JP4144843B2 - 中空糸膜型透析濾過器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、中空糸膜型透析濾過器に関するものである。詳しく述べると、透析液流路に狭窄部を設けて物質交換効率を改善する中空糸膜型透析濾過器において、高分子量領域での分離特性に優れる中空糸膜に適した狭窄部を設けた中空糸膜型透析濾過器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
中空糸膜で隔てられる第1の流路を流れる第1流体と第2の流路を流れる第2流体との間で該中空糸膜を介して透析、濾過等の物質交換を行う中空糸膜モジュールでは、モジュール内での多数の中空糸膜の充填率をモジュール全体に均一に高めて、その交換効率を向上させる検討が行われている。
【0003】
膜を介してその両側に血液と透析液を流通させ、血液中の濃度と透析液中の濃度差を利用して、血液中の尿毒症物質を透析液側に移動させる透析の原理による場合、膜を介した移動速度は、物質の拡散のし易さに支配されるため、血液中の尿毒症物質の分子量が大きくなるにしたがって移動速度が遅くなり、除去率が低下する。もう一つ、膜を介した物質除去原理として、水分の移動とともに水分に含まれる尿毒症物質を血液中から透析液側へ移動させる濾過がある。濾過によれば膜の分画特性にしたがって、膜を通過する物質であれば、分子量が大きくなっても効率的に除去することができる。近年の研究から、β−ミクログロブリンなどの低分子量蛋白質である尿毒症物質のなかの大分子量物質を血液中から除去することが求められるようになり、人工透析による腎不全治療において、大分子量物質除去の検討が行われている。
【0004】
例えば、血液浄化療法において、血液と透析液との間で大量液置換をするプッシュアンドプル血液透析濾過法(Usuda,M.et al:Trans.Am.Soc.Artif.Intern.Organs 28 24-27(1982))等が提案された。これは、体外循環回路中の血液に輸液を行い、輸液量に対応した量の水分を中空糸膜を介して濾過することにより、血液浄化における濾過の作用を増大させて、血液中の大分子量物質を効率的に除去するものである。しかしながら、プッシュアンドプル血液透析濾過法では、1回の治療で5〜20リットルの輸液と濾過を行わなければならず、大量の輸液の準備や複雑な体外循環回路の設定など、煩雑でありまた、コストがかかるものであった。
【0005】
プッシュアンドプル血液透析濾過法を改善し発展させた方法として、中空糸膜束とハウジングの間に透析液流路の狭窄部を設けたものが提案されている。具体的には、筒状のハウジング内に、中空糸膜の束と、該中空糸膜で隔てられた第1の流路および第2の流路を有し、該中空糸膜を介して該第1の流路を流れる体液と、該第2の流路を流れる透析液との間で透析および限外濾過を行う透析器であって、透析液膨潤性を有する材料を用いて該第2の流路の途中に狭窄部を設け、該狭窄部の透析液上流側と下流側とで該透析液に圧力差が生じるように構成されてなる透析器により達成するものである(特開平8−192031号)。
【0006】
また、透析液の入口近傍の透析液流路を狭めて、透析液を中空糸膜を通して血液に流し込む形態の透析器が提案されている(WO95/19218)。さらには、中空糸膜束とハウジングの間に中空糸膜束を圧迫する空気袋や水膨張材料等の手段を有する透析器も提案されている(WO98/22161)。
【0007】
また、近年の治療方法および中空糸膜技術の進歩により、アルブミンの一定量の喪失を許容した中空糸膜の分画特性の設定が可能となり、中空糸膜の分画分離特性を広い範囲で制御できるようになってきている。
【0008】
しかしながら、上記狭窄部の設定条件によっては、過度のアルブミンの漏出を招き、あるいは、透析液側の操作圧力が高い割には、物質除去性能が向上しないこととなり、操作条件を悪化させてしまう。また、狭窄部を形成する際、空気圧による場合、その設定が煩雑であり、水膨張材料を用いた場合、未膨潤状態で組み立て膨潤状態で使用するので、使用時の圧迫状態を組み立て時に設定することに困難性を有する。さらには、中空糸膜束の充填率、狭窄部分の長さ、透析液流出入口との位置関係等、中空糸膜の分画特性に最適なそれらの設定が求められている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、上記欠点を解決した新規な中空糸膜型透析濾過器を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、以下の構成により達成される。
【0011】
