JP4119976B2 - 5位置換ピリミジンデオキシヌクレオチド誘導体、及びそれを用いた核酸の合成方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、新規な5位置換デオキシシチジン誘導体と新規な5位置換デオキシウリジン誘導体、及びそれを用いた核酸の合成方法に関し、特に、有用な標識を導入することが可能な新規な5位置換デオキシシチジン誘導体と新規な5位置換デオキシウリジン誘導体、及びそれを用いた核酸の合成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
標識機能物質が結合したオリゴヌクレオチド類は特定の配列を持った核酸の検出を行なう上で必要不可欠なものであり、それ故、このようなオリゴヌクレオチド類に関して、多くの研究がなされ、またその応用が検討されてきた。標識機能物質が結合したオリゴヌクレオチド類として、当初は、放射性物質である32P−リン酸を酵素的に結合させたオリゴヌクレオチド類が用いられたが、この場合、放射性物質を扱うための施設の確保及び維持、放射性物質を扱う上での安全性、32Pの半減期が2週間と短いため保存が困難である等、種々の問題点があった。このため非放射性物質である蛍光物質、発光物質、ビオチン等の標識化物質をオリゴヌクレオチドに結合させた核酸類の化学合成の開発及びその応用研究がなされている。特に自動合成機械による核酸の化学合成法が確立して長いオリゴヌクレオチドの化学合成が容易になって以来、標識化物質を結合させたオリゴヌクレオチド類の化学合成の開発がなされ、DNAプローブとして利用されてきた。しかし、DNAチップを用いたマイクロアレイDNA解析では、天然から得られた特定のDNA又はRNAを基に酵素的に標識化物質を導入した修飾DNAをDNAプローブとして用いる必要がある。
【0003】
核酸塩基部に標識化合物を導入したオリゴヌクレオチドは検出の対象となる核酸と安定な相補的塩基対結合を造らなければならない。このためには立体的な障害が少なく且つ相補的塩基対結合に関係の無いピリミジン環の5位にリンカーを介して標識化合物を結合する方法が最も優れている。このようなピリミジン環の5位の部分に標識化合物を導入したオリゴヌクレオチドの化学合成には、基質として5位置換ピリミジンデオキシヌクレオチド誘導体が必要である。このため、従来は天然から得られるウリジンを出発原料にして、標識化合物を結合させることが可能な5位置換2’−デオキシウリジン誘導体を合成する方法が行われている。この合成法では、出発原料である5−クロロ水銀化−2’−デオキシウリジン又は触媒のパラジウム錯体が高価であり、有害な水銀化合物を扱うという難点がある。
【0004】
前記5位置換2’−デオキシウリジン誘導体を基質に用いてオリゴヌクレオチドを化学合成し、更に標識物質をこのオリゴヌクレオチドに導入する方法が文献に報告され、また特許出願されている[J.L.Ruth,"Oligonuclotides and Analogues,A Practical Approach",Ed.by F.Eckstein,p255-282,IRL Press(1991);J.L.Ruth, 米国特許No4948882;特開平3−86897号公報参照]。また、これらの5−位置換2’−デオキシウリジン誘導体のある種のものは5’−三リン酸化体に導くと、大腸菌のDNA合成酵素であるクレノー断片又はある種の好熱菌のDNA合成酵素であるTaq又はVentDNAポリメラーゼの基質となるので、これらから修飾DNAを酵素的に合成する方法が知られている[R.P.Langer,A.A.Waldrop,D.C.Ward,Proc.Nat.Acad.Sci.USA,78,6633(1981);C.R.Petrie et.al,.Bioconjugate Chem.,2,441,(1991);J.A.Latahm,et al.,Nucleic Acids Res.,22,2817(1994);K.Sakthivel and C.F.Barabas III,Angew.Chem.Int.Ed,37,2872(1998)参照]。
【0005】
このようにして酵素的に合成され且つ蛍光物質を導入した修飾DNAは、DNAプローブとして、特定のDNAの検出に用いられている[G.H.Keller and M.M.Manak,"DNA Probes",p105-148,Stockton Press(1989);S.F.Nelson and C.T.Denny,"DNA Microarrays",Ed.by M.Schena,p43-59,IRL Press(1999);C.Kessler,"Gene Probes 1",Ed.by B.D.Hamesand S.J.Higgins,p93-144,IRL Press(1995) 参照]。また、アミノ基又はイミダゾール基を導入した修飾DNAの酵素を用いる合成、増幅法(PCR法)と試験管内選択法を併用することで、特定の反応を触媒する触媒DNA、又は特定の分子に結合するDNAアプタマーとして応用されている[T.R.Battersby et a1.,J.Am.Chem.Soc.,121,9781(1999); S.W.Santoro et.a1.,122,2433(2000)参照]。しかし、 従来の修飾DNAの酵素合成法、PCR法による大量合成法では酵素の基質特異性が高いため、用いることのできるDNA合成酵素の種類や基質となる5位置換ピリミジン2’-デオキシヌクレオチド誘導体に大きな制約があった。
【0006】
