JP4113567B2 - 高悪性度乳癌の治療剤 - Google Patents

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Description

本発明は、高悪性度乳癌の治療剤に関する。より詳細には、高悪性度乳癌特異的蛋白質に対する抗体を用いる高悪性度乳癌の治療剤に関する。
乳癌は、1998年の厚生労働省がん研究助成金「地域がん登録の精度向上と活用に関する研究」によれば、罹患数は年間33,676人、年齢調整別罹患率では52.2/10万人と、女性の悪性新生物で第一位であり、これらの数字は1970年と比して約3倍になっている。乳癌患者数は年々増加しており、2015年には48,000人、56.9/10万人に達するものと推定されている。乳癌は比較的予後が良好であるため、死亡率は、2001年厚生労働省大臣官房統計情報部「人口動態統計」では女性癌患者の部位別で5位であるが、50歳以降で死亡率が高い。また、都市において標準化死亡率が高い傾向にあり、1999年の対がん協会報で鹿児島県の73.5%に比して東京都は132.2%である。乳癌罹患者数の増加は、近年のライフスタイルの変化に関連があるとされており、例えば、月経期間の長期化、閉経後ホルモン補充療法、アルコール摂取などが原因として挙げられている。
乳癌はそのほとんどが、乳管上皮由来の浸潤性乳管癌(invasive ductal carcinoma)である。適切な外科治療や化学療法により、一旦は寛解するが、ごく初期より転移を来していることが多く、年余を経て再発し、骨、肝、脳ならびに肺転移(癌性リンパ管症)を惹起し、死亡することもしばしばみられる。5年生存率は、腫瘍が2cm以下かつリンパ節転移なしのステージI症例では90%であり、そして皮膚・胸壁浸潤ならびにリンパ節10個以上の転移や遠隔転移のあるステージIII〜IV症例では70%程度である。
これらの生存率を規定する予後因子で最も重要なものはリンパ節転移である。多くの乳癌において、リンパ節を経た全身転移機序が推定されており、近年では、乳癌は全身病として把握される傾向にある。転移の診断における特異的マーカーは少なく、診断は超音波を主とする画像診断あるいは穿刺吸引細胞診によるところが多い。治療法としては、外科的切除以外に、抗ホルモン剤治療、術前化学療法が有効であり、現在、HER2/neuに対するモノクローナル抗体(ハーセプチン:Herceptin)が分子標的薬として転移を有する症例に適応されている。
乳癌の平均予後は、施設に応じて異なり、5年生存率で80%以上であり、全症例の5%程度である。しかし、5年生存率で40%程度の極端に予後の悪い一群、特に、腫瘍の大きさと関係なく早期より広範な(多数の)リンパ節転移を示す一群が存在する。これは、世界保健機構の組織分類で、浸潤性微小乳頭状癌(invasive micropapillary carcinoma)とされる一群であり、炎症性乳癌が代表例である。乳癌の悪性度、局所進展度、およい転移を規定する因子として、細胞増殖能、エストロゲンレセプター、プロゲステロンレセプター、HER2などが知られている(非特許文献1〜5)。
癌転移、特に乳癌の転移について、乳癌患者の骨髄におけるMUC1およびケラチン19をリスクマーカーとし、各mRNA発現レベルを定量し、総合的に発現量を検査する方法が開発されている(特許文献1)。しかし、現状では、乳癌の悪性度を簡便に検出する手段または方法は十分に確立されていない。
特開2004−151003号公報 米国特許第5,185,450号明細書 Woelfe U.ら,Cancer Res.,2003年,63巻,pp.5679-5684 Jacquemier J.ら,Cancer Res.,2005年,65巻,pp.767-779 Lim SM.およびElenitoba-Johnson KSJ.,Lab. Invest.,2004年,84巻,pp.1227-1244 Adam PJ.ら,J. Biol. Chem.,2003年,278巻,pp.6482-6489 Jessani N.ら,Proc. Natl. Acad. Sci. USA,2002年,99巻,pp.10335-10340 Schuppan D.ら,J. Biol. Chem.,1990年,265巻,pp.8823-8832 Just M.ら,J. Biol. Chem.,1991年,266巻,pp.17326-17332 Atherton A.ら,Cell Tissue Res.,1998年,291巻,pp.507-511 Ehnis T.ら,Exp. Cell Res.,1996年,229巻,pp.388-397 Ehnis T.ら,J. Biol. Chem.,1997年,272巻,pp.20414-20419 Paulus W.ら,Am. J. Pathol.,1993年,143巻,pp.154-163
本発明は、高悪性度乳癌を簡便に検出するための検出剤および高悪性度乳癌の治療剤を提供することを目的とする。
本発明は、高悪性度乳癌の検出剤を提供し、該検出剤は、コラーゲンXIVに対する抗体あるいはその改変体もしくは誘導体またはフラグメントを含む。
1つの実施態様では、上記抗体あるいはその改変体もしくは誘導体またはフラグメントが標識されている。
本発明はまた、高悪性度乳癌の他の検出剤を提供し、該検出剤は、コラーゲンXIVをコードするDNAに特異的なプライマー対を含む。
本発明はさらに、上記のいずれかの検出剤を含む、高悪性度乳癌の検出・診断用キットを提供する。
本発明は、細胞・組織診材料における高悪性度乳癌の検出方法を提供し、該方法は、
細胞・組織診材料とコラーゲンXIVに対する抗体あるいはその改変体もしくは誘導体またはフラグメントとを接触させる工程;および
該細胞・組織診材料と結合した該抗体あるいはその改変体もしくは誘導体またはフラグメントを検出する工程;