(1)筒状のハウジング内に、中空糸膜の束と、該中空糸膜で隔てられた第1の流路および第2の流路を有し、該中空糸膜を介して該第1の流路を流れる体液と、該第2の流路を流れる透析液との間で透析および濾過を行う中空糸膜型透析濾過器の製造方法であって、デキストラン溶液の篩係数により作成した分画分子量曲線において、分子量22,000における篩係数が0.83以上であり、分子量65,000における篩係数が0.06以上0.30未満である中空糸膜を、該第2の流路の途中に該第2の流路を狭窄する硬質材料からなり、かつ内面と外面と開口した両端部を有する狭窄部形成部材に、濡れた状態の多数の前記中空糸膜からなる中空糸膜束を挿入する工程を有し、次いで該狭窄部形成部材をハウジング内に挿入する工程を含む、透析液側圧力損失が5〜15kPaであることを特徴とする中空糸膜型透析濾過器の製造方法
【0012】
(2)前記該狭窄部形成部材により狭窄される該中空糸膜束の長手方向の長さが21〜150mmであることを特徴とする上記(1)に記載の中空糸膜型透析濾過器の製造方法
【0013】
(3)前記圧力損失が、6.5kPa以上であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の中空糸膜型透析濾過器の製造方法。
(4)上記(1)から(3)に記載のいずれかの方法により製造された中空糸膜型透析濾過器
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の中空糸膜型透析濾過器(以下透析濾過器)を図面を参照しつつ説明する。
【0015】
本発明の中空糸膜型透析濾過器の一実施態様の透析濾過器を図1に示す。同図に示すように、透析濾過器1は筒状ハウジング31と、その両端にそれぞれ液密に接続、固定されたヘッダー32および33とで構成される全ハウジング3とからなる。ヘッダー32の頂部には、血液流入口34が突出形成され、ヘッダー33の頂部には、血液流出口35が突出形成されている。また、ハウジング31のヘッダー33側の側部には、透析液流入口36が突出形成され、ハウジング31のヘッダー32側の側部には、透析液流出口37が突出成形されている。
【0016】
ハウジング31内には、狭窄部形成部材として筒状体100が挿入されており、狭窄部が形成されている。ハウジング31内には中空糸膜41の束4が収納されており、該中空糸膜はハウジング31内のほぼ全長にわたっている。中空糸膜41としては、例えば、再生セルロース、セルロース誘導体、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルポリアミド、シリコーン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエステル系ポリマーアロイで構成されるものが挙げられる。
【0017】
本発明の中空糸膜は、デキストラン溶液の篩係数により作成した分画分子量曲線において、分子量22,000における篩係数が0.81以上であり、分子量65,000における篩係数が0.06以上0.30未満である。この分画分子量特性を有する中空糸膜は、本発明の狭窄部を設けていない従来の透析器に使用した場合、β−ミクログロブリンに代表される大分子量の尿毒症物質を血液中から除去することができるものである。本発明に用いることができる中空糸膜の製造方法は特に限定されるものではない。紡糸原液組成、膜凝固条件、製膜後熱処理等により、分画分子量特性を設定することができる。
【0018】
各中空糸膜41の両端部は、それぞれ、ハウジング31の端部において、中空糸膜41の内腔の端部開口が閉塞されない状態で、隔壁51および52により液密に支持固定されている。隔壁51および52は、例えばポリウレタン、シリコーン、エポキシ樹脂のようなポッティング材で構成され、中空糸膜41の束4の存在下で、液状のポッティング材を遠心注入法によりハウジング31の両端部に注入し、硬化させることにより形成される。
【0019】
ヘッダー32と隔壁51とで囲まれる空間には、血液流入室61が形成され、ヘッダー33と隔壁52とで囲まれる空間には、血液流出室62が形成されている。各中空糸膜41の内腔(中空部)には、血液が流れる第1の流路(血液流路)6が形成されており、該第1の流路6の両端は、それぞれ、前記血液流入室61および血液流出室62に連通している。
【0020】
また、全ハウジング3のハウジング31と、両隔壁51および52とで囲まれる空間において、中空糸膜41の束4とハウジング31の内周面との間隙および隣接する中空糸膜41同士の間隙、ならびに中空糸膜の束4と筒状体100の内面との間隙には、透析液が流れる第2の流路(透析液流路)7が形成されている。すなわち、前記第1の流路6と第2の流路7とは、各中空糸膜41で隔てられている。第2の流路7の上流側は、透析液入口36に連通し、下流側は、透析液出口37に連通している。