前記以外の従来技術としては、例えば、アラビノースとシアンアミドから容易に得られるアラビノアミノオキサゾリンとα−ブロモメチルフマル酸誘導体とを反応させることにより、標識物質などの機能性物質を結合することが可能な新規な5位置換ピリミジン2’-デオキシヌクレオチド類を得る合成法が挙げられる。更にこの5位置換ピリミジン2’-デオキシヌクレオチドを基質に用いてオリゴヌクレオチドを化学合成し、このオリゴヌクレオチドに蛍光物質を導入した修飾DNAを化学合成する方法が特許出願された[沢井ら、特開平7−165786号公報参照]。また、この修飾DNAにポリアミン類を導入した化合物は、特定のRNAを切断するRNA制限酵素として特許出願された[篠塚ら、特開平8−242862号公報参照]。
【0007】
【(非)特許文献1】
[J.L.Ruth,"Oligonuclotides and Analogues,A Practical Approach",Ed.by F.Eckstein,p255-282,IRL Press(1991);J.L.Ruth,
【(非)特許文献2】
米国特許No4948882号
【(非)特許文献3】
; 特開平3−86897号公報
【(非)特許文献4】
R.P.Langer,A.A.Waldrop,D.C.Ward,Proc.Nat.Acad.Sci.USA,78,6633(1981);C.R.Petrie et.al,.Bioconjugate Chem.,2,441,(1991);J.A.Latahm,et al.,Nucleic Acids Res.,22,2817(1994); K.Sakthivel and C.F.Barabas III,Angew.Chem.Int.Ed,37,2872(1998)]
【(非)特許文献5】
[G.H.Keller and M.M.Manak,"DNA Probes",p105-148,Stockton Press(1989);S.F.Nelson and C.T.Denny,"DNA Microarrays",Ed.by M.Schena,p43-59,IRL Press(1999);C.Kessler,"Gene Probes 1",Ed.by B.D.Hamesand S.J.Higgins,p93-144,IRL Press(1995)]。
【(非)特許文献6】
[T.R.Battersby et a1.,J.Am.Chem.Soc.,121,9781(1999);S.W.Santoro et.a1.,122,2433 (2000)]
【(非)特許文献7】
特開平7−165786号公報
【(非)特許文献8】
特開平8−242862号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これら従来技術の方法では、5位置換2’−デオキシウリジン誘導体を導入した修飾DNA類の合成は化学合成法に限られており、 前記修飾DNA類の酵素合成は不可能である。多くの研究分野において、特にDNAチップによるDNA解析などでは、特定の天然の核酸を鋳型としたDNAプローブの酵素合成、とりわけPCR法による合成が必要となるので、修飾DNA類の酵素合成に関する大きな要求がある。
【0009】
本発明は前記従来技術の問題点を解決するためのものである。本発明者らは前記実情に鑑み、有用な5位置換デオキシシチジン誘導体と5位置換デオキシウリジン誘導体、及びそれらを用いた核酸の合成方法を確立した。
【0010】
すなわち、本発明は、特にDNAチップによるDNA解析に必要な修飾DNA類の酵素合成可能な5位置換シチジン誘導体、及びそれを用いた核酸の合成方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、発明者らは、基質、DNA合成酵素について種々のスクリーニングを行なった結果、本発明の誘導体、及びそれを用いた核酸の合成方法を見出すに至った。
【0012】
すなわち、本願発明の5位置換デオキシウリジン誘導体は、一般式、
【0013】
【化6】
(但し、式中、Rは−NHXを表し、Xは水素原子、アルキニル基、アルケニル基、アルキニル基、またはアリール基、−COCF3基、−COCH3基、カルボニルメチルイミダゾール基、− C(=NH)NH 2 、ビオチニル基、各種アミノ酸をアミド結合を介して結合させたもの、又は−(CH2)2N[(CH2)2NH2]2基を示す。)で表されることを特徴とする。
【0014】
また、本願発明の5位置換デオキシシチジン誘導体は、一般式、
【0015】
【化7】
(但し、式中、Rは−NHXを表し、Xは水素原子、アルキニル基、アルケニル基、アルキニル基、またはアリール基、−COCF3基、−COCH3基、カルボニルメチルイミダゾール基、− C(=NH)NH 2 、ビオチニル基、各種アミノ酸をアミド結合を介して結合させたもの、又は−(CH2)2N[(CH2)2NH2]2基を示す。)で表されることを特徴とする。
【0020】
また、本願発明の5位置換ピリミジンデオキシヌクレオチド誘導体の好ましい実施態様において、前記各種アミノ酸をアミド結合を介して結合させたものが、グリシル基、アラニル基、バリル基、ロイシル基、イソロイシル基、メチオニル基、プロリル基、フェニルアラニル基、トリプトファニル基、セリル基、スレオニル基、アスパラギニル基、グルタミニル基、アスパラチル基、グルタミル基、システイニル基、チロシル基、ヒスチジル基、リシル基、アルギニル基からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
【0021】
また、本願発明の5位置換ピリミジンデオキシヌクレオチド誘導体を用いた核酸の合成方法は、前記基質、DNA合成酵素、鋳型DNA及びプライマーを用いて核酸を合成する方法であって、請求項1又は2に記載の誘導体を、基質として用いることを特徴とする。
【0022】
また、本願発明の5位置換シチジン誘導体を用いた核酸の合成方法は、さらに、デオキシウリジン誘導体と共に基質として用いることが可能であることを特徴とする。
