JP4128231B2 - 超軽量コンクリート組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、主に建築および土木用部材として好適に利用できる、高強度のセメント系の超軽量コンクリート組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、セメント系のコンクリート製品の軽量化をはかるため、コンクリートにパーライト、フヨーライト(フヨーライト工業製)、シラスバルーン、フライアッシュバルーン、ガラスビーズなどの無機質軽量発泡材や、発泡ポリスチレン、塩化ビニル、スチレンビーズなどの合成樹脂発泡体などを軽量骨材として混入することが種々行われている。
また、コンクリートに気泡剤や発泡剤などを用いて気泡を混入させることも行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような軽量コンクリートにおいては、比重を小さくすればするほど強度低下が著しくなる問題がある。そこで、セメントに高性能減水剤などを用いて水セメント比を極力小さくさせたり、シリカヒュームや硫酸カルシウムを成分とする混和材などを混入することや、オートクレーブ養生などの高温高圧蒸気養生を行うことなどが種々行われている。しかしながら、このような方策を行っても、軽量コンクリートの比重を0.8〜1.2程度まで小さくすると、圧縮強度は200kgf/cm2 程度以下にまでに小さくなってしまう。
【0004】
一般に、建築および土木用部材として好適に利用できるセメント系の軽量コンクリートを得る場合は、単に軽量であるだけではなく強度的にも耐久力のあるものが要求されるため、強度の低下をできるだけ軽減し、必要な強度を維持しつつできるだけ軽量化しようとすることが要求される。しかしながら上記したように、従来の方法では比重を1.0 前後まで小さくし、かつ圧縮強度を300kgf/cm2 程度以上という条件を満足するものは得られなかった。
【0005】
また、従来より、軽量コンクリートの比重を小さくする目的で軽量骨材の比重を小さくすることが行われており、多孔質黒雲母流紋岩微粉末を造粒し焼成してなる超軽量骨材と水とセメントとを調合してなる超軽量コンクリート(特開昭62−235277)のように、超軽量骨材をコンクリート骨材として使用している。
しかし、この超軽量骨材は、1.2mm程度以下の粒度のものが製造上の面からかなり不足しがちである。このため、このような超軽量骨材を使用して比重が1.0程度の超軽量コンクリートを製造する場合、比重の重い天然の細骨材を使用できないので、1.2mm以下の粒度の部分が不足して、骨材の浮き上がりによる材料分離が発生しやすくなり、コンクリートの成形やコテ仕上げ性などに問題が生じる。
また、この問題を解消する目的で、1.2mm以下のパーライトやフヨーライト、シラスバルーンなどの無機質軽量発泡材や各種の有機質軽量発泡材を用いることも行われているが、これらの軽量発泡材の使用は、それ自体の強度が超軽量骨材より小さいため、コンクリートの圧縮強度が低下してしまうという問題が発生する。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み成されたもので、オートクレーブ養生が不要で、低比重にもかかわらず従来に比し一段と強度に優れ、さらに骨材の浮き上がりによる材料分離が発生せず、コテ仕上げ性が良好な骨材添加系の超軽量コンクリート組成物を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1の超軽量コンクリート組成物は、セメントと、多孔質黒雲母流紋岩微粉末を造粒し焼成してなる粒度0.6〜15mmの超軽量骨材と、粒度350μm以下の完全閉鎖型中空球体のセラミックス質軽量発泡材とを主成分として、水と混練してなるものである。本発明の請求項2の超軽量コンクリート組成物は、上記発明において、多孔質黒雲母流紋岩微粉末を造粒し焼成してなる超軽量骨材の絶乾比重が0.5〜1.2のものである。本発明の請求項3の超軽量コンクリート組成物は、上記発明において、完全密閉型中空球体のセラミック質軽量発泡材の絶乾比重が0.6〜0.9のものである。
【0008】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明において、セメントは、普通、早強、超早強、中庸熱などの各種ポルトランドセメントやそれらにシリカ、高炉スラグおよびフライアッシュが混合された各種混合セメントなどを用いることができる。
