JP4131328B2 - 液体吐出ヘッド及び液体吐出装置 - Google Patents

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Description

本発明は、インクジェットプリンタ等に用いられるサーマル方式の液体吐出ヘッド、及びこの液体吐出ヘッドを備えるインクジェットプリンタ等の液体吐出装置に関し、ゴミ、ホコリ等の混入や気泡の発生による流路障害が極力生じないようにし、吐出ムラのない流路構造を実現する技術に係るものである。
従来より、例えばインクジェットプリンタに代表される液体吐出装置に用いられる液体吐出ヘッドでは、発生させた気泡の膨張及び収縮を利用するサーマル方式と、液室の形状や体積の変動を利用するピエゾ方式とが知られている。
そして、サーマル方式では、半導体基板上に発熱素子を設け、この発熱素子によって液室内の液体に気泡を発生させ、発熱素子上に配置されたノズルから液体を液滴として吐出させ、記録媒体等に着弾させるものである。
図10は、従来のこの種の液体吐出ヘッド1(以下、単にヘッド1という。)を示す外観斜視図である。図10において、ノズルシート17は、バリア層3上に貼り合わせられるが、このノズルシート17を分解して図示している。
また、図11は、図10のヘッド1の流路構造を示す断面図である。なお、液体吐出装置のこの種の流路構造としては、例えば特許文献1に開示されている。
特開2003−136737号公報
図10及び図11において、半導体基板11上には、複数の発熱素子12が配列されている。また、半導体基板11上には、バリア層3及びノズルシート17が順次積層される。ここで、半導体基板11上に発熱素子12が形成されるとともに、その上部にバリア層3が形成されたものを、ヘッドチップ1aと称する。そして、ヘッドチップ1a上にノズルシート17が貼り合わせられたものを、ヘッド1と称する。
ノズルシート17は、各発熱素子12上にそれぞれノズル(液滴を吐出するための孔)18が位置するように、ノズル18が配列されたものである。また、バリア層3は、半導体基板11上に設けられることにより、発熱素子12とノズル18との間に介在して、発熱素子12上とノズル18との間に液室3aを形成している。
図10に示すように、バリア層3は、平面的に見て、各発熱素子12の3辺が囲まれるように略櫛歯状に形成されることで、1辺のみが開口された液室3aが形成されている。この開口された部分は、個別流路3dを形成し、共通流路23と連通する。
また、発熱素子12は、半導体基板11の1辺の近傍に配列されている。そして、図11中、半導体基板11(ヘッドチップ1a)の左側には、ダミーチップDが配置されることで、半導体基板11(ヘッドチップ1a)の一側面と、ダミーチップDの一側面とで、共通流路23を形成している。なお、共通流路23を形成できる部材であれば、ダミーチップDに限らず、いかなる部材を用いても良い。
さらにまた、図11に示すように、半導体基板11の発熱素子12が設けられた面と反対側の面には、流路板22が配置されている。この流路板22には、図11に示すように、インク供給口22aと、このインク供給口22aと連通するように断面形状が略凹状をなす供給流路24が形成されている。そして、この供給流路24と、共通流路23とが連通している。
これにより、インクは、インク供給口22aから供給流路24及び共通流路23に送られるとともに、個別流路3dを通って液室3aに入り込む。そして、発熱素子12が加熱されることで、液室3a内の発熱素子12上に気泡が発生し、この気泡発生時の飛翔力によって、液室3a内の液体の一部を液滴としてノズル18から吐出させる。
なお、図10及び図11では、実際の形状を無視して、理解の容易のために、形状を誇張して表示している。例えば半導体基板11の厚みは、約600〜650μmであり、ノズルシート17やバリア層3の厚みは、約10〜20μmである。
前述の従来の技術のヘッド1においては、第1に、ゴミやホコリが流路内やノズル18内に入り込み、ノズル18での吐出不良や流路での液体の供給不足が生じる問題がある。
ここで、一般の空間にはゴミやホコリが漂っており、自由に移動している。したがって、これらが液体中に落ちて、液体中のゴミやホコリとして存在する。しかし、インクジェットプリンタ等の液体吐出装置では、ミクロン単位のノズル18から液体を吐出させる構造であるので、ゴミやホコリがノズル18に詰まるおそれがある。
このため、現状では、製造過程において、例えば無塵室等のような作業環境で、ゴミやホコリの少ない液体等で部品を洗浄すること等が行われている。
さらに、設計上では、液体吐出装置の流路において、複数箇所にゴミやホコリを除去するためのフィルターを設けておく必要がある。
