融硬化された部分がひび割れしやすい。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
解決しようとする課題は、靴底の接地面に複数の孔を設け、この孔の内部表面を溶融硬化させたフエルト製靴底は、繊維が倒れるように動いてしまうため、ほつれやすく減るのが早いことである。
【0006】
本発明の目的は前記欠点に鑑み、靴底の側面部の繊維が倒れ難く、また、ほつれにくくして、靴底の耐久性が向上したフエルト製靴底を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、
請求項1に係わる本発明は、フエルト製靴底に該フエルト製靴底を構成する繊維を溶融硬化した溶融硬化層を前記フエルト製靴底の内部に設けたことを要旨とするものである。
請求項2に係わる本発明は、溶融硬化層は溶融硬化しない繊維層で挾まれていることを要旨とするものである。
請求項3に係わる本発明は、溶融硬化層は、繊維同志が溶融して一体に接合し、硬化されたことを要旨とするものである。
請求項4に係わる本発明は、フエルト製靴底に溝部を設け、前記フエルト製靴底の前記溝部の内側を加熱して溶融させ、前記溝部を閉じた状態で硬化したことを要旨とするものである。
請求項5に係わる本発明は、複数のフエルト片を並設し、前記複数のフエルト片の周辺部を加熱して溶融させ、複数のフエルト片を接合した状態で硬化したことを要旨とするものである。
【0008】
本発明により、フエルト製靴底3の繊維がほつれ難く、また摩耗しにくくなるため、フエルト製靴底3の耐久性が向上する。
さらに本願の製造方法でほつれや摩耗を防止したフエルト製靴底が容易に製造できる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明すると、図1から図6は第1実施例で、図1はフエルト製靴底の靴の斜視図、図2はフエルト製靴底の靴の断面側面図、図3は製造工程におけるフエルト製靴底に溶融硬化層を形成する断面側面図、図4はフエルト製靴底の斜視図、図5はフエルト製靴底の平面図である。
【0010】
フエルト製靴底の靴は、例えば長靴で形成すめると靴本体1が防水性肉厚スポンジや、ウレタン、マロロプレン等のゴムや合成樹脂又はこれらの発泡体などの柔軟性を有する材料で足形の底部1aと甲部1bと踵部1cと足首部1dが一体に形成され、底部1aの下側に踵側が高い底部材2が固定され、底部材2の下側にフエルト製靴底3が固定されている。
フエルト製靴底3は、ポリプロピレン、ポリエチレン等の合成樹脂繊維の集合体にニ−ドルパンチを施し、さらに加圧して上記繊維がランダムに絡み合って形成された板状のフエルトを靴底形状に合わせて切断したもので、接地面になる底面部3aとその反対側の靴本体1に止着する上面部3bが形成され、底面部3aと上面部3bの周縁に沿って側面部3cが形成されている。
更にフエルト製靴底3には底面部3a側から上面部3bの近傍にまで達する深さで複数の交差する線条の溶融硬化層Aが形成されてフエルト製靴底3の中に埋設された状態で設けられている。
【0011】
溶融硬化層Aは、底面部3a側から見ると線状に見えるが、上記底面部3a側の線状の幅よりもフエルト製靴底3の厚味方向に幅(厚味)を持っており、フエルト製靴底3側の内部に、この内部を仕切るように設けられている。
溶融硬化層Aは、縦、横の格子状に交差させて形成されているが、縦(靴の前後)方向、横(靴の左右)方向の溶融硬化層Aはが互いに支持し合うため荷重がかかっても倒れにくく強い。
また、溶融硬化層Aで仕切られた領域のフエルトは、ほつれたり、摩耗したりしにくい。
しかも、ほつれや摩耗は溶融硬化層Aで止められるため、仕切られた隣の領域にはその影響が少なく、連鎖的にほつれることが防止される。
