JP4134264B1 - 液体体積測定装置および液体体積測定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】容易かつ無駄のない体積測定を実現する。
【解決手段】
液面が高さz2を超えるように液体を注入した測定容器40を使用者が取り付けることにより、そのときの共振周波数の変化率rfをMCPU39が飽和値rfsとして取得する。そして、MCPU39は飽和値rfsに基づいて比誘電率εを特定する。さらに、液面が高さz1を超えないように同じ種類の液体を注入した測定容器40を取り付けたときの共振周波数の変化率rfを測定し、当該変化率rfと予め特定した比誘電率εを使用してMCPU39が体積ΔVを測定する。
【選択図】図1
【解決手段】
液面が高さz2を超えるように液体を注入した測定容器40を使用者が取り付けることにより、そのときの共振周波数の変化率rfをMCPU39が飽和値rfsとして取得する。そして、MCPU39は飽和値rfsに基づいて比誘電率εを特定する。さらに、液面が高さz1を超えないように同じ種類の液体を注入した測定容器40を取り付けたときの共振周波数の変化率rfを測定し、当該変化率rfと予め特定した比誘電率εを使用してMCPU39が体積ΔVを測定する。
【選択図】図1
Description
この発明は、液体体積測定装置および液体体積測定方法に関し、特に、マイクロ波を利用した液体体積測定装置および液体体積測定方法に関する。
創薬や生理学の分野において微少量の薬液を切り出す分注作業は基本的な作業工程のひとつであり、その切り出し量の再現性は以降の工程に多大の影響を与える。分注作業においては、1nl単位の分注が行われているが、一般的に分注量の管理は吐出機構のシリンダストロークなどによって行われている。厳密には吐出機構による多数回の吐出量を電子秤で計量し、その平均吐出量によって各吐出における吐出量を管理している。
しかしながら、平均吐出量を得るために高価な薬液を多く使用しなければならず、無駄が生じていた。また、平均吐出量を得るための作業が煩雑であるという問題があった。本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、容易かつ無駄なく液体の体積が測定可能な液体体積測定装置および液体体積測定方法の提供を目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の一態様として、測定容器に注入された液体の体積を測定する液体体積測定装置において、マイクロ波を発信する発信手段と、上記マイクロ波による電界強度が略一定値となる第1作用空間と、上記マイクロ波による電界強度が上記略一定値から減衰する大気開放空間とされた第2作用空間と、上記第1作用空間および上記第1作用空間と上記第2作用空間の双方に上記液体が存在するように上記測定容器を保持する保持部を備える空洞共振器と、上記マイクロ波を受信する受信手段と、上記第1作用空間に上記液体が存在するときに上記受信手段にて受信された上記マイクロ波の周波数、および、上記第1作用空間と上記第2作用空間の双方に上記液体が存在するときに上記受信手段にて受信された上記マイクロ波の周波数に対応する誘電率に基づいて、上記第1作用空間に存在する上記液体の体積を取得する解析手段とを具備する構成を適用することができる。
上記の構成において、発信手段によってマイクロ波を発信し、空洞共振器が備える第1作用空間において上記マイクロ波による電界強度が略一定値となる。空洞共振器が備える第1作用空間は、大気開放空間とされ、上記マイクロ波による電界強度が上記略一定値から減衰する。上記空洞共振器は保持部を備え、当該保持部において測定容器が保持される。この測定容器には、体積の測定対象となっている液体が注入されるとともに、当該液体が上記第1作用空間および上記第1作用空間と上記第2作用空間の双方に上記液体が存在するように保持される。すなわち、上記測定容器に注入された液体に対して、電界強度が略一定値となる上記マイクロ波および上記略一定値から減衰する上記マイクロ波を作用させることができる。受信手段は上記マイクロ波を受信し、解析手段は上記第1作用空間に上記液体が存在するときに上記受信手段にて受信された上記マイクロ波の周波数、および、上記第1作用空間と上記第2作用空間の双方に上記液体が存在するときに上記受信手段にて受信された上記マイクロ波の周波数に対応する誘電率に基づいて上記液体の体積を取得する。