【0021】
本発明の狭窄部形成部材は、硬質材料を用いることにより、中空糸膜束の充填率を設定することが容易となり、再現性の良い製品を得ることができる。硬質材料としては、硬質プラスチック、セラミックス、金属あるいはこれらの複合物を用いることができる。硬質プラスチックは、成形加工が容易であり、密度も低く、軽量とすることでき、好ましい。硬質プラスチックとしては、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエーテルケトン、ポリスルホン他、汎用プラスチックやエンジニアリングプラスチックを用いることができる。セラミックスでは、アルミナ、ジルコニア、アパタイト等が挙げられる。金属では、ステンレス、チタン合金、コバルトクロム合金などが上げられる。医療用品の通常の滅菌方法であるエチレンオキサイドガス滅菌、高圧蒸気滅菌、γ線滅菌などの処理に対し、当該処理前後で形状を維持することができ、血液と接触した場合に生体に悪影響のある溶出物がなければ、使用することができる。
【0022】
狭窄部分の長さは、21〜150mmが好ましい。より好ましくは、40〜100mmである。下限値未満では、狭窄部形成による効果を得るためには狭窄部の充填率を高度に高めなければならず、中空糸膜の損傷の可能性が高くなり好ましくない。また、上限値を超えて狭窄部分を長くとっても、作業性が悪くなるばかりで、それに見合う性能の向上は見られない。また、透析液流路の透析液入口側には、狭窄部に至るまで透析液が該透析液入口から流入し該狭窄部に至るまでに少なくとも30mmの長さの第2流路前部を有することが好ましく、少なくとも50mmであればより好ましい。これは、図1の透析濾過器においては、中空糸膜隔壁固定部53から中空糸膜狭窄部入口101までの長さが少なくとも30mmであり、より好ましくは少なくとも50mmであることを意味する。これより短い場合、透析液側と血液側との差圧の大きな部分の中空糸膜の領域が少なくなり、大量の液置換の効率が低下する。さらに、透析液流路の透析液出口側には、狭窄部から該透析液出口に至るまでに少なくとも30mmの長さの第2流路後部とを有することが好ましく、少なくとも50mmであればより好ましい。これは、図1の透析濾過器においては、中空糸膜狭窄部出口102から中空糸膜隔壁固定部54までの長さが少なくとも30mmであり、より好ましくは少なくとも50mmであることを意味する。また、中空糸膜の有効長とは、ハウジングに収容されている中空糸膜のうち、隔壁に埋め込まれていない部分であり、実質的に濾過や透析が行われる部分の長さで、中空糸膜隔壁固定部53から他方の中空糸膜隔壁固定部54までの中空糸膜の長さである。
【0023】
本発明の狭窄部形成部材は、図1に示すような透析濾過器のハウジング内部に円筒体、あるいは、外面をハウジングの内部形状と適合させ、内面を中空糸膜束の形状に適合させた挿入物で構成することができる。さらに、図2の透析濾過器に示すようにハウジングの一部が他の部分よりも断面積が小さく、ハウジングの一部が狭窄部形成部材200となっているようなハウジングにより構成してもよい。また、狭窄部形成部材の中空糸膜束に面する内面形状は、狭窄部の入口から出口に至るまで、ほぼ一定の形状が好ましい。
【0024】
上記の構成により、本発明の透析濾過器の中空糸膜束4の一部は、狭窄部形成部材100で覆われており、狭窄部形成部材100の内面の直径(内径)は、ハウジング31の内径より小さくなっているので、ハウジング31と中空糸膜束4の間にあって、第2の流路7の狭窄部8を形成している。図1においては狭窄部形成部材である円筒体100の外面は、ハウジング31の内面に実質的に密着するように設定されており、ハウジング31の内面は狭窄部形成部材100の外面に適合した形状をしている。したがって、狭窄部8は、中空糸膜束4の他の部分と較べ、中空糸膜の充填率が高くなっている。
【0025】
ここで、中空糸膜束の充填率とは、ハウジング31、あるいは狭窄部形成部材100の内面により形成される中空糸膜長さ方向に垂直の断面の面積に対する、同じ断面における各中空糸膜の外径により求められる中空糸膜の占有する断面積の総和の割合である。
【0026】