さらに、溶融硬化層Aは、交差して設けなくても単一の線状で形成しても良く、例えば、底面部3a側から見て縦方向にだけ設けたり、横方向にだけ設けたりとても同様の効果が得られる。
【0012】
繊維は、繊度が2〜40デニ−ルで、繊維長は、10〜100mmを用いる。そして、圧力200〜1000N/m2 で3〜10分押圧し、密度0.1〜0.3g/cm3 とし、厚さ5〜30mmとしたフエルト材を用いている。
そして、フエルト材から切断したフエルト製靴底3の底面部3aに溝部を設け、その溝部の内部がその繊維を構成する合成樹脂の融点より高い温度で加熱されて溶融され、靴底3の側面部3cから押圧し溝部を閉じた状態で硬化され、溝部が閉じた状態で接合されて上記溶融硬化層Aとなる。
例えば、繊維がポリプロピレン、ポリエチレンであれば靴底3の溝部の内側の表面を160〜180度で加熱し、溶融させ、この後、溝部を閉じた状態で冷却又は、常温で放置することで硬化すると繊維同志が溶着した状態で硬化し、接合される。
溝部は、切開状の溝部でも開口にある程度の幅を有する凹状の溝部でもよい。
【0013】
製造工程において溶融硬化層Aが形成される時は図3のように、フエルト製靴底3の側面部3c側から押圧しながら、上記の温度に加熱した刃物4を単独で又は複数本を一体にして底面部3aを切開して形成する。
この場合、切開して溝部を形成し、同時に溝部の内部を溶融し、切開された溝部は、刃物4が抜きさられると靴底3の側面部3c側から押圧により閉じた状態に維持されており、このまま、溝部内側の繊維同志が接合したまま硬化して形成される。
したがって、溶融硬化層Aはその一部の溝部を閉じた部分は底面部3a側が露出するが、全体は靴底内に埋設された状態で配置されており、その周囲に形成された溶融硬化しない繊維層より硬く形成される。
【0014】
したがって、溶融硬化層Aは溶融硬化しない繊維層が歩行時の押圧力で動くことを防止し、繊維のほつれを少なくして、その摩耗による靴底の減りを防止する。
これらの溶融硬化層Aは、直線状でもよいし、波状などの非直線状でもよく、方向性を持って、連続して形成されるため、溶融硬化層Aで繊維の摩耗を防止し、繊維のほつれをくい止める。
溶融硬化層Aの両側(前後又は左右側)は溶融硬化しない繊維層が配されおり、この繊維層は溶融硬化層Aより柔らかいため、溶融硬化層Aの衝撃や急な曲がりを緩和しひび割れがしにくい。
【0015】
溝部の方向は靴底3の前後方向、左右方向、又は斜め方向でもよく、又方向の異なる溶融硬化層Aを交差させて設けてもよい。
この溶融硬化層Aは、厚味方向にも厚さの1/3以上の深さを持って形成すると、特に厚味方向に靴底3が減ることを防止し、靴底3を交換するときまで溶融硬化層Aが残った状態にできる。
また、溶融硬化層Aを設ける部分はフエルト製靴底3の底面部3aの全体でもよいが、減りやすい部分は、つま先部αまたは踵部βであるため、つま先部α側や踵部β側などの一部だけに設けてもよい。
本願の構成により、靴底3が強化されて繊維が倒れ難くなり、また、繊維が抜けにくくなって摩耗が防止されたため、靴底3の耐久性が上がり従来より長く使用できるようになった。
【0016】
前記のようにフエルト製靴底が構成されていると、フエルト製靴底3の繊維が倒れ難く、また、ほつれ難くなるため、フエルト製靴底3の耐久性が向上する。
【0017】
図6、図7は第2実施例で、図6は踵部を分離して示したフエルト製靴底の斜視図、図7はフエルト製靴底の断面側面図である。
【0018】
第2実施例ではフエルト製靴底3に別体の踵部5が固定されている。
別体の踵部5はフエルト製で底面部5a側から上面部5bの近傍にまで達する深さで複数の交差する線条の溶融硬化層Aが形成されて踵部5の中に埋設された状態で設けられている。