特に、ラインヘッドのようにノズル数が多くなるほどノズル18の吐出不良が生じる確率が高くなるので、より厳しい管理が必要となり、コストが増大するという問題がある。
また、第2に、ヘッド1の温度が上昇する結果、液体中に気泡が発生することがあり、この気泡が障害となって吐出量が不足してしまう問題がある。
気泡の発生箇所としては、前述の共通流路23や個別流路3dが挙げられるが、いずれの箇所に発生しても、吐出ムラの原因となる。
図12は、共通流路23内に気泡が残留した状態を写真撮影した結果を示す図である。図12では、ノズルシート17を透明体から形成し、内部の気泡の状態が見えるようにしている。
図12では、共通流路23内には、フィルターが設けられている。このフィルターは、ゴミ及びホコリが個別流路3d内に進入することを防止するために設けられたものであって、円柱状の柱を共通流路23に沿って配列したものである。
図12に示すように、共通流路23に気泡が残留した領域(図12中、点線で囲んだ領域)では、個別流路3dへの液体の供給量が減少する。これにより、液体吐出量が低下し、比較的広い範囲で濃度が薄くなった吐出ムラとして現れる。
なお、気泡が存在すると吐出状態が影響を受けるのは、吐出そのものが、吐出時に発生する圧力と、それに対応した液室3a付近の液体、バリア層3、気泡の存在で決まる反作用が影響を及ぼすためと考えられる。
また、気泡は、個別流路3dの入口付近や個別流路3d内に入り込む場合がある。図13は、個別流路3dの入口に気泡が残留した状態を写真撮影した結果を示す図である。図13では、図12と同様に、ノズルシート17を透明体から形成している。
このような場合には、たとえ気泡が小さくても、狭い空間内に気泡が存在するので影響が大きい。すなわち、図12の場合よりも吐出量が減少する。また、気泡が入り込んだ個別流路3dに対応するノズル18からの吐出量のみが減少するので、スジとなって目立つようになる。
以上のような気泡が一旦発生すると、吐出が繰り返されても、気泡は、共通流路23や個別流路3dに張り付くか、個別流路3d〜共通流路23間を往復移動するだけで簡単には消滅しない。また、気泡の間をくぐり抜けるように液室3a内には液体が供給されるので、吐出特性が不十分な状態が固定的に残ることが多い。
なお、吐出動作を停止し、長時間放置して液体の温度を低下させたときは気泡が消滅することが確認されているので、この場合の気泡は、液体中や共通流路23等の壁面に存在するわずかな気体が熱膨張してできたものであることがわかる。
一方、気泡で覆われる部分は、気体であるので熱伝導率が悪く、液体による冷却が進まないので発熱部分の熱が溜まりやすい。その結果として、気泡が拡大してしまうという問題がある。
また、発熱素子12とノズル18との中心がずれている場合に特に気泡が発生しやすい傾向があることから、発熱素子12上で生成された気泡が有効に吐出に用いられずに残るものとも考えられる。
さらに、気泡は、液室3a内やノズル18内に入り込む場合もある。図14は、ノズル18から気体が液室3a内に入り込んだ状態を写真撮影した結果を示す図である。
図14では、共通流路23内にフィルター(図12とは異なり、三角柱状の柱を配列したもの)が設けられており、合体成長した気泡がフィルターの柱間を塞いでしまい、液体が液室3a側に移動できない状態となったものである。
共通流路23から液室3a側への液体の移動が気泡によって塞がれると、ノズル18のメニスカスのバランスが破壊されやすくなる。このような状態において、隣のノズル18からの衝撃波が引き金となって、ノズル18から気体が液室3a内に進入してしまう。すなわち、内部の液体の圧力は、大気圧より低く設定されているので、メニスカスの平衡状態が破壊されると、液体は共通流路23側に後退し、吐出ができなくなってしまう。
さらにまた、第3に、吐出時の衝撃波によって、特に気泡の存在と相まって、吐出ムラを起こすという問題がある。なお、サーマル方式では、吐出時の圧力変化はピエゾ方式と比較してもかなり大きなものである。
吐出衝撃が引き起こす問題としては、以下の2つが挙げられる。
1つ目は、衝撃波が隣接する液室3aからの気泡の引き込みの引き金になってしまう。なお、この問題を避けるためには、フィルターの柱間の間隔を大きく取ることが考えられるが、そのようにした場合には、フィルターを通過するゴミやホコリが大きくなってしまい、個別流路3dに大きなゴミやホコリが入りやすくなってしまう。
また、2つ目は、衝撃波が近隣のノズル18に伝搬し、メニスカスが振動して吐出ムラを起こすという問題がある。そして、気泡の発生や残留気泡が存在すると、衝撃波と気泡とがかち合い、気泡の引き込み等が生じやすくなり、吐出ムラも出現しやすくなる。