【0023】
また、本願発明の5位置換デオキシシチジン誘導体を用いた核酸の合成方法は、前記デオキシウリジン誘導体が、式、
【0024】
【化8】
【0025】
【化9】
【0026】
【化10】
(但し、式中、Rは水素原子、アルキニル基、アルケニル基、アルキニル基、またはアリール基、−COCF3基、−COCH3基、カルボニルメチルイミダゾール基、− C(=NH)NH 2 、ビオチニル基、各種アミノ酸をアミド結合を介して結合させたもの、又は−(CH2)2N[(CH2)2NH2]2基を示す。)からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
【0027】
また、本願発明の5位置換デオキシシチジン誘導体を用いた核酸の合成方法の好ましい実施態様において、前記DNA合成酵素が、Pfu 、 Pwo 、 Vent(exo-) 及び Deep Vent(exo-) からなる群から選択される少なくとも一種の熱安定性 DNA ポリメラーゼであることを特徴とする。
【0028】
また、本願発明の5位置換シチジン誘導体を用いた核酸の合成方法の好ましい実施態様において、鋳型DNAが、天然のDNA,化学合成したDNA又は天然のRNAを逆転写して形成されたcDNAであることを特徴とする。
【0029】
【発明の実施の形態】
本願発明の5位置換デオキシウリジン誘導体は、一般式、
【0030】
【化11】
(但し、式中、Rは−NHXを表し、Xは水素原子、アルキニル基、アルケニル基、アルキニル基、またはアリール基、−COCF3基、−COCH3基、カルボニルメチルイミダゾール基、− C(=NH)NH 2 、ビオチニル基、各種アミノ酸をアミド結合を介して結合させたもの、又は−(CH2)2N[(CH2)2NH2]2基を示す。)で表される。
【0031】
本願発明の5位置換デオキシシチジン誘導体は、一般式、
【0032】
【化12】
(但し、式中、Rは−NHXを表し、Xは水素原子、アルキニル基、アルケニル基、アルキニル基、またはアリール基、−COCF3基、−COCH3基、カルボニルメチルイミダゾール基、− C(=NH)NH 2 、ビオチニル基、各種アミノ酸をアミド結合を介して結合させたもの、又は−(CH2)2N[(CH2)2NH2]2基を示す。)で表される。
【0037】
ここで、DNA分子への新しい機能の付与という観点から、Xとしては、修飾DNAアプタマーを創製する際には静電的結合や疎水結合または水素結合を形成するような官能基、また、修飾DNA触媒を創製する際にはルイス酸・塩基またはそれらのリガンドとなる分子を用いることが好ましい。
【0038】
上記本発明の誘導体は、単独又は複数で用いても、容易に修飾DNAを導入することができる。また、後述するように、これら本発明の誘導体と、従来からある既存の誘導体とを組み合わせても、容易に修飾DNAを導入することができる。
【0039】
本願発明の5位置換ピリミジンデオキシヌクレオチド誘導体の好ましい実施態様において、前記各種アミノ酸をアミド結合を介して結合させたものが、グリシル基、アラニル基、バリル基、ロイシル基、イソロイシル基、メチオニル基、プロリル基、フェニルアラニル基、トリプトファニル基、セリル基、スレオニル基、アスパラギニル基、グルタミニル基、アスパラチル基、グルタミル基、システイニル基、チロシル基、ヒスチジル基、リシル基、アルギニル基からなる群から選択される少なくとも1種である。これらはタンパク質に含まれる機能性残基という観点から、特に好ましく用いることができる。
【0040】
次に、核酸の合成方法について説明する。本願発明の5位置換シチジン誘導体を用いた核酸の合成方法は、前記基質、DNA合成酵素、鋳型DNA及びプライマーを用いて核酸を合成する方法であって、上記本発明の誘導体を、基質として用いる。
【0041】
これら本発明の誘導体を基質として用いて合成した核酸は、種々の蛍光標識を容易に結合させることが可能であり、蛍光標識を結合させた核酸は、有用なプローブ等となり得る。このような蛍光標識としては、従来のものを挙げることができ特に限定されない。例えば、蛍光標識として、フルオレスセイン,Cy5,テトラメチルカルボキシローダミン,ピレンなどを挙げることができる。
【0042】
なお、蛍光標識を予め結合させた本発明の誘導体を用いて核酸を合成することも可能である。
【0043】
さらに、蛍光標識以外に、種々の機能性物質を結合させた機能性修飾DNA,例えば触媒、アプタマーなどを合成することもできる。また、蛍光標識ではなく、阻害剤を結合させることも可能である。
【0044】
また、本願発明の5位置換シチジン誘導体を用いた核酸の合成方法は、さらに、デオキシウリジン誘導体と共に基質として用いることができる。既存のデオキシウリジン誘導体を用いることにより、より多くの物質(蛍光標識等)を結合させることができる。前記デオキシウリジン誘導体としては、DNAポリメラーゼによって効率よく修飾DNAを生成するという観点から、式、
【0045】
【化13】
【0046】
【化14】
【0047】
【化15】
(但し、式中、Rは水素原子、アルキニル基、アルケニル基、アルキニル基、またはアリール基、−COCF3基、−COCH3基、カルボニルメチルイミダゾール基、− C(=NH)NH 2 、ビオチニル基、各種アミノ酸をアミド結合を介して結合させたもの、又は−(CH2)2N[(CH2)2NH2]2基を示す。)からなる群から選択される少なくとも1種を好ましく用いることができる。
【0048】
本願発明の5位置換シチジン誘導体を用いた核酸の合成方法では、DNA合成酵素として、Family B DNAポリメラーゼを挙げることができる。これらのポリメラーゼ用いることにより、効率よく修飾ヌクレオチドをDNAに導入できるという利点がある。
