JP4146096B6 - ピロ電気性/強誘電性粒子を含むコーティングで保護された宇宙船およびそのコーティング材料 - Google Patents

ピロ電気性/強誘電性粒子を含むコーティングで保護された宇宙船およびそのコーティング材料 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は宇宙船の受動的温度制御に関し、とくに、温度制御を助けると共に、外的に発生した電子束による損傷から宇宙船を保護する外部コーティングによって保護された宇宙船に関する。
【0002】
【従来の技術】
宇宙船は、サービス中に広範囲の温度環境にさらされる。宇宙船の一方の側は太陽と反対側の真空の自由空間に向いており、一方他方の側は太陽の方向を向いている。熱は太陽と反対側の宇宙船の側面から自由空間中に放射されて宇宙船を冷却するが、太陽の方向を向いた宇宙船の側は直接的な太陽光によって激しく加熱される。
【0003】
人員、電子装置および高感度計器の少なくとも1つを含む宇宙船の内部温度を許容可能な動作限界内に維持するために、能動的および受動的な温度制御技術が使用されている。能動的な温度制御には、通常熱パイプまたは電気ヒータのような機械的または電気的装置が必要である。本発明は、基本的な受動的温度制御技術を組込んでいる方法であるが、能動的制御モードでも使用されることのできる方法に関する。
【0004】
受動的温度制御に対する1つの方法は、しばしば“塗料”と呼ばれる表面コーティングを宇宙船の外部表面上で使用する。たとえば、白色コーティングは低い太陽光吸収率を有し、一方黒色コーティングの太陽光吸収率は高い。このようなコーティングを宇宙船外部の種々の素子に対して選択的に適用することが、それらの温度制御を大いに助ける。本発明は、宇宙船の温度制御に有効なコーティングに関する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
多くの場合、コーティングはまた受動的な温度制御を行うことに加えて、宇宙船を電気的に保護することが望ましい。宇宙船はしばしば外的原因のために生じた電子束によって誘起された電荷にさらされる。過度の充電の一例において、太陽ストームによって高い電子束が太陽から排出される。電子束が宇宙船に達した場合、宇宙船の表面は強い電子束にさらされる。これらの電子は、宇宙船の表面において静電荷として累積し、最終的にアーク放電(すなわち、絶縁破壊および静電放電)を生じさせる可能性があり、その結果宇宙船に構造的な損傷を与え、および、または宇宙船上またはその内部の高感度電子装置にたいして妨害作用をする。
【0006】
このタイプの電気的損傷から宇宙船を保護するいくつかの受動的なコーティングをベースにした方法が知られている。1つの方法では、多層コーティングが設けられ、この場合トップコーティングが温度制御機能を行ない、下に位置する層が電荷を放散するように導電性である。このような多層コーティングは重く、層を非常に正確に付着させなければならないため、形成が困難である。宇宙船のための単層の静電気放散塗料を使用することもまた知られている。米国特許第 5,094,693号明細書に開示されているタイプのアルミニウムドープされた酸化亜鉛顔料をベースとするこのような1つの白色塗料は一般に約0.18乃至約0.22の太陽光吸収率を有している。米国特許第 5,820,669号明細書に記載されている白色塗料は、0.1より小さい太陽光吸収率を与えることによってこの性能に改良を加えている。これらの塗料は、多くの適用において優れた性能を提供している。しかしながら、米国特許第 5,094,693号明細書および第 5,820,669号明細書に記載されている塗料は、それらの調合物により可能な最大導電率のために、放散されることのできる最大電子束に関して制限されており、したがっていくつかの飛行任務を果たすことができない。
【0007】
調整可能な温度特性を有し、外的に誘起された非常に大きい電子束による損傷から宇宙船を保護する宇宙環境において動作可能で安定したさらに改善された温度制御コーティングが必要とされている。本発明はこの要求を満足させ、関連した利点をさらに提供する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、コーティングによって保護された宇宙船およびコーティング材料を提供する。コーティングの色は、所望の温度特性を提供するように選択されてもよい。コーティングは、強烈な外部電子束によって引き起こされた電荷の累積によって生じる電気的損傷から宇宙船を保護するように構成される。コーティングは、その高い屈折率およびその結果生じる優れた隠蔽力の結果、通常の保護コーティングより薄いコーティングを施され、宇宙船の重量および費用を軽減することができる。本発明のコーティング顔料は、広範囲にわたる種々の状況に対して性能を最適化するように別の顔料と混合されてもよい。コーティングは、受動または能動のいずれのモードで使用されてよい。
【0009】
本発明によると、ピロ電気性/強誘電性コーティングによって保護される宇宙船は、外部表面を有する宇宙船と、宇宙船の外部表面上のコーティングとを含んでいる。コーティングは、結合剤と、結合剤によって結合された複数のピロ電気性/強誘電性顔料粒子とを含んでいる。ピロ電気性/強誘電性顔料粒子は強誘電性顔料粒子であることが好ましく、それらは強誘電性/常誘電性遷移状態を有する強誘電性顔料材料をそれぞれ含んでいる。
【0010】
別の実施形態において、各ピロ電気性/強誘電性顔料粒子は、典型的には約200乃至約25,000の約200を越える誘電率と、約2.5電子ボルトを越える電子バンドギャップとを有する強誘電性顔料材料を含んでいる。さらに別の実施形態において、各ピロ電気性/強誘電性顔料粒子は、電子束にさらされたときに粒子面上に電荷を蓄積し、その後蓄積された電荷をある期間にわたって放出する強誘電性顔料材料を含んでいる。