ところで、ドットを重ね合わせて画像を形成していくこと(重ね書き)が可能なシリアル方式の場合には、吐出ムラを生じさせるノズルが1〜2個程度存在したとしても、上記重ね書きによって、吐出ムラを目立たないように修復することができる。これに対し、1回の液滴の吐出で画像形成を完結し、原則として重ね書きができないライン方式の場合には、吐出ムラの存在は致命傷となる。
なお、本件発明者らは、ゴミやホコリ等による流路障害が生じにくくするとともに、気泡による影響をできる限り少なくして、吐出ムラのほとんどない流路構造を、未開示の先願である特願2004−056006により既に提案している。
しかし、その後さらに検討を重ねたところ、実用上、以下の問題が存在することが明らかとなった。
上記技術では、吐出速度がそれまでの吐出速度よりやや低下する(10m/s程度であったものが、7〜8m/s程度となる)ので、吐出速度が低下した分だけ、吐出時の液体の切れが不十分となる。
一方、本件発明者らは、特開2004−1364号公報に開示された、液滴の偏向吐出に関する技術を開発したが、このような偏向吐出を行ったときは、速度低下がより顕著となる。これは、1つの液室内に複数の発熱素子を設け、その複数の発熱素子が時間差を持って気泡を発生させるので、1つの発熱素子上だけで気泡を発生させる一般的な方式のものよりは吐出圧力が低くなるためである。
このような吐出速度の低下が生じると、吐出ムラではないが、印画結果に濃度ムラが生じてしまうおそれがあるという問題がある。
また、吐出速度が低下すると、オリフィス周囲の濡れ状態によっては、残留する飛沫の表面張力に引っ張られて、ノズルシート上に残留する分が増加してしまう。
特に、ラインヘッドの場合には、シリアルヘッドと比較すると、吐出面のクリーニングが行われずに連続して印画される時間が長く、その印画量も多いことから、ノズル表面、特にオリフィス周辺に残留する液体量が増加し、新たに吐出される液滴と干渉してしまう。
したがって、本発明が解決しようとする課題は、上記未開示の先願技術(特願2004−056006)を踏まえ、この技術に改良を重ねて、液滴の吐出速度が低下しないようにすることで、濃度ムラを改善することである。
本発明は、以下の解決手段によって、上述の課題を解決する。
本発明の1つである請求項1の発明は、半導体基板上に設けられ、一方向に沿って複数配列された発熱素子と、前記発熱素子上に位置するノズルが形成されたノズル層と、前記半導体基板と前記ノズル層との間に設けられたバリア層と、前記バリア層の一部によって形成されており、各前記発熱素子間に配置されるとともに、前記発熱素子の並び方向に垂直な方向に延在した隔壁と、前記バリア層の一部によって形成されており、N(Nは、2以上の整数)個の前記発熱素子と(N−1)個の前記隔壁に対して、これらの外側に前記隔壁に平行に一対設けられた側壁と、前記バリア層の一部によって形成されており、前記発熱素子の配列方向に沿って設けられた後壁とを備え、前記N個の前記発熱素子、前記(N−1)個の前記隔壁、一対の前記側壁、及び前記後壁を含むものを液体吐出ユニットとし、前記発熱素子に対して前記後壁と反対側に共通流路を設け、前記側壁の共通流路と反対側の端部と前記後壁とを連結し、前記隔壁の前記共通流路と反対側の端部を前記後壁から所定の間隔を隔てて配置し、1つの前記液体吐出ユニットにおいて、前記共通流路側及び前記後壁側から各前記発熱素子に液体が供給されるように形成したことを特徴とする液体吐出ヘッドである。
(作用)
上記発明においては、N個の発熱素子、(N−1)個の隔壁、両側の側壁、及び後壁を含む液体吐出ユニットを設け、少なくとも液体吐出ユニット内では、隔壁等によって発熱素子に両側から液体が流入可能となっている。また、本発明の構造では、両側から発熱素子に液体を供給することができるが、このような呼び水機能を持たせた場合には、発熱素子上(液室内)の圧力が低下しがちである。しかし、1つの液体吐出ユニットとして閉じた構造であるため、Nの値に適切な値を選択すれば、圧力低下をなくし、液体の吐出時の必要な圧力を維持することができる。
なお、ノズル層とバリア層とは、以下の実施形態では別体で設けられているが(バリア層13及びノズルシート17)、両者は一体で形成されていても良い。あるいは、半導体基板上にバリア層が一体形成されていても良い。
本発明によれば、両側(異なる2方向)から発熱素子上(液室内)に液体を供給することができる呼び水機能を持たせることができると同時に、低下しがちな液滴の吐出速度(圧力)を確保することで、濃度ムラの発生を少なくすることができる。これにより、吐出に伴う気泡発生確率を小さくすることができる。また、ノズルシートに残留する液体量を少なくすることができる。さらにまた、上述の偏向吐出の技術を用いたときであっても、良好な吐出動作を確保することができる。
