JP4144291B2 - 感光性平版印刷版材料及びその処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、感光性平版印刷版材料及び感光性平版印刷版材料の処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から行われている平版印刷法は、水と油が本質的に混じり合わないことを利用した印刷方法であり、印刷版面には水を受容して油性インキをはじく非画像部と、水をはじいて油性インキを受容する画像部が形成され、印刷機において水と油性インキを供給して、画像部に受容された油性インキのみを紙に転写することにより印刷が行われるものである。また印刷機は、印刷版面の画像部に受容された油性インキを一度ゴム製ブランケットに転写した後、紙に転写するオフセット印刷方式が一般的である。
【0003】
この平版印刷法に用いられる感光性平版印刷版材料の支持体としては、印刷適性の面から、親水性、保水性、感光層との接着に優れたものが要求されており、このような観点から、通常、表面を砂目立てと言われる粗面化処理を施されたアルミニウム板が用いられている。
【0004】
粗面化処理としては、ボール研磨、ブラシ研磨、ブラスト研磨、バフ研磨、ホーニング研磨等の機械的粗面化法、また、塩酸、硝酸等の酸性電解質中で交流あるいは直流によって支持体表面を電解処理する電気化学的粗面化法等が知られている。
【0005】
このような方法で砂目立て処理したアルミニウム板は、そのままでは比較的柔らかく磨耗しやすいので、次いで陽極酸化処理を施して酸化皮膜を形成させる。このような処理されたアルミニウム板の表面は硬く、耐磨耗性に優れた状態となる。
【0006】
露光された感光性平版印刷版材料は、アルカリ水溶液で現像すると、当該感光層の露光部もしくは未露光部が除去されて支持体表面が露出することになる。このアルミニウム板支持体の表面は親水性なので、現像により支持体の表面が露出された部分(非画像部)は水を受容して油性インキをはじくことになる。一方、現像により感光層が除去されなかった部分(画像部)は親油性なので水をはじいて油性インキを受容することになる。
【0007】
一般に感光性平版印刷版材料は、高感度であるほど露光に要する時間が短縮され、作業をはやく行うことができる。また、このような感光性平版印刷版材料を使用して印刷を行う際、印刷作業中の見当合わせや休憩等でしばらく印刷機を停止した後、印刷再開時に非画像部に微点状の汚れが発生することがあり(以下ストップ汚れと称す)、このストップ汚れを防止するため、非画像部の版面の親水性を保つ技術が望まれていた。
【0008】
従来、感光性平版印刷版材料の現像処理にはアルカリ金属珪酸塩の水溶液が広く用いられており、支持体表面のアルミニウムと現像液中の珪酸の反応により、支持体表面の親水性を増大させているが、この技術だけでは、親水性が十分保たれず、ストップ汚れを完全に抑えることはできなかった。
【0009】
また、光遊離基発生剤とエチレン性不飽和化合物との遊離基反応で潜像形成をするタイプの光重合性の感光性平版印刷版材料においては、アルカリ水溶液を用いて、画像露光済みの光重合性感光層を有する感光性平版印刷版材料を現像した場合、高感度の優れた平版印刷版を得ることができる。
【0010】
しかしながら、上記遊離基反応で潜像形成するタイプの感光性平版印刷版材料は、一般的に優れた感度を有するものの酸素によって遊離基反応が阻害されるという欠点を有しているために、何等かの酸素遮断機能を有する層(酸素遮断層)を光重合性感光層上に設けることが必要であり、このような酸素遮断層としてポリビニルアルコールを主成分とするものが有効であることが知られている。
【0011】
また、この酸素遮断層は現像液に持ち込まれることで現像液中にスラッジ・ヘドロを発生させる傾向があり、現像前に水洗し酸素遮断層を除去する工程(プレ水洗、又は現像前水洗)を設けることが有効である。しかしながら、ポリビニルアルコールを主成分とする酸素遮断層を光重合性感光層上に設けた感光性平版印刷版材料を自動現像機を用いて処理を繰り返した場合、プレ水洗液中にスラッジ・ヘドロが発生するため、清掃やポンプのつまり等の作業上の負担が問題となっていた。
【0012】
特開平10−10754号公報には、現像前水洗水に種々の添加剤を用いる技術が開示されているが、前述したストップ汚れの防止を含めた解決はなされていなかった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、連続処理において、一旦印刷機を停止した後に印刷を再開した時、非画像部に発生する微点状汚れ(ストップ汚れ)を防止し、また、長期間処理をした場合に現像槽や前処理槽にたまるスラッジ・ヘドロを低減し清掃作業の負担を減らした感光性平版印刷版材料及び感光性平版印刷版材料の処理方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成された。
【0015】
1.アルミニウム板支持体上に、少なくとも1層の付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有単量体、光重合開始剤及び高分子結合剤を含有する光重合性感光層並びに保護層を有する感光性平版印刷版材料であって、該保護層に少なくとも水溶性重合体及び上記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする感光性平版印刷版材料。
【0016】
2.アルミニウム板支持体上に、少なくとも1層の付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有単量体、光重合開始剤及び高分子結合剤を含有する光重合性感光層並びに保護層を有する感光性平版印刷版材料であって、該保護層に少なくとも水溶性重合体及び炭素数1〜3のN−アルキル置換のN−置換イミノジ酢酸又はその塩を含有することを特徴とする感光性平版印刷版材料。
【0017】
3.アルミニウム板支持体上に、少なくとも1層の付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有単量体、光重合開始剤及び高分子結合剤を含有する光重合性感光層並びに保護層を有する感光性平版印刷版材料であって、該保護層に少なくとも水溶性重合体及び上記一般式(2)で表される化合物を含有することを特徴とする感光性平版印刷版材料。
【0018】
4.前記1に記載の感光性平版印刷版材料を、画像露光し、水洗工程にて保護層を洗浄除去し、次いで現像処理することを特徴とする感光性平版印刷版材料の処理方法。
【0019】
5.前記2に記載の感光性平版印刷版材料を、画像露光し、水洗工程にて保護層を洗浄除去し、次いで現像処理することを特徴とする感光性平版印刷版材料の処理方法。
【0020】
6.前記3に記載の感光性平版印刷版材料を、画像露光し、水洗工程にて保護層を洗浄除去し、次いで現像処理することを特徴とする感光性平版印刷版材料の処理方法。
【0021】
以下、感光性平版印刷版材料の主要な構成要素、画像形成方法及び処理方法等について説明する。
【0022】
(支持体)
本発明の感光性平版印刷版材料に係る支持体としては、アルミニウムの金属板が好ましく、この場合、純アルミニウム板及びアルミニウム合金板いずれであってもかまわない。
【0023】
アルミニウム合金としては、種々のものが使用でき、例えば、珪素、銅、マンガン、マグネシウム、クロム、亜鉛、鉛、ビスマス、ニッケル、チタン、ナトリウム、鉄等の金属とアルミニウムの合金が用いられる。
【0024】
上記支持体は、粗面化(砂目立て処理)するに先立って表面の圧延油を除去するために脱脂処理を施すことが好ましい。脱脂処理としては、トリクレン、シンナー等の溶剤を用いる脱脂処理、ケシロン、トリエタノール等のエマルジョンを用いたエマルジョン脱脂処理等が用いられる。また、脱脂処理には、苛性ソーダ等のアルカリの水溶液を用いることもできる。脱脂処理に苛性ソーダ等のアルカリ水溶液を用いた場合、上記脱脂処理のみでは除去できない汚れや酸化皮膜も除去することができる。脱脂処理に苛性ソーダ等のアルカリ水溶液を用いた場合、支持体の表面にはスマットが生成するので、この場合には、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸、あるいはそれらの混酸に浸漬しデスマット処理を施すことが好ましい。粗面化の方法としては、例えば、機械的方法、電解によりエッチングする方法が挙げられる。
【0025】
用いられる機械的粗面化法は特に限定されるものではないが、ブラシ研磨法、ホーニング研磨法が好ましい。ブラシ研磨法による粗面化は、例えば、直径0.2〜0.8mmのブラシ毛を使用した回転ブラシを回転し、支持体表面に、例えば、粒径10〜100μmの火山灰の粒子を水に均一に分散させたスラリーを供給しながら、ブラシを押し付けて行うことができる。ホーニング研磨による粗面化は、例えば、粒径10〜100μmの火山灰の粒子を水に均一に分散させ、ノズルより圧力をかけ射出し、支持体表面に斜めから衝突させて粗面化を行うことができる。また、例えば、支持体表面に、粒径10〜100μmの研磨剤粒子を、100〜200μmの間隔で、2.5×103〜10×103個/cm2の密度で存在するように塗布したシートを張り合わせ、圧力をかけてシートの粗面パターンを転写することにより粗面化を行うこともできる。
【0026】
上記の機械的粗面化法で粗面化した後、支持体の表面に食い込んだ研磨剤、形成されたアルミニウム屑等を取り除くため、酸又はアルカリの水溶液に浸漬することが好ましい。酸としては、例えば、硫酸、過硫酸、弗酸、燐酸、硝酸、塩酸等が用いられ、塩基としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が用いられる。これらの中でも、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液を用いるのが好ましい。表面のアルミニウムの溶解量としては、0.5〜5g/m2が好ましい。アルカリ水溶液で浸漬処理を行った後、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸あるいはそれらの混酸に浸漬し中和処理を施すことが好ましい。
【0027】
電気化学的粗面化法も特に限定されるものではないが、酸性電解液中で電気化学的に粗面化を行う方法が好ましい。酸性電解液は、電気化学的粗面化法に通常用いられる酸性電解液を使用することができるが、塩酸系又は硝酸系電解液を用いるのが好ましい。電気化学的粗面化方法については、例えば、特公昭48−28123号公報、英国特許第896,563号公報、特開昭53−67507号公報に記載されている方法を用いることができる。この粗面化法は、一般には、1〜50ボルトの範囲の電圧を印加することによって行うことができるが、10〜30ボルトの範囲から選ぶのが好ましい。電流密度は、10〜200A/dm2の範囲を用いることができるが、50〜150A/dm2の範囲から選ぶのが好ましい。電気量は、100〜5000c/dm2の範囲を用いることができるが、100〜2000c/dm2の範囲から選ぶのが好ましい。この粗面化法を行う温度は、10〜50℃の範囲を用いることができるが、15〜45℃の範囲から選ぶのが好ましい。