本発明の透析濾過器は、上記狭窄部形成部材における中空糸膜束の充填率が高いので、各中空糸膜の隙間への透析液の分散が良好となり、透析性能が向上し、さらに、第2の流路を流れる透析液の透析液入口と透析液出口との圧力差(透析液側圧力損失)が大きくなる。また、血液は血液流入口から中空糸膜内腔を経て血液流出口から流出するので、図3に示す通り、第2流路前部においては、血液側に比べ透析液側の圧力が非常に大きくなり、第2流路後部においては透析液側に比べ血液側の圧力が非常に大きくなるので、近年、検討が進んでいる逆濾過推進型の透析器として有効に機能させることができ、物質除去能が飛躍的に向上することが期待できる。この透析液側圧力損失は、5kPa以上とする場合、性能の向上が認められる。好ましくは透析液側圧力損失は6.5kPa以上、15kPa以下であり、さらに好ましくは10kPa以上15kPa以下である。下限値未満では、β−ミクログロブリンの飛躍的な除去率の向上には不充分であり、上限値を超えると、β−ミクログロブリンの除去性能は向上するが、血液中からのアルブミン漏出量が増加し、好ましくない。
【0027】
本発明の透析濾過器の製造方法は、特に限定されるものではないが、以下に記載した方法により製造することができる。本発明の透析濾過器を製造するため、内面と外面と開口した両端部を有する狭窄部形成部材100に、濡れた状態の多数の中空糸膜41からなる中空糸膜束4を挿入し、該狭窄部形成部材100に挿入したままの状態の該中空糸膜束4を乾燥させ、ついで、少なくとも該狭窄部形成部材100の端部の形状に適合した部分を有するハウジング31の該適合した部分に該狭窄部形成部材を契合し、該狭窄部形成部材100と該ハウジングを固定する。さらに、上記の通り、該中空糸膜束4の両端部において、ウレタン樹脂等を用い該ハウジングと各中空糸膜の外面を中空糸膜内腔が開口した状態で液密に固定する。ここで、該狭窄部形成部材と該ハウジングの間は、図1の実施例においては、該狭窄部形成部材100の端部が適合する部分が、該ハウジング31の内面であって、該狭窄部形成部材100の外面が該ハウジング31の内面に密着し、固定される。該狭窄部形成部材と該ハウジングは、接着、融着等により固着させることだけではなく、該ハウジング内に形成した突起を該狭窄部形成部材を乗り越えさせる等して、実質的に所定の個所から移動することのないように固定してもよい。
【0028】
上記製造方法においては、中空糸膜充填率を高めるために、中空糸膜束を濡れた状態で狭窄部形成部材100に装填し、ついで狭窄部形成部材100に装填したまま、中空糸膜束を乾燥させる。さらに、狭窄部形成部材100と共に中空糸膜束4をハウジング31に挿入する。狭窄部形成部材100へ中空糸膜束4を乾燥状態で挿入する方法では、各中空糸膜41は、隣り合う中空糸膜同士の角度の違い、湾曲の違い等により互いの間に間隙が形成されるため、コンパクトな中空糸膜束を得ることができない。また、中空糸膜束の外周部より外力を加えて、中空糸膜束を圧縮した場合、中空糸膜束の外周近傍の各中空糸膜は隣接する中空糸膜に圧迫され、中空糸膜内径の潰れを来たしてしまう。中空糸膜束が濡れた状態では、水の表面張力等により、各中空糸膜の隙間は、乾燥状態に較べ小さくなり、コンパクトな中空糸膜束を得ることが容易である。
【0029】
さらに本発明は、前記筒状体を狭窄部形成部材とした場合に、該筒状体内面のテーパ角度が該筒状体外面のテーパ角度よりも小であることが好ましい。該筒状体の外面のテーパ角度は、ハウジング内面のテーパ角度に適合しており、好ましくは同一のテーパ角度を有する。通常、中空糸膜モジュールのハウジングは、合成樹脂を射出成型することによって製造されるので、成型用の芯金を抜き取るために、ハウジング内面には、少なからずテーパ角度を有している。本発明の狭窄部形成部材の内面のテーパ角度を狭窄部形成部材の外面のテーパ角度よりも小さくすることによって、狭窄部形成部材の一方の端部の中空糸膜束の充填率と、他方の端部の充填率をほぼ同じにすることができるので、第2の流体の圧力損失を効果的に高めることができる。
【0030】
ハウジング31、ヘッダー32、および33は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、アクリル系樹脂、硬質ポリ塩化ビニル、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、ポリスチレン等の各種硬質樹脂で構成されており、内部の視認性を確保するために、透明または半透明であるのが好ましい。また、血液の入側と出側の区別を容易にするために、ヘッダー32を異なる色に着色してもよい。
【0031】
ハウジング31内には、そのほぼ全長にわたり、中空糸膜41の束4が収納されている。この場合、束4を構成する中空糸膜41は、例えば、100〜70,000本程度であり、各中空糸膜41は、ハウジング31の長手方向に沿って並列的に配置されている。
