自動車のエンジンのシリンダヘッドとシリンダブロック(シリンダボディ)等の接合面をシールする場合に、シリンダヘッドガスケットを間に挟持して燃焼ガスや冷却水や潤滑オイル等をシールしている。
このガスケットは、締結ボルトにより締結されるエンジン部材の結合部分に挟持されて流体をシールしており、その主流はメタルガスケットである。このシリンダヘッドガスケットは、エンジン部品の軽量化および製造コストの低減等の要請から、三枚〜四枚の金属基板を積層した積層タイプから、一枚や二枚の金属基板で形成する単純な構造のメタルガスケットに移行して来ている。
そして、構成板が一枚、二枚の少数となるため、また、エンジンの軽量化の面から使用可能な材料も制限されてきているため、シール手段の種類、個数も制限され、比較的単純化したシール手段を使用せざるを得なくなってきており、主に構成板に形成されたビードの圧縮復元性により、そのシール機能を発揮している。
そして、最近のエンジンの軽量化、小型化及び高出力化等による高性能化や、低公害化が進展する中で、エンジンの低剛性化や最大出力の増大により、要求されるシール性能を満たすことが難しくなってきている。
例えば、シリンダヘッドガスケットの場合には、特にディーゼルエンジンの最大出力の増加が著しく、最大出力が上昇しても、エンジンのコストや生産ラインの都合から、この状況に合わせて、ボルトの太さ、材質及び締め付け力等の締め付け条件を変更しないのが普通である。
その結果、ガスケット側に、シリンダ内の爆発時のヘッドリフト量の増大に見合う追従性が要求されることになる。また、それと共に、ガスケットを強く叩くパッシング現象が生じ、シールビードのへたり(クリープリラクゼーション)が急激に進んでシール面圧が低下して、ガス漏れが生じるという不具合が生じやすくなるので、この問題への対処も要求される。
このような環境下で、構成板の枚数を単に減らすことは、シール機能が犠牲になることになり易く、シール機能を犠牲にすることなく、構成板の枚数を減らすことは困難を伴う。
そのうちの一つの単層金属製ガスケットとして、シリンダボア孔周りの第1増厚部を単層金属板の基部から空洞部を残して折り返したばね性を有する折り返し部を設け、ボルト孔周りの第2増厚部を密着重層部として変形が殆ど生じない剛体に近い構造に形成して、対向面間の間隔を第2増厚部によって所定間隔に調節し、シリンダボア孔周りにおける面圧のバラツキを抑制して、バランスの良い所定の安定した面圧を得る単層金属製ガスケットが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、この単層金属製ガスケットでは、シリンダボア孔周りのシールを、空洞部を有する折り返し部のみで行うため、燃焼室で発生する高温高圧のガスをシールすることが難しく、また、この折り返し部は、エンジンの運転に伴い押圧力が作用した場合に、この空洞部が潰れ易く、また、へたり易いという問題がある。
また、上記の単層金属製ガスケットで、基部に基部の厚さ調整用のシム板をシリンダボア孔間に部分的に設けてシール性能の強化を図っているが、局部的なシール補強であり、シリンダボア孔全周のシール強化とはなっていない。
また、別の例として、三層の金属製ガスケットであるが、二重のボアシールラインを形成して安定した二重シール効果を得るために、基部とこの基部に対し空隙部を存して形成される折り返し部とを有し、この折り返し部をボア孔に沿うように配すると共に、折り返し部の断面形状を、前記基部の反対方向へ向かう滑らかな凸曲線部を多段に連設した金属製ガスケットが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
しかしながら、この金属製ガスケットにおいては、折り返し部に凸曲線部があるので、空隙部に作用する押圧力に対する圧縮抵抗を大きくすることができるが、折り返し部の端部が開放されているため、大きな押圧力が加わると、空隙部が潰れ、へたりが生じる。
