JP4153693B2 - 新規なCaMKK阻害剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、カルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼキナーゼ(CaMKK)阻害剤のハイスループットスクリーニング方法、およびカルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼキナーゼ(CaMKK)に対して選択的に阻害活性を示す7H−ベンズイミダゾ−[2,1a]ベンズ[de]イソキノリン−7−オン誘導体に関する。
【0002】
【従来の技術】
細胞内カルシウム情報伝達系は、あらゆる細胞において細胞運動、分泌反応など、多岐にわたって機能している。細胞内情報伝達系の初期の反応は主に、遊離細胞内カルシウムが、カルモジュリンなどのカルシウム受容蛋白質へ結合することであると考えられており、これらカルシウム受容蛋白質がキナーゼなどの標的分子の機能を調節する。カルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼキナーゼ(以下、CaMKKと略する)は、その活性発現にカルシウムイオン、カルモジュリンを必須とする蛋白質リン酸化酵素であり、大脳、小脳、膵臓、脾臓などにおいて発現されている。CaMKKのin vitro における基質としては、カルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼ I、およびIV(CaM-K I、IV)が挙げられ、これらのキナーゼをリン酸化することにより、活性化すると考えられている。また、アポトーシス促進に関与すると考えられている、PKB(Protein kinase B)を直接リン酸化し活性化することが報告されている。その生理的機能としては、既報のin vitro試験結果から、中枢神経系、免疫系における遺伝子発現の制御および中枢神経系における細胞死抑制などが示唆されているが、実際の生体内での機能については、未だ不明な点が多い。その理由の一つは、CaMKKの選択的な阻害剤が無かったことである。従って選択的にCaMKKを阻害する化合物は、CaMKKの細胞内カルシウム情報伝達機構における役割、およびCaMKKが関与する生理機能の解明に必須であると考えられ、in vitro試験およびin vivo試験にCaMKK選択的な阻害剤を用いることができれば、CaMKKの機能を特定するのが容易になる。
また、CaMKK阻害剤の医薬品としての用途は未だ研究途上にあるが、上述したようなCaMKKの発現器官および示唆されている生理的機能から考えると、CaMKK阻害剤は、アレルギー性疾患、炎症性疾患、中枢性疾患等の治療剤として応用できる。
【0003】
カルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼ類の阻害剤としては、中枢神経系初め、広く生体に存在し、多機能を有する、カルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼIIの阻害剤が知られている。具体的には、KN−62(J. Biol. Chem., 265, 4315-4320(1990)) 、KN−93(Biochem. Biophys. Res. Commun., 181, 968-975(1991))、ペプチド性の化合物(公開特許公報平11−152298)、アラキドン酸、12−HETE (Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86, 8550-8554(1989) などが挙げられる。KN−62は、カルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼIVの阻害剤としても知られている(J. Biol. Chem., 269, 15520-15527(1994))。しかし、CaMKKを阻害する化合物については知られていない。
【0004】
CaMKK酵素活性のアッセイ方法については、徳光らによってジャーナル・オブ・バイオケミストリー、275巻、26号、20090頁に報告されている方法が挙げられる。ここで用いられている方法は、リン酸化源として[γ−32P]−ATPが用いられている。しかしながら、32Pはエネルギーの高い放射性同位元素であり、この方法をCaMKK阻害活性のハイスループットアッセイ系で用いることは位置的に近接するサンプル間で相互の放射活性の干渉作用が大き過ぎ、正確な放射活性測定ができないという点で困難であった。
【0005】
一方、本発明の7H−ベンズイミダゾ−[2,1a]ベンズ[de]イソキノリン−7−オン誘導体の分野では、多数の化合物が公知であり、多くは染料または色素、およびその中間体として用いられている。例えば、1,8-ナフトイレンベンズイミダゾール-4(または5)-カルボン酸は、US2820037や有機合成化学第20巻第11号1016頁(1962年)に記載されている。
しかし、医薬用途としては、特開平6−263759に記載された、抗癌剤として有用な1、8−ナフトイレンベンズイミダゾール誘導体、および、US4670442に記載された、免疫調節剤として有用な1、8−ナフトイレンベンズイミダゾール誘導体が知られているに過ぎない。また、これらの化合物の作用機序については、全く記載されていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、カルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼキナーゼ(CaMKK)阻害剤のハイスループットスクリーニング方法、およびCaMKKが関与する生理活性を解明するために必須であり、医薬品としても有用な、選択的CaMKK阻害剤を供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、鋭意検討した結果、[γ−33P]−ATPをリン酸化源として用いることによって、リン酸化された基質を含む多数の反応混合物を1枚のフィルターに吸着させても、近接した反応混合物間の、相互の放射活性の干渉なしに正確な測定ができることを見出した。また、この方法では使用する放射線量を著しく減少させることもできる。これによって、一度に多数のサンプルをアッセイするハイスループットスクリーニング系を構築することができた。