【0028】
電解液として硝酸系電解液を用いて電気化学的粗面化を行う場合、一般には、1〜50ボルトの範囲の電圧を印加することによって行うことができるが、10〜30ボルトの範囲から選ぶのが好ましい。電流密度は、10〜200A/dm2の範囲を用いることができるが、20〜100A/dm2の範囲から選ぶのが好ましい。電気量は、100〜5000c/dm2の範囲を用いることができるが、100〜2000c/dm2の範囲から選ぶのが好ましい。電気化学的粗面化法を行う温度は、10〜50℃の範囲を用いることができるが、15〜45℃の範囲から選ぶのが好ましい。電解液における硝酸濃度は0.1〜5質量%が好ましい。電解液には、必要に応じて、硝酸塩、塩化物、アミン類、アルデヒド類、燐酸、クロム酸、ホウ酸、酢酸、シュウ酸等を加えることができる。
【0029】
電解液として塩酸系電解液を用いる場合、一般には、1〜50ボルトの範囲の電圧を印加することによって行うことができるが、2〜30ボルトの範囲から選ぶのが好ましい。電流密度は、10〜200A/dm2の範囲を用いることができるが、50〜150A/dm2の範囲から選ぶのが好ましい。電気量は、100〜5000c/dm2の範囲を用いることができるが、100〜2000c/dm2、更には200〜1000c/dm2の範囲から選ぶのが好ましい。電気化学的粗面化法を行う温度は、10〜50℃の範囲を用いることができるが、15〜45℃の範囲から選ぶのが好ましい。電解液における塩酸濃度は0.1〜5質量%が好ましい。
【0030】
上記の電気化学的粗面化法で粗面化した後、表面のアルミニウム屑等を取り除くため、酸又はアルカリの水溶液に浸漬することが好ましい。酸としては、例えば、硫酸、過硫酸、弗酸、燐酸、硝酸、塩酸等が用いられ、塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が用いられる。これらの中でもアルカリの水溶液を用いるのが好ましい。表面のアルミニウムの溶解量としては、0.5〜5g/m2が好ましい。また、アルカリの水溶液で浸漬処理を行った後、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸あるいはそれらの混酸に浸漬し中和処理を施すことが好ましい。
【0031】
機械的粗面化処理法、電気化学的粗面化法はそれぞれ単独で用いて粗面化してもよいし、また、機械的粗面化処理法に次いで電気化学的粗面化法を行って粗面化してもよい。
【0032】
粗面化処理の次には、陽極酸化処理を行うことができる。本発明において用いることができる陽極酸化処理の方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。陽極酸化処理を行うことにより、支持体上には酸化皮膜が形成される。該陽極酸化処理には、硫酸及び/又は燐酸等を10〜50%の濃度で含む水溶液を電解液として、電流密度1〜10A/dm2で電解する方法が好ましく用いられるが、他に、米国特許第1,412,768号公報に記載されている硫酸中で高電流密度で電解する方法や、同3,511,661号公報に記載されている燐酸を用いて電解する方法、クロム酸、シュウ酸、マロン酸等を一種又は二種以上含む溶液を用いる方法等が挙げられる。形成された陽極酸化被覆量は、1〜50mg/dm2が適当であり、好ましくは10〜40mg/dm2である。陽極酸化被覆量は、例えばアルミニウム板を燐酸クロム酸溶液(燐酸85%液:35ml、酸化クロム(IV):20gを1Lの水に溶解して作製)に浸積し、酸化被膜を溶解し、板の被覆溶解前後の質量変化測定等から求められる。
【0033】
陽極酸化処理された支持体は、必要に応じ封孔処理を施してもよい。これら封孔処理は、熱水処理、沸騰水処理、水蒸気処理、珪酸ソーダ処理、重クロム酸塩水溶液処理、亜硝酸塩処理、酢酸アンモニウム処理等公知の方法を用いて行うことができる。
【0034】
更に、これらの処理を行った後に、水溶性の樹脂、例えばポリビニルホスホン酸、スルホン酸基を側鎖に有する重合体及び共重合体、ポリアクリル酸、水溶性金属塩(例えばホウ酸亜鉛)もしくは、黄色染料、アミン塩等を下塗りしたものも好適である。更に、特開平5−304358号公報に開示されているようなラジカルによって付加反応を起し得る官能基を共有結合させたゾル−ゲル処理基板も好適に用いられる。
【0035】
(付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有単量体)
本発明の光重合性感光層(以下、感光層と称する場合あり)に用いる付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有単量体(以下、単量体と称する場合あり)にはラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する公知の単量体が包含される。
【0036】
具体的な化合物としては、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、グリセロールアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルオキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルオキシヘキサノリドアクリレート、1,3−ジオキサンアルコールのε−カプロラクトン付加物のアクリレート、1,3−ジオキソランアクリレート等の単官能アクリル酸エステル類、あるいはこれらのアクリレートをメタクリレート、イタコネート、クロトネート、マレエートに代えたメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸エステル、例えば、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングルコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ハイドロキノンジアクリレート、レゾルシンジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのジアクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートのジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物のジアクリレート、2−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−5−ヒドロキシメチル−5−エチル−1,3−ジオキサンジアクリレート、トリシクロデカンジメチロールアクリレート、トリシクロデカンジメチロールアクリレートのε−カプロラクトン付加物、1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテルのジアクリレート等の2官能アクリル酸エステル類、あるいはこれらのアクリレートをメタクリレート、イタコネート、クロトネート、マレエートに代えたメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸エステル、例えばトリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートのε−カプロラクトン付加物、ピロガロールトリアクリレート、プロピオン酸・ジペンタエリスリトールトリアクリレート、プロピオン酸・ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ヒドロキシピバリルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリアクリレート等の多官能アクリル酸エステル酸、あるいはこれらのアクリレートをメタクリレート、イタコネート、クロトネート、マレエートに代えたメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸エステル等を挙げることができる。
【0037】
また、プレポリマーも上記同様に使用することができる。プレポリマーとしては、後述する様な化合物等が挙げることができ、また、適当な分子量のオリゴマーにアクリル酸、又はメタクリル酸を導入し、光重合性を付与したプレポリマーも好適に使用できる。これらプレポリマーは、1種又は2種以上を併用してもよいし、上述の単量体及び/又はオリゴマーと混合して用いてもよい。
【0038】
プレポリマーとしては、例えばアジピン酸、トリメリット酸、マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、ハイミック酸、マロン酸、こはく酸、グルタール酸、イタコン酸、ピロメリット酸、フマル酸、グルタール酸、ピメリン酸、セバシン酸、ドデカン酸、テトラヒドロフタル酸等の多塩基酸と、エチレングリコール、プロピレングルコール、ジエチレングリコール、プロピレンオキサイド、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、1,6−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール等の多価のアルコールの結合で得られるポリエステルに(メタ)アクリル酸を導入したポリエステルアクリレート類、例えば、ビスフェノールA・エピクロルヒドリン・(メタ)アクリル酸、フェノールノボラック・エピクロルヒドリン・(メタ)アクリル酸のようにエポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を導入したエポキシアクリレート類、例えば、エチレングリコール・アジピン酸・トリレンジイソシアネート・2−ヒドロキシエチルアクリレート、ポリエチレングリコール・トリレンジイソシアネート・2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルフタリルメタクリレート・キシレンジイソシアネート、1,2−ポリブタジエングリコール・トリレンジイソシアネート・2−ヒドロキシエチルアクリレート、トリメチロールプロパン・プロピレングリコール・トリレンジイソシアネート・2−ヒドロキシエチルアクリレートのように、ウレタン樹脂に(メタ)アクリル酸を導入したウレタンアクリレート、例えば、ポリシロキサンアクリレート、ポリシロキサン・ジイソシアネート・2−ヒドロキシエチルアクリレート等のシリコーン樹脂アクリレート類、その他、油変性アルキッド樹脂に(メタ)アクリロイル基を導入したアルキッド変性アクリレート類、スピラン樹脂アクリレート類等のプレポリマーが挙げられる。
【0039】
本発明の光重合性感光層には、ホスファゼンモノマー、トリエチレングリコール、イソシアヌール酸EO(エチレンオキシド)変性ジアクリレート、イソシアヌール酸EO変性トリアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、トリメチロールプロパンアクリル酸安息香酸エステル、アルキレングリコールタイプアクリル酸変性、ウレタン変性アクリレート等の単量体及び該単量体から形成される構成単位を有する付加重合性のオリゴマー及びプレポリマーを含有することができる。