また、一般的に、この構成板の少ないガスケットは、全体的に圧縮性に乏しくなり易く、ボア(燃焼室)シール部の高面圧部と液体穴シール部及び平坦部の低面圧部とにおいて、要求される面圧の差が著しく大きいため、ボアシール部の高面圧部付近の面圧を高くするので、この部分に応力が集中して、エンジン部材側に強いストレスが作用することが多く、そのため、エンジン部材側に座屈による凹みであるブリネリングを生じさせるという問題がある。
特に、この構成板の少ないガスケットにおいては、シール手段の追従性、即ち、圧縮復元性の維持が重要となるが、従来技術で使用されているシール手段の中心となっているビードは、通常はシール対象穴周りの平面視で円形状のフルビードであるが、このビードには、シリンダヘッドの垂直方向の動きに起因するパッシング現象により、ビード下部即ち股の部分が徐々に開き、やがてビードが潰れてシール面圧が急激に減少し、シール性能が著しく劣化するという問題がある。
特開2001−280502号公報
特開2001−173789号公報
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、比較的単純な構成でシール部分の追従性が高く、エンジン部材側にブリネリングが発生するの防止でき、しかも、ガスケットの重量を軽減することができるシリンダヘッドガスケットを提供することにある。
参考となるシリンダヘッドガスケットは、二枚の金属基板を積層し、第1金属基板を燃焼室穴の周囲で折り返して内部に空隙を有する折り返し部を設けたシリンダヘッドガスケットにおいて、前記折り返し部の折り返し側に面圧調整機能と圧縮復元性を備えた第2金属基板を積層し、該第2金属基板に、一次シールを形成する前記折り返し部を囲って二次シールを形成するフルビードを前記折り返し部に重ならないようにずらして配置すると共に、前記第2金属基板の折り返し部側の端部が、前記折り返し部の端部の外側になるように形成する。
なお、この「折り返し部の端部の外側になる」には、外側で当接している場合も含むものとする。
この構成によれば、折り返し部に空隙を設けたので、この第1シールラインを形成する折り返し部に圧縮性を持たせることができ、極端に大きな面圧も発生しなくなる。そのため、ボアシール部の高面圧部に大きな応力集中が生ぜず、また、エンジン部材側に強いストレスが加わらなくなる。従って、エンジン部材側に座屈による凹みであるブリネリングが発生しなくなる。
更に、軽量ガスケットにおいて、一層ガスケットに比べて、上下の金属基板の材質を状況により自由に選択できる。そして、第1金属基板の空隙折り返し部を一次シール部とし、第2金属基板のビード部を二次シール部としたときに、一次シール部の圧縮特性と二次シール部の圧縮復元性を状況に応じて任意に組み合わせ及び選択できる。従って、二次シーリングの強化ができ、特に、バネ鋼を用いると更に強化することができる。
その上、ビードの剛性及び板厚を変化させることで、第2金属基板に一次シールの面圧調整機能を持たせることができる。即ち、第2金属基板は二次シールを兼ねた面圧調整板となる。従って、第2金属基板が、所定の力以上の押圧力がシリンダヘッドガスケットに作用した時には、折り返し部の変形を規制できるので、空隙を有する折り返し部が潰れるのを防止できるので、へたりを回避できる。
また、上記のシリンダヘッドガスケットにおいて、前記フルビードの凸部側が前記折り返し部の折り返し方向と同じ方向とすると、この凸部により、比較的大きなシール面圧を発生する第2シールラインを形成して、より確実なシールを行うことができる。
あるいは、上記のシリンダヘッドガスケットにおいて、前記フルビードを凸部側が前記折り返し部の折り返し方向と逆の方向になるように形成すると、このフルビードの裾野部分により、第2シールラインと第3シールラインを形成できる。また、この場合にはフルビードの凸部が直接エンジン部材に接触しないので、このシリンダヘッドガスケットをヘッドリフトが大きく強力なパッシングを受けるエンジンに適用しても、ビードの頂部がバッシングの影響を受け難い配置なので、このバッシングによるビードのクラッキングが発生し難くなる。