上記の方法を用いて、選択的にCaMKKを阻害する化合物をスクリーニングした結果、強いCaMKK阻害活性を示す7H−ベンズイミダゾ−[2,1a]ベンズ[de]イソキノリン−7−オン誘導体を見出すに至った。本発明の7H−ベンズイミダゾ−[2,1a]ベンズ[de]イソキノリン−7−オン誘導体またはその塩は、カルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼIIに対する阻害活性は低く、カルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼI、IV、MLCK、プロテインキナーゼA、C、およびp42MAPキナーゼ等に対してはほとんど阻害活性を示さず、極めて選択的にCaMKKを阻害することがわかった。このようなプロフィールを有する化合物はこれまで見出されていなかった。
【0008】
すなわち本発明は、
[1]式(I):
【化3】
[式中、R1、またはR2は、独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、またはハロアルキル基のいずれかである。R3は水素原子、アルキル基、または置換アルキル基を表し、COOR3基はナフタレン環のどの位置に置換していてもよい。]で表される、7H−ベンズイミダゾ−[2,1a]ベンズ[de]イソキノリン−7−オン誘導体、またはその薬学上許容される塩を有効成分として含有するカルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼキナーゼ阻害剤、
[2]R1およびR2が水素原子である、[1]記載のカルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼキナーゼ阻害剤、
[3]R3が水素原子である、請求項1または2記載のカルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼキナーゼ阻害剤、
[4]式(II):
【化4】
(式中、R1、R2、およびR3は前記と同義である。)
で表される7H−ベンズイミダゾ−[2,1a]ベンズ[de]イソキノリン−7−オン誘導体、またはその薬学上許容される塩を、有効成分として含有するカルモジュリン依存性キナーゼキナーゼ阻害剤、
[5]R1およびR2が水素原子である、[4]記載のカルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼキナーゼ阻害剤、
[6]R3が水素原子である、[4]または[5]記載のカルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼキナーゼ阻害剤、
[7]式(III):
【化5】
(式中、R1、R2、およびR3は前記と同義である。)
で表される7H−ベンズイミダゾ−[2,1a]ベンズ[de]イソキノリン−7−オン誘導体、またはその薬学上許容される塩を、有効成分として含有するカルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼキナーゼ阻害剤。
[8]R1およびR2が水素原子である、[7]記載のカルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼキナーゼ阻害剤、
[9]R3が水素原子である、[7]または[8]記載のカルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼキナーゼ阻害剤、
[10][1]から[9]記載のカルモジュリン依存性キナーゼキナーゼ阻害剤を有効成分として含有する、CaMKKの機能が亢進した病態を改善する治療剤、
[11][1]から[9]記載のカルモジュリン依存性キナーゼキナーゼ阻害剤を有効成分として含有する、アレルギー性疾患、炎症性疾患、または中枢性疾患の治療剤、
[12][γ−33P]−ATPを基質のリン酸化源として用いて酵素反応を行い、リン酸化された基質をフィルターに吸着させてその放射活性を測定することを特徴とする、カルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼキナーゼ(CaMKK)阻害剤のハイスループットスクリーニング方法、
に関するものである。
【0009】
本発明において、ハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を表し、好ましくはフッ素原子、または塩素原子である。
アルキル基としては炭素数1から4のアルキル基が挙げられ、具体的には、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、2,2−ジメチルエチルなどが挙げられる。
ハロアルキル基とは、1から5個のハロゲン原子が結合したアルキル基を表し、好ましくは、1から3個のハロゲン原子が結合したアルキル基を表す。具体的にはトリフルオロメチル、2−トリフルオロエチル、2−クロロエチルなどが挙げられる。
置換アルキル基における置換基としては、炭素数1から4のアルコキシ基、炭素数1から4のアルキルカルボニル基、炭素数1から4のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数1から4のアルコキシカルボニル基、炭素数1から4のアルコキシカルボニルオキシ基等が挙げられる。