を含む。
本発明はまた、細胞診材料における高悪性度乳癌の他の検出方法を提供し、該方法は、
細胞診材料からcDNAを調製する工程;
cDNAをテンプレートとして、コラーゲンXIVをコードするDNAに特異的なプライマー対を用いてPCRを行う工程;および
得られたPCR産物を検出する工程;
を含む。
本発明はさらに、高悪性度乳癌の治療剤を提供し、該治療剤は、コラーゲンXIVに対する抗体あるいはその改変体もしくは誘導体またはフラグメントと抗癌剤との結合体を含む。
本発明はまた、高悪性度乳癌の治療方法を提供し、該方法は、
コラーゲンXIVに対する抗体あるいはその改変体もしくは誘導体またはフラグメントと抗癌剤との結合体を有効量で高悪性度乳癌患者に投与する工程を含む。
1つの実施態様では、上記の治療剤または治療方法において、上記抗癌剤は、アントラサイクリン系抗癌剤、タキソール系抗癌剤、シクロフォスファミド、およびフルオロウラシル誘導体からなる群より選択される。
本発明によれば、高悪性度乳癌をより精度良く検出・診断することができる。そのため、乳癌の悪性度判定が可能であり、そして術前・術後補助化学療法のレジメを決定することができる。また、本発明の乳癌治療剤を用いれば、高悪性度乳癌を効率的に治療することができる。
本発明は、コラーゲンXIVが、高悪性度乳癌に特異的に発現していることを見い出したことに基づく。以下、本発明における用語の定義ならびに本発明の実施態様について説明する。
(悪性度)
癌の悪性度(malignancy、grade of malignancy)については、生物学的、細胞学的、組織学的悪性度などの種々の表現があり、厳密な定義はなく、曖昧な使い方がされ、一般的には低、中、および高として評価されている。病理学総論的には、癌の増殖進展の様式(浸潤性のものが高い)、癌転移形成の有無(多数、複数の臓器への転移がみられるものが高い)などの肉眼的な所見と、癌細胞の異型性(発生母地の正常な細胞との形態学的な隔たり;最近では、核異型度や組織学的異型度で定量化される傾向にある)、分化度(発生母地との形態学的な隔たり)などの形態学的な所見とによって決められている。実際的には、癌の悪性度は、その形態学的な分化度や組織型により、集約されることが多い。
本発明においては、臨床的悪性度、局所の広がりやすさ(短い時間で広範な病変を形成するものが高い)、転移のしやすさ(短い時間、多数の箇所・臓器に転移するものが高い)、予後(生存期間が短いものが高い)などにより規定される。本発明においては、予後を悪性度の最も大きな因子とする。国際的には、TNM分類(T:腫瘍の大きさおよび広がり、N:リンパ節転移の有無および広がり、M:転移の有無)により規定される病期(進行状態、ステージ)が最も予後を反映する。なお、手術材料での検索による判定(最終判定)には、小文字または頭にp(pathological)をつけたものが用いられる(例えば、pT、pNもしくはn)。
高悪性度とは、予後の悪いものをいう。乳癌の場合、最も影響のある因子がリンパ節転移である。本発明では、腫瘍径が小さくかつ遠隔転移がない(外科的治療の対象となる)症例ではあるが、高度のリンパ節転移、すなわち転移リンパ節数が10個以上のもの(n3)を、高悪性度(広範リンパ節転移)乳癌と定義する。これらに対しては、通常、塩酸ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ドセタキセル水和物(タキソテール)による術前を含む化学療法や放射線療法が推奨される。術後補助化学療法として、現在の乳癌の標準的療法であるアドリアマイシン+シクロホスファミド(AC)にパクリタキセル(タキソール)を追加する療法は、AC療法に対し、年間死亡率を26%低下させることがわかっているが、心毒性を増加させるため、その使用は制限されている。
(コラーゲンXIV)
コラーゲンXIV(undulin;UND/UN)は間質に存在する細胞外基質であり、巨大な糖蛋白である。疎性であり、緻密膠原線維に限局してみられ、成熟したコラーゲン線維と関連がみられる(非特許文献6)。コラーゲンXIVは1780アミノ酸よりなり、SDSポリアクリルアミドゲルでは、1000kDa以上(193526Da)の分子であり、還元条件では、270kDa、190kDa、および180kDaのポリペプチドである(非特許文献7)。コラーゲンXIVは、三本のコラーゲンXIVα1(ポリペプチド鎖、α鎖)が合わさってヘリックス構造を形成し、そしてコラーゲンIXおよびXIIとのホモロジー領域にS−S結合を有する三重らせん構造体である。カルボキシル末端部の違いによる二種のアイソフォームが知られており、8.5kb、6.5kb、および4.2kbのトランスクリプトからのUN1と、5kbのトランスクリプトからのUN2である。
蛋白構造において、von Willebrand factor Aホモロジー領域、およびフィブロネクチンやテネイシン(tenascin)のIII型ホモロジー領域を有する。UN1では、カルボキシル末端のショートプロリンリッチセグメントに引き続き、7回の完全および1回の不完全なフィブロネクチンIII型ホモロジー領域を有する。UN2では、カルボキシル末端のユニーク酸性ドメインに続く2回の完全および1回の不完全フィブロネクチンIII型ホモロジー領域を有する。
