JP4147299B2 - 熱電子発電素子とアルカリ金属熱電変換素子とから構成される複合発電素子および複合発電システム - Google Patents
熱電子発電素子とアルカリ金属熱電変換素子とから構成される複合発電素子および複合発電システム Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱電子発電素子と複数のアルカリ金属熱電変換素子との発電出力、および熱の流れを直列接続化した複合発電素子および複合発電システムに関するものである。本発明は、前記熱電子発電素子と複数のアルカリ金属熱電変換素子の両者を直列接続化することにより、熱から電力への変換効率の向上と、小型化を図るものである。
【0002】
【従来の技術】
図5は従来の熱電子発電素子とアルカリ金属熱電変換素子との複合発電素子を説明するための模式図である。図5において、複合発電素子は、熱電子発電素子51と、ナトリウムヒートパイプ52と、密閉容器53と、アルカリ金属熱電変換素子54とから構成されている。
【0003】
熱電子発電素子51は、熱エネルギーを受け取るエミッタ電極511と、当該エミッタ電極511が高温に加熱されて放出された熱電子を集めるコレクタ電極512とから構成されている。
【0004】
ナトリウムヒートパイプ52は、前記熱電子発電素子51によって得られた熱エネルギーをアルカリ金属熱電変換素子54に伝えるものであり、内部表面に形成されているウイック材521と、内部に収納されている液体ナトリウム522とから構成される。
【0005】
密閉容器53は、熱電子発電素子51の下部に絶縁セラミック513を介して取り付けられていると共に、前記ナトリウムヒートパイプ52と、後述するアルカリ金属熱電変換素子54と、液体ナトリウム531と、ヒートシールド532と、ウイック管533と、前記液体ナトリウム531を気化させるエバポレータ534とが収納されている。なお、下部には、液体ナトリウム531を冷却するための、図示されていない、ラジエータが設けられている。
【0006】
前記複数のアルカリ金属熱電変換素子54は、前記ナトリウムヒートパイプ52の周囲に設けられており、固体電解質からなるベース管543と、その内部に設けられたカソード電極541と、その外部に設けられたアノード電極542とから構成されている。また、前記複数のアルカリ金属熱電変換素子54は、それぞれプラスおよびマイナスの出力端子を有し、これらを直列に接続して出力とする。
【0007】
従来の複合発電素子の熱電子発電素子51は、エミッタ電極511によって、太陽熱、原子力エネルギー、燃焼熱等の熱源から熱エネルギーを受け取り、高温で加熱され、熱電子を放出する。前記放出された熱電子は、前記エミッタ電極511に対向配置されたコレクタ電極512に集められ、前記コレクタ電極512を負、エミッタ電極511を正とする起電力を発生させる。
【0008】
また、前記コレクタ電極512の熱エネルギーは、ナトリウムヒートパイプ52に伝達される。前記密閉容器53の上方部に配置された複数のアルカリ金属熱電変換素子54は、前記ナトリウムヒートパイプ52から熱エネルギーを熱伝導および輻射による熱として受け取る。
【0009】
一方、密閉容器53内の液体ナトリウム531は、ウイック管533の毛細管力によって上部に配置されているエバポレータ534によって気化される。気化されたナトリウムは、ナトリウム圧力の高いベース管543外のアノード電極542から圧力の低いベース管543内のカソード電極541にイオン化された状態で移動する。この際のイオンの移動が起電力となる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
図5に示す従来の複合発電素子は、熱エネルギーをナトリウムヒートパイプ52を介して、アルカリ金属熱電変換素子54に伝達させるため、ナトリウムヒートパイプ52の存在によって、小型化ができないという課題があった。また、前記従来の複合発電素子は、ナトリウムヒートパイプ52の放熱部の近傍に配置し、その熱伝導および輻射熱を利用して加熱するため、固体電解質からなるβアルミナベース管543の熱伝導が悪く、均一に加熱することが困難であるという課題があった。
【0011】
