JP4135585B2 - 光ファイバの接続構造及び光接続部材並びに光コネクタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、モードフィールド径が異なる光ファイバ同士を中間光ファイバを介して接続する光ファイバの接続構造及び光接続部材並びに光コネクタに関する。
【0002】
【従来の技術】
インターネットの普及で通信事業者と一般家庭を直接光ファイバで結ぶ超高速通信サービスを提供するFTTH(Fiber To The Home)サービスが開始されている。FTTHでは、住宅への引き込みや屋内配線にも通常のSMFが使用されるが、通常のSMFは最小曲げ半径が30mmと大きいため、光ファイバ余長を導電ケーブル並に小さく処理することが難しい。このため、フレキシブルな室内配線や宅内装置・接続箱等の小型化の障害となっていた。しかし、最近、最小曲げ半径を7.5mm〜15mmを可能とした光ファイバが開発され、従来からの要求に応えることが可能となってきた。
【0003】
しかしながら、光伝送路に広く使用されている一般のSMFのペーターマンIIで定義されるモードフィールド径(以下、MFDという)は、波長1.31μmにおいて9.3μm付近である。これに対し、最小曲げ半径を小さくした光ファイバのMFDは、5μm〜8μm以下とされている。このように、MFDが互いに異なる光ファイバ同士を接続すると、MFDの不整合による接続損失が生じることが知られている。また、このMFDの不整合による接続損失は、MFDの差が大きいほど増加する。
【0004】
MFDが異なる光ファイバ同士を接続する場合、MFDが小さい方の光ファイバのコア部ドーパントをクラッド部側にテーパ状に熱拡散させてMFDを拡大(Thermally-diffused Expanded Core、以下、TECという)し、他方の光ファイバのMFDに整合させることが知られている。接続する光ファイバ同士のMFDの差が小さい場合は、TEC処理で容易に整合させることができ、TEC処理を行なわなくても融着接続時の熱だけでも整合がとれる場合もある。また、MFDの差が所定範囲内であれば、物理的接続でも実質的には問題ない程度の損失に収めることができる。しかし、互いに接続する光ファイバのMFDの差が大きいと、TECに要する加熱条件が過酷となり、所要時間も多く作業性が低下するうえに、光ファイバ外径が熱により変形してしまうこともある。
【0005】
このようなMFDの差が大きい光ファイバ同士を接続する場合、双方の光ファイバのMFDの中間値を有する中間光ファイバを介在させて接続することにより、TECによる整合がとりやすく、損失増加を小さく抑えることが知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。しかしながら、TEC処理でMFDを整合させるには、このための作業工程と時間を要し、コスト的には高いものとなる。また、中間光ファイバに短尺のものを用い、TEC処理部と共に光コネクタに内蔵させようとすると、TECのための加熱領域を十分取ることができず、緩やかなテーパ状のTEC処理を行なうことができないことがある。
【0006】
これに対し、TECを行なうことなくMFDの差が大きい光ファイバ同士を、中間光ファイバを介して接続することも知られている(例えば、特許文献3,特許文献4参照)。図6は、前記特許文献3に開示された技術の概略を説明する図で、図中、Cは光ファイバケーブル、Pは光導波路、1,2は光ファイバ、1a,2aはコア部、1b,2bはクラッド部、3は補強チューブ(又はフェルール)、4は接着剤、5,6,7は中間光ファイバ、5a,6a,7aはコア部を示す。
【0007】
図6では、MFDが異なる光ファイバケーブルCと光導波路Pとを接続する場合を示し、光ファイバケーブルCの光ファイバ1は、コア部1aとクラッド部1bからなり、コア部1aのMFDは、例えば、10μmとされる。光導波路P側の光ファイバ2は、コア部2aとクラッド部2bからなり、コア部2aのMFDは、例えば、5μmとされる。すなわち、光ファイバ1と光ファイバ2とのMFDの差は5μmあり、直接接続する場合には、接続損失は理論上で1.94dBとなる。光ファイバ1と光ファイバ2との間に、MFDが光ファイバ1と2のMFDの中間値をもつ中間光ファイバ5,6,7を介在させ、コア部5a,6a,7aのMFDが8μm,7μm,6μmとされる。
【0008】
