以下に、本発明にかかるホログラム記録装置、ホログラム記録方法、およびホログラム記録プログラムの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態にかかる記録再生装置が情報を記録する光記録媒体102の概略断面図である。図1に示す光記録媒体102は、第1保護層120と、第1保護層120に積層された記録層140と、記録層140にさらに積層されたカバーシート150と、第1保護層120の記録層140と反対側に積層された反射層110と、反射層110にさらに積層された第2保護層160とを有している。
ホログラフィック記録媒体102の形状は、特に制限はないが、円盤状またはカード状であるのが好ましい。
第1保護層120と反射層110との界面には、位置決め領域として、例えば、それぞれ帯状の形状を有する複数のアドレス・サーボエリアを放射状に設けてもよい。
アドレス・サーボエリアには、サンプルドサーボ方式によってフォーカスサーボ及びトラッキングサーボを行うための情報とアドレス情報とをエンボスピットなどにより予め記録しておく。
また、アドレス・サーボエリアに挟まれた領域であるデータエリアには、グルーブが設けられている。なお、他の例としては、データエリアは、平坦面としてもよい。
図2は、本実施の形態に特徴的な光記録方法の概略を説明するための図である。光源1は、記録層140における反射層110と反対側の面、すなわち光入射面140aから、記録すべき情報に対応する記録光を照射する。光源1は、記録光を照射する毎に光入射面140aの異なる位置に移動し、さらに記録光を照射する。このように、光源1は、連続して次々に異なる情報に対応する記録光を照射して、記録層140に情報を書き込んでいく。
はじめに、反射層110の第1照射位置211に第1記録光201を照射する。照射された第1記録光201により、記録層140には第1照射位置211を中心とする同心円状の第1干渉縞221が形成される。立体的には、円錐台状の第1照射済領域241が形成される。このように、本実施の形態にかかるホログラム記録装置は、反射型シフト多重記録方式を利用して、干渉縞として各記録光に対応する情報を記録することができる。
さらに、本実施の形態にかかるホログラム記録装置においては、光源1は、第1記録光201を照射した後、記録層140に対して相対的に移動方向400に沿ってシフト移動する。そして、光源1は、第1記録光201に続いて、第2シフト照射位置271に第2記録光261を照射する。
ここで、光源1が相対的に移動するとは、光源1を静止させた状態で、記録層140を移動させてもよく、記録層140を静止させた状態で光源1を移動してもよく、また光源1および記録層140の両方が移動してもよい。かかる移動の機構については後述する。
図2に示す第1シフト照射位置271は、第1照射位置211とシフト距離430だけ離れている。シフト多重記録においては、既に形成されている照射済領域内の位置であって、当該照射済領域に対する照射位置と異なる照射位置に対して記録光を照射する。このように、照射位置を僅かにずらすことにより、既に照射済領域が形成されている領域に対して別個の情報に対応する照射済領域を重ねて形成することができる。したがって、大容量のデータを記録することができる。
さらに、本実施の形態においては、シフト多重の多重度が大きくなるにしたがい、よりパワーの大きい記録光を照射する。具体的には、半導体レーザーの注入電流を変化させる。
他の例としては、光源1に光強度を変調するND(Neutral Density)フィルタを配置し、NDフィルタにより記録光の全照射エネルギーを調整してもよい。
ここで、記録光のパワー密度とフォトポリマーの反応との関係について説明する。フォトポリマーに光照射すると、開始剤がラジカルを生成し、このラジカルが光重合性モノマーの重合を開始させる。
R・+ M → M・1 (式1)
ここで、R・は開始剤により生成されたラジカルを表し、Mは光重合性モノマーを表す。Mに添えられた下付きの数字は重合されたモノマー数を表す。MおよびRに添えられた上付きの点はその分子がラジカル状態にあることを示す。
同様にして光重合反応、および重合の完了は以下のように表すことができる。
M・n+ M → M・n+1 (式2)
M・m+ M・n →デットポリマー (式3)
M・n+ R・→デットポリマー (式4)
ここで、デットポリマーとは、反応性のないポリマーのことである。
1回の開始剤の反応に対して、十分にフォトポリマーに変化を生じさせるためには、光重合反応が十分に生じた後、つまり(式2)の反応が進み重合数nが大きくなった後に、(式3)および(式4)で表される重合が完了するのが好ましい。
ラジカル密度が低い場合には、(式3)および(式4)の反応が生じにくい。このため(式2)で示した重合反応が進行しやすい。
しかし、ラジカルの密度が過大になると、(式3)および(式4)で表される反応が生じやすくなる。このため、光重合反応が十分に進行する前に反応が完了してしまう。
従って、十分な反応を生ぜしめるためには、ラジカルの密度を低く抑えるために、記録光のパワー密度を所定の値D0以下に設定する必要がある。
一般に、記録層140の膜厚は100μmよりも大きい。したがって、光源1の波長を500nm程度とし、さらに対物レンズ(後述)の開口数を0.4程度以上とした場合には、記録層140の膜厚は対物レンズの焦点深度よりもはるかに大きい。
すなわち、図3に示すように記録層140内部において、記録光のビーム径は反射層110表面からの距離に比例して大きくなる。ビーム径が変化する効果は吸収によって記録光が減衰する効果よりも大きい。
このため、記録層140の内部の領域であってかつ反射層110に近い領域においては、記録光のパワー密度は大きい。逆に記録層140の内部の領域であってかつ反射層110から遠い領域においては、記録光のパワー密度は小さい。そこで、記録層140のうち反射層110に近い領域において特に反応が進行する。
以下、記録層140に情報を記録する処理について、記録すべき領域近傍に全く情報が記録されていない場合と、記録すべき領域近傍に既に情報が記録されている場合とに分けて具体的に説明する。