式(I)〜式(III)における、R1およびR2の好ましい例としては、同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基などが挙げられる。特に好ましいのは水素原子である。
【0010】
式(I)〜式(III)における、R3の好ましい例としては、水素原子、メチル基、エチル基、アセトキシメチル基、または、ピバロイルオキシメチル基等が挙げられ、特に好ましいものは水素原子である。
本発明におけるCaMKK阻害剤は、好ましくは、式(II)で表される化合物、またはその薬学上許容される塩であり、更に好ましくは、式(IV):
【化6】
で表される化合物、またはその薬学上許容される塩である。
【0011】
本明細書において、式(I)〜式(IV)で表される7H−ベンズイミダゾ−[2,1a]ベンズ[de]イソキノリン−7−オン誘導体の「薬学上許容される塩」としては、例えば、塩基性塩の場合、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、亜鉛塩等の無機金属塩、メチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリヒドロキシメチルアミノメタン等の一級、二級、三級の有機アミン塩、ピリジニウム塩等が挙げられ、酸性塩の場合、塩酸、硝酸、燐酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸などの無機酸、並びにメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などの脂肪族、芳香族を含むスルホン酸類、およびギ酸、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、安息香酸などの脂肪族、芳香族を含むカルボン酸のような有機酸との塩を含む。
また、本発明には、式(I)〜式(IV)で表される7H−ベンズイミダゾ−[2,1a]ベンズ[de]イソキノリン−7−オン誘導体またはその塩の水和物、エタノール溶媒和物等の溶媒和物等も含まれる。
【0012】
式(I)〜式(IV)で表される化合物は、以下の方法で製造することができる。
製造法1:
US2820037に記載された方法などを用いて、以下の工程で製造することができる。すなわち、
[1]式(1−4)、または式(1−5)で表される化合物の製造工程
【化7】
(式中、R1およびR2は前記と同義である。Xは、ニトロ基、アミノ基、または保護基で保護されたアミノ基を表す。)
O−置換アニリン誘導体:式(1−2)と、ブロモナフタレン酸無水物:式(1−1)を、必要に応じて酸触媒の存在下、水中、または酢酸、エタノール、DMFのような極性溶媒を用いて、通常0℃〜250℃の範囲で縮合し、式(1−3)の化合物を製造することができる。Xがアミノ基である場合、式(1−3)の化合物は、必要に応じてジシクロヘキシルカルボジイミドなどの脱水縮合剤の存在下、DMFなどの不活性溶媒中で縮合反応を行い、式(1−4)の化合物、および式(1−5)の化合物へ導くことができる。Xが保護基で保護されたアミノ基を表す場合、保護基を脱保護し、アミノ基へと返還した後縮合反応を行うことができる。
また、Xがニトロ基の場合、接触水素化反応、鉄、亜鉛などの金属を用いた還元反応を用いてアニリン誘導体を合成し、続いて上述の縮合反応を行うことができる。
式(1−4)の化合物、および式(1−5)の化合物を含む混合物は、そのまま次の反応へ供することも可能であるが、シリカゲルカラムクロマトグラフィーや、分別再結晶等を用いて、それぞれの位置異性体を分離精製することも可能である。式(1−4)、および(1−5)の異性体は、各々公知化合物であり、1H−NMRデータを取得することで区別することができる。(Bull.Chem.Soc.Jpn.,74,173(2001))
また、式(1−1)の化合物の位置異性体を原料に用いることにより、上記と同様の方法で、式(1−4)の化合物の他の異性体を合成することもできる。
【0013】
[2]式(2−2)の化合物の製造工程
【化8】
(式中、R1およびR2は前記と同義である。)
工程1で得られる式(1−4)の化合物、式(1−5)の化合物、またはそれらの混合物等の、式(2−1)で表される化合物から、実施例に記載された方法などを用いて、式(2−2)の化合物を製造することができる。式(2−2)で表される化合物が位置異性体の混合物である場合は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、分別再結晶等を用いて位置異性体を分離することもできる。
【0014】
[3]式(3−1)の化合物の製造工程
【化9】
(式中、R1およびR2は前記と同義である。)
式(2−2)の化合物に対して、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの塩基、あるいは濃塩酸などの酸の存在下、加水分解反応を行い、式(3−1)で表される本発明の化合物を製造することができる。上記式(3−1)で表される化合物が位置異性体の混合物である場合は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、分別再結晶等を用いて位置異性体を分離することもできる。
式(3−1)で表される化合物は、公知の方法でエステル化反応を行い、カルボキシル基をエステルへと変換することができる。該方法については、新実験化学講座(丸善;第22巻)等に記載されている。
また、前記製造方法で使用されるアミノ基の保護基としては、当業者が通常使用する保護基が挙げられ、保護・脱保護の方法等については、「Protective groups in organic chemistry(第2版/Greene, T.W., John Wiley & Sons, Inc.)に記載された方法等が挙げられる。
【0015】