【0032】
図4は、本発明の透析器を含む血液体外循環回路の構成例を模式的に示す回路構成図である。同図に示すように、血液体外循環回路10は、脱血ライン11Aと透析濾過器1と、返血ライン11Bと、除水コントロール手段17とを有している。
【0033】
脱血ライン11Aは、チューブ12と、該チューブ12の途中に設置された送血用のポンプ13および除泡用のチャンバー14で構成されており、脱血ライン11Aの一端は、針管を介して患者の動脈に接続され、他端は、透析濾過器1の血液流入口34に接続される。
【0034】
また、返血ライン11Bは、チューブ15と、該チューブ15の途中に設置された除泡用のチャンバー16とで構成されており、返血ライン11Bの一端は、針管を介して患者の静脈に接続される。
【0035】
除水コントロール手段17は、一端が透析濾過器1の透析液流入口36に接続されたチューブ18と、一端が透析濾過器1の透析液流出口37に接続されたチューブ19と、透析液をチューブ18および19内にそれぞれ同流量でかつ反対方向に送液する複式ポンプ20と、複式ポンプ20を迂回するようにその両端がチューブ19に接続されたバイパスチューブ21と、バイパスチューブ21の途中に設けられた除水ポンプ22とで構成されている。複式ポンプ20は、モーターの回転運動をプランジャーの往復運動に変換し、逆止弁機構により透析液および透析液排液の受入・排出を交互に行う構成のものである。除水ポンプ22は、モーターの回転運動をプランジャーの往復運動に変換し、シリンダー内の透析液排液を一定方向に送り出す構成のものである。
【0036】
図5に狭窄部形成部材の形態の一つを示す。狭窄部形成部材500は外面501、内面504および端部502、503を有する。端部502は大径側であり端部503は小径側である。さらに内面504は、小径側テーパ部510、大径側テーパ部530、中間テーパ部520からなる。そして狭窄部形成部材500において、小径側テーパ部510と大径側テーパ部530は、それぞれのテーパ角度が該狭窄部形成部材の両端部から該狭窄部形成部材の軸方向中心に向かって径縮するように形成されている。これによって、内面を単一のテーパ部で形成する場合と比べ、両端部の中空糸膜充填率の差を少なくすることができ、より効果的に本発明の中空糸膜モジュールを作製することができる。
【0037】
図2は、本発明の透析濾過器の別の一実施態様を示す縦断面図である。前記第1の実施態様と共通する事項の説明は省略する。
【0038】
本実施態様は、ハウジングが二つの部材からなり、該二つの部材の端部が、それぞれ狭窄部形成部材のそれぞれの端部と接合することで、第2の流路が形成される。このときハウジングの二つの部材と狭窄部形成部材とは、接着、融着等により液密に接合されなければならない。
【0039】
図2に示すように、透析濾過器2はハウジング231と331と、その両端に固定されたヘッダー32および33とで構成されるハウジング203、303を有する。ハウジング231の端部281ともう一つのハウジング331の端部381は、狭窄部形成部材200の端部201、202とそれぞれ接続・固定されている。
【0040】
ハウジング203、303内には、狭窄部形成部材200を介して、そのほぼ全長にわたり、中空糸膜41の束4が収納されている。
【0041】
本実施態様において、内面と外面と開口した両端部を有する狭窄部形成部材200に、濡れた状態の多数の中空糸膜41からなる中空糸膜束4を挿入し、該中空糸膜束4を該狭窄部形成部材200に挿入したままの状態で乾燥した後、隔壁形成部204と該狭窄部形成部材200と接合する端部281を有するハウジング231に挿入し、また、他方を隔壁形成部304と該狭窄部形成部材200と接合する端部381を有するハウジング331に挿入し、該狭窄部形成部材200と該ハウジング231、331を固定する工程を有するものである。
【0042】
狭窄部形成部材200の一方の端部と一方のハウジングの端部を接合・固定し、さらに狭窄部形成部材200の他方の端部と他方のハウジングの端部を接合・固定する。この接合・固定は、一般にプラスチック成型品に用いられる接着剤による固定、超音波融着、熱融着、テーパ角度勘合等、全ての方法を用いることができる。
【0043】
各中空糸膜41の両端部は、それぞれ、隔壁形成部204、304において、中空糸膜41の端部開口が閉塞されない状態で、ウレタン樹脂等の隔壁51および52により液密に支持固定されている。
【0044】
本実施態様によっても、中空糸膜束を傷つけることなく、高い充填率を有し、第2の流体流路に狭窄部を有する中空糸膜モジュールを製造することができ、第1の実施態様と同様の効果を得ることができる。
