JP4147275B2 - 濃度測定用センサー - Google Patents
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Description
活性酸素種の1種であるスーパーオキシドイオンの生体内での濃度測定は各種疾患の特定などのために重要である。従来インビトロ(in vitro、体外) で、チトクロムC(3価、Fe3+)のスーパーオキシドイオンによる還元反応(式(1))により生ずるチトクロムC(2価)の550 nmの光吸収量を測定することにより前記スーパーオキシドイオンの定量、及びこれを応用するSODの濃度測定が試みられている。SODの濃度測定はSODが活性であると式(1)の反応が進行せず、チトクロームC(2価)が生成しないことを利用する。しかし反応が遅くかつ操作が煩雑であるという問題があった。
cyt c (3価)+ O2 - → cyt c (2価)+ O2 (1)
cyt c (2価)→ cyt c (3価)+ e (2)
2O2 - + 2H+ → H2O2 + O2 (3)
H2O2 → O2+ 2H+ + 2e (4)
本発明は、スーパーオキシドイオン分解酵素の濃度測定を可能にする電極やセンサーを提供することを目的とする。
本発明は、チオール基を含む炭化水素化合物とSODの相互作用による結合を利用してSOD濃度を測定する。そして本発明のセンサーはインビボ(in vivo 、生体内) への適用が可能である。
検出される電流は、SODに含まれるCu−Znイオン系のうち、Cu+/Cu2+(0.15V)の酸化還元対による電流であると推定できる。
Cu2+ + e- → Cu+
このことは、銅イオンの酸化還元サイクルを含まないSODでは電流応答がないことからも立証される。このサイクルに含まれる銅イオンの酸化還元対はSODの表面より奥に存在し、前述のチオール基を含む炭化水素化合物とSODの相互作用による結合を通して電極との電子移動が可能になる(後述の図5参照)。
金は熱分解法、樹脂による固着法、蒸着法、電気めっき法、無電解めっき法等により、10〜100 g/m2となるように形成させる。スーパーオキシドイオン測定の場合には、この導電性部材表面に形成した金下地層表面にはチオール基を有する有機化合物の薄層を形成させることが好ましい。該薄層はチオール成分を溶解させた水又は有機溶媒(例えばメタノールやアセトン)に金下地層を形成した導電性部材を浸漬し、取り出し乾燥することにより容易に形成できる。乾燥しても金下地層に固着しなかったチオール成分は有機溶媒のみの溶液に浸漬することにより容易に溶解除去できる。なお金下地層を形成する代わりに導電性部材として金を使用しても良い。
このような金下地層とチオール基を有する有機化合物の薄層を形成する理由は、金下地層とチオール基の硫黄との間に強固なAu−S結合を形成するとともに、有機化合物の有する親油性により該有機化合物とSODの間にも強い相互作用を生じさせるためである。
SODの表面の一部には、上縁(入口)側が200〜300nm、底部(奥部)が40nm程度の逆向き截頭円錐状(断面は下向き台形状)の孔が存在する。SODの反応部位はこの孔の底部に位置し、孔表面にはカチオン基が密集している。従って例えば血液中の成分のうちアニオンのみが選択的に前記孔内を移動でき、しかもスーパーオキシドイオンのような小さいアニオンのみが前記反応部位に到達でき、スーパーオキシドイオンの選択特異的な分解反応(特に不均化反応といわれる)が起こると考えられている。分解生成物である酸素と過酸化水素は反応部位から放出される。従ってO2 -由来の電流のみを検出して正確な濃度測定を行える。
つまりSODのCu+はO2 - と反応して自身がCu2+に酸化されO2 -をH2O2に還元する(式(5))。そして酸化されたCu2+は更にO2 -が存在するとO2 -と反応して自身がCu+に還元されるとともにO2 -をO2に酸化する(式(6))。このCu+−Cu2+対による酸化還元反応(メディエーター反応)の状況を図1に示した。
