JP4123506B2 - 組織吸引採取装置 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明はヒト並びに動物の組織を吸引して採取する組織吸引採取装置に関し、さらに詳細には、体外受精ならびに顕微受精を行うために、ヒト並びに動物の体内の卵巣から卵子を吸引採取するために使用する組織吸引採取装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ヒトまたは動物の卵巣から卵子を採取するに当たって、一般的には、経膣用超音波プローブに組織採取針をセットして、超音波エコー下に膣から組織採取針を穿刺し、卵巣に組織採取針を到達させる。卵巣内に洗浄液を注入して、該卵巣中の卵胞を吸引器に接続された組織吸引ラインから吸引して卵子を採取する。組織採取針には、超音波を反射するエコーガイドが組織採取針の先端部に設けられている。このような組織採取針には、シングルニードルの超音波組織採取針を卵巣に穿刺し、シリンジで洗浄液を注入し、その後、別のシリンジで卵子を採取する操作を繰り返すものがある。あるいは、2つのルーメンを有するダブルルーメン組織採取針が開発され、術者が卵巣を穿刺して卵胞の卵子を確認し、補助者がシリンジにて洗浄液を注入しながら、吸引器を用いて同時に吸引を行うことが可能となった。このような2つのルーメンを有する組織採取針を用いた方法において、採卵時間および採卵率は向上することが可能となった。
【0003】
さらに、本発明者は既に、採卵ルートの内径を卵子が通過できる大きさに確保するとともに、洗浄ルートの流量を十分に確保できる採卵針およびこの採卵針を用いた洗浄吸引採卵装置を提案している(特開2001-190560号公報)。このような洗浄吸引採卵装置は、連続的に洗浄液の注入と組織の吸引が可能となるように、採卵針と該採卵針の基端部分で、それぞれの内針の内腔と液体連通するように接続された卵採取容器を備えた組織吸引ラインおよび洗浄液注入手段を備えた洗浄液注入ラインを含み、該組織吸引ラインと洗浄液注入ラインが流路切替手段を介して接続された閉鎖型の回路を有する構造としている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような洗浄吸引採卵装置は、連続的に洗浄液の注入を行えるが、患者の状況に合わせて洗浄液の注入速度を調整せねばならず、流量制御部の設定を変更する場合には、術中でも制御部分を取り替える必要があった。また、該洗浄吸引採卵装置を用いない場合には、一般的に、卵胞に二重管からなる組織採取針を穿刺した後、術者が洗浄液を予め充填したシリンジ複数本を洗浄液注入ラインのコネクターにつなぎ変えて注入する方法が行われている。これらの洗浄液注入器具をつなぎ変える操作は、接続部分が不潔となる可能性があった。
また、卵子の吸引は手術室(または分娩室)に備え付けられた吸引器にて吸引を行う。手術室では吸引器の設置個所に応じてジョイントチューブなどの延長器具を使用しなければならないことがしばしば発生する。このような延長器具を使用することにより吸引ラインが煩雑になることが多く、操作中にはチューブの折れキンクが発生するなどの問題が生じて、最終的には使用不可能になることもあった。
【0005】
上記事情に鑑み、洗浄液の注入操作の不潔操作を解消し、かつ、吸引ラインの煩雑さおよび吸引ラインのチューブの折れキンクを防止するために、種々検討したところ、本発明者は洗浄液注入ラインに除菌フィルターを設け、さらに、組織吸引ラインには螺旋状または蛇腹状に成形したチューブを設けて、伸縮自在とすることにより、上記課題が解決することを見出した。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は中空外針および該外針内に内挿された中空内管、該中空外針および該中空内管の基端部をそれぞれ固定する手段、洗浄液注入ライン接続部および組織吸引ライン接続部を有する分岐コネクターを備えた組織採取針と、該中空外針と該中空内管との空間部へ洗浄液を注入する除菌フィルターを設けた洗浄液注入ラインと、該中空内管から組織を吸引する組織吸引ラインとを有する組織吸引採取装置である。
上記組織吸引ラインは伸縮自在なチューブを含むチューブであって、組織採取容器および吸引器に接続されていることが好ましい。
【0007】
本発明における組織吸引採取装置とは、組織採取針と、洗浄液注入ラインと組織吸引ラインとからなる。組織採取針とは、先端に刃先が設けられた中空外針、好ましくは中空金属外針と、該外針に内装された中空内管と、該外針および該内管の基端部をそれぞれ固定する手段を備えたコネクターからなる。