【0049】
鋳型DNAとしては、天然のDNA,化学合成したDNA又は天然のRNAを逆転写して形成されたcDNAのものを挙げることができる。
【0050】
【実施例】
以下に実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0051】
実施例1
本実施例では、5位に柔軟な7 - アミノ−2 , 5−ジオキサヘプチルリンカーを持つ修飾2’−デオキシウリジン3リン酸と修飾2’-デオキシシチジン3リン酸(5,8)の合成とそれらのPCRにおける耐熱性DNAポリメラーゼに対するする基質特性について調べた。
【0052】
まず、用いた試薬等について説明すれば以下の通りである。
【0053】
<用いた試薬と方法>
1. 試薬
5-プロピニル-2’-デオキシウリジン-5’-三リン酸 (プロピニル dUTP 9), 5-プロピニル-2’-デオキシシチジン-5’-三リン酸 (プロピニル dCTP 11) と5-メチル-2’-デオキシウリジン- 5’-三リン酸(メチルdCTP 12) はTriLink BioTechnologies社から購入した。 2’-デオキシウリジン-5’-三リン酸 (dUTP 10) はヤマサ株式会社から購入した。天然型の2’-デオキシヌクレオシド-5’-三リン酸 (dATP, dGTP, dCTP 及び TTP) はRoche社から購入した。次のDNA ポリメラーゼが実験に使われた。Taq (タカラバイオケミカルズ), Tth (東洋紡株式会社), Thermo Sequenase(Amersham Biosciences社), Vent(exo-) and Deep Vent(exo-) (New England Biolabs社), Pwo(Roche社), Pfu (Stratagene社)。プライマーオリゴヌクレオチドは北海道システムサイエンスから、 pUC18 鋳型DNA はタカラバイオケミカルズから購入した。他のすべての試薬は特級試薬をそのまま用いた。
【0054】
2. 分析方法とゲル電気泳動
NMRはJEOL社の JNM-AL300で測定した。ESI-マススペクトルはアプライドバイオシステム社のMDS-Sciex API-100で測定した。UVスペクトルは島津製作所のUV-1200分光光度計で測定した。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)はODS-シリカゲルカラム(20 mm I.D. × 250 mm L)を用い、50mMの酢酸トリエチルアンモニウム(pH7.0)の緩衝溶液中、5〜15%のアセトニトリルの濃度勾配を用いて、流速8mL/分で溶出させた。ゲル電気泳動は2%アガロースゲル(100 V, 40分)でおこなった。PCR産物は2%のアガロース電気泳動によって分離し臭化エチジウム着色によって可視化し、ゲルイメージはMolecular Imager FX(バイオ・ラド社)で記録した。
【0055】
3. 2-[N-(tert-ブチロキシカルボニル)-2-アミノエトキシ]エタノール(1a)の合成
ジ−tert-ブチルジカーボネート(Boc2O, 4.57 g, 21 mmol) と1Nの水酸化ナトリウム水溶液(19 mL)を2-(2-アミノエトキシ)エタノール (2.00 g, 19 mmol)を溶かしたジオキサン−水(2:1)混合液57 mLに氷冷下で撹拌しながら滴下して加えた。室温で2時間反応させた後、溶媒を減圧留去した。残渣を水に溶かし目的物を酢酸エチルで抽出した。有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、ろ過し、ろ液を減圧濃縮し、オイル状の粗生成物を得た。酢酸エチル−ヘキサン(1:1)混合液を溶出溶媒に用いて、これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、無色オイル状の目的物1aを収率93%で3.64g得た。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 5.09 (b, 1H), 3.74 (m, 2H), 3.59-3.54 (m, 4H), 3.33 (m, 2H), 2.62 (b, 1H), 1.45 (s, 9H)。
【0056】
4. 5-[7-[N-(tert- ブチロキシカルボニル ) アミノ ]-2,5- ジオキサ - ヘプチル]-2’-デオキシウリジン(3)の合成
乾燥ベンゼン(67 mL)に懸濁させた3’,5’-ジ-O-アセチルチミジン 1 (1.00 g, 3.1 mmol), N-ブロモスクシミド (NBS, 0.980 g, 5.5 mmol) 及びアゾビスイソブチロニトリル(AIBN, 33 mg, 0.2 mmol)を2時間還流して反応させた。反応終了後、反応液をアルゴン雰囲気下で減圧留去し3’,5’-ジ-O-アセチル-5-(ブロモメチル)-2’-デオキシウリジンを含む残渣を得た。これを乾燥DMF(15 mL)に溶かし、続いて 2-[N-(tert-ブチロキシカルボニル)-2-アミノエトキシ]エタノール(1a)(1.39 g, 6.8 mmol)と炭酸カリウム(0.338 g, 3.4 mmol)を加え90℃で3時間反応させた。 反応終了後、溶媒を減圧留去し、続いて残渣を水に溶かし目的物をクロロホルムで抽出した。有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、ろ過し、ろ液を減圧濃縮し、オイル状の粗生成物を得た。