以下、図面等を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
本発明における液体吐出装置は、実施形態ではインクジェットプリンタ(サーマル方式のカラーラインプリンタ。以下単にプリンタという。)であり、液体吐出ヘッドは、実施形態ではラインヘッド10である。
図1は、本実施形態のラインヘッド10を示す外観斜視図である。ラインヘッド10は、A4サイズの印画紙幅分だけヘッドチップ19をライン状に並べたヘッドチップ19列を、列状に4段並べ、各列ごとに、Y(黄色)、M(マゼンタ色)、C(青緑色)、及びK(黒)の4色カラーヘッドとしたものである。
また、ラインヘッド10は、ヘッドチップ19を千鳥状に複数個並設し、これらのヘッドチップ19の下部を、1枚のノズルシート17(ノズル層)に貼り合わせて形成される。ここで、ノズルシート17に形成された各ノズル18は、全てのヘッドチップ19の各発熱素子12(後述)に対応する位置に(具体的には、発熱素子12の中心軸線とノズル18の中心軸線とが一致するように)配置されている。なお、以下の実施形態では、各発熱素子12を1つの発熱素子からなる構成としているが、無論、これに限定されない。2つに分割された構成等のように、複数に分割した構成で、各発熱素子12を構成しても良い(上述の偏向吐出を行う場合)。
ヘッドフレーム16は、ノズルシート17を支持する支持部材であり、ノズルシート17に対応するサイズとなっている。また、各収容空間16aの長さは、A4サイズの横幅(約21cm)に合わせている。
4つのヘッドチップ19列は、1列ごとに、ヘッドフレーム16の収容空間16aの内部に配置されるようになっている。そして、ヘッドチップ19の背面であって、ヘッドフレーム16の収容空間16aには、1列ごとに、色の異なるインクを収容したインクタンクが取り付けられることで、各収容空間16aすなわち各ヘッドチップ19列にそれぞれ異なる色のインクが供給される。
図2は、1つのヘッドチップ19列を示す平面図である。なお、図2では、ヘッドチップ19とノズル18とを重ね合わせて図示している。
各ヘッドチップ19は、千鳥状に、すなわち隣接するヘッドチップ19が180度向きが異なるように配置されている。そして、図2に示すように、「N−1」番目、「N+1」番目に配置されたヘッドチップ19と、「N」番目及び「N+2」番目に配置されたヘッドチップ19間には、全てのヘッドチップ19にインクを供給するための共通流路23が形成されている。
また、図2に示すように、各ノズル18の相互の間隔は、千鳥状に隣接する部分を含め、全て等間隔となっている。
以上のラインヘッド10は、プリンタ本体内では固定され、固定されたラインヘッド10に対して、記録媒体(印画紙)の表面(インクの着弾面)がラインヘッド10のインクの吐出面(ノズルシート17の表面)と所定の間隙を維持しつつ、記録媒体がラインヘッド10に対して相対移動される。この相対移動時に、ヘッドチップ19の各ノズル18からインクが吐出されることにより、記録媒体上にドットが配列されることで、文字や画像等がカラー印画される。
次に、本実施形態のヘッドチップ19についてより詳細に説明する。ヘッドチップ19は、従来のヘッドチップ1aと比較して、半導体基板11上に発熱素子12が配列されている点は同じである。ただし、半導体基板11上に設けられたバリア層13の形状が異なる。バリア層13の形状が異なるのは、発熱素子12の周囲部の形状(後述する隔壁13a等)や、共通流路23から発熱素子12までの間の形状が異なるからである。
図3は、本発明の実施形態であって、ヘッドチップ19のバリア層13の形状を示す平面図である。
従来技術と同様に、半導体基板上には、発熱素子12が配列されている。そして、図2中、発熱素子12間には、隔壁13aが配置されている。隔壁13aは、バリア層13の一部によって形成されたものであり、発熱素子12の配列方向に垂直な方向に延在するように配置されている。さらに、隔壁13aは、それぞれ長手方向における両端部の厚みが中央部に比較して厚く形成されている。これにより、発熱素子12上の領域(なお、この領域を「液室」という。)における間隔W1と、両端部における間隔W2とは、
W1>W2
の関係となるように形成されている。
これにより、間隔W2の部分によって、ゴミ・ホコリ除去のフィルターとしての機能を持たせることができるとともに、液滴の吐出時の内部(液室)圧力を高くすることができる。
また、N個の発熱素子12、及び(N−1)個の隔壁13aの両側に、(一対の)側壁13bが設けられている。図3の例では、N=2(2個の発熱素子12、及びこれら2個の発熱素子12間に配置された1個の隔壁13a)である。側壁13bは、バリア層13の一部によって形成され、隔壁13aと略平行に配置されるとともに、共通流路23側の形状は、隔壁13aとほぼ同一であり、図3の例では、側壁13bと隔壁13aとの共通流路23側端までの距離がほぼ同一に形成されている。また、側壁13bと隔壁13aとで、共通流路23側から発熱素子12に向かう流路を形成している。