記録層140の記録すべき領域近傍に全く情報が記録されていない場合には、前述のように、記録層140の内部のうち反射層110に近い領域においてパワー密度が高く、反射層110から離れるほどパワー密度が小さくなる。
図4−1は、記録光が記録される前の記録層140におけるパワー密度分布を模式的に示している。図4−1の状態では、記録層140のうち反射層110近傍の領域141aにおいては、光重合反応は進行していない。
図5は、図4−1に示すように記録光が記録されていない記録層140に記録光を一定時間照射した場合の反応の進行度を示す図である。図5に示すグラフの横軸は、反射層110からの距離を示している。縦軸は、光重合反応の進行度を示している。図5のグラフにおける実線300が示すように、記録光が記録されていない記録領域に記録光を照射した場合には、反射層110に近い領域ほど光重合反応が進行する。
そこで、記録光を照射していない記録層140において効率的に反応を進行させるためには、記録層140のうち反射層110に近い領域において記録光のパワー密度がD0になるように記録光の光強度を設定するのが好ましい。
図4−2は、記録光が既に記録されている記録層140におけるパワー密度分布を模式的に示している。図4−2に示すように、記録層140のうち反射層110の近傍の領域141bでは、光重合反応はほぼ完了している。
図5における破線302は、既に情報が記録されている記録層140に記録光を照射した場合の反応の進行度を示している。破線302が示すように、反射層110から離れた領域において反応が最も進行する。反射層110に近い領域141bにおいては既に光重合反応が完了しており、反応が起こり難いためである。
そこで、この場合には、実際に反応が進行している領域142における記録光のパワー密度がD0になるように記録光の光強度を設定するのが好ましい。
領域142における記録光のパワー密度をD0とするためには、反射層110近傍の領域141bにおけるパワー密度がD0よりも大きい記録光を照射するのが好ましい。すなわち、より大きい光強度の記録光を照射するのが好ましい。
このように、シフト多重においては、既に情報が記録されている領域に重ねて情報を記録する場合には、先に照射した記録光よりも大きいパワーの記録光を照射することにより、効率的に情報を記録することができる。
反射層110近傍の領域141bにおけるパワー密度がD0よりも大きい記録光を照射した場合には、反射層110に近い領域141bにおける記録光のパワー密度はD0よりも大きい値になる。しかし、領域141bでは反応がほぼ完了しているので、これ以上の光エネルギーを照射してもモノマーの重合は生じない。すなわち、記録層140のうち反応が既に完了している領域141bにおいて記録光のパワー密度がD0を超えていても、反応が十分に進まないという問題は生じない。
逆に記録光の照射エネルギー量を、反射層110近傍の領域141bにおけるパワー密度がD0になるように保った場合には、記録光のビーム径が大きくパワー密度が小さい領域142に必要なエネルギーを照射するためには、より多くの記録時間を必要とする。このため、記録転送レートが低下してしまい、好ましくない。
図6は、多重度と記録光の全パワーの関係を示す図である。図6に示すグラフにおいて、横軸はシフト多重における多重度を示している。縦軸は、照射すべき記録光の全パワーを示している。
図6の実線312で示すように記録光の全パワーを変化させた場合には、多重度によらず一定の記録時間で所望の回折効率を有する干渉縞を記録することができる。このように
多重度に応じて実際に照射する全パワーを大きくすることにより、効率的に情報を記録することができる。
図6の破線314は、各多重度において実際に照射する記録光の全パワーの別の例を示している。この場合には、実線312で示した場合とは異なり、多重度に応じて所望の回折効率を有する干渉縞を記録するのに必要な記録時間が異なる。
図6に示す記録光の全パワー314においては、多重度が20になるまでは、多重度が5増加する毎に設定全パワーが増加する。その後、多重度が35に増加するまでは、全パワーは増加せず、多重度が35になったときに全パワーが増加する。
実線312に示すように、記録時間を一定にするための記録光の全パワーは、多重度と共に緩やかに増加するので、多重度ごとに記録光の全パワーを増加させなくても、問題となるほどの遅延は生じない。そこで、本実施の形態においては、多重度が比較的大きい場合には、多重度が15以上変化したときに測定全パワーを変更するように設定した。すなわち、多重度が増加し、かつ情報を記録するために必要な記録光の全パワーが所定量以上変化している場合にのみ照射すべき記録光の全パワーの設定値を変更する。これにより、記録光全パワーの切替えの回数を減らすことができ、処理の効率化を図ることができる。
さらに、一般には、記録層140の膜厚と第1保護層120の膜厚の比が大きいほど全パワーの変化の程度が大きい。そこで、記録層140の膜厚と第1保護層120の膜厚の比が大きいほど全パワーの変化の程度を大きく設定するのが好ましい。
以下、記録媒体102に照射する記録光の全パワーを変調させてシフト多重記録を行う処理について、より具体的に説明する。
図7は、図1に示した記録媒体102の上部から見た記録層140を示している。記録層140は、円盤状のディスクである。図1において説明した移動方向400はディスクにおける円周方向、すなわちトラック方向に相当する。記録媒体102には、円周方向に沿って複数のトラック領域510,520・・・が設けられている。本実施の形態においては、まず、記録層140全体に、互いに重ならないように一様に記録光を照射することにより情報を記録する。その後、シフト距離だけ移動させ、シフト多重により情報を記録する。