コラーゲンXIVが発現する組織は、Human Protein Reference Database(HPRD)においては、皮膚、胎盤、神経系、筋、肝、子宮、ならびに血管とされているが、靱帯および滑膜での発現の報告もある。胎生期では、中皮細胞の基底膜側に発現していると報告されているが、発生における役割は不明である。乳腺では、小葉間組織に発現し、これはコラーゲンIとは対照的であり、通常間質にみられるコラーゲンI、IVなどの安定化に寄与している可能性が示唆されている(非特許文献8)。また、CD44のコンドロイチン/デルマタン硫酸フォーム(非特許文献9)、デコリン(インビボ;プロテオグリカン(PG)II、PGII、PG40)(非特許文献10)ならびにインテグリンβ1(CD29)(非特許文献11)が、コラーゲンXIVと結合する、あるいは、コラーゲンXIVの受容体であると報告されている。92kDaゲラチナーゼによるコラーゲンIドメインの切断も報告されている。これらより、コラーゲンXIVは、発生・分化に重要な機能および細胞増殖の制御に関与しているものとの推定がなされている。
本発明において、コラーゲンXIVが高悪性度乳癌に特異的に発現することが初めて明らかになった。なお、癌では、歯原性粘液腫(odontogenic myxoma)、エナメル芽細胞線維腫(ameloblastic fibroma)(これらは歯原性腫瘍)、脳腫瘍、および浸潤性膵管癌で、コラーゲンXIVの発現が報告されている。しかし、発現のみの報告で、意義付けはなされていない。
(乳癌の検出および診断)
高悪性度乳癌に特異的に発現する蛋白質を検出することにより、乳癌の悪性度判定ならびに術前・術後補助化学療法のレジメ決定が行われ得る。悪性度に基づく予後推定および癌個性決定は、近年のテーラーメード医療に必須である。高悪性度乳癌は、化学療法と放射線療法とを組み合わせた全身療法の選択が必要となるため、予後因子、バイオマーカーによる悪性度診断、ならびにこれによる術前・術後化学療法の選択および迅速な治療への展開は、患者の生存期間延長およびQOL向上のために重要である。
より詳細には、高悪性度乳癌を検出・診断するための手法は、以下の3通りが考えられる:
(1)細胞診材料を用いた低侵襲性検出・診断手法であって、PCR法を用いる手法;
(2)細胞診材料を用いた低侵襲性検出・診断手法であって、抗体を用いる手法;および
(3)組織を用いた抗体を用いる検出・診断手法(迅速診断を含む)。
上記(1)〜(3)について、以下、コラーゲンXIVα1を標的にする場合を例に挙げて、より具体的に説明する。
(1)細胞診材料を用いた低侵襲性検出・診断手法であって、PCR法を用いる手法
初診時などに、診断のための細胞診採取が標準化されている。そこで、採取した細胞の一部より、mRNAを抽出し、RT−PCRを行い、コラーゲンXIVα1発現レベルを検討し、高悪性度乳癌の診断を行う。
以下の一連の操作を、例えば、COL14A1(コラーゲンXIVα1をコードする遺伝子)特異的プライマーを用いて行う。
(1−a)乳腺腫瘤より、例えば、超音波ガイド下に21−23G針を用いて細胞を穿刺吸引する;
(1−b)得られた細胞を生理食塩水などの等張溶液にて洗浄し、例えば1200rpmにて5分間遠心分離して、細胞沈渣を作成する。もしくは、通常に作成された細胞診標本より癌細胞をクイックマウントまたはダイセクションにて単離する。これらの細胞を用いて、直接的にmRNAもしくは全RNAを、当業者が通常用いるオリゴdT法やグアニジン法を用いたキットにより抽出する;
(1−c)mRNAまたは全RNAをテンプレートとし、当業者が通常行うように逆転写酵素による逆転写を行い、ssDNA(cDNA)を作成する;
(1−d)COL14A1特異的プライマーを用いて、cDNAより定量または半定量PCRを行い、COL14A1発現産物(コラーゲンXIVα1)を検出・定量する;そして
(1−e)コラーゲンXIVα1発現量とカットオフ値との比較により、高悪性度乳癌であるかにつき診断を行う。
(2)細胞診材料を用いた低侵襲性検出・診断手法であって、抗体を用いる手法
診断のために作成した細胞診標本を用い、コラーゲンXIVα1に対する抗体を用い、免疫細胞化学法により、コラーゲンXIVα1発現を検出し、スコア化することにより、高悪性度乳癌の診断を行う。
以下の一連の操作を、例えば、抗コラーゲンXIVα1抗体を用いて行う。
(2−a)乳腺腫瘤より、例えば、超音波ガイド下に21−23G針を用いて細胞を穿刺吸引する;
(2−b)スライドガラスに直接塗抹するか、もしくは、生理食塩水などの等張溶液にて洗浄し、例えば、1200rpmにて5分間遠心分離して細胞沈渣を作成後、スライドガラスに塗抹する。塗抹後、95%エタノールまたはエタノールを含む固定剤にて湿固定して、細胞診標本を作成する;
(2−c)作成された細胞診標本を用い、例えば、以下の(2−c−1)〜(2−c−5)のように免疫細胞化学を行う;
(2−c−1)リン酸緩衝化生理食塩液(PBS)などにて親水化する;
(2−c−2)アルブミンなどによる非特異的吸着反応の阻害を行う;
(2−c−3)抗コラーゲンXIVα1抗体を標本に滴下して、一次反応を行う;
(2−c−4)洗浄剤にて未反応抗体を洗浄した後、二次抗体を添加し、二次反応を行う;
(2−c−5)未反応抗体を洗浄した後、適切な基質を用いて発色させ、陽性像を検鏡する;そして
(2−d)細胞質の陽性像を、陰性0から強陽性3+の四段階で評価し、強陽性を高悪性度乳癌と判定する。
ここで用いる抗コラーゲンXIVα1抗体は、直接標識抗コラーゲンXIVα1抗体であってもよい。この場合は迅速診断法になり得、(2−c−3)〜(2−c−5)の操作は以下の(2−c−3’)のように行われ得る。
(2−c−3’)作成された細胞診標本を、ペルオキシダーゼなどで標識した抗コラーゲンXIVα1抗体と反応させる。
(3)組織を用いた抗体を用いる検出・診断手法
診断のために作成した細胞・組織診用組織標本を用い、コラーゲンXIVα1に対する抗体を用い、免疫細胞化学法により、コラーゲンXIVα1発現を検出し、スコア化することにより、高悪性度乳癌の診断を行う。
以下の一連の操作を、例えば、抗コラーゲンXIVα1抗体を用いて行う。
