JP4118325B2 - ウイルス採取具 - Google Patents
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Description
特許文献1の装置は、螺旋状に形成された捕集管と、この捕集管の滴下口に連結された回収びんと、これらを冷却する冷却容器とを備えた構成を有する。
このため、特許文献1の装置をそのまま本願発明の用途に転用しても、十分な量のウイルスを検体として適切な状態で採取することはできない。
また、特許文献1の装置は、捕集管の螺旋部が嵩張るため装置全体が大型化し易い。さらに、螺旋部が複雑で長い管構造となっているため、凝縮した液体が螺旋部の内壁に残留し易いという問題もある。
従って、呼気導入部に形成したくびれ部から排出されるウイルスを含んだ液体成分をトラップ部で捕捉することにより、患者の呼気に含まれるウイルスを簡便且つ確実に採取することができる。
また、トラップ部にはウイルス分離培地が配置されてあるので、トラップ部にくびれ部から排出されるウイルスを含んだ液体成分が導入されると、ウイルスとウイルス分離培地とが混合され、当該混合物を後の検査や研究用の検体として、ウイルスの感染性が保たれた状態で、そのまま利用することができる。
そこで、本構成のウイルス採取具では、呼気導入部とトラップ部との間に亘って、液体浸透性を有する浸透布を着脱可能に設けている。これにより、ウイルスを含んだ液体成分はトラップ部に配置したウイルス分離培地へ確実に導かれる。
また、このような浸透布を設けることにより、液体成分(水分)の気化が促進される一方で、固体成分である粒子状のウイルスの飛散は防止される。
さらに、液体浸透性を有する浸透布は、上側からウイルスを含んだ液体成分が浸透すると同時に下側からウイルス分離培地が浸透するので、浸透布を介して両者が確実に接触する。従って、必要にして十分な時間をかけて吸引した後に浸透布を取り外し、浸透したウイルスを含む液体を遠心分離機等によって分離することにより、ウイルスとウイルス分離培地とが混合された良好な検体を得ることができる。
そこで、本構成のウイルス採取具では、トラップ部に、ウイルス分離培地を充填した貯留容器を着脱可能に設けてある。これにより、トラップ部の側壁への液体成分の付着が防止され、ウイルスを含んだ液体成分は効率よく貯留容器に回収される。
また、検体を検査や研究に供する場合は、貯留容器をそのままトラップ部から取り外すだけでよいので、検体のロスを最小限にできるだけでなく、準備の手間が省ける。
しかし、本構成のウイルス採取具であれば、冷却部により呼気の温度をより低下させることができるため、患者の呼気中の水蒸気を、確実且つ十分に凝縮し、結露させ、ウイルスを含む液体をトラップ部に捕捉させることができる。
ただし、本発明のウイルス採取装置は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることを意図せず、それらと均等な構成も含む。
図1は、本発明の第1実施形態によるウイルス採取具10を示す図である。図2は、患者がウイルス採取具10を実際に装着している状態を示す図である。
ウイルス採取具10の使用状態においては、図2に示すように、呼気導入部2の導入口2cに、通気性の又は通気孔を有するマスクMを接続し、患者の呼気はマスクMを介して、周囲の大気とともに呼気導入部2に導入される。呼気導入部2のうち、患者の呼気が導入される導入口2cと反対側は、下方に向けて徐々に縮径したくびれ部2dを形成している。このようなくびれ部2dを有する呼気導入部2において、呼吸器系ウイルスに感染した患者の呼気を、後述する吸引部4に接続した吸引ポンプPを作動させて本体1の内部に導入すると、呼気はくびれ部2dの開口部手前で一旦圧縮され、その後直ちにくびれ部2dの開口部から放出されて減圧される。その結果、呼気の温度が低下して呼気中の水蒸気が凝縮し、液化する。このとき、呼気に含まれるウイルス(感染性ウイルス)は凝縮した液体中に取り込まれる。
トラップ部3には、呼気導入部2のくびれ部2dから排出されるウイルスを含んだ液体成分が導入される。さらに、トラップ部3には、ウイルスの活性が損なわれ難いウイルス分離培地(Virus Isolation Medium;VIM)5が配置されている。このウイルス分離培地5は、例えば、1%のウシ血清アルブミン(Bovine Serum Albumin)、リン酸バッファ(Phosphate Buffered Saline;PBS)、及び雑菌や真菌を除去するための抗生物質等の混合物で構成される。
そこで、本実施形態では、呼気導入部2とトラップ部3との間に亘って、液体浸透性を有する浸透布6を着脱可能に設けている。浸透布6は、例えば、円筒形に形成したガーゼを用いることができる。この場合、円筒形ガーゼの一端をくびれ部2dの開口部を覆うように呼気導入部2の側に装着し、他端をトラップ部3に溜められたウイルス分離培地5に浸漬させる。これにより、くびれ部2dから排出されたウイルスを含んだ液体成分は、浸透布6を上方から下方に浸透し、トラップ部3に配置したウイルス分離培地5へと確実に導かれる。また、ウイルスを含んだ液体成分は浸透布6をゆっくりと移動することにより液体成分(水分)の気化が促進されるため、気化熱による冷却効果も得られる。一方、固体成分である粒子状のウイルスは、凝縮した液体成分に確実に取り込まれるため、飛散が防止される。
また、筒状部材4bの底部を閉鎖し、側面のみに複数の穴4dを設けることも可能である。この場合、分岐部1bの内部に存在する気体の乱れが少なくなるとともに、気体成分のみを筒状部材4bの側方からゆっくりと通流させることができるため、患者の呼気に含まれる粒子状のウイルスは穴4dに吸引されず、トラップ部3に効率よく捕捉される。なお、吸引部4は本体1に一体形成しても構わない。
