JP4111788B2 - 機能性サンシェード - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、脱臭性能を有するサンシェードに関する。具体的には、自動車の前部や後部ウィンドウの内部等に設置して太陽光を遮断し、車室内の温度上昇を抑えると共に車室内の不快臭を除去する脱臭性に極めて優れ、その効果を長期間持続するサンシェードを提供する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用の前部または後部ウィンドウの内部に設置して太陽光を遮断し車室内の温度上昇を抑えるサンシェードは、広く知られている。これらの多くは 厚紙、段ボール、プラスチックシート等の折り畳み可能なシートからなり、不使用時は折り畳んで収納され、使用時はこれを開いて使われるが、温度上昇を抑えるのみ で、例えばタバコ臭や新車臭等の車室内の不快感を除去する機能は持っていない。
【0003】
車室内の悪臭としては、新車臭、皮革臭、接着臭、食品臭、タバコ臭、ペット臭など多様であり、その成分も多種の臭気成分の混合物である。代表的なものとして、アンモニア、アミン類、インドール、スカトールなどの窒素化合物、硫化水素、メチルメルカプタン、硫化メチル、二硫化メチル、二硫化ジメチルなどの硫黄化合物、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなどのアルデヒド類、アセトンなどのケトン類、メタノール、エタノールなどのアルコール類がある。
【0004】
従来、このような悪臭を脱臭する方法として、悪臭物質と薬剤とを化学反応させる方法、芳香剤で悪臭物質をマスキングする方法、活性炭、ゼオライトなどの吸着剤にて悪臭物質を吸着する方法、または、これらの方法を組み合わせて行う方法があった。このような 各種の脱臭方法が使用されているが、薬剤及び芳香剤 は、共に悪臭物質と反応した後での再生はほとんど不可能である。また、吸着剤の場合も、吸着容量が飽和すると脱臭性能は著しく低下する。従って、どのような方法においても、新しいものと定期的に交換しなければならない。
【0005】
これらの課題に対し、車室内の脱臭目的のために光触媒とランプとを用いて、脱臭機能を果たすようにした脱臭装置が開発されている。この方法は、光照射による光触媒の有機物分解作用による汚れ物質の除去効果を利用するものであるが、このような脱臭装置は脱臭時には常時ランプを点灯させなければならず、例えば駐車時などにはバッテリーがあがる危険性があるため使えないという欠点があった。
【0006】
また、サンシェード基材に単に光触媒剤を塗布し、太陽光を利用して室内を脱臭する方法も提案されているが、この方法では光触媒塗工層の剥がれやサンシェード基材の劣化等が生じ耐久性及び実用性に問題があった。
これらの課題に対し、特開2000−85354号公報では上述した光触媒による劣化を防止する目的で、光触媒含有塗膜とサンシェード基材の間に保護層を介在させる方法も提案されているが、この方法では、塗装工程が煩雑で作業性が悪いうえ、均質な塗膜を得るのが非常に困難であり、サンシェード基材の劣化を完全に防止するのが難しいという欠点がある。また、この方法では光触媒層と保護層との間に明確な膜界面が存在するため、光触媒層の剥離等の問題も発生する。
上述した理由により、かねてより保護層を必要としない光触媒含有塗膜を設けたサンシェードが切望されていた。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−85354号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、煩雑な工程を必要とせずに、光触媒による優れた脱臭効果が付与された機能性サンシェードを提供する事を目的とする。
具体的には、光触媒塗膜の厳密な膜厚管理や基材保護層を必要とせず、太陽光による車室内の温度上昇を抑えつつ太陽光に含まれる紫外線を利用し、車室内の脱臭を行い、接着性、耐久性の優れる機能性サンシェードを提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は以下の通りである。
1. 光触媒(A)及び相分離構造を形成しているバインダー成分(B)を含む塗膜を備えたサンシェードであって、該塗膜中における光触媒(A)の濃度がサンシェード基材に接する面から露出面に向かって高くなることを特徴とする機能性サンシェード。
2. 光触媒(A)及び相分離構造を形成しているバインダー成分(B)を含む塗膜を有するフィルムを備えたサンシェードであって、該塗膜中における光触媒(A)の濃度が、フィルム基材に接する面から露出面に向かって高くなることを特徴とする機能性サンシェード。
3. 該塗膜が、光触媒(A)及び相分離構造を形成しているバインダー成分(B)を含む光触媒組成物(C)から形成されることを特徴とする発明1または2に記載の機能性サンシェード。
【0010】
4.該光触媒(A)が、式(1)で表されるトリオルガノシラン単位、式(2)で表されるモノオキシジオルガノシラン単位、式(3)で表されるジオキシオルガノシラン単位、及びフッ化メチレン(−CF2−)単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の構造単位を有する化合物類よりなる群から選ばれる少なくとも1種の変性剤化合物(b)で変性された変性光触媒(A1)であることを特徴とする発明1〜3のいずれかに記載の機能性サンシェード。
R3Si− (1)
(式中、Rは各々独立に直鎖状または分岐状の炭素数1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数1〜30個のフルオロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜30個のアルケニル基、フェニル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、又は水酸基を表す)
−(R2SiO)− (2)
(式中、Rは式(1)で定義した通りである。)
【0011】
【化5】
【0012】
(式中、Rは式(1)で定義した通りである。)
【0013】
5.該バインダー成分(B)が、下記式(4)で表されるフェニル基含有シリコーン(BP)を含有することを特徴とする発明1〜4のいずれかに記載の機能性サンシェード。
R1 pR2 qXrSiO(4-p-q-r)/2 (4)
(式中、各R1はフェニル基を表し、R2は各々独立に直鎖状または分岐状の炭素数1〜30のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、又は直鎖状または分岐状の炭素数2〜30個のアルケニル基を表す。Xは、各々独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアシロキシ基、アミノキシ基、炭素数1〜20のオキシム基、ハロゲン原子を表す。
そしてp、q及びrは、0<p<4、0≦q<4、0≦r<4、及び0<(p+q+r)<4であり、そして0.05≦p/(p+q)≦1である。)
【0014】
6.該フェニル基含有シリコーン(BP)が、下記式(5)で表される、アルキル基を含有しないフェニル基含有シリコーン(BP1)であることを特徴とする発明5に記載の機能性サンシェード。
R1 sXtSiO(4-s-t)/2 (5)
(式中、R1はフェニル基を表し、Xは各々独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアシロキシ基、アミノキシ基、炭素数1〜20のオキシム基、ハロゲン原子を表す。s及びtは、0<s<4、0≦t<4、そして0<(s+t)<4である。)
【0015】
7.該バインダー成分(B)が、下記式(6)で表されるアルキル基含有シリコーン(BA)を更に含有することを特徴とする発明5に記載の機能性サンシェード。
R2 uXvSiO(4-u-v)/2 (6)
(式中、R2は各々独立に直鎖状または分岐状の炭素数1〜30のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、又は直鎖状または分岐状の炭素数2〜30個のアルケニル基を表す。Xは、各々独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアシロキシ基、アミノキシ基、炭素数1〜20のオキシム基、ハロゲン原子を表しす。そしてu及びvは、0<u<4、0≦v<4、そして0<(u+v)<4である。)
【0016】
8.該バインダー成分(B)が、式(5)で表される、アルキル基を含有しないフェニル基含有シリコーン(BP1)と式(6)で表されるアルキル基含有シリコーン(BA)を含有することを特徴とする発明1〜4のいずれかに記載の機能性サンシェード。
R1 sXtSiO(4-s-t)/2 (5)
(式中、R1はフェニル基を表し、Xは各々独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアシロキシ基、アミノキシ基、炭素数1〜20のオキシム基、ハロゲン原子を表す。s及びtは、0<s<4、0≦t<4、そして0<(s+t)<4である。)