接続の手順としては、先ず光ファイバ1の端部に中間光ファイバ5をスプライスし、約10mm残して切断し、その部分に中間光ファイバ6をスプライスする。同様に中間光ファイバ7を中間光ファイバ6にスプライスする。光ファイバ1及び中間光ファイバ5,6,7の表面には、ステンレス、セラミック等で形成された補強チューブ3が接着剤4により取付けられ、光ファイバに強度を持たせている。上述の構成とすることにより、これらの合計の接続損失は0.53dBで、光ファイバ1と光ファイバ2を直接接続する場合の接続損失1.94dBと比べて、MFDの差に基づく接続損失を大幅に低減することができる。
【0009】
【特許文献1】
特開2002−182056号公報
【特許文献2】
特開2001−356223号公報
【特許文献3】
特開平6−43332号公報
【特許文献4】
特公平6−64215号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上述した特許文献3及び4の何れも、MFDの異なる光ファイバを、中間光ファイバを介して接続することにより、MFDの差による接続損失を低減するものであるが、中間光ファイバは、MFDを段階的に少しずつ変えた複数本のファイバで構成されている。このため、MFDの異なる複数本の光ファイバを準備し、これを順次接続する必要があり、コスト的に高いものとなる。また、複数本の光ファイバを接続するため、中間光ファイバ全体を光コネクタに内蔵させようとすると、光コネクタの軸方向寸法が大きくなってしまう。
【0011】
本発明は、上述した実情に鑑みてなされたもので、互いに接続しようとする光ファイバのMFD値に、所定値以上の差がある場合に、単一の中間光ファイバを用いて所定範囲内の接続損失に抑えることができ、しかも、安価な構成の光ファイバの接続構造と光接続部材並びに光コネクタを提供することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明による光接続構造は、モードフィールド径が異なる第1と第2の光ファイバ同士を単一の中間光ファイバを介して接続する光ファイバの接続構造である。第1の光ファイバのペーターマンIIで定義されるモードフィールド径をMFD1、第2の光ファイバの同モードフィールド径をMFD2、中間光ファイバの同モードフィールド径をMFD3とし、MFD1>MFD2としたとき、波長1.31μmにおいて、
MFD2/MFD1<0.71、
0 . 9≦MFD3/MFD1<1.0、
0.71≦MFD2/MFD3<1.0、
とする。また、第1の光ファイバと中間光ファイバとは物理的接続で接続され、第2の光ファイバと中間光ファイバとは融着接続で接続される。
【0013】
また、本発明による光接続部材は、上述の光ファイバの接続構造で、物理的接続に光コネクタを用い、モードフィールド径が異なる第1と第2の光ファイバ同士を光コネクタで接続するに際して、第1の光ファイバは一方の光コネクタに装着され、第2の光ファイバは短尺で単一の中間光ファイバを融着接続して他方の光コネクタに中間光ファイバと共に装着して、互いに接続するように構成したものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
図により本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の光ファイバの接続構造の概略を説明する図、図2は接続する光ファイバのモードフィールド径(MFD)の差(比)による損失発生量を示す図、図3は本発明のMFD範囲を説明する図である。図中、11は第1の光ファイバ、12は第2の光ファイバ、13は中間光ファイバ、14は融着接続部、15は物理的接続部、16は接続補強機構、17a,17bは光コネクタ、18はメカニカルスプライサを示す。
【0015】
図1(A)において、互いに接続される第1の光ファイバ11と第2の光ファイバ12のMFD差が大きい場合、単一の中間光ファイバ13を介して接続する。このとき、第1の光ファイバ11のコア部11aのペーターマンIIで定義されるMFDをMFD1、第2の光ファイバ12のコア部12aの同上のMFDをMFD2としたとき、「MFD1>MFD2」とする。このとき、中間光ファイバ13のコア部13aの同上のMFDをMFD3とすると、「MFD1>MFD3>MFD2」の関係になるように、中間光ファイバ13のMFD3を選定する。
【0016】
また、第1の光ファイバ11と第2の光ファイバ12のMFD差が大きい場合とは、波長1.31μmにおけるMFD2/MFD1が0.71未満のものを言うものとする。図2のMFD比による損失発生量の関係から、MFD比が0.71未満であるとすると、第1と第2の光ファイバ同士を直接接続したときのMFD不整合による損失発生量だけでも0.5dB以上となってしまう。通常、SMFを使用した光コネクタの接続損失について、対SMFマスタで損失0.5dB以下に規定されるのが一般的である。したがって、少なくともMFD差に起因する損失発生量がこの数値以下にされていることが必要であり、本発明では、上記MFD比が0.71未満にある光ファイバの接続を対象範囲としている。