さらにまた、共通流路23と反対側には、バリア層13の一部によって後壁13cが形成されている。この後壁13cは、発熱素子12の配列方向に沿って形成されたものである。
この場合に、隔壁13aと後壁13cとは、間隔xだけ隔てて配置されている。これにより、後壁13c側に、後方共通流路24を形成し、隔壁13aによって隔てられた2つの発熱素子12上では、この後方共通流路24によって液体が移動可能となっている。
また、側壁13bと後壁13cとは、(図3の例では)連結されている。これにより、側壁13bの外側に配置されている発熱素子12(図3中、左端又は右端の発熱素子12)と、側壁13bの内側に配置された2つの発熱素子12とは、後方共通流路24側では、液体の移動ができないように形成されている。
以上より、外側が側壁13bによって囲まれた内部でのみ、後壁13c側の後方共通流路24で液体の移動が可能となる。図3の実施形態では、2つの発熱素子12(液室)間で液体が移動できるが、一対の側壁13b内の発熱素子12の数が増加すれば、それだけ、それらの発熱素子12上で液体の移動ができるようになる。
なお、後壁13cと側壁13bとが連結されていれば、側壁13bの後壁13c側端と後壁13cとの間の間隔をyとしたとき、
y=0
となる。
しかし、本発明では、間隔yは、間隔xより短ければ良く、間隔yが0より大きい、すなわち側壁13bの後壁13c側端と後壁13cとの間に隙間が形成されていても良い。
よって、
0≦y<x
であれば良い。
このように形成すれば、少なくとも、隔壁13aのみで隔てられた発熱素子12間では、後壁13c側の後方共通流路24を介して液体が移動することができる。また、側壁13bと後壁13cとの間に隙間があっても、その隙間を通じて隣の発熱素子12にまで液体が移動するためには、かなりの抵抗を伴うこととなる。
ここで、上述のN個の発熱素子12、(N−1)個の隔壁13a、一対の側壁13b、及び後壁13cを含む部分を、「液体吐出ユニット」と称する。そして、本実施形態では、半導体基板上にこの液体吐出ユニットが並設されている。
図4は、本発明の他の実施形態であって、ヘッドチップ19のバリア層13の形状を示す平面図である。
図4の実施形態では、N=3である。すなわち、3個の発熱素子12と、2個の隔壁13aと、その両側に設けられた一つの側壁13bと、後壁13cとによって、液体吐出ユニットを構成している。また、図4の実施形態では、図3の実施形態のように、隔壁13aや側壁13bの先端部が太く形成されていない。このように形成した場合には、隔壁13aや側壁13bの先端にフィルターの機能を持たせることはできないが、共通流路23側にフィルター等が別個に設けられていれば、特に問題はない。
図4の実施形態のように形成すれば、1つの液体吐出ユニット内で、3個の発熱素子12上を、後方共通流路24側から液体が移動できるようになる。ただし、さらにそれより外側の発熱素子12上へは、側壁13bがあるために液体の移動ができない。
なお、図4に示すように、液体吐出ユニットは、半導体基板上に複数並設されるが、隣接する液体吐出ユニット間で、発熱素子12のピッチ(配列ピッチ)Pが同一となるように形成されている。なお、隣接する液体吐出ユニット間では、各液体吐出ユニットごとに、独立した一対の側壁13bが設けられているのではなく、隣接する液体吐出ユニット間では、1つの側壁13bは、兼用されることとなる。そして、1つの液体吐出ユニットと、その隣の液体吐出ユニットとは、一体化して連続で形成される。
また、図4においては、N=3としたが、図3に示したようにN=2であっても良い。すなわち、N≧2であれば良い。
一方、Nの値が多すぎると、1つの液体吐出ユニットでの開口部分が多くなってしまい、液滴の吐出速度(吐出圧力)の低下、ひいては吐出ムラを招く。実験結果から、N≦8までが、良好な結果となることがわかった。
よって、
2≦N≦8
となる。
図5は、本発明のさらに他の実施形態であって、ヘッドチップ19のバリア層13の形状を示す平面図である。
この実施形態は、N=4である。また、この実施形態では、第1に、共通流路23側に、フィルター25が設けられている。フィルター25は、複数の柱25aを等ピッチで配列したものである。また、柱25a間の隙間によってフィルター25がその機能を果たすものとなるが、この柱25a間の間隔は、隔壁13a間、又は隔壁13aと側壁13bとの間の間隔よりも狭くなるように形成されている。
