JP4165266B2 - 内燃機関の燃料系制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料噴射弁からの要求燃料噴射量に応じて燃料ポンプの燃料吐出量を可変制御しつつ燃料吐出圧をフィードバック制御する内燃機関の燃料系において、異常と診断されたときの燃料噴射フェールセーフ制御技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
上記のように燃料ポンプの燃料吐出量を可変制御しつつ燃料吐出圧(以下単に燃圧という)をフィードバック制御する可変容量型高圧燃料ポンプを有した燃料系としたものがある。(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−130232号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の可変容量式高圧ポンプを有した燃料系システムにおいては、部品故障や燃圧フィードバック系制御不良などの異常が発生した場合、燃圧変動による燃焼不良などを回避するため、高圧ポンプの駆動を停止し、燃圧フィードバック制御を中止するフェールセーフ制御を行っている。
【0005】
この場合、フェールセーフ制御中は、高圧燃料系の燃圧が低圧(フィード圧)一定に保たれるため安定した噴射制御が可能となるが、高圧運転時に対して燃料噴射弁の噴射期間が長くなるため、燃料噴射量が大きい運転領域においては機関サイクル中の噴射可能期間を超えてしまい、要求燃料噴射量に対して噴射量不足となってリーン失火を発生することがあった。
【0006】
したがって、走行中に燃料噴射量が大きい領域に入らないように、吸入空気量や燃料噴射量を制限するフェールセーフ制御を追加する必要があったが、該フェールセーフ制御については、下記のような問題があった。
【0007】
吸入空気量の制限として、スロットル弁開度の上限制限を行う場合、中〜高回転側での燃料噴射量不足領域に合せてスロットル弁開度の上限を設定すると、低回転高負荷領域(図4のA)が制限されてしまうことがあった。この場合、車両発進加速時や坂道登坂時などに必要な機関トルクが不足し、運転性能が悪化する。
【0008】
一方、燃料噴射量の制限として、機関回転速度が所定回転速度を超えた場合にフューエルカットを行う場合、上記スロットル弁開度制限による低回転高負荷領域は使用可能となるが、中回転中負荷の実用トルク領域(図4のB)が制限されてしまう。この場合、通常の車両加速時などに必要なトルクが不足し、運転性能が悪化する。
【0009】
本発明は、このような従来の課題に着目してなされたもので、上記燃料系の異常時に、可能な限り使用運転領域を広げて運転性を満たすことができるフェールセーフ制御を行うようにした内燃機関の燃料系制御装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
このため本発明にかかる内燃機関の燃料系制御装置は、燃料系に異常があると診断された後、機関回転速度Nが所定値N0より大きく、かつ、機関吸気系に介装されたスロットル弁の開度TVOが所定値TVO0より大きい高回転高負荷の燃料噴射量不足領域に入ったときに、吸入空気量を制限する運転条件と、燃料噴射量を制限する運転条件とを個別に設定し、N≦N0でかつTVO>TVO0の低回転高負荷領域から燃料噴射量不足領域に入ったときは燃料噴射量を制限し、N>N0かつTVO≦TV0の高回転低負荷領域から燃料噴射量不足領域に入ったときは吸入空気量制限する構成とした。
【0011】
このようにすれば、吸入空気量制限と燃料噴射量制限とを組み合わせることにより、それぞれ単独の制限よりも、フェールセーフ制御中の走行可能領域を広げることができ、車両発進時、加速時、坂道登坂時などに必要なトルクが確保でき、運転性能を満たすことができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明に係る高圧燃料ポンプを備えた筒内直噴式内燃機関の燃料系システムの構成を示す。
【0013】