R2 uXvSiO(4-u-v)/2 (6)
(式中、R2は各々独立に直鎖状または分岐状の炭素数1〜30のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、又は直鎖状または分岐状の炭素数2〜30個のアルケニル基を表す。Xは、各々独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアシロキシ基、アミノキシ基、炭素数1〜20のオキシム基、ハロゲン原子を表す。u及びvは、0<u<4、0≦v<4、そして0<(u+v)<4である。)
【0017】
9.該アルキル基含有シリコーン(BA)が、式(7)で表されるモノオキシジオルガノシラン単位(D)と式(8)で表されるジオキシオルガノシラン単位(T)を有することを特徴とする発明7または8に記載の機能性サンシェード。
−(R2 2SiO)− (7)
(式中、R2は各々独立に直鎖状または分岐状の炭素数1〜30のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、又は直鎖状または分岐状の炭素数2〜30個のアルケニル基を表す。
【0018】
【化6】
【0019】
(式中、R2は式(7)で定義した通りである。)
【0020】
10. 該フェニル基含有シリコーン(BP)と該アルキル基含有シリコーン(BA)について相分離構造を有する塗膜であることを特徴とする発明7〜9のいずれかに記載の機能性サンシェード。
11. 光触媒(A)が該アルキル基含有シリコーン(BA)相に存在することを特徴とする発明10に記載の機能性サンシェード。
12.該変性光触媒(A1)の数平均粒子径が400nm以下であることを特徴とする発明4に記載の機能性サンシェード。
【0021】
13.該変性剤化合物(b)が、式(9)で表されるSi−H基含有ケイ素化合物(b1)であることを特徴とする発明4に記載の機能性サンシェード。
HxRySiO(4-x-y)/2 (9)
(式中、Rは各々独立に直鎖状または分岐状の炭素数1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数1〜30個のフルオロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜30個のアルケニル基、フェニル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、又は水酸基を表す。x及びyは、0<x<4、0<y<4であり、そして(x+y)≦4である。)
14.該Si−H基含有ケイ素化合物(b1)が、式(10)で表されるモノSi−H基含有化合物、式(11)で表される両末端Si−H基含有化合物、式(12)で表されるHシリコーンよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする発明13に記載の機能性サンシェード。
【0022】
【化7】
【0023】
(式中、R3は各々独立に直鎖状または分岐状の炭素数が1〜30個のアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜30個のアルケニル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数1〜30個のフルオロアルキル基、フェニル基、又は式(13)で表されるシロキシ基を表す。
−O−(R4 2SiO)m−SiR4 3 ・・・(13)
(式中、R4はそれぞれ独立に直鎖状または分岐状の炭素数が1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数が1〜30個のフルオロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜30個のアルケニル基、又はフェニル基を表す。また、mは整数であり、0≦m≦1000である。))
H−(R3 2SiO)n−SiR3 2−H ・・・(11)
(式中、R3は式(10)で定義した通りである。nは整数であり、0≦n≦1000である。)
(R3HSiO)a(R3 2SiO)b(R3 3SiO1/2)c・・・(12)
(式中、R3は式(10)で定義した通りである。aは1以上の整数であり、bは0以上の整数であり、(a+b)≦10000であり、そしてcは0又は2である。但し、(a+b)が2以上の整数であり且つc=0の場合、式(12)の該Hシリコーンは環状シリコーンであり、c=2の場合、式(12)の該Hシリコーンは鎖状シリコーンである。)
【0024】
15. 該塗膜に含まれる光触媒(A)のバンドギャップエネルギーよりも高いエネルギーの光を照射することにより光触媒活性を示すことを特徴とする発明1または2に記載の機能性サンシェード。
16. 該塗膜に含まれる光触媒(A)のバンドギャップエネルギーよりも高いエネルギーの光を照射することにより、該光触媒(A)粒子の近傍に存在する珪素原子に結合した有機基の少なくとも一部が水酸基及び/又はシロキサン結合に置換されてなることを特徴とする発明4、5、7、8のいずれかに記載の機能性サンシェード。
17. 光触媒(A)とバインダー成分(B)を含む光触媒組成物(C)であって、該バインダー成分(B)が、下記式(4)で表されるフェニル基含有シリコーン(BP)と、下記式(6)で表されるアルキル基含有シリコーン(BA)を含有し、相分離構造を形成することを特徴とするサンシェード被覆用光触媒組成物。
R1 p R2 q Xr SiO(4-p-q-r)/2 (4)
(式中、各R1 はフェニル基を表し、R2 は各々独立に直鎖状または分岐状の炭素数1〜30のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、又は直鎖状または分岐状の炭素数2〜30個のアルケニル基を表し;
Xは、各々独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアシロキシ基、アミノキシ基、炭素数1〜20のオキシム基、ハロゲン原子を表す。そしてp、q及びrは、0<p<4、0≦q<4、0≦r<4、及び0<(p+q+r)<4であり、そして0.05≦p/(p+q)≦1である。)
R2 u Xv SiO(4-u-v)/2 (6)
(式中、R2 は各々独立に直鎖状または分岐状の炭素数1〜30のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、又は直鎖状または分岐状の炭素数2〜30個のアルケニル基を表す。Xは、各々独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアシロキシ基、アミノキシ基、炭素数1〜20のオキシム基、ハロゲン原子を表す。そしてu及びvは、0<u<4、0≦v<4、そして0<(u+v)<4である。)
18. 該フェニル基含有シリコーン(BP)が、下記式(5)で表される、アルキル基を含有しないフェニル基含有シリコーン(BP1)であることを特徴とする発明17に記載のサンシェード被覆用光触媒組成物。
R1 s Xt SiO(4-s-t)/2 (5)
(式中、R1 はフェニル基を表す。Xは各々独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアシロキシ基、アミノキシ基、炭素数1〜20のオキシム基、ハロゲン原子を表す。s及びtは、0<s<4、0≦t<4、そして0<(s+t)<4である。)
19. 該アルキル基含有シリコーン(BA)が、式(7)で表されるモノオキシジオルガノシラン単位(D)と式(8)で表されるジオキシオルガノシラン単位(T)を有することを特徴とする発明17または18記載のサンシェード被覆用光触媒組成物。
−(R2 2SiO)− (7)
(式中、R2 は各々独立に直鎖状または分岐状の炭素数1〜30のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、又は直鎖状または分岐状の炭素数2〜30個のアルケニル基を表す。)
【化8】
(式中、R2 は式(7)で定義した通りである。)
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の機能性サンシェードは、光触媒(A)及びバインダー成分(B)を含む塗膜を備えたサンシェードまたは光触媒(A)及びバインダー(B)を含む塗膜を有するフィルムを備えたサンシェードであって、該コート層中における光触媒(A)の濃度がサンシェード基材、またはフィルム基材に接する面から露出面に向かって高くなることを特徴とする。
【0026】
この際、全塗膜中の光触媒含有量(濃度)100に対し、露出面と接する表面側近傍の相対濃度が120以上であることが光触媒能力や親水化能力の向上効果を発現し、防汚効果が大きくなるために好ましい。該表面側近傍の相対濃度はより好ましくは150以上、さらに好ましくは200以上であることがよい。また、サンシェード基材またはフィルムに接する面近傍の相対濃度が50以下であると界面劣化防止効果の点で好ましい。サンシェード基材またはフィルムに接する面近傍の相対濃度はより好ましくは10以下、さらに好ましくは0であると良い。
【0027】