【0017】
また、本発明では、第1の光ファイバ11と中間光ファイバ13とは、接続の容易性等を考慮して着脱可能な物理的接続で接続し、第2の光ファイバ12と中間光ファイバ13とは融着接続で接続固定する。物理的接続部15には、図1(B)に示すように光コネクタ17a,17bによる接続を用いることができる。光コネクタ17a,17bによる接続では、第1の光ファイバ11の接続端を一方の光コネクタ17aに装着し、中間光ファイバの接続端を他方の光コネクタ17bに装着し、光コネクタ17aと17b間を着脱可能にして接続を行なう。
【0018】
また、物理的接続部15には、図1(C)に示すようにメカニカルスプライサ18による接続を用いることができる。メカニカルスプライサ18による接続は、着脱可能な機能は有しないが、第1の光ファイバ11側に光コネクタが取付けられていなくても容易に接続ができ、現地での作業性がよい。図1(B)及び(C)の何れにおいても、第2の光ファイバ12と中間光ファイバ13とは、融着で接続することができ、その融着接続部14は、補強チューブ、補強部材等を用いた通常の補強方法で、接続補強機構16により補強される。
【0019】
第1の光ファイバ11と中間光ファイバ13との接続で、MFDの差に起因する損失発生量を0.1dB以下とするには、図2を参照すると、MFD3/MFD1のMFD比が0.86以上であることが要求される。このMFD比を1に近づけるほど、損失発生量をゼロ近くにすることは可能となるが、その分、中間光ファイバ13と第2の光ファイバ12とのMFD比が低下し、中間光ファイバ13と第2の光ファイバ12間での損失発生量が大きくなる。しかし、第1の光ファイバ11と中間光ファイバ13は、物理的接続とし、着脱可能あるいは簡易接続ということでMFD比を0.9以上とし、損失発生量を0.05dB以下とするのが望ましい。
【0020】
中間光ファイバ13と第2の光ファイバ12との接続で、MFDの差に起因する損失発生量を0.5dB以下とすると、図2からMFD比が0.71以上とすることが必要とされる。しかし、中間光ファイバ13と第2の光ファイバ12は、融着接続を前提にしているので、融着時の熱である程度のTECが行なわれ、MFD比0.71以上では、損失発生量は実質的には0.2dB以下となる。したがって、物理的接続される第1の光ファイバ11と中間光ファイバ13の接続での損失(0.1dB以下)と合わせて、0.3dB以下を実現することが可能となる。
【0021】
図3は、以上の第1及び第2の光ファイバ11,12と中間光ファイバ13のMFDの関係を示した図である。ここで、上述した、Y=MFD2/MFD1<0.71となる範囲、X=MFD3/MFD1≧0.86で規制される範囲、Y/X=MFD2/MFD3≧0.71で規制される範囲は、三角形ABCで示した範囲内がMFD選定の目安となる。また、第1の光ファイバ11と中間光ファイバ13との物理的接続を考慮して、X=MFD3/MFD1≧0.9とすると、三角形ADEで示した範囲内がMFD選定の目安となる。
【0022】
第1の光ファイバ11には、一般規格として使用されている標準のSMFとするのが好ましい。標準のSMFは、マッチドクラッド型のファイバでMFDが9.3μm前後であり、光通信の伝送路として最も多く用いられ、コスト的にも安価である。第1の光ファイバが標準のSMFであることにより、中間光ファイバ13のMFDが選定しやすく、中間光ファイバとの接続に標準の光コネクタ又はメカニカルスプライサを用いることができる。また、中間光ファイバに同種のマッチドクラッド型の光ファイバを用いたときのMFDの整合性もよい。
【0023】
第2の光ファイバ12及び中間光ファイバ13は、マッチドクラッド型の屈折率分布を有する光ファイバを用いるのが好ましい。第2の光ファイバ12は、必ずしもマッチドクラッド型である必要はないが、光ファイバ同士を融着接続する場合、マッチドクラッド型のファイバ同士の方が、MFDの整合性がよく安定した接続を形成することができる。特に、MFD比が0.71位であっても、融着接続すれば0.2dB以下の接続損失にすることが可能である。
【0024】