そして、上記の目的を達成するための本発明に係るシリンダヘッドガスケットは、二枚の金属基板を積層し、第1金属基板を燃焼室穴の周囲で折り返して端部を閉じて内部に空隙を有する折り返し部を設けると共に、一次シールを形成する前記折り返し部を囲って二次シールを形成するフルビードを凸部が折り返し側となるように設けたシリンダヘッドガスケットにおいて、面圧調整機能を備えた第2金属基板を、前記フルビードの凸部側に積層すると共に、前記第2金属基板の折り返し部側の端部を、前記折り返し部の端部の外側に配置して、所定の力以上の押圧力が作用した時には、前記折り返し部の端部に当接し、前記折り返し部の変形を規制するように形成する。
なお、この「折り返し部の端部の外側になる」には、外側で当接している場合も含むものとする。
この構成によれば、上記のシリンダヘッドガスケットと同様に、折り返し部に空隙を設けたことによる作用効果と第2金属基板を配置した作用効果を発揮できる。そして、この構成によれば、更に、第1金属基板に設けたフルビードの凸部に第2金属基板が積層されているので、フルビードの凸部が直接エンジン部材に当接しなくなり、このシリンダヘッドガスケットをヘッドリフトが大きく強力なパッシングを受けるエンジンに適用しても、ビードの頂部がバッシングの影響を受け難い配置なので、このバッシングによるビードのクラッキングが発生し難くなる。
そして、上記のシリンダヘッドガスケットにおいて、前記燃焼室穴間以外の箇所において、前記フルビードの外側に第2のビードを設けて構成する。この第2ビードはフルビードでもハーフビードでも良く、また、第1金属基板に形成してもよく、第2金属基板に形成してもよい。この構成により、折り返し部、フルビード、第2のビードと多段階に分けてシールラインを形成することができ、より確実にシールすることができる。
以上の構成により、折り返し部に空隙を設けると共に、第2金属基板で折り返し部の変形を制限することにより、圧縮性、クッション性、スプリング性と圧縮抵抗力の調整、折り返し部の潰れ防止、へたり回避等の作用効果を発揮する。また、ビードとの組み合せにより、複数のシールラインを形成し、シール性能の向上を図ることができる。
そして、折り返し部の圧縮性及びスプリング性を強化できるので、エンジンのヘッドリフト増大への追従と、強パッシングによる折り返し部とビードのへたりの増大を抑制して、シール性を確保することができる。また、折り返し部における圧縮性及びスプリング性を高めることにより、エンジン部材側に強いストレスが生じるのを防止でき、このストレスに起因するブリネリングが発生するのを防止できる。
本発明のシリンダヘッドガスケットによれば、燃焼室穴の周囲に空隙を有する折り返し部を設けたので、折り返し部に圧縮復元性を付与することができ、この圧縮復元性により、シール手段の追従性を一層強化でき、燃焼室穴周囲部分に高いクッション性を持たせることができ、従来のガスケットのようにエンジン部材側に強いストレスが作用することがなくなる。
そして、更に、軽量ガスケットにおいて、一層ガスケットに比べて、上下の金属基板の材質を状況により自由に選択できる。そして、第1金属基板の空隙折り返し部を一次シール部とし、第2金属基板のビード部を二次シール部としたときに、一次シール部の圧縮特性と二次シール部の圧縮復元性を状況に応じて任意に組み合わせ及び選択できる。また、二次シーリングの強化、特に、バネ鋼を用いると更に強化できる。また、押圧力への圧縮抵抗力を大きくすることができ、大きなシール面圧を発生できるので、シール性能を向上することができる。