(3−a)乳腺腫瘤より、以下のいずれかのように操作して標本を得る。押捺標本または切除材料凍結組織については、エタノール、ホルマリン溶液などで固定する。針生検または切除材料については、ホルマリン固定を行い、当業者が通常行う方法により細胞・組織診用組織標本を作製する;
(3−b)作成された細胞・組織診用組織標本を用い、例えば、以下の(3−b−1)〜(3−b−5)のように免疫細胞化学を行う;
(3−b−1)リン酸緩衝化生理食塩液(PBS)などにて親水化する;
(3−b−2)3%(v/v)過酸化水素添加メタノールなどにて、内因性ペルオキシダーゼ活性の阻害およびアルブミンなどによる非特異的吸着反応の阻害を行う;
(3−b−3)抗コラーゲンXIVα1抗体を標本に滴下して、一次反応を行う;
(3−b−4)洗浄剤にて未反応抗体を洗浄した後、二次抗体を添加し、二次反応を行う;
(3−b−5)未反応抗体を洗浄した後、適切な基質を用いて発色させ、陽性像を検鏡する;そして
(3−c)細胞質の陽性像を、陰性0から強陽性3+の四段階で評価し、強陽性を高悪性度乳癌と判定する。
より具体的には、抗コラーゲンXIVα1抗体として直接標識抗コラーゲンXIVα1抗体を用いてもよい。この場合は迅速診断法になり得、(3−b−3)〜(3−b−5)の操作は以下の(3−b−3’)のように行われ得る。
(3−b−3’)作成された細胞・組織診用組織標本を、ペルオキシダーゼなどで標識した抗コラーゲンXIVα1抗体と反応させる。
上記の(1)〜(3)の手法により、高悪性度乳癌に特異的に発現する蛋白質が検出され、高悪性度乳癌であると診断されると、上述のように術前・術後補助化学療法のレジメを決定することができる。
上記(1)の手法で用いられる特異的プライマーは、高悪性度乳癌に特異的に発現する蛋白質をコードするDNA配列が公知であるため(例えば、NCBI genbank accession No. NM 21110)、このDNA配列に基づいて当業者によって適宜決定され得る。
上記(2)および(3)の手法で用いられる抗体は、高悪性度乳癌に特異的に発現する蛋白質に対する抗体あるいはその改変体もしくは誘導体またはフラグメントであり得る。好適には、高悪性度乳癌に特異的に発現する蛋白質の機能部位に対する特異的抗体であり得る。抗体部分は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のいずれであってもよく、好適にはモノクローナル抗体であり得る。このような抗体は、当業者が通常用いる方法によって製造され得、あるいは市販の抗体を用いてもよい。また、抗体は、当業者が通常用いる標識(酵素、放射性同位元素、蛍光分子など)で適切に標識されていてもよい。
上記の(1)〜(3)の診断手法は、好適には、上記の特異的プライマーあるいは特異的抗体を含む診断キットを用いて行われ得る。このような診断キットは、少なくとも上記の特異的プライマーあるいは特異的抗体を含み、これらの診断手法に必要なその他の試薬を適宜含む。
乳癌の悪性度の診断は、上記の高悪性度乳癌に特異的に発現する蛋白質の検出による手法と、他の従来用いられている癌マーカーの検出による手法(例えば、乳癌転移迅速診断技術CK19−OSNA法:特許文献1参照)とを組み合わせて行ってもよい。
(乳癌の治療)
乳癌を治療するためには、高悪性度乳癌に特異的に発現する蛋白質を標的とした分子標的療法が可能である。具体的には、高悪性度乳癌に特異的に発現する蛋白質に対する抗体あるいはその改変体もしくは誘導体またはフラグメントに対して、抗癌剤などが化学修飾された結合体が用いられ得る。抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のいずれであってもよく、好適にはモノクローナル抗体であり得る。好適には、抗体として、高悪性度乳癌に特異的に発現する蛋白質の機能部位に対する特異的抗体が用いられ得る。このような抗体は、当業者が通常用いる方法によって製造され得、あるいは市販の抗体を用いてもよい。
このような結合体としては、コラーゲンXIVα1を標的とする場合を例に挙げると、例えば、(i)抗コラーゲンXIVα1抗体とアドリアマイシンなどのアントラサイクリン系抗癌剤とのアミド基などを介した架橋結合による抗コラーゲンXIVα1抗体−抗癌剤結合体;(ii)抗コラーゲンXIVα1抗体とパクリタキセル(タキソール)、ドセタキセル水和物(タキソテール)などのタキソール系抗癌剤との抗コラーゲンXIVα1抗体−抗癌剤結合体;(iii)抗コラーゲンXIVα1抗体とシクロフォスファミドとの抗コラーゲンXIVα1抗体−抗癌剤結合体;(iv)抗コラーゲンXIVα1抗体とフルオロウラシル誘導体との抗コラーゲンXIVα1抗体−抗癌剤結合体などが挙げられる。
本発明の乳癌治療剤は、上記のような高悪性度乳癌に特異的に発現する蛋白質に対する抗体そのもの、あるいはその改変体もしくは誘導体またはフラグメントと、抗癌剤などとの結合体を含む。このような結合体は、当業者が通常用いる方法によって適宜製造され得る。結合体としては、マレイミド法やピリジルジスルフィド法などによるジスルフィドヒンジ;あるいはsulfo−SMCC(スルホスクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキセン−1−カルボキシレート)などのヘテロ二官能性交差結合試薬を用いたチオール基−アミノ基結合による抗体−抗癌剤結合体;カルボキシル基−アミノ基結合による抗体−抗癌剤結合体;標的指向性薬剤との抗体−薬剤結合体などが挙げられる。
本発明の乳癌治療剤は、通常の医薬製造に用いられる薬学的に受容可能なキャリアを含有し得る。乳癌治療剤の形態としては、特に限定されないが、その投与形態に応じて、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、注射剤、植込剤(インプラント)などの形態に調製される。非経口投与用には、滅菌の水性または非水性溶液、懸濁液、あるいは乳化液の形態であり得る。