本発明によれば、容易かつ無駄のない体積測定を実現することができる。
以下、下記の順序に従って本発明の実施形態を説明する。
(1)装置構成:
(2)解析処理および解析理論:
(2−1):体積の測定:
(2−2):比誘電率の測定:
(3)変形例:
(1)装置構成:
(2)解析処理および解析理論:
(2−1):体積の測定:
(2−2):比誘電率の測定:
(3)変形例:
(1)装置構成:
本発明の一実施形態にかかる液体体積測定装置は、空洞共振器とコントローラ30とから構成されている。コントローラは空洞共振器においてマイクロ波を発信するための制御と、空洞共振器において受信されたマイクロ波を解析するための処理を実行する。空洞共振器は、測定対象の液体に対して作用するマイクロ波の作用空間を形成するための、共振空洞を構成する。
本発明の一実施形態にかかる液体体積測定装置は、空洞共振器とコントローラ30とから構成されている。コントローラは空洞共振器においてマイクロ波を発信するための制御と、空洞共振器において受信されたマイクロ波を解析するための処理を実行する。空洞共振器は、測定対象の液体に対して作用するマイクロ波の作用空間を形成するための、共振空洞を構成する。
図1は、空洞共振器の外観および断面形状を示している。同図において、金属製の空洞共振器20は概略円盤状に形成されており、内部は中空となっている。空洞共振器20は、軸心Cを中心とした同軸型の共振空洞を有しており、外周に厚みが18mm、外径が119mm、内径が65mmとされたリング状の円環部20aが設けられている。当該円環部20aの内側には厚みが3.2mmとされた中空円盤状の円盤部20bが設けられている。円環部20aから径方向外側に向かって矩形状に突出した矩形部20cが設けられており、その厚みが円環部20aと同じ18mmとされ、幅が36mmとされている。円環部20aと円盤部20bと矩形部20cの中空空間が連通している。
円環部20aと矩形部20cの境界付近においては、本発明の発信手段と送信手段に相当する送受信アンテナ21が備えられている。送受信アンテナ21には上述したコントローラ30が接続されている。軸心Cにおいては、厚み方向に貫通する同軸円柱状の貫通穴22が形成されている。貫通穴22の径は4mmとされている。貫通穴22の内側には、誘電率および誘電正接の小さい材料で形成された保護筒23が取り付けられている。保護筒23は、円盤状に形成された上部23aと、円筒状に形成された下部23bを有しており、下部23bの外径は4mmとされている。保護筒23の下部23bを貫通穴22に圧入することにより、保護筒23と円環部20aの壁面同士が隙間なく密着する。これにより、空洞共振器20内に液体や塵等が進入することが防止できる。
図2は、コントローラ30の構成を示している。同図において、コントローラ30は、サーキュレータ31と結合器32と分周器33とカウンタ34と検波器35とLNA(低雑音増幅回路)36a,36bとADC(アナログ・デジタルコンバータ)37aとDAC(デジタル・アナログコンバータ)37bとVCO(電圧制御発振器)38とMCPU(マイクロコンピュータ)39とから構成されている。VCO38は、LNA36bとサーキュレータ31を介して送受信アンテナ21と接続しており、MCPU39からDAC37を介して出力される制御電圧に基づく周波数で発振し、送受信アンテナ21からマイクロ波を発信させる。