具体的には、まず記録媒体102の最も内側に設けられた第1トラック領域510の互いに重ならない位置に記録光を照射する。第1照射位置211を開始点として、移動距離410ずつ移動しつつ、記録光を照射する。そして、第1トラック領域510を1周し、光源1が第1トラック第1照射位置211に戻るとさらに、半径方向420を外周に向かって移動距離410だけ移動する。すなわち、第2トラック領域520に移動する。そして、第2トラック領域520において、第2トラック第1照射位置231を開始点として照射を開始する。移動距離410ずつ移動して連続的に記録光を照射する。そして、再び第2トラック第1照射位置231に戻ると、半径方向420を外周に向かって移動距離410だけ移動する。以上の処理を繰り返し、記録媒体102に対し情報を記録する。
図8は、移動距離410ずつ移動して情報を記録する処理を説明するための図である。第1記録光201を照射した後、光源1は、記録層140に対して相対的に移動方向400に沿って移動する。そして、第1記録光201に続いて、第2照射位置212に第2記録光202を照射する。
第2照射位置212は、既に照射された第1記録光201によって形成される第1照射済領域241よりも移動方向400に移動距離410だけ離れた位置であって、かつ第1照射済領域241と重ならない領域に第2照射済領域242を形成するような位置である。
具体的には、第1照射位置211と第2照射位置212とは、光入射面140aにおいて、第1照射済領域241と第2照射済領域242とが重なり合わないように十分離れた位置であることが必要である。
より具体的には、第1照射位置211と第2照射位置212の間の距離である移動距離が、第1照射済領域241の光入射面140aにおける光入射面140aの面内方向における直径r0以上の距離であることが望ましい。本実施の形態においては、第1照射位置211と第2照射位置212の間の移動距離410は、第1照射済領域241の光入射面140aにおける直径とはほぼ等しく設定されている。
記録層140の面内方向における照射済領域の面積は、光入射面140aにおいて最大となる。そこで、記録層140の光入射面140aにおいて第1照射済領域241と第2照射済領域242が重なり合わなければ第1照射済領域241と第2照射済領域242とが重なり合うことはない。
本実施の形態においては、第1照射済領域241の直径とほぼ等しい距離を移動距離410とした。短時間に効率的に情報を記録する観点からは、このように、移動距離410はできるだけ短いことが好ましい。しかし、移動距離410は第1照射済領域241の直径よりも長い距離であればよく、実施の形態に限定されるものではない。
このように、本実施の形態においては、各記録光により形成される各照射済領域同士が互いに重なり合わないよう、距離を隔てて記録光を照射する。そして、記録層140に一様に記録光を照射した後に、既に記録光を照射した照射位置からシフト距離だけ移動させてシフト多重により情報を記録する。
光源1を高速に移動させ、光重合反応が完了していない領域に重ねて記録光を照射すると、光重合反応中の光重合モノマーが、照射した当該記録光の影響を受けて適切な位置から外れた位置に移動するという問題がある。そこで、本実施の形態においては、処理の高速化の観点から、上述のように連続して照射する照射位置を十分に離すこととした。このように連続して照射する2つの照射位置を十分に離すことにより、1番目の照射による光重合反応が完了する前に、2番目の照射を行うことができる。
したがって、すでに照射された記録光による光重合反応にかかるモノマーが次に照射される記録光の影響を受けるのを避けつつ、データ転送の高速化を図ることができる。
図9は、シフト多重により情報を記録する処理を説明するための図である。図7および図8を参照しつつ説明した処理においては、多重記録は行われておらず、記録媒体102全体に対して多重されない状態で情報が記録されている。
このように、重ならない状態で、記録層140に一様に情報を記録した後に多重シフトによる情報の記録を行う。すなわち、図9に示すように光源1を既に記録した領域からトラック方向にシフト距離だけ移動させる。さらに、半径方向のシフト距離だけ移動させる。トラック方向のシフト距離は、
m・r0/Pt(0≦m≦Pt−1)
である。ここで、Ptは、トラック方向における多重度である。
また、半径方向のシフト距離は、
n・r0/Pr(0≦n≦Pr−1)
である。ここで、Prは、隣接するスポットの半径方向の幅を示す。
このように、所定の距離だけシフトさせた後の位置261を開始点として、1周目と同様に、2周目において照射すべき記録光によって形成される記録領域が互いに重ならないように一様に情報を記録する。以上の処理を繰り返すことにより、多重シフトによる情報の記録を行うことができる。
このように、記録層140のうち記録領域が重ならない位置に一様に記録光を照射した後に所定量だけシフトさせることにより、処理速度を低下させることなく、効率的に多重シフトによる情報の記録を行うことができる。
記録媒体102に設けられたトラックの本数が少ない場合には、上述のシフト量だけ移動するために、数トラック分ジャンプしてもよい。
また他の例としては、シフト量に対応して記録層140に比較的多くのトラックを設けておいてもよい。この場合、トラックの本数は、ほぼr0/Prに等しいことが好ましい。
また、本実施の形態においては、記録層140全面すなわち、記録層140に設けられた総てのトラックに記録光を照射した後に所定のシフト量だけ移動させたが、シフトさせるタイミングおよびシフト量はこれに限定されるものではない。
例えば、本実施の形態においては、トラック方向および半径方向の両方の方向に所定量だけシフトさせたが、これにかえて、いずれか一方向のみにシフトさせてもよい。
また、他の例としては、本実施の形態においては、記録層140に設けられた総てのトラックに記録光を照射した後にシフトさせたが、これにかえて、トラックを1周するごとにシフトさせてもよい。
図10は、図1を参照しつつ説明したホログラフィック記録媒体102に採用可能な構造の一例を概略的に示す平面図である。図10には、データエリア600が示されている。データエリア600には、複数のグルーブ610が形成されている。さらに、グルーブ610は、複数の略円形の凹部612と複数の溝部614とを有している。凹部612と溝部614とは、交互に接続されている。