【0011】
本発明は、宇宙船を累積した電荷から保護する多層および単層の塗料およびコーティングに対する従来技術の方法とは完全に異なるものである。単層だけで使用され、多層塗料で生じた供給問題が回避される。これまで、単層塗料は静電気放散(ESD)として説明され、その設計方法は所望の温度特性を保持しながら塗料の十分に高い導電率を獲得することに基づいていた。高い導電率は電荷が累積するにつれてこれを放散させ、最終的に電荷を接地電位に導く。宇宙船を保護する場合に、この設計方法の成功は塗料中における十分に高い導電率の獲得にかかっている。この方法は、多数の宇宙船用として良好に動作するが、所望の温度特性を保持しながら塗料の導電率を増加させる能力に対する物理的な制限のために、非常に強烈な電子束から宇宙船を保護する能力が制限される。
【0012】
本発明の方法では、粒子およびコーティングの表面上における電荷の累積は、電荷の累積が、アーク放電(すなわち、絶縁破壊および静電放電)または別のタイプの電気的損傷を発生させることができる高い表面電圧を生じさせない限り許容される。高電子束事象中に電荷が累積するにしたがって、コーティングはその表面において電荷を吸収および蓄積し、その一方において表面電圧の著しい増加を阻止し、それと同時におよびその後、累積された電荷を徐々に接地電位に導く。それによってコーティングが次の高電子束事象のために“リセット”される。コーティングは、宇宙船の外部表面の広い面積上に供給された意図的に漏洩性の薄いキャパシタとして有効に動作する。したがって、コーティングは、室温で平方cm当たり約1010オーム以下の表面比抵抗として表される小さい導電率を有する。この導電率は、その導電率が要求される導電率をコーティングに与えるのに十分なレベルに顔料材料をドープすることによって得られる。このような低い表面抵抗を得るために必要なドーピングはコーティングの光学特性におそらく悪影響を及ぼすため、表面比抵抗は平方cm当たり約108 オームより小さいことが望ましい。
【0013】
通常のESD塗料が低温で表面上において動作される場合、顔料およびしたがって塗料の表面比抵抗が増加するために、その電気的保護能力が部分的に失われる。本発明のコーティングにおいて、顔料の表面比抵抗は変化する可能性があるが、コーティングの分極能力により、電荷が蓄積されて、残っている導電率にしたがった漸次的に放散されることが可能になる。顔料およびしたがってコーティングの高い誘電率のために、蓄積された電荷はアークを発生させる高い表面電圧を生じさせない。したがって本発明のコーティングは、非常に低い温度で持続する電子束から保護し、利用可能なESD塗料に対する重要な改善を行う。
【0014】
ここにおいておよび技術的に“強誘電性”材料と呼ばれている強誘電性/常誘電性遷移を示す材料はこのようなコーティングの顔料としての使用に好ましい。このような強誘電性顔料材料は表面電圧を実質的に増加させずに電荷を累積する。そのためにはそれらが約200を越える誘電率を有していることが好ましい。強誘電性顔料材料は、外部電子束の入射中およびその後に累積された電荷を比較的ゆっくりと強制的に除去するために十分な表面導電率を有するようにドープされる。それらは約2.5電子ボルトを越える電子バンドギャップを有していることが好ましい。強誘電/常誘電特性を有する強誘電性顔料材料は、コーティングに要求される温度特性を生じさせるために選択されることのできる種々の色で製造されることができる。
【0015】
その代わりに、本発明の方法は、高電子束事象中に強誘電性顔料粒子の表面に電荷を累積させ、その一方で高電子束事象中におよびそれが終わった後で電荷を徐々に放散させる。したがって、コーティングは宇宙で経験する条件に対して“適応的”である。標準的な低電子束状態では、導入される電荷は、実質的にそれが発生するとすぐに放散される。コーティングは、それが増加する電子束密度の束にさらされると、すぐに強制的に除去されてもよい過剰な電荷を無害に蓄積し、外部電子束の終了後にその電荷を強制的に除去する。その結果、回復時間は電子束の大きさおよび持続期間の増加と共に増加するが、本発明のコーティングは、従来技術の方法で可能なよりも強い電子束からの保護が可能である。従来技術の方法では、高電子束事象のために生じた電荷は、コーティングの表面における高電圧を阻止するために電荷が生成されるとすぐに除去される必要がある。しかしながら、通常の顔料のドーピングに対する物理的制限は、このような通常の塗料がいくつかの高電子束条件において十分迅速に電荷を放散することを妨げ、その結果、塗料の表面において過度に高い電圧が生じ、結果的にアーク放電が生じる可能性がある。
【0016】
したがって、本発明の方法は、広範囲の外部電子束状況にわたる過度の充電から宇宙船の表面を保護し、その一方で受動的な温度制御に能動的な温度制御の可能性を提供するコーティングを提供する。本発明の別の特徴および利点は、本発明の原理を例示によって説明している以下の好ましい実施形態の詳細な説明および添付図面を参照することによって明らかになるであろう。しかしながら、本発明の技術的範囲はこの好ましい実施形態に限定されるものではない。
【0017】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明にしたがって処理されたコーティング層20を示している。塗料層20は、結合剤(バインダ)24と混合された顔料粒子22を含んでいる。顔料粒子は、本発明によるピロ電気性/強誘電性顔料の粒子22a と、随意に活性2次粒子22b および、または不活性2次粒子22c を含んでいる。たとえば、米国特許第 5,820,669号明細書に開示されている非ピロ電気性/強誘電性顔料粒子(活性2次粒子22b として機能する)が本発明のピロ電気性/強誘電性顔料の粒子22a と混合されてもよい。乾燥の前にはコーティング媒体も存在しているが、このコーティング媒体は乾燥動作中に蒸発させられる。以下において、粒子、結合剤およびコーティング媒体の組成、それらの割合およびコーティング層の処理をさらに詳細に説明する。