送受信アンテナ21は、受信アンテナも兼ねており、空洞共振器20にて共振したマイクロ波を受信する。マイクロ波の受信信号は、サーキュレータ31においてVCO38からの出力信号と分岐させられ、さらに結合器32において2系統に分岐させられる。その一方の受信信号は、分周器33を介してカウンタ34に入力され、当該カウンタ34において周波数が計数される。他方の受信信号は、検波器35にて検波され、LNA36aにてその受信強度が増幅される。LNA36aにて増幅された受信強度は、ADC37aにてデジタル信号に変換され、MCPU39に入力される。MCPU39は、ADC37aから入力された受信強度が最大となるようにDAC37に出力する制御信号を調整し、VCO38の制御電圧を調整する。これにより、送受信アンテナ21から発振されるマイクロ波の周波数が空洞共振器20固有の共振周波数となるように調整される。なお、本実施形態の空洞共振器20においては、ISM用として開放されている5.8GHz帯が共振周波数となる。
カウンタ34が計数した周波数は、MCPU39に入力され、当該周波数に基づく解析処理が実行される。なお、本実施形態では、送信手段と受信手段の双方に相当する送受信アンテナ21を使用することとしたが、送信専用アンテナと受信専用アンテナをそれぞれ備えるようにしてもよい。MCPU39には、図示しないCPUとRAMやROMが備えられており、ROMに記憶されたプログラムに基づいて、CPUが演算を実行する。その際に、RAMがワークエリアとして利用される。
図3は、液体体積測定装置に取り付けられる測定容器の外観および断面形状を示している。同図において、測定容器40は、底面40a1を有する円筒状の下方部分40aと、すり鉢状の上方部分40bとから構成されている。下方部分40aの外径は保護筒23の下部23bの内径よりもわずかに小さく形成されている。上方部分40bは上方に開口しており、当該開口から液体を注入することが可能となっている。上方部分40bに注入された少量の液体は、測定容器40内を流下し、下方部分40aに溜まる。上方部分40bをすり鉢状とすることにより、測定容器40への液体の注入を容易とすることができる。なお、測定容器40は、撥水性が高く、かつ、誘電率、誘電正接の小さいPTFE(四フッ化エチレン樹脂)によって形成されている。
図4は、測定容器40が取り付けられた状態の空洞共振器20の軸心C付近の断面を示している。同図において、保護筒23の円筒状の下部23bの内側に測定容器40の下方部分40aが挿し込まれている。測定容器40の上方部分40bが保護筒23の上部23aに当接することにより、測定容器40の底面40a1の高さが円盤部20bの中空空間の下端の高さと一致するように測定容器40が位置決めされる。なお、図4の状態で測定容器40を空洞共振器20の軸心Cにて保持する保護筒23が本発明の保持部に相当する。なお、円盤部20bの中空空間の下端の高さをz0とし、同中空空間の上端の高さをz1と表すものとする。
以上の構成において、送受信アンテナ21からマイクロ波を発信すると、軸心Cにおいては図5のような電界強度の分布が形成される。図5において、横軸は電界強度Eを示し、縦軸は軸方向の位置zを示している。円盤部20bの中空空間の下端の高さz0と、上端の高さz1の間の空間においては略一定値の電界強度となっており、下端の高さz0より下方および上端の高さz1よりも上方の空間においては電界強度が上記一定値から徐々に減衰し、次第に0に収束している。円盤部20bの中央に設けられた貫通穴22の径は4mmと小さいため、貫通穴22の内側における高さz0〜z1の空間においては、5.8GHz帯で共振するマイクロ波の電界強度を略一定値に保つことができる。なお、高さz0〜z1の空間が本発明の第1作用空間に相当する。一方、下端の高さz0より下方および上端の高さz1よりも上方の空間は、大気開放空間となるため、高さz0,z1からの距離に応じて電界強度が減衰する。これらの空間は、本発明の第2作用空間に相当する。
ところで、測定容器40に液体を少量注入した場合、液体の上端(液面)の高さが高さz0〜z1との間となり、液体全体が電界強度が略一定値となる第1作用空間に存在することとなる。本実施形態では、測定容器40に気泡を含むことなく液体を10μl注入すると、液面の高さが高さz1と同等となるように、測定容器40が設計されている。一方、測定容器40に液体を10μl以上注入した場合には、液面の高さが高さz1よりも高くなり、液体の一部が電界強度が減衰する第2作用空間に存在することとなる。