Cu+ + 2H+ + O2 - → Cu2++ H2O2 (5)
Cu2+ + O2 - → Cu+ + O2 (6)
SODを有する電極を、そのSOD中のCu2+が安定でO2 -が不安定な電位範囲(例えば−0.2 〜+0.3V)に維持すると、陽極に到達したO2 -は式(6)に従って酸化されて酸素となりCu2+はCu+となる。生成したCu+はO2 -から奪った電子を陽極に与えて再びCu2+となる。この様子を図2に示した。
他方SODを有する電極を、そのSOD中のCu+が安定でO2 -が不安定で過酸化水素が安定な電位範囲(例えば−0.2 〜−0.3 V)に維持すると、陰極に到達したO2 -は式(5)に従って還元されて過酸化水素となりCu+はCu2+となる。生成したCu2+はO2 -に移った電子を補うため陰極から電子を奪って再びCu+となる。この様子を図3に示した。
導電性部材表面に薄膜状にSODを形成した電極では、酸化還元反応に寄与するCu+及びCu2+がSODの細孔内深い箇所に存在し、スーパーオキシドイオンとは反応するが過酸化水素とは反応しないという特質を有するため、この酸化還元系とは別個に生体内に過酸化水素が安定に存在してもこの過酸化水素が前記Cu+及びCu2+と接触してこれに起因する電流が流れることがなく、正確なスーパーオキシドイオン濃度の測定が可能になる。
このセンサーによると、SODを簡便に測定でき、分析コストや分析時間を低減できる。更に生体内に電極系を挿入すると、直接的にかつオンタイムでSODを検出でき測定精度の向上も期待できる。
図4は、スーパーオキシドイオン濃度測定用装置の一例を示す概略断面図、図5は図4の濃度測定用電極の拡大断面図である。本例は、溶液中のSOD濃度測定にも応用可能である。
図4において、濃度測定用装置1は、試料室2及び該試料室2に、スーパーオキシドイオンが溶解した試料溶液が供給される試料供給管3及び濃度測定後の試料溶液が排出される排出管4から成っている。試料室2内の試料溶液5中には濃度測定用電極6、カーボン製対極7及び基準電極8が浸漬されている。
このような構成から成る装置1の試料室2にスーパーオキシドイオンが溶解した試料溶液5を試料供給管3を通して供給すると、濃度測定用電極6のSOD12中の銅がCu+であれば前述の式(5)により自身がCu2+に酸化されるとともにスーパーオキシドイオンを還元して過酸化水素を生成する。又SOD12中の銅がCu2+であると前述の式(6)により自身がCu+に還元されるとともにスーパーオキシドイオンを酸化して酸素ガスを生成する。
更に前記濃度測定用電極6に担持されたSOD12の銅イオンは過酸化水素とは接触しにくく過酸化水素が存在しても該過酸化水素に起因する酸化電流が流れることは殆どなく、従来と異なり正確な濃度測定ができる。
ここに例示したスーパーオキシドイオンとは異なり、本発明でSODの濃度を測定する場合には、図5においてSOD12が結合していない電極を使用する。
濃度測定用センサー21は円筒状本体の下端部を縮径した中空状の形状を有し、この縮径部に作用極22が充填され、該作用極22への導線23がセンサー21の側壁に沿って配設されている。前記作用極22の上方には、離間して対極24と基準極25が配設され、それぞれ導線26、27によりセンサー本体の基部に嵌合されたストッパ28を通って外部に導かれている。
このような構成から成るセンサー21は、人体の要所に挿入され、図4及び5で説明した原理によりSODの濃度測定が行われる。
電極面積0.8 mm2の金線の先端を電極とし、側面部位はシールした。システインを50mM溶かしたメタノールに該電極を1時間浸漬した。この金電極をシステインのメタノール溶液から取り出した後、メタノールのみの有機溶媒に浸漬して、表面に残っているシステインを除去してチオール修飾電極とした。このチオール修飾電極をSODを溶解したEDC溶液に1時間浸漬した後、取り出し、リン酸緩衝液(pH7)で浸漬して十分に洗浄して表面に残っているSODを除去して、濃度測定用電極とした。
