JP4126110B2 - 経皮投薬素子 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気泳動現象を利用して薬剤イオンを皮下浸透させる経皮投薬素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
投薬方法として経口、注射、経粘膜及び経皮が実用化されている。血管内浸透の早さは注射や経粘膜が優れているが、持続性(血中濃度の維持)は劣る。経皮法は、持続性が優れているが、適用できる薬剤が極く限られている。経口は浸透性と持続性で両者の中間にあるといえる。製薬の容易性や安定性の点からほとんどの薬剤は注射か経口で投与され、経粘膜や経皮は限られた用途に用いられている。しかし人口の高齢化が進むに従って慢性疾患が急増しており、持続性に優れた投薬方法の開発がますます必要とされている。加えて日常生活の妨げとならないような患者負担の少ない投薬方法が必要とされ、経皮投薬法が注目されている。
【0003】
経皮投薬は皮膚に貼付した薬剤層から有効成分を皮下浸透されるもので、従来から消炎鎮痛剤で用いられてきた経緯がある。最近では狭心症用のニトログリセリンが貼付薬として実用化されている。
しかし、これら経皮投薬剤は全てパッシブタイプといわれる濃度勾配利用型投薬であり、皮膚の複雑な阻止機能が作用するため分子量の大きな(数百以上)薬剤は用いることができない。そこで強制的に皮膚バリアを突破する物理的、化学的方法(アクティブタイプ)が検討されている。その中で有望とされ、一部が試験的に実用化されている方法が電気泳動現象を利用した経皮投与法、イオントフォレシスである。
【0004】
イオントフォレシスは、一方の電極(活性電極)の下に配置、皮接したイオン性薬剤(被浸透薬剤)と空間的に分離して配置、皮接した他方の電極(不関電極)との間に電圧を印加し、その電界によってイオン性薬剤を加速して皮下浸透をせしめるものである。一般に、印加電圧が直流であるタイプは毛穴や汗腺を通して薬剤イオンが皮下浸透すると云われており、印加電圧がパルスであるタイプは細胞膜の瞬間的な電位変化を利用して生じた膜空隙からイオンを浸透させると云われている。後者を特にエレクトロポーションということもある。
【0005】
イオントフォレシス用電源はポータブルにするため電池を用いることが多い。しかし高い電圧を必要とする場合には配線電源が用いられる。活性電極と不関電極との間の外部回路に電源を接続すると、皮膚通電領域は電源の外部負荷の一部を構成することになる。生体皮膚の負荷抵抗値は常時変動しており、例えば発汗などで抵抗値が急落すると過大電流が流れて皮膚に焼損するという問題が指摘されている。
これに対して、関電極と不関電極を電子親和力の異なる材料で構成し皮膚を電解質の一部とみなして生体発電を惹起しつつイオントフォレシスを行う方法が提起されている(特願昭59−59244号、特願平1−150654号、特願平6−220193号、特願平8−310848号など)。この場合、皮膚通電領域は電源の内部負荷(内部損失因子)となり、仮に発汗などで両電極間が短絡すれば発電は自動的に停止するので安全である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
イオントフォレシス用電源として電極間の外部回路に既存電源を接続する方式は、高出力電源を利用できる反面、電源や電気回路を搭載するので高コストとなり、また過電流通電やPH変化で皮膚損傷を起こしやすい。さらに、医療用具と医薬品にまたがる分野で厚生省の認可が必要であり、実用化に対する障害となる。
【0007】