本発明において、CaMKKは、そのホモログ、アイソフォームも含んでいる。例えばラットCaMKKの配列は、Anderson, K.A. et al. (1998) J. Biol. Chem. 273, 31880-31889 等に記載されているが、CaMKKα、およびCaMKKβの2種類のアイソフォームが知られている。また、ヒトCaMKKの配列についても上記文献等に開示されている。
【0016】
本発明におけるハイスループットスクリーニング方法とは、1度に多数のサンプルの酵素阻害活性を評価することができるスクリーニング方法を表し、具体的には、96穴プレート(具体的には、8.5cm x 12.7cmの大きさのものなどが汎用されている。)等を用いて評価する方法等が挙げられる。
本発明のハイスループットスクリーニング方法は、以下の工程を含むものである。すなわち、
[1]96穴V底プレート等、多数のサンプルを独立した反応槽にサンプリングできる構造を有するプレートの各穴に、被検化合物、CaMKK、カルモジュリンキナーゼIなどの基質、カルモジュリン、[γ−33P]- ATPを添加して、適当な温度、例えば37℃で、約1時間、リン酸化反応を進行させた後、 EDTA、トリクロロ酢酸、塩酸などの試薬を用いて反応を停止させる。
ここで、基質と酵素の相互作用を促進するために、酵素反応時にコールドのATPを添加してもよい。また、33Pの取り込みを完全に停止させるために、反応停止時にコールドのATPを添加してもよい。
[2]各穴の反応液の一部を等量ずつ、シート状のフィルター、好ましくは、リン酸基が導入されたグラスファイバーフィルター上の対応する位置に滴下する。このフィルターをリン酸溶液で5回、エタノールで1回洗浄して未反応の[γ-33P]- ATPを除いた後、乾燥させる。
[3]乾燥後のフィルターにシンチレータ、好ましくは固形シンチレータシートを重ねて熱融解により浸透させ、再固化後、プレートカウンタで[γ-33P]の放射活性を定量する。
ここでCaMKKは、本発明明細書の実施例に示す方法等を用いて調製することができる。
本発明の7H−ベンズイミダゾ−[2,1a]ベンズ[de]イソキノリン−7−オン誘導体は、前述のように、CaMKKに選択的な唯一の阻害剤であり、CaMKK阻害作用を指標とした医薬品のスクリーニング等に用いることができる。例えば、CaMKKの機能はそもそも不明であるが、当該化合物を加えることにより、CaMKKの機能を阻害した細胞培養系を構築することができる。従って、そのような細胞培養系における生理学的な挙動を調べることによって、CaMKKの機能を推定することができる。また、本発明の7H−ベンズイミダゾ−[2,1a]ベンズ[de]イソキノリン−7−オン誘導体は、CaMKKの機能を指標とする種々のスクリーニング系において、陽性、あるいは陰性の対照化合物として用いることができる。
また、本発明の7H−ベンズイミダゾ−[2,1a]ベンズ[de]イソキノリン−7−オン誘導体は、CaMKKの機能亢進が増悪をもたらす疾患の治療剤として用いることができる。
本発明の7H−ベンズイミダゾ−[2,1a]ベンズ[de]イソキノリン−7−オン誘導体は、これを医薬として用いるにあたり、経口的または非経口的(例えば、静脈内、皮下、もしくは筋肉内注射、局所的、経直腸的、経皮的、または経鼻的)に投与することができる。経口投与のための形態としては、例えば、錠剤、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、散剤、液剤、シロップ剤または懸濁剤などが挙げられ、非経口投与のための形態としては、例えば、注射用水性剤もしくは油性剤、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、エアロゾル剤、坐剤、貼付剤などが挙げられる。これらの製剤は、従来公知の技術を用いて調製され、許容される通常の担体、賦形剤、結合剤、安定剤等を含有することができる。また、注射剤で用いる場合には許容される緩衝剤、溶解補助剤、等張剤等を添加することもできる。
本発明の7H−ベンズイミダゾ−[2,1a]ベンズ[de]イソキノリン−7−オン誘導体またはその医薬上許容される塩の投与量、投与回数は、症状、年令、体重、投与形態によって異なるが、通常は成人に対して本発明化合物の有効成分量として、1日あたり約1〜2000mg、好ましくは10〜500mgを1回または数回に分けて投与することができる。
【0017】
【実施例】
以下に実施例および参考例を説明するが、本発明はもとよりこれに限定されるものではない。実施例では、下記の略号が使用されている。
DMSO = ジメチルスルホキシド
TFA=トリフルオロ酢酸
実施例1
化合物の合成(混合物)
工程1
3−ブロモ−7H−ベンズイミダゾ−[2,1a]ベンズ[de]イソキノリン−7−オンおよび4−ブロモ−7H−ベンズイミダゾ−[2,1a]ベンズ[de]イソキノリン−7−オンの混合物
3−ブロモ−1,8−ナフタリンジカルボン酸無水物(2.79g)とO−フェニレンジアミン(1.10g)、酢酸(15ml)をO−クロロベンゼン(25ml)に懸濁させ、100℃で7時間加熱還流した。反応液を放冷後、結晶を濾取、減圧乾燥した後、標記化合物(2.49g)を得た。
1H−NMR(d6−DMSO,300MHz)δ:8.81(m),8.67−8.49(m),8.44(m),8.25(m),8.04(m),7.86(m),7.49(m)
【0018】
工程2
3−シアノ−7H−ベンズイミダゾ−[2,1a]ベンズ[de]イソキノリン−7−オンおよび4−シアノ−7H−ベンズイミダゾ−[2,1a]ベンズ[de]イソキノリン−7−オンの混合物
3−ブロモ−7H−ベンズイミダゾ−[2,1a]ベンズ[de]イソキノリン−7−オンおよび4−ブロモ−7H−ベンズイミダゾ−[2,1a]ベンズ[de]イソキノリン−7−オンの混合物(1.0g)とシアン化銅(I)(0.31g)をピリジン(7.1ml)に加え、封管中、150℃で10時間加熱した。反応液を放冷後、アンモニア水で希釈し沈殿した結晶を濾取した。濾上物は水で洗液が中性になるまで洗浄し、室温で減圧乾燥し、標記化合物(1.13g)を得た。