(2)解析処理および解析理論:
(2−1):体積の測定:
電磁界が乱されない程度の微小な体積の誘電体がマイクロ波の共振空洞に侵入したときに、共振周波数がわずかに変化する。共振空洞の体積を基準体積V、侵入前の共振周波数を基準周波数f0、侵入後の共振周波数を変動周波数fL、侵入した誘電体の比誘電率をε、その体積をΔVとすると、これらの間に下記の(1)式の関係が成立する。
(2−1):体積の測定:
電磁界が乱されない程度の微小な体積の誘電体がマイクロ波の共振空洞に侵入したときに、共振周波数がわずかに変化する。共振空洞の体積を基準体積V、侵入前の共振周波数を基準周波数f0、侵入後の共振周波数を変動周波数fL、侵入した誘電体の比誘電率をε、その体積をΔVとすると、これらの間に下記の(1)式の関係が成立する。
なお、上記の(1)式において、αは共振空洞におけるマイクロ波の振動モードに応じた定数を示している。また、上記の(1)式が成立するためには、液体が存在する領域の電磁界の場が均一であり、その電界強度が一定であることが前提となる。さらに、侵入前後の周波数の比(f0−fL)/f0を変化率rfとして、上記の(1)式を整理すると、下記の(2)式を得ることができる。
上記の(2)式によれば、変化率rfは、侵入した誘電体の体積ΔVに比例した値であるということができる。この性質は、既知の体積ΔVの誘電体の誘電率εを測定するのに利用されているが、本発明においては、誘電体としての液体の体積ΔVは未知であるため、体積ΔVを算出するための解析を行う。なお、αは共振空洞におけるマイクロ波の振動モードに応じた定数であり、既知の値である。同様に、基準体積Vも空洞共振器20の容積から得られるため、既知の値である。
上記の(2)式によれば、変化率rfは、侵入した誘電体の体積ΔVに比例した値であるということができる。この性質は、既知の体積ΔVの誘電体の誘電率εを測定するのに利用されているが、本発明においては、誘電体としての液体の体積ΔVは未知であるため、体積ΔVを算出するための解析を行う。なお、αは共振空洞におけるマイクロ波の振動モードに応じた定数であり、既知の値である。同様に、基準体積Vも空洞共振器20の容積から得られるため、既知の値である。
変化率rfは、共振周波数の比(f0−fL)/f0を算出することにより得ることができる。まず、何ら液体(誘電体)を注入していない状態の測定容器40を空洞共振器20の軸心Cに図4の態様で取り付け、そのときの共振周波数を取得する。具体的には、送受信アンテナ21が受信したマイクロ波の周波数をカウンタ34が計数し、当該周波数を基準周波数f0としてMCPU39が取得する。
次に、測定対象の液体を注入した状態の測定容器40を空洞共振器20の軸心Cに図4の態様で取り付け、そのときの共振周波数を取得する。このとき、測定容器40における液体の液面の高さが円盤部20bの中空空間の上端の高さz1よりも高くならないような液体の量とする。すなわち、本実施形態において測定する液体の体積は、液面の高さが円盤部20bの中空空間の上端の高さz1よりも高くならない10μl以下とする。
なお、測定対象の液体の粘性等や測定容器40に液体を注入する手法によっては、測定容器40における液体に気泡が含まれることも考えられる。この場合も、気泡を含んだ液面の最も高い位置が高さz1よりも高くならないようにする。このようにすれば、液体の全体を電界強度が一定値となる電磁界の場に存在させることができ、上記の(1),(2)式による解析を可能とすることができる。以上の状態において、送受信アンテナ21が受信したマイクロ波の周波数をカウンタ34が計数し、当該周波数を変動周波数fLとしてMCPU39が取得する。これにより、基準周波数f0と変動周波数fLとが得られるため、MCPU39がそれらの比(f0−fL)/f0である変化率rfを算出することができる。