一方、生体発電を利用しつつイオントフォレシスを惹起する方法は、低コスト化や安全性、認可の問題で外部電源方式にまさる。特に、正極金属と負極半導体の組み合わせによる生体発電方式(特願平1−150654号、特願平6−220193号など)は、負極側皮接面からの正孔注入と電子流入阻止効果によって発電を安定に持続させ、PH変化を緩和することが可能であり、優位性は高い。しかし、イオントフォレシス用の被浸透薬剤として期待されている物質は、ペプタイドや蛋白質、ホルモンなど生体由来物質が多く、高分子であることが多い。この場合、薬剤を効果的に皮下浸透せしめるには高電界、高電流密度を必要とし、生体発電電池ではパワー不足である。
【0008】
本発明は、正孔注入と電子流入阻止効果という生体発電電池の特性を生かしつつ高出力化を可能としたイオントフォレシス用電源を用いた経皮投薬素子の提供を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明では、少なくとも表面が金属または半導体Aから成る導電性鉱物甲と、
被浸透薬剤を分散させた導電性基材層と、開口部を有する絶縁体Iと、絶縁体Iの非開口部領域に設けられた少なくとも表面が金属または半導体Bから成る導電性鉱物乙とをこの順序に積層し、さらに導電性鉱物甲の自由表面、即ち導電性基材層の非積層面に高出力化補助電池層を形成し、前記導電性鉱物乙と前記導電基材層とを同時に且つ空間的に分離した状態で皮接して用いる経皮投薬素子を開示する。
【0010】
前記した高出力化補助電池層には、2つのタイプがある。その1つは、前記導電性鉱物甲の自由表面上に装荷した絶縁体II上に互いに分離して設けられた1個以上のゲル状または固体の電解質領域と、この電解質領域の各々に互いに分離して接触させられ且つ互いに異なる電子親和力を持つ金属または半導体C及びDでそれぞれ表面を構成した一対の導電性鉱物丙及び丁と、前記した金属または半導体Aと少なくとも1個のCとを導電接続する導線と、前記したBと少なくとも1個のDとを導電接続する導線と、これらAまたはBと接続済のCまたはDを除き隣接する丙、丁のC、D間を直並列に接続する導線とより成る補助電池層である。
【0011】
また別の1つは、前記導電性鉱物甲の自由表面上に導電性鉱物丙/ゲル状または固体の電解質層/導電性鉱物丁をこの順序で積層した複合層を1組以上最下層の複合層における丙のCと前記甲のAとが導電接続する如く装荷し、前記導電性鉱物乙のBと前記複合層の最上層の導電性鉱物丁のDとを非皮接領域で導電接合した構造を有する補助電池層である。
【0012】
前記した金属または半導体A乃至Dの電子親和力をそれぞれXi(i=A〜D)で表すと、被浸透薬剤が陰イオンである場合にはXA>XB、XC且つXD>XB、XCであり、被浸透薬剤が陽イオンである場合にはXA<XB、XC且つXD<XB、XCであることが好ましい。金属または半導体AとBとが同じ電子親和力を有するか、或いはAとBとが同一物質であってもよい。また、AとB或いはBとCとが同一物質である場合も含まれる。
【0013】
導電性鉱物乙は、互いに電気的に絶縁された複数個のストライブ状領域として前記絶縁体I上に配置され、各ストライプ状領域は非皮接部位において、全て前記した金属または半導体Dに導電接続されていてもよい。
【0014】
金属または半導体BとDとを非皮接部位で導電接続する導線に、通電電流を継続してパルス化するための電子装置や駆動電源を接続した素子も本発明に含まれる。
【0015】
電極間相互の電子親和力の大きさを考慮した上で高出力化補助電池層を生体電池の外部回路に接続すると、生体電池の最大理論的起電力を与える金属または半導体AとBとの電子親和力差|XA−XB|を捕完してパワーアップすることが可能となる。
【0016】
図2は、本発明の原理を示す図である。生体層には、金属または半導体Bが接触し、Bは非皮接位置でDのひとつに導電接続されている。一方、Aは非皮接位置でCのひとつに導電接続されている。なお、金属または半導体Bの表面に接触抵抗を減少させるための導電性材料を塗布して皮接しても、この導電性材料層は生体皮膚の延長とみなしうる。