さらに、側壁13bの共通流路23側端は、隔壁13aの共通流路23側端より、発熱素子12から遠ざかる側に位置している(いいかえれば、共通流路23側に延在している)。そして、側壁13bの共通流路23側端は、フィルター25の柱25aに連結されている。この場合には、側壁13bの延長線上に必ず柱25aが位置するように、柱25aのピッチを設定すれば良い。
なお、図5の実施形態では、一対の側壁13bにフィルター25の柱25aが連結されているとともに、中央部に1つの柱25aが配置されている。側壁13bに連結している柱25aは、隣接する液体吐出ユニットの側壁13bの柱25aでもあるので、1つの液体吐出ユニットにおいて、1つの側壁13bに連結している柱25aの数を0.5と数えると、1つの液体吐出ユニット内の柱25aの数は、2(なぜなら、0.5+1+0.5)となる。すなわち、図5の実施形態では、発熱素子12の数(N)が4、隔壁13aの数が3、及び柱25aの数が2の場合である。
図5の実施形態のように、フィルター25の柱25aと側壁13bとを連結させれば、フィルター25の役割と同時に、液体吐出ユニット、特にバリア層13の強度強化を図ることができる。
なお、フィルター25の柱25aは、必ずしもこのように側壁13bと連結させる必要はなく、大きさも任意である。ただし、柱25a間の隙間は、隔壁13a間、又は隔壁13aと側壁13bとの間の隙間より狭いことが必要である。さらにまた、図5の実施形態では、柱25aは、断面が略長方形状の角柱としたが、これに限らず、種々の形状を用いることができる。
さらに、フィルター25は、設けた方が好ましいが、必ずしも設ける必要はなく、例えば図3で示したように、隔壁13aや側壁13bについて、共通流路23側端の厚みを厚く形成することで、発熱素子12(液室)への入口を狭く形成することで足りる。
ただし、フィルター25を設けることで、ゴミやホコリの侵入を防止するだけでなく、ヘッドチップ19をノズルシート17に接合するときの圧力によって隔壁13a(液室)がつぶされないようにするという役割も持たせることができる。
以上のような、図3〜図5で示した構造は、半導体基板上に設けられる。図6は、半導体基板11上に液体吐出ユニットを並設したヘッドチップ19を示す平面図である。図6では、1つのヘッドチップ19を示している(以下の図7及び図8も同様である)。なお、このヘッドチップ19は、図2で示したものと同一である。
図6において、半導体基板11の1辺の外縁部に、液体吐出ユニット(単位ユニット)を並設し、ユニット列を設けている。また、図中、液体供給側に、共通流路23が設けられ、図中、矢印方向から液体が各液体吐出ユニットに供給される。
図7は、ヘッドチップ19の他の実施形態を示す平面図である。図7の実施形態では、半導体基板11上において、対向する2辺の外縁部に、それぞれ液体吐出ユニットを並設し、ユニット列を設けた例を示している。図7の実施形態では、1辺の外縁部に並設された液体吐出ユニットと、他の1辺の外縁部に並設された液体吐出ユニットとは、互いに背を向け合っている。すなわち、半導体基板11上において、中央部が、互いに後壁13c側となっている。そして、図7に示すように、図中、左側及び右側に液体供給側が設けられ、これらの液体供給側にそれぞれ共通流路23が設けられ、図中、矢印方向から液体が各液体吐出ユニットに供給される。
図8は、ヘッドチップ19のさらに他の実施形態を示す平面図である。
図8において、半導体基板11には、裏面側から表面側に貫通する液体供給孔(長穴)11aが形成されている。そして、この液体供給孔11aは、インクタンク等(図示せず)と連通している。そして、この液体供給孔11aに沿って液体吐出ユニットを並設し、ユニット列を設けるとともに、液体供給孔11aの両側にユニット列が対向して配置されている。
この場合に、液体供給孔11a側が共通流路23側となるので、液体供給孔11aの両側に配置された液体吐出ユニットは、互いに対向している。
以上のように、半導体基板11上に液体吐出ユニットを設ける例としては、図6〜図8の形態や、それ以外の種々の形態が考えられるが、いずれの形態であっても良い。
図9は、実際に製作したヘッドチップ19のマスク図を示す平面図である。図9において、白線は、半導体基板11上に配置されるバリア層13以外の結線部分等である。このヘッドチップ19では、液滴の偏向吐出を行うため、発熱素子12は、配列方向に2分割されたものが用いられる。
また、発熱素子12は、一方向に一定のピッチで配列されているものの、全ての発熱素子12が一列(一直線上)には並ばず、隣り合う発熱素子12の中心は、配列ピッチ方向に垂直な方向において、所定間隔(0より大きい実数)だけずれて配置されている。なお、この技術は、本件発明者らによって、既に提案されている技術である(特願2003−383232)。