燃料タンク1内に配置される電動式の低圧燃料ポンプ(フィードポンプ)2より吐出された燃料は、燃料フィルタ3、低圧プレッシャレギュレータ4を経て、所定の低圧(0.3〜0.5MPa程度)に調整された後、低圧燃料通路5を通じて高圧燃料ポンプ6に圧送され、機関駆動される高圧燃料ポンプ6により高圧に加圧され、高圧燃料通路7を通じて燃料噴射弁8に供給される。前記高圧燃料通路7には、燃圧センサ9が介装され、該燃圧センサ9によって検出された燃圧信号は、コントロールユニット10に出力される。該コントロールユニット10には、この他、機関回転速度Nを検出するクランク角センサ11からの信号、気筒判別信号センサ12からの気筒判別信号、図示しない機関吸気系に介装されたスロットル弁の開度(以下スロットル開度という)TVOを検出するスロットルセンサ13からの信号が入力される。
【0014】
前記高圧燃料ポンプ6は、前記コントロールユニット10からの信号により、電磁制御弁6aでポンプ本体6bからの吐出量が可変制御され、任意の高圧(3〜15MPa程度)に調整される。
【0015】
本燃料系システムにおいては、高圧燃料ポンプ6の燃料吐出量と燃料噴射弁8の燃料噴射量の流量収支で燃圧がフィードバック制御されるので、該燃圧フィードバック制御の制御因子は、高圧燃料ポンプ6の吐出量となる。目標燃圧より前記燃圧センサ9によって検出される実燃圧が低い場合は、高圧燃料ポンプ6の燃料吐出量を増やして目標燃圧となるまで燃圧を上げる方向に制御し、目標燃圧よりも実燃圧が高い場合は、逆に高圧燃料ポンプ6の燃料吐出量を減らして目標燃圧となるまで燃圧を下げる方向に制御する。
【0016】
実際は、上記高圧燃料ポンプ6の燃料吐出量、燃料噴射弁8の燃料噴射量の他に、燃料の体積弾性率、高圧燃料通路(配管)7の剛性、高圧部の容積によって、高圧系の燃圧が定まる。
【0017】
図2に示すように、高圧燃料ポンプ6の吸入/吐出は、機関のカムシャフトに連結されているポンプ駆動カム6cがリフタ6dを介してプランジャ6eをリターンスプリング6fの付勢力に抗してリフトすることによって行われ、カム21の1回転につき、機関気筒数または気筒数の半分の回数で駆動される。
【0018】
高圧燃料ポンプ6のプランジャ6eが下降する吸入行程において、燃料タンク1から低圧燃料通路6gを経て圧送されてきた低圧燃料をポンプ行程容積分だけ加圧室6h内に吸入した後、吐出行程において任意のタイミングで電磁弁6aを閉作動させて加圧室6hを低圧な上流側と遮断することにより、燃料の加圧を開始して吐出チェック弁6iを介して高圧燃料通路7に圧送する。
【0019】
高圧燃料ポンプ6の必要吐出量は、目標燃圧および燃料噴射量により計算され、クランク角センサ11により検出される機関回転速度N、気筒判別センサ12からの気筒判別信号により検出されるポンプ駆動カム位相により、電磁制御弁6aの閉作動タイミングが制御される。
【0020】
さらに、前記コントロールユニット10は、上記燃料系システムの異常(故障)を診断し、異常があると診断したときは、本発明にかかるフェールセーフ燃料噴射制御を実行する。
【0021】
以下に、前記フェールセーフ燃料制御の実施形態を、図3に示したフローチャートに従って説明する。
ステップ1では、燃料系の部品故障や燃圧フィードバック制御不良などの異常の有無を診断する。
【0022】
ステップ1で、異常があると診断されたときは、異常時の燃焼不良によるエンストや運転性不良などを回避するため、ステップ2でリーン燃焼を禁止して燃焼の安定化を図り、ステップ3で燃圧フィードバック制御を停止する。これにより、高圧燃料系の燃圧が低圧(フィード圧)一定に保たれるため、安定した噴射制御が可能となる。
【0023】
上記異常検出時の低圧噴射制御により、要求燃料噴射量の大きい運転領域では燃料噴射量不足となり、燃焼不良を発生する。そこで、ステップ4では、運転領域が燃料噴射量不足領域にあるか否かを判定するため、機関回転速度Nとスロットル開度TVOとを読込む。燃料噴射量不足領域は、図4に示すように、任意の機関回転速度N0と、任意のスロットル開度TVO0と、により区分された領域とほぼ一致する。ここで、2回目以降の読込み時は、今回読み込んだ値と共に前回読み込んだ検出値を記憶しておく。