非浸透薬剤イオンが陰イオンである場合には、XA≧XD>XC≧XBなる電子親和力間の相互関係が満足されると、補助電池層がN個の互いに分離されたゲル状または固体電解質層を有し、且つ全ての電極物質C、Dが直列接続されているならば、生体電池を含む電池層の最大理論起電圧は
(XA−XC)+(N−1)(XD−XC)+(XD−XB)=(XA−XB)+N(XD−XC)に相当する値にパワーアップされる。また、N個の互いに分離されたゲル状または固体電解質に接触する各電極物質C、Dが全て並列に接続されているならば、最大起電圧は(XA−XB)+(XD−XC)に相当する値にすぎないが、最大起電流は(XA−XB)+N(XD−XC)に相当する値にパワーアップされることになる。
【0017】
一方、被浸透薬剤イオンが陽イオンであれば、XB≧XC>XD≧XAなる関係が満足されると、N個の補助電池層を全て直列接続した場合の最大理論起電圧は、(XB−XA)+N(XC−XD)に相当した値となる。
ところで、金属または半導体A及びBが同一の物質であるなどしてXA=XBである場合には、上式から明らかなように最大理論起電力は低下するが、N数や電子親和力差を考慮した材料の選択によって、電池パワーを所望の領域に設定することは可能である。
一方、金属または半導体A及びBをそれぞれ直接導電性基材及び皮膚に接触させず、それぞれ導電性素材A′及びB′を介して接触させた場合、生体電池の理論的起電力の源である電子親和力差は|XA−XB|ではなく、|(XA−XA′)−(XB−XB′)|で与えられる。導電性素材A′及びB′が同一素材であれば、XA′=XB′となるからこの場合も電子親和力差は実質的に|XA−XB|で与えられる。
【0018】
【発明の実施の形態】
(その1)図1は、実施の形態における経皮投薬素子の構造概略を示す斜め分解図である。図において、1は導電性鉱物甲、2は導電性基材層、3は絶縁体I、4は導電性鉱物乙、5は絶縁体II、6は固体の電解質、7は導電性鉱物丙、8は導電性鉱物丁、9及び10は導線、11は接着剤である。導電性鉱物甲1は、25×30mm2の厚さ35μmのステンレス板表面に金属Aとして3μm厚さの金をメッキしたものである。導電性基材層2は0.01NのKOHとヒトインシュリンを分散させた導電性の高分子ゲル層であり、甲1上に0.5mmの厚さに塗布されている。絶縁体I3は、矩形の2つの開口部を有する厚さ1mmの発泡ポリエチレン板から成る。また導電性鉱物乙4は、厚さ35μmのステンレス板表面に半導体BとしてSnO2膜を形成したものである。乙4は、ストライプ状をしており、前記開口部から離間して絶縁体I3上に配置されている。乙4の3本のストライブは絶縁体I上で導電接触している(図示されていない)。しかし各ストライプは絶縁体I上で導電接触させずに、別々の導線10で導電性鉱物丁8に接続してもよい。
【0019】
絶縁体II5は、接着剤11で導電性鉱物甲1の導電性基材層非搭載面に接着した厚み約40μmのテフロン(登録商標)シートである。その自由表面上には互いに分離された電解質6の領域が設けられている。電解質6は、プロトン導電体であるフッ化炭素系高分子(SPE)が層状に塗布されて用いられる。各電解質領域には、それぞれ互いに分離して導電性鉱物乙7及び丁8が1対ずつ導電接触配置されている。隣接する電解質領域の丙または丁は、導線12によって直並列に接続される。図示したのは直列の接続の場合である。導電性鉱物丙7は、厚さ35μmのステンレス板表面に半導体CとしてZnO膜を形成したものである。また導電性鉱物丁8は、厚さ35μmの銅フィルムDである。導線9、10、12は適当な金属線を用いることもできるが、甲または乙、或いは丙、丁の一部をそのまま用いることもできる。