注射剤などに用いられ得る薬学的に受容可能なキャリアとしては、水、緩衝化水、生理食塩液などの種々の水性キャリアが挙げられる。他の適切なベヒクルの例としては、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、ゼラチン、硬化ナファレン、およびオレイン酸エチルのような注射用有機エステルが挙げられる。本発明の治療剤はまた、保存剤、湿潤剤、緩衝化剤、乳化剤、および/または分散剤のような補助物質を含み得る。植込剤には、生体適合性、生分解性のラクチドポリマー、ラクチド/グリコシドコポリマー、またはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマーが、活性成分の放出を制御するために使用され得る。経口投与用の薬学的に受容可能なキャリアとしては、ラクトース、デキストリン、スクロース、マンニトール、コーンスターチ、ソルビトールなどの賦形剤、結晶セルロース、ポリビニルピロリドンなどの補助剤が挙げられ、これらを単独または適宜組み合わせて使用することができる。さらに、香味料、着色料、甘味料などの添加剤も適宜使用できる。これらの乳癌治療剤は、各々の形態に適した方法で製造することができる。これらの添加剤の含有量は当業者に適切に選択され得る。
本発明の乳癌治療剤は、経口投与または非経口投与のいずれに使用されてもよい。好適には、非経口的に局所または全身投与され得る。
単回投与剤形を製造するためにキャリア材料と合わせる活性成分の量は、処置する個体および特定の投与態様に依存して変動する。一般的には、乳癌治療剤は、乳癌患者において乳癌を低減または除去するに十分な量(すなわち、有効量)で投与されるべきである。
投与量は、単回投与として投与され得るか、あるいは多数回投与に分割され得る。一般的に、抗癌剤においては、多剤組み合わせの上、一回投与の多数回反復を、3〜4週毎に、4〜6サイクルで計12〜24週程度の投与期間が必要とされ得、また、ハーセプチン(一般名:トラスツズマブ)では、90分間静脈注射、毎週、継続投与することが必要とされ得るが、所望の投与量は、通常は少なくとも数日間かつ少数回に設定された間隔で投与されるべきである。投与量は、例えば、投与時間;投与経路;治療剤の性質;排泄速度;癌の重篤度;ならびに患者の年齢、体重、および健康状態などの種々の因子に依存して調節され得る。例えば、FEC(フルオロウラシル、エピルビシン、およびシクロフォスファミドの併用)療法においては、患者の体表面積当たりでフルオロウラシル500mg/mおよびシクロフォスファミド500mg/mに加えて、患者の年齢や全身状態などを考慮して、エピルビシンを50〜100mg/mの範囲で3週毎に1回投与を、通常は6サイクル反復する。また、パクリタキセルの場合は、80〜100mg/mを毎週と、175〜210mg/mを3週毎に4回反復投与する。
(実施例1:高悪性度乳癌(広範リンパ節転移乳癌)に関わる標的分子の網羅的蛋白質解析)
(対象)
初診時もしくは初回手術時に、UICC (union internationale contre le cancer) 第6版 (2002) のpN3のうち、同側に10個以上のリンパ節転移を認めた症例を、高悪性度乳癌(広範リンパ節乳癌)と定義した。また、World Health Organization/International Agency for Research on Cancer編,WHO Classification of Tumours,Pathology and Genetics of Tumours of the Breast and Female Genital Organs (2003年)で定義される浸潤性微小乳頭状癌(invasive micropapillary carcinoma:IMPC)も上記に含めた。高悪性度乳癌症例13例、ならびに対照としてサイトケラチン19をマーカーにしたRT−PCR(乳癌転移迅速診断技術CK19−OSNA法:特開2004−151003号公報参照)により、分子生物学的にリンパ節転移陰性と確認された症例6例を検索対象とした(表1)。
Figure 0004113567
ここで、浸潤性微小乳頭状癌(invasive micropapillary carcinoma:IMPC)とは、比較的最近になって分類された浸潤性乳管癌の1つであり、乳癌全体の約2%を占めている。平均年齢は59歳であり、一般的な浸潤性乳管癌と同様である。これは、同様に予後の悪い膀胱原発のmicropapillary carcinomaに類似する。極めて悪性度が高く、約95%は診断時にリンパ節転移を示す。予後はリンパ節転移、腫瘍径、予後因子を考慮すると他の組織型と同様であるとの報告もみられる。リンパ節転移は乳癌の最大の予後因子であり、本組織型は、高度のリンパ節転移を来す点から予後不良群といえる。組織学的には、micropapillary componentは、IMPCとは関わりなく全乳癌症例の約5%までにみられるが、micropapillary componentの量は予後に影響を与えない。切除材料での平均腫瘍径は約2cm(0.1〜10cm)であり、組織学的には、三角形の血管を欠く乳頭状集塊または桑実状(morula)様の上皮集塊を形成し、細胞間質間裂隙形成があり、線維・硬化性間質を伴う。通常、組織学的異型度(histological grade)は高く、高度の血管・リンパ管浸潤をみる(水様、粘液様物質をためるリンパ管様管腔内を腫瘍細胞が泳ぐような像を示す)。これは、上皮膜抗原(epithelial membrane antigen:EMA)などで確認できる極性の逆転によるものとされる。リンパ節転移巣および胸水浸潤癌細胞も原発巣同様の組織像を示す。古典的予後因子は、bcl−2+;70%、ER+;70%、PgR+;45%、HER2+;36%、p53+;12%である。分子生物学的には、第8番染色体長腕欠損の報告がある。