これにより、隣り合うノズル18の中心間距離は、発熱素子12の配列ピッチより大きい値となるので、液滴の吐出に伴う圧力変動によるノズル18及びその周辺領域の変形量が少なくなり、液滴の吐出量、及び吐出方向を安定させることができる。
また、図9では、図3の実施形態と同様に、N=2(1つの液体吐出ユニットにおいて、2つの発熱素子12及び1つの隔壁13aが設けられたもの)である。さらにまた、隔壁13a及び側壁13bは、共通流路23側の一部の厚みが厚く形成されている。これにより、フィルターとしの機能を持たせている。それ以外は、図3の実施形態と同様である。
本実施形態のラインヘッドを示す外観斜視図である。 1つのヘッドチップ列を示す平面図である。 本発明の実施形態であって、ヘッドチップのバリア層の形状を示す平面図である。 本発明の他の実施形態であって、ヘッドチップのバリア層の形状を示す平面図である。 本発明のさらに他の実施形態であって、ヘッドチップのバリア層の形状を示す平面図である。 ヘッドチップの実施形態を示す平面図である。 ヘッドチップの他の実施形態を示す平面図である。 ヘッドチップのさらに他の実施形態を示す平面図である。 実際に製作したヘッドチップのマスク図を示す平面図である。 従来の液体吐出ヘッドを示す外観斜視図である。 図10のヘッドの流路構造を示す断面図である。 共通流路内に気泡が残留した状態を写真撮影した結果を示す図である。 個別流路の入口に気泡が残留した状態を写真撮影した結果を示す図である。 ノズルから気体が液室内に入り込んだ状態を写真撮影した結果を示す図である。
符号の説明
10 ラインヘッド(液体吐出ヘッド)
11 半導体基板
12 発熱素子
13 バリア層
13a 隔壁
13b 側壁
13c 後壁
17 ノズルシート(ノズル層)
18 ノズル
19 ヘッドチップ
23 共通流路
24 後方共通流路
25 フィルター
25a 柱
x 隔壁13aと後壁13cとの間隔
y 側壁13bと後壁13cとの間隔
W1 発熱素子12上の領域(液室)における隔壁13a間の間隔
W2 隔壁13aの長手方向における両端部の隔壁13a間の間隔

Claims (12)

  1. 半導体基板上に設けられ、一方向に沿って複数配列された発熱素子と、
    前記発熱素子上に位置するノズルが形成されたノズル層と、
    前記半導体基板と前記ノズル層との間に設けられたバリア層と、
    前記バリア層の一部によって形成されており、各前記発熱素子間に配置されるとともに、前記発熱素子の並び方向に垂直な方向に延在した隔壁と、
    前記バリア層の一部によって形成されており、N(Nは、2以上の整数)個の前記発熱素子と(N−1)個の前記隔壁に対して、これらの外側に前記隔壁に平行に一対設けられた側壁と、
    前記バリア層の一部によって形成されており、前記発熱素子の配列方向に沿って設けられた後壁と
    を備え、
    前記N個の前記発熱素子、前記(N−1)個の前記隔壁、一対の前記側壁、及び前記後壁を含むものを液体吐出ユニットとし、
    前記発熱素子に対して前記後壁と反対側に共通流路を設け、前記側壁の共通流路と反対側の端部と前記後壁とを連結し、前記隔壁の前記共通流路と反対側の端部を前記後壁から所定の間隔を隔てて配置し、
    1つの前記液体吐出ユニットにおいて、前記共通流路側及び前記後壁側から各前記発熱素子に液体が供給されるように形成した
    ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
  2. 請求項1に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
    2≦N≦8
    である
    ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
  3. 請求項1に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
    前記発熱素子の領域上での前記隔壁間及び前記隔壁と前記側壁とでなす間隔W1と、前記共通流路側端での前記隔壁間及び前記隔壁と前記側壁とでなす間隔W2とは、
    W2<W1
    である
    ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
  4. 請求項1に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
    前記隔壁の前記共通流路側端に対して、前記側壁の前記共通流路側端の方が、前記発熱素子から遠ざかる側に位置している
    ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