前記従来の複合発電素子は、ナトリウムヒートパイプ52を介して熱流の整合を図っているが、ナトリウムヒートパイプ52が存在するために、複合発電素子としての大きさが大きくなり、それに伴う熱損失も増大するという課題があった。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以上のような課題を解決するためのものであり、熱電子発電素子と複数のアルカリ金属熱電変換素子とを電気的に直列に接続すると共に、前記両者の熱的結合を整合させることにより、熱電子発電素子とアルカリ金属熱電変換素子とから構成される小型で効率のよい複合発電素子を提供することを目的とする。また、本発明は、前記複合発電素子を直列および/または並列に接続することによって、電圧または電流を大きく取り出すことができる複合発電システムを提供することを目的とする。
【0013】
(第1発明)
第1発明の熱電子発電素子とアルカリ金属熱電変換素子とから構成される複合発電素子は、エミッタ電極と、前記エミッタ電極の下部にコレクタ電極とを備えた熱電子発電素子と:
前記熱電子発電素子のコレクタ電極に接合された管状のカソード電極と、前記管状のカソード電極の内側で固体電解質管の内部に設けられているアノード電極と、前記固体電解質管の内部に設けられている液体ナトリウムを気化するエバポレータと、前記液体ナトリウムを前記エバポレータに輸送する金属ウイック管と、を有する複数のアルカリ金属熱電変換素子と:前記アルカリ金属熱電変換素子を収納する上部密閉容器と:
前記液体ナトリウムが収納されている下部密閉容器と:
前記上部密閉容器と下部密閉容器とを電気絶縁する絶縁部材、および熱遮蔽する熱シールド板と:
を備えていることを特徴とする。
【0014】
(第2発明)
第2発明の熱電子発電素子とアルカリ金属熱電変換素子とから構成される複合発電素子において、コレクタ電極は、下方を開放した有底筒状体のエミッタ電極の下部に対向配置されていると共に、複数のアルカリ金属熱電変換素子のカソード電極が並列に接合されていることを特徴とする。
【0015】
(第3発明)
第3発明の複合発電素子におけるアルカリ金属熱電変換素子において、前記固体電解質管の内側上部に設けられているエバポレータでナトリウムを蒸発させることにより、前記固体電解質管の内部に設けられているアノード電極上で凝縮させ、その蒸発潜熱を放出することを特徴とする。
【0016】
(第4発明)
第4発明の熱電子発電素子とアルカリ金属熱電変換素子とから構成される複合発電素子において、前記熱電子発電素子のコレクタ電極は、金属フェルトを介して固体電解質管の外側に設けられたカソード電極と接合されていることを特徴とする。
【0017】
(第5発明)
第5発明の熱電子発電素子とアルカリ金属熱電変換素子とから構成される複合発電素子において、負出力端子の取り出し位置は、前記熱シールド板の上部に設けられていることを特徴とする。
【0018】
(第6発明)
第6発明の熱電子発電素子とアルカリ金属熱電変換素子とから構成される複合発電素子において、液体ナトリウムは、ウイック材と共に下部密閉容器の下部に充填されていることを特徴とする。
【0019】
(第7発明)
第7発明の熱電子発電素子とアルカリ金属熱電変換素子とから構成される複合発電素子において、前記熱電子発電素子のコレクタ電極とアルカリ金属熱電変換素子のカソード電極とは、同電位であり、前記下部密閉容器は、複数のアルカリ金属熱電変換素子のアノード電極が金属ウイック管を通じて並列に接続されていることを特徴とする。
【0020】
(第8発明)
第8発明の熱電子発電素子とアルカリ金属熱電変換素子とから構成される複合発電システムは、少なくとも二つの複合発電素子を並列または直列に接続して発電出力を取り出すことを特徴とする。
【0021】
【発明の実施の形態】
(第1発明)
第1発明の複合発電素子は、熱電子発電素子と、アルカリ金属熱電変換素子と、アルカリ金属熱電変換素子を収納する上部密閉容器と、液体ナトリウムを収納すると共に前記ナトリウムをアルカリ金属熱電変換素子に輸送するウイック管が格納されている下部密閉容器と、前記上部密閉容器と下部密閉容器とを電気的および熱的に遮蔽する絶縁部材および熱シールド板とから構成されている。
【0022】
前記熱電子発電素子は、熱エネルギーを受け取り、熱電子を放出するエミッタ電極と、前記エミッタ電極に対向配置されており、前記放出された熱電子を集めるコレクタ電極とを備えている。そして、前記エミッタ電極が正、コレクタ電極が負となる起電力が発生する。前記起電力の大きさは、エミッタ電極の仕事関数とコレクタ電極の仕事関数の差に比例し、出力電流密度は、熱電子放出に関するリチャードソンの式によって規定される。