また、本発明における塗膜中における光触媒(A)の濃度は、サンシェード基材またはフィルムに接する面から他方の露出面に向かって徐々に高くなっても良いし、単にサンシェード基材またはフィルムに接する面での光触媒濃度が低く、他方の露出面における光触媒濃度が高く、その間の変化が不連続であっても良い。
さらに、本発明の塗膜中において、保護層の上に光触媒層を塗布する場合に生じる様な明確な膜界面が存在しない方が好ましい。すなわち、保護層の上に光触媒層を塗布する場合に生じる様な明確な膜界面が存在しない場合、光触媒は強固に塗膜中に固定化され、光触媒の剥離等の問題が発生しなくなる。
【0028】
本発明において、光触媒(A)とは、伝導帯と価電子帯との間のエネルギーギャップよりも大きなエネルギー(すなわち短い波長)の光(励起光)を照射したときに、価電子帯中の電子の励起(光励起)が生じて、伝導電子と正孔を生成しうる物質をいう。このとき、伝導帯に生成した電子の還元力および/または価電子帯に生成した正孔の酸化力を利用して、種々の化学反応を行うことができる。
この光触媒によって促進される化学反応の例としては、種々の有機物の酸化分解反応を挙げることができる。従って、この光触媒をサンシェードの表面に固定化させれば、サンシェードに付着した種々の有機物(汚染物質)を、光エネルギーを利用して酸化分解することができ、さらにサンシェードの表面を親水性に保つことが可能となる。
【0029】
本発明において光触媒活性とは、光照射によって酸化、還元反応を起こすことを言う。材料表面の、光照射時における色素等の有機物の分解性を測定することにより表面が光触媒活性であるか否かを判定できる。光触媒活性を有する表面は、優れた汚染有機物質の分解活性や耐汚染性を発現する。
本発明において、サンシェードの表面を光触媒活性にするのに有用に使用できる光触媒(A)としては、例えばTiO2、ZnO、SrTiO3、CdS、GaP、InP、GaAs、BaTiO3、BaTiO4、BaTi4O9、K2NbO3、Nb2O5、Fe2O3、Ta2O5、K3Ta3Si2O3、WO3、SnO2、Bi2O3、BiVO4、NiO、Cu2O、SiC、MoS2、InPb、RuO2、CeO2、Ta3N5等、さらにはTi、Nb、Ta、Vから選ばれた少なくとも1種の元素を有する層状酸化物(特開昭62−74452号公報、特開平2−172535号公報、特開平7−24329号公報、特開平8−89799号公報、特開平8−89800号公報、特開平8−89804号公報、特開平8−198061号公報、特開平9−248465号公報、特開平10−99694号公報、特開平10−244165号公報等参照)や、窒素ドープ酸化チタン(特開平13−278625号公報、特開平13−278627号公報、特開平13−335321号公報、特開平14−029750号公報、特開平13−207082号公報等参照)や、酸素欠陥型の酸化チタン(特開平13−212457号公報参照)の如き、可視光応答型酸化チタン光触媒も好適に使用することができる。また、TaON、LaTiO2N、CaNbO2N、LaTaON2、CaTaO2N等のオキシナイトライド化合物やSm2Ti2S2O7等のオキシサルファイド化合物は可視光による光触媒活性が大きく、好適に使用することができる。
【0030】
更に、これらの光触媒に、Pt、Rh、Ru、Nb、Cu、Sn、Ni、Feなどの金属及び/又はこれらの酸化物を添加あるいは固定化したものや、多孔質リン酸カルシウム等で被覆された光触媒(特開平10−244166号公報参照)等を使用することもできる。
上記光触媒(A)の結晶粒子径(1次粒子径)は1〜400nmであることが好ましく、より好ましくは1〜50nmの光触媒が好適に選択される。
【0031】
これらの光触媒のうち、酸化チタンは無毒であり、化学的安定性にも優れると共に、光照射により、酸化チタン自体の親水性が非常に高まるため好ましい。
該酸化チタンとしては、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型のうち、いずれの結晶形を使用してもよい。また、可視光応答性である上記窒素ドープ酸化チタンや酸素欠陥型の酸化チタンも、該酸化チタンとして好適に使用できる。
本発明の光触媒(A)として、該光触媒(A)を、後述する少なくとも1種の変性剤化合物(b)を用いて変性処理した変性光触媒(A1)を用いることが好ましい。
【0032】
本発明において光触媒(A)の変性とは、後述する少なくとも1種の変性剤化合物(b)を、光触媒(A)粒子の表面に固定化することを意味する。上記の変性剤化合物の光触媒粒子の表面への固定化は、ファン・デル・ワールス力(物理吸着)やクーロン力または化学結合によるものと考えられる。特に、化学結合を利用した変性は、変性剤化合物と光触媒との相互作用が強く、変性剤化合物が光触媒粒子の表面に強固に固定化されるので好ましい。
【0033】
本発明の光触媒(A)を変性光触媒(A1)とすることにより、本発明の、サンシェード基材またはフィルムに、上記光触媒(A)を含む塗膜を形成する場合に、該塗膜中における光触媒(A)の濃度が、該塗膜のサンシェード基材またはフィルムに接する面から他方の露出面に向かって高くなる構造の形成が、特に後述するバインダー成分(B)と組み合わせた場合に容易になるため、非常に好ましい。
【0034】
本発明においては、変性に用いる光触媒(A)の性状が、変性光触媒(A1)の分散安定性、成膜性、及び種々の機能の発現にとって重要な因子となる。すなわち、本発明の変性に使用される光触媒(A)としては、1次粒子と2次粒子との混合物の数平均分散粒子径が400nm以下の光触媒が変性後の光触媒の表面特性を有効に利用できるために好ましい。特に数平均分散粒子径が100nm以下の光触媒を使用した場合、生成する変性光触媒(A1)と後述するバインダー成分(B)を含む光触媒組成物(C)から形成された本発明の塗膜では、変性光触媒(A1)を効率的に該塗膜の表面(露出面)に存在させることができるため非常に好ましい。より好ましくは80nm以下3nm以上、さらに好ましくは50nm以下3nm以上の光触媒(A)が好適に選択される。
【0035】
これらの光触媒(A)としては、以下の理由から、光触媒粉体ではなく光触媒ゾルを使用することが好ましい。一般に微細な粒子からなる粉体は、単結晶粒子(一次粒子)が強力に凝集した二次粒子を形成するため、無駄にする表面特性が多いが、一次粒子にまで分散させるのは非常に困難である。これに対して、光触媒ゾルの場合、光触媒粒子は溶解せずに一次粒子に近い形で存在しているため表面特性を有効に利用でき、それから生成する変性光触媒は分散安定性、成膜性等に優れるばかりか、種々の機能を有効に発現するので好ましく使用することができる。ここで、本発明に用いる光触媒ゾルとは、光触媒粒子が水及び/又は有機溶媒中に0.01〜70質量%、好ましくは0.1〜50質量%で一次粒子及び/または二次粒子として分散されたものである。
【0036】
ここで、上記光触媒ゾルに使用される上記有機溶媒としては、例えばエチレングリコール、ブチルセロソルブ、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エタノール、メタノール等のアルコール類、トルエンやキシレン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド類、クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素等のハロゲン化合物類、ジメチルスルホキシド、ニトロベンゼン等、さらにはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0037】
該光触媒ゾルとして酸化チタンのゾルを例にとると、例えば実質的に水を分散媒とし、その中に酸化チタン粒子が解膠された酸化チタンヒドロゾル等を挙げることができる。(ここで、実質的に水を分散媒とするとは、分散媒中に水が80質量%程度以上含有されていることを意味する。)かかるゾルの調整は公知であり、容易に製造できる(特開昭63−17221号公報、特開平7−819号公報、特開平9−165218号公報、特開平11−43327号公報等参照)。例えば、硫酸チタンや四塩化チタンの水溶液を加熱加水分解して生成したメタチタン酸をアンモニア水で中和し、析出した含水酸化チタンを濾別、洗浄、脱水させると酸化チタン粒子の凝集物が得られる。この凝集物を、硝酸、塩酸、又はアンモニア等の作用の下に解膠させ水熱処理等を行うことにより酸化チタンヒドロゾルが得られる。また、酸化チタンヒドロゾルとしては、酸化チタン粒子を酸やアルカリの作用の下で解膠させたものや、酸やアルカリを使用せず、必要に応じてポリアクリル酸ソーダなどの分散安定剤を使用し、強力なせん断力の下で水中に分散させたゾルも用いることができる。さらに、pHが中性付近の水溶液中においても分散安定性に優れる、粒子表面がペルオキソ基で修飾されたアナターゼ型酸化チタンゾルも特開平10−67516号公報で提案された方法によって容易に得ることができる。
【0038】
上述した酸化チタンヒドロゾルはチタニアゾルとして市販されている。(例えば、石原産業株式会社製「STS−02」、田中転写株式会社製「TO−240」等)