(手順)
高悪性度乳癌症例(13例)の他に、組織学的にリンパ節転移が見られない症例(6例)の凍結保存された切除組織を使用した。各組織に対して、コラゲナーゼ処理を行い細胞に分離した。分離した細胞を適切な緩衝液中でホモジナイザーを用いて破砕後、適切な回転数で遠心分離を行った。緩衝液の組成および遠心分離器の回転数の違いにより、細胞質、核、および膜に分画した。細胞質の画分をDTT/重炭酸アンモニウムで還元後、ヨードアセトアミドでS−カルボキシアミドメチル化後、37℃にて12〜16時間トリプシン消化を行った。消化後TFAでpH2〜3に調整し、酵素反応を停止した。トリプシン消化により、蛋白質からペプチドに分解した試料を2次元液体クロマトグラフィー(2DLC;Michrom BioResources, Inc.製)に注入し、イオン交換カラムであるSCX Microtrap(Michrom BioResources, Inc.製)を用いて25mM、50mM、100mM、150mM、200mM、および500mMのギ酸アンモニウムで溶出後、逆相カラムであるMagic C18(Michrom BioResources, Inc.製)を用いて、10〜98%(v/v)アセトニトリル/0.1%(v/v)ギ酸で濃度勾配をかけて溶出したペプチドをイオントラップ型質量分析計(LTQ/MS/MS;Thermo Electron社製)に注入し、m/z150〜2000の範囲でフルMSスキャン後、MS/MS測定を行い、ペプチドフラグメントを検出した。SEQUESTの検索ソフトを用いて、測定したMS/MSスペクトルとデータベースとを照合し、分子量が合致するペプチドフラグメントを含む蛋白質候補をリストアップした。
次いで、下記に示すスクリーニング方法を用いて、各症例の細胞質画分にける蛋白質のリストアップから、高悪性度乳癌症例に特異的に発現する蛋白質をスクリーニングした。
(1)高悪性度乳癌症例(13例)において、蛋白質を特定する要素(Accession number)毎に蛋白質の同定をするための指標(Score)の平均値を、各試料について算出した。これを、高悪性度乳癌症例のモデル的各蛋白質の指標(Score)とした。
(2)(1)と同様に、組織学的にリンパ節転移が見られない症例(6例)において、蛋白質を特定する要素(Accession number)毎に蛋白質の同定をするための指標(Score)の平均値を、各試料について用いて算出した。これを、対照群のモデル的各蛋白質の指標(Score)とした。
(3)(1)と(2)とで得られたモデル的な各群間の各蛋白質の指標(Score)の差を算出し、その順にデータを並べ替えることにより、特異的蛋白質の情報として有用なものの順にデータを整理した。上位に並べられた各蛋白質について、各症例でのScoreを比較検討し、特異的蛋白質候補を同定した。
(結果)
<I−a>2DLSC−LTQ/MS/MSによる高悪性度乳癌(広範リンパ節転移乳癌)の標的分子の特定
病理組織学的解析より、高悪性度乳癌は、癌細胞の間質との接着性の低下ならびに極性の逆転をみることが多く、この点で、反接着作用を有すると考えられるコラーゲンXIVに着目した。
Figure 0004113567
プロテオーム解析の結果、コラーゲンXIVはdiffernce値78.774であり、N-average値19.444に比して、高悪性度乳癌に有意に発現していた。
<I−b>定量的RT−PCR法による高悪性度乳癌(広範リンパ節転移乳癌)でのCOL14A1発現の確認
検索対象乳癌症例の凍結組織より、mRNAを抽出し、cDNAを作成し、TaqManプローブ法にて定量的(RT−)PCRを行って、遺伝子発現量の検索を行った。
具体的には、まず、凍結組織をライカ社のクリオスタット(凍結切片作成装置)で100μm組織を切り出した。Microprep mRNA extraction kit(Amersham)で直接mRNAを抽出し、DNアーゼI処理(Ambion)を行ったmRNAを鋳型としてオリゴ(dT)20プライマーを用い、55℃にて60分間で逆転写(ThermoScript、Invitrogen)を行ってcDNAを得た。上記で作成されたcDNAを用い、TaqManプローブ法にて定量的PCR法を行い、遺伝子発現量を計測した。プライマー/プローブ混合物はApplied biosystem(ABI)社のAssay-on-Demand inventoried Hs000385388 ml(NM 021110)を用い、TaqMan 2×mastermix(ABI)、ならびに内在性コントロールとしてABI社のGAPDH内在性発現コントロールPrimer/probe mix(4326317E、NM 002046)を用いた。反応および計測は、ABI prism 7100 sequence detector(ABI)で行い、ΔΔCT法にて内在性コントロール補正を行って、遺伝子発現量とした。結果を図1に示す。
図1からわかるように、COL14A1のmRNA発現は、高悪性度乳癌症例(final n3)群で顕著に高かった。Wilcoxon/Kruskal-Wallis順位和検定一元配置検定で、p値は0.0353であり、有意に高悪性度乳癌で発現していることが示された。
このように、一般的な乳癌の中でも、早期にリンパ節転移を来たし、生命予後不良な一群である高悪性度(広範リンパ節転移)乳癌に関わる標的として、コラーゲンXIVα1分子を質量解析により同定し、mRNAおよび蛋白発現の点より検証した。コラーゲンXIVは、高悪性度乳癌で特異的に発現しており、予後因子を含むバイオマーカーとして臨床応用可能であり、また、治療のターゲットとなり得ることがわかった。