【0023】
アルカリ金属熱電変換素子は、たとえば、管状の固体電解質管の内部に設けられたアノード電極と、前記固体電解質管の外側に設けられたカソード電極と、前記固体電解質管の内部に設けられ液体ナトリウムを気化するエバポレータとから構成されている。また、複数の前記カソード電極は、前記熱電子発電素子のコレクタ電極に接合されている。また、前記固体電解質管の外側に設けられたカソード電極、および内側に設けられたアノード電極は、多孔質の性質を有するものである。
【0024】
前記上部密閉容器は、上部が熱電子発電素子に接合されると共に、複数の前記アルカリ金属熱電変換素子が収納されている。前記下部密閉容器は、液体ナトリウムを収納すると共に、前記液体ナトリウムを前記エバポレータに輸送するウイック管が収納されている。前記上部密閉容器と下部密閉容器との間には、電気的に絶縁する絶縁部材および相互の熱が移動しないように遮蔽する熱シールド板が設けられている。
【0025】
前記下部密閉容器に収納されている液体ナトリウムは、前記ウイック管によってエバポレータに輸送され、固体電解質管の内部で気化される。前記気化されたナトリウムは、内部のアノード電極上で凝縮し、液体ナトリウムとなり、蒸発潜熱を放出してアノード電極を加熱する。ナトリウムは、アノード電極と固体電解質との界面において、イオン化してNa+イオンになる。前記Na+イオンは、固体電解質管の内外の蒸気圧力差を駆動力として、前記固体電解質管の内側から外側に向かって流れる。
【0026】
アルカリ金属熱電変換素子の外側において、Na+イオンは、電子を受け取り、ナトリウムの蒸気となって、下部密閉容器の下部の低温部において液化される。前記液化されたナトリウムは、ウイック管によってエバポレータに輸送され、このサイクルを繰り返す。
【0027】
第1発明は、熱電子発電素子のコレクタ電極と複数のアルカリ金属熱電変換素子のカソードを直接並列に接合したため、小型かつ熱から電力への変換効率を向上させることができた。また、第1発明は、アルカリ金属熱電変換素子における固体電解質管、エバポレータ、ウイック管の形状および構造によって、前記エバポレータによって蒸発したナトリウム蒸気が内部のアノード電極上で蒸発潜熱を放出することによって、アノード電極、ひいては固体電解質管全体を均一に加熱することができるようになった。
【0028】
第1発明の熱電子発電素子には、複数のアルカリ金属熱電変換素子を全て並列接続させ、各アルカリ金属熱電変換素子の固体電解質管の外側のカソード電極の電位を熱電子発電素子のコレクタ電極と同電位に保つことによって、熱電子発電素子とアルカリ金属熱電変換素子の電気的直列接続が容易にできる。その際の熱電子発電素子とアルカリ金属熱電変換素子との熱的電気的バランスは、アルカリ金属熱電変換素子の電極面積と本数、および動作温度を制御することによって実現することができる。
【0029】
(第2発明)
第2発明の熱電子発電素子は、下方に開放された有底筒状体のエミッタ電極および前記エミッタ電極の下部に対向配置されたコレクタ電極から構成されている。また、前記コレクタ電極には、複数のアルカリ金属熱電変換素子のカソード電極が並列に接合されている。前記このような形状は、複合発電素子を小型にできるだけでなく、熱を効率良く利用することができる。
【0030】
(第3発明)
第3発明のアルカリ金属熱電変換素子は、固体電解質管の上方を閉塞し、下方を開放した管状にし、その内部における上部に、ナトリウムを蒸発させるエバポレータが設けられている。前記エバポレータによって蒸発されたナトリウムは、前記固体電解質管の内部に設けられているアノード電極上で凝縮される。前記凝縮される際の蒸発潜熱は、前記固体電解質管を均一に加熱する。
【0031】
(第4発明)
第4発明において、熱電子発電素子のコレクタ電極は、金属フェルトを介して固体電解質管の外側に設けられたカソード電極に接合されている。前記金属フェルトは、前記両者の良好な熱伝導、電気伝導を図ると同時に、高温加熱時に発生する熱応力による固体電解質管の破壊を防止することができる。
【0032】
(第5発明)