また、第2の光ファイバ12として、最近開発された最小許容曲げ半径を7.5mm〜15mmとした曲げ特性を改善した光ファイバを用いることができる。この光ファイバは、上記の曲げ半径で曲げられた場合、その曲げ部での曲げによる損失が1.31μmにおいて、0.1dB以下である。この光ファイバの特性としては、例えば、波長1.55μmにおけるペーターマンIの定義によるMFDが8μm以下で、波長1.3μm及び波長1.55μmにおける波長分散の絶対値が共に12ps/nm/km以下で、かつケーブルカットオフ波長が1.26μm以下である。この光ファイバを、上述の第2の光ファイバとして用いることにより、屋内壁面に導線を布設する場合に近い形態で、屋内壁面等に沿わせた配線や小さな余長処理ができる。さらに、接続箱等の装置筐体内で曲げても、これによる損失増加が生じないようすることができ作業性も向上する。
【0025】
上述の光ファイバの接続構造において、各光ファイバのMFDの選定範囲は、大よそ次のようなMFD値となる。先ず、第1の光ファイバ11のMFD1を波長1.31μmにおけるペーターマンIIで定義されたMFDで8.8μm以上9.8μm以下とする。この場合、第2の光ファイバ12の同上のMFD2は、5.4μm以上7.0μm以下であり、中間光ファイバ13の同上のMFD3は、7.6μm以上8.8μm未満で選定することができる。
【0026】
次に図4及び図5により、本発明による光接続部材の実施形態について説明する。図4は光接続部材の概略を説明する図、図5(A)及び図5(B)は中間光ファイバ内蔵の光コネクタの一例を説明する図である。図中、20a,20bは光コネクタ、20cは接続アダプタ、21a,21bはフェルール、22a,22bはコネクタハウジング、23はキャピラリー、24は光ファイバ装着孔、24aは細径孔、24bはテーパ孔、24cは太径孔、25はフェルール基体、26は接着剤、C1、C2は光ケーブル又はコードを示す。その他の符号は、図1で用いたのと同じ符号を用いることにより説明を省略する。
【0027】
図4に示すように、本発明による光接続部材とは、第1の光ファイバ11が装着された光コネクタ20aと第2の光ファイバ12を装着した光コネクタ20bを、接続アダプタ20cにより接続してなる構成を含むものである。第1の光ファイバ11は、光ケーブル又はコードC1に収納され、一方の光コネクタ20aに装着される。第2の光ファイバ12は、光ケーブル又はコードC2に収納され、接続端に中間光ファイバ13を融着接続し、この中間光ファイバと共に他方の光コネクタ20bに装着される。
【0028】
第1の光ファイバ11と第2の光ファイバ12は、図1(A)で説明したのと同様に、第1の光ファイバのペーターマンIIで定義されるMFDをMFD1、第2の光ファイバの同上のMFDをMFD2、中間光ファイバ13の同上のMFDをMFD3としたとき、波長1.31μmにおいて、
MFD2/MFD1<0.71、
0.86≦MFD3/MFD1<1.0
0.71≦MFD2/MFD3<1.0
になるように選定されている。なお、MFD3/MFD1については、光コネクタによる物理的接続とすることから、さらに好ましい形態として、0.9以上とすることが望ましい。これらの選定理由は、図1〜図3で説明した通りである。
【0029】
第1の光ファイバ11は、一方の光コネクタ20aのフェルール21aに装着しコネクタハウジング22aに収納される。第2の光ファイバ12は、他方の光コネクタ20bのフェルール21bに、融着接続された短尺で単一の中間光ファイバ13を内蔵させるようにして装着され、コネクタハウジング22bに収納される。光コネクタ20aと光コネクタ20bを、接続アダプタ20cを介して接続すると、第1の光ファイバ11と中間光ファイバ13とが物理的にコネクタ接続される。そして、中間光ファイバ13は第2の光ファイバ12に融着接続されているので、第1の光ファイバ11と第2の光ファイバ12は、他方の光コネクタに内蔵された中間光ファイバ13を介して接続された状態となる。すなわち、図1に示したのと同等の接続形態となる。
【0030】
図5(A)は、短尺で単一の中間光ファイバ13を内蔵させる光コネクタ20b側の具体例を説明する図である。光コネクタ20bのフェルール21bは、フェルール基体25にキャピラリ−23を取付けてなり、キャピラリー23には光ファイバ装着孔24が設けられている。光ファイバ装着孔24は、光ファイバの位置決めを行なう細径孔24aとテーパ孔24bを経て太径孔24cで形成され、光ファイバとの隙間部分に接着剤26を充填して光ファイバを接着固定する。
【0031】