中空外針とは、その外形は内部が連通する管状体であり、その先端部には刃先が設けられている。その刃先の形状は、通常、外径は0.5〜2.5mm、好ましくは1.4〜1.8mmであり、内径は0.3〜2.2mm、好ましくは1.0〜1.6mmであり、長さは通常、50〜450mm、好ましくは200〜400mmである。これらの外径、内径または長さはその使用目的に応じて、適宜選択される。中空外針の材料としては、金属、例えば、ステンレス、チタン、ニッケルチタン合金などが挙げられる。外針には超音波エコーを反射するエコーガイドがその先端に設けられていることが好ましい。
【0008】
本発明における内管とは、該外針に内装された中空内管である。内管と外針との長さは、使用前には前者が後者と同じまたはより短いことが必須である。該外針および該内管の基端部はそれぞれを固定する手段を備えた分岐コネクターに連結される。前記中空外針と前記中空内管との間に空隙が形成され、かつ、該空隙は外針基端部の分岐コネクターにより中空外針および中空内管の軸方向から側方に開放された洗浄液注入ラインおよび前記外針は面より内側に開口部を有し、かつ、外針針基の分岐コネクターの内部を通過する組織吸引ラインを形成する。
【0009】
前記中空の内管としては、種々の材料からなる管があるが、例えば、水分または温度の変化により伸長する材料からなるものがある。このような材料としては吸水性合成樹脂または形状記憶合金がある。吸水性樹脂としては、ポリウレタン、ナイロン、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)などの吸水性樹脂などが例示される。 また、形状記憶合金としては、Ni-Ti、Ni-Ti-Co、In-Tl、Fe-Mn、Fe-Ni-Ti-Coなどの合金が例示される。
これらの材料のうち、吸水性樹脂としては、具体的には、室温(約20℃)で湿度50%の環境から、体温(約36℃)で湿度100%の環境の変化において、0.1〜30%の形状変化をもたらす樹脂が好ましい。ここで、このような温度および湿度の変化において、材料の含水率は、0.5%〜40%へ変化しているものと推定される。また、別な材料としては、37℃付近にAF点(オーステナイト逆終了変態点)を設定された形状記憶合金が好ましい。
さらに、本発明の内管は吸水性合成樹脂または形状記憶合金から形成された管と金属管とを接続した構造を有していてもよい。また、吸水性合成樹脂または形状記憶合金から形成された管と他の合成樹脂から形成された管とを接続した構造を有していてもよい。先端部分は形状変化をもたらす樹脂であることが好ましい。
【0010】
本発明における分岐コネクターとは、該外針の基端部と該外針に内挿された内管の基端部をそれぞれ固定するものである。このような分岐コネクターは、下記洗浄洗浄液注入ラインおよび組織吸引ラインに接続されるものである。
【0011】
上記中空外針または前記中空内管は、その先端が鋭利な刃先を有することが好ましい。上記中空外針または前記中空内管は、エコーチップを有していてもよい。
【0012】
上記中空金属外針と上記中空内管との間には空隙が形成されている。該空隙は金属外針基端部の分岐コネクターにより中空金属外針および中空内管の軸方向から側方に開放された洗浄液注入ルートから洗浄液注入ライン、および前記外針刃面より内側に開口部を有し、かつ、外針針基の分岐コネクターの内部を通過する組織吸引ルートから組織吸引ラインに接続する。
【0013】
本発明における中空外針と中空内管との空間部へ洗浄液を注入する洗浄液注入ラインとは、具体的にはチューブである洗浄液注入ライン、該チューブの中間部には除菌フィルターが接続される。さらに、上記洗浄液を注入するための洗浄液注入ラインチューブには、ルアーコネクターが接続される。
【0014】
本発明における洗浄液注入ラインは、上記チューブの中間部位、好ましくは、洗浄液注入を行うルアーコネクター側の近位に、除菌フィルターを設けたことを特徴とする。該除菌フィルターとしては、エアベント付き平型フィルター、コマ型フィルター、エアーベント付き円筒型フィルターなどが挙げられるが、操作性、収納性を考慮すると、特に、エアーベント付き平型フィルターが好ましい。
除菌フィルターを備えることにより、洗浄液の除菌による清潔操作が可能となり、また、エアベント付きフィルターを使用することにより、洗浄液注入ラインのプライミング操作の簡略化を達成でき、さらに、体内への空気の注入を防止できる。
【0015】
本発明における組織吸引ラインとは、外針刃面より内側に開口部を有し、かつ、外針針基の分岐コネクターの内部を通過する組織吸引ルートから採取された組織を貯留する組織採取容器を接続するラインである。