【0018】
図2は、基板26の外部表面25に供給されたコーティング層20を示している。基板26は代表的には宇宙船の外板であり、少なくともやや導電性である。
【0019】
ピロ電気性/強誘電性顔料の粒子22a の性質は、それらの結晶学的構造を参照することにより理解されることができる。全ての結晶は、結晶学者によって現在知られているように、32の対称的なポイントのグループの1つに入れられる。これらの32のポイントのグループは、等軸晶系、六方晶系、菱面体晶系、三角面体、斜方晶系、単斜晶系および三斜晶系というよく知られている7つの基本的な結晶系に細分されている。32のグループ中の21グループは、ポイントのグループが対称中心を欠いている非対称中心的なものである。対称中心の欠如は、結晶が圧電現象を示し、それによって結晶上の均質の応力が正および負のイオンの互いに関する真の(net)運動を生じさせ、その結果電気双極子モーメントおよびしたがって分極が生成されるために必要である。これら21の非対称中心的なポイントグループの中の20のグループは圧電気を示す。圧電気を示す20のポイントグループのうち、10のグループはピロ電気性(時に極性と呼ばれる)であることが知られている。ピロ電気性結晶は、自発的に分極されて所定の温度範囲内で永続的な双極子モーメントを形成するという付加的な特性を有している。この10のピロ電気性ポイントのグループ内に入っている非強誘電性顔料材料は、本発明により実施可能であるが、それらの分極効果が比較的小さいために好ましくない。この10のピロ電気性(極性)ポイントのグループは(シェーンフリースの記号で)C1 ,C2 ,Cs またはC1h,C2v,C4 ,D4 ,C3 ,C3v,C6 およびC6vである。含まれている材料(非対称中心的なポイントグループ)の族は反強誘電体であり、これらは結晶学的単位格子のレベルにおいて極性を有するが、見掛け上の肉眼で見える極性を有しない。
【0020】
10のピロ電気性のポイントのグループの特殊なサブグループは、適切なドーピングにより本発明において顔料として使用するのに好ましい材料である強誘電体として知られている。強誘電性材料は、結晶自身の絶縁破壊強度より小さい大きさの電界によって分極が可逆的であるという点でピロ電気性材料と区別することができ、この可逆的な状態はピロ電気だけを示すものとして指定された材料には存在しない。したがって、好ましい強誘電性材料は、所定の温度範囲内で永続的な双極子モーメントを生成する自発的な分極および外部から与えられた電界によって分極を再度方向付ける能力を有する特性の両者によって特徴付けられる。
【0021】
したがって粒子22a は“ピロ電気性/強誘電性”と表され、この用語はここにおいて、それらがピロ電気性材料であるが、強誘電性材料のサブグループに入っていることが好ましいことを意味する。強誘電性材料は好ましい実施形態を表すので、以下の説明は強誘電性材料を中心になされているが、ピロ電気性であるが強誘電性ではない材料もまた使用されてもよいことを理解されたい。
【0022】
多数の強誘電性結晶およびセラミック固溶体が本発明の技術的範囲内において実施可能である。10のピロ電気性ポイントのグループの強誘電性サブグループのうち、いくつかがとくに重要である。これらは、タングステン青銅構造(たとえば、PbNb2 6 )、酸素八面体構造(例でABO3 一般化される)、黄緑石構造(たとえばCd2 Nb2 7 )および層構造(たとえば、Bi4 Ti3 12)を含んでいる。酸素八面体構造内でさらに重要なのは、セラミック灰チタン石であり、これは本発明にとってとくに重要である。灰チタン石には、たとえばBST(チタン酸バリウムストロンチウム)、PZT(ジルコン酸チタン酸鉛)、PLZT(ジルコン酸チタン酸鉛ランタン)、PT(チタン酸鉛)、PMN(ニオブ酸鉛マグネシウム)およびニオブ酸ナトリウムカリウム(Na,K)NbO3 のようなその種々の固溶体と共にチタン酸バリウムBiTiO3 が含まれる。別の実施可能な強誘電体には、PZN(ニオブ酸鉛亜鉛)、PSZT(錫酸ジルコン酸チタン酸鉛)、PZ(ジルコン酸鉛)およびSBT(チタン酸ストロンチウムビスマス)が含まれる。これらの材料は結晶構造を使用して動作可能な材料の範囲を規定する単なる一例に過ぎず、本発明はこれらの材料に制限されるものではない。
【0023】
ピロ電気性/強誘電性顔料は、結合剤中に混合された顔料粒子から形成されるコーティングが好ましくは室温で平方当たり約1010オーム以下の表面比抵抗を有するようにドープされる。コーティングの表面比抵抗が室温で平方当たり約1010オームより大きい場合、コーティングは依然として動作可能であるが、貯蔵された電荷の漏洩率が低過ぎるために、コーティングは大部分の用途に使用できない可能性がある。動作可能なドーパントの例には、一般的にその酸化物の形態で供給されるランタン、ニオビウム、ガリウム、ガドリニウムおよびイットリウムならびにそれらの混合物が含まれる。コーティング材料中の顔料粒子の体積比が大きくなると、それだけ動作可能なドープされた顔料材料の導電率が低くできるため、その特性は顔料材料ではなくコーティング表面の比抵抗に関して最もよく表される。
【0024】