  5. 請求項1に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
    前記共通流路には、前記バリア層の一部によって形成された複数の柱からなるフィルターを備え、
    前記フィルターの前記柱は、前記発熱素子の配列ピッチと異なるピッチで配置され、
    前記隔壁の前記共通流路側端に対して、前記側壁の前記共通流路側端の方が、前記発熱素子から遠ざかる側に位置しており、
    前記側壁の前記共通流路側端と、前記フィルターの前記柱とが連結している
    ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
  6. 請求項1に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
    1つの前記半導体基板上に、複数の前記液体吐出ユニットを設けるとともに、複数の前記液体吐出ユニットの全ての前記ノズルを一定のピッチで配置した
    ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
  7. 請求項6に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
    複数の前記液体吐出ユニットは、前記半導体基板の1辺の外縁部に配置されている
    ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
  8. 請求項6に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
    複数の前記液体吐出ユニットは、前記半導体基板の対向する2辺の外縁部にそれぞれ配置されている
    ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
  9. 請求項6に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
    前記半導体基板には、裏面側から表面側に貫通する長穴が形成されており、
    前記長穴に沿って、その両側に、複数の前記液体吐出ユニットが対向して配置されている
    ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
  10. 請求項1に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
    前記発熱素子の配列方向に沿って、複数の前記半導体基板をライン状に配置し、各前記半導体基板の前記共通流路を前記半導体基板に配置方向に沿って設けることにより、ラインヘッドを形成した
    ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
  11. 請求項10に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
    複数の前記半導体基板をライン状に配置したものを、列状に複数並べ、
    1つの列の複数の前記半導体基板と、他の列の複数の前記半導体基板とに対し、異なる特性の液体を供給するようにした
    ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
  12. 半導体基板上に設けられ、一方向に沿って複数配列された発熱素子と、
    前記発熱素子上に位置するノズルが形成されたノズル層と、
    前記半導体基板と前記ノズル層との間に設けられたバリア層と、
    前記バリア層の一部によって形成されており、各前記発熱素子間に配置されるとともに、前記発熱素子の並び方向に垂直な方向に延在した隔壁と、
    前記バリア層の一部によって形成されており、N(Nは、2以上の整数)個の前記発熱素子と(N−1)個の前記隔壁に対して、これらの外側に前記隔壁に平行に一対設けられた側壁と、
    前記バリア層の一部によって形成されており、前記発熱素子の配列方向に沿って設けられた後壁と
    を備え、
    前記N個の前記発熱素子、前記(N−1)個の前記隔壁、一対の前記側壁、及び前記後壁を含むものを液体吐出ユニットとし、前記発熱素子に対して前記後壁と反対側に共通流路を設け、前記側壁の共通流路と反対側の端部と前記後壁とを連結し、前記隔壁の前記共通流路と反対側の端部を前記後壁から所定の間隔を隔てて配置し、1つの前記液体吐出ユニットにおいて、前記共通流路側及び前記後壁側から各前記発熱素子に液体が供給されるように形成した液体吐出ヘッドを備える
    ことを特徴とする液体吐出装置。
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