その上、ビードの剛性及び板厚を変化させることで、第2金属基板に一次シールの面圧調整機能を持たせることができる。即ち、第2金属基板は二次シールを兼ねた面圧調整板となる。従って、所定の力以上の押圧力がシリンダヘッドガスケットに作用した時には、第2金属基板で折り返し部の変形を規制できるので、空隙を有する折り返し部が潰れるのを防止できるので、へたりを回避できる。
従って、比較的単純な構成でシール部分の追従性が高く、ガスケットの重量を軽減することができるシリンダヘッドガスケットを提供できるようになる。
以下、本発明に係る実施の形態のシリンダヘッドガスケットについて、図面を参照しながら説明する。
なお、図1〜図11は、模式的な説明図であり、シリンダヘッドガスケット1A〜1Hの平面視における縦横比や、部分断面図における板厚や折り返し部やビードの形状、幅、縦横比等を実際のものとは異ならせて、より理解し易いように模式的に表示している。
図1〜図16に示す参考又は実施の形態のシリンダヘッドガスケット1A〜1Jは、エンジンのシリンダヘッドとシリンダブロック(シリンダボディ)との間に挟持されるメタルガスケットであって、二枚の第1金属基板10と第2金属基板20を積層して構成される。この第1金属基板10は、ステンレス焼鈍材(アニール材)や軟鋼板等で、また、第2金属基板20はバネ鋼等で形成され、シリンダブロック等のエンジン部材の形状に合わせて製造され、図1及び図10に示すように、燃焼室穴2、冷却水用の水穴3、エンジンオイルの循環のためのオイル穴(図示しない)、締結ボルト用のボルト穴4等が形成される。そして、これらのシリンダヘッドガスケット1A〜1Jは、燃焼室穴(シリンダボア)2の高温・高圧の燃焼ガス、及び、冷却水通路3や冷却オイル通路等の冷却水やオイル等の液体をシールする。
最初に、図1及び図2、図3に示す第1の参考のシリンダヘッドガスケット1Aについて説明する。図1はシリンダヘッドガスケットの構成を示す平面図であり、図2は、燃焼室穴間の箇所における構成を示す図1のA−A部分の部分断面図であり、図3は、燃焼室穴間以外の箇所における構成を示す図1のB−B部分の部分断面図である。
このシリンダヘッドガスケット1Aにおいて、一方の第1金属基板10に、シール対象穴である燃焼室穴2の周囲を折り返して、折り返し部11をその内側に空隙12を設けて形成する。また、他方の第2金属基板20に、フルビード21を、折り返し部11を囲んで、しかも折り返し部11に重ならないようにずらして設ける。更に、第2金属基板20の折り返し部側の端部20aが、折り返し部11の端部11aの外側になるように形成する。
この構成によれば、折り返し部11に空隙12を設けたので、この第1シールラインを形成する折り返し部11に圧縮性を持たせることができ、極端に大きな面圧も発生しなくなる。そのため、ボアシール部の高面圧部に大きな応力集中が生ぜず、また、エンジン部材側に強いストレスが加わらなくなるので、エンジン部材側に座屈による凹みであるブリネリングが発生しなくなる。
更に、押圧力への圧縮抵抗力を大きくすることができ、大きなシール面圧を発生できるので、シール性能が向上する。この圧縮抵抗力の大小は、折り返し部11の端部11aと第2金属基板20の折り返し部側の端部20aとの隙間の大小により調節できる。
その上、燃焼ガスシール部において、ボア折り返し11とビード21を組合わせたシール構造になっているため、シール性に優れ、また、クッション性にも優れている。そのため、エンジン部材側に掛かるストレスを吸収して、マイルドに対応することができる利点がある。これにより、少ない枚数の積層型のシリンダヘッドガスケットにありがちなエンジン部材への強いストレス付加を回避できる。
また、この第1の参考では、フルビード21の凸部は折り返し部11と同じ方向に設ける。この構成により、この凸部により、比較的大きなシール面圧を発生する第2シールラインを形成して、より確実なシールを行うことができる。