強誘電性顔料粒子22a は、強誘電性/常誘電性遷移を有する強誘電性顔料材料を含んでいる。以下においてこのような強誘電性顔料材料の性質を詳細に説明するが、一般にそれらは低い温度で強誘電状態を示し、高い温度で常誘電状態を示し、その中間温度で遷移状態を示す。図3は、このような強誘電性顔料粒子22a を有するコーティング層20の電気特性を等価回路として示している。電圧源28として表されている外部電子束は、基板26から離れたコーティング層20の外部表面30上に導かれる。太陽ストームまたは人為的原因のために生じる宇宙環境中の外部電子束は一般に強烈であるが、持続期間は比較的短く、時間的に間隔があいている。コーティング層20は漏洩性キャパシタのように動作し、実効並列キャパシタンスCp および実効並列抵抗Rp を有する。コーティング層20の反対側は、一般に接地電位に保持されている基板26と電気的に接触している。外部電子束がコーティング層20に供給された場合、電荷が容量性コーティング層20の表面に累積されて一時的に蓄積され、徐々に基板26に導かれる。電荷の伝導は、外部電子束の周期と同時に発生する。しかしながら、コーティング層20に蓄積された過剰電荷は、外部電子束が流れているあいだ接地電位に導かれることができる量を越えたものであり、それは外部電子束が停止した後に基板26に導かれる。
【0025】
強誘電性/常誘電性材料の高い誘電率のために外部表面30における電圧Vs が低いままであることが重要である。この電圧Vs は、外部表面30でのアークおよびその他の電気的に発生した望ましくないものを阻止する鍵である。電圧Vs は、アークおよびその他の電気的に発生した望ましくないものを阻止するように十分に低く維持されなければならない。蓄積された電荷は、電圧Vs が低く保たれる限り、強誘電性/常誘電性材料の表面において非常に高いレベルに累積する可能性がある。
【0026】
この保護概念は、電荷が導入されると、これを強制的に伝導して表面から除去し、表面電圧を低く維持するのに十分な導電率を得るために材料が必然的に高レベルにドープされていた静電放散(ESD)塗装に対する従来技術の設計理論から新しく発展したものである。この従来の方法は多くの状況で良好に実施可能であり、うまくいっている。しかしながら、通常の顔料材料は温度制御のために所望されるその色特性を保つ一方で、要求される導電率を得るのに十分に高いレベルにドープされることはできないため、非常に強い外部電子束に遭遇した場合に限界に達する。本発明の方法では、過剰な電荷が強誘電性顔料材料の表面に蓄積され、その後外部電子束が停止した後で接地電位に漏洩される。
【0027】
図4は、強誘電性/常誘電性遷移状態を有する強誘電性顔料材料の相対誘電率εr を温度Tの関数として示している。強誘電性顔料材料が強誘電状態である低い温度では、相対誘電率は温度の上昇と共に急速に上昇して、強誘電性キュリー温度TC における最大値に達する。キュリー温度を越える温度になると、強誘電性顔料材料は常誘電性になり、相対誘電率は温度がさらに上昇するにつれて徐々に下降する。
【0028】
図5および6には、強誘電性/常誘電性顔料材料のその2つの状態の各動作がそれぞれ従来の非強誘電性タイプの顔料材料と比較されて示されている。図5において、強誘電性顔料材料がキュリー温度より低く、したがってその強誘電状態のときの電界E(ボルト/ボルトで表されている)におけるその分極特性P(マイクロクーロン/平方センチメートルで表されている)が示されている。電界Eは、外部電子束によって生成される。電界が全く供給されていない初期状態32から、特性曲線34に沿って電界が増加して材料を分極させ、ポイント36における最大分極に達する。外部電子束が停止して電界が減少したとき、分極は特性曲線38に沿って急速に減少し、ポイント40の残留分極に達する。材料が導電性である場合、その後、ライン42に沿ったゼロ供給電界で残留分極が徐々に解放されてゆき、おそらく最初の状態32に戻る。
【0029】
図6には、強誘電性顔料材料がキュリー温度より高く、したがって常誘電状態のときの電界Eにおけるその分極特性Pが示されている。電界の増加によって初期状態44から、特性曲線46に沿って最大値48まで分極を増加させる。外部電子束が停止して電界が減少したとき、分極は特性曲線50に沿って急速に減少して最初の状態44に戻る。このように、図5の強誘電状態は分極のヒステリシス特性を示しているが、常誘電状態ではヒステリシス特性は全く認められない。
【0030】
図6はまた、宇宙船を塗装するために過去に使用されていた従来技術の非強誘電性塗料顔料材料の分極動作を示している。特性曲線52に沿って供給電界が増加するにつれて生じる分極は少量に過ぎず、Pは実質的にゼロのままである。最大電界に達し、電界が特性曲線54に沿って減少した後、Pはゼロに向かって減少する。結果的に、少量の電荷しかコーティング材料の表面に蓄積されない。
【0031】
本発明の方法の強誘電性顔料材料は、コーティング層20の表面30における電圧Vs が小さいままであるように、可能な限り高い誘電率で常誘電状態で動作されることが好ましい。常誘電状態は、分極が特性曲線50に沿って急速に減少するので好ましく、図5の強誘電状態に対して特性曲線42に沿って示されているように残留分極が存在しない。残留分極が存在すると、電荷がコーティングに無期限に蓄積され、電荷の累積が発生し、その結果高エネルギ放電に至るコーティングの絶縁破壊が生じることになる。強誘電性顔料材料の誘電率の範囲は約200乃至約25,000であることが望ましい。それより低い場合、本発明は依然として動作可能であるが、誘電率が低下するにつれて、強い電子束に対して表面30の電圧Vs が増加する。
【0032】