1%メタノール−クロロホルム混合液を溶出溶媒に用いて、これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、1aを不純物として含むヌクレオシド2を1.02g得た。ESI-MS(ポジティブ・モード) m/z [帰属] 530.2 [(M+H)+], 552.2 [(M+Na)+]。粗生成物であるヌクレオシド2(1.02g)をアンモニア−メタノール(30 mL)に溶かし、室温で4時間反応させた。反応終了後、溶媒を減圧留去し、続いて残渣を0.5-6%メタノール−クロロホルム混合液を溶出溶媒に用いて、これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、目的物3を収率30%で0.406g得た。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 8.06 (s, 1H), 6.33 (t, 1H, J = 6), 4.62 (m, 1H), 4.32 (m, 2H), 4.00-3.93 (m, 3H), 3.68-3.33 (m, 8H), 2.36 (m, 2H), 1.44 (s, 9H)。ESI-MS(ポジティブ・モード) m/z [帰属] 468.3 [(M+Na)+]。
【0057】
5. 5-(7- トリフルオロアセタミド -2,5- ジオキサ - ヘプチル)-2’-デオキシウリジン(4)の合成
ヌクレオシド 3 (0.294 g, 0.66 mmol) を20%トリフルオロ酢酸−ジクロロメタン混合液(20 mL)に溶かし室温で4時間反応させた。反応終了後、溶媒を減圧留去し、続いて残渣をメタノール(6 mL)に溶かし、これにトリフルオロ酢酸エチル(2.00 g, 7.0 mmol)とトリエチルアミン(1 mL, 7.2 mmol)を加え、室温で1時間反応させた。反応終了後、溶媒を減圧留去し、続いて残渣を3%メタノール−クロロホルム混合液を溶出溶媒に用いて、これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、薄黄色オイル状の目的物4を収率85%で0.247g得た。1H NMR (300 MHz, CD3OD) δ 8.06 (s, 1H), 6.27 (t, 1H, J = 7), 4.40 (m, 1H), 4.26 (s, 2H), 3.92 (q, 1H, J = 3), 3.82-3.69 (m, 2H), 3.63-3.58 (m, 6H), 3.46 (t, 2H, J = 5), 2.33-2.17 (m, 2H)。ESI-MS(ポジティブ・モード) m/z [帰属] 464.1 [(M+Na)+]。
【0058】
6. 5-(7- アミノ -2,5- ジオキサ - ヘプチル)-2’-デオキシウリジン-5’-三リン酸(5)の合成
ヌクレオシド4(0.115 g, 0.26 mmol)とN,N,N’,N’-テトラメチル-1,8-ナフタレンジアミン (Proton Sponge(登録商標), 0.083g, 0.39 mmol)を一晩減圧乾燥させた。これにリン酸トリメチル(1.5 mL)をアルゴン雰囲気下で加えて溶かした後、0°Cに冷却した。蒸留したオキシ塩化リン(0.029 mL, 0.31 mmol)をマイクロシリンジで滴下し0°Cのまま撹拌した。さらに45分後トリブチルアミン(0.2 mL, 0.83 mmol)と0.5 Mピロリン酸トリブチルアンモニウムのDMF溶液を0°Cで加え、反応液を室温に戻し1時間反応させた。1.0 M 炭酸水素トリブチルアンモニウム水溶液(15 mL)を加えて反応を止め反応液を減圧濃縮した。濃縮液を水(5 mL)で薄めた液をセファデックスDEAEA-25カラムを用い、炭酸水素トリエチルアンモニウム水溶液(pH 8.0)の塩濃度勾配(0.05〜1.0M)緩衝液により溶出した。精製したN-保護ヌクレオシド三リン酸を含むフラクション中の過剰のピロリン酸を取り除くため、さらに、これを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって精製し、5-(7- トリフルオロアセタミド -2,5- ジオキサ - ヘプチル)-2’-デオキシウリジン-5’-三リン酸を収率31%で760 OD得た。ESI-MS(ネガティブ・モード) m/z [帰属] 680.2 [(M−H)−]。このN-保護ヌクレオシド三リン酸(530 OD, 0.057mmol)を2N アンモニア水(2.8 mL)に溶かし室温で2時間反応させた。反応終了後、溶媒を減圧留去し残渣を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって精製し、目的物5を収率31%で530 OD得た。ESI-MS(ネガティブ・モード) 583.9 [(M−H)−]。
【0059】
7. 5-[7-[N-(tert- ブチルオキシカルボニル ) アミノ ]-2,5- ジオキサ - ヘプチル]-2’-デオキシシチジン(6)の合成