溝部614の幅616は、凹部612の直径613よりも狭く設けられている。また、凹部612の直径613は、当該ホログラフィック記録媒体102に照射すべき記録光のビーム径よりも大きい。これにより、凹部612の境界領域に記録光が照射され、光が散乱するなどの不都合が生じるのを避けることができるので、精度よく情報を記録することができる。
ホログラフィック記録媒体102が円盤状である場合には、グルーブ610は、渦巻線状に形成されているのが好ましい。また他の例としては、グルーブ610は、同心円状に形成されていてもよい。
図1に示した記録媒体102に含まれるカバーシート150としては、例えばポリカーボネートやPMMA(ポリメチルメタクリレート)などの透明材料からなる透明基板を使用するのが好ましい。
記録層140は、屈折率や透過率などの光学特性が照射光の強度に応じて変化するホログラム材料を含有している。ホログラム材料としては、例えば、Dupont社製のフォトポリマーであるHRF−700などを使用することができる。記録層140の厚さは、例えば、十分な容量を得るためには100μm程度以上とするのが好ましい。
第1保護層120は、記録層140と反射層110とを互いから離間させる役割を果たす。第1保護層120の材料としては、例えば、ポリカーボネートやPMMAなどの透明プラスチック、ガラス、ZnSやSiO2などの透明誘電体およびそれらの積層体等の透明材料を使用することができる。第1保護層120の厚さは、例えば、100μm以上であるのが好ましい。
反射層110の材料としては、例えば、AlやAgなどの金属や、それらを含有した合金を使用することができる。反射層110の厚さは、記録光が透過しない程度であるのが好ましく、具体的には例えば50μm以上であるのが好ましい。
第2保護層160の材料としては、例えば、ZnSやSiO2などの誘電体、ポリカーボネートやPMMAなどの透明プラスチック及びガラスなどを使用することができる。第2保護層160は、設けなくてもよい。第2保護層160として、それ自体を単独で取り扱うことが可能な基板を使用する場合、第2保護層160と反射層110との間には紫外線硬化樹脂などを含有した接着剤層を介在させてもよい。
第2保護層160を設けない場合、このホログラフィック記録媒体102は、以下の方法により製造することができる。すなわち、カバーシート150上に、記録層140、第1保護層120及び反射層110を順次積層する。
他の例としては、一主面上に反射層110を設けた第1保護層120と、一主面に記録層140を設けたカバーシート150とを、記録層140が第1保護層120に対向するように貼り合わせてもよい。
また他の例としては、一主面上に反射層110を設けるとともに他方の主面に記録層140を設けた第1保護層120と、カバーシート150とを、記録層140とカバーシート150とが向き合うように貼り合わせてもよい。
第2保護層160を設ける場合、このホログラフィック記録媒体102は、以下の方法により製造することができる。すなわち、上述した何れかの段階で、反射層110を第2保護層160で被覆する。
他の例としては、一主面上に反射層110と第1保護層120とを順次積層した第2保護層160と、一主面上に記録層140を設けたカバーシート150とを、第1保護層120と記録層140とが向き合うように貼り合わせてもよい。
また他の例としては、一主面上に反射層110と第1保護層120と記録層140とを順次積層した第2保護層160と、カバーシート150とを、記録層140がカバーシート150に対向するように貼り合わせてもよい。
図11は、実施の形態1にかかる記録再生装置100の概略構成を示すブロック図である。記録再生装置100は、光源1と、光学系2と、駆動機構3と、検出系41,42と、情報処理部5と、メモリ6とを有する。記録再生装置100は、反射型のホログラフィック記録媒体102を着脱可能に搭載する。
光源1は、記録光、記録用参照光及び再生用参照光として利用可能な光を放出する。光源1としては、コヒーレントな光を出力するレーザを使用することが望ましい。レーザとしては、例えば、半導体レーザ、He−Neレーザ、アルゴンレーザ、YAGレーザなどを使用することができる。
光学系2は、記録時には、光源1が放出する光の一部を記録用参照光として記録媒体102へと導き、光源1が放出する光の他の一部を記録光として記録媒体102へと導くとともに、記録媒体102からの反射光を検出器42へと導く。記録用参照光は、典型的には、ほぼ一様な光学特性分布を有している。他方、記録光は、記録すべき情報に対応して光学特性の二次元分布が与えられている。記録用参照光及び記録光は記録媒体102の反射層表面にフォーカスさせる。
光学系2は、再生時には、光源1が放出する光の一部を再生用参照光として記録媒体102へと導き、これにより記録媒体102から出力される再生光をイメージセンサ41へと導くとともに、記録媒体102からの反射光を検出器42へと導く。再生用参照光は、典型的には、記録用参照光とほぼ同じ強度分布を有している。再生用参照光は、記録用参照光と同様、記録媒体102の反射層表面にフォーカスさせる。
光学系2は、ビームエキスパンダ20と、旋光用光学素子21と、偏光ビームスプリッタ22と、透過型空間光変調器23と、ビームスプリッタ24と、偏光ビームスプリッタ25と、二分割旋光用光学素子26と、対物レンズ27と、ビームスプリッタ28、結像レンズ29とを含んでいる。
ビームエキスパンダ20は、光源1が出力する光ビームのビーム径を増加させ、これを平行光として出射させる。
旋光用光学素子21は、先の光ビームの偏波面を回転させるか、或いは、先の光ビームを円偏光または楕円偏光とすることにより、電界ベクトルの振動方向が互いに直交するP偏光成分とS偏光成分とを出力する。旋光用光学素子21としては、例えば、λ/2波長板やλ/4波長板を使用することができる。
偏光ビームスプリッタ22は、旋光用光学素子21を出射した光ビームのうち、S偏光成分を反射し、P偏光成分を透過させる。このP偏光成分は、記録用参照光または再生用参照光として利用する。