1H−NMR(d6−DMSO,300MHz)δ:8.78(m),8.61−8.37(m),8.13(m),7.89(m),7.52(m)
【0019】
工程3
3−カルボキシ−7H−ベンズイミダゾ−[2,1a]ベンズ[de]イソキノリン−7−オンおよび4−カルボキシ−7H−ベンズイミダゾ−[2,1a]ベンズ[de]イソキノリン−7−オンの混合物
3−シアノ−7H−ベンズイミダゾ−[2,1a]ベンズ[de]イソキノリン−7−オンおよび4−シアノ−7H−ベンズイミダゾ−[2,1a]ベンズ[de]イソキノリン−7−オンの混合物(100mg)を濃硫酸(10ml)、水(10ml)、酢酸(5ml)に懸濁させ、120℃で5時間加熱した。反応液を放冷後、60mlの水に注入し、室温で1時間撹伴した。反応懸濁液をろ過し、濾上物を室温で減圧乾燥して残渣を得た。これを2%水酸化ナトリウム水溶液に懸濁し、100℃で1時間撹伴した。反応懸濁液をろ過し、濾液を5%塩酸水でpHを3に調整した後、酢酸エチルで抽出し有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥して減圧濃縮後、標記化合物(80mg)を得た。
1H−NMR(d6−DMSO,300MHz)δ:9.31(d,J=7.5Hz),9.03(d,J=7.5Hz),8.72(m),8.39(m),8.04−7.85(m),7.48(m)。
【0020】
実施例2
3−カルボキシ−7H−ベンズイミダゾ−[2,1a]ベンズ[de]イソキノ リン−7−オンと4−カルボキシ−7H−ベンズイミダゾ−[2,1a]ベンズ[de]イソキノリン−7−オンの分離精製
3−カルボキシ−7H−ベンズイミダゾ−[2,1a]ベンズ[de]イソキノリン−7−オンおよび4−カルボキシ−7H−ベンズイミダゾ−[2,1a]ベンズ[de]イソキノリン−7−オンの混合物(70μg)をDMSO(1滴)アセトニトリル(7滴)に溶解し、逆相HPLC条件[カラム,Cosmosil(登録商標)5C18−AR−II(4.6mm×15cm)、移動相,アセトニトリル:水:TFA(45:55:0.05)]で分取し、保持時間10.9分の分画と保持時間11.7分の分画を得、それぞれを減圧濃縮し、異性体A(7.5μg)、異性体B(8.1μg)を得た。
【0021】
実施例3
CaMKKの調製
ラットCaMKKα(配列は以下の文献に記載。Tokumitsu, h. et al. (1995) J. Biol. Chem. 270, 19320-19324) は大腸菌(BL21)を用いて以下の条件で発現および精製した。100μg/ml Ampicillin を含むLB-培地において培養し600 nmの吸光度が1.2 となった時点において0.1mM IPTG(終濃度)を加えさらに12-16時間培養した。その後大腸菌を回収し、超音波破砕した後、その上清をMono Qカラムに供しNaCl濃度勾配により溶出した。本方法により粗精製し、純度約90%の目的とする酵素を得た。
完全精製標品はCaM-セファロースカラムを用いて2mM EGTAを含む溶出液にて溶出することにより純度約95%以上の目的とする酵素を得た。
酵素標品は50mM HEPES pH7.5, 0.5mM EDTA, 0.5mM EGTA, 1mM DTT, 0.1mM PMSF, 40% グリセロール, 10% エチレングリコールに溶解して-30度に保存した。
ラットCaMKKβは、文献(Tokumitsu, H. et al.(2001), Bio-chemistry 40, 13925-13932)記載の方法で調製した。
【0022】
実施例4
CaM−KIの調製
GST-CaMK-I(K49E) およびGST-CaM-KI(1-293, K49E)は大腸菌(JM109)を用いて以下の条件で発現および精製した。100μg/ml Ampicillin を含むLB-培地において培養し600 nmの吸光度が1.2 となった時点において1mM IPTG(終濃度)を加えさらに12-16時間培養した。その後大腸菌を回収し、0.1 mM PMSFを含むPBSに溶かし、超音波破砕した後、その上清をグルタチオンセファロースに供した。グルタチオンセファロースを0.1 mM PMSFを含むPBSにより洗浄し、10 mM グルタチオンを含む50 mM Tris pH 8.0 溶液にてGST-融合タンパク質を溶出した。本方法により純度約90%の目的とする酵素を得た。
精製標品は50mM HEPES pH7.5, 0.5mM EDTA, 0.5mM EGTA, 1mM DTT, 0.1mM PMSF, 40% グリセロール, 10% エチレングリコールに溶解して-30度に保存した。
【0023】
実施例5
CaMKK阻害作用の測定(ハイスループットスクリーニング)
CaMKK(ここではCaMKKαを用いた。)の活性測定は、[γ-33P]-ATPとCaM-KIを基質とし、CaMKKによるリン酸化反応でCaM-KIに導入された[γ-33P]の放射活性を測定することで定量した。以下のアッセイにおいて、各試薬は、緩衝液(10mM Mg(Ac)2、0.1mM CaCl2、1mM DTTを含む50mM HEPES(pH7.5))に溶解し、使用した。被検化合物は、粉末をDMSOに溶解した後、緩衝液で必要濃度に希釈して使用した。
96穴V底プレートの各穴に、種々の濃度の被検化合物溶液10μl、CaMKK、CaMK-I、カルモジュリンを含む溶液10μl、[γ-33P]-ATP、cold ATPを含む溶液10μlを順に添加して、反応を開始させた(反応液総量30μl中の各試薬濃度は、CaMKK:CaMKKストック液20μl/ml、CaM-KI:67μg/ml、カルモジュリン:1μM、[γ-33P]-ATP :6.7μCi/ml(2.2〜6.7nM)、Cold ATP:0.3μM)。37℃で1時間、リン酸化反応を進行させた後、 100mM EDTA、10mM ATPを含む50mM HEPES(pH7.5)を5μlずつ加えて反応を停止させた。