(実施例2:高悪性度乳癌(広範リンパ節転移乳癌)組織におけるコラーゲンXIVα1の発現解析)
ホルマリン固定パラフィン包埋標本を用い、コラーゲンXIVα1に対する抗体を用いて、免疫組織化学を行って、蛋白質発現を検討した。
(対象)
IMPC(Invasive micropapillary carcinoma)症例4例ならびに上記実施例1の高悪性度乳癌(広範リンパ節転移乳癌)症例(final n3)のうち、IMPC成分を含む症例4例の計8例を対象とした。
(手順)
ホルマリン固定パラフィン包埋標本のブロックより4μm標本をミクロトームにて薄切し、免疫染色用標本を作成した。キシロール/エタノール系列にて脱パラフィンし、リン酸緩衝化生理食塩液(PBS)にて親水化した。次いで、内因性ペルオキシダーゼ活性を阻害するために、3%(v/v)過酸化水素添加メタノールを加えた。PBS洗浄の後、非特異的吸着反応を阻害するために、Protein block serum-free(Dako)を加えた。抗コラーゲンXIVα1(LSL社、LB-1400、MAP抗体)をPBS−ウシ血清アルブミンにて100倍濃度に希釈し、これを標本に滴下し、4℃で一晩反応させた。0.1%Tween−20添加トリス緩衝化生理食塩液(T−TBS、pH7.4)にて過剰な抗体を洗浄した後、ペルオキシダーゼポリマーラベル抗マウスF(ab)’抗体(ニチレイ:Histofine simple stain MAX-PO multi)を加えて、室温にて60分間反応させた。T−TBSで洗浄した後、 0.02%(w/v)ジアミノベンジジン−0.01%(v/v)過酸化水素添加PBSにて発色させ、水道水で反応を停止させた。マイヤーヘマトキシリンで核染色を施し、エタノール/キシロール系列で透徹した後、マリノールで封入し、検鏡し、細胞質陽性像について観察した。
(結果)
結果を以下の表3に示す。また、染色標本の代表的な顕微鏡写真(対物×10倍)を図2に示す。コラーゲンXIVα1蛋白発現は、高悪性度乳癌症例、特にIMPC症例で、強い陽性像(染色の濃い部分)を示した。一部に、IMPC成分を有する浸潤性乳管癌で明らかな蛋白レベルでの発現が、組織切片を用いた免疫組織化学法においてみられた。
Figure 0004113567
(実施例3:ドキソルビシン結合抗コラーゲンXIV抗体の合成)
以下に記載の手順で、抗癌剤であるドキソルビシンにスペーサーを結合し(第1反応および第2反応)、さらに抗コラーゲンXIV抗体と結合させた(最終反応)。
<検出方法>
本実施例において、反応生成物は、薄層クロマトグラフィー(TLC)およびLC/MSにて確認を行った。それぞれの検出方法を記載する。
(1)TLC
展開溶媒として水飽和n−ブタノール/酢酸(8:1,v/v)を用い、365nmのUV光にて検出を行った。
(2)LC/MS
HPLCについては、Alliance 2690 Separation Module(Waters製)を用い、HPLCの条件は、以下のとおりであった:
(a)第1反応確認用
カラム:Mightysil RP-18 (L) GP, 5μm, 4.6×250mm
カラム温度:30℃
流速:0.7mL/分
移動相:A溶媒:水/メタノール/酢酸(90:10:0.1,v/v/v)
B溶媒:メタノール/酢酸(100:0.1,v/v)
グラジエント=A:B(30:70)0〜20分→A:B(0:100)20〜35分→A:B(30:70)35分〜
(b)第2反応確認用
カラム:Mightysil RP-18 (L) GP, 5μm, 4.6×250mm
カラム温度:30℃
流速:0.7mL/分
移動相:A溶媒:水/メタノール/酢酸(90:10:0.1,v/v/v)
B溶媒:メタノール/酢酸(100:0.1,v/v)
グラジエント=A:B(40:60)0〜20分→A:B(30:70)20〜30分→A:B(0:100)30〜50分→A:B(40:60)50分〜
MSについては、リニアイオントラップ型のLTQ MS(Thermo Electron製)を用い、条件は、以下のとおりであった:
イオン化モード:ESI
極性:ネガティブ
シースガス:窒素、流速45arb
スプレー電圧:4kV
キャピラリー温度:300℃
<第1反応>
Figure 0004113567
ドキソルビシン(Calbiochem Inc.)3.81mg、無水アジピン酸1.79mg、およびトリエチルアミン(TEA)1.47μLをスクリューキャップ付きガラス試験管に添加し、テトラヒドロフラン(THF)で全量を3mLにし、水浴中45℃にて48時間反応させた。
反応終了後、第1反応液を1μL採り、メタノール49μLで希釈して、TLCおよびLC/MSにて第1反応生成物の確認を行った。TLCでは、第1反応生成物のスポットはドキソルビシンのスポットに対して上方に検出された。LC/MSでは、ドキソルビシンは保持時間(RT)3.00分に検出され、第1反応生成物はRT5.39分に検出された。結果を図3に示す。
図3のマススペクトルにおいて、m/z669.91で検出されたイオンが第1反応生成物であり、そしてm/z1341.08は、イオン化の際に2量体化した第1反応生成物であると考えられる。
次いで、RT4.50〜6.00分の溶出液を回収し、40℃下でNガスを噴霧し乾固させ、析出物をTHF3mLに溶解した。第1反応生成物が濃縮されたことを、LC/MSにて確認した。
<第2反応>
Figure 0004113567
得られた第1反応生成物のTHF溶液に、N−ヒドロキシスクシンイミド1.52mgおよびN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)1.68mgを添加し、水浴中で45℃にて30時間反応させた。