図4を参照すると、キュリー温度TC がコーティング層の最小表面動作温度Topより少し低くなるように強誘電性顔料材料が選択された場合に、これらの常誘電状態および高い誘電率の条件が達成される。太陽に当たっている宇宙船の側面の最小表面動作温度Topは一般に、温度パフォーマンスの計算および表面温度の実際の測定の少なくとも一方から知ることができる。たとえば、静止軌道上の通信衛星について、白色コーティング層の最小表面動作温度は一般に約−70℃である(いくつかの場合ではそれより低くてもよいが)。したがって、最小表面動作温度が約−70℃であるこの好ましい場合において、キュリー温度が最小動作温度より約10℃乃至約20℃低いように、すなわち約−90℃乃至約−80℃になるように、強誘電性/常誘電性コーティング顔料材料が選択されることが好ましい。これらの温度は、ここにおいて好ましい代表的な場合に対して与えられたものであり、別の軌道上にある宇宙船または別の温度特性を有する宇宙船に対して、あるいは、太陽が当たっている側と反対の宇宙船の側面が保護される場合に変更されてもよい。
【0033】
強誘電性顔料の好ましい動作状態はキュリー温度TC より高く、図4および6に示されている常誘電フェーズ状態の範囲内であるが、強誘電フェーズ状態の範囲内でも顔料は実施可能である。図5に示されている特性曲線34,38,42によって囲まれた電気ヒステリシスは小さい。この特性は、キュリー温度TC より低い温度で動作する多数の強誘電性材料に対する場合である。したがって、強誘電性顔料材料のキュリー温度TC は、図4に示されているように宇宙船の動作温度Topより常に低い必要はないが、TC がTopより低いことが好ましい。
【0034】
図7では、粒子22を処理し、コーティング層20において使用されるコーティング材料を処理し、基板をコーティングする好ましい方法が要約されている。
【0035】
強誘電性顔料または粒子22を処理するために、それら成分を準備して混合する(ステップ60)。強誘電性/常誘電性特性を示す任意の材料、すなわち“強誘電性”材料が使用されてもよいが、しかし設計考慮事項が強誘電性顔料として使用される特定の強誘電性/常誘電性材料の選択を助ける。強誘電性/常誘電性材料は、そのキュリー温度TC が宇宙船の最小表面動作温度Topよりやや低いように選択されることが好ましい。キュリー温度は、多くの強誘電性/常誘電性材料について知られており、他の材料については図4に示されている誘電率の最大値に関連した温度を見出すことにより、あるいは別の技術によって容易に決定されることができる。Topの値は宇宙船の表面状態の測定または計算から判明する。
【0036】
強誘電性顔料材料の別の重要な特性はその色であり、これが主としてその太陽光吸収率およびしたがって温度特性を決定する。強誘電性/常誘電性の性質を持つ材料は、広範囲の色で製造されることができる。太陽に当たる面のコーティングに使用するのに最も重要な顔料の色は白であり、したがって太陽光吸収率の低い白色コーティングが選択される。他の色を有する別の強誘電性/常誘電性材料が他の用途に使用されることができる。強誘電性/常誘電性材料はまた高い屈折率を有することが望ましく、それによってコーティングにおいて使用される隠蔽力が改善される。良好な隠蔽力により、重要な費用および重量考慮事項である薄いコーティング層の使用が可能になる。
【0037】
強誘電性/常誘電性特性を示す現在最も好ましい強誘電性材料システムは、SrTiO3 −BaTiO3 −CaTiO3 −SrO−BaO−TiO2 −Dであり、ここにおいてDはLa2 3 、Nb2 5 、Ga2 3 、Gd2 3 またはY2 3 、およびその混合物のようなドーパントである。このシステムによって、コーティングの特定の特性を得るために強誘電性顔料の特性を調整する可能性が大幅に広がる。Sr/Ba比はキュリー温度を決定する。カルシウム含有量は、強誘電性/常誘電性遷移状態におけるピーク(図4に示されている)の幅を決定する。追加のストロンチウム、バリウムおよびチタンは、処理中に化学量論的な平衡を保つために使用される。ランタン、ニオビウム、ガリウム、ガドリニウムおよびイットリウムは、材料を電気的漏洩性にするドーパントとして使用される。
【0038】
このシステム内において、とくに重要な材料は(Sr,Ba)TiO3 :La3+として表されるランタンでドープされたチタン酸ストロンチウム バリウムであり、これは白色であり、約2.5の屈折率を有する。約1重量%の濃度のランタンドーパントLa2 3 を含むBaTiO3 :La3+のチタン酸バリウム形態について、この材料は、約125℃のキュリー温度がドープされていない形で測定されている。このキュリー温度で観察された最大誘電率は、約6000−7000である。
【0039】
その他の多数の強誘電性材料が知られており、本発明に関連して使用されてもよい。その例として、MgSnO3 と混合されたBaTiO3 、CaTiO3 と混合されたSrTiO3 、CaOと混合されたCaSnO3 、CaZrO3 、CaSnO3 およびBi2 (SnO3 3 が含まれる。Pb(Mg1/3 Nb2/3 )O3 −PbTiO3 −Ba(Zn1/3 Nb2/3 )O3 のようなリラクサ強誘電性材料システムは、実施可能な強誘電体の付加的な例である。
【0040】
粒子の成分を準備して混合する(ステップ60)。現在の好ましい調合物において、選択された組成に適した出発材料としてチタン酸ストロンチウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化チタン、二酸化チタンおよび酸化ランタンの少なくとも1つが使用される。したがって、強誘電性顔料組成物を処理するために、適切な量のこれらの出発材料が供給され混合される。後で取除かれる混合媒体は、成分の混合を促進するために添加されることができる。水のような他の溶剤も使用できるが、ヘキサンのような無極性溶剤が好ましい混合媒体である。分散剤および界面活性剤もまた必要に応じて混合媒体中で使用されてよい。
【0041】
成分および混合媒体は粉砕され、メカニカルに混合物が形成される(ステップ62)。粉砕が終わった後、混合媒体は蒸発によって取除かれる(ステップ64)。
【0042】