反応停止後、反応液を15μlずつ、シート状のグラスファイバーフィルター(Wallac、filtermat P30)の各穴に対応する位置に滴下、浸透させた。このフィルターを150mMリン酸溶液で5回、エタノールで1回洗浄して未反応の[γ-33P]-ATPを除いた後、乾燥させた。
乾燥後のフィルターに固形シンチレータシートを重ねて熱融解により浸透させ、再固化後、フィルターに補足されたCaM-KIに導入されている[γ-33P]の放射活性をプレート用カウンタで測定、定量した。
被験化合物の阻害率は、以下の式により算出した。
阻害率(%)=100×(A−B)/(A−C)
A:CaMKK添加、被検化合物非添加の場合の放射活性カウント
B:CaMKK添加、被検化合物添加の場合の放射活性カウント
C:CaMKK非添加、被検化合物非添加の場合の放射活性カウント(バックグランド)
1化合物につき4〜5種類の濃度で求めた阻害率を解析して、IC50値を算出した。尚、各濃度においては、N=3で測定し、平均値を求めた。実施例1、および実施例2(異性体B)についてIC50値を測定した結果を表1に示す。
【表1】
【0024】
実施例6
3−ブロモ−7H−ベンズイミダゾ−[2,1a]ベンズ[de]イソキノリン−7−オンおよび4−ブロモ−7H−ベンズイミダゾ−[2,1a]ベンズ[de]イソキノリン−7−オンの合成
Bull.Chem.Soc.Jpn. 74, 173 (2001)に記載された方法を参考に合成した。4−ブロモ−1,8−ナフチル酸無水物(76.3g)の酢酸(300ml)中に室温下でO−フェニレンジアミン(30.15g)およびクロロベンゼン(600ml)を加えた後、5時間還流撹拌をした。反応液を10−15℃に冷却し、結晶を濾取し、3−ブロモ−7H−ベンズイミダゾ−[2,1a]ベンズ[de]イソキノリン−7−オンおよび4−ブロモ−7H−ベンズイミダゾ−[2,1a]ベンズ[de]イソキノリン−7−オンの混合物(一番晶:80.2g,二番晶:11.1g)を得た。一番晶およびほぼ同一組成の結晶(103.99g)を数バッチに分けてクロロホルムで再結晶を繰り返し、4−ブロモ−7H−ベンズイミダゾ−[2,1a]ベンズ[de]イソキノリン−7−オン(14.99g)を得た。二番晶およびほぼ同一組成の結晶(33.75g)をあわせて数バッチに分けてクロロホルムを用いてカラムクロマト精製を繰り返し、3−ブロモ−7H−ベンズイミダゾ−[2,1a]ベンズ[de]イソキノリン−7−オン(1.16g)を得た。それぞれの異性体の構造は、1H-NMRデータを取得し、上記文献記載のデータと比較することで確認した。
【0025】
実施例7
化合物の合成(異性体)
工程1
3−シアノ−7H−ベンズイミダゾ−[2,1a]ベンズ[de]イソキノリン−7−オン
【化10】
実施例6で得た3−ブロモ−7H−ベンズイミダゾ−[2,1a]ベンズ[de]イソキノリン−7−オン(1.13g)とシアン化銅(I)(0.47g)をピリジン(10ml)に加え、封管中、150℃で20時間加熱した。反応液を放冷後、アンモニア水で希釈し沈殿した結晶を濾取した。濾上物は水で洗液が中性になるまで洗浄し、室温で減圧乾燥し、標記化合物を3−ブロモ−7H−ベンズイミダゾ−[2,1a]ベンズ[de]イソキノリン−7−オンとの混合物として得た。収量0.45g。HPLC面百値 83.5%(3−シアノ−7H−ベンズイミダゾ−[2,1a]ベンズ[de]イソキノリン−7−オン)。
1H−NMR(d6−DMSO,300MHz)δ:8.84−8.80(2H,m),8.62(1H,dd,J=8.0,1.0Hz),8.51(1H,d,J=7.5Hz),8.46−8.43(1H,m),8.18(1H,d,J=7.5,1.0Hz),7.94(1H,m),7.54(2H,m)
工程2
3−カルボキシ−7H−ベンズイミダゾ−[2,1a]ベンズ[de]イソキノリン−7−オン
【化11】
3−シアノ−7H−ベンズイミダゾ−[2,1a]ベンズ[de]イソキノリン−7−オン(0.45g)を濃硫酸(5ml)、水(5ml)、酢酸(2.5ml)に懸濁させ、3時間加熱還流した。反応液を放冷後、270mlの水に注入し、反応懸濁液をろ取して残渣を得た。これを2%水酸化ナトリウム水溶液に加熱溶解して不溶物を吸引ろ過により除いた。濾液を5%塩酸水でpHを2に調整した後、析出した結晶をろ取した。得られた粗結晶を酢酸で再結晶し、標記化合物(0.36g)を得た。本化合物は、実施例2の異性体BとHPLC溶出時間保持時間が完全に一致した。本化合物は、1モルの酢酸を含む。
1H−NMR(d6−DMSO,300MHz)δ:9.33(1H,d,J=8.0Hz),8.84−8.76(2H,m),8.45(2H,m),8.06(1H,m),7.92(1H,m),7.54(2H,m),1.91(3H,s)
【0026】
実施例8
化合物の合成(異性体)
工程1
4−シアノ−7H−ベンズイミダゾ−[2,1a]ベンズ[de]イソキノリン−7−オン
【化12】
実施例6で得た4−ブロモ−7H−ベンズイミダゾ−[2,1a]ベンズ[de]イソキノリン−7−オン(6.90g)とシアン化銅(I)(2.18g)をピリジン(40ml)に加え、封管中、150℃で20時間加熱した。反応液を放冷後、アンモニア水で希釈し沈殿した結晶を濾取した。濾上物は水で洗液が中性になるまで洗浄し、室温で減圧乾燥し、粗シアノ体(4.60g)を得た。粗シアノ体(0.8g)をカラムクロマトグラフィーで分離精製し、精シアノ体0.57gを得た。