第5発明において、負出力端子の取り出し位置は、前記熱シールド板の上部に設けられているため、次段の複合発電素子の正出力端子に接続する際の温度差が少なく、リード線による熱損失を軽減することができる。
【0033】
(第6発明)
第6発明において、液体ナトリウムは、ウイック材と共に下部密閉容器の下方に充填されている。下部密閉容器内の下方にウイック材と共に充填された液体ナトリウムは、無重力状態で前記密閉容器の向きに変化があっても、前記充填されたウイック材と共に保持されるため、ウイック管を通してエバポレータに液体ナトリウムを輸送することができる。
【0034】
(第7発明)
第7発明において、熱電子発電素子のコレクタ電極と複数のアルカリ金属熱電変換素子のカソード電極とは、同電位になるように並列接続されている。前記下部密閉容器において、前記複数のアルカリ金属熱電変換素子のアノード電極は、金属ウイック管を通じて並列に接続されている。すなわち、前記熱電子発電素子と複数のアルカリ金属熱電変換素子とは、電気的に直列に接続されている。
【0035】
(第8発明)
第8発明において、熱電子発電素子と複数のアルカリ金属熱電変換素子とから構成される複合発電素子は、少なくとも二つが並列または直列に接続されて発電出力を取り出すことができ、効率のよい発電システムとなる。
【0036】
【実施例】
図1は本発明の1実施例である複合発電素子を説明するための模式図である。図1において、複合発電素子は、熱電子発電素子Aと、複数のアルカリ金属熱電変換素子Bと、上部密閉容器Cと、下部密閉容器Dとから構成されている。
【0037】
前記熱電子発電素子Aは、太陽熱、原子力エネルギー、燃焼熱等の熱源から熱エネルギーを受け取ることができる、たとえば、ディスク状に形成されたエミッタ電極1と、前記エミッタ電極1から放出された熱電子を集めるために、前記エミッタ電極1と略同形状で対向して配置されたコレクタ電極2と、前記エミッタ電極1およびコレクタ電極2に接続され、前記エミッタ電極1を正、前記コレクタ電極2を負とする起電力を得るためのエミッタヒートチョーク3およびコレクタヒートチョーク4と、前記エミッタヒートチョーク3およびコレクタヒートチョーク4とを絶縁する絶縁セラミック5とから構成されている。
【0038】
前記エミッタヒートチョーク3とコレクタヒートチョーク4との間に発生する起電力の大きさは、前記エミッタ電極1の仕事関数と、前記コレクタ電極2の仕事関数の差に比例し、出力電流密度は、熱電子放出に関するリチャードソンの式によって規定される。
【0039】
図2は本発明の複合発電素子に使用されるアルカリ金属熱電変換素子を説明するための図である。図2において、アルカリ金属熱電変換素子Bは、上部に備えられ、ナトリウムを気化し易くするためのウイック材が設けられているエバポレータ7と、たとえば、下部が開放された有底筒状体のβアルミナベース管からなる固体電解質管8と、前記固体電解質管8の外部を覆うガス透過性部材からなるカソード電極9と、前記カソード電極9の外周を取り巻くように設けられた集電リード線9′と、前記固体電解質管8の内側に設けられたガス透過性部材からなるアノード電極10と、前記アノード電極10の内側に設けられたアノード金網10′と、前記固体電解質管8の開放端部をシールするシールキャップ11と、前記エバポレータ7に液体ナトリウムを輸送するウイック管12とから構成されている。
【0040】
前記ウイック管12は、内部にナトリウムに対して毛細管力を持つウイック材が充填されている。前記ウイック材は、金属ないしセラミック製微粉末焼結体からなる。液体ナトリウム15は、前記毛細管力によって、下部密閉容器Dの下部からウイック管12を介してエバポレータ7に輸送される。
【0041】
前記エバポレータ7は、ウイック管12から輸送されて来た液体ナトリウム15が気化され易いようにウイック材に保持させる。また、前記カソード電極9の外周に巻かれている集電リード線9′は、カソード電極9が薄膜から構成されているため、電気抵抗が高く、ジュール損失を減らす目的で、金属線が用いられている。前記カソード電極9は、たとえば、Mo、TiN等の材料からなる。
【0042】
アノード金網10′は、カソード集電リード線9′と同じ理由により、ジュール損失を減らす目的で、金網としている。シールキャップ11は、固体電解質管(βアルミナベース管)8の内部がナトリウム蒸気高圧側で、外部が低圧側となるように仕切るものである。
【0043】