成分を化学的に反応させるために乾燥された混合物を選択された強誘電性材料に対して任意の動作可能な温度で焼成し、焼鈍する(ステップ66)。焼成、焼鈍およびそれに続く冷却は、非酸化性雰囲気中で行われ、ヘリウムまたはアルゴンガスのような不活性雰囲気中で行われることが好ましい。
【0043】
冷却後、焼成/焼鈍の結果得られた塊は、臼およびすりこ木等によりすばやく微粉砕される(ステップ68)。結果的に得られた粒子の大きさは約0.1マイクロメータ乃至約5.0マイクロメータの範囲である。強誘電性顔料粒子の処理が完了する。
【0044】
要求される強誘電性顔料材料が最終的な形で利用可能である場合、ステップ60乃至68を省略し、既製の出発材料を使用してもよい。
【0045】
図7は、酸化物混合方法を使用するピロ電気性/強誘電性顔料の好ましい合成技術の基本的なアウトラインを示している。しかしながら、別の顔料合成技術が実施可能であり、化学的な共沈技術および熱水技術のような技術も状況によって使用されてもよい。たとえば、このような技術は、大きさがもっと均一な分布の顔料粒子またはもっと高い純度の顔料粒子を生成するために使用されてもよい。
【0046】
材料は、上述した強誘電性/常誘電性顔料粒子22a の他に、活性または不活性2次粒子を含んでおり、それによって最終的な材料の光学特性および機械的特性の少なくとも一方が修正される。導電性の粒子が導入されてもよい。活性2次粒子22b は入射エネルギと光学的に相互作用し、このような活性2次粒子には、たとえば、米国特許第 5,094,693号明細書に開示されているアルミニウムドープされた酸化亜鉛粒子または米国特許第 5,820,669号明細書に開示されている粒子が含まれる。なお、これらの特許明細書の内容はここにおいて参考文献とされている。いくつかの適用において、米国特許第 5,820,669号明細書に開示されているような活性2次粒子22b は強誘電性粒子22a よりも多量に存在している。このような活性2次粒子22b は、特定の適用に対して低温導電率または光学特性を改善するために使用されることができる。不活性2次粒子22c は、光学特性を大幅に変化させることなく、現存する粒子材料の体積比を増加させる増量剤として主に機能する粒子である。不活性2次粒子22c は、強誘電性顔料粒子22a や活性2次粒子22b より廉価なので経済的な理由のために添加されてもよい。不活性2次粒子22c は、たとえば硫酸バリウム、クレーまたは滑石を含むことができる。一例において、総粒子負荷(粒子22a 、22b および22c の合計)は、強誘電性/常誘電性顔料粒子22a が体積で10%、米国特許第 5,820,669号明細書の2次粒子22b が体積で80%、および不活性粒子22c が体積で10%であることができる。
【0047】
コーティングすなわち被覆層は、上述のあるいは別の方法で処理された粒子材料を供給するこによって処理される。最終的な製品において粒子どうしを接着させるために結合剤すなわちバインダが供給される(ステップ70)。結合剤は、許容可能な物理的特性と共にコーティング内における良好なコヒーレンスおよびコーティングとその下に位置する基板との良好な接着性を提供するように選択される。結合剤は温度および放射線のような宇宙環境において認められる条件に耐えるものでなければならず、また低いガス放出のようなコーティングがさらされる環境に適合しなければならない。結合剤は無機材料または有機材料のいずれでもよい。
【0048】
宇宙船適用に好ましい無機材料の結合剤は、珪酸カリウムである。
【0049】
宇宙船適用に好ましい有機材料の結合剤は、橋かけ重合されたジメチルシリコーン共重合体であり、これはフレキシブルであり、紫外線(UV)での劣化に耐える。この結合剤は、ここにおいて参考文献とされている米国特許第 5,589,274号明細書中に開示されている。シリコーン重合体は、強誘電性顔料が適度なレベルで存在する場合およびそれが存在しない場合の両方について、ひび割れを生ぜずに良好な変形度を示す。この変形能力により、薄い基板が使用された場合の基板の屈曲中に最終的な固体コーティングが変形することが可能になり、すなわち薄膜が変形することが可能になる。結合剤の変形能力はまた、サービス中の衝撃等の結果生じるひび割れに対するコーティングの耐性を改善する。シリコーン変性エポキシ、ポリウレタン、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(ジメチルシロキサンコメチルフェニルシロキサン)、ポリイミドおよびポリアミドような別のフレキシブルな重合材料がマトリックスとして使用されてもよい。しかしながら、経験からジメチルシリコーン共重合体がUV劣化に対して最高の耐性を有することが立証されており、したがって、それが好ましい。
【0050】
結合剤は動作可能な量だけ与えられる。代表的な場合、結合剤は、重量比で全ての粒子の合計対結合剤が5:1以下であるような量で与えられる。この比が5:1より大きい場合、臨界顔料体積濃度(CPVC)を超える可能性があり、機械的性能が低下する。粒子対結合剤の重量比は、約2:1乃至約5:1が好ましい。
【0051】
顔料22と結合剤24の混合物は通常固体であり、通常のコーティング技術を使用して供給されることのできる溶剤またはスラリーを形成するためにコーティング媒体が添加されてもよい(ステップ72)。無機結合剤システムに好ましい1つのコーティング媒体(溶剤)は水であり、これは後に蒸発させられたときに環境に悪影響を及ぼさない。ナフサまたはキシレンのような有機コーティング媒体も、とくに有機結合剤システムに対して使用されることができる。コーティング媒体の量は、所望の方法によるコーティングの供給を可能にするコンシステンシーを与えるように選択される。たとえば、スプレーによる供給では、ブラシやローラによる供給よりも多量のコーティング媒体を使用する必要がある。