上記酸化チタンヒドロゾル中の酸化チタンは好ましくは50質量%以下、好ましくは30質量%以下である。さらに好ましくは30質量%以下0.1質量%以上である。
【0039】
このようなヒドロゾルの粘度(20℃)は比較的低い。本発明においては、ヒドロゾルの粘度は、0.5mPa・s〜2000mPa・s程度の範囲にあるのが好ましい。より好ましくは1mPa・s〜1000mPa・s、さらに好ましくは1mPa・s〜500mPa・sである。
また、例えば酸化セリウムゾル(特開平8−59235号公報参照)やTi、Nb、Ta、Vよりなる群から選ばれた少なくとも1種の元素を有する層状酸化物のゾル(特開平9−25123号公報、特開平9−67124号公報、特開平9−227122号公報、特開平9−227123号公報、特開平10−259023号公報等参照)等、様々な光触媒ゾルの製造方法についても酸化チタンゾルと同様に知られている。
【0040】
また、実質的に有機溶媒を分散媒とし、その中に光触媒粒子が分散された光触媒オルガノゾルは、例えば上記光触媒ヒドロゾルをポリエチレングリコール類の如き相間移動活性を有する化合物(異なる第1の相と第2相との界面に第3の相を形成し、第1の相、第2の相、第3の相を相互に溶解及び/又は可溶化する化合物)で処理し有機溶媒で希釈したり(特開平10−167727号公報)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の陰イオン界面活性剤で水に不溶性の有機溶剤中に分散移行させてゾルを調整する方法(特開昭58−29863号公報)やブチルセロソルブ等の水より高沸点のアルコール類を上記光触媒ヒドロゾルに添加した後、水を(減圧)蒸留等によって除去する方法等により得ることができる。また、実質的に有機溶媒を分散媒とし、その中に酸化チタン粒子が分散された酸化チタンオルガノゾルは市販されている(例えば、テイカ株式会社製「TKS−251」)。ここで、実質的に有機溶媒を分散媒とするとは、分散媒中に有機溶媒が80質量%程度以上含有されていることを意味する。
【0041】
本発明において、変性光触媒(A1)を得るのに用いられる少なくとも1種の変性剤化合物(b)は、式(1)で表されるトリオルガノシラン単位、式(2)で表されるモノオキシジオルガノシラン単位、式(3)で表されるジオキシオルガノシラン単位、及びフッ化メチレン(−CF2−)単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の構造単位を有する化合物類よりなる群から選ばれる。
R3Si− (1)
(式中、Rは各々独立に直鎖状または分岐状の炭素数1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数1〜30個のフルオロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜30個のアルケニル基、フェニル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、又は水酸基を表す)
−(R2SiO)− (2)
(式中、Rは式(1)で定義した通りである。)
【0042】
【化9】
【0043】
(式中、Rは式(1)で定義した通りである。)
上述した構造単位を有する変性剤化合物(b)で光触媒粒子表面が変性処理された変性光触媒(A1)は、その粒子表面の表面エネルギーが非常に小さくなる。
【0044】
本発明において、光触媒(A)の変性剤化合物(b)による変性処理は、水及び/又は有機溶媒の存在、あるいは非存在下において、前述した光触媒(A)と、同じく前述した変性剤化合物(b)を好ましくは質量比(A)/(b)=1/99〜99.9/0.1、より好ましくは(A)/(b)=10/90〜99/1の割合で混合し、好ましくは0〜200℃、より好ましくは10〜80℃にて加熱したり、(減圧)蒸留等により該混合物の溶媒組成を変化させる等の操作をすることにより得ることができる。
【0045】
ここで上記変性処理を行う場合、使用できる有機溶媒としては、例えばトルエンやキシレン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類、エチレングリコール、ブチルセロソルブ、イソプロパノール、n−ブタノール、エタノール、メタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド類、クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素等のハロゲン化合物類、ジメチルスルホキシド、ニトロベンゼン等やこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0046】
本発明の変性光触媒(A1)を得るのに使用される上記変性剤化合物(b)としては、例えばSi−H基、加水分解性シリル基(アルコキシシリル基、ヒドロキシシリル基、ハロゲン化シリル基、アセトキシシリル基、アミノキシシリル基等)、エポキシ基、アセトアセチル基、チオール基、酸無水物基等の光触媒粒子(a)と反応性を有するケイ素化合物やフルオロアルキル化合物、フルオロオレフィン重合体等を挙げることができる。
【0047】
また、上記変性剤化合物(b)の他の例としては、例えばポリオキシアルキレン基等の光触媒粒子(a)とファン・デル・ワールス力、クーロン力等により相互作用する構造を有するケイ素化合物等やフルオロアルキル化合物、フルオロオレフィン重合体等を挙げることができる。
本発明において、上記変性剤化合物(b)として、組成式(9)で表されるSi−H基含有ケイ素化合物(b1)を用いると、非常に効率よく光触媒粒子表面を変性することができるため好ましい。
HxRySiO(4-x-y)/2 (9)
(式中、Rは各々独立に直鎖状または分岐状の炭素数1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数1〜30個のフルオロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜30個のアルケニル基、フェニル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、又は水酸基を表す。x及びyは、0<x<4、0<y<4であり、そして(x+y)≦4である。)
【0048】
本発明において、光触媒(A)の上記組成式(9)で表されるSi−H基含有ケイ素化合物(b1)による変性処理は、水及び/又は有機溶媒の存在、あるいは非存在下において、光触媒(a)と該Si−H基含有ケイ素化合物(b1)を好ましくは質量比(A)/(b1)=1/99〜99.9/0.1、より好ましくは(A)/(b1)=10/90〜99/1の割合で好ましくは0〜200℃にて混合することにより実施できる。この変性の操作により混合液からは水素ガスが発生すると共に、光触媒(A)として光触媒ゾルを用いた場合、その平均分散粒子径の増加が観察される。また、例えば光触媒(A)として酸化チタンを用いた場合、上記変性の操作により、Ti−OH基の減少がIRスペクトルにおける3630〜3640cm-1の吸収の減少として観測される。
【0049】
これらのことより、変性剤化合物(b)として上記式(9)で表されるSi−H基含有ケイ素化合物(b1)を選択した場合は、本発明の変性光触媒(A1)は、Si−H基含有ケイ素化合物(b1)と光触媒(A)との単なる混合物ではなく、両者の間には化学反応に伴う何らかの相互作用を生じていることが予測できるため非常に好ましい。実際、この様にして得られた変性光触媒(A1)は、有機溶媒に対する分散安定性や化学的安定性、耐久性等等において非常に優れたものとなっている。
【0050】
本発明において、光触媒(A)の上記式(9)で表されるSi−H基含有ケイ素化合物(b1)による変性処理は、Si−H基に対する脱水素縮合触媒を使用して好ましくは0〜150℃で実施することもできる。
この場合、あらかじめ光還元法等の方法で脱水素縮合触媒を光触媒(A)に固定し、上記Si−H基含有ケイ素化合物(b1)で変性処理しても良いし、脱水素縮合触媒の存在下に上記Si−H基含有化合物ケイ素(b1)で光触媒(A)を変性処理しても良い。
【0051】
ここでSi−H基に対する脱水素縮合触媒とは、Si−H基と光触媒表面に存在する水酸基(酸化チタンの場合はTi−OH基)やチオール基、アミノ基、カルボキシル基等の活性水素基、さらには水等との脱水素縮合反応を加速する物質を意味し、該脱水素縮合触媒を使用することにより温和な条件で光触媒表面を変性することが可能となる。
【0052】
該脱水素縮合触媒としては、例えば白金族触媒、すなわちルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金の単体及びその化合物や、銀、鉄、銅、コバルト、ニッケル、錫等の単体及びその化合物が挙げられる。これらの中で白金族触媒が好ましく、白金の単体及びその化合物が特に好ましい。
ここで、上記白金の化合物としては、例えば塩化白金(II)、テトラクロロ白金酸(II)、塩化白金(IV)、ヘキサクロロ白金酸(IV)、ヘキサクロロ白金(IV)アンモニウム、ヘキサクロロ白金(IV)カリウム、水酸化白金(II)、二酸化白金(IV)、ジクロロ−ジシクロペンタジエニル−白金(II)、白金−ビニルシロキサン錯体、白金−ホスフィン錯体、白金−オレフィン錯体等を使用することができる。