図1において、以上説明したような、複数のアルカリ金属熱電変換素子Bのカソード電極9と、前記熱電子発電素子Aのコレクタ電極2との結合方式には、両者を直接接合する方式と、両者を金属フェルト6を介して接合する方式とが可能である。後者の方式の場合、金属フェルト6は、前記熱電子発電素子Aのコレクタ電極2と複数のアルカリ金属熱電変換素子Bのカソード電極9との電気的および熱的接続を良好に保つためのものであり、また、熱応力により、固体電解質管8が破壊されるのを防止するためのものである。
【0044】
図1にしたがって、複合発電素子の動作機構について説明する。前記熱電子発電素子Aのエミッタ電極1は、太陽熱、原子力エネルギー、燃焼熱等の熱源から熱エネルギーを受け取り、熱電子を放出する。前記エミッタ電極1に対向して設けられたコレクタ電極2は、前記放出された熱電子が集められ、コレクタ電極2が負、エミッタ電極1が正となる起電力が発生する。
【0045】
前記コレクタ電極2の裏面(排熱側)には、複数本のアルカリ金属熱電変換素子Bが接合され、コレクタ電極2の排熱を受けてアルカリ金属熱電変換素子Bの動作温度まで加熱されて発電を行う。また、前記発電は、高温時の固体電解質管8のNa+イオン導電性を利用して行われる。前記固体電解質管8の外側には、ガス透過性のあるカソード電極9が、また、内側には、ガス透過性のあるアノード電極10が設けられている。
【0046】
前記固体電解質管8の内部には、ナトリウムを気化するエバポレータ7があり、当該エバポレータ7で蒸発したナトリウムがアノード電極10上で液化して、液体ナトリウム15となる。この時の蒸発潜熱は、アノード電極10を加熱する。前記ナトリウムは、イオン化してNa+イオンとなる。前記Na+イオンは、固体電解質管8の内外のナトリウム蒸気圧力の差を駆動力として、固体電解質管8を内から外に向かって流れる。
【0047】
前記固体電解質管8の外側において、Na+イオンは、電子を受け取りナトリウム蒸気となって下部密閉容器Dの低温部で液化される。前記固体電解質管8の内部におけるナトリウム蒸気圧力は、動作温度1000Kないし1200Kにおいて、約105 Pa、その外部のナトリウム蒸気圧力は、凝縮部の温度が400Kないし500Kにおいて、約1Pa以下である。このように、Na+イオンは、固体電解質管8における内外のナトリウム蒸気圧力差によって、内側から外側へ駆動される。
【0048】
ウイック管12は、きわめて細い金属管で、内部に液体ナトリウム15に対して毛細管力を持つウイック材が充填されている。下部密閉容器Dの低温部で凝縮された液体ナトリウム15は、前記ウイック管12によりエバポレータ7に輸送された後、固体電解質管8に輸送され、発電に寄与し、また、下部密閉容器Dに戻るといったサイクルを繰り返す。複数のアルカリ金属熱電変換素子Bは、全て並列に接続され、カソード電極9は、熱電子発電素子Aのコレクタ電極2と同電位に保持される。
【0049】
さらに、本発明の動作機構について詳述する。本発明の複合発電素子は、ナトリウムヒートパイプを介することなく、熱電子発電素子Aとアルカリ金属熱電変換素子Bとが直接一体化されており、両者を流れる熱流に関して、エネルギー保存則が成り立つ必要がある。また、前記複合発電素子の発電出力は、1個の熱電子発電素子Aと、当該熱電子発電素子Aに対して並列に接続された複数のアルカリ金属熱電変換素子Bとが電気的に直列に接続されている。
【0050】
したがって、1個の熱電子発電素子Aと、アルカリ金属熱電変換素子Bとは、発電電流が等しくなければならない。熱電子発電素子Aと複数のアルカリ金属熱電変換素子Bの発電特性は、動作温度の影響を受けて変化するが、次の様な関係がある。すなわち、両者の発電特性の典型的な例として、
熱電子発電素子:(Vt,Jt)=(0.8ボルト、5A/cm2)、
電極面積 St、
アルカリ金属熱電変換素子:(Va,Ja)=(0.5ボルト、0.8A/cm2)、電極面積 Saとすると、
熱電子発電素子Aと、アルカリ金属熱電変換素子Bの発電電流が等しいという条件から、
JtSt=JaSa
Sa/St=Jt/Ja は 約6となる。
ただし、tは熱電子発電素子、aはアルカリ金属熱電変換素子
Vは電圧、Jは電流、Sは面積を表す。
【0051】