対極として直径0.5 mmのカーボン棒を、基準電極としてSCE(銀/塩化銀電極)をそれぞれ前記濃度測定用電極に近接させて設置し、図6に示すような濃度測定用センサーを構成した。
この曲線(a) から、+200 mV付近に活性部位であるCu+のCu2+への酸化反応の応答が観察され、又0mV付近にCu2+のCu+への還元反応の応答が観察されることが分かる。従って例えば電極電位を300 mVに保持することにより、式(6)に従ってCu2+とO2 -との反応の結果生じるCu+の酸化電流を測定することによりO2 -の濃度を評価できる。同様に例えば−200 mVに電極電位を保持すれば、式(5)に従ってCu+とO2 -の反応で生ずるCu2+の還元電流を測定することによりO2 -の濃度を評価できる。
SODを被覆した参考例1と同じ濃度測定用センサーを使用し、電極電位を0.3 Vに固定した。キサンチンとキサンチン酸化酵素を添加したリン酸緩衝液(pH7)を試料溶液として6ml/分の割合で、前記濃度測定用センサーに供給した。キサンチンはキサンチン酸化酵素により尿酸に酸化され、この酸化の過程で中間種としてO2 -が生成する。
その時に観察される定常電流値を試料溶液に含まれるキサンチン酸化酵素(つまりO2 -)の濃度に対してプロットすると図8の通りであり、直線関係が得られた。
参考例1で作製したチオール修飾電極を、SOD0.56mM溶解したリン酸緩衝液(pH7)に浸漬した。対極をカーボン棒(直径0.5mm)とし、基準電極として銀/塩化銀電極をその近傍に設置したセルを構成した。―0.5Vから+0.5Vまで100mV/Sで電位を走査したときの電流値を図9中にaで示した。およそ―0.1V(NHEでは0.1V)付近に還元電流ピークが、又0.1V(NHEでは0.3V)付近に酸化電流ピークが検出された。
SODを溶解しなかったこと以外は実施例1と同様の方法で電流を測定した結果を図9中にbで示した。図示の通り顕著な電流ピークは検出されなかった。
システインを修飾していない金電極を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で電流を測定した結果を図9中にcで示した。図示の通り顕著な電流ピークは検出されなかった。
実施例1の電極系でSODの濃度を0.14mM、0.28mM及び0.56mMとしたときの電流波形を図10にそれぞれc、b及びaとして示した。濃度の増加に伴い酸化及び還元電流波形ともその濃度に比例して増大した。
酵素を結合した実施例1の電極を用い、電極電位を銀/塩化銀電極に対して0.1Vに固定して実施例1の液をセルに毎分6mlとなるように供給した。その際に観察された定常電流値を液に含まれるSOD濃度に対してプロットしたところ図8に類似する直線関係が得られた。
2 試料室
3 試料供給管
4 排出管
5 試料溶液
6 濃度測定用電極
7 対極
8 基準電極
9 導電性部材
10 金下地層
11 有機化合物
12 スーパーオキシドイオン分解酵素
21 濃度測定用センサー
22 作用極
24 対極
25 基準極
Claims (2)
- 導電性部材、該導電性部材表面に設けた、その表面をチオール基を含む炭化水素化合物で薄膜状に修飾した金下地層を含んで成る濃度測定用電極、対極及び基準電極を、スーパーオキシドイオン分解酵素を含む溶液に浸漬し、スーパーオキシドイオン分解酵素中の銅イオンの酸化還元反応に起因する電流を測定して前記スーパーオキシドイオン分解酵素濃度を測定することを特徴とする濃度測定用センサー。
- 金製導電性部材、該導電性部材表面に設けた、その表面をチオール基を含む炭化水素化合物で薄膜状に修飾した下地層を含んで成る濃度測定用電極、対極及び基準電極を、スーパーオキシドイオン分解酵素を含む溶液に浸漬し、スーパーオキシドイオン分解酵素中の銅イオンの酸化還元反応に起因する電流を測定して前記スーパーオキシドイオン分解酵素濃度を測定することを特徴とする濃度測定用センサー。
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