【0020】
ストレプトゾシンを投与して、予め高血糖化したSD系雄性ラットを3匹一群とし、剪毛後剃毛した背部に図示した各構成要素を図の順序で積層した経皮投薬素子を絆創膏で固定し、60分、12分、180分、240分後のラット血中のグルコース濃度を測定した。
比較のために、導線9を切断し導線10を非皮接部位で甲1に接続する以外は、前記素子と全く同じ材料、寸法、構造の経皮投薬素子を作成し、高血糖化したSD系雄性ラットに装荷して血中のグルコース濃度を経時的に調べた。この比較例では、絶縁体II上に搭載されている補助電池層はイオントフォレシスに対して全く機能せず、導電性鉱物甲1、乙4及び導電性基材層2と皮膚から成る生体電池のみによってイオントフォレシスが惹起する。
【0021】
実験で得られた血糖値変化を、図3に示す。データは、インシュリン投与前の血中グルコース濃度で規格化されている。なお、図中直線(鎖線)で示したグルコース濃度(42%)は、ラットに1.0UI/kgのインシュリンを注射後60分経過時の血糖値を示し、これが注射投与におけるもっとも低い血糖値水準であった。即ち、インシュリンは次第に血中で分解または排除されるため、注射による1回の投与では、血糖値は最低水準まで低下後再び上昇していくのである。これに対して経皮投薬の場合は、吸収条件の変化がなければ基本的に、過渡状態を経て一定濃度水準を維持すると期待される。
【0022】
図3は経皮吸収によるインシュリンの浸透が血糖値低下をもたらしていることを示すが、実験範囲ではまだ過渡状態にあり、240分経過時点で一定濃度化の傾向(飽和点到達傾向)がみられることも示している。同時に図3は、実施の形態における補助電池がインシュリンの経皮浸透に大きな効果をもたらしていることを示している。因みに、皮接時導線10の一部を切断してその個所に電圧計を接続することにより測定した経皮浸透のバイアス電圧は、実施の形態の場合約2.4V、比較例の場合約0.3Vであった。補助電池による浸透加速効果によって、実施の形態の場合装荷後約2.5時間で注射による血糖値レベルにまで低下し、さらに装荷後3〜4時間経過時点で注射達成濃度の約1/2まで低下して飽和する傾向を示している。
【0023】
本実施の形態の場合、図1に示した3段直列接続の補助電池層を用いたが、通電電流値を増す必要がある場合には補助電池数を増加するか或いは並列接続すればよい。加速電圧の増減は補助電池数の増減以外に、電極構成材料の種類や組み合わせを変えることによっても達成できることは自明であろう。
【0024】
(その2)図4は、別の実施の形態における経皮投薬素子の構成概略を示す図であり、(A)は側面図、(B)は底面図である。図において、各符号は前実施の形態と同じ意味で用いられている。導電性鉱物甲1は厚さ50μmの銅フィルム、導電性基材層2は0.1%NaN3含有の硬質尿素クリームに2%のリン酸L−アスコルビルマグネシウムを分散させたものである。絶縁体I3は、厚さ2mmの発泡性ポリウレタンで、図示したように4つの開口部を有している。導電性鉱物乙4は、厚さ35μmの鉄フィルムにインジウム蒸着膜を形成して成る。固体の電解質6は、リチウムイオン導電体Li3Nである。導電性鉱物丙7は、厚さ35μmの鉄フィルムに酸化鉛層Cを形成して成る。また導電性鉱物丁8は、厚さ50μmの銀(Ag)フィルムDである。導線10は、導電性鉱物乙4と丁8の最外層を非皮接領域で接続する機能を持つが、この場合は乙4、即ちインジウム蒸着鉄フィルムの一部を延長して用いる。素子サイズは、約20×20mm2である。本実施例の場合、Ag/PbO電極から成る補助電池層が2段直列に生体電池に接続されることになる。
【0025】