3’,5’-ジ-O-アセチルチミジン 1 (0.425 g, 1.3 mmol)から得られたヌクレオシド2(0.429 g, 1aを不純物として含む)を溶かした乾燥ピリジン溶液(4 mL)にオキシ塩化リン(0.162 mL, 1.7 mmol)を室温で撹拌しながら滴下した。4時間後、反応液に氷水(0.4 mL)を0℃で加え、さらに0.5時間撹拌した。続いて濃アンモニア水(1.6 mL)を加え50℃で2時間反応させた。反応終了後、溶媒を減圧留去し残渣を1-10%メタノール−クロロホルム混合液を溶出溶媒に用いて、これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、黄色オイル状の3’,5’-ジ-O-アセチル-5-[7-[N-(tert- ブチルオキシカルボニル ) アミノ ]-2,5- ジオキサ - ヘプチル]-2’-デオキシシチジンを1からの収率21%で0.143 g得た。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.54 (s, 1H), 6.28 (dd, 1H, J = 6, 8), 4.37-4.29 (m, 4H), 3.64 (s, 4H), 3.54 (t, 2H, J = 5), 3.32 (m, 2H), 2.72 (m, 1H), 2.10 (s, 3H), 2.09 (s,3H), 2.02 (m, 1H), 1.45 (s, 9H)。ESI-MS(ポジティブ・モード) m/z [帰属] 529.3 [(M+H)+]。このデオキシシチジン誘導体(0.143 g, 0.27 mmol)をアンモニア−メタノール(30 mL)に溶かし、室温で4時間反応させた。反応終了後、溶媒を減圧留去し、続いて残渣を1-10%メタノール−クロロホルム混合液を溶出溶媒に用いて、これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、目的物6を1からの収率17%で0.096g得た。1H NMR (300 MHz, CD3OD) δ 8.09 (s, 1H), 6.22 (t, 1H, J = 6), 4.38 (m, 1H), 4.33 (s, 2H), 3.92 (m, 1H), 3.77 (m, 2H), 3.63 (s, 4H), 3.51 (t, 2H, J = 6), 3.22 (t, 2H, J = 6), 2.35 (m, 1H), 2.14 (m, 1H), 1.42 (s, 9H)。ESI-MS(ポジティブ・モード) m/z[帰属] 445.3 [(M+H)+], 467.2 [(M+Na)+], 889.5 [(2M+H)+], 911.4 [(2M+Na)+]。
【0060】
8. 5-(7- トリフルオロアセタミド -2,5- ジオキサ - ヘプチル)-2’-デオキシシチジン(7)の合成
ヌクレオシド6 (0.111 g, 0.25 mmol) を20%トリフルオロ酢酸−ジクロロメタン混合液(10 mL)に溶かし室温で4時間反応させた。反応終了後、溶媒を減圧留去し、続いて残渣をメタノール(3 mL)に溶かし、これにトリフルオロ酢酸エチル(1.00 g, 14 mmol)とトリエチルアミン(0.5 mL, 3.6 mmol)を加え、室温で1時間反応させた。反応終了後、溶媒を減圧留去し、続いて残渣を3%メタノール−クロロホルム混合液を溶出溶媒に用いて、これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、無色オイル状の目的物7を収率98%で0.108 g得た。1H NMR (300 MHz, CD3OD) δ 8.18 (s, 1H), 6.22 (t, 1H, J = 6), 4.37 (m, 1H), 4.35 (s, 2H), 3.94 (q, 1H, J = 3), 3.78 (m, 2H), 3.61-3.59 (m, 6H), 3.47 (t, 2H, J = 5), 2.37 (m, 1H), 2.17 (m, 1H)。ESI-MS(ポジティブ・モード) m/z [帰属] 441.2 [(M+H)+], 463.2 [(M+Na)+], 881.4 [(2M+H)+], 903.4 [(2M+Na)+]。
【0061】
9. 5-(7- アミノ -2,5- ジオキサ - ヘプチル)-2’-デオキシシチジン-5’-三リン酸(8)の合成
ヌクレオシド7(0.089 g, 0.20 mmol)とN,N,N’,N’-テトラメチル-1,8-ナフタレンジアミン(Proton Sponge(登録商標),0.065g,0.30 mmol)を一晩減圧乾燥させた。これにリン酸トリメチル(1.2 mL)をアルゴン雰囲気下で加えて溶かした後、0°Cに冷却した。蒸留したオキシ塩化リン(0.023 mL,0.24 mmol)をマイクロシリンジで滴下し0°Cのまま撹拌した。さらに45分後トリブチルアミン(0.16 mL, 0.67 mmol)と0.5 Mピロリン酸トリブチルアンモニウムのDMF溶液(2.1 mL)を0°Cで加え、反応液を室温に戻し1時間反応させた。1.0 M 炭酸水素トリブチルアンモニウム水溶液(8 mL)を加えて反応を止め反応液を減圧濃縮した。濃縮液を水(5 mL)で薄めた液をセファデックスDEAEA-25カラムを用い、炭酸水素トリエチルアンモニウム水溶液(pH 8.0)の塩濃度勾配(0.05〜1.0M)緩衝液により溶出した。精製したN-保護ヌクレオシド三リン酸を含むフラクション中の過剰のピロリン酸を取り除くため、さらに、これを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって精製し、5-(7- トリフルオロアセタミド -2,5- ジオキサ - ヘプチル)-2’-デオキシシチジン-5’-三リン酸を収率9%で135 OD得た。ESI-MS(ネガティブ・モード) m/z [帰属] 679.0 [(M−H)−]。このN-保護ヌクレオシド三リン酸(95 OD, 0.013 mmol)を2N アンモニア水(3.2mL)に溶かし室温で2時間反応させた。反応終了後、溶媒を減圧留去し残渣を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって精製し、目的物8を7からの収率3.7%で37 OD得た。ESI-MS(ネガティブ・モード) m/z [帰属] 582.9 [(M−H)−]。
【0062】
上記条件設定によって、具体的に種々の修飾アナログの合成を試みた。