透過型空間光変調器23は、例えば透過型液晶表示装置のようにマトリクス状に配列した多数の画素を有しており、それを出射する光をP偏光成分とS偏光成分との間で画素毎に切り替えることができる。このようにして、透過型空間光変調器23は、記録すべき情報に対応して二次元的な偏波面分布が与えられた記録光を出力する。また、この透過型空間光変調器23は、再生時には、全ての画素がP偏光成分を出射するように駆動する。なお、この例では、空間光変調器として透過型空間光変調器23を用いているが、透過型空間光変調器23の代わりに、例えばディジタルミラーアレイなどの反射型空間光変調器を使用し、記録すべき情報に対応して二次元的な強度分布が与えられた記録光を出力させることもできる。
ビームスプリッタ24は、記録光の一部を反射し、偏光ビームスプリッタ25に向けて出射させる。また、ビームスプリッタ24は、再生光の一部を透過させ、イメージセンサ41に向けて出射させる。
偏光ビームスプリッタ25は、S偏光成分を反射し、P偏光成分を透過させる。すなわち、偏光ビームスプリッタ25は、記録時には、記録用参照光と記録光のうちのS偏光成分のみを二分割旋光用光学素子26に向けて出射させる。また、再生時には、偏光ビームスプリッタ25は、透過型空間光変調器23を介して入射する光の全てを二分割旋光用光学素子26に向けて出射させることなく、再生用参照光を二分割旋光用光学素子26に向けて出射させる。
二分割旋光用光学素子26は、図中、右側の部分と左側の部分との間で光学特性が互いに異なっている。例えば、二分割旋光用光学素子26の右側部分に入射したP偏光成分は右円偏光として出射し、左側部分に入射したP偏光成分は左円偏光として出射する。この場合、二分割旋光用光学素子26の各部分には、例えば、λ/4波長板を用いることができる。
図12は、二分割旋光用光学素子26の一例を概略的に示す平面図である。この二分割旋光用光学素子26は、それぞれ半円形の形状を有する左側部分26Lと右側部分26Rとを含んでいる。左側部分26L及び右側部分26Rは何れもλ/4波長板であり、両矢印で示す左側部分26L及び右側部分26Rの光学軸は90°の角度を為している。また、典型的には、左側部分26L及び右側部分26Rの光学軸は、それらの境界に対して±45°の角度を為す。この二分割旋光用光学素子26は、左側部分26L及び右側部分26Rの光学軸が、偏光ビームスプリッタ25を出射するP偏光成分及びS偏光成分の偏波面に対して±45°の角度を為すように配置する。
対物レンズ27は、記録時には記録光と記録用参照光を、再生時には再生用参照光を、集束光として出射させる。
ビームスプリッタ28は、記録用参照光及び再生用参照光の一部を反射し、偏光ビームスプリッタ25に向けて出射させる。また、ビームスプリッタ28は、記録媒体102から反射された記録用参照光あるいは再生用参照光の一部を透過させ、検出器42に向けて出射させる。結像レンズ29はビームスプリッタ24を透過した再生光をイメージセンサ41上に結像させる。
駆動機構3は、対物レンズ27と記録媒体102とを相対移動させる。具体的には、駆動機構3は、記録媒体102の記録トラックに沿った第1方向と、記録媒体102の主面に平行であり且つ第1方向と交差する第2方向と、記録媒体102の主面と交差する方向であって典型的には記録媒体102の主面に略垂直な第3方向とに、対物レンズ27と記録媒体102とを相対移動させる。駆動機構3は、この例では、モータ30とアクチュエータ31とを含んでいる。モータ30のスピンドルは、記録媒体102を回転可能及び着脱可能に支持している。また、アクチュエータ31は、例えばピエゾアクチュエータであり、対物レンズ27を、図中、横方向及び縦方向に移動させる。
検出系41,42は光記録媒体からの再生光、および光記録媒体で反射された光を検出する。検出系41,42はこの例では、イメージセンサ41と検出器42とからなる。イメージセンサ41は、再生信号読み出し用の二次元イメージセンサであって、その受光面に行方向と列方向とに配列した複数の画素を有している。イメージセンサ41は、各画素毎に光強度を検出する。
検出器42は、光記録媒体で反射された光を検出する検出器であって、分割検出器としてもよい。検出器42の出力は、必要に応じて、サーボ信号の取得や、多重度の判定に用いられる。検出器42の前には必要に応じて集光レンズやシリンドリカルレンズを配置してもよい。
情報処理部5は、イメージセンサ41の出力から情報を再生するとともに、必要に応じて、検出器42の出力に応じて光源1の出力を調整したり、光学系2と記録媒体102との相対的な位置を調整する。メモリ6は、光源の出力にかかる情報を格納している。
図13は、情報処理部5の機能構成を示すブロック図である。情報処理部5は、照射回数カウント部50と、多重度特定部51と、照射条件決定部52とを有している。
照射回数カウント部50は、光源1が実際に記録光を照射した照射回数をカウントする。多重度特定部51は、照射回数カウント部50のカウント数に基づいて、多重度を特定する。照射条件決定部52は、メモリ6に記録されている情報と、多重度特定部51によって特定された多重度とに基づいて、記録光を照射するときの照射条件を決定する。ここで、照射条件には、照射すべき記録光の全照射エネルギー量、すなわち、照射時間と光強度が含まれる。例えば、照射時間が予め設定されている場合には、照射条件として光強度のみを決定すればよく、また光強度が予め設定されている場合には、照射条件として照射時間のみを決定すればよい。また、光源1を移動させる移動距離も含まれる。
光源は、照射条件決定部52によって決定された照射条件にしたがって記録光を照射する。また、駆動機構3は、照射条件決定部52によって決定された照射条件にしたがって、光源1を移動する。
図14は、メモリ6に記録されている照射条件決定テーブル60を示している。このように、照射条件決定テーブル60は、多重度と全パワーとを対応付けている。照射条件決定テーブル60における多重度と全パワーとの関係は、図6において実線312で示した記録時間を一定にするための記録光の全パワーに対応している。