【0040】
更に、本発明に用いられる単量体として、少なくとも一つの(メタ)アクリロイル基を含有する燐酸エステル化合物が挙げられる。該化合物は、燐酸の水酸基の少なくとも一部がエステル化された化合物であり、しかも、(メタ)アクリロイル基を有する限り特に限定はされない。
【0041】
この他に特開昭58−212994号公報、同61−6649号公報、同62−46688号公報、同62−48589号公報、同62−173295号公報、同62−187092号公報、同63−67189号公報、特開平1−244891号公報等に記載の化合物などを挙げることができ、更に「11290の化学商品」化学工業日報社、p.286〜p.294に記載の化合物、「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」高分子刊行会、p.11〜65に記載の化合物なども本発明においては好適に用いることができる。これらの中で、分子内に2以上のアクリル基又はメタクリル基を有する化合物が本発明においては好ましく、更に分子量が10,000以下、より好ましくは5,000以下のものが好ましい。
【0042】
本発明の感光層には、上記した単量体を該感光層を塗布形成する感光性組成物において、1.0〜80.0質量%の範囲で含有するのが好ましく、より好ましくは3.0〜70.0質量%の範囲である。
【0043】
(高分子結合剤)
本発明の感光性平版印刷版材料は、感光層に高分子結合剤を含有する。本発明に係る高分子結合剤としては、例えば、アクリル系重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、その他の天然樹脂等を使用することができる。また、これらを2種以上併用してもかまわない。
【0044】
上記各高分子結合剤において、好ましくはアクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合体であり、更に、高分子結合剤の共重合組成として、(a)カルボキシル基含有モノマー、(b)メタクリル酸アルキルエステル又はアクリル酸アルキルエステルの共重合体であることが好ましい。
【0045】
カルボキシル基含有モノマーの具体例としては、α,β−不飽和カルボン酸類、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。その他、フタル酸と2−ヒドロキシメタクリレートのハーフエステル等のカルボン酸も好ましい。
【0046】
メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘプチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ウンデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ウンデシル、アクリル酸ドデシル等の無置換アルキルエステルの他、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル等の環状アルキルエステルや、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、グリシジルアクリレート等の置換アルキルエステル等を挙げることができる。
【0047】
更に、本発明に係る高分子結合剤は、他の共重合モノマーとして、下記(1)〜(14)に記載のモノマー等を用いることができる。
【0048】
(1)芳香族水酸基を有するモノマー、例えばo−(又はp−,m−)ヒドロキシスチレン、o−(又はp−,m−)ヒドロキシフェニルアクリレート等。
【0049】
(2)脂肪族水酸基を有するモノマー、例えば2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、5−ヒドロキシペンチルアクリレート、5−ヒドロキシペンチルメタクリレート、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート、6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、ヒドロキシエチルビニルエーテル等。
【0050】
(3)アミノスルホニル基を有するモノマー、例えばm−(又はp−)アミノスルホニルフェニルメタクリレート、m−(又はp−)アミノスルホニルフェニルアクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド等。
【0051】
(4)スルホンアミド基を有するモノマー、例えばN−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミド、N−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミド等。
【0052】
(5)アクリルアミド又はメタクリルアミド類、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−(4−ニトロフェニル)アクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド等。
【0053】
(6)弗化アルキル基を含有するモノマー、例えばトリフルオロエチルアクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、ヘキサフルオロプロピルメタクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート、N−ブチル−N−(2−アクリロキシエチル)ヘプタデカフルオロオクチルスルホンアミド等。
【0054】
(7)ビニルエーテル類、例えば、エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等。
【0055】
(8)ビニルエステル類、例えばビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等。
【0056】
(9)スチレン類、例えばスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等。
【0057】
(10)ビニルケトン類、例えばメチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等。
【0058】
(11)オレフィン類、例えばエチレン、プロピレン、i−ブチレン、ブタジエン、イソプレン等。
【0059】
(12)N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、4−ビニルピリジン等。
【0060】
(13)シアノ基を有するモノマー、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、2−ペンテンニトリル、2−メチル−3−ブテンニトリル、2−シアノエチルアクリレート、o−(又はm−,p−)シアノスチレン等。
【0061】
(14)アミノ基を有するモノマー、例えばN,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリブタジエンウレタンアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−i−プロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド等。
【0062】
更に、これらのモノマーと共重合し得る他のモノマーを共重合してもよい。
また、上記ビニル系共重合体の分子内に存在するカルボキシル基に、分子内に(メタ)アクリロイル基とエポキシ基を有する化合物を付加反応させることによって得られる不飽和結合含有ビニル系共重合体も、高分子結合材として好ましい。分子内に不飽和結合とエポキシ基を共に含有する化合物としては、具体的にはグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、特開平11−271969号に記載のあるエポキシ基含有不飽和化合物等が挙げられる。
【0063】
これらの共重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定された重量平均分子量が、1〜20万であるものが好ましいが、この範囲に限定されるものではない。
【0064】
上記高分子結合剤には、必要に応じてポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ノボラック樹脂、天然樹脂等、他の任意の高分子結合剤が、上記の各ビニル系共重合体と併用されてもよい。
【0065】
感光層を塗布する組成物中における上記高分子結合剤の含有量は、10〜90質量%の範囲が好ましく、15〜70質量%の範囲が更に好ましく、20〜50質量%の範囲で使用することが感度の面から特に好ましい。更に、上記したビニル系共重合体は、該高分子結合剤において、50〜100質量%であることが好ましく、100質量%であることがより好ましい。
【0066】
上記高分子結合剤に含まれる重合体の酸価については、10〜150の範囲で使用するのが好ましく、30〜120の範囲がより好ましく、50〜90の範囲で使用することが、感光層全体の極性のバランスをとる観点から特に好ましく、これにより感光層塗布液での顔料の凝集を防ぐことができる。
【0067】
(光重合開始剤)
本発明で用いることのできる光重合開始剤として、好ましくは、例えば、J.コーサー(J.Kosar)著「ライト・センシテイブ・システムズ」第5章に記載されるような、カルボニル化合物、有機硫黄化合物、過硫化物、レドックス系化合物、アゾ化合物、ジアゾ化合物、ハロゲン化合物、光還元性色素などが挙げられ、英国特許第1,459,563号に開示されている化合物も好ましい。
【0068】