【0053】
本発明の上記式(9)で表されるSi−H基含有ケイ素化合物において、Si−H基は光触媒を穏和な条件で選択性良く変性するために好ましい官能基である。これに対し、加水分解性基は、同様に光触媒の変性に利用することもできるが、副反応を抑制し、得られる変性光触媒の安定性を向上するためには、その含有量は少ない方が好ましい。
本発明に好適に使用できる上記式(9)で表されるSi−H基含有ケイ素化合物(b1)としては、例えば式(10)で表されるモノSi−H基含有化合物、式(11)で表される両末端Si−H基含有化合物、式(12)で表されるHシリコーンよりなる群から選ばれる少なくとも1種の、加水分解性シリル基を有さないS−H基含有化合物を挙げることができる。
【0054】
【化10】
【0055】
(式中、R3は各々独立に直鎖状または分岐状の炭素数が1〜30個のアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜30個のアルケニル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数1〜30個のフルオロアルキル基、フェニル基、又は式(13)で表されるシロキシ基を表す。
−O−(R4 2SiO)m−SiR4 3 ・・・(13)
(式中、R4はそれぞれ独立に直鎖状または分岐状の炭素数が1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数が1〜30個のフルオロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜30個のアルケニル基、又はフェニル基を表す。また、mは整数であり、0≦m≦1000である。))
H−(R3 2SiO)n−SiR3 2−H ・・・(11)
(式中、R3は式(10)で定義した通りである。nは整数であり、0≦n≦1000である。)
(R3HSiO)a(R3 2SiO)b(R3 3SiO1/2)c・・・(12)
(式中、R3は式(10)で定義した通りである。aは1以上の整数であり、bは0以上の整数であり、(a+b)≦10000であり、そしてcは0又は2である。但し、(a+b)が2以上の整数であり且つc=0の場合、式(12)の該Hシリコーンは環状シリコーンであり、c=2の場合、式(12)の該Hシリコーンは鎖状シリコーンである。)
【0056】
本発明において、上記式(10)で表されるモノSi−H基含有化合物の具体例としては、例えばビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、ビス(トリメチルシロキシ)エチルシラン、ビス(トリメチルシロキシ)n−プロピルシラン、ビス(トリメチルシロキシ)i−プロピルシラン、ビス(トリメチルシロキシ)n−ブチルシラン、ビス(トリメチルシロキシ)n−ヘキシルシラン、ビス(トリメチルシロキシ)シクロヘキシルシラン、ビス(トリメチルシロキシ)フェニルシラン、ビス(トリエチルシロキシ)メチルシラン、ビス(トリエチルシロキシ)エチルシラン、トリス(トリメチルシロキシ)シラン、トリス(トリエチルシロキシ)シラン、ペンタメチルジシロキサン、1,1,1,3,3,5,5−ヘプタメチルトリシロキサン、1,1,1,3,3,5,5,6,6−ノナメチルテトラシロキサン、トリメチルシラン、エチルジメチルシラン、メチルジエチルシラン、トリエチルシラン、フェニルジメチルシラン、ジフェニルメチルシラン、シクロヘキシルジメチルシラン、t−ブチルジメチルシラン、ジ−t−ブチルメチルシラン、n−オクタデシルジメチルシラン、トリ−n−プロピルシラン、トリ−i−プロピルシラン、トリ−i−ブチルシラン、トリ−n−ヘキシルシラン、トリフェニルシラン、アリルジメチルシラン、1−アリル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、クロロメチルジメチルシラン、7−オクテニルジメチルシラン等を挙げることができる。
【0057】
これらのモノSi−H基含有化合物の中で、光触媒の変性処理時におけるSi−H基の反応性(脱水素縮合反応)の良さや表面エネルギーの低さから、ビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、トリス(トリメチルシロキシ)シラン、ペンタメチルジシロキサン等の分子中にシロキシ基を有し、フェニル基を有さない下式(14)で表されるものが好ましい。
【0058】
【化11】
【0059】
(式中、R5はそれぞれ独立に直鎖状または分岐状の炭素数が1〜30個のアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数が1〜30個のアルケニル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数が1〜30個のフルオロアルキル基、もしくは式(13b)で表されるシロキシ基から選ばれた1種以上からなる基であり、かつR5の中の少なくとも1つは式(13b)で表されるシロキシ基である。
−O−(R4'2SiO)m−SiR4'3 ・・・(13b)
(式中、R4'はそれぞれ独立に直鎖状または分岐状の炭素数が1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、又は直鎖状または分岐状の炭素数が1〜30個のフルオロアルキル基を表す。また、mは整数であり、0≦m≦1000である。))
【0060】
本発明において、上記式(11)で表される両末端Si−H基含有化合物の具体例としては、例えば1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン等の数平均分子量50000以下のH末端ポリジメチルシロキサン類や、1,1,3,3−テトラエチルジシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサエチルトリシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタエチルテトラシロキサン等の数平均分子量50000以下のH末端ポリジエチルシロキサン類や、1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサフェニルトリシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタフェニルテトラシロキサン等の数平均分子量50000以下のH末端ポリジフェニルシロキサン類や、1,3−ジフェニル−1,3−ジメチル−ジシロキサン、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリフェニル−トリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニル−テトラシロキサン等の数平均分子量50000以下のH末端ポリフェニルメチルシロキサン類や、ジメチルシラン、エチルメチルシラン、ジエチルシラン、フェニルメチルシラン、ジフェニルシラン、シクロヘキシルメチルシラン、t−ブチルメチルシラン、ジ−t−ブチルシラン、n−オクタデシルメチルシラン、アリルメチルシラン等を例示することができる。
【0061】
これらの中で、光触媒の変性処理時におけるSi−H基の反応性(脱水素縮合反応)の良さや表面エネルギーの低さから、数平均分子量が好ましくは10000以下、より好ましくは2000以下、さらに好ましくは1000以下のH末端ポリジアルキルシロキサン(式(15))が両末端Si−H基含有化合物として好適に使用できる。
H−(R6 2SiO)d−SiR6 2−H ・・・(15)
(式中、R6はそれぞれ独立に直鎖状または分岐状の炭素数が1〜30個のアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数が1〜30個のフルオロアルキル基を表す。dは整数であり、0≦d≦1000である。)
本発明に用いる上記式(12)で表されるHシリコーンとしては、光触媒の変性処理時における分散安定性(光触媒粒子の凝集の防止)の点より、数平均分子量が好ましくは5000以下、より好ましくは2000以下、さらに好ましくは1000以下のHシリコーンが好適に使用できる。
【0062】
また、本発明の変性光触媒(A1)の好ましい形態は、変性光触媒の一次粒子と二次粒子との混合物の数平均分散粒子径が400nm以下、さらに好ましくは1nm以上100nm以下、特に好ましくは5nm以上80nm以下である。ゾルの状態であることが好ましい。
また、特に数平均分散粒子径が100nm以下の変性光触媒ゾルを本発明の光触媒組成物(C)に用いると、変性光触媒粒子の濃度がサンシェード基材またはフィルムと接する界面近傍では小さく、塗膜の表面近傍では大きく分布するような表面方向に異方分布した皮膜を形成するのに有利となり、光触媒作用によるサンシェード基材またはフィルムとの界面劣化が無く、光触媒活性が大きい塗膜を形成するため非常に好ましい。この様な変性光触媒ゾルは、上記変性剤化合物(b)で変性処理をする光触媒として前述した光触媒ゾルを用いることにより得ることができる。