1H−NMR(d6−DMSO,300MHz)δ:8.89(1H,d,J=8.0Hz),8.76(1H,d,J=7.5Hz),8.56(1H,d,J=7.5Hz),8.48(1H,d、J=8.0Hz),8.43(1H,m),8.16(1H,m),7.90(1H,m),7.54(2H,m)
工程2
4−カルボキシ−7H−ベンズイミダゾ−[2,1a]ベンズ[de]イソキノリン−7−オン
【化13】
4−シアノ−7H−ベンズイミダゾ−[2,1a]ベンズ[de]イソキノリン−7−オン(992mg)を濃硫酸(10ml)、水(10ml)、酢酸(5ml)に懸濁させ、1時間加熱還流した。反応液を放冷後、600mlの水に注入してろ過し、濾上物を室温で減圧乾燥して残渣を得た。これを2%水酸化ナトリウム水溶液に溶解し、1時間加熱還流した。反応懸濁液をろ過し、濾液を5%塩酸水でpHを3に調整した後、析出した結晶をろ取し、酢酸で再結晶した後、標記化合物(179mg)を得た。本化合物は、実施例2の異性体AとHPLC保持時間が完全に一致した。
1H−NMR(d6−DMSO,300MHz)δ:9.06(1H,d,J=8.5Hz),8.82(1H,d,J=7.5Hz),8.76(1H,d,J=7.5Hz),8.46−8.39(2H,m),8.01(1H,m),7.90(1H,m),7.51(2H,m)
【0027】
実施例9
実施例5と同様の方法で、実施例7の化合物および実施例8の化合物のCaMKK阻害活性を測定した。結果を表2に示した。
【表2】
【0028】
実施例10
CaMKK特異性の測定
以下の方法で、各種CaMKK(ここではCaMKKαを用いた。)に対する阻害作用を測定した。
CaMKK(0.28 μg/ml)の活性測定は、100 μM[γ-32P]-ATPと100 μg GST-CaM-KI (1-293, K49E)を基質とし、CaMKKによるリン酸化反応でGST-CaM-KIに導入された[γ-32P]の放射活性を測定することで定量した。反応溶液は10mM Mg(Ac)2、1mM CaCl2、1mMジチオトレイトール, 3 μM カルモデュリンを含む50mM HEPES(pH7.5))使用し、反応時間は5 分間である。被験化合物(実施例1の化合物)は、粉末をDMSOに溶解した後、DMSOで必要濃度に希釈して終濃度4%DMSO存在下の条件でCaMKKの活性を測定した。反応は25μl反応溶液のうち15μlをP-81 Phosphocellurose フィルターにスポットすることにより終了させ、75 mM リン酸溶液にて十分に洗浄し、遊離の[γ-32P]-ATPを除去後乾燥させ放射活性をシンチレーションカウンターにより測定し、CaM-KK活性とした。
【0029】
CaM-KI, CaM-KII, CaM-KIV 活性測定法
CaM-KI(2.5 μg/ml), CaM-KII(0.75 μg/ml), CaM-KIV(0.57 μM) 活性測定は100 μM[γ-32P]-ATPと40 μM syntide-2を基質とし、それぞれのCaM依存性キナーゼによるリン酸化反応でsyntide-2に導入された[γ-32P]の放射活性を測定することで定量した。反応溶液は10mM Mg(Ac)2、1mM CaCl2、1mM DTT, 3 μM カルモデュリンを含む50mM HEPES(pH7.5))使用し反応時間は5 分間である。被験化合物(実施例1の化合物)は、粉末をDMSOに溶解した後、DMSOで必要濃度に希釈して終濃度4%DMSO存在下の条件(CaM-KK 活性測定と同条件)でCaM-KI, CaM-KII, CaM-KIVの活性を測定した。反応は25μl反応溶液のうち15μlをP-81 Phosphocellurose フィルターにスポットすることにより終了させ、75 mM リン酸溶液にて十分に洗浄し、遊離の[γ-32P]-ATPを除去後乾燥させ放射活性をシンチレーションカウンターにより測定し、CaM-KI, CaM-KII, CaM-KIV 活性とした。
結果を表3に示した。
【表3】
【0030】
実施例11
CaMKK ( CaMKK α、β)の阻害活性
精製したリコンビナントCaM-KKα(0.3μg/ml)およびCaM-KKβ(0.5μg/ml)と、10または100μgのGST-CaM-K I (1-293, K49E)を、30℃で5分間、50mM HEPES (pH 7.5)、10 mM Mg(Ac)2、1 mM DTT、50または100μM [γ-32P]ATPを含む溶液(25μl)中で、1mM CaCl2/2または3μM カルモジュリン(CaM)の存在下、種々の濃度の、実施例7の化合物(最終濃度:0-10μg/ml 4%DMSO溶液)と共にインキュベートした。酵素反応は、[γ-32P]ATP を加えることによって開始し、ホスホセルロース紙(Whatman P-81)上に 15μlをスポットすることによって終了させ、これを75mM リン酸で数回洗浄した。GST-CaM-K I (1-293, K49E)への取り込みは、フィルターの液体シンチレーションカウントを測定することによって定量した。結果を表4に示した。
【0031】
CaMK I 、 II 、 IV 、および MLCK に対する阻害効果
CaMK Iは、実施例10と同様に調製した。CaMIIは文献(Tokumitsu et al. (1990)J. Biol. Chem. 265, 4315-4320)に記載の方法で調製した。CaMIVは文献( Brickey, D.A., et al.(1990)Biochem. Biophys. Res. Commun. 173, 578-584)に記載の方法で調製した。CaM-K I(2.5μg/ml)、CaM-K II(0.75μg/ml)、CaM-K IV(9μg/ml)、またはMLCK(広島大学、Dr. Hiroshi Hosoyaより分与 ,0.6μg/ml)と、40μM Syntide-2(MLCKについては、50μM MLCペプチド)を、30℃で5分間、50mM HEPES (pH 7.5)、10 mM Mg(Ac)2、1 mM DTT、50または100μM [γ-32P]ATPを含む溶液(25μl)中で、1mM CaCl2/2または3μM カルモジュリン(CaM)の存在下、種々の濃度の実施例7の化合物(最終濃度:0-10μg/ml 4%DMSO溶液)と共にインキュベートした。プロテインキナーゼ活性は、実施例10に記載されたホスホセルロースフィルター法で測定した。