具体的には、以下の例を挙げることができるが、これらに限定されない。即ち、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾイン−i−プロピルエーテル、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン等のベンゾイン誘導体;ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4′−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体;2−クロロチオキサントン、2−i−プロピルチオキサントン等のチオキサントン誘導体;2−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン等のアントラキノン誘導体;N−メチルアクリドン、N−ブチルアクリドン等のアクリドン誘導体;α,α−ジエトキシアセトフェノン、ベンジル、フルオレノン、キサントン、ウラニル化合物の他、特公昭59−1281号公報、同61−9621号公報並びに特開昭60−60104号公報に記載のトリアジン誘導体;特開昭59−1504号公報、同61−243807号公報に記載の有機過酸化物;特公昭43−23684号公報、同44−6413号公報、同44−6413号公報、同47−1604号公報並びに米国特許第3,567,453号に記載のジアゾニウム化合物;米国特許第2,848,328号、同2,852,379号並びに同2,940,853号に記載の有機アジド化合物;特公昭36−22062号公報、同37−13109号公報、同38−18015号公報並びに同45−9610号公報に記載のo−キノンジアジド類;特公昭55−39162号公報、特開昭59−14023号公報並びに「マクロモレキュルス(Macromolecules)」10巻,1307頁(1977年)記載の各種オニウム化合物;特開昭59−142205号公報に記載のアゾ化合物;特開平1−54440号公報、ヨーロッパ特許第109,851号、同126,712号並びに「ジャーナル・オブ・イメージング・サイエンス(J.Imag.Sci.)」30巻,174頁(1986年)記載の金属アレン錯体;特開平5−213861号及び同5−255347号記載の(オキソ)スルホニウム有機硼素錯体;特開昭59−152396号公報、特開昭61−151197号公報に記載のチタノセン類;「コーディネーション・ケミストリー・レビュー(Coordination Chemistry Review)」84巻,85〜277頁(1988年)並びに特開平2−182701号公報に記載のルテニウム等の遷移金属を含有する遷移金属錯体;特開平3−209477号公報に記載の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;四臭化炭素、特開昭59−107344号公報に記載の有機ハロゲン化合物等。
【0069】
中でも好ましいものは、チタノセン類である。チタノセン類の具体例としては、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ジ−クロライド、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス―フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピリ−1−イル)フェニル)チタニウム(IRUGACURE784:チバスペシャリティーケミカルズ社製)等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0070】
光源にレーザー光を用いる場合、好ましくは感光層に増感色素を添加することが好ましい。
【0071】
可視光から近赤外まで波長増感させる化合物としては、例えばシアニン、フタロシアニン、メロシアニン、ポルフィリン、スピロ化合物、フェロセン、フルオレン、フルギド、イミダゾール、ペリレン、フェナジン、フェノチアジン、ポリエン、アゾ化合物、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、ポリメチンアクリジン、クマリン、ケトクマリン、キナクリドン、インジゴ、スチリル、ピリリウム化合物、ピロメテン化合物、ピラゾロトリアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、バルビツール酸誘導体、チオバルビツール酸誘導体等が挙げられ、更に欧州特許568,993号、米国特許4,508,811号、同5,227,227号、特開2001−125255、特開平11−271969号公報等に記載の化合物も用いられる。
【0072】
本発明において、上記の光重合開始剤と増感色素の組合せの好ましい具体例としては、特開2001−125255、特開平11−271969号公報に記載のある組合せが挙げられる。
【0073】
これら重合開始剤の配合量は特に限定されないが、好ましくは、本発明に係る付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有単量体100質量部に対して0.1〜20質量部である。光重合開始剤と増感色素の配合比率は、モル比で1:100〜100:1の範囲が、好ましい。
【0074】
(各種添加剤)
本発明の感光層の塗布組成物には、上記した成分の他に、感光性平版印刷版材料の製造中あるいは保存中において単量体の不要な重合を阻止するために、重合防止剤を添加することが望ましい。適当な重合防止剤としてはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン第一セリウム塩、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0075】
重合防止剤の添加量は、上記組成物の全固形分の質量に対して、0.01〜5質量%が好ましい。また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加したり、塗布後の乾燥の過程で感光性層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、全組成物の0.5〜10質量%が好ましい。
【0076】
また、着色剤も使用することができ、着色剤としては、市販のものを含め従来公知のものが好適に使用できる。例えば、改訂新版「顔料便覧」,日本顔料技術協会編(誠文堂新光社)、カラーインデックス便覧等に述べられているものが挙げられる。
【0077】
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、赤色顔料、褐色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料等が挙げられる。具体的には、無機顔料(二酸化チタン、カーボンブラック、グラファイト、酸化亜鉛、プルシアンブルー、硫化カドミウム、酸化鉄、並びに鉛、亜鉛、バリウム及びカルシウムのクロム酸塩等)及び有機顔料(アゾ系、チオインジゴ系、アントラキノン系、アントアンスロン系、トリフェンジオキサジン系の顔料、バット染料顔料、フタロシアニン顔料及びその誘導体、キナクリドン顔料等)が挙げられる。
【0078】
これらの中でも、使用する露光レーザーに対応した分光増感色素の吸収波長域に実質的に吸収を持たない顔料を選択して使用することが好ましく、この場合、使用するレーザー波長での積分球を用いた顔料の反射吸収が0.05以下であることが好ましい。また、顔料の添加量としては、上記組成物の固形分に対し0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.2〜5質量%である。
【0079】
露光光源として、アルゴンレーザー(488nm)又はSHG−YAGレーザー(532nm)を使用する場合には、上記の感光波長領域での顔料吸収及び現像後の可視画性の観点から、紫色顔料、青色顔料を用いるのが好ましい。このようなものとしては、例えばコバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、フォナトーンブルー6G、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルーフアーストスカイブルー、インダンスレンブルー、インジコ、ジオキサンバイオレット、イソビオランスロンバイオレット、インダンスロンブルー、インダンスロンBC等を挙げることができる。これらの中で、より好ましくはフタロシアニンブルー、ジオキサンバイオレットである。
【0080】
また、上記組成物は、本発明の性能を損わない範囲で、界面活性剤を塗布性改良剤として含有することができる。その中でも好ましいのはフッ素系界面活性剤である。
【0081】
また、硬化皮膜の物性を改良するために、無機充填剤やジオクチルフタレート、ジメチルフタレート、トリクレジルホスフェート等の可塑剤等の添加剤を加えてもよい。これらの添加量は全固形分の10質量%以下が好ましい。
【0082】
(塗布)
本発明の感光層の感光性組成物を調製する際に使用する溶剤としては、例えば、アルコール(多価アルコールの誘導体類では、sec−ブタノール、イソブタノール、n−ヘキサノール、ベンジルアルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール)、エーテル類(プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル)、ケトン類、アルデヒド類(ジアセトンアルコール、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン)、エステル類(乳酸エチル、乳酸ブチル、シュウ酸ジエチル、安息香酸メチル)等が好ましく挙げられる。
【0083】
調製された感光性組成物(感光層塗布液)は、従来公知の方法で支持体上に塗布し、乾燥し、感光性平版印刷版材料を作製することができる。塗布液の塗布方法としては、例えばエアドクタコータ法、ブレードコータ法、ワイヤバー法、ナイフコータ法、ディップコータ法、リバースロールコータ法、グラビヤコータ法、キャストコーティング法、カーテンコータ法及び押し出しコータ法等を挙げることができる。
【0084】
感光層の乾燥温度は、低いと十分な耐刷性を得ることができず、また高過ぎるとマランゴニーを生じてしまうばかりか、非画線部のカブリを生じてしまう。好ましい乾燥温度範囲としては、60〜160℃の範囲が好ましく、より好ましくは80〜140℃、特に好ましくは、90〜120℃の範囲で乾燥することが好ましい。
【0085】
(保護層)
本発明の感光層の上側に、保護層(酸素遮断層又はオーバーコート層とも言う)を設けることが好ましい。保護層は、酸素透過性が低い皮膜を形成しうる水溶性重合体を使用することが好ましい。具体的には、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドンを挙げることができる。ポリビニルアルコールは酸素の透過を抑制する効果を有し、また、ポリビニルピロリドンは隣接する感光層との接着性を確保する効果を有する。
【0086】
上記2種のポリマーの他に、必要に応じ、ポリサッカライド、ポリエチレングリコール、ゼラチン、膠、カゼイン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチル澱粉、アラビアゴム、サクローズオクタアセテート、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアミン、ポリエチレンオキシド、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸、水溶性ポリアミド等の水溶性ポリマーも好ましく、これらは併用することもできる。
【0087】
また、本発明の保護層には、更に必要に応じて界面活性剤、マット剤等を含有することができ、また、特開2001−281872に記載の防腐剤を含有することも好ましい。
【0088】