測定対象の液体の比誘電率εが既知である場合には、上記の(2)式に変化率rfと比誘電率εと定数αと基準体積Vを代入することにより、液体の体積ΔVを算出することができる。また、測定容器40における液体に気泡が含まれる場合でも、空気層は共振周波数に影響を与えることはないため、気泡の影響を受けることなく体積ΔVを測定することができる。
(2−2):比誘電率の測定:
以上のように、比誘電率εが既知である場合には、極めて容易に液体の体積ΔVを算出することができる。ところが、比誘電率εは、液体の濃度や温度にも大きく依存するため、個々の液体について把握しておくのは実質的に困難となる。そこで、液体体積測定装置10においては、予め液体の比誘電率εを測定し、当該比誘電率εに基づいて液体の体積ΔVを算出する。以下、比誘電率εを測定するための処理および理論について説明する。上記の(1),(2)式は、電界強度が一定であることを前提としたものであるが、電界強度が変動する場合にも共振周波数の変化率rfが変動することが確認されている。
以上のように、比誘電率εが既知である場合には、極めて容易に液体の体積ΔVを算出することができる。ところが、比誘電率εは、液体の濃度や温度にも大きく依存するため、個々の液体について把握しておくのは実質的に困難となる。そこで、液体体積測定装置10においては、予め液体の比誘電率εを測定し、当該比誘電率εに基づいて液体の体積ΔVを算出する。以下、比誘電率εを測定するための処理および理論について説明する。上記の(1),(2)式は、電界強度が一定であることを前提としたものであるが、電界強度が変動する場合にも共振周波数の変化率rfが変動することが確認されている。
図6は、電界強度と共振周波数の変化率rfとの関係を検証した実験結果を示している。同図において、縦軸はそれぞれ最大値を1とするように正規化された電界強度Eと電力E2と変化率rfを示し、横軸は位置を示している。本実験では、位置に応じて電界強度がグラフのように変動する電磁界の場を形成し、当該電磁界の各位置において体積比ΔV/Vが337ppmとなる微小体積ΔVの水滴を置いた場合に得られる変化率rfを測定した。この実験結果が示すように、共振周波数の変化率rfは、電界強度Eおよび電力E2の変動に対応して変動するとともに、電力E2に比例することが確認できる。
電界強度Eおよび電力E2が一定値の場においては上記の(1),(2)式にしたがって体積ΔVの増加に応じて共振周波数の変化率rfも比例的に増加していくが、電界強度Eおよび電力E2が減衰し、0に収束するような電磁界の場においては体積ΔVの増加よりも電力E2の減少の方が支配的となり共振周波数の変化率rfの増加量も0に収束していくこととなる。
図7は共振周波数の変化率rfの推移を、図5に示した空洞共振器20の軸心Cに沿った電界強度の分布と対比して示している。同図においては、測定容器40に対する液体の注入量を徐々に大きくしていったときの共振周波数の変化率rfを、各液面の高さzについて示している。ここでは、測定容器40中の液体に気泡が含まれないようにする。同図に示すように、電界強度Eおよび電力E2が一定値となる高さz1までは体積ΔVの増加とともに比例的に共振周波数の変化率rfが増加するとともに、電界強度Eおよび電力E2が一定値から減衰する高さz1を超える領域においては体積ΔVの増加に伴う共振周波数の変化率rfの増加が鈍くなっている。
さらに、電力E2がほぼ無視できる高さまで、測定容器40に液体を注入したところで、共振周波数の変化率rfが体積ΔVの増加に依存しなくなり、共振周波数の変化率rfは一定の飽和値rfsに収束することとなる。なお、液面の高さz2(7mm)において電界強度Eが上記一定値の1/100の大きさとなり、その2乗に相当する電力E2は1/10000の大きさとなる。そのため、高さz2を超える高さに存在する液体に作用する電力E2をほぼ無視することができ、高さz2を超える高さに存在する液体成分が全体の共振周波数の変化率rfに寄与しなくなり、最終的に共振周波数の変化率rfは飽和値rfsとなると考えることができる。