なお、従来、二酸化チタンなどで単に粒径として表示されている数値は、多くの場合一次粒子径(結晶子径)であり、凝集による二次粒子径を考慮した数値ではない。
【0063】
本発明の塗膜を形成する光触媒組成物(C)は、光触媒(A)(好ましくは変性光触媒(A1))とバインダー成分(B)を含むことを特徴とし、その質量比(A1)/(B)は0.1/99.9〜90/10であることが好ましく、(A1)/(B)が1/99〜50/50で含むことがより好ましい。
【0064】
本発明の変性光触媒(A1)は、表面エネルギーの非常に小さい構造(式(1)〜(3))を有する変性剤化合物(b)で変性処理されているため、塗膜を形成する際、空気と接する側の塗膜表面に移動しやすい性質を持っている。
ここで、本発明のバインダー成分(B)として、光触媒(A)、特に該変性光触媒(A1)より表面エネルギーが高いバインダー成分を用いることにより、変性光触媒(A1)の上記性質を助長するため、本発明の光触媒組成物(C)は、光触媒(A)、特に変性光触媒(A1)の分布について大きな自己傾斜性を有することが可能となる。ここで自己傾斜性とは、光触媒組成物(C)から皮膜を形成する際、その形成過程において光触媒(A)、特に変性光触媒(A1)が、皮膜や接する界面の性状(特に親水/疎水性)に対応して、光触媒(A)、特に変性光触媒(A1)の濃度勾配を有する構造を自律的に形成することを意味する。
【0065】
本発明のバインダー成分(B)としては、光触媒(A)(好ましくは変性光触媒(A1))より、表面エネルギーが2mN/m以上、好ましくは5mN/m以上大きい樹脂を選択すると、上記自己傾斜性が大きくなり非常に好ましい。
ここで、上記表面エネルギーや表面エネルギーの相対差は、例えばPolymer Handbook(米国 A Wiley-interscience publication 出版)等を参照したり、以下の方法で測定したりすることにより求めることができる。
【0066】
すなわち、上記光触媒組成物(C)を構成する光触媒(A)、特に変性光触媒(A1)及びバインダー成分(B)から各々それらの皮膜を有する基材を調整し、脱イオン水を滴下して20℃における接触角(閨jを測定し、下記のSellとNeumannの実験式により、各々の表面エネルギーを求めることができる。
【0067】
【数1】
【0068】
[式中、縱は脱イオン水の接触角を測定した皮膜の表面エネルギー(mN/m)を表し、緲は水の表面エネルギー{72.8mN/m(20℃)}を表わす。]
【0069】
本発明の光触媒組成物(C)において、バインダー成分(B)に使用できる化合物としては、上記条件を満たす表面エネルギーを有すればよく特に制限されないが、各種単量体、合成樹脂及び天然樹脂等が挙げられ、また被膜や成形体の形成後に、乾燥、加熱、吸湿、光照射等により硬化するものも挙げることができる。また、その形態については、無溶媒の状態(ペレット、粉体、液体等)であっても溶媒に溶解あるいは分散した形態であっても良く、特に制限はない。
【0070】
上記合成樹脂としては、熱可塑性樹脂と硬化性樹脂(熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、湿気硬化性樹脂等)の使用が可能であり、例えばシリコーン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、フッ素樹脂、アルキド樹脂、アミノアルキド樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリフェニレンスルホン樹脂ポリエーテル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン−アクリル樹脂等を挙げることができる。
【0071】
また、上記天然高分子としては、ニトロセルロース等のセルロース系樹脂、天然ゴム等のイソプレン系樹脂、カゼイン等のタンパク質系樹脂やでんぷん等を挙げることができる。
本発明において、光触媒組成物(C)に使用するバインダー成分(B)としては、下記式(4)で表されるフェニル基含有シリコーン(BP)が、本発明の変性光触媒(A1)より表面エネルギーが高く、その骨格を成すシロキサン結合(−O−Si−)は光触媒作用による酸化分解がおこらないため、最も好適に使用できる。
R1 pR2 qXrSiO(4-p-q-r)/2 (4)
(式中、各R1はフェニル基を表し、R2は各々独立に直鎖状または分岐状の炭素数1〜30のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、又は直鎖状または分岐状の炭素数2〜30個のアルケニル基を表す。Xは、各々独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアシロキシ基、アミノキシ基、炭素数1〜20のオキシム基、ハロゲン原子を表す。そしてp、q及びrは、0<p<4、0≦q<4、0≦r<4、及び0<(p+q+r)<4であり、そして0.05≦p/(p+q)≦1である。)
【0072】
上記式(4)で示されるフェニル基含有シリコーン(BP)としては、例えば一般式(16)、(17)、(18)及び(19)で表されるシロキサン結合の少なくとも1種の構造を含むシリコーンを挙げることができる。
【0073】
【化12】
【0074】
−(R7 2SiO)− ・・・(17)
【0075】
【化13】
【0076】
(式中、R7はそれぞれ独立に、フェニル基、直鎖状または分岐状の炭素数1〜30のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基を表す。)
【0077】
【化14】
【0078】
上述した構造を含むシリコーンは、例えば一般式R7SiX3(式中、R7は、フェニル基、直鎖状または分岐状の炭素数1〜30のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基を表す。各Xは、各々独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアシロキシ基、アミノキシ基、炭素数1〜20のオキシム基、ハロゲン原子からなる群より選ばれる一つの反応性基を表す。以下同様。)で表される3官能シラン誘導体及び/又は一般式R7 2SiX2で表される2官能シラン誘導体及び/又は一般式SiX4で表される4官能シラン誘導体を部分的に加水分解・縮重合させ、必要により一般式R7 3SiXで表される1官能シラン誘導体及び/又はアルコール類によって末端停止させることにより調製できる。この様にして得られるシラン誘導体モノマーの部分縮合物のポリスチレン換算重量平均分子量は、好ましくは100〜100,000、より好ましくは400〜50,000である。
【0079】
これらの中で、上記式(4)で示されるフェニル基含有シリコーンとして、上記式(16)で表されるラダー構造を10モル%以上、好ましくは40モル%以上含むものを選択すると、本発明の光触媒組成物(C)から形成される光触媒含有塗膜は、硬度、耐熱性、耐候性、耐汚染性、耐薬品性等の点で非常に優れたものとなるため好ましい。特に、上記ラダー構造としてフェニルラダー構造〔式(16)におけるR7が全てフェニル基のもの〕を有するものは上述した光触媒含有塗膜の物性が非常に向上するため好ましい。この様なラダー構造は、例えば赤外線吸収スペクトルにおける1040cm-1と1160cm-1付近の2本のシロキサン結合に由来する吸収の存在により同定する事ができる。
(J.F.Brown.Jr.,etal.:J.Am.Chem.Soc.,82,6194(1960)参照。)
本発明に用いる上記式(4)で表されるフェニル基含有シリコーン(BP)は、Ph−Si結合(Ph:フェニル基)を有することが好ましい。
【0080】
すなわち、本発明の光触媒組成物(C)において、表面エネルギーの非常に小さい構造(式(1)〜(3))を有する変性剤化合物(b)で変性処理されている変性光触媒(A1)のバインダーとして、該変性光触媒(A1)より表面エネルギーが高いフェニル基含有シリコーン(BP)を含むバインダー成分(B)を用いることにより、本発明の光触媒組成物(C)は、変性光触媒(A1)の分布について高い自己傾斜性を有することが可能となる。
【0081】
この様な表面エネルギーの高いフェニル基含有シリコーン(BP)による自己傾斜性の発現効果は、フェニル基(R1)を、フェニル基(R1)とR2(R2は直鎖状または分岐状の炭素数1〜30のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基を表す。)の合計{以下(R1+R2)と表す。}に対し5モル%以上有する上記式(4)で示されるフェニル基含有シリコーン(BP)を用いることによってより顕著に発揮することができるので、このようなフェニル基含有シリコーン(BP)を用いることは好ましい。
【0082】
また、上述した自己傾斜性の発現効果は、フェニル基(R1)の(R1+R2)に対する割合が増えるに従い増大する。よって、本発明の光触媒組成物に使用するバインダー成分(B)のフェニル基含有シリコーンとしてより好ましいものは、(R1+R2)に対するフェニル基(R1)の割合が10モル%以上、さらに好ましくは20モル%以上、さらに好ましくは50モル%以上のものである。