HWY系ヘアレスラットの背部にこの経皮投薬素子を装荷し、時間経過によるラット血中のL−アスコルビン酸濃度の変化を調べた。ラットは3匹一群として装荷し、1、2、3、4の各時間経過後のデータを得た。
比較例として、図4の素子から補助電池層であるAg/Li3N/PbOを除去し、導線10を非皮接領域で導電性鉱物甲1である銅フィルムに直接接続する以外は本実施の形態と全く同じ材料、サイズ、構成の経皮投薬素子を作成し、本実施例同様HWY系ヘアレスラットの背部に装荷して血中のL−アスコルビン酸濃度変化を調べた。
【0026】
得られた結果を図5に示す。図から明らかなように、L−アスコルビン酸血中濃度は、実施例、比較例共に経時的に単調増大し、共にイオントフォレシス効果が認められた。即ち、比較例の素子の導線10を切断してラットに装荷した場合、4時間経過後の血中濃度は図5の比較例濃度の約1/4に過ぎなかった。また、図5は、実施例の補助電池効果が浸透速度を約2倍に加速していることを示している。因みに、導線10に電圧計を接続して装荷時に計測した起電力は、実施例の場合約1.1Vであり、比較例の場合約0.5Vであった。
【0027】
次に、図4の経皮投薬素子において、導電性鉱物乙4を厚さ50μmの銅フィルムに代える以外は全く同じ材料、サイズ及び構造の素子を作り、HWY系ヘアレスラットの背部に装荷した。この場合、生体電池は機能せず補助電池による起電力がイオントフォレーゼを惹起する。装荷して4時間経過後のラットの血中におけるL−アスコルビン酸濃度は、図5中に△印で示した。比較例に対して約10%高い値となっている。導線10に接続した電圧計で測定すると、この場合の起電力は約0.6Vであった。この経皮投薬素子の導電性鉱物乙(銅フィルム)の表面に導電性物質であるケラチンクリームを塗布してラット背部に装荷した場合には、装荷後4時間経過時における血中L−アスコルビン酸濃度は図5の▲印位置まで増加した。これは皮接抵抗値の減少によって電界加速効果が増大したことによると考えられる。
【0028】
以上述べた如く、イオン浸透効果はバイアス電圧にほぼ比例して増加するが、生体電池が機能しない場合は装荷4時間後のマウス皮膚の導電性鉱物乙4皮接部位に通電損傷がみられた。図5のデータ中の白マル、黒マルの場合に損傷がみられず、白三角、黒三角の場合に損傷がみられるのは、導電性鉱物乙4の皮接面に正孔注入作用があるか否かによると考えられる。即ち、導電性鉱物乙の皮接面がIn蒸着膜で形成されている場合には装荷中に表面酸化のため皮接面In23(n型半導体)が形成される。そしてn型半導体の皮接面にはショットキー障壁が形成され、皮接面からの電子流入を阻止すると同時に拡散電位によって、甲側に電子が流出することにより発生する少数キャリア正孔が皮膚へ注入される。この結果、導電性鉱物乙直下の皮膚では酸化反応が惹起し、生成物が生体電池正極側(導電性薬剤層直下領域)で生ずる還元反応の生成物と相互拡散することによって電荷中和するため皮内のアルカリ化が抑制されて皮膚損傷が抑制されると考えられる。これに対して生体電池が機能しない銅フィルムを導電性鉱物乙として用いた場合、乙内の通電キャリアは電子のみであり皮接面にショットキー障壁も形成されない。そこで補助電池層が機能して皮内通電が開始されると、導電性薬剤層直下領域の還元反応に加えて、銅フィルムに電子を供給するための還元反応が銅電極直下領域でも生成して皮内のアルカリ化が加速される。従って通電刺激によって容易に皮膚が損傷するものと考えられるのである。
【0029】