【0045】
本発明のデキストラン溶液の篩係数の測定は、以下の方法により行った。
<篩係数の測定> デキストランT10、T40(ファルマシア社製)を各3g/Lの濃度で生理食塩水に溶解してデキストラン溶液とする。有効膜面積1.0mで、中空糸膜の全長に渡って中空糸膜充填率が65%未満の狭窄部のない中空糸膜型モジュールを定法に従い作製する。該モジュールの中空糸膜内腔に流速200ml/min、濾過速度10ml/min/mの条件で37℃に保温した上記デキストラン溶液を還流する。透析濾過器から戻ってきた試験溶液および濾過された試験溶液は、元の試験溶液とは混合させず、透析濾過器には常に一定の組成の試験溶液を流通させた。還流開始後30分に該モジュール入口側(IN)、モジュール出口側(OUT)、および濾液(F)の3点でサンプリングする。サンプルを以下の条件下でGPC測定し、分子量に対するデキストラン濃度を測定する。これに基づいて、IN、OUT、Fの各デキストラン濃度から、篩係数SC(=2C/(CIN+COUT)) (C:濃度,添字:サンプリング部位)を算出し、SCの分子量依存性(分画分子量曲線)を求める。
<GPC測定> GPC測定は、測定装置:高性能GPC専用システム(Shodex GPC SYSYTEM−11,昭和電工社製)、カラム:Shodex汎用GFCカラム(OhpakKB−803)×2、プレカラム(OhpakKB−800p)(共に昭和電工社製)、移動相:生理食塩水により行う。
【0046】
図6に分画特性の異なる3種の中空糸膜A,B,Cについての、デキストラン分画分子量特性を示す。
【0047】
透析液側の圧力損失の測定は、以下の方法により行った。
<透析液側圧力損失測定方法> 透析濾過器の血液側流路に逆浸透水(RO水)を充填し、血液流入口および血液流出口を閉じる。透析濾過器の透析液入口および透析液出口に圧力モニター用チャンバーを有する液体循環回路を接続し、37℃に保温したRO水を流速500ml/minで循環させる。循環状態が安定した後、透析液入口側圧力(PDI)および透析液出口側圧力(PDO)を測定し、PDI−PDOを透析液側の圧力損失とする。
【0048】
以下、本発明の透析濾過器を実施例を挙げて詳述する。
【0049】
【実施例1】
図6で分画特性を測定したデキストラン分画分子量特性を有する、外径290μm及び内径200μmのポリスルホン中空糸膜A約10,080本の束(有効膜面積1.5m2)を用意し、RO水に浸漬させる。この中空糸膜束を内面テーパ角度0度、長さ50mmの筒状のポリカーボネート製狭窄部形成部材に挿入し、乾燥した。この時中空糸膜束の狭窄部における充填率は78%であった。
【0050】
次に図1に示した透析液入口と透析液出口を有するハウジング内に前記中空糸膜束と狭窄部形成部材を挿入した。各中空糸膜の両端部にウレタン樹脂製ポッティング剤を注入、硬化して各中空糸膜を固定し、その両端をスライスして各中空糸膜を開口させた。この時、中空糸膜の有効長は235mm、狭窄部以外の中空糸膜充填率は、約59%であった。中空糸膜隔壁固定部53から狭窄部入口101までの長さは125mm、狭窄部出口102から中空糸膜隔壁固定部54までの長さは、60mmであった。ハウジングの両端部に、それぞれ、血液流入口付きヘッダーおよび血液流出口付きヘッダーを装着し、これらを融着により液密に固定して、図1に示す構造の透析濾過器を得た。
【0051】
【比較例1】
実施例1と同様のポリスルホン中空糸膜束の実施例1に対応する位置の外周幅5cmに渡ってアクリロニトリル繊維内層とアクリル酸塩共重合体外層との複合繊維よりなる吸水性繊維(東洋紡績社製LANSEAL F)を4g巻きつけ、狭窄部を形成し、透析液流入口および流出口付きのハウジング内に挿入した。ついでハウジング内に挿入された各中空糸膜の両端部にポッティング剤を注入、硬化して各中空糸膜を固定し、その両端をスライスして各中空糸膜を開口させた。ハウジングの両端部に、それぞれ、血液流入口付きカバーおよび血液流出口付きカバーを装着し、これらを融着により液密に固定して、透析濾過器を得た。この中空糸膜束狭窄部の充填率は、上記吸水性繊維が透析液を吸水したとき、78%となるよう設定した。
【0052】
【実験例1】
実施例1と比較例1の透析濾過器各10本について、図4に記載した循環回路を用いて、デキストランのクリアランス(デキストランCL)を測定した。ただし、透析濾過器から戻ってきた試験溶液は、元の試験溶液とは混合させず、透析濾過器には常に一定の組成の試験溶液を流通させた。また、透析液についても、一定の組成の透析液を流通させた。
【0053】