本実施形態の場合、冷却部7は、トラップ部3を下方から全体を覆うことができる程度の大きさを有する容器に、冷媒として約−20℃に冷却した飽和食塩水を入れたものとして構成される。冷媒には、上記飽和食塩水の他にもポリエチレングリコール等の保冷剤を使用することもできる。
このような冷却部7を設けることにより、本体1の内部に導入される呼気の温度をさらに低下させることができる。その結果、患者の呼気中の水蒸気を、確実且つ十分に凝縮し、結露させ、ウイルスを含む液体をトラップ部3に捕捉させることができる。
次に、第1実施形態によるウイルス採取具10を用いて、検査用の検体を採取した実施例について説明する。
本実施例では、図2に示す態様で患者にウイルス採取具10を装着し、得られた検体の量を計測した。具体的には、ウイルス採取具10に室内の空気を導入したときに得られたウイルス分離培地5の容積(ブランク試験)と、患者の呼気を導入したときに得られたウイルス分離培地5の容積(ウイルス採取試験)とを比較し、採取した検体の量を求めた。試験条件は以下のとおりである。
・試験時間:10分
・初期のウイルス分離培地の量:3ml
・初期のトラップ部の温度:25℃
・試験中の室温:25℃(一定)
・試験中のポンプ吸引量:20リットル/分(一定)
一方、ウイルス採取試験において、10分後のウイルス分離培地5の量は2.5mlであり、ブランク試験よりもウイルス分離培地5の減少量は少なかった。また、1分後より、トラップ部3の温度はブランク試験と同様に10℃まで低下した。
これらの結果から、本発明のウイルス採取具10を使用すると、ウイルスに感染した患者が呼吸を行うだけで、2.5ml−2.0ml=0.5mlのウイルスを含んだ呼気の液体成分を、10分程度で採取できると考えられる。この量は、インフルエンザウイルス等の呼吸器系ウイルスを検出するためには十分な量である。
インフルエンザウイルスに感染している患者の鼻汁(ウイルス数:約106個/ml)を生理食塩水で10−1〜10−4倍に希釈し、これらの希釈サンプルを超音波霧化機で霧化させたものを、本発明のウイルス採取具10を用いて液化し、検体を生成できるかを確認した。
結果は、何れの濃度の希釈サンプルも、呼気導入部2のくびれ部2dを通過する際に凝縮して液化され、ウイルス分離培地5と混合されて所定の検体を生成することができた。
(2)フラスコをCO2インキュベータに投入し、約37℃で、約90分間インキュベートする(細胞への吸着)。
(3)CO2インキュベータからフラスコを取り出し、フラスコ中の液体成分を捨てる。
(4)接種後のMDCK細胞を、抗生物質を含ませたリン酸バッファで洗浄する。
(5)洗浄したMDCK細胞を、検査用培地で培養する。
(6)インフルエンザウイルスが十分量存在する場合、ウイルスは細胞内で増殖し、特有の細胞変性効果(ウイルスに感染した細胞が浮き上がった状態)が1週間以内に発現する。
図3は、本発明の第2実施形態によるウイルス採取具20の正面図である。なお、この第2実施形態のウイルス採取具20において、第1実施形態のウイルス採取具10と同様の構成については、同じ参照符号を付して詳細な説明を省略する。
また、トラップ部3の底部を取り外し可能とし、この底部を貯留容器8としても構わない。
ウイルスに感染した患者の呼気には、ウイルスを含む飛沫の他に、痰や唾液等の異物が含まれている場合がある。また、呼気中のウイルスも種類によってサイズが異なる。
そこで、目的のウイルスを精度よく採取するために、上記第1実施形態のウイルス採取具10、又は上記第2実施形態のウイルス採取具20において、呼気導入部2の導入口2cにプレフィルタを設けることも有効である。この場合、プレフィルタのポアサイズは、目的のウイルス(飛沫)は通過させるが、それより大きい物体は略遮断できるものを採用する。
また、プレフィルタとして、飛沫核を通過させるが飛沫は遮断するポアサイズのものを採用することもできる。この場合、例えば、プレフィルタを装着したウイルス採取具10,20を病室内に静置し、吸引ポンプPを作動させる。その結果、空気中に浮遊する飛沫核がプレフィルタを通過して採取されれば、ウイルスが空気感染するという一定の証拠を得ることができる。
2 呼気導入部
2d くびれ部
3 トラップ部
4 吸引部
5 ウイルス分離培地
6 浸透布
7 冷却部
8 貯留容器
10 ウイルス採取具
20 ウイルス採取具
Claims (4)
- ウイルスに感染した患者の呼気から前記ウイルスを採取するウイルス採取具であって、
本体に、
前記患者の呼気を導入する呼気導入部と、
前記患者の呼気に含まれる前記ウイルスを捕捉するトラップ部と、
前記患者の呼気を含む気体成分を吸引する吸引部とを備え、
前記呼気導入部は前記患者の呼気を圧縮及び膨張させることによって水蒸気を凝縮し、液化させるくびれ部を有し、前記トラップ部に前記くびれ部から排出される前記ウイルスを含んだ液体成分が導入されるウイルス分離培地を配置してあるウイルス採取具。 - 液体浸透性を有する浸透布を、前記呼気導入部と前記トラップ部との間に亘って着脱可能に設けてある請求項1に記載のウイルス採取具。
- 前記トラップ部に、前記ウイルス分離培地を充填した貯留容器を着脱可能に設けてある請求項1又は2に記載のウイルス採取具。
- 前記トラップ部を外部から冷却する冷却部を備えた請求項1〜3の何れか一項に記載のウイルス採取具。
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