分岐コネクターと上記組織採取容器とを接続するチューブは、一般には、ポリテトラフルオロエチレン(例、テフロン(登録商標))からなる内径、1.0〜3.0mm、好ましくは、1.2〜2.0mm、外径、2.0〜5.0mm、好ましくは、2.5〜4.0mmであるチューブであって、その長さ方向の形状は、一定である。
本発明の組織吸引ラインは、具体的には、上記チューブの中間部位において、伸縮自在なチューブを含むチューブであって、チューブ末端部は組織採取容器および吸引器に接続されている。
【0016】
また、該伸縮自在なチューブとしては、具体的には螺旋状チューブまたはベローズ形状を有するチューブがある。このようなチューブの具体例としては、図1および2に示されるものがある。図1に示される伸縮自在なチューブは螺旋状チューブであり、その巻数、長さ等は適宜選択される。また、図2に示される伸縮自在なチューブはベローズ形状を有するチューブである。また、本発明の伸縮自在なチューブは上記形状に限られず、その外観の長さを縮小させるものであれば、いずれの形状を有していてもよい。
【0017】
また、上記組織吸引ルートには、採取された組織を貯留するための組織採取容器が接続された吸引ラインチューブのルアーコネクターが接続されている。
本発明では、組織吸引チューブが伸縮性チューブを含むことにより、従来の長い組織吸引ラインが手術現場において煩雑さを生じていたが、このような欠点を解消することができる。また、組織吸引ラインのキングを防止することも可能となる。
【0018】
本発明の吸引採取装置を使用するに当たって、まず、膣を経由して、組織採取針を卵巣へ輸送し、目的部位にて中空金属外針刃面先端を穿刺する。次いで好ましくは水分または温度の変化によって内管形状を変化させて、前記外針先端より前方へ内管先端を伸長させる。次いで、あるいは同時に洗浄液注入ラインを経由して外針と内針の間の空隙から洗浄水を送水する。洗浄液とともに卵子を内管の中空部から吸引して、組織採取ルートを経て、所定の容器に収容する。
【0019】
洗浄操作は、シリンジにヘパリン化生食や培養液が充填され、洗浄液として、ルアーコネクターからシリンジもしくは洗浄液注入器具を用い直接もしくは延長チューブを介して注入される。また、吸引操作は接続された組織採取容器付きの吸引ラインへ、吸引器を接続し断続的に空気を陰圧に吸引する事により組織採取容器内への組織の採取を行う。
【0020】
以下、図面を引用して本発明の組織吸引装置を詳細に説明する。
図1は、伸縮性チューブとして螺旋状チューブを使用した組織吸引装置を示し、図2は、伸縮性チューブとしてベローズを使用した組織吸引装置を示す。図3は従来の組織吸引装置の一例を示す。図4は組織吸引ラインが螺旋状チューブを含むチューブであり、連続的に洗浄吸引を行うことが可能な洗浄液注入器具、および吸引ラインを付加した場合の組織吸引装置を示す。
図中、(1)は外針、(2)は中空内管、(3)は固定手段、(4)は洗浄液注入ライン接続部、(5)は組織吸引ライン接続部、(6)は分岐コネクター、(7)除菌フィルター、(8)は伸縮自在なチューブ、(9)は組織吸引ラインチューブ、(10)は組織採取容器、(11)はエコーチップ、(12)は刃先、(13)は洗浄液注入ラインチューブ、(14)は洗浄コネクター、(15)は組織採取容器ゴム栓、(16)は吸引ポート、(17)はシリンジ、(18)は流量制御手段 、(19)は洗浄液注入器具、(20)は流路切替手段、(21)はクランプ、(22)吸引ラインを示す。
【0021】
実施例1
図1に示されるように、ステンレス(SUS304)である中空外針(1)(外径1.6mm、内径1.4mm、長さ350mm)に、ポリウレタン製中空内管(2)(外径1.1mm、内径0.8mm、長さ370mm(吸水前))を内挿し、先端部外表面には研磨スリットによるエコーガイド(エコーチップ)(11)が設けられている。外針基端部には洗浄液注入ライン接続部(4)および組織吸引ライン接続部(5)を有する分岐コネクター(6)が設けられ、外針と内管との空隙は除菌フィルター(7)(ポール社製IVフィルター:スーポア0.22μmメンブレン)を含むチューブ(13)からなる洗浄液注入ライン(テフロン(登録商標)チューブ、内径1.2mm、外径2,5mm、長さ1000mm)に接続されている。内管基端部には分岐コネクター(6)(ポリプロピレン製)内の組織吸引ラインチューブ(9)(テフロンチューブ、内径1.2mm、外径2.5mm、長さ2000mm)が接続されている。該組織吸引ラインチューブ(9)は、テフロンチューブを螺旋状に形成した伸縮チューブ(8)を含むテフロンチューブである。螺旋状部は、長さ2000mmのチューブを旋回数40に巻回して、長さ160mmのチューブである。