保護層は、上記組成物を適当な溶剤に溶解し感光層上に塗布・乾燥して保護層を形成する。塗布溶剤としては、水、あるいはメタノール、エタノール、i−プロパノール等のアルコール類が好ましい。
【0089】
保護層の厚みは0.1〜5.0μmが好ましく、特に好ましくは0.5〜3.0μmである。
【0090】
本発明に係る感光性平版印刷版材料では、感光層と保護層間の剥離力が35mN/mm以上であることが好ましく、より好ましくは50mN/mm以上、更に好ましくは75mN/mm以上である。好ましい保護層の組成としては特開平10−161645号公報に記載されるものが挙げられる。
【0091】
本発明における剥離力は、保護層上に十分大きい粘着力を有する所定幅の粘着テープを貼り、それを感光性平版印刷版材料の平面に対して90度の角度で保護層を剥離する時の力を測定することにより求めることができる。
【0092】
(一般式(1)化合物)
本発明の一般式(1)で示される化合物は、特許請求の範囲に(化1)にて示す化合物を表すが、一般式(1)の式中、A1、A2、A3及びA4は各々−CH2OH、−PO3(M1)2又は−COOMを表し、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。M及びM1はそれぞれ水素原子、アンモニウム基、アルカリ金属原子又は有機アンモニウム基を表す。Xは炭素数2〜6のアルキレン基又は−(B1O)n−B2−を表す。nは1〜8の整数を表し、B1及びB2は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0093】
より詳細には、一般式(1)において、A1〜A4はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、−CH2OH、−PO3(M1)2又は−COOMを表し、M及びM1はそれぞれ水素原子、アンモニウム基、アルカリ金属原子(例えばナトリウム、カリウム)又は有機アンモニウム基(例えば、メチルアンモニウム基、トリメチルアンモニウム基等)を表す。Xは炭素数2〜6の置換されてもよいアルキレン基又は−(B1O)n−B2−を表す。また、B1及びB2は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜5の置換されてもよいアルキレン基を表す。Xで表されるアルキレン基としては、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン等が挙げられる。また、B1及びB2で表されるアルキレン基としては、メチレン、エチレン、トリメチレン等が挙げられる。X、B1又はB2が表すアルキレン基の置換基としては、ヒドロキシル基、炭素数1〜3のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基等)等が挙げられる。nは1〜8の整数を表し、好ましくは1〜4である。
【0094】
以下に前記一般式(1)で示される化合物の好ましい具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0095】
【化3】
【0096】
【化4】
【0097】
前記一般式(1)で示される化合物は、当業者で一般に知られる方法で合成することができる。
【0098】
これらの中でも、特に好ましい化合物は1−1、1−3、1−14である。
前記一般式(1)で表される化合物の保護層への添加量としては、0.001〜1質量%が好ましく、0.001〜0.1質量%であることがさらに好ましい。含有させるには、保護層塗布液中に添加し含有させることができる。
【0099】
(炭素数1〜3のN−アルキル置換のN−置換イミノジ酢酸又はその塩)
本発明の炭素数1〜3のN−アルキル置換のN−置換イミノジ酢酸又はその塩(以下、本発明に係るN−置換イミノジ酢酸又はその塩)において、N−アルキルイミノジ酢酸のアルキル基は、炭素数1〜3のアルキル基で、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基である。これらのアルキル基は、ヒドロキシ基で置換されていてもよく、アルキル基中のヒドロキシ基の数は0〜3が好ましい。
【0100】
本発明に係るN−置換イミノジ酢酸又はその塩の具体的化合物を以下に列挙するが、これらに限定されるものではない。
【0101】
L−1:N−メチルイミノジ酢酸
L−2:N−エチルイミノジ酢酸
L−3:N−ヒドロキシメチルイミノジ酢酸
L−4:N−β−ヒドロキシエチルイミノジ酢酸
L−5:N−プロピルイミノジ酢酸
L−6:N−α,β−ジヒドロキシエチルイミノジ酢酸
L−7:N−α−ヒドロキシエチルイミノジ酢酸
上記例示化合物において、特に好ましくはL−1、L−2、L−3である。
【0102】
本発明に係るN−置換イミノジ酢酸又はその塩の保護層への好ましい添加量は、0.001〜1質量%が好ましく、0.001〜0.1質量%であることがさらに好ましい。含有させるには、保護層塗布液中に添加し含有させることができる。
【0103】
(一般式(2)化合物)
本発明の一般式(2)で示される化合物は、特許請求の範囲に(化2)にて示す化合物を表わすが、具体例を以下に示す。
【0104】
【化5】
【0105】
また、例えば特開平6−100884号公報に記載の一般式1で示される化合物を挙げることができる。
【0106】
これらの中でも、特に好ましくは、β−アラニンジ酢酸又はその塩を挙げることができる。
【0107】
本発明の一般式(2)で表される化合物の保護層への好ましい添加量は、0.001〜1質量%が好ましく、0.001〜0.1質量%であることがさらに好ましい。含有させるには、保護層塗布液中に添加し含有させることができる。
【0108】
上記した様に、本発明においては、保護層に一般式(1)で表される化合物、一般式(2)で表される化合物及び/又は本発明に係るN−置換イミノジ酢酸又はその塩を含有することが好ましいが、この中でも特に、一般式(1)で表される化合物が好ましい。
【0109】
(画像形成方法)
本発明の感光性平版印刷版材料に画像露光する光源としては、例えばレーザー、発光ダイオード、キセノンランプ、キセノンフラッシュランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク燈、メタルハライドランプ、タングステンランプ、高圧水銀ランプ、無電極光源等を挙げることができる。
【0110】
一括露光する場合には、感光層上に、所望の露光画像のネガパターンを遮光性材料で形成したマスク材料を重ね合わせ、露光すればよい。
【0111】
発光ダイオードアレイ等のアレイ型光源を使用する場合や、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、タングステンランプ等の光源を、液晶、PLZT等の光学的シャッター材料で露光制御する場合には、画像信号に応じたデジタル露光をすることが可能であり好ましい。この場合は、マスク材料を使用せず、直接書込みを行うことができる。
【0112】
レーザー露光の場合には、光をビーム状に絞り画像データに応じた走査露光が可能なので、マスク材料を使用せず、直接書込みを行うのに適している。また、レーザーを光源として用いる場合には、露光面積を微小サイズに絞ることが容易であり、高解像度の画像形成が可能となる。
【0113】
レーザー光源としては、アルゴンレーザー、He−Neガスレーザー、YAGレーザー、半導体レーザー等をいずれも好適に用いることが可能である。レーザーの走査方法としては、円筒外面走査、円筒内面走査、平面走査などがある。円筒外面走査では、記録材料を外面に巻き付けたドラムを回転させながらレーザー露光を行い、ドラムの回転を主走査としレーザー光の移動を副走査とする。円筒内面走査では、ドラムの内面に記録材料を固定し、レーザービームを内側から照射し、光学系の一部又は全部を回転させることにより円周方向に主走査を行い、光学系の一部又は全部をドラムの軸に平行に直線移動させることにより軸方向に副走査を行う。平面走査では、ポリゴンミラーやガルバノミラーとfθレンズ等を組み合わせてレーザー光の主走査を行い、記録媒体の移動により副走査を行う。円筒外面走査及び円筒内面走査の方が光学系の精度を高めやすく、高密度記録には適している。
【0114】
(現像処理)
本発明の感光性平版印刷版材料の処理方法(以下、本発明の処理方法とも言う)に用いられる現像液及び補充液の主成分は、珪酸、燐酸、炭酸、ホウ酸、フェノール類、糖類、オキシム類及びフッ素化アルコール類から選ばれる少なくとも一種の化合物を含有することが好ましい。また、現像液のpHは、8.5より高く13.0未満の範囲であるアルカリ性水溶液であることが好ましい。さらに好ましくはpH8.5〜12である。
【0115】
これらのうち、フェノール類、糖類、オキシム類及びフッ素化アルコール類の如き弱酸性物質としては、解離指数(pKa)が10.0〜13.2のものが好ましい。このような酸としては、PergamonPress社発行のIONISATION CONSTANTS OF ORGANIC ACIDS INAQUEOUS SOLUTIONなどに記載されているものから選ばれ、具体的には、サリチル酸(pKa13.0)、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸(同12.84)、カテコール(同12.6)、没食子酸(同12.4)、スルホサリチル酸(同11.7)、3,4−ジヒドロキシスルホン酸(同12.2)、3,4−ジヒドロキシ安息香酸(同11.94)、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン(同11.82)、ハイドロキノン(同11.56)、ピロガロール(同11.34)、o−クレゾール(同10.33)、レゾルソノール(同11.27)、p−クレゾール(同10.27)、m−クレゾール(同10.09)などのフェノール性水酸基を有するフェノール類が挙げられる。
【0116】