【0032】
PKA 、 PKC 、および p42MAP キナーゼに対する阻害効果
PKA(Promega、8μg/ml)、PKC(Promega、25ng/ml)、またはp42MAPキナーゼ(upstate biotechnology、2μg/ml)を、それぞれ100μM Kemptamide(PKA基質)、100μM Neurograninペプチド(PKC基質;プロメガ製)、または0.4mg/ml Myelin basic protein(p42 MAPキナーゼ基質)と、30℃で5分間、50mM HEPES (pH 7.5)、10 mM Mg(Ac)2、1 mM DTT、50μM [γ-32P]ATP (4500cpm/pmol)を含む溶液(25μl)中で、1mM CaCl2/0.4μg/ml ホスファチジルセリンおよび0.1mg/ml BSAの存在下(PKC)、あるいは非存在下(PKAおよびp42MAPキナーゼ)に、種々の濃度の実施例7の化合物(最終濃度:0-10μg/ml 4%DMSO溶液)と共にインキュベートした。プロテインキナーゼ活性は、実施例10に記載されたホスホセルロースフィルター法で測定した。
結果を表4に示した。
【表4】
【0033】
実施例12
ヒト神経芽細胞腫における内因性 CaMKK に対する阻害効果
Ca2+/CaM-非依存型CaMK-IV(305HMDT-DEDD)、機能不全変異型CaMK-IV(305HMDT-DEDD、K71E)、恒常的活性型CaM-KK(1-434)のcDNAを含むリコンビナントアデノウイルスは以下のように調製した。すなわち、pME18sプラスミド中のcDNAを制限酵素で切り出し、末端を平滑化してpShuttle(Clontech)中に組み込んだ。Adeno-X発現システム(Clontech)を用いて添付のプロトコールに従い、HEK293細胞よりリコンビナントウイルスが得られた。6穴培養プレートに播種してコンフルエントになったSY5Y細胞に、上記のように得られたリコンビナントウイルスを種々の組み合わせで、37℃1時間、10プラーク形成単位/Cellの感染多重度(M.O.I.)で感染させた。感染後、ウイルスは吸引除去し、細胞は更に10%FBSを含むRPMI培地で12時間培養した。その後細胞を6時間、種々の濃度の実施例7の化合物(最終濃度:0-10μg/ml 0.5%DMSO溶液)の存在あるいは非存在下に無血清状態で培養した。細胞を1μM イオノマイシン存在下あるいは非存在下で10分間刺激した後、溶解し、抽出物をSDS-7.5% PAGEに供した。これに抗CaM-K IV抗体(1:2000、Transduction Lab.)または抗phosphoThr286CaM-KII抗体(熊本大 Dr.Koji Fukunagaより供与)を用いてウエスタン・ブロッティングを行った。フィルム上のCaM-K IVの免疫反応性バンドをデンシトメーターでスキャンして数値化し、化合物1がCaM-K IVの活性型形成に及ぼす効果を定量した。結果を図1に示した。
この結果から、実施例7の化合物は細胞膜透過性を有し、ヒト神経芽細胞腫の細胞内で内因性CaM-KKに対しても阻害作用を示すことがわかる。
【0034】
【発明の効果】
本発明の7H−ベンズイミダゾ−[2,1a]ベンズ[de]イソキノリン−7−オン誘導体またはその塩は、その高い選択性のために、CaMKKの生理作用を解明するために有用である。更に、本発明の化合物は、高い選択性を示すため、生体内で重要な役割を果たしている他の種類のカルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼ類を阻害することがない。従ってCaMKK由来の病態のみを改善する薬剤の有効成分となり得る。上記のように本発明により、選択的なカルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼキナーゼの阻害剤を提供することが可能になった。
【0035】
【図面の簡単な説明】
【図1】 Aは、遺伝子組み込みでヒト神経芽細胞腫内に発現させたCa2+/CaM-非依存型CaM-KIVが、細胞内でCaM-KKにより確かに活性型になる(リン酸化される)ことを示す。
Bは、ヒト神経芽細胞腫において遺伝子組み込みにより発現されたCa2+/CaM-非依存型CaM-KIVが内因性CaM-KKにより活性化(リン酸化)され、実施例7の化合物がそれを濃度依存的に阻害していることを示す。
Cは、CaM-KIIのリン酸化に対しては、実施例7の化合物の阻害作用が弱く、その阻害作用がCaMKK特異的であることを示す。
Claims (6)
- R1およびR2が水素原子である、請求項1記載のカルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼキナーゼ阻害剤。
- R3が水素原子である、請求項1または2記載のカルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼキナーゼ阻害剤。
- R1およびR2が水素原子である、請求項4記載のカルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼキナーゼ阻害剤。
- R3が水素原子である、請求項4または5記載のカルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼキナーゼ阻害剤。
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