修飾アナログ5と8はスキーム1に従って合成された。図1は、種々の修飾アナログの合成スキームを示す。NBSとAIBNを用いた3’、5’ジアセチル2’デオキシチミジンのラジカル炭素化、および続く2−[N−(tert-ブチロキシカルボニル)−2−アミノエトキシ]エタンとのアルコキシ置換は2を与えた。
【0063】
続いて、アンモニア-メタノールでの3’、5’0−脱アシル化は3を与え、1から1段階の収率は、30%であった。N−Boc保護基の除去とトリフロオロ酢酸エチルでの遊離のアミノリンカー末端の再保護は、4を収率85%で与えた。ヌクレオチド4は直接的にオキシ塩化リンとピロリン酸塩で三リン酸化され、続いてアンモニア水でアミノ保護基を除去し収率31%で5を得た。シチジン誘導体6の合成は、対応するウリジン誘導体2を経由して進めた。オキシ塩化リンと2を反応させ、続いてアンモニア水によってアミノ化させた後、3’、5’0−脱アシル化させると、1からの収率17%で6を得た。ヌクレオシド6は四段階の反応により総収率3.4%で三リン酸8に変換された。
【0064】
5位置換修飾ピリミジンデオキシヌクレオチド誘導体を基質とし、特定のDNA合成酵素(Family B DNAポリメラーゼ)を用いたPCR法による修飾DNAの大量合成。
次に、合成された核酸の増幅を試みた。pUCl8鋳型DNAと108塩基長のPCR産物を与える適当なプライマーを使って、対応する天然型ヌクレオシド三リン酸(TTPかdCTP)の代わりにアナログ(5や8−12)のPCRにおける取り込みを検討した(図2及び図3)。図2は、本実施例において使用した5’位置換ピリミジン核酸トリホスフェートを示す。図3は、PCR産物の電気泳動結果を示す図である。電気泳動は、エチジウムブロミド染色した2%アガロースゲルでおこなった。全ての増幅を以下のようにおこなった。すなわち、ホットスタートを使用し(94℃で1分間)、次いで20サイクル増幅(94℃で0.5分間、52℃で0.5分間、74℃で1分間)、及び74℃で5分間最終インキュベーションした。
【0065】
図3について説明すれば以下のとおりである。(a)レーン1:分子量マーカー、レーン2:4つの天然のトリフォスフェートdATP、dGTP、dCTP及びdTTPを含むPCR(正のコントロール)、レーン3:dATP,dGTP及びdCTPを含むPCR(負のコントロール)、レーン4−7:dATP、dGTP、dCTP及び図2の5を含むPCR、レーン8−11:dATP、dGTP、dCTP及び図2の9を含むPCR、レーン12−15:dATP、dGTP、dCTP及び10を含むPCR。使用した熱安定DNAポリメラーゼ:Taq(レーン2−4、8及び12)、Thermo Sequenase(レーン5,9及び13)、Pwo(レーン6,10及び14)、Vent(exo-)、(レーン7、11及び15 (b) レーン1:分子量マーカー、レーン2:4つの天然のトリフォスフェートdATP、dGTP、dCTP及びdTTPを含むPCR(正のコントロール)、レーン3:dATP,dGTP及びdCTPを含むPCR(負のコントロール)、レーン4−7:dATP、dGTP、dCTP及び図2の8を含むPCR、レーン8−11:dATP、dGTP、TTP及び図2の11を含むPCR、レーン12−15:dATP、dGTP、TTP及び12を含むPCR。使用した熱安定DNAポリメラーゼ:Taq(レーン2−4、8及び12)、Thermo Sequenase(レーン5,9及び13)、Pwo(レーン6,10及び14)、Vent(exo-)、(レーン7、11及び15)。
【0066】
プライマー領域を除いて二本鎖のテンプレートの増幅領域には25個所の非連続的なT配列「T」、4箇所の二連続T配列「TT」、1箇所の三連続T配列「TTT」、1箇所の四連続T配列「TTTT」、27箇所の非連続なC配列「C」、7箇所の二連続「CC」、1箇所の三連続C配列「CCC」、1箇所の四連続C配列「CCCC」を含んでいる。プライマー1及び2の配列は、それぞれプライマー1:5'-GGAAACAGCTATGACCATGATTAC-3'、プライマー2:3'-TGACCGGCAGCAAAATGTTGCAGC-5'である。次の購入可能なアナログ、プロビニルdUTP9,dUTP10、プロビニルdCTP11、及びメチルdCTP12、基質特性の比較研究のために用いた。それぞれファミリーA(Taq、Tth、及びThermo Sequenase) とB(Pfu,Pwo、Vent(exo-)、及びDeep Vent(exo-)))に属する7種のポリメラーゼを使用してPCRによる修飾DNAの直接的合成を行なった。PCR産物は2%のアガロース電気泳動によって分離し臭化エチジウム着色によって可視化し、ゲルイメージはMolecular Imager FX(バイオ・ラド社)で記録した。修飾DNAの完全長生成物に対応するそれぞれのバンドの強度は、表1に示したようにQuantity Oneソフトウェアを使用することで定量化された。表1を以下のように示す。
【0067】
【表1】
記号は、全ての4つの三リン酸塩、dATP,dGTP,dCTP及びTTPでポリメラーゼによって生じた完全長の生成物の量の、対応する天然三リン酸(TTP又はdCTP)の代わりにC−5修飾ピリミジンヌクレオシド三リン酸を使用して生じさせた完全長の生成物の量に対する割合を示す。+++は、>70%、++は、35〜70%、+は、<35%を示す。-は、PCR産物が検出されなかったことを示す。
【0068】
それぞれのポジティブコントロール反応によって形成された完全長生成物の量を100%に設定した。
【0069】