組織吸引ラインには、組織吸引容器(10)として上部にゴム栓(15)を備えた試験管が備えられている。ゴム栓(15)には、吸引ポート(16)へ接続するチューブが貫通している。
【0022】
上記組織採取針を膣から卵巣へ穿刺し、上記エコーガイド(11)へ体外から超音波を送信して、目的部位に組織針が到達したことを確認してから、外針先端の刃先(12)を卵巣の卵胞へ穿刺した。次いで、シリンジ(17)から洗浄液ラインを経由して、該中空外針と該中空内管との空間部へ洗浄液を送水すると同時に、伸長した内管(2)の突出部から洗浄液とともに卵子を組織吸引ラインにて吸引して、卵子を組織採取試験管(10)内に収容した。
また、図4に示されるとおり、連続的に洗浄液を注入しながら卵子を吸引する装置の場合、図1の洗浄ルアーコネクター(14)に流量制御手段(18)、クランプ(21)、洗浄液注入(19)注入手段を接続し、また同時に吸引ライン(22)から流路切替手段(20)を介して洗浄液注入手段へと接続することにより可能となる。
【0023】
実施例2
実施例1と同様にして、組織吸引採取装置を製造した。ただし、伸縮性チューブとしては、ベローズを一部に成形したポリエチレンチューブを用いた。ベローズは内径1.2mm、外径2.5mmのチューブを
押し出し連続ブロー成形にて、外径5.0mm、ピッチ2mmの間隔で長さ800mmのベローズを作製し、最大1500mmまで伸縮自在とした。
実施例1と同様にして、体内から卵子を採取し、組織試験管内に収容した。
【0024】
【発明の効果】
本発明では、洗浄液注入ラインに除菌フィルターを設けたことにより、洗浄液の除菌による清潔操作が可能となり、また、エアベント付きフィルターを使用することにより、洗浄液注入ラインのプライミング操作の簡略化を達成でき、さらに、体内への空気の注入を防止できる。また、本発明では、組織吸引チューブが伸縮性チューブを含むことにより、従来の長い組織吸引ラインが手術現場において煩雑さを生じていたが、このような欠点を解消することができる。また、組織吸引ラインのキングを防止することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】組織吸引ラインが螺旋状チューブを含むチューブである本発明の組織吸引装置である。
【図2】組織吸引ラインがベローズチューブを含むチューブである本発明の組織吸引装置である。
【図3】従来の組織吸引装置である。
【図4】組織吸引ラインが螺旋状チューブを含むチューブであり、連続的に洗浄吸引を行うことが可能な洗浄液注入器具および吸引ラインを付加した場合の組織吸引装置である。
【符号の簡単な説明】
(1)・・・・中空外針
(2)・・・・中空内管
(3)・・・・固定手段
(4)・・・・洗浄液注入ライン接続部
(5)・・・・組織吸収ライン接続部
(6)・・・・分岐コネクター
(7)・・・・除菌フィルター
(8)・・・・伸縮自在なチューブ
(9)・・・・組織吸引ラインチューブ
(10)・・・組織吸引容器
(11)・・・エコーチップ
(12)・・・刃先
(13)・・・洗浄液注入ラインチューブ
(14)・・・洗浄コネクター
(15)・・・ゴム栓
(16)・・・吸引ポート
(17)・・・シリンジ
(18)・・・流量制御手段
(19)・・・洗浄液注入器具
(20)・・・流路切替手段
(21)・・・クランプ
(22)・・・吸引ライン
Claims (4)
- 中空外針および該外針内に内挿された中空内管、該中空外針および該中空内管の基端部をそれぞれ固定する手段、洗浄液注入ライン接続部および組織吸引ライン接続部を有する分岐コネクターを備えた組織採取針と、該中空外針と該中空内管との空間部へ洗浄液を注入するエアベント付き除菌フィルターを設けた洗浄液注入ラインと、螺旋状チューブまたはベローズ形状を有する伸縮自在なチューブを含むチューブである、該中空内管から組織を吸引する組織吸引ラインとを有する組織吸引採取装置。
- 前記洗浄液注入ラインはチューブであって、流量制御手段および洗浄液注入器具に接続されている、請求項1記載の組織吸引採取装置。
- 前記中空外針または前記中空内管は、その先端が鋭利な刃先を有する、請求項1記載の組織吸引採取装置。
- 前記中空外針または前記中空内管は、エコーチップを有する、請求項1記載の組織吸引採取装置。
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