【0009】
本発明において、他に添加する混和材料としては、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、シリカフューム、気泡剤、発泡剤、膨張材など一般に用いられているものを、目的にあわせて、かつ本発明の利点を損なわない範囲で使用することができる。
【0010】
本発明で使用する超軽量骨材は、コンクリートの軽量化と高強度化を目的に使用するものである。
上記超軽量骨材は、産地により抗火石と呼ばれる多孔質黒雲母流紋岩を粉砕し、その微粉末を造粒し焼成してなるものであって、粒形が球に近く表面がなめらかであり、細骨材と粗骨材がある。これらは、従来の人工軽量骨材に比べ、絶乾比重が0.5〜1.20と著しく小さいにもかかわらず、吸水率が1〜8%ときわめて小さく、圧縮強度や圧潰強度などにおいても優れた性能を有するものである。
このものをコンクリート用骨材としてコンクリートに使用すると、従来のメサライト(日本メサライト工業製)のような膨張性頁岩を焼成して成る人工軽量骨材を用いたコンクリートでは得られない、超軽量でかつ強度の優れた品質を有するコンクリートを得ることができる。
【0011】
超軽量細骨材は、絶乾比重が0.5〜1.20程度、好ましくは0.7〜1.0程度で、粒度の範囲が0.6〜5mmのものを用いる。
また、超軽量粗骨材は、絶乾比重が0.5〜1.2程度、好ましくは0.6〜0.9程度で、粒度の範囲が5〜15mmのものを用いる。
細骨材、粗骨材ともに市販品には小野田セメント(株)商品名「エヌエルライト」、新島物産(株)商品名「ネオライト」などがある。
【0012】
超軽量細骨材の使用量は、セメント100重量部に対して、10〜100重量部が好ましく、より好ましくは30〜60重量部である。10重量部より少ないと、コンクリートが粗々しく、かつ分離しやすくなり、成形が困難になる。100重量部より多いと、コンクリートの流動性が悪くなり、成形が困難になる。
【0013】
超軽量粗骨材の使用量は、セメント100重量部に対して、40〜130重量部が好ましく、より好ましくは60〜90重量部である。40重量部より少ないと、コンクリート中のモルタル部分の容積が増加し、コンクリートの比重が大きくなる。130重量部より多いと、コンクリートが粗々しく、かつ分離しやすくなり成形が困難になる。
【0014】
本発明で使用する完全閉鎖型中空球体のセラミック質軽量発泡材は、コンクリートの軽量化と高強度化、および上記超軽量骨材の浮き上がりなどの材料分離の防止とコテ仕上げ性の向上など、コンクリートのワーカビリチーを良好にすることを目的に使用するものである。
上記セラミック質軽量発泡材は、形状が完全な球形の独立気泡体でポゾラン作用を有する骨材であり、従来の軽量フィラーに比べ特に強度が大きい。また低比重で吸水率も殆どなく、耐熱性にも優れている。
【0015】
セラミック質軽量発泡材は、化学成分は二酸化珪素(SiO2)が約60%、酸化アルミニュウム(Al2O3) が約40%、相組成としてはムライトが多い高強度、高耐熱性のフライアッシュバルーンで、小野田セメント(株)商品名「マイクロセルズ」の場合、オーストラリアを原産国とするフライアッシュバルーンである。このセラミック質軽量発泡材は、灰分が約30%の石炭を燃料としている石炭火力発電所で発生するフライアッシュから製造されるものであり、日本国内の石炭火力発電所では、灰分が約10%以下の石炭を燃料としているので、この種のセラミック質のフライアッシュバルーンは発生しない。
【0016】
セラミックス質軽量発泡材は、この種のフライアッシュを比重選鉱して製造されるものであり、小野田セメント(株)商品名「マイクロセルズ」の場合、粒度は概ね350μm 以下、外観は白色粉末状、40%生存する液圧での圧縮強度は700kgf/cm2 、かさ比重は概ね0.4、融点は1,600℃、熱伝導率は0.1W/m ℃、pHは6〜8、化学成分は二酸化珪素(SiO2)が60%弱、酸化アルミニュウム(Al2O3) が38%強で、この他に、酸化鉄(Fe2O3) が0.4%程度、石灰(CaO) が0.2%程度、酸化チタン(TiO2)が1%程度で、相組成はムライトが約55%、ガラスが約45%である。
【0017】