また、糖類としてはアルカリ中でも安定な非還元糖が好ましく用いることができる。非還元糖とは、遊離のアルデヒド基やケトン基を持たず、還元性を示さない糖類であり、還元基同士の結合したトレハロース型少糖類、糖類の還元基と非糖類が結合した配糖体及び糖類に水素添加して還元した糖アルコールに分類され、いずれも本発明に好適に用いられる。トレハロース型少糖類には、サッカロースやトレハロースがあり、配糖体としては、アルキル配糖体、フェノール配糖体、カラシ油配糖体などが挙げられる。また、糖アルコールとしては、例えば、D,L−アラビット、リビット、キシリット、D,L−ソルビット、D,L−マンニット、D,L−イジット、D,L−タリット、ズリシット及びアロズルシットなどが挙げられる。更に、二糖類の水素添加で得られるマルチトール及びオリゴ糖の水素添加で得られる還元体(還元水あめ)が好適に用いられる。更には、2−ブタノンオキシム(pKa12.45)、アセトキシム(同12.42)、1.2−シクロヘプタンジオンオキシム(同12.3)、2−ヒドロキシベンズアルデヒドオキシム(同12.10)、ジメチルグリオキシム(同11.9)、エタンジアミドジオキシム(同11.37)、アセトフェノンオキシム(同11.35)などのオキシム類、例えば2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール−1(同12.74)、トリフルオロエタノール(同12.37)、トリクロロエタノール(同12.24)などのフッ素化アルコール類が挙げられる。他にも、ピリジン−2−アルデヒド(同12.68)、ピリジン−4−アルデヒド(同12.05)などのアルデヒド類、アデノシン(同12.56)、イノシン(同12.5)、グアニン(同12.3)、シトシン(同12.2)、ヒポキサンチン(同12.1)、キサンチン(同11.9)などの核酸関連物質、他に、ジエチルアミノメチルスルホン酸(同12.32)、1−アミノ−3,3,3−トリフルオロ安息香酸(同12.29)、イソプロピリデンジスルホン酸(同12.10)、1,1−エチリデンジホスホン酸(同11.54)、1,1−エチリデンジスルホン酸1−ヒドロキシ(同11.52)、ベンズイミダゾール(同12.86)、チオベンズアミド(同12.8)、ピコリンチオアミド(同12.55)、バルビツル酸(同12.5)などの弱酸が挙げられる。これらの酸性物質は単独でも、また二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの酸性物質の中で好ましいのは、珪酸、燐酸、炭酸、スルホサリチル酸、サリチル酸及び非還元糖の糖アルコールとサッカロースであり、特に珪酸、D−ソルビット、サッカロース、還元水あめが適度なpH領域に緩衝作用があることと、低価格であることで好ましい。
【0117】
これらの酸性物質の現像液中に占める割合は0.1〜30質量%が好ましく、更に好ましくは、1〜20質量%である。上記範囲以下では十分な緩衝作用が得られず、またこの範囲以上の濃度では、高濃縮化し難く、また原価上昇の問題が出てくる。
【0118】
これらの酸に組み合わせる塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、同アンモニウム、同カリウム及び同リチウムが好適に用いられる。これらのアルカリ剤は、単独もしくは二種以上を組み合わせて用いられる。その他として、例えば、珪酸カリウム、珪酸ナトリウム、珪酸リチウム、珪酸アンモニウム、メタ珪酸カリウム、メタ珪酸ナトリウム、メタ珪酸リチウム、メタ珪酸アンモニウム、燐酸三カリウム、燐酸三ナトリウム、燐酸三リチウム、燐酸三アンモニウム、燐酸二カリウム、燐酸二ナトリウム、燐酸二リチウム、燐酸二アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素アンモニウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸リチウム、ホウ酸アンモニウム等が挙げられ、予め形成された塩の形で加えられてもよい。この場合も、水酸化ナトリウム、同アンモニウム、同カリウム及び同リチウムをpH調整に加えることができる。また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジンなどの有機アルカリ剤も組み合わせて用いられる。最も好ましいものとして珪酸カリウム及び珪酸ナトリウムが挙げられる。珪酸塩の濃度は、SiO2濃度換算で1.0〜3.0質量%が好ましい。また、SiO2とアルカリ金属Mのmol比(SiO2/M)が、0.25〜2の範囲であることがより好ましい。
【0119】
なお、本発明で言う現像液とは、現像のスタート時に使用される未使用の液だけでなく、感光性平版印刷版材料の処理によって低下する液の活性度を補正するために補充液が補充され、活性度が保たれた液(いわゆるランニング液)を含む。補充液は従って、現像液より活性度(アルカリ濃度)が高い必要があるので、補充液のpHは13.0を超えていてもよい。
【0120】
(界面活性剤)
本発明に用いられる現像液及び補充液には、現像性の促進や現像カスの分散及び印刷版画像部の親インキ性を高める目的で必要に応じて種々界面活性剤や有機溶剤を添加できる。好ましい界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系及び両性界面活性剤が挙げられる。界面活性剤の好ましい例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、しょ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、エチレンジアミンのポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体付加物、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシドなどの非イオン性界面活性剤、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホ琥珀酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類などのアニオン界面活性剤、アルキルアミン塩類、テトラブチルアンモニウムブロミド等の第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体などのカチオン性界面活性剤、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミダゾリン類などの両性界面活性剤が挙げられる。以上に記載の各界面活性剤の中で、ポリオキシエチレンとは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレンなどのポリオキシアルキレンに読み替えることもでき、それらの界面活性剤もまた包含される。更に好ましい界面活性剤は、分子内にパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系の界面活性剤である。このようなフッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステルなどのアニオン型、パーフルオロアルキルベタインなどの両性型、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩などのカチオン型及びパーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基及び親水性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基及び親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基含有ウレタンなどの非イオン型が挙げられる。上記の界面活性剤は、単独もしくは2種以上を組み合わせて使用することができ、現像液中に0.001〜10質量%、より好ましくは0.01〜5質量%の範囲で添加される。
【0121】
(現像安定化剤)
本発明に用いられる現像液及び補充液には、好ましくは、現像安定化剤を用いることができる。好ましい例としては、特開平6−282079号公報記載の糖アルコールのポリエチレングリコール付加物、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドなどのテトラアルキルアンモニウム塩、テトラブチルホスホニウムブロマイドなどのホスホニウム塩及びジフェニルヨードニウムクロライドなどのヨードニウム塩等が挙げられ、更に、特開昭50−51324号公報記載のアニオン界面活性剤又は両性界面活性剤、また特開昭55−95946号公報記載の水溶性カチオニックポリマー、特開昭56−142528号公報に記載されている水溶性の両性高分子電解質を挙げることができる。更に、特開昭59−84241号公報のアルキレングリコールが付加された有機ホウ素化合物、特開昭60−111246号公報記載のポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック重合型の水溶性界面活性剤、特開昭60−129750号公報のポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンを置換したアルキレンジアミン化合物、特開昭61−215554号公報記載の重量平均分子量300以上のポリエチレングリコール、特開昭63−175858号公報のカチオン性基を有する含フッ素界面活性剤、特開平2−39157号公報の酸又はアルコールに4モル以上のエチレンオキシドを付加して得られる水溶性エチレンオキシド付加化合物と、水溶性ポリアルキレン化合物などを挙げることができる。
【0122】
(有機溶剤)
本発明に用いられる現像液及び現像補充液には、好ましくは更に有機溶剤を用いる。本発明で用いることのできる有機溶剤としては、水に対する溶解度が約10質量%以下のものが適しており、好ましくは5質量%以下のものから選ばれる。例えば、1−フェニルエタノール、2−フェニルエタノール、3−フェニル−1−プロパノール、4−フェニル−1−ブタノール、4−フェニル−2−ブタノール、2−フェニル−1−ブタノール、2−フェノキシエタノール、2−ベンジルオキシエタノール、o−メトキシベンジルアルコール、m−メトキシベンジルアルコール、p−メトキシベンジルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノール及び4−メチルシクロヘキサノール、N−フェニルエタノールアミン及びN−フェニルジエタノールアミンなどを挙げることができる。有機溶剤の含有量は、使用液の総質量に対して0.1〜5質量%が好ましく、更には0.1〜1質量%が好ましい。
【0123】
(還元剤)
本発明に用いられる現像液及び補充液には、必要に応じて還元剤が加えられる。これは印刷版の汚れを防止するものであり、特に感光性ジアゾニウム塩化合物を含むネガ型感光性平版印刷版を現像する際に有効である。好ましい有機還元剤としては、例えば、チオサリチル酸、ハイドロキノン、メトール、メトキシキノン、レゾルシン、2−メチルレゾルシンなどのフェノール化合物、フェニレンジアミン、フェニルヒドラジンなどのアミン化合物が挙げられる。更に好ましい無機の還元剤としては、例えば、亜硫酸、亜硫酸水素酸、亜燐酸、亜燐酸水素酸、亜燐酸二水素酸、チオ硫酸及び亜ジチオン酸などの無機酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などを挙げることができる。これらの還元剤のうち、汚れ防止効果が特に優れているのは亜硫酸塩である。これらの還元剤は、使用時の現像液に対して0.05〜5質量%の範囲で含有されることが好ましい。
【0124】
(有機カルボン酸)