そして、更に、軽量ガスケットにおいて、一層ガスケットに比べて、上下の金属基板10、20の材質を状況により自由に選択できる。そして、第1金属基板10の空隙折り返し部11を一次シール部とし、第2金属基板20のビード部21を二次シール部としたときに、一次シール部の圧縮特性と二次シール部の圧縮復元性を状況に応じて任意に組み合わせ及び選択できる。また、二次シーリングの強化、特に、バネ鋼を用いると更に強化でき、また、追従性を向上できる。
その上、ビードの剛性及び板厚を変化させることで、第2金属基板に一次シールの面圧調整機能を持たせることができる。即ち、第2金属基板は二次シールを兼ねた面圧調整板となる。従って、所定の力以上の押圧力がシリンダヘッドガスケットに作用した時には、第2金属基板で折り返し部の変形を規制できるので、空隙を有する折り返し部が潰れるのを防止できるので、へたりを回避できる。
次に、図1及び図4、図5に示す第2の参考のシリンダヘッドガスケット1Bについて説明する。この第2の参考のシリンダヘッドガスケット1Bでは、第1の参考のシリンダヘッドガスケット1Aと同様に、構成するが、第1の参考では、フルビード21の凸部は折り返し部11と同じ方向に設けるのに対して、この第2の参考では、フルビード21の凸部は折り返し部11と逆方向に設ける。
この構成によれば、第1の参考のシリンダヘッドガスケット1Aと同様な作用効果を奏することができるが、フルビード21の凸部は折り返し部11と逆方向に設けているので、フルビード21の凸部を折り返し部11とお案じ方向に設けた作用効果の代わりに、次のような作用効果を得ることができる。
フルビード21の裾野部分により、第2シールラインと第3シールラインを形成でき、フルビード21の凸部が直接エンジン部材に接触しないので、このシリンダヘッドガスケット1Bをヘッドリフトが大きく強力なパッシングを受けるエンジンに適用しても、ビード21の頂部がバッシングの影響を受け難い配置なので、このバッシングによるビード21のクラッキングが発生し難くなる。なお、第1の実施の形態とするか第2の実施の形態とするかは、要求されるシール性能によって決まる。
次に、図1及び図6〜図9に示す第1の実施の形態のシリンダヘッドガスケット1C,1Dについて説明する。この第1の実施の形態のシリンダヘッドガスケット1C、1Dでは、第1金属基板10に、シール対象穴である燃焼室穴2の周囲を折り返して、折り返し部11をその内側に空隙12を設けて形成すると共に、この折り返し部11を囲うフルビード13を凸部が折り返し側となるように設ける。なお、図6、図7のシリンダヘッドガスケット1Cと図8、図9のシリンダヘッドガスケット1Dとの差は、幅広のビードと円弧形状のビードの差だけである。
また、第2金属基板20にはビードを設けずに、フルビード13の凸部側に積層する。この積層に際して、第2金属基板20の折り返し部11側の端部20aが、シリンダヘッドガスケット1C,1Dに押圧力が作用する前は、折り返し部11の端部11aの外側になるように形成する。
この構成によれば、第1及び第2の参考のシリンダヘッドガスケット1A,1Bと同様に、折り返し部11に空隙12を設けたことによる作用効果と、第2金属基板20の作用効果を発揮できる。
そして、この第1の実施の形態の構成によれば、更に、第1金属基板10に設けたフルビード13の凸部に第2金属基板20が積層されているので、フルビード13の凸部が直接エンジン部材に当接しなくなり、このシリンダヘッドガスケット1C,1Dをヘッドリフトが大きく強力なパッシングを受けるエンジンに適用しても、ビード13の頂部がバッシングの影響を受け難い配置なので、このバッシングによるビード13のクラッキングが発生し難くなる。なお、幅広のビードとするか円弧形状のビードとするかは、エンジンの種類や要求されるシール性能によるが、燃焼室穴2間の距離が比較的広い場合には幅広のビードとし、比較的狭い場合には円弧形状のビードとする。