(その3)図4で示した経皮投薬素子において、導電性鉱物甲1を厚さ35μmのNi−Feフィルム上にZn20at%含有のMg合金を蒸着したもの、導電性基材層2を臭化バレタメート及びNaBr0.1%を分散させたケラチンクリーム、導電性鉱物乙4及び丙7を厚さ35μmのNi−Feフィルム上にAuメッキを施したもの、導電性鉱物丁8を厚さ35μmのNi−Feフィルム上にTiメッキを施したもの、導線10を金線とした経皮投薬素子を作成した。但し、Mg合金層は、導電性基材層2と接触すると急速に酸化して起電能が劣化するので、導電性基材層2との接触面はNiを蒸着した。また、導電性鉱物乙4の皮接面にもNiを蒸着した。この結果、導電性基材層2は導電性鉱物甲1のNi面に接触し、生体皮膚は導電性鉱物乙4のNi面に接触するが、電子の流入方向が互いに逆になるためNiの電力に及ぼす影響は相殺されてなくなる。
また、導線10には、断続周波数300Hz、デューテイ比1/3(通電時間1対休止時間2)で回路を継続するための電子スイッチ及びその駆動用電池を接続した。それ以外の材料、サイズ、構成は前実施例の場合と同じである。
【0030】
本実施例の経皮投薬素子をヌードマウスの背部に貼着して、バレタメートの血中濃度変化を経時的に調べた。ヌードマウスは一群3匹とし、装荷後1、2、3、4時間経過時点で血液をサンプリングして分析した。得られた結果を図6に示す。
なお、比較例として図4の素子から補助電池層、即ち電解質6、導電性鉱物丙7及び丁8の2段積層部分を除去し、電子スイッチとその電源を接続した導線10を導電性鉱物甲1及び乙4の金メッキ層間に接続した素子を作成し、実施例同様ヌードマウスに装荷してバレタメートの血中濃度変化を調べたデータも併せて示した。
実施例の場合導線10に電圧計を接続し、回路断続用電子スイッチとその電源を除去してヌードマウスに素子を装荷時測定した直流起電力は約2.9V、また比較例の場合は同様にして測定した直流起電力は約0.2Vであった。
【0031】
図6は、補助電池層の大きな起電力効果がイオントフォレシスによる薬剤の経皮浸透速度に大きな影響を与えていることを示している。更に本実施例の場合は4時間装荷後もヌードマウスの電極接触部に目立った皮膚損傷はみられなかった。
一方、導線10から回路断続用の電子スイッチ及びその駆動電源を除き直流通電した場合には、薬剤血中濃度は約30%上昇したが2時間以上経過したヌードマウスの皮膚の電極接触部には損傷がみられた。これは高起電力による通電刺激の影響と考えられる。本実施例の場合は生体電池負極側には半導体が用いられていないため、前実施例のように正孔注入によるアルカリ化抑制反応が期待できない。また、回路断続用の電子スイッチを除いたことによる通電効果(積分電流値3倍)から期待される程薬剤の浸透速度は高まっていない。これは、本実施例における300Hzの回路電流パルス化が末梢神経シナプスに長期増強効果をもたらし生体皮膚が生理活性化して薬剤の皮内取り込み効率を高めた結果によるものと考えられる。
【0032】
以上実施例を用いて本発明を詳しく説明したが、本発明が実施例の範囲にとどまることなく、特許請求の範囲で述べた技術範囲を全て含むものであることは云うまでもない。例えば、実施例では導電性鉱物乙の表面に配置された金属または半導体Bとしていくつかの例を述べたが、同様に導電性鉱物甲の表面に配置された導電性物質Aとして金属ではなく半導体を用いることもできる。また、半導体は実施例中述べた酸化物半導体だけでなく他の化合物半導体、例えばInSbやSiCなど、或いは単体半導体であるGe、GexSi1-xやダイアモンドなどを用いうることも自明である。更に本発明の経皮投薬素子は構造として甲、導電性基材層、絶縁体I、乙を積層したものに補助電池層を搭載しているが、積層構造では図1や図4に示したように導電性基材層と絶縁体Iが絶縁体Iの非開口部で重なっていなくてもよい。即ち、導電性基材層は、絶縁体Iの少なくとも開口部に充填されていれば機能を果たすことができるのである。
【0033】