このように、照射条件決定テーブル60は、多重度と全パワーとを対応付けているので、照射条件決定部52は、照射条件決定テーブル60を参照することにより、多重度に適した全照射エネルギーを決定することができる。
他の例としては、本実施の形態における照射条件決定テーブル60は、図6の破線314で示したように、ある範囲の多重度で記録光の全パワーを一定としながら、この全パワーと照射時間とを対応づけてもよい。
また他の例としては、光強度および照射時間のいずれも変更する場合には、照射条件決定テーブル60は、多重度と、光強度および照射時間とを対応づけてもよい。
この記録再生装置100を用いた情報の記録及び再生は、例えば、以下の方法により行うことができる。まず、記録方法について説明する。
光源1は、コヒーレントな直線偏光を出力する。ビームエキスパンダ20は、光源1が放射する光ビームのビーム径を増加させ、平行光として旋光用光学素子21に入射させる。
旋光用光学素子21に入射した光ビームは、偏波面を回転させて出射するか、或いは、円偏光または楕円偏光として出射する。すなわち、旋光用光学素子21は、直線偏光を、偏波面が紙面に平行なP偏光成分と偏波面が紙面に垂直なS偏光成分とを有する光へと変換する。
旋光用光学素子21を出射した光ビームのうち、S偏光成分は偏光ビームスプリッタ22により反射され、透過型空間光変調器23に入射する。また、P偏光成分は、偏光ビームスプリッタ22を透過する。このP偏光成分は、記録用の参照光として利用する。
透過型空間光変調器23は、それを出射する光をP偏光成分とS偏光成分との間で画素毎に切り替えることができる。記録時には、透過型空間光変調器23を適宜駆動することにより、透過型空間光変調器23に入射したS偏光成分を、記録すべき情報に対応して二次元的な偏波面分布が与えられた記録光として出射させる。
透過型空間光変調器23を出射した記録光の一部は、ビームスプリッタ24によって反射され、偏光ビームスプリッタ25に入射する。
偏光ビームスプリッタ25は、先の記録光のうち、S偏光成分のみを反射し、P偏光成分は透過する。偏光ビームスプリッタ25により反射されたS偏光成分は、二次元的な強度分布が与えられた記録光として二分割旋光用光学素子26に入射する。
二分割旋光用光学素子26の右側部分26Rに入射したS偏光成分は、右円偏光として出射する。他方、二分割旋光用光学素子26の左側部分26Lに入射したS偏光成分は、左円偏光として出射する。
二分割旋光用光学素子26を出射した右円偏光及び左円偏光は、対物レンズ27により、反射層110上にフォーカスさせる。なお、記録媒体102は、カバーシート150を対物レンズ27に対向させて配置されている。
他方、偏光ビームスプリッタ22を透過したP偏光成分(参照光)の一部は、ビームスプリッタ28で反射され、偏光ビームスプリッタ25を透過する。偏光ビームスプリッタ25を透過した参照光は、次いで、二分割旋光用光学素子26に入射し、その右側部分26Rに入射した光成分は左円偏光として出射し、左側部分26Lに入射した光成分は右円偏光として出射する。それら左円偏光及び右円偏光は、対物レンズ27により記録媒体102の反射層110上にフォーカスさせる。
このように、二分割旋光用光学素子26の右側部分26Rからは、右円偏光である記録光と左円偏光である参照光とが出射する。他方、二分割旋光用光学素子26の左側部分26Lからは、左円偏光である記録光と右円偏光である参照光とが出射する。また、記録光と参照光とは、同軸に照射される。
図15に示すように、右側部分26Rを透過した記録光と左側部分26Lを透過した参照光とは、どちらも右円偏光の光として光記録媒体102に照射される。記録光の焦点位置が反射層110に近いときには、これらの光はほぼ対向して進行しているので干渉縞を形成し、これとは逆向きの左円偏光の光との干渉縞は形成しない。同様にして、左側部分26Lを透過した記録光と右側部分26Rを透過した参照光も干渉縞を形成する。
つまり、記録光と参照光との干渉は、カバーシート150を介して記録層140に直接入射した直接光としての記録光と反射層110で反射された反射光としての参照光との間、及び、直接光としての参照光と反射光としての記録光との間のみで生じる。すなわち、直接光としての記録光と反射光としての記録光との干渉や、直接光としての参照光と反射光としての参照光との干渉は生じない。したがって、図12に示す記録再生装置100によると、記録層140の内部に記録光に対応した光学特性の分布を生じさせることができる。
サーボは記録用参照光を利用して以下のようにして行うことができる。光強度が弱い記録用参照光のみが記録媒体に照射されるように、光源1からの出力光強度を低くし、かつ、空間光変調器23をすべての画素がP偏光の光として出射するように設定する。光記録媒体102に入射し、反射層110で反射された記録用参照光は再びビームスプリッタ28に入射し、一部はビームスプリッタ28を透過する。この光を検出器42で検出することにより、通常のDVDと同様のフォーカシングおよびトラッキングを行うことができる。あるいは、予め別光源から出射される光の焦点位置と、光源1から出射される光の焦点位置との関係がわかっていれば、図示しない別光源からの光を用いてサーボを行うことも可能である。
前述したサーボ方式により、記録光の焦点位置を612で示される凹部に配置し、空間光変調器23を記録したい情報に応じた状態に設定した後に、光源1の出力を、所定の記録時間にわたって所定の記録光強度にすることにより記録を行う。このとき、モータ30およびアクチュエータ31を固定して、光記録媒体102と光学系2との相対的な位置を固定してもよいし、あるいは、モータ30を用いて光記録媒体102を回転させながら、光記録媒体102と光学系2との相対的な位置が固定されるようにアクチュエータを駆動してもよい。
多重して情報を記録するときには、光学系2とホログラフィック記録媒体102との相対的な位置を変えて、空間光変調器23を記録したい情報に応じた状態にした後、同様にして、所定の記録光強度で所定の時間にわたり記録光を照射すればよい。