また、該フェニル基含有シリコーン(BP)は有機樹脂等の有機基材に対する密着性が良好であり、その骨格を成すシロキサン結合(−O−Si−)は光触媒作用による酸化分解がおこらないため、本発明の光触媒組成物(C)をサンシェードの意匠性ベースコート層にコーティングして得られる光触媒含有塗膜は、非常に耐候性に優れたものになる。
【0083】
本発明の光触媒組成物(C)において、バインダー成分(B)に使用するフェニル基含有シリコーン(BP)として、上述した効果を発揮するより好ましいものは、下記式(5)で表されるアルキル基を含有しないフェニル基含有シリコーン(BP1)である。
R1 sXtSiO(4-s-t)/2 (5)
(式中、R1はフェニル基を表し、Xは各々独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアシロキシ基、アミノキシ基、炭素数1〜20のオキシム基、ハロゲン原子を表し、s及びtは、0<s<4、0≦t<4、そして0<(s+t)<4である。)
また、バインダー成分(B)が、下記式(6)で表されるアルキル基含有シリコーン(BA)を更に含有すると、本発明の光触媒組成物から形成される塗膜は、成膜性、硬度、耐熱性、耐汚染性、耐薬品性等の点で優れたものとなるため好ましい。
R2 uXvSiO(4-u-v)/2 (6)
(式中、R2は各々独立に直鎖状または分岐状の炭素数1〜30のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、又は直鎖状または分岐状の炭素数2〜30個のアルケニル基を表す。Xは、各々独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアシロキシ基、アミノキシ基、炭素数1〜20のオキシム基、ハロゲン原子を表す。u及びvは、0<u<4、0≦v<4、そして0<(u+v)<4である。)
【0084】
さらに、上記フェニル基含有シリコーン(BP1)と混合する上記アルキル基含有シリコーン(BA)として、式(7)で表されるモノオキシジオルガノシラン単位(D)と式(8)で表されるジオキシオルガノシラン単位(T)を、モル比が好ましくは(D)/(T)=100/0〜5/95、より好ましくは90/10〜10/90の割合で有する構造のものを用いると、アルキル基含有シリコーン(BA)の応力緩和作用が増加し、本発明の光触媒組成物(C)から生成する光触媒含有トップコート層の耐クラック性が向上する結果、耐候性が非常に優れたものとなる。
−(R2 2SiO)− (7)
(式中、R2は各々独立に直鎖状または分岐状の炭素数1〜30のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、又は直鎖状または分岐状の炭素数2〜30個のアルケニル基を表す。)
【0085】
【化15】
【0086】
(式中、R2は式(7)で定義した通りである。)
本発明において、長期の耐候性向上には、バインダー成分(B)が相分離構造を形成することが好ましく、特にミクロ相分離した構造を形成することが好ましい。
【0087】
たとえば、バインダー成分(B)として、上述した光触媒(A)、特に該変性光触媒(A1)より表面エネルギーが高いバインダー樹脂(B’)と上記式(6)で表されるアルキル基含有シリコーン(BA)とを、好ましくは質量比(B’)/(BA)=5/95〜95/5、より好ましくは(B’)/(BA)=30/70〜90/10で混合したものを用いると、本発明の光触媒組成物(C)から形成される光触媒含有トップコート層は、表面エネルギーが高いバインダー樹脂(B’)とアルキル基含有シリコーン(BA)が相分離したバインダー中に光触媒(A)が分散した構造となり、長期の耐候性に優れたものとなるため好ましい。
【0088】
ここで、表面エネルギーが高いバインダー成分(B’)とアルキル基含有シリコーン(BA)の相分離は、連続層でない相が好ましくは1nm3〜1μm3、より好ましくは10nm3〜0.1μm3、さらに好ましくは10nm3〜0.001μm3の大きさのドメインを形成してミクロ相分離した場合に、より効果を奏する。
また、光触媒(A)が、表面エネルギーの高いバインダー樹脂(B’)と相分離状態にあるアルキル基含有シリコーン(BA)相中に存在した状態は、トップコート層の表面により多く光触媒(A)が存在することができるため好ましい。
【0089】
本発明におけるアルキル基含有シリコーン(BA)と相分離する表面エネルギーの高いバインダー樹脂(B’)としては、上述したフェニル基含有シリコーン(BP)が、その骨格を成すシロキサン結合(−O−Si−)は光触媒作用による酸化分解がおこらないため好ましく、アルキル基を含有しないフェニル基含有シリコーン(BP1)が特に好ましい。
この際、上記フェニル基含有シリコーン(BP1)及び上記アルキル基含有シリコーン(BA)の各々の、GPCで測定したポリスチレン換算重量平均分子量が、好ましくは100〜10,000、より好ましくは500〜6,000、さらに好ましくは700〜4,000であるものを使用すると、上述したバインダー成分(B)はミクロ相分離構造を容易に形成するため好ましい。
【0090】
本発明の光触媒組成物(C)に使用する前述したバインダー成分(B)は、溶剤に溶けたタイプ、溶媒に分散したタイプ、溶媒と混合されていないタイプ(液体、固体)のいずれであっても良い。
【0091】
本発明の光触媒組成物(C)において上記式(4)で示されるフェニル基含有シリコーン(BP)は、反応性を有する基(式(4)中のX)を有しても、有さなくても良いが、反応性を有する基(式(4)中のX)を有する(即ち、式(4)において0<r)と、本発明の光触媒組成物(C)から得られる光触媒含有塗膜は、硬度や耐熱性、耐薬品性、耐久性等に優れたものとなるため好ましい。また、同様の理由から、式(5)において0<t、式(6)において0<vが好ましい。
【0092】
本発明の光触媒組成物(C)において上記式(4)で示されるフェニル基含有シリコーン(BP)が反応性を有する基(式(4)中のX)として、水酸基及び/又は加水分解性基を有する場合、従来公知の加水分解触媒や硬化触媒を、フェニル基含有シリコーン(BP)に対し、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.1〜5質量%の割合で添加することができる。
該加水分解触媒としては、酸性のハロゲン化水素、カルボン酸、スルホン酸、酸性あるいは弱酸性の無機塩、イオン交換樹脂などの固体酸などが好ましい。また、加水分解触媒の量は、ケイ素原子上の加水分解性基1モルに対して好ましくは0.001〜5モルの範囲内であることが好ましい。
【0093】
また上記硬化触媒としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、酢酸ナトリウム、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドのごとき塩基性化合物類;トリブチルアミン、ジアザビシクロウンデセン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、エタノールアミン類、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)−アミノプロピルトリメトキシシランのごときアミン化合物;テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネートのようなチタン化合物;アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、過塩素酸アルミニウム、塩化アルミニウムのようなアルミニウム化合物;錫アセチルアセトナート、ジブチル錫オクチレート、ジブチル錫ジラウレートのような錫化合物;コバルトオクチレート、コバルトアセチルアセトナート、鉄アセチルアセトナートのごとき含金属化合物類;リン酸、硝酸、フタル酸、p−トルエンスルホン酸、トリクロル酢酸のごとき酸性化合物類などが挙げられる。
【0094】
本発明の光触媒組成物(C)において上記式(4)で示されるフェニル基含有シリコーン(BP)がSi−H基を有する場合、多官能アルケニル化合物のごとき架橋剤を、Si−H基に対しアルケニル基が好ましくは0.01〜2当量、より好ましくは0.1〜1当量となるように添加することが好ましい。該多官能アルケニル合物としては、アルケニル基を有しSi−H基と反応して硬化を促進するものであれば何でもよいが、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基などの炭素数2〜30の1価不飽和炭化水素基を有するアルケニル基含有シリコーンが一般に用いられている。
【0095】