その結果、7 −アミノ− 2,5 −ジオキサヘプチル基をもつ修飾dUTP5及び修飾dCTP8は、ファミリーAポリメラーゼの基質にならなかったが、ファミリーBポリメラーゼの基質になった。対照的にプロピニルdUTP9はすべてのポリメラーゼに受容されるにも関わらずプロピニルdCTP11はどのポリメラーゼの基質にもならなかった。メチルdCTP12がすべてのポリメラーゼに対して良い基質となる一方でプロピニルdCTP11が受容されないという事実を考慮すると、dCTPのC5位における剛直で突き出した置換基での修飾は、酵素中の基質結合部位と置換基の立体障害のため、耐熱性DNAポリメラーゼに対する適切な基質特性を失わせるかもしれないと推測した。しかし、興味深いことに、C5位に最も小さな置換基を持つdUTP10はファミリーBポリメラーゼに受容されなかった。これは、基質、酵素間立体障害だけでなく他の要因もポリメラーゼに対する修飾ヌクレオシド三リン酸の基質特性に影響を与えていることを示唆している。
【0070】
結論として、PfuやPwo、Vent(exo-)、Deep Vent(exo-) などのファミリーBポリメラーゼのための基質となる新規修飾2’−デオキシウリジン三リン酸及び新規修飾2’−デオキシシチジン三リン酸(5と8)を首尾よく発明した。発明者の知る限り、三リン酸8は天然のdCTPの代わりにPCRによるDNAの直接的合成に利用できる修飾2’−デオキシシチジンアナログの最初の例である。
【0071】
このように、これらチミジン誘導体を組み込んだ修飾DNAが数種のDNAポリメラーゼによるDNA合成反応の鋳型となるかどうかを調べた結果、本発明者らが既に報告した方法で容易に得られるチミジン誘導体は、C5位の側鎖の末端にアミノ基等を持っているので、これら5位置換ピリミジンデオキシヌクレオチド誘導体を持つ修飾DNAには標識化合物又は機能性化合物を結合させることができ、DNAプローブの合成、又は試験管内選択法を用いた触媒DNAの合成に有用であることが判明した。
【0072】
本発明者らはFamilyB DNAポリメラーゼが容易に2‘−デオキシシチジンアナログの誘導体を基質として受け入れ、また、2’−デオキシシチジンアナログを持つ修飾DNAが鋳型として作用することを見出した。
【0073】
一方、TaqDNAポリメラーゼを含め、Family A DNA合成酵素にはこのような活性は無い。C5位のα−位置にsp3混成の炭素を持つ2’−デオキシシチジン誘導体がDNAポリメラーゼ反応に対して、基質又は鋳型としての活性を発揮することを、本発明者らが初めて見出した。
【0074】
【発明の効果】
本発明の誘導体は、SELEX法に適用することにより、種々の生体関連物質などに対するアプタマーや特定反応を触媒するリボザイムなど、実用可能性があるさまざまな機能性修飾DNAを提供し得るという有利な効果を奏する。
【0075】
また、本発明の誘導体を用いた方法により、標識機能物質が結合した修飾DNA類を酵素的に効率良く且つ充分な量得ることができる。この標識機能物質が結合した修飾DNA類は特定の核酸を特異的に検出することが可能であり、種々の分野に応用することができる。例えば、前記修飾DNA類は診断薬としての利用が可能であり、また特定の核酸の働きを制御する医薬品としての利用が可能である。更に、ポリアミンのような機能性物質を導入した修飾DNA類は、酵素合成法(PCR法)と試験管内選択法を用いることで、特定の化学反応を触媒する触媒DNAとしての利用、又は特定の低分子物質を特異的に結合するDNAアプタマーとしての利用が可能である。
【0076】
また、DNAマイクロアレイ等を用いたゲノム研究には、プローブDNA(蛍光標識DNA)が使用されているが、本発明の核酸の合成方法により、異なる2種類の蛍光標識が導入されたプローブDNAを酵素的に合成することが可能であるという有利な効果を奏する。蛍光標識がn種類あれば、n(n+1)/2通りのDNA標識化が可能となる。
【0077】
末端のアミノ基に既知の酵素阻害剤を修飾した誘導体を原料として、SELEX法により酵素活性を阻害する機能性修飾DNAを提供し得るという有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、種々の修飾アナログの合成スキームを示す。
【図2】図2は、本発明の一実施態様における、使用した5’位置換ピリミジン核酸トリフォスフェートを示す。
【図3】図3は、108塩基長のPCR産物の電気泳動結果を示す。
Claims (8)
- 前記各種アミノ酸をアミド結合を介して結合させたものが、グリシル基、アラニル基、バリル基、ロイシル基、イソロイシル基、メチオニル基、プロリル基、フェニルアラニル基、トリプトファニル基、セリル基、スレオニル基、アスパラギニル基、グルタミニル基、アスパラチル基、グルタミル基、システイニル基、チロシル基、ヒスチジル基、リシル基、アルギニル基からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1又は2に記載の誘導体。
- 基質、DNA合成酵素、鋳型DNAおよびプライマーを用いて核酸を合成する方法であって、請求項1又は2に記載の誘導体を、基質として用いる核酸の合成方法。
- さらに、デオキシウリジン誘導体を請求項2又は3に記載のデオキシシチジン誘導体と共に基質として用いる請求項4記載の核酸の合成方法。
- 前記DNA合成酵素が、Pfu 、 Pwo 、 Vent(exo-) 及び Deep Vent(exo-) からなる群から選択される少なくとも一種の熱安定性 DNA ポリメラーゼである請求項4〜6のいずれか1項に記載の方法。
- 鋳型DNAが天然のDNA、化学合成したDNA又は天然のRNAを逆転写して形成されたcDNAである請求項5〜7のいずれか1項に記載の方法。
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