【0024】
ステップ5では、ステップ4で読み込んだ今回の検出値に基づいて、機関回転速度Nが所定値N0より大きく、かつ、スロットル開度TVOが所定値TVO0より大きな燃料噴射量不足領域に入ったかを判定する。
【0025】
上記燃料噴射量不足領域に入っていない場合は、燃料噴射量の制限は行わず、フローを終了する。
一方、運転領域が燃料噴射量不足領域に入ったと判定されたときは、ステップ7へ進んで、機関回転速度Nとスロットル開度TVOの前回値が記憶されているかを判定する。
【0026】
ステップ7で前回値があると判定された場合は、ステップ8へ進んで、該前回値に基づく前回の運転領域がN≦N0でかつTVO>TVO0の領域、つまり低回転高負荷領域であったかを判定する。
【0027】
そして、ステップ8で前回の運転領域が上記低回転高負荷領域と判定されたときには、燃料噴射量不足領域に留まらないように、ステップ9へ進んで燃料噴射量を制限する制御、つまりフューエルカット制御を行う。
【0028】
また、ステップ7で前回値が無いと判定された場合は、異常と診断されたときに既に燃料噴射量不足領域に入っていたことになるため、該領域に入る前の領域判定を行うことなくステップ12へ進んでスロットル開度TVOを、前記燃料噴射量不足領域を区分する所定値TVO0一定に制御する。スロットル開度TVOは、所定値TVO0へ向け徐々に変化させるようにする。
【0029】
ステップ10では、機関回転速度NがN0以下まで低下したかを判定し、低下するまでフューエルカット制御を継続し、低下後にステップ11でフューエルカット制御を解除する。ここで、フューエルカット制御のハンチングを防止するため、判定値をN0−Nhys(Nhys:回転速度ヒステリシス)としてもよい。
【0030】
フューエルカット制御解除後は、ステップ6に戻って機関回転速度Nとスロットル開度TVOを前回値としてメモリに記録した後、ステップ4に戻って再度運転領域のモニタを繰り返す。
【0031】
一方、ステップ8で前回の運転領域がN≦N0でかつTVO>TVO0の低回転高負荷領域でないと判定されたときは、前回運転領域がN>N0でかつTVO≦TVO0の高回転低負荷のときであり(低回転低負荷領域から高回転高負荷領域にいきなり移行することはないと判断する)、この場合は、ステップ12へ進んでスロットル開度TVOを、前記燃料噴射量不足領域を区分する所定値TVO0一定に制御する。
【0032】
ステップ13では、吸入空気量Qが前記スロットル開度TVO0と現在の機関回転速度Nとで決まる限界値Q0(マップ等で検索)以下となったかを判定し、限界値Q0以下となるまでスロットル開度TVOをTVO0に維持し、Q0以下となったときに、ステップ14でTVO0維持制御を解除する。ここで、TVO0維持制御のハンチングを防止するため、判定値をQ0−Qhys(Qhys:スロットル開度ヒステリシス)としてもよい。TVO0維持制御解除後は、ステップ6に戻って機関回転速度Nとスロットル開度TVOを前回値としてメモリに記録する。
【0033】
このようにすれば、吸入空気量制限と燃料噴射量制限とを組み合わせることにより、フェールセーフ制御中の走行可能領域を広げることができ、車両発進時、加速時、坂道登坂時などに必要なトルクが確保でき、運転性能を満たすことができる。
【0034】
また、燃料噴射量不足領域に入る直前の運転状態に応じて吸入空気量制限と燃料噴射量制限を選択する構成としたため、所望の運転性能を可能な限り確保することができる。
【0035】
また、燃料噴射量を制限する制御として、燃料噴射を停止するフューエルカット制御とすることにより、確実かつ容易に運転領域を制限することができる。
上記第1実施形態では、燃料噴射量不足領域に入る直前の機関回転速度とスロットル開度とを記憶しておき、該前回記憶値に基づいて前回の運転領域を判定する構成としたが、機関回転速度とスロットル開度とを検出する毎に運転領域を判別して運転領域毎のフラグを設定しておき、フラグの値に基づき前回の運転領域に応じて吸入空気量制限と燃料噴射量制限を選択する構成としてもよい。
【0036】