反応終了後、第2反応液を1μL採り、メタノール49μLで希釈して、TLCおよびLC/MSにて第2反応生成物の確認を行った。TLCでは、第2反応生成物のスポットは、第1反応生成物のスポットに対して下方に、ドキソルビシンのスポットに対して上方に検出された。LC/MSでは、第1反応生成物はRT8.10分に検出され、第2反応生成物はRT7.81分に検出された。結果を図4に示す。
図4のマススペクトルにおいて、m/z767.08で検出されたイオンが第2反応生成物である。また、m/z767.08をプリカーサーイオンとした時のMSのスペクトルも、第2反応目的物質であることを強く示唆していた(図5に示す第2生成物のフラグメンテーションを参照のこと)。
次いで、不溶性の物質を、0.22μmフィルターで除去した後、反応液を40℃下でNガスを噴霧し乾固させ、析出物を3mLの0.2M NaHCO/0.5M NaCl溶液(pH8.3)に溶解した。再溶解しなかった析出物を、0.22μmフィルターで除去し、第2反応生成物を精製した。
<最終反応>
Figure 0004113567
上記第2反応生成物を含む溶液に、直ちにAnti(MAP)Type XIV Collagen血清(株式会社エル・エス・エル)を20μL添加し、室温で1時間反応させた。ゲルろ過クロマトグラフィーにより第2反応生成物と反応したタンパク質群を分離した。137本のフラクション(各5mL)を取得した。最終反応生成物は、抗癌薬ドキソルビシンにスペーサーを介して抗体が結合していると考えられる。
これらのフラクションのうち、フラクション番号117および125は、ドキソルビシンに由来すると思われる比較的濃い着色(赤色)が見られた。血清中の抗体濃度が8.0mg/mLであるとの仮定に基づいて、これらのフラクション中の最終反応生成物の濃度は、いずれも約2×10−7Mであると算出した。
(実施例4:ドキソルビシン結合抗コラーゲンXIV抗体の乳癌培養細胞に対する抗腫瘍活性の検討)
上記実施例3で得られたフラクション番号117および125について、乳癌培養細胞に対する抗腫瘍活性を、3-(4,5-ジメチル-2-チアゾリル)-2,5-ジフェニル-2Hテトラゾリウムブロミド(MTT)アッセイの変法である3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルフォフェニル)-2H-テトラゾリウム(MTS;特許文献2)法にて評価した。
乳癌樹立培養細胞株であるHs.578T細胞株(コラーゲンXIVα1の発現あり:ATCC HTB−126TM)を、96穴プレートに2×10細胞/90μLずつ播き、24時間予備培養した。培養は、培地としてダルベッコの改変イーグル培地(D−MEM(high glucose):Invitrogen Corp.-Gibco)に0.01mg/mLのウシインスリン(SIGMA)および10%v/vウシ胎児血清(Hyclone)を添加したものを用い、5%v/vCO雰囲気下で37℃にて行った。新鮮な培地に交換した後、フラクション番号117および125を、抗体の濃度が2×10−8Mまたは1×10−9Mになるように添加して培養した。なお、抗体の希釈には、Hank's平衡塩溶液を用いた。抗体を添加しないものをコントロールとし、同様に培養した。24および48時間後に、MTS(CellTiter 96(登録商標)AQueous One Solution Cell Proliferation Assay,Promega Corporation Madison, WI, USA)をマニュアルに従って添加し、2時間後にプレートリーダーにて490nmの吸光度を測定した。得られた値について、t検定で統計学的検討を加えた。結果を、図6に示す。
図6からわかるように、フラクション番号117および125はいずれも、2×10−8Mの抗体濃度で、有意に吸光度が減少し、濃度依存性の傾向が認められた。したがって、ドキソルビシン結合抗コラーゲンXIV抗体による乳癌細胞増殖抑制効果が確認できた。
本発明によれば、高悪性度乳癌を容易かつ的確に検出・診断することができる。したがって、乳癌の悪性度判定ならびに術前・術後補助化学療法のレジメ決定が行われ得る。悪性度に基づく予後推定および癌個性決定は、近年のテーラーメード医療に必須である。高悪性度乳癌は、化学療法と放射線療法とを組み合わせた全身療法の選択が必要となるため、予後因子、バイオマーカーによる悪性度診断、ならびにこれによる術前・術後化学療法の選択および迅速な治療への展開は、患者の生存期間延長およびQOL向上のために重要である。また、本発明の乳癌治療剤を用いれば、高悪性度乳癌を効率的に治療することができる。
高悪性度乳癌群(final n3)および対照群(final n0)の乳癌組織におけるコラーゲンXIVα1遺伝子発現量を示すグラフである。 IMPC症例の乳癌組織における免疫染色標本の顕微鏡写真である。 第1反応生成物の確認のための、LCクロマトグラム、ならびにドキソルビシンおよび第1反応生成物のそれぞれのマスクロマトグラムおよびマススペクトルである。 第2反応生成物の確認のための、LCクロマトグラム、ならびに第1反応生成物および第2反応生成物のそれぞれのマスクロマトグラムおよびマススペクトルである。 第2反応生成物のフラグメンテーションを示す図である。 最終反応生成物を含むフラクション番号117および125の添加による、乳癌培養細胞の490nmでの吸光度を示すグラフである。

Claims (2)

  1. 広範リンパ節転移乳癌の治療剤であって、コラーゲンXIVに対する抗体またはそのフラグメントと抗癌剤との結合体を含む、治療剤。
  2. 前記抗癌剤が、アントラサイクリン系抗癌剤、タキソール系抗癌剤、シクロフォスファミド、およびフルオロウラシル誘導体からなる群より選択される、請求項1に記載の治療剤。
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