【0052】
その代わり、媒体が使用されない技術によってコーティングが施されてもよく、その場合ステップ72は省略される。
【0053】
粒子、結合剤および光学コーティング媒体は混合されて粉砕され(ステップ74)、粒子が急速に分離しない液体コーティング調合物を形成する。時間が経過すると若干の分離が生じるかもしれないが、通常コーティング材料は供給される直前または供給時にかき混ぜられ、あるいは撹拌される。
【0054】
示されているステップ70、72および74の順番に対する別の方法において、粒子は脱イオン水のような水の中で粉砕される。その後、結合剤が供給され、粉砕された粒子および水に添加される。これらの成分をさらに混合して粒子を結合剤中に分散させる。
【0055】
コーティング材料の処理が終了する。
【0056】
コーティングは、被覆されるべき基板26(宇宙船の外部表面のような)を設け(ステップ76)、基板を洗滌する(ステップ78)ことによって使用される。基板のタイプに関して知られている制限はない。基板の表面は、洗剤溶液中で洗滌および洗濯し、水道水ですすぎ洗いし、脱イオン水ですすぎ洗いし、空気中で乾燥する等の任意の実施可能な技術によって洗滌される。
【0057】
コーティングは基板の表面に供給される(ステップ80)。供給の最初の段階において、基板の表面がコーティングの接着を改善するために下塗りされてもよい。下塗りは、アルミニウムのような金属表面を被覆するために無機結合剤を含むコーティングを供給するのに好ましい。下塗りは、それが使用された場合、表面への良好な接触を得るために清潔な布を使用して少量のコーティング材料を表面にこすり込むことによって行われることが好ましい。
【0058】
その後、コーティング層は実施可能な技術によって好ましくはスプレーにより供給される。最初に示されているように、コーティング材料中に存在するコーティング媒体の量は、好ましい方法による供給を可能にするように選択される。この時点で、コーティングは、顔料粒子を含む液体材料の薄膜である。
【0059】
コーティングはまたプラズマスプレー技術等によって供給されてもよく、その場合には顔料と結合剤の混合物がプラズマのような加熱された領域に供給されて基板に導かれる。顔料と結合剤のプラズマ加熱された混合物が基板に衝突し、その上で凝固する。
【0060】
コーティングは、固体材料の薄膜を残すように必要に応じて乾燥される(ステップ82)。無機結合剤の場合、乾燥は50%以上の湿度により周囲温度で14日間にわたり行われることが好ましい。乾燥により、コーティング媒体が蒸発によって除去される。さらに、乾燥ステップは、硬化可能な無機または有機結合剤が使用されている場合のように、任意の硬化可能な成分をある程度硬化させることができる。乾燥および硬化の少なくとも一方の行われた後において、コーティング層の厚さは約0.001インチ乃至0.004インチであることが好ましく、約0.002インチの厚さが最も好ましい。この厚さは、一般に約0.003乃至約0.006インチである通常の保護コーティングよりも若干薄く、その結果材料費と重量が節約される。
【0061】
コーティングは単一被膜として、あるいは被膜間で乾燥されている多数の被膜として供給されてもよい。多数の被膜が供給された場合でも、コーティングは依然として“単層”コーティングである。これは、その組成が被膜の全てにわたって、ならびに被膜間で実質的に同種のものから成るためである。この単層コーティングは、種々の層が故意に異なった組成および性能のものである従来技術のいくつかにおいて認められる多層コーティングと対照的なものである。
【0062】
コーティングが完了する。
【0063】
本発明のコーティングは、任意の温度制御適用において使用されてもよい。それは、図8に示されている宇宙船90のような宇宙船上のコーティングとして使用されることが最も好ましい。ここにおいてサービス時に静止軌道に位置する通信衛星として示されている宇宙船90は本体92を有し、太陽電池パネル94が本体92上または本体92から外方向に延在する翼96上のいずれか、あるいは両方に取付けられている。本体92および翼96は、金属、非金属または複合材から形成されてよく、基礎をなす骨組み構造によって支持されてもよい外板98を有している。太陽電池パネルではない本体92および翼96の少なくとも一方の外板98の、外方向に向いている部分の少なくとも若干の外部表面25は、上述のように本発明のコーティングの層20で覆われている。一般に、白色コーティング型のコーティングは、示されているように太陽を向いている面に設けられる。それによって宇宙船の外板98は、コーティング層20が施された基板26として機能する。コーティング層20は被覆された部分を受動的に温度制御し、電子損傷を生じさせる可能性のある電子束から保護する。コーティングは長期間にわたる飛行任務に対して十分に耐久性があり、特性が安定している。
【0064】
強誘電性顔料が強誘電性モードで動作可能にされた場合、コーティングの光学特性は、“適応”受動動作モードのものから“能動”動作モードのものに変化させられてもよい。PLZT(ジルコン酸チタン酸鉛ランタン)のようないくつかの強誘電性材料は、バンドギャップが約3電子ボルトより大きい透明なバルク固体型で利用可能である。それらの複屈折のような材料の光透過特性は、外部電界の供給により材料の分極状態を変化させることによって変えられる可能性がある。コーティング層20の光反射特性は、このようなコーティング材料に外部電界を供給することによって部分的に変更されてもよい。その後、コーティング材料は、外部電界の供給によって太陽光吸収率および反射率特性を変化させる能力を有する“能動的な”温度制御コーティングになる。この光学特性を変化させる能力は、たとえばコーティング層が太陽光と暗黒のサイクルにさらされ、そのサイクル内での宇宙船への熱伝熱を減少または増加させることが望ましい場合に有効である。光学特性はまた、内部電子通信機器の動作による宇宙船の熱要求の減少または増加を補償するように調節されてもよい。これらの能力は、従来技術の宇宙船塗料では得られない。