試験溶液:デキストランT10、T40(ファルマシア社製)を各3g/lの濃度で生理食塩水に溶解してデキストラン溶液とし、血液の代わりに測定に用いた。各透析濾過器当たり、本試験溶液20リットルを37℃に加温して用いた。血液入口側流速は200ml/min、透析液には生理食塩水を用い、流速500ml/min、除水量10ml/min/mとした。
【0054】
透析濾過器を循環回路と接続し、循環回路に試験溶液を流通させると同時に、透析液側に生理食塩水を流通させた。このとき除水コントローラーにより、除水量を所定の速度とした。透析開始後30分に、脱血ライン(入口側)および返血ライン(出口側)から試験溶液を採取し、溶質濃度をGPCにより測定し、次式により、クリアランスを求める。
【0055】
D={(CBi−CBo)/CBi}×(QBi−Q)+Q
ここで、D:クリアランス(ml/min)、CBi:入口側溶質濃度(mg/dl)、CBo:出口側溶質濃度(mg/dl)、QBi:血液入口側流速(ml/min)、Q:濾過流速(除水量×膜面積m)(ml/min)である。
【0056】
GPC測定に用いた装置は、測定装置:高性能GPC専用システム(Shodex GPC SYSYTEM−11,昭和電工社製)、カラム:Shodex汎用GFCカラム Ohpak高性能タイプ(OhpakKB−803)×2本+プレカラム(Ohpak KB−800p) (共に昭和電工社製)、移動相:生理食塩水であった。
【0057】
測定の結果を表1にまとめた。表1から、比較例1に比し、実施例1は、透析液入口と透析液出口での圧力損失およびクリアランス性能において、ばらつきが少なく、一定した性能を得ることのできることが示された。
【0058】
【表1】
Figure 0004144843
【0059】
(実施例2〜18、比較例2〜4)
表2に記載した長さおよび充填率となるように筒状のポリカーボネート製狭窄部形成部材を作製し、狭窄部出口102から中空糸膜隔壁固定部54までの長さは、60mmと固定して狭窄部を形成した以外は、実施例1と同様にして中空糸膜Aを用いて、図1に示す構造の透析濾過器を得た。なお、比較例2は、実施例1と同様のハウジングを用いて、狭窄部形成部材を用いずに、作製した透析濾過器である。
【0060】
透析液側の圧力損失を測定し、また、実験例1に従い、デキストラン溶液のクリアランスを測定した。結果を表2に示す。また、狭窄部形成部材の長さ毎に、圧力損失に対するデキストラン分子量11,337におけるクリアランスのグラフを図7に示す。
【0061】
圧力損失が15kPaを超えると、デキストラン分子量65,633のクリアランスが高くなり、血液処理を行った場合に、血液中からのアルブミンの過度な漏出が起こることが予想される。また、図7より、狭窄部形成部材の長さが155mmの実施例は、長さのより短いものに比べ、圧力損失の大きさに対するデキストラン分子量11,337のクリアランスが低かった。狭窄部形成部材の長さが155mmの実施例は、透析液入口側の中空糸膜隔壁固定部から狭窄部入口までの長さが20mmであり、この短さが性能の低下の要因と考えることもできる。
【0062】
【表2】
Figure 0004144843
【0063】
(実施例19、20、比較例5)
表3に記載した長さおよび充填率となるように筒状のポリカーボネート製狭窄部形成部材を作製し、狭窄部出口102から中空糸膜隔壁固定部54までの長さは、60mmと固定して狭窄部を形成し、中空糸膜として図6に分画特性を示した中空糸膜Bを用いた以外は、実施例と1同様にして、図1に示す構造の透析濾過器を得た。なお、比較例5は、実施例1と同様のハウジングおよび中空糸膜Bを用いて、狭窄部形成部材を用いずに、作製した透析濾過器である。
【0064】
透析液側の圧力損失を測定し、また、実験例1に従い、デキストラン溶液のクリアランスを測定した。結果を表3に示す。
【0065】
【表3】
Figure 0004144843
【0066】
(実施例21、比較例6)
表4に記載した長さおよび充填率となるように筒状のポリカーボネート製狭窄部形成部材を作製し、狭窄部出口102から中空糸膜隔壁固定部54までの長さは、60mmと固定して狭窄部を形成し、中空糸膜として図6に分画特性を示した中空糸膜Cを用いた以外は、実施例1と同様にして、図1に示す構造の透析濾過器を得た。なお、比較例6は、実施例1と同様のハウジングおよび中空糸膜Cを用いて、狭窄部形成部材を用いずに、作製した透析濾過器である。
【0067】
透析液側の圧力損失を測定し、また、実験例1に従い、デキストラン溶液のクリアランスを測定した。結果を表3に示す。
【0068】
【表4】
Figure 0004144843