飽和値rfsは体積ΔVに依存しない値であることから、飽和値rfsは上記の(2)式において共振周波数の変化率rfは比誘電率εのみに依存する(基準体積V、定数αは、いずれも定数。)と考えることができる。すなわち、飽和値は比誘電率εのみに依存するため、飽和値rfsから一意に比誘電率εを特定することが可能となる。従って、予め比誘電率εが既知の液体について上述した飽和値rfsを調査しておき、比誘電率εと上記飽和値rfsとの対応関係を規定したルックアップテーブルを用意しておけば、飽和値rfsの測定を行うことにより未知の比誘電率εを特定することができる。本実施形態においては、液面が高さz2を超える量の液体を注入した時点の共振周波数の変化率rfを飽和値rfsとしてMCPU39がカウンタ34の計数に基づいて算出する。このときの液体の注入量は液面が高さz2を超えればよく、注入量の正確さは要求されない。そして、MCPU39の図示しないROMに記憶された上記のルックアップテーブルを参照して、飽和値rfsに対応する比誘電率εを特定する。
以上のようにして予め比誘電率εを特定しておけば、2−1節で述べたように測定容器40に対して液面が高さz1を超えないよう(液面が高さz1を超えなければ気泡を含んでいてもよい。)に液体を注入したときの共振周波数の変化率rfを測定し、当該変化率rfと予め特定した比誘電率εとを上記の(2)式に代入することにより、体積ΔVを算出することができる。また、上記の(2)式の演算の代わりに、測定時の共振周波数の変化率rfと飽和値rfsに対応する体積ΔVを規定した3次元ルックアップテーブルを用意しておき、当該3次元ルックアップテーブルを参照することにより、直接、体積ΔVを特定するようにしてもよい。
例えば、コントローラ30に初期設定モードと測定モードとを切り換えるためのスイッチ等を設けておき、当該スイッチにより初期設定モードに切り換えた上で、液面が高さz2を超えるように液体を注入した測定容器40を使用者が取り付けることにより、MCPU39が比誘電率εを特定し、登録する。そして、当該スイッチにより測定モードに切り換えた上で、液面が高さz1を超えないように同じ種類の液体を注入した測定容器40を使用者が取り付けることにより、MCPU39が登録された比誘電率εを使用して体積ΔVを測定する。
続けて同じ種類の液体の体積ΔVを測定する場合には、すでに比誘電率εが登録されているため、測定モードに切り換えたまま、次の測定容器40を取り付けて体積ΔVを測定することができる。さらに、液体の種類や液温等の識別情報と比誘電率εの対応関係をMCPU39の図示しないROMにプリセットできるようにしておき、上記識別情報から比誘電率εが呼び出されて使用できるようにしてもよい。このようにすれば、毎回、初期設定モードによる比誘電率εの登録をしなくても済む。
(3)変形例:
図8のように測定容器40の上方に、測定容器40への液体の進入経路を絞り込む錘状の絞り60を備えるようにしてもよい。本変形例において、絞り60の開口径を0.25mmとしている。このようにすることにより、測定容器40の内部に液体が注入可能な吐出機構の位置や吐出方向を限定することができる。上記の実施形態によれば、同一形状の測定容器40を複数用意しておき、測定容器40を取り替えることにより、同種の液体について連続して体積測定を行うことができる。しかしながら、測定容器40の取替は煩雑であり、測定効率の低下を招くため、測定容器40を排液可能に構成してもよい。
図8のように測定容器40の上方に、測定容器40への液体の進入経路を絞り込む錘状の絞り60を備えるようにしてもよい。本変形例において、絞り60の開口径を0.25mmとしている。このようにすることにより、測定容器40の内部に液体が注入可能な吐出機構の位置や吐出方向を限定することができる。上記の実施形態によれば、同一形状の測定容器40を複数用意しておき、測定容器40を取り替えることにより、同種の液体について連続して体積測定を行うことができる。しかしながら、測定容器40の取替は煩雑であり、測定効率の低下を招くため、測定容器40を排液可能に構成してもよい。