フェルール21b内に装着される光ファイバは、先端部分のファイバ被覆を除去してガラス部分を露出させた第2の光ファイバ12に、ファイバ被覆が除去されたガラス部分のみからなる中間光ファイバ13を融着接続部14で融着させた状態のものである。また、中間光ファイバ13は、光コネクタ内に収納される短尺のもので、図6で示すような複数本のファイバをつなぎ合わせたものではなく、単一の光ファイバである。融着接続部14は、融着接続させたのみでも、融着時の熱によりある程度のTECが生じMFDの整合が行なわれる。したがって、融着接続後に、別途TECのための加熱処理を行なう必要はない。しかし、融着接続後にTEC加熱を行なってもよいことは明らかで、本発明の範囲外となるものではない。
【0032】
光ファイバ装着孔24の細径孔24aは、コネクタ接続で光ファイバ同士の突合せ位置を合せるための重要な位置決め孔であって、挿入される光ファイバとのクリアランスが可能な限り小さくされていることが望ましい。また、この細径孔24aの孔径Dを精度よく形成するためには、その加工性の問題から孔の長さLも短い方がよい。
【0033】
具体的には、細径孔24aの孔径Dは、装着される光ファイバ(図の例では、中間光ファイバ13)のガラス外径にほぼ等しい高精度で形成し、中間光ファイバ13とのクリアランスを可能な限り小さくする。中間光ファイバ13が、例えば、クラッド部の外径が公称外径125μmである場合、細径孔24aの孔径Dは、125μm〜126μmの間で形成されているのが好ましい。すなわち、孔径Dは、光ファイバ外径+(0μmを超え1μm以下)で形成するのが望ましい。また、細径孔24aの長さLは、中間光ファイバ13の位置決めに必要な最小長さとする。この長さは、短いほど高精度に形成しやすく、2.5mm以下で形成するのが望ましい。また、このフェルールの構成は、第1の光ファイバ11側のフェルール21aにおいても、全く同様なものとすることができる。
【0034】
中間光ファイバ13と第2の光ファイバ12との融着接続部14は、太径孔24cに位置することになる。したがって、融着接続部14に、融着に伴う多少の太りがあっても特に問題になるようなことはなく、TECが行なわれて外径等に変化が生じていても問題はない。また、細径孔24aと太径孔24cは緩やかに孔径断面が変化するテーパ状孔24bで連通させるのが好ましい。これにより、接着剤26の硬化時に光ファイバに応力集中が生じないようにすることができ、また、環境温度の変化により接着剤26の膨張収縮の影響による光ファイバに加わる応力変化を緩和することもできる。この結果、光ファイバに不均一な曲げ応力が作用して不規則な曲げによる損失変動が生じるのを回避することができる。
【0035】
図5(B)は、図5(A)の太径孔24cを有しない構造の例で、融着接続部14が最適条件で行なわれ外径太りや変動がない場合や第1の光ファイバ11側のフェルール21aとして使用することができる。この例は、光ファイバ装着孔24=細径孔24aであって、特に太径孔との間に段差がないため、融着接続部14を含めて被覆が除去されたガラスファイバ部分を薄い接着剤層で保持固定できる。このため環境温度の変化により接着剤の膨張収縮の影響がなく、損失変動を低減することができる。なお、による光ファイバに加わる応力変化を緩和することもできる。
【0036】
この融着接続部14は、太径孔24c又は光ファイバ装着孔24に充填される接着剤26により接着一体化され、接続の補強も同時に行なうことができる。図1(B)のように光コネクタ内に融着接続部を内蔵させず、別途、第2の光ファイバとの間で融着接続を行なう場合は、通常の接続補強機構16が用いられる。この場合、接続補強機構16の補強作業を必要とし、また、その収納スペース等も考えておく必要がある。しかし、図5(A),(B)のように第3の中間光ファイバ及びその融着接続部をを光コネクタに一体に組み込んで内蔵させることにより、融着接続部の補強を別途行なう必要がなく、収納のためのスペースも不要となる。
【0037】
第2の光ファイバ12及び中間光ファイバ13とは、融着接続されるので、接続性のMFDの整合性がよいマッチドクラッド型の屈折率分布を有する光ファイバであることが好ましい。また、第2の光ファイバ12に最近開発された最小許容曲げ半径を7.5mm〜15mmでの曲げによる損失が、波長1.31μmにおいて0.1dB以下である曲げ特性の改善された光ファイバを用いることにより、フレキシブルな配線とその作業性を向上させることができ、光接続部材としての有用性を高めることができる。
【0038】
【発明の効果】
上述したとおり、本発明によれば、互いに接続しようとする光ファイバ同士のMFDに比較的大きな差があっても、中間光ファイバのMFDを適正に選定することにより低損失接続を可能とし、しかも、比較的に安価でコンパクトに構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光ファイバの接続構造の概略を説明する図である。