すなわち、前記の発電電流が等しくなければならないという条件から、アルカリ金属熱電変換素子Bの電極面積は、熱電子発電素子Aの電極面積の6倍程度が必要なことになる。アルカリ金属熱電変換素子Bは、その直径、有効長、並列接続本数等を変えることにより、この電極面積比の値を成り立つようにすることができる。次に、前記アルカリ金属熱電変換素子Bが、熱電子発電素子Aの6倍程度の面積比をもつことを前提として、複合発電素子の動作温度レベルを制御すれば、アルカリ金属熱電変換素子Bと熱電子発電素子Aとが、共に最適条件で発電するために必要とされる熱流速を実現できる。
【0052】
図3は本発明の他の実施例である複合発電素子を説明するための模式図である。図3において、図1の実施例と異なるところは、熱電子発電素子Aの形状にある。すなわち、前記熱電子発電素子Aのエミッタ電極31およびコレクタ電極32は、下方を開放した有底筒状体から構成されている。そして、前記エミッタ電極31は、熱エネルギーを受けるため外側であり、前記コレクタ電極32は、内側に対向配置されている。前記有底筒状体は、複数のアルカリ金属熱電変換素子Bを包むようになっているため、前記エミッタ電極31で受け入れた熱エネルギーを有効に使用することができる。
【0053】
図4は本発明の複合発電素子を複数個接続した複合発電システムを説明するための図である。図4において、複合発電素子Aと複合発電素子A′は、図1に示すものと同じであり、これらが電気的に直列接続されている点で異なっている。すなわち、複合発電素子Aにおける(−)出力端子(アノード電極)41と、複合発電素子A′の(+)入力端子(エミッタ電極)42とが電気的に接続されている。このような複合発電素子Aと複合発電素子A′との接続は、高い電圧を取り出すことができる。なお、大きい電流が必要な場合、または高い電圧と電流が必要な場合、前記各複合発電素子を必要な数だけ、並列および/または直列に接続することができる。
【0054】
前記複合発電素子Aと複合発電素子A′の接続は、熱シールド板14の上で行われる。前記熱シールド板14より上の位置は、温度的に高く保持されており、二つの複合発電素子A、A′を接続しても熱損失を少なくすることができる。なお、図1および図4には、下部密閉容器Dを冷却するラジエータが図示されていないが、図3と同様に、備えているものとする。
【0055】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではない。そして、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。
【0056】
たとえば、熱電子発電素子の電極形状、材料、アルカリ金属熱電変換素子の直径、有効長、並列接続本数、材料等は、電気的整合、熱的整合を考慮して任意に変えることができる。また、熱電子発電素子とアルカリ金属熱電変換素子との接続を直列および/または並列接続する方法は、複合発電システムに必要な電圧および電流に合わせて設計することができる。
【0057】
【発明の効果】
本発明によれば、ナトリウムヒートパイプを使用せずに、熱電子発電素子のコレクタ電極と複数のアルカリ金属熱電変換素子のカソード電極を直接並列に接合したため、小型かつ熱から電力への変換効率を向上させることができた。
【0058】
本発明によれば、アルカリ金属熱電変換素子における固体電解質管、エバポレータ、ウイック管の形状および構造によって、前記エバポレータによって蒸発したナトリウム蒸気が内部のアノード電極上で蒸発潜熱を放出することによって、アノード電極、ひいては固体電解質管全体を均一に加熱することができるようになった。
【0059】
本発明によれば、複数のアルカリ金属熱電変換素子を熱電子発電素子のコレクタ電極に並列に直接接続し、前記各アルカリ金属熱電変換素子の固体電解質管の外側のカソード電極の電位を前記熱電子発電素子のコレクタ電極と同電位に保つことによって、熱電子発電素子とアルカリ金属熱電変換素子の電気的直列接続が容易にできる。
【0060】
本発明によれば、熱電子発電素子と複数のアルカリ金属熱電変換素子との熱的電気的バランスをアルカリ金属熱電変換素子の電極面積(直径、有効長)と本数、および動作温度を制御することによって容易に達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施例である複合発電素子を説明するための模式図である。
【図2】本発明の複合発電素子に使用されるアルカリ金属熱電変換素子を説明するための図である。