また、これとは別に、イギリス、アメリカおよび中国などを原産国とするフライアッシュバルーンもあるが、上記記載のセラミックス質軽量発泡材とは化学成分が異なり強度も小さい。たとえばイギリスを原産国とするフライアッシュバルーンは、外観は灰色粉末状、50%生存する液圧での圧縮強度は100〜120kgf/cm2 程度で、化学成分としては二酸化珪素(SiO2)、酸化アルミニュウム(Al2O3) の他に、酸化鉄(Fe2O3) が比較的に多く、酸化ナトリウム(Na2O)や酸化カリウム(Ka2O)も含まれており、強度も小さい。
【0018】
セラミックス質軽量発泡材は、絶乾比重が0.6〜0.9程度、好ましくは0.74〜0.78程度で、粒度が350μm 以下のものを用いる。市販品には、小野田セメント(株)商品名「マイクロセルズ」がある。
【0019】
セラミックス質軽量発泡材の使用量は、セメント100重量部に対して、5〜50重量部で、好ましくは10〜30重量部である。10重量部より少ないと、コンクリートが粗々しくなり、骨材の浮き上がりなどの材料分離が発生して成形が困難になる。50重量部より多いと、コンクリートの粘性が過大となり、流動性が悪化して成形が困難になる。
【0020】
【作用】
本発明で、上記超軽量骨材は、コンクリートに使用すると絶乾比重が著しく小さいため、コンクリートの比重を大幅に小さくすることができ、骨材自体の圧縮強度や圧潰強度が大きいため、コンクリートの強度を低下させない。また、超軽量骨材の内部気泡は、完全な独立気泡であり、吸水率がきわめて小さいので、プレウェッチングを行わなくてもコンクリートに使用できると共に、粒形が球に近く表面がなめらかなので、ボールベアリング作用により単位水量を大幅に低減することができる。したがって、超軽量骨材は、これらの優れた性能により、コンクリートに使用すると必要な強度と耐久性を維持しつつコンクリートを軽量化することができる。
【0021】
本発明で上記セラミック質軽量発泡材は、粗粒率が概ね0.35と小さく、低比重で吸水率も殆どなく、ポゾラン作用を有する骨材であり、骨材自体の強度も大きいため、コンクリートに超軽量骨材と併用して使用すると以下に示す作用により、コンクリートの軽量化と高強度化ならびにワーカビリチーの向上を更に促進させる相乗効果を得ることができる。
【0022】
また、超軽量細骨材は、粒度分布としては、1.2mm以上の部分が多く、1.2mm以下の粒度の小さい部分が不足しているので、セラミック質軽量発泡材を細骨材として使用すると、この不足した粒度の部分を補充することができる。
【0023】
セラミック質軽量発泡材は、コンクリートに使用すると、超軽量骨材に付着して骨材の表面を粗面化させると共に、骨材同志を接着させる作用と、350μm 以下の微粒分を多く含むことより、セメントペーストの粘着性を大きくさせる作用より、超軽量骨材の浮き上がりによる材料分離を防止することができる。また、セラミック質軽量発泡材は、形状がほぼ完全な球形で、そのボールベアリング効果により、コンクリートの流動性を向上させ、コテ仕上げ性を向上させるなど、コンクリートのワーカビリチーを良好にすることができる。
【0024】
以上の作用により、セラミック質軽量発泡材を超軽量骨材と併用して使用すると、骨材の浮き上がりによる材料分離が発生せず、流動性およびコテ仕上げ性などのワーカビリチーが良く、気泡を混入しなくてもコンクリートの気乾比重(気乾単位容積質量)0.8〜1.2程度、オートクレーブ養生不要で圧縮強度300kgf/cm2程度が得られる超軽量コンクリート組成物が得られる。
【0025】
【実施例】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに詳しく説明する。
Figure 0004128231
なお、後述する各表には、無機質軽量発泡材のフヨーライトおよびセラミック質軽量発泡材のマイクロセルズを細骨材として記載した。
【0026】
比較例1〜8
表1に示す配合で、軽量コンクリートを練り混ぜ、コンクリートのフレッシュ性状と硬化後の性状について試験した。フレッシュ性状では、スランプ、空気量、比重(単位容積質量)および材料分離(コンクリート中でバイブレータを10秒間振動した時の骨材の浮き上がりの有無)について試験した。硬化後の性状では、φ100×200mmの供試体を成型し、蒸気養生(50℃、3時間)を行い、圧縮強度と気乾比重(単位容積質量)について試験した。
【0027】
【表1】
Figure 0004128231
【0028】