【図2】互いに接続する光ファイバのMFD比と損失発生量の関係を示す図である。
【図3】本発明のMFD範囲を説明する図である。
【図4】本発明による光接続部材の概略を説明する図である。
【図5】本発明に用いる光コネクタの例を説明する図である。
【図6】従来技術を説明する図である。
【符号の説明】
11…第1の光ファイバ、12…第2の光ファイバ、13…中間光ファイバ、14…融着接続部、15…物理的接続部、16…接続補強機構、17a,17b…光コネクタ、18…メカニカルスプライサ、20a,20b…光コネクタ、20c…接続アダプタ、21a,21b…フェルール、22a,22b…コネクタハウジング、23…キャピラリー、24…光ファイバ装着孔、24a…細径孔、24b…テーパ孔、24c…太径孔、25…フェルール基体、26…接着剤。
Claims (10)
- モードフィールド径が異なる第1と第2の光ファイバ同士を単一の中間光ファイバを介して接続する光ファイバの接続構造であって、
第1の光ファイバのペーターマンIIで定義されるモードフィールド径をMFD1、第2の光ファイバの同モードフィールド径をMFD2、中間光ファイバの同モードフィールド径をMFD3とし、MFD1>MFD2としたとき、波長1.31μmにおいて、
MFD2/MFD1<0.71、
0 . 9≦MFD3/MFD1<1.0、
0.71≦MFD2/MFD3<1.0、
であり、前記第1の光ファイバと前記中間光ファイバとは物理的接続で接続され、前記第2の光ファイバと前記中間光ファイバとは融着接続で接続されていることを特徴とする光ファイバの接続構造。 - 前記第1の光ファイバと前記中間光ファイバとの物理的接続は、光コネクタで形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバの接続構造。
- 前記第1の光ファイバと前記中間光ファイバとの物理的接続は、メカニカルスプライサにより形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバの接続構造。
- 前記第1の光ファイバは、標準のシングルモード光ファイバであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光ファイバの接続構造。
- 前記第2の光ファイバ及び中間光ファイバは、マッチドクラッド型の屈折率分布を有する光ファイバであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光ファイバの接続構造。
- 前記第2の光ファイバは、曲げ半径7.5mm以上15mm以下での曲げによる損失が、波長1.31μmにおいて0.1dB以下の光ファイバであることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバの接続構造。
- 前記第1の光ファイバは、波長1.31μmにおけるペーターマンIIで定義されたモードフィールド径が8.8μm以上9.8μm以下であり、前記第2の光ファイバは、同上の前記モードフィールド径が5.4μm以上7.0μm以下であり、前記中間光ファイバは、同上の前記モードフィールド径が7.6μm以上8.8μm未満であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバの接続構造。
- モードフィールド径が異なる第1と第2の光ファイバ同士を光コネクタで接続するに際して、第1の光ファイバは一方の光コネクタに装着され、第2の光ファイバは、短尺で単一の中間光ファイバを融着接続して他方の光コネクタに前記中間光ファイバが端面側で且つ融着接続部が内蔵されて装着された光接続部材であって、
前記第1の光ファイバのペーターマンIIで定義されるモードフィールド径をMFD1、前記第2の光ファイバの同モードフィールド径をMFD2、前記中間光ファイバの同モードフィールド径をMFD3とし、MFD1>MFD2としたとき、波長1.31μmにおいて、
MFD2/MFD1<0.71、
0 . 9≦MFD3/MFD1<1.0、
0.71≦MFD2/MFD3<1.0、
であることを特徴とする光接続部材。 - 前記第2の光ファイバ及び前記中間光ファイバは、マッチドクラッド型の屈折率分布を有する光ファイバであることを特徴とする請求項8に記載の光接続部材。
- 前記第2の光ファイバが、最小許容曲げ半径が7.5mm以上15mm以下での曲げによる損失が、波長1.31μmにおいて0.1dB以下の光ファイバであることを特徴とする請求項8に記載の光接続部材。
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