次に、図10及び図11、図12に示す第3の参考のシリンダヘッドガスケット1E、1Fについて説明する。この第3の参考のシリンダヘッドガスケット1E、1Fでは、図1及び図2〜図5の第1、第2の参考のシリンダヘッドガスケット1A、1Bの構成に加えて、第2金属基板20の燃焼室穴2間以外の箇所において、第2のビードであるフルビード22を折り返し部11の外側に形成したフルビード21を囲んで、フルビード21の外側に設ける。このフルビード22の凸部は、フルビード21の凸部と同じ側に設ける。なお、図11、図12ではフルビードを設けているが、要求されるシールラインの特性によっては、この第2のビードをハーフビードで形成してもよい。
この構成によれば、第1、第2の参考のシリンダヘッドガスケット1A,1Bの作用効果に加えて、燃焼室穴2の間以外の箇所に、複数のビード21、22が設けられているので、より多くのシールラインを設けることができるので、シール性能を強化することができる。
次に、図10及び図13〜図15に示す第2の実施の形態のシリンダヘッドガスケット1G〜1Jについて説明する。
図10及び図13、図14に示す第2の実施の形態のシリンダヘッドガスケット1G,1Hでは、図1及び図6〜図9に示す第1の実施の形態のシリンダヘッドガスケット1C、1Dの燃焼室穴2間以外の箇所において、第2金属基板20に第2のビードであるフルビード22又はハーフビード22hを設ける。
これらの構成によれば、第1の実施の形態のシリンダヘッドガスケット1C、1Dと同様な作用効果を得ることができ、これらの作用効果に加えて、燃焼室穴2の間以外の箇所は、複数のビード13、22、22hが設けられているので、シール部のシール性を強化することができる。
また、図13の構成のように、フルビード22の凸部を折り返し側と逆の方向に形成すると、フルビード13とフルビード22の両方の凸部が直接、シリンダヘッド等のエンジン部材に直接接触しないので、ヘッドリフトが大きくガスケットは強力なパッシングを受けるエンジンに適用しても、フルビード13、22の頂部がバッシングの影響を受け難いので、このバッシングによるフルビード13、22のクラッキングに強い構造となる。
なお、図14の構成によれば、フルビードの代わりに、ハーフビード22hを設けているので、図13のフルビード22の場合よりもより弱い二次シール部を形成することができる。
また、図10及び図15、図16に示す参考となるシリンダヘッドガスケット1I、1Jでは、図1及び図4、図5に示す第2の参考のシリンダヘッドガスケット1Bの燃焼室穴2間以外の箇所において、第1金属基板10に第2のビードであるフルビード14又はハーフビード14hを設ける。
この構成によれば、第2の参考のシリンダヘッドガスケット1Bと同様な作用効果を得ることができ、これらの作用効果に加えて、燃焼室穴2の間以外の箇所は、複数のビード21、14、14hが設けられているので、シール部のシール性を強化することができる。
そして、以上の構成のシリンダヘッドガスケット1A〜1Jによれば、折り返し部11の内部に設けた空隙12により、折り返し部11に圧縮性及び追従性を付与できるので、シール手段の耐へたり性(耐クリープリラクゼーション)を向上させ、シール性を強化できる。つまり、最高出力が高いエンジンにおけるヘッドリフト増大に対して追従可能で、また、強いパッシングによる折り返し部11のへたりの増大を抑制して、シール性を向上できる。
そして、更に、第2金属基板20の折り返し部11側の端部20aが、所定の力以上の押圧力がシリンダヘッドガスケット1C、1G、1Hに作用した時には、折り返し部11の端部11aに当接し、折り返し部11の変形を規制するので、空隙12を有する折り返し部11が潰れるのを防止して、へたりを回避できる。また、押圧力への圧縮抵抗力を大きくすることができ、大きなシール面圧を発生できるので、シール性能を向上することができる。
従って、比較的単純な構成でシール部分の追従性が高く、エンジン部材側にブリネリングが発生するの防止でき、しかも、ガスケットの重量を軽減することができるシリンダヘッドガスケットを提供することができる。