本発明に用いられる現像液及び補充液には、必要に応じて更に有機カルボン酸を加えることもできる。好ましい有機カルボン酸は、炭素原子数6〜20の脂肪族カルボン酸及び芳香族カルボン酸である。脂肪族カルボン酸の具体的な例としては、カプロン酸、エナンチル酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸などがあり、特に好ましいのは炭素数8〜12のアルカン酸である。また、炭素鎖中に二重結合を有する不飽和脂肪酸でも、分岐した炭素鎖のものでもよい。芳香族カルボン酸としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環などにカルボキシル基が置換された化合物で、具体的には、o−クロロ安息香酸、p−クロロ安息香酸、o−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、o−アミノ安息香酸、p−アミノ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、没食子酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸などがあるがヒドロキシナフトエ酸は特に有効である。上記脂肪族及び芳香族カルボン酸は水溶性を高めるためにナトリウム塩やカリウム塩又はアンモニウム塩として用いるのが好ましい。本発明で用いる現像液の有機カルボン酸の含有量は格別な制限はないが、0.1質量%より低いと効果が十分でなく、また10質量%以上ではそれ以上の効果の改善が計れないばかりか、別の添加剤を併用する時に溶解を妨げることがある。従って、好ましい添加量は使用時の現像液に対して0.1〜10質量%であり、よりこのましくは0.5〜4質量%である。
【0125】
(その他添加剤)
本発明に用いられる現像液及び補充液には、現像性を高めるために前記の他に以下のような添加剤を加えることができる。例えば、特開昭58−75152号公報記載のNaCl、KCl、KBr等の中性塩、特開昭59−121336号公報記載の[Co(NH3)]6Cl3等の錯体、特開昭56−142258号公報記載のビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドとアクリル酸ナトリウムの共重合体等の両性高分子電解質、特開昭59−75255号公報記載のSi、Ti等を含む有機金属界面活性剤、特開昭59−84241号公報記載の有機ホウ素化合物等が挙げられる。
【0126】
本発明に用いられる現像液及び補充液には、更に必要に応じて防腐剤、着色剤、増粘剤、消泡剤及び硬水軟化剤などを含有させることもできる。消泡剤としては、例えば、特開平2−244143号公報記載の鉱物油、植物油、アルコール、界面活性剤、シリコーン等が挙げられる。硬水軟化剤としては、例えば、ポリ燐酸及びそのナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩、エチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、ニトリロトリ酢酸、1,2−ジアミノシクロヘキサンテトラ酢酸及び1,3−ジアミノ−2−プロパノールテトラ酢酸などのアミノポリカルボン酸及びそれらのナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、トリエチレンテトラミンヘキサ(メチレンホスホン酸)、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ(メチレンホスホン酸)及び1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸やそれらのナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩を挙げることができる。このような硬水軟化剤はそのキレート化力と使用される硬水の硬度及び硬水の量によって最適値が変化するが、一般的な使用量を示せば、使用時の現像液に0.01〜5質量%の範囲が好ましい。この範囲より少ない添加量では所期の目的が十分に達成されず、添加量がこの範囲より多い場合は、色抜けなど、画像部への悪影響がでてくる。現像液及び補充液の残余の成分は水である。
【0127】
(濃縮液)
また、本発明に用いられる現像液及び補充液は、使用時よりも水の含有量を少なくした濃縮液としておき、使用時に水で希釈するようにしておくことが運搬上有利である。この場合の濃縮度は、各成分が分離や析出を起こさない程度が適当であるが、必要により可溶化剤を加えることが好ましい。可溶化剤としては、特開平6−32081号公報記載のトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸及びそれらのアルカリ金属塩等のいわゆるヒドロトロープ剤が好ましく用いられる。
【0128】
本発明に用いる自動現像機は、好ましくは現像浴に自動的に補充液を必要量補充する機構が付与されており、好ましくは一定量を超える現像液は、排出する機構が付与されており、好ましくは現像浴に自動的に水を必要量補充する機構が付与されており、好ましくは感光性平版印刷版材料が通過(以下、通版と言う)を検知する機構が付与されており、好ましくは通版の検知をもとに版の処理面積を推定する機構が付与されており、好ましくは処理面積の推定をもとに補充しようとする補充液及び/又は水の補充量を制御する機構が付与され、好ましくはこれらの補充の補充タイミングを制御する機構が付与されており、好ましくは現像液の温度を制御する機構が付与されており、好ましくは現像液のpH及び/又は電導度を検知する機構が付与されており、好ましくは現像液のpH及び/又は電導度をもとに補充しようとする補充液及び/又は水の補充量を制御する機構が付与されており、好ましくはこれらの補充の補充タイミングを制御する機構が付与されている。
【0129】
本発明に用いる自動現像機は、現像工程の前に処理液に版を浸漬させる前処理部を有していることが好ましい。この前処理部は、好ましくは版面に処理液をスプレーする機構が付与されており、好ましくは処理液の温度を25℃〜60℃の任意の温度に制御する機構が付与されており、好ましくは版面をローラー状のブラシ(ブラシロール)により擦る機構が付与されている。またこの処理液としては、水などが用いられる。詳しくは後述する。
(後処理)
本発明の感光性平版印刷版材料は、現像処理後、水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体等を主成分とする版面保護剤(フィニッシャー液、保護ガム液、あるいは単にガム液とも言う)で後処理を施される。
【0130】
本発明の感光性平版印刷版材料の後処理にはこれらの処理を種々組み合わせて用いることができ、例えば、現像→水洗→界面活性剤を含有するリンス液処理や現像→水洗→フィニッシャー液による処理が好ましい。
【0131】
更にリンス液やフィニッシャー液を用いた向流多段処理も好ましい態様である。これらの後処理は、一般に現像部と後処理部とからなる自動現像機を用いて行われる。後処理液は、スプレーノズルから吹き付ける方法、処理液が満たされた処理槽中を浸漬搬送する方法が用いられる。また、現像後一定量の少量の水洗水を版面に供給して水洗し、その廃液を現像液原液の希釈水として再利用する方法も知られている。また、実質的に未使用の処理液で処理するいわゆる使い捨て処理方式も適用できる。このような処理によって得られた平版印刷版は、オフセット印刷機に掛けられ、印刷に用いられる。
【0132】
(前処理)
本発明の処理方法おいて、現像液で処理する工程の前に前処理工程(前水洗工程)を設け、保護層を洗浄除去することが好ましい。
【0133】
該前処理工程で用いる処理液(水洗水)は、キレート剤、界面活性剤及び防腐剤から選ばれる少なくとも1種を含有する液が好ましく、また、水洗水は、水道水を使用することができる。
【0134】
キレート剤としては、金属イオンと配位結合してキレート化合物を形成する化合物を用いることができる。具体的には、エチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩又はナトリウム塩、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、そのカリウム塩又はナトリウム塩、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、そのカリウム塩又はナトリウム塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、そのカリウム塩又はナトリウム塩、ニトリオトリ酢酸、そのカリウム塩又はナトリウム塩、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、そのカリウム塩又はナトリウム塩、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩又はナトリウム塩、ホスホノアルカントリカルボン酸等が挙げられる。これらのキレート剤はそのカリウム塩又はナトリウム塩の代わりに有機アミン塩であるものも有効である。
【0135】
キレート剤の添加量は、0.0001〜3.0質量%の範囲が適当である。
界面活性剤としては、アニオン、ノニオン、カチオン及び両性のいずれの界面活性剤も用いることができるが、アニオン又はノニオン界面活性剤が好ましい。好ましい界面活性剤の種類は保護層や感光層の組成によって異なり、一般に保護層素材の溶解促進剤となり、感光層成分の溶解性が小さいものが好ましい。
【0136】
アニオン界面活性剤としては、脂肪酸塩類、アビチェン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム類、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硫酸化ヒマシ油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、スチレン−無水マレイン酸共重合物の部分ケン化物類、オレフィン−無水マレイン酸共重合物の部分ケン化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類等が挙げられる。
【0137】
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキエイプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、しょ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、イエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリイグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド等が挙げられる。
【0138】
界面活性剤の好ましい添加量は、0.005〜10質量%である。また、界面活性剤に消泡剤を併用することもできる。
【0139】
防腐剤としては、フェノール又はその誘導体、ホルマリン、イミダゾール誘導体、デヒドロ酢酸ナトリウム、4−イソチアゾリン−3−オン誘導体、ベンゾイソチアゾリン−3−オン、ベンゾトリアゾール誘導体、アミジングアニジン誘導体、四級アンモニウム塩類、ピロジン,キノリン,グアニジン等の誘導体、ダイアジン、トリアゾール誘導体、オキサゾール,オキサジン誘導体等が挙げられる。
【0140】