上述した方法により記録した情報は、以下のようにして再生することができる。すなわち、透過型空間光変調器23を、その全ての画素がP偏光成分を出力するように駆動すること以外は、記録時と同様の操作を行う。或いは、偏光ビームスプリッタ22とビームスプリッタ24との間に電磁シャッタを配置しておき、再生時には電磁シャッタを閉じること以外は、上記の記録時と同様の操作を行う。なお、この電磁シャッタは、記録時には開いておく。こうすると、再生時には、P偏光成分である再生用参照光のみが二分割旋光用光学素子26に到達する。
この再生用参照光は、次いで、二分割旋光用光学素子26に入射し、その右側部分26Rに入射した光成分は左円偏光として出射し、左側部分26Lに入射した光成分は右円偏光として出射する。それら左円偏光及び右円偏光は、対物レンズ27により記録媒体102の反射層110上にフォーカスさせる。
記録媒体102の記録層140には、上記の方法により光学特性分布が形成されている。したがって、記録媒体102に入射した左円偏光及び右円偏光の一部は、記録層140内に形成された光学特性分布により回折され、再生光として記録媒体102を出射する。
記録媒体102を出射した再生光としての左円偏光及び右円偏光は、対物レンズ27を介して、二分割旋光用光学素子26に到達する。図16に示すように、二分割旋光用光学素子26の左側部分26Lに入射した左円偏光はS偏光成分として出射する。同様に、二分割旋光用光学素子26の右側部分26Rに入射した右円偏光はS偏光成分として出射する。このようにして、S偏光成分としての再生光が得られる。
その後、この再生光は、偏光ビームスプリッタ25に入射する。この再生光は、S偏光成分であるので、偏光ビームスプリッタ25により反射され、その一部は、ビームスプリッタ24を透過し、結像レンズ29でイメージセンサ41上に結像される。イメージセンサ41は、マトリクス状に配置された複数の画素を含み、再生光がその受光面に形成する再生画像の光強度分布を検出する。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、上記実施の形態に多様な変更または改良を加えることができる。
そうした第1の変更例としては、本実施の形態においては、照射回数カウント部50によってカウントされた照射回数に基づいて多重度を特定したが、他の例としては、反射光強度に基づいて多重度を特定してもよい。ここでいう反射光とは、記録媒体102に入射した参照光が、記録膜140を透過し、反射層110表面で反射された後に、再び記録膜140を透過して、記録媒体102から出射したものを示す。
図17は、第1の変更例にかかる記録再生装置100の情報処理部5の機能構成を示すブロック図である。第1の変更例にかかる情報処理部5は、照射回数カウント部50にかえて、反射光強度取得部53を有している。
反射光強度取得部53は、記録媒体102からの反射光の光強度を示す情報を取得する。なお、反射光強度は、検出器42によって得られる。そして、多重度特定部51は、反射光強度取得部53による測定結果に基づいて多重度を特定する。
図18は、多重度と反射光強度との関係を示す図である。図19は、反射光強度と記録光全パワーとの関係を示すグラフである。
多重度が大きくなるにつれて、記録層140においては光重合反応が進行する。これにより、記録層140が透明になり、記録媒体102の反射率が増加する。すなわち、多重度と反射率とは相関を有する。そこで、記録媒体102からの反射光の光強度を測定することにより、測定値としての反射光強度に基づいて間接的に多重度を特定することができる。多重度の増加に伴って透過率が変化する波長は記録層140に用いる材料によって異なるが、フォトポリマーを記録層140に用いたときには、記録光の波長で透過率が増加することが多い。
具体的には、予め図19に示すような反射光強度と多重度との関係を示す照射条件決定テーブルをメモリ6に格納しておく。そして、反射光強度に基づいて、照射光全パワーを決定する。
このように、本実施の形態において図6に示した多重度と記録光全パワーとの関係は、図18に示す反射光強度と多重度との関係を利用して、図19に示す反射光強度と記録光全パワーとの関係に置き換えることができるので、反射光強度に基づいて記録光全パワーを決定することができる。
また、第2の変更例としては、本実施の形態においては、照射条件決定テーブル60は、記録再生装置100のメモリ6に格納されていたが、これにかえて照射条件決定テーブル60は、記録媒体102の記録層140に記録されていてもよい。この場合、記録再生装置100は、記録層140に記録されている照射条件決定テーブル60を読み出し、これに基づいて照射条件を決定する。
また、照射条件決定テーブル60は、DVD(Digital Versatile Disk)と同様に光記録媒体1の反射層110にピットで記録されるのが好ましい。また、ページデータとして記録されてもよい。一般には、記録媒体102の内周部よりに記録されているのが好ましい。
さらに、記録層140に記録されている照射条件決定テーブル60に対応する標準光記録再生装置と、実施の形態にかかる光記録再生装置100との間に特性の差があり、照射条件の差が生じることが予めわかっている場合には、記録再生装置100は、照射条件決定テーブル60と、当該特性の差に基づいて、設定すべき照射条件を決定してもよい。
(実施の形態2)
実施の形態2にかかる記録再生装置100について説明する。実施の形態2にかかる記録再生装置100は、記録媒体102に設けられた試し書き領域に実際に多重記録を行うことにより各多重度における照射条件を決定する。この点で、実施の形態1にかかる記録再生装置100と異なっている。
図20は、実施の形態2にかかる記録再生装置100の情報処理部5の機能構成を示すブロック図である。実施の形態2にかかる情報処理部5は、実施の形態1にかかる情報処理部5の機能構成に加えて、回折効率取得部55と、全パワー決定部56と、照射条件決定テーブル作成部57とをさらに有している。
回折効率取得部55は、イメージセンサ41によって測定された回折効率の値を取得する。全パワー決定部56は、回折効率取得部55が取得した記録層140における回折効率に基づいて、記録層140に照射すべき記録光の全パワーを決定する。照射条件決定テーブル作成部57は、全パワー決定部56によって決定された全パワーと、対応する回折効率が得られた記録層140の多重度とを対応付けた照射条件決定テーブル60を作成する。そして、作成した照射条件決定テーブルをメモリ6に格納する。