また、Si−H基と該多官能アルケニル化合物の反応を促進する目的で、触媒をフェニル基含有シリコーン(BP)と多官能アルケニル化合物の総量に対しに好ましくは1〜10000ppm、より好ましくは1〜1000ppmの割合で添加しても良い。該触媒としては白金族触媒、すなわちルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金の化合物が適しているが、特に白金の化合物とパラジウムの化合物が好適である。白金の化合物としては、例えば塩化白金(II)、テトラクロロ白金酸(II)、塩化白金(IV)、ヘキサクロロ白金酸(IV)、ヘキサクロロ白金(IV)アンモニウム、ヘキサクロロ白金(IV)カリウム、水酸化白金(II)、二酸化白金(IV)、ジクロロ−ジシクロペンタジエニル−白金(II)、白金−ビニルシロキサン錯体、白金−ホスフィン錯体、白金−オレフィン錯体や白金の単体、アルミナやシリカや活性炭に固体白金を担持させたものが挙げられる。パラジウムの化合物としては、例えば塩化パラジウム(II)、塩化テトラアンミンパラジウム(II)酸アンモニウム、酸化パラジウム(II)等が挙げられる。該白金族触媒はSi−H基含有シリコーンと多官能アルケニル化合物の合計量に対し白金族金属の量で好ましくは5〜1000ppmの範囲内で使用されるが、これは反応性、経済性及び所望の硬化速度等に応じて増減させることができる。また、所望により白金族触媒の活性を抑制し、ポットライフを延長させる目的で、各種の有機窒素化合物、有機リン化合物、アセチレン系化合物などの活性抑制剤を添加してもよい。
【0096】
また、本発明の光触媒組成物(C)には、それから形成される光触媒含有塗膜の硬度や耐擦傷性、親水性を向上させる目的でシリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、希土類酸化物等の金属酸化物微粒子を粉末あるいはゾルの状態で添加しても良い。ただしこれら金属酸化物微粒子は、本発明におけるバインダー成分(B)の様なバインダーとしての能力はなく、光触媒と同様に塗膜の柔軟性(耐屈曲性、耐衝撃性)を低下させる。よって、該金属酸化物の添加量は、光触媒組成物(C)から形成される光触媒含有塗膜中において光触媒(A)と金属酸化物の総重量が50質量%以下とすることが好ましい。
【0097】
本発明の光触媒組成物(C)は、無溶媒の状態(液体、固体)であっても溶媒に溶解あるいは分散した状態であっても良く、特に制限はないが、コーティング剤として用いる場合は、溶媒に対し溶解あるいは分散した状態が好ましい。この際、該光触媒組成物(C)中の変性光触媒(A1)とバインダー成分(B)の総量は、好ましくは0.01〜95質量%、より好ましくは0.1〜70質量%である。
【0098】
本発明の光触媒組成物(C)に用いる溶媒としては、例えば水やエチレングリコール、ブチルセロソルブ、イソプロパノール、n−ブタノール、エタノール、メタノール等のアルコール類、トルエンやキシレン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド類、クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素等のハロゲン化合物類、ジメチルスルホキシド、ニトロベンゼン等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は組み合わせて用いられる。
【0099】
また、本発明の光触媒組成物(C)には、必要により通常、塗料に添加配合される成分、例えば顔料、充填剤、分散剤、光安定剤、湿潤剤、増粘剤、レオロジーコントロール剤、消泡剤、可塑剤、成膜助剤、防錆剤、染料、防腐剤等がそれぞれの目的に応じて選択、組み合わせて配合することができる。
本発明の光触媒組成物(C)において、自己傾斜性が非常に高い場合(即ち、塗膜中の変性光触媒(A1)含有量(濃度)100に対し、サンシェード基材またはフィルムでない側である、露出面と接する表面近傍の相対濃度が好ましくは150以上、より好ましくは200以上である場合)、該光触媒組成物(C)において変性光触媒(A1)とバインダー成分(B)の質量比が好ましくは(A1)/(B)=0.1/99.9〜40/60、より好ましくは(A1)/(B)=0.1/99.9〜30/70という変性光触媒(A1)の含有量が非常に少ない範囲においてさえ、形成される塗膜は、光照射による優れた光触媒活性を有する。また、この様に光触媒含有量が少ない塗膜はバインダー成分(B)本来の物性を発現するため、強度や柔軟性(耐屈曲性、耐衝撃性)等に優れたものとなる。
【0100】
本発明における機能性サンシェードは、例えば上記光触媒組成物(C)をサンシェード基材に塗布し、乾燥した後、所望により好ましくは20℃〜500℃、より好ましくは30℃〜250℃の熱処理や紫外線照射等を行い、塗膜を形成することにより得ることができる。上記塗布方法としては、例えばスプレー吹き付け法、フローコーティング法、ロールコート法、刷毛塗り法、キャスティング法、スポンジ塗り法等が挙げられる。
【0101】
この際、本発明の光触媒組成物(C)から形成される塗膜の膜厚は、好ましくは0.1〜200μm、より好ましくは0.2〜20μm、さらに好ましくは0.5〜10μmである。
また、本発明の機能性サンシェードは、本発明の光触媒組成物(C)を上述した方法で塗布したフィルムをサンシェード基材表面に接着剤で貼着したり、ホットメルト接着法、ヒートシール法、ラミネート接着法等により固定化することにより得ることができる。ここで上記フィルム基材には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリカーボネート等のプラスチック製フィルムが好適に利用できる。
【0102】
本発明の機能性サンシェードの表面層には、Ag、Cu、Znのような金属を添加することができる。前記金属を添加した表面層は、表面に付着した細菌や黴を暗所でも死滅させることができる。
本発明の光触媒塗膜を備えた機能性サンシェードは、サンシェード基材の片面に光触媒(A)及びバインダー成分(B)を含む塗膜を有するものであっても良いし、サンシェード基材の両面に光触媒(A)及びバインダー成分(B)を含む塗膜を有するものであっても良い。
【0103】
本発明の機能性サンシェードを得るのに使用できるサンシェード基材は、例えば通常の段ボール製造と同じ工程で、上ライナーと下ライナーの間に中芯3を設置して作製することができる。ここで、サンシェードを構成する支持体としては、上質紙、グラシン紙、トレーシングペーパー、和紙、キャスト紙、コーテッド紙などの通常の天然パルプ紙、含浸紙あるいはラミネート紙、段ボール 紙、プラスチックシート、アルミ板などの金属シート、板などが使用される。
【0104】
また、サンシェードは意匠性も重要であるので上面及び/又は下面のライナーには着色をしても良いし印刷を施しても構わない。
本発明の機能性サンシェード、収納する際は山折り加工線及び谷折り加工線に沿って折り畳むタイプの他、例えばカ ーテン状のもの、シャッターのように未使用時はロール状なっており使用時に引き出して使用するもの、ワイヤーに布、不織布等を貼り吸着盤で固定するもの等考えられるあらゆるサンシェードに応用が可能である。
【0105】
本発明の機能性サンシェードは、塗膜に含まれる光触媒(A)のバンドギャップエネルギーよりも高いエネルギーの光(励起光)を照射することにより光触媒活性を示し、優れた脱臭性を発現する。
この際、光触媒(A)が、上述した式(1)で表されるトリオルガノシラン単位、式(2)で表されるモノオキシジオルガノシラン単位、式(3)で表されるジオキシオルガノシラン単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の構造単位を有する化合物類よりなる群から選ばれる少なくとも1種の変性剤化合物(b)で変性処理された変性光触媒(A1)である場合、励起光照射により光触媒(A)粒子の近傍に存在する該変性剤化合物(b)の珪素原子に結合した有機基(R)の少なくとも一部は、光触媒の分解作用により水酸基に置換される。その結果、本発明の塗膜表面の親水性が高まると共に、生成した水酸基同士が脱水縮合反応してシロキサン結合が生成した場合には、該塗膜の硬度が非常に高くなる。この様な状態は、本発明の様態において好ましい。
【0106】
また、バインダー成分(B)として上述したシリコーンを用いたときも同様に、励起光照射により光触媒(A)粒子の近傍に存在するシリコーンの珪素原子に結合した有機基の少なくとも一部は、光触媒の分解作用により水酸基に置換され、本発明の塗膜表面の親水性が高まると共に、生成した水酸基同士の脱水縮合反応が進行しシロキサン結合が生成した場合には、該塗膜の硬度が非常に高くなる。この様な状態は、本発明の様態において好ましい。
本発明において、光触媒(A)のバンドギャップエネルギーよりも高いエネルギーの光の光源としては、太陽光や室内照明灯等の一般住宅環境下で得られる光の他、ブラックライト、キセノンランプ、水銀灯等の光が利用できる。
【0107】
【実施例】
以下の実施例、参考例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
実施例、参考例及び比較例中において、各種の物性は下記の方法で測定した。
1.粒径分布及び数平均粒子径
試料中の光触媒含有量が1−20質量%となるよう適宜溶媒を加えて希釈し、湿式粒度分析計(日機装製マイクロトラックUPA−9230)を用いて測定した。
【0108】