【0065】
図9は、コーティング層20の能動的な制御方法を示している。図9では、コーティング層20はその説明が含まれている図3の等価回路によって表されている。コーティング層20は可変バイアス電圧源100 の一方の端子に接続され、その他方の端子は、公称的に接地電位である宇宙船本体102 のような基準電圧に接続されている。宇宙船本体102 またはその外板の温度は、熱電対のようなセンサ104 によって測定される。センサ104 の出力信号は、搭載コンピュータ106 に供給される。搭載コンピュータ106 は所望の値からの温度の変化を観察し、それに応じて温度の“設定値”を維持するように可変バイアス電圧源100 の電圧を調節する。それによってコーティング層20上のバイアス電圧が設定される。したがって、コーティング層20の能動制御による宇宙船の温度の自律制御のために、可変バイアス電圧源100 、宇宙船本体102 、センサ104 およびコンピュータ106 が符号108 で示されているフィードバックループを形成している。温度はまたコンピュータ106 の“設定値”温度制御を調節することにより外部ソースから制御されてもよい。図9は、外部制御の好ましい方法である地上制御局110 からの命令アップリンクを示している。
【0066】
説明のために本発明の特定の実施形態を詳細に述べてきたが、本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の修正および強化を行なうことができる。したがって、本発明は添付された特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるコーティング層の概略断面図。
【図2】基板に設けられた図1のコーティング層の概略断面図。
【図3】本発明のコーティング層用の等価回路の回路図。
【図4】強誘電性/常誘電性コーティング顔料の誘電率を温度の関数として示す理想化されたグラフ。
【図5】キュリー温度より下で動作する強誘電性コーティング顔料の分極を、供給された電界の関数として示す理想化されたグラフ。
【図6】キュリー温度のすぐ上の温度で動作する強誘電性コーティング顔料の分極と、従来技術の非強誘電性ESD塗料の顔料の分極とを、供給された電界の関数として示す理想化されたグラフ。
【図7】本発明によるコーティングの処理および基板のコーティングの方法のブロック図。
【図8】本発明によるコーティング層を有する宇宙船の斜視図。
【図9】コーティング層の能動制御モードの概略図。

Claims (12)

  1. コーティングにより保護されている宇宙船(90)において、
    宇宙環境で宇宙船を保護するために宇宙船(90)の外部表面(98, 25)はその表面に被覆されたコーティング(20)を備え、
    前記コーティング(20)は結合剤(24)とその結合剤(24)によって結合されている複数の粒子(22)とを含んでおり、
    前記コーティング(20)の含んでいる粒子(22)はピロ電気性で、かつ強誘電性の顔料材料で構成されている顔料粒子(22a) を含んでおり、
    これらの顔料粒子(22a) は強誘電性/常誘電性遷移状態を有し、宇宙船(90)の外部表面(98, 25)の最小動作温度TOPよりも低い強誘電性キュリー温度を有していることを特徴とする宇宙船。
  2. 宇宙船(90, 26)は通信衛星である請求項1記載の宇宙船。
  3. 結合剤(24)は無機材料である請求項1または2記載の宇宙船。
  4. 結合剤(24)は有機材料である請求項1または2記載の宇宙船。
  5. ピロ電気性で、かつ強誘電性である顔料材料は白色である請求項1乃至5のいずれか1項記載の宇宙船。
  6. コーティング(20)の厚さは、約0.0254mm(0.001インチ)乃至0.1016mm(約0.004インチ)である請求項1乃至5のいずれか1項記載の宇宙船。
  7. ピロ電気性であり、かつ強誘電性である顔料粒子(22a) と結合剤(24)との重量比は5:1以下である請求項1乃至6のいずれか1項記載の宇宙船。
  8. コーティング(20)はさらに、複数の活性2次粒子(22b) を含んでいる請求項1乃至7のいずれか1項記載の宇宙船。
  9. コーティング(20)はさらに、複数の不活性粒子(22c) を含んでいる請求項1乃至8のいずれか1項記載の宇宙船。
  10. 強誘電性材料は、約2.5電子ボルトを越える電子バンドギャップを有している請求項1乃至のいずれか1項記載の宇宙船。
  11. コーティングにより保護されている宇宙船(90)において、
    宇宙環境で宇宙船を保護するために宇宙船(90)の外部表面(98, 25)はその表面に被覆されたコーティング(20)と、そのコーティング(20)と接続されているバイアス電圧源(100) とを備え、
    前記コーティング(20)は結合剤(24)とその結合剤(24)によって結合されている複数の粒子(22)とを含んでおり、
    前記コーティング(20)の含んでいる粒子(22)はピロ電気性で、かつ強誘電性の顔料材料で構成されている顔料粒子(22a) を含んでおり、
    これらの顔料粒子(22a) は強誘電性/常誘電性遷移状態を有し、宇宙船(90)の外部表面(98, 25)の最小動作温度TOPよりも低い強誘電性キュリー温度を有していることを特徴とする宇宙船。
  12. 宇宙船はさらに、バイアス電圧源(100) 用のフィードバック制御装置(106) を含んでいる請求項1記載の宇宙船。
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