【0069】
【0070】
【発明の効果】
上記の通り、本発明の中空糸膜型透析濾過器は、物質交換能に優れ、製品性能の設定が容易で、空糸膜の分画特性に最適な、狭窄部分の長さ、透析液流出入口との位置関係等を有するものである。
【0071】
本発明は、筒状のハウジング内に、中空糸膜の束と、該中空糸膜で隔てられた第1の流路および第2の流路を有し、該中空糸膜を介して該第1の流路を流れる体液と、該第2の流路を流れる透析液との間で透析および濾過を行う透析濾過器であって、デキストラン溶液の篩係数により作成した分画分子量曲線において、分子量22,000における篩係数が0.81以上であり、分子量65,000における篩係数が0.06以上0.30未満である中空糸膜、該第2の流路の途中に該第2の流路に狭窄部を形成する硬質材料からなる狭窄部形成部材を有し、透析液側圧力損失が5〜15kPaである中空糸膜型透析濾過器であるので、アルブミンの過度の漏出の恐れがなく、高い物質交換能を容易とすることができる。
【0072】
また、本発明は、前記該狭窄部形成部材により狭窄される該中空糸膜束の長手方向の長さが21〜150mmであるので、圧力損失の大きさに対する高分子量の尿毒症物質の除去効率を向上させることができる。
【0073】
さらに、本発明は、前記圧力損失が、6.5kPa以上であるので、高い物質交換能を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の中空糸膜型透析濾過器の一実施態様を示す縦断面図である。
【図2】本発明の中空糸膜型透析濾過器の一実施態様を示す縦断面図であ。
【図3】透析濾過器内部の圧力分布を示すグラフである。
【図4】本発明の透析濾過器を含む血液体外循環回路の構成例を示す回路構成図である。
【図5】本発明の狭窄部形成部材の一実施態様を示す縦断面図である。
【図6】中空糸膜のデキストランを用いた分画分子量曲線を示すグラフである。
【図7】透析濾過器の圧力損失−デキストランクリアランスを示すグラフである。
【符号の説明】
1、2 透析濾過器
3 ハウジング
31、231,331、203,303 ハウジング
32、33 ヘッダー
34 血液流入口
35 血液流出口
36 透析液流入口
37 透析液流出口
4 束
41 中空糸膜
51、52 隔壁
53、54 中空糸膜隔壁固定部
6 第1の流路
61 血液流入室
62 血液流出室
7 第2の流路
8 狭窄部
101 狭窄部入口
102 狭窄部出口
10 血液体外循環回路
11A 脱血ライン
11B 返血ライン
12 チューブ
13 ポンプ
14 チャンバー
15 チューブ
16 チャンバー
17 除水コントロール手段
18、19 チューブ
20 複式ポンプ
21 バイパスチューブ
22 除水ポンプ
204,304 隔壁形成部
100、200、500 狭窄部形成部材
201、202 狭窄部形成部材端部
281、381 ハウジング端部
501 狭窄部形成部材外面
502 狭窄部形成部材端部大径側
503 狭窄部形成部材端部小径側
504 狭窄部形成部材内面
510 小径側テーパ部
530 大径側テーパ部
520 中間テーパ部

Claims (4)

  1. 筒状のハウジング内に、中空糸膜の束と、該中空糸膜で隔てられた第1の流路および第2の流路を有し、該中空糸膜を介して該第1の流路を流れる体液と、該第2の流路を流れる透析液との間で透析および濾過を行う中空糸膜型透析濾過器の製造方法であって、デキストラン溶液の篩係数により作成した分画分子量曲線において、分子量22,000における篩係数が0.83以上であり、分子量65,000における篩係数が0.06以上0.30未満である中空糸膜を、該第2の流路の途中に該第2の流路を狭窄する硬質材料からなり、かつ内面と外面と開口した両端部を有する狭窄部形成部材に、濡れた状態の多数の前記中空糸膜からなる中空糸膜束を挿入する工程を有し、次いで該狭窄部形成部材をハウジング内に挿入する工程を含む、透析液側圧力損失が5〜15kPaであることを特徴とする中空糸膜型透析濾過器の製造方法
  2. 前記該狭窄部形成部材により狭窄される該中空糸膜束の長手方向の長さが21〜150mmであることを特徴とする請求項1に記載の中空糸膜型透析濾過器の製造方法
  3. 前記圧力損失が、6.5kPa以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の中空糸膜型透析濾過器の製造方法
  4. 前記請求項1から3に記載のいずれかの方法により製造された中空糸膜型透析濾過器。
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