図21は、実施の形態2にかかる記録再生装置100が光強度を決定する処理を示すフローチャートである。
まず、1ページ目における記録時間は、以下のようにして決定する。すなわち、記録光および参照光が記録層140の記録領域に集光するように、記録層140と光源1との相対的な位置を調整する(ステップS100)。
次に、記録光の全パワーを予め設計された所定の値I(1)に設定する。そして、記録光と参照光とを記録層140に非常に短い時間照射する。すなわち、試し記録を行う(ステップS102)。これにより、1ページ目のホログラムが記録される。
さらに、光源1から出射される光の全パワーを再生時の小さい値にする。そして、参照光のみを照射する。このときの回折効率ηを後述のイメージセンサ41を用いて求める(ステップS104)。回折効率が所定の値η0になるまで、以上の処理を繰り返す(ステップS106)。そして、記録光と参照光とを照射した全時間を1ページ目の照射時間t(1)とする(ステップS108)。さらに、1ページ目の光強度を決定する(ステップS110)。
このとき、記録光として一様な強度分布を持つ光を照射してもよく、また他の例としては、面内に適当な強度分布を与える光を照射してもよい。
2ページ目以降の記録時間及び記録光の全パワーは以下のようにして設定する。すなわち、記録層140の円周方向であるトラック方向または記録層140の動径方向に所定のシフト量だけ離れた位置に参照光が照射されるように設定する。そして、nページ目を記録する。ここで、nは2以上の自然数である。
1ページ目の照射時間を決定したのと同様の方法で所定の回折効率が得られるのに必要な記録時間t(n)を求める。このとき、記録光の全パワーは、暫定的に(n−1)ページ目を記録したときと同じパワーI(n−1)とする。
t(n)が所定の値t(u)を超えない場合には、nページ目の記録光の全パワーI(n)を
I(n)=I(n−1)
とし、その照射時間をt(n)とする。
記録時間が所定の値t(u)超えた場合には、
I(n)=I(n−1)×t(n)/t(1)
とする。すなわち、記録光の全パワーをt(n)/t(1)倍する。これにより、記録光の照射時間をt(1)とすることができる。
以上の処理をトラック方向および動径方向に予め定められた多重度に達するまで行う。これにより、多重度に応じた記録光の全パワー、および照射時間が決定される。これらの情報に基づいて照射条件決定テーブルが作成され、メモリ6に格納される。
光源の性能から全パワーの最大値Imaxが定まる。そこで、上記演算処理により決定された全パワーが、最大値Imaxよりも大きい値である場合には、当該値を設定することができない。
そこで、この場合には、全パワーをImaxとし、記録時間をt(u)よりも大きい値に設定する。
以上の処理をトラック方向および動径方向に規定の多重度(それぞれMtおよびMrとする)に達するまで行い、多重度に応じた記録光の全パワー、および記録時間を光記録再生装置のメモリ6に格納する。さらに、パラメータI(1)、Mt、Mr、t(u)およびImaxをメモリ6に格納する。ここで、Imaxは、記録光の全パワーの上限値である。すなわち、これを超えて記録光の全パワーを増大させることはできない。
実施の形態2にかかる記録再生装置100のこれ以外の構成および動作は、実施の形態1にかかる記録再生装置100の構成および動作と同様である。
また、実施の形態2にかかる記録再生装置100の第1の変更例としては、本実施の形態においては、上述の情報は、メモリ6に格納されたが、これにかえて、光記録媒体中に書き込んでもよい。
例えば、記録光の全パワーおよび照射時間は、記録媒体102の例えばリードインエリアに書き込んでもよい。また、パラメータI(1)、Mt、Mr、t(u)およびImaxは、光記録媒体102の例えばプリフォーマットエリアに予め記録されていてもよい。
また、第2の変更例としては、本実施の形態においては、所定の照射時間t(u)を設定し、段階的に記録光の光強度を変更したが、これにかえて、連続的に照射時間を変更してもよい。
具体的には、記録光の全パワーを予め設計された所定の値Itmpに設定する。そして、所定の回折効率が得られるまでに必要な時間t(1,tmp)を求める。予め設定された記録時間をt0とすると、1ページ目の記録光の全パワーを、次式のように決定する。
I(1)=Itmp×t(1,tmp)/t0
続いてmページ目の記録光の全パワーI(m)を決定する場合には、(m−1)ページ目の記録光の全パワーI(m−1)を用いて所定の回折効率を得るために必要な記録時間t(m,tmp)を求める。そして、mページ目の記録光の全パワーを次式により決定する。
I(m)=I(m−1)×t(m,tmp)/t0
以上の処理を最大多重度Mまで行う。これにより、多重度に応じた記録光の全パワー、および照射時間が決定される。
実施例で作製した光記録媒体に実施例と同様に情報の記録を行った。ただし、ポリカーボネート基板120としては、実施例において使用したのと同様のものを使用し、トラック方向に隣接した記録スポット612に連続して記録を行った。つまり、図23において記号91から99の順に記録を行った。ここで、PrおよびPtは実施例と同じになるようにした。
記録媒体102全面に記録後、実施例と同様の方法で平均の回折効率を測定した結果、表2に示すとおりとなった。従って、記録光強度を一定とした結果、8%の回折効率を得るために、平均2.4msの記録時間を要したことになる。つまり、実施例に比べて平均の記録転送レートが1/2になったといえる。
他の実施例としては、図23に示すように、91から99の順に、9スポットを最少単位としてトラック方向および半径方向に同じ順序で記録スポットを形成してもよい。さらに、比較例として、同様に91から99の順に記録スポットに連続して記録を行った。この場合にも、同様に、実施例に比べて平均記録転送レートが1/2になった。