別体の踵部5は溶融硬化層Aを形成した後溶融硬化層Aが露出する底面部5a側を靴底3に固定してもよい。
フエルト製靴底3の側面部3cにはその繊維を構成する合成樹脂の融点より高い温度になるように熱風や炎を当てたり、また、加熱したコテを近づけたり、接触させるなどして表面を溶融させ、その後、冷却又は、常温で放置することで繊維同士が溶着した状態で硬化し、加熱前の状態より側面部3cの表面から繊維がほつれないようにする。
溶融はすべて溶融するのではなく繊維が残るように溶融してもよい。
他の構成は前記第1実施例と略同一である。
【0019】
図8、図9は製造方法の他の実施例で、図8は製造工程におけるフエルト片に溶融硬化層を形成する集合体に平面図、図9は製造工程におけるフエルト片の集合体を踵部に形成する平面図である。
【0020】
製造方法の他の実施例では、複数のフエルト片6を並設し、これらをその側面同志溶融硬化させて接合して溶融硬化層Aを形成すると共に集合体7に形成する方法である。
図9では集合体7を踵部の形状に合わせて切断する前の状態が示されている。
【0021】
前記説明では靴本体1の底部1aの下側に踵側が高い底部材2が固定され、底部材2の下側にフエルト製靴底3が接着固定される図面で述べたが、底部材2とフエルト製靴底3の双方にベルベット式ファスナ−を設けて着脱自在(交換自在)としてもよい。
本願のフエルト製靴底3は、長靴以外に短靴、足袋、サンダル、ウエ−ダ−などあらゆる種類の靴に用いることができる。
【0022】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したような形態で実施され、以下に記載されるような効果を奏する。
【0023】
本発明により、フエルト製靴底の繊維がほつれ難く、また摩耗しにくくなるため、フエルト製靴底の耐久性が向上する。
さらに本願の製造方法でほつれや摩耗を防止したフエルト製靴底が容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例で、フエルト製靴底の靴の斜視図である。
【図2】同フエルト製靴底の靴の断面側面図である。
【図3】同製造工程におけるフエルト製靴底に溶融硬化層を形成する断面側面図である。
【図4】同フエルト製靴底の斜視図である。
【図5】同フエルト製靴底の平面図である。
【図6】第2実施例で、踵部を分離して示したフエルト製靴底の斜視図である。
【図7】同フエルト製靴底の断面側面図である。
【図8】製造方法の他の実施例で、製造工程におけるフエルト片に溶融硬化層を形成する集合体に平面図である。
【図9】同製造工程におけるフエルト片の集合体を踵部に形成する平面図である。
【符号の説明】
1 靴本体
3 フエルト製靴底
3a 底面部
3c 側面部
α つま先部
β、5 踵部
A 溶融硬化部

Claims (5)

  1. フエルト製靴底に該フエルト製靴底を構成する繊維を溶融硬化した溶融硬化層を前記フエルト製靴底の内部に設けたことを特徴とするフエルト製靴底。
  2. 溶融硬化層は溶融硬化しない繊維層で挾まれていることを特徴とする請求項1記載のフエルト製靴底。
  3. 溶融硬化層は、繊維同志が溶融して一体に接合し、硬化されたことを特徴とする請求項1又は2記載のフエルト製靴底。
  4. フエルト製靴底に溝部を設け、前記フエルト製靴底の前記溝部の内側を加熱して溶融させ、前記溝部を閉じた状態で硬化したことを特徴とするフエルト製靴底の製造方法。
  5. 複数のフエルト片を並設し、前記複数のフエルト片の周辺部を加熱して溶融させ、複数のフエルト片を接合した状態で硬化したことを特徴とするフエルト製靴底の製造方法。
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