本発明の補助電池層は、絶縁体上に形成された薄膜全固体構造をとりうるため印刷方式なども適用することができる。また、直接生体皮膚に接触することがないので、皮膚に化学的損傷を与えるなどの問題も発生しない。安価で軽量薄型であり、経皮投薬素子のディスポーザブル化を妨げるものではない。補助電池層は、長期保存に備える場合は、電極部位と電解質を分離しておき、使用時に積層することが望ましい。少なくとも、生体電池電極と補助電池層を接続する導線の一部は、保存時切断しておくことが望ましい。これによって自己放電による電池起電力の低下や薬剤イオンを分散した導電性基材の化学的変化(経時変化)を抑止することができる。
電極材料や補助電池層構成は、被浸透薬剤の性質を考慮した上で価格面から最適設計されることは云うまでもない。
【0034】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、任意の補助電池層組み合わせによって生体電池のパワー不足が補われ、高分子の薬剤を速やかに皮下浸透させることが可能となる。補助電池層は印刷技術を利用して形成できる程薄くフレキシブルかつ全固体構造であるため、経皮投薬素子自体が安価、ディスポーザブル可能という特性を保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の経皮投薬素子の構造概略を示す斜め分解図である。
【図2】本発明の原理を示すための図である。
【図3】実施例と比較例における経皮投薬データを示す図である。
【図4】別の実施例における経皮投薬素子の構造概略を示す図である。(A)は側面図、(B)は底面図である。
【図5】別の実施例と比較例における経皮投薬データを示す図である。
【図6】更に別の実施例と比較例における経皮投薬データを示す図である。
【符号の説明】
1 導電性鉱物甲
2 導電性基材層
3 絶縁体I
4 導電性鉱物乙
5 絶縁体II
6 電解質
7 導電性鉱物丙
8 導電性鉱物丁
9、10、12 導線
11 接着剤
A、B、C、D 金属または半導体

Claims (5)

  1. 少なくとも表面が金属または半導体Aから成る導電性鉱物甲と、この鉱物甲に積層されると共に、被浸透薬剤を分散させた導電性基材層と、該基材層が挿入される開口部とその周囲の非開口部とを有する絶縁体Iと、絶縁体Iの非開口部位に設けた少なくとも表面が金属または半導体Bから成る導電性鉱物乙とを有する経皮投薬素子において、導電性鉱物甲の自由表面である導電性基材層の非積層面側に補助電池層を形成し、当該補助電池層と前記導電性鉱物甲および前記導電性鉱物乙とを導電接続すると共に、絶縁体I上に設けられた前記導電性鉱物乙の少なくとも一部および前記導電性基材層を皮接面とする経皮投薬素子。
  2. 前記補助電池層が、前記導電性鉱物甲の自由表面である導電性基材層の非積層面に設けた絶縁体IIと、該絶縁体IIの導電性基材層と反対側に表面上に互いに空間的に分離して配置された1組以上のゲル状または固体状の電解質領域と、該電解質領域の絶縁体II側と反対側の電解質領域の表面上に空間的に分離して設けた異なる電子親和力を持つ金属または半導体C,Dで少なくとも表面を構成した1対の導電性鉱物丙、丁とから成る請求項1記載の経皮投薬素子。
  3. 前記導電性鉱物甲の導電性基材接触面及び前記導電性鉱物乙の皮接面が、それぞれ前記A及びBの表面に形成された導電性素材A’及びB’で構成された請求項1又は2に記載の経皮投薬素子。
  4. 前記導電性鉱物乙は、互いに電気的に絶縁された複数個のストライプ状領域として前記絶縁体I上に配置されており、各ストライプ状領域は全て前記Dに導電接続されている請求項2〜3のいずれかに記載の経皮投薬素子。
  5. 前記Bと前記Dとを導電接続する導線に、通電電流を継続してパルス化するための電子装置や駆動電源を接続した請求項2〜4のいずれかに記載の経皮投薬素子。
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