図8においては上述した弁42を上下に駆動させるためのアクチュエータ70が軸心Cの同軸上に備えられており、アクチュエータ70の図示しない駆動子と弁42とが略円柱状のシャフト42aによって接続されている。また、内壁がシャフト42aの側面に摺接するように固定された略円筒状のガイド軸受け71がアクチュエータ70の上部に備えられており、弁42が高精度に駆動することが可能となっている。このようにすれば、弁42が下方に駆動したときの負圧および液体の自重によって、測定容器40から液体を排出することができる。また、弁42が収容される空間と連通した経路が形成されており、当該経路にイジェクタ80が備えられている。これにより、測定容器40から排出した液体を外部に排出することが可能となり、連続的な液体測定を可能とすることができる。
20…空洞共振器、20a…円環部、20b…円盤部、20c…矩形部、21…送受信アンテナ、30…コントローラ、31…サーキュレータ、32…結合器、33…分周器、34…カウンタ、35…検波器、36a,36b…LNA、37a…ADC、37b…DAC、38…VCO、39…MCPU、40…測定容器。
Claims (5)
- 測定容器に注入された液体の体積を測定する液体体積測定装置において、
マイクロ波を発信する発信手段と、
上記マイクロ波による電界強度が略一定値となる第1作用空間と、上記マイクロ波による電界強度が上記略一定値から減衰する大気開放空間とされた第2作用空間と、上記第1作用空間および上記第1作用空間と上記第2作用空間の双方に上記液体が存在するように上記測定容器を保持する保持部を備える空洞共振器と、
上記マイクロ波を受信する受信手段と、
上記第1作用空間に上記液体が存在するときに上記受信手段にて受信された上記マイクロ波の周波数、および、上記第1作用空間と上記第2作用空間の双方に上記液体が存在するときに上記受信手段にて受信された上記マイクロ波の周波数に対応する誘電率に基づいて、上記第1作用空間に存在する上記液体の体積を取得する解析手段とを具備することを特徴とする液体体積測定装置。 - 上記空洞共振器は、同軸型であるとともに、その軸心に上記保持部を有することを特徴とする請求項1に記載の液体体積測定装置。
- 上記測定容器は、略円筒状の下方部分と略すり鉢状の上方部分とから構成されることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の液体体積測定装置。
- 上記測定容器は装着状態で排液可能であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の液体体積測定装置。
- 測定容器に注入された液体の体積を測定する液体体積測定方法において、
発信手段によって、マイクロ波を発信し、
受信手段によって、上記マイクロ波による電界強度が略一定値となる第1作用空間と、上記マイクロ波による電界強度が上記略一定値から減衰する大気開放空間とされた第2作用空間と、上記第1作用空間および上記第1作用空間と上記第2作用空間の双方に上記液体が存在するように上記測定容器を保持する保持部を備える空洞共振器における上記マイクロ波を受信し、
解析手段によって、上記第1作用空間に上記液体が存在するときに上記受信手段にて受信された上記マイクロ波の周波数、および、上記第1作用空間と上記第2作用空間の双方に上記液体が存在するときに上記受信手段にて受信された上記マイクロ波の周波数に対応する誘電率に基づいて、上記第1作用空間に存在する上記液体の体積を取得することを特徴とする液体体積測定方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2007301982A JP4134264B1 (ja) | 2007-11-21 | 2007-11-21 | 液体体積測定装置および液体体積測定方法 |
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