結果を表1に示す。頁岩系の人工軽量骨材であるメサライトを使用した軽量コンクリート(比較例1、2)およびこれに気泡を100l/m3混入した軽量コンクリート(比較例3、4)は、気乾比重が1.41〜1.58、材令28日における比強度(圧縮強度/気乾比重)が156〜218kgf/cm2 であった。一方、超軽量骨材であるエヌエルライトを使用した軽量コンクリート(比較例5〜7)およびこれにフヨーライトを併用した軽量コンクリート(比較例8)は、気乾比重が1.18〜1.24、比強度が142〜238kgf/cm2 であり、メサライトを使用した軽量コンクリートと比べ、比強度は同程度、気乾比重は大幅に軽量化した。しかし、後者はコンクリート中でバイブレータを10秒間振動すると骨材の浮き上がりによる材料分離が発生し、コテ仕上げ性が悪化した。
【0029】
比較例9〜16
表2に示す配合としたこと以外は比較例1と同様に行った。
【0030】
【表2】
Figure 0004128231
【0031】
結果を表2に示す。エヌエルライトとフヨーライトを使用し、気泡を100l/m3混入した軽量コンクリート(比較例9)は、気乾比重が1.06、比強度が202kgf/cm2 であった。一方、メサライトとフヨーライトを使用した軽量コンクリート(比較例10)およびこれに気泡を100l/m3混入した軽量コンクリート(比較例11)は、気乾比重が1.33および1.24、比強度が203kgf/cm2 および176kgf/cm2 であったが、メサライトとマイクロセルズを併用して使用すると(比較例12〜15)、気乾比重が1.27〜1.44、比強度が200〜 229kgf/cm2 となり、気乾比重は同程度としながら、比強度が大きくなり、また骨材の浮き上がりによる材料分離は発生せず、コテ仕上げ性も良好となった。
一方、マイクロセルズだけを使用した軽量モルタル(比較例16)は、気乾比重が1.19、比強度が244kgf/cm2 であった。
【0032】
実施例1〜3
表3に示す配合としたこと以外は比較例1と同様に行った。
【0033】
【表3】
Figure 0004128231
【0034】
結果を表3に示す。エヌエルライトとマイクロセルズを併用して使用した本発明の超軽量コンクリートは、気乾比重が1.00〜1.06、比強度が282〜307kgf/cm2 であり、メサライトを使用した従来の軽量コンクリートと比べ、気乾比重が大幅に軽量化したにもかかわらず、比強度も大幅に大きくなった。さらに、コンクリート中でバイブレータを10秒間振動しても骨材の浮き上がりによる材料分離は発生せず、コテ仕上げ性も良好であり、ワーカビリチーの良いコンクリートが得られた。
【0035】
図1に比較例1〜16と実施例1〜3のコンクリートの気乾比重と材令28日における圧縮強度との関係を示す。実施例のコンクリートは比較例のコンクリートと比べ、気乾比重が著しく小さいにもかかわらず圧縮強度は同等または同等以上である。
図2に比較例1〜16と実施例1〜3のコンクリートの気乾比重と材令28日における比強度(圧縮強度/気乾比重)との関係を示す。実施例のコンクリートは比較例のコンクリートと比べ、気乾比重が著しく小さいにもかかわらず比強度は大きい。
【0036】
【発明の効果】
上述したように、本発明によれば、コンクリートの気乾比重(気乾単位容積質量)を0.8〜1.2程度と小さくしても、骨材の浮き上がりによる材料分離が発生せず、流動性およびコテ仕上げ性などワーカビリチーが良く、高い圧縮強度たとえば300kgf/cm2 程度の超軽量、高強度のコンクリートが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】比較例と実施例のコンクリートの気乾比重と材令28日における圧縮強度との関係を示す図である。
【図2】比較例と実施例のコンクリートの気乾比重と材令28日における比強度との関係を示す図である。

Claims (3)

  1. セメントと、多孔質黒雲母流紋岩微粉末を造粒し焼成してなる粒度0.6〜15mmの超軽量骨材と、粒度350μm以下の完全閉鎖型中空球体のセラミックス質軽量発泡材とを主成分として、水と混練してなることを特徴とする超軽量コンクリート組成物。
  2. 上記多孔質黒雲母流紋岩微粉末を造粒し焼成してなる超軽量骨材の絶乾比重が0.5〜1.2であることを特徴とする請求項1に記載の超軽量コンクリート組成物。
  3. 上記完全閉鎖型中空球体のセラミックス質軽量発泡材の絶乾比重が0.6〜0.9であることを特徴とする請求項1または2に記載の超軽量コンクリート組成物。
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