本発明の処理方法において、前記前処理工程に用いる処理液(水洗水)は、温度を調節して洗浄に用いることが好ましく、20〜60℃の範囲が好ましい。
【0141】
洗浄の方法は、スプレー、ディップ、塗布等公知の処理液供給技術を用いることができ、適宜ブラシローラーや絞りローラー、ディップ処理における液中シャワーなどの処理促進手段を用いることができる。
【0142】
本発明の処理において、前処理工程終了後直ちに現像処理を行ってもよく、また、該工程の後に乾燥工程を経てから現像処理を行ってもよい。
【0143】
現像工程の後は、上記した後処理を行うことができる。
また、本発明の処理方法には自動現像機を好適に用いることができ、例えば、図1に示す自動現像機を使用することが好ましい。
【0144】
この自動現像機は、前水洗槽1、現像液を有する現像槽2、水道水等を有する水洗槽3、また、Aは前処理部、Bは現像部、Cは後処理部、Tは感光性平版印刷版材料の搬送路、11〜15は感光性平版印刷版搬送用のガイドロール、16は絞りロール、17は現像ブラシ等からなり、また、18a、18bはシャワーノズル、19a、19bはポンプで、図中、*1と*1、*2と*2とはそれぞれ配管で接続されている。
【0145】
以上の様に、本発明の感光性平版印刷版材料は、アルミニウム板支持体上に、本発明の光重合性感光層及び保護層を有していることが好ましく、また、これに本発明の処理方法を適用することが好ましい。
【0146】
【実施例】
以下に、合成例、支持体作製例、実施例を具体的に示すが、本発明の実施態様は、これらに限定されるものでない。なお、実施例における「部」は、特に断りない限り「質量部」を表す。
【0147】
《高分子結合剤の合成》
(高分子結合剤1の合成)
窒素気流下の三ツ口フラスコに、メタクリル酸12部、メタクリル酸メチル70部、アクリロニトリル8部、メタクリル酸エチル10部、エタノール500部及びα,α′−アゾビスイソブチロニトリル3部を入れ、窒素気流中80℃のオイルバスで6時間反応させた。その後、トリエチルアンモニウムクロライド3部及びグリシジルメタクリレート2部を加えて3時間反応させ、高分子結合剤1を得た。GPCを用いて測定した重量平均分子量は約50,000、DSC(示差熱分析法)を用いて測定したガラス転移温度(Tg)は約85℃であった。
【0148】
《平版印刷版の作製》
(支持体の作製)
厚さ0.24mmのアルミニウム板(材質1050、調質H16)を65℃に保たれた5%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、1分間の脱脂処理を行った後、水洗した。この脱脂アルミニウム板を、25℃に保たれた10%塩酸水溶液中に1分間浸漬して中和した後、水洗した。次いで、このアルミニウム板を、0.3質量%の硝酸水溶液中で、25℃、電流密度100A/dm2の条件下に交流電流により60秒間、電解粗面化を行った後、60℃に保たれた5%水酸化ナトリウム水溶液中で10秒間のデスマット処理を行った。デスマット処理を行った粗面化アルミニウム板を、15%硫酸溶液中で、25℃、電流密度10A/dm2、電圧15Vの条件下に1分間陽極酸化処理を行い、支持体1〜8を作製した。これらの表面の中心線平均粗さ(Ra)は0.65μmであった。
【0149】
(下引き層塗設済み支持体の作製)
上記支持体1〜8上に、下記組成の下引き層塗工液を乾燥付量として0.1g/m2になるようワイヤーバーで塗布し、90℃で1分間乾燥し、更に110℃で3分間の加熱処理を行って、下引き層塗設済みの支持体1〜8を作製した。
【0150】
〈下引き層塗工液〉
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 1部
メチルエチルケトン 80部
シクロヘキサノン 19部
(感光性平版印刷版材料の作製)
上記下引き層塗設済み支持体1〜8に、それぞれ下記組成の光重合性感光層塗工液を乾燥付量として1.4g/m2になるようワイヤーバーで塗布し、95℃で1.5分間乾燥し、感光層を形成した。その後、更に感光層上に、それぞれ下記する組成を有する保護層塗工液を下記表1に記載の様に、乾燥付量として2.0g/m2となるようにアプリケーターで塗布し、75℃で1.5分間乾燥して、感光層上に保護層(酸素遮断層)を有する感光性平版印刷版材料1〜8を作製した。
【0151】
【0152】
【化6】
【0153】
(保護層塗工液)
〈保護層塗工液1〉
ポリビニルアルコール(GL−03:日本合成化学社製) 89部
ポリビニルピロリドン(K−30:東京化成社製) 10部
界面活性剤(F142D:大日本インキ工業社製) 0.5部
水 900部
〈保護層塗工液2〉
上記保護層塗工液1に、更にエチレンジアミンジコハク酸2ナトリウム(1部)を加えた。
【0154】
〈保護層塗工液3〉
上記保護層塗工液1に、更にメチルイミノジ酢酸ナトリウム(1部)を加えた。
【0155】
〈保護層塗工液4〉
上記保護層塗工液1に、更にβアラニンジ酢酸ナトリウム(1部)を加えた。
【0156】
〈保護層塗工液5〉
上記保護層塗工液2に、更にブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム(5部)を加えた。
【0157】
〈保護層塗工液6〉
上記保護層塗工液3に、更にブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム(5部)を加えた。
【0158】
〈保護層塗工液7〉
上記保護層塗工液4に、更にブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム(5部)を加えた。
【0159】
〈保護層塗工液8〉
上記保護層塗工液1に、更にエチレンジアミン4酢酸2ナトリウム(1部)を加えた。
【0160】
《画像の形成》
以上のようにして作製した光重合型の感光性平版印刷版材料について、FD−YAGレーザー光源を搭載したCTP露光装置(Tigercat:ECRM社製)を用いて、2540dpiの解像度で画像露光を行った。なお、dpiとは2.54cm当たりのドット数を表す。次いで、現像前に保護層を除去する前処理部(水道水使用)、下記組成の現像液を充填した現像部、後処理部(水洗処理と画線部保護のためのガム液処理(GW−3:三菱化学社製を2倍希釈したもの))を備えたCTP自動現像機(PHW23−V:Technigraph社製)を用いて現像処理を行い、平版印刷版1〜8を得た。
【0161】
《評価》
前記作製した平版印刷版1〜8(試料1〜8)を用いて、下記の方法に従って、ストップ汚れの評価を行った。
【0162】
(ストップ汚れ)
上記作製した平版印刷版の各画像を、印刷機(三菱重工業社製DAIYA 1F−1)にかけコート紙、湿し水(東京インキ社製エッチ液SG−51 濃度1.5%)、インキ(東洋インキ製造株製ハイプラスM紅)を使用して印刷を行い、5000枚刷った時点で一旦印刷機を停止し、1時間放置した後印刷を開始し、その時の印刷物100cm2当たりに発生した微点状の汚れをルーペで観察し、その発生個数を計数した。なお、微点状汚れについての判断基準は、発生個数として、10個以下の場合が最も好ましく、11〜29個であれば実用上許容範囲であり、30個以上であると実用上問題となる、として判定した。結果を表1に示す。
【0163】
(スラッジ)
図1に示す自動現像機の前水洗槽1に水道水を1L、現像槽2に上記現像液を9L、水洗槽3に水道水3Lを仕込み、自動現像機をセットして、画像露光した上記感光性平版印刷版材料1〜8の現像処理をそれぞれ行った。なお、現像処理において、感光性平版印刷版を1m2通すごとに前水洗槽1に水道水を50ml、現像槽2に現像液を50ml、水洗槽3に水道水を50mlをそれぞれ補充しながら、1日に20m2づつ30日間で600m2の現像処理を行った。なお、処理条件は、前処理工程を15秒、現像工程を30秒、後処理工程を20秒とした。この一連の処理の後、前水洗槽1の水洗水を排水して前水洗槽1のスラッジ・ヘドロの付着具合を観察した。評価基準は以下の基準を使用した。結果を表1に示す。
【0164】
◎:全く認められない
○:スラッジ・ヘドロの発生がわずかに認められるが実用上全く問題がない
△:スラッジ・ヘドロの発生がわずかに認められるが実用上許容範囲にある
×:スラッジ・ヘドロの発生が顕著であり、ポンプの詰まりが発生し、また版に汚れが付着し、実用上問題がある。
【0165】
【表1】
【0166】
表1より明らかなように、本発明によればストップ汚れが防止でき、また、長期間処理をした場合に発生するスラッジ・ヘドロを低減することもでき、清掃作業の負担を減らすことができる。
【0167】
【発明の効果】
本発明により、連続処理において、一旦印刷機を停止した後に印刷を再開した時、非画像部に発生する微点状汚れ(ストップ汚れ)を防止し、また、長期間処理をした場合に現像槽や前処理槽にたまるスラッジ・ヘドロを低減し清掃作業の負担を減らした感光性平版印刷版材料及び感光性平版印刷版材料の処理方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に使用した、自動現像機の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
1 前水洗槽
2 現像槽
3 水洗槽
11〜15 ガイドロール
16 絞りロール
17 現像ブラシ
18a、18b シャワーノズル
19a 19b ポンプ
A 前処理部
B 現像部
C 後処理部
T 感光性平版印刷版材料の搬送路
Claims (6)
- アルミニウム板支持体上に、少なくとも1層の付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有単量体、光重合開始剤及び高分子結合剤を含有する光重合性感光層並びに保護層を有する感光性平版印刷版材料であって、該保護層に少なくとも水溶性重合体及び下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする感光性平版印刷版材料。
- アルミニウム板支持体上に、少なくとも1層の付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有単量体、光重合開始剤及び高分子結合剤を含有する光重合性感光層並びに保護層を有する感光性平版印刷版材料であって、該保護層に少なくとも水溶性重合体及び炭素数1〜3のN−アルキル置換のN−置換イミノジ酢酸又はその塩を含有することを特徴とする感光性平版印刷版材料。
- 請求項1に記載の感光性平版印刷版材料を、画像露光し、水洗工程にて保護層を洗浄除去し、次いで現像処理することを特徴とする感光性平版印刷版材料の処理方法。
- 請求項2に記載の感光性平版印刷版材料を、画像露光し、水洗工程にて保護層を洗浄除去し、次いで現像処理することを特徴とする感光性平版印刷版材料の処理方法。
- 請求項3に記載の感光性平版印刷版材料を、画像露光し、水洗工程にて保護層を洗浄除去し、次いで現像処理することを特徴とする感光性平版印刷版材料の処理方法。
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