図5は、かかる構成の第2実施形態のフローチャートを示す。
図3と異なる箇所のみを説明すると、ステップ6’で機関回転速度Nとスロットル開度TVOに基づいて燃料噴射量不足領域に入る前の運転領域を判別するためフラグFの値を設定する。具体的には、N≦N0かつTVO>TVO0のときは、フラグF=1にセットし、N>N0かつTVO≦TVO0のときは、フラグF=2にセットし、上記以外のときはフラグFをクリア(0)とする。
【0037】
そして、ステップ7'でフラグFがクリアされているとき、つまり、フェールセーフ制御開始と同時に燃料噴射量不足領域に入っているとき、または、フラグFが1のとき、つまり前回の運転領域がN≦N0かつTVO>TVO0の低回転高負荷領域のときはステップ9へ進んで、フューエルカット制御に移行する。
【0038】
また、ステップ7’の判定がNOで、フラグFが2であるとき、つまり前回の運転領域がN>N0かつTVO≦TVO0の高回転低負荷領域のときはステップ12へ進んでスロットル開度TVOをTVO0に維持する制御に移行する。
【0039】
第2実施形態も第1実施形態と実質的に同様の内容であるから同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の燃料系システムを示す図。
【図2】同上燃料系システムの高圧燃料ポンプの詳細を示す断面図。
【図3】第1実施形態のフェールセーフ制御のフローチャート。
【図4】同上実施形態の吸入空気量制限制御と燃料噴射量制限制御を行う領域を示す図。
【図5】第2実施形態のフェールセーフ制御のフローチャート。
【符号の説明】
6…高圧燃料ポンプ 7…高圧燃料通路 8…燃料噴射弁 9…燃料センサ 10…コントロールユニット 11…クランク角センサ 12気筒判別センサ 13…スロットルセンサ
Claims (5)
- 燃料噴射弁からの要求燃料噴射量に応じて燃料ポンプの燃料吐出量を可変制御しつつ燃料吐出圧をフィードバック制御する内燃機関の燃料系に対し、該燃料系に異常があると診断された後、機関回転速度Nが所定値N0より大きく、かつ、機関吸気系に介装されたスロットル弁の開度TVOが所定値TVO0より大きい高回転高負荷の燃料噴射量不足領域に入ったときに、吸入空気量を制限する運転条件と、燃料噴射量を制限する運転条件とを個別に設定し、N≦N0でかつTVO>TVO0の低回転高負荷領域から燃料噴射量不足領域に入ったときは燃料噴射量を制限し、N>N0かつTVO≦TV0の高回転低負荷領域から燃料噴射量不足領域に入ったときは吸入空気量制限する、
ことを特徴とする内燃機関の燃料系制御装置。 - 前記燃料系に異常があると診断された後、機関回転速度とスロットル開度を検出しつつ前回値を記憶し、前記燃料噴射量不足領域に入ったことを検出したときに、前回値により前回検出された領域を参照して、前記吸入空気量を制限するか、前記燃料噴射量を制限するかを判定することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の燃料系制御装置。
- 前記燃料系に異常があると診断された後、機関回転速度とスロットル開度を検出しつつ、これら検出値で決まる領域によってフラグを設定し、前記燃料噴射量不足領域に入ったことを検出したときに、前記フラグの値を参照して、前記吸入空気量を制限するか、前記燃料噴射量を制限するかを判定することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の燃料系制御装置。
- 前記燃料噴射量を制限する制御は、燃料噴射を停止するフューエルカット制御であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の内燃機関の燃料系制御装置。
- 前記吸入空気量の制限または燃料噴射量の制限を、燃料噴射圧力を低減する制御を行った上で実行することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の内燃機関の燃料系制御装置。
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