【図3】本発明の他の実施例である複合発電素子を説明するための模式図である。
【図4】本発明の複合発電素子を複数個接続した複合発電システムを説明するための図である。
【図5】従来の熱電子発電素子とアルカリ金属熱電変換素子との複合発電素子を説明するための模式図である。
【符号の説明】
A・・・熱電子発電素子
B・・・アルカリ金属熱電変換素子
C・・・上部密閉容器
D・・・下部密閉容器
1・・・エミッタ電極
2・・・コレクタ電極
3・・・エミッタヒートチョーク
4・・・コレクタヒートチョーク
5・・・絶縁セラミック
6・・・金属フェルト
7・・・エバポレータ
8・・・固体電解質管
9・・・カソード電極
9′・・・集電リード線
10・・・アノード電極
10′・・・アノード金網
11・・・シールキャップ
12・・・ウイック管
13・・・絶縁セラミック
14・・・熱シールド板
15・・・液体ナトリウム
16・・・ラジエータ
Claims (8)
- エミッタ電極と、
前記エミッタ電極の下部にコレクタ電極を備えた熱電子発電素子と:
前記熱電子発電素子のコレクタ電極に接合された管状のカソード電極と、
前記管状のカソード電極の内側で固体電解質管の内部に設けられているアノード電極と、
前記固体電解質管の内部に設けられている液体ナトリウムを気化するエバポレータと、
前記液体ナトリウムを前記エバポレータに輸送する金属ウイック管と、
を有する複数のアルカリ金属熱電変換素子と:
前記アルカリ金属熱電変換素子を収納する上部密閉容器と:
前記液体ナトリウムが収納されている下部密閉容器と:
前記上部密閉容器と下部密閉容器とを電気絶縁する絶縁部材および熱遮蔽する熱シールド板と:
を備えていることを特徴とする熱電子発電素子とアルカリ金属熱電変換素子とから構成される複合発電素子。 - 前記コレクタ電極は、下方を開放した有底筒状体のエミッタ電極の下部に対向配置されていると共に、複数のアルカリ金属熱電変換素子のカソード電極が並列に接合されていることを特徴とする請求項1に記載された熱電子発電素子とアルカリ金属熱電変換素子とから構成される複合発電素子。
- 前記アルカリ金属熱電変換素子において、前記固体電解質管の内側上部に設けられているエバポレータでナトリウムを蒸発させることにより、前記固体電解質管の内部に設けられているアノード電極上で凝縮させ、その蒸発潜熱を放出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載された熱電子発電素子とアルカリ金属熱電変換素子とから構成される複合発電素子。
- 前記熱電子発電素子のコレクタ電極は、金属フェルトを介して固体電解質管の外側に設けられたカソード電極と接合されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載された熱電子発電素子とアルカリ金属熱電変換素子とから構成される複合発電素子。
- 負出力端子の取り出し位置は、前記熱シールド板の上部に設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載された熱電子発電素子とアルカリ金属熱電変換素子とから構成される複合発電素子。
- 前記液体ナトリウムは、ウイック材と共に下部密閉容器の下部に充填されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載された熱電子発電素子とアルカリ金属熱電変換素子とから構成される複合発電素子。
- 前記熱電子発電素子のコレクタ電極とアルカリ金属熱電変換素子のカソード電極とは同電位であり、前記下部密閉容器は、複数のアルカリ金属熱電変換素子のアノードを金属ウイック管を通じて並列に接続することにより前記アノード電極と同電位であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載された熱電子発電素子とアルカリ金属熱電変換素子とから構成される複合発電素子。
- 少なくとも二つの複合発電素子を並列または直列に接続して発電出力を取り出すことを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載された熱電子発電素子とアルカリ金属熱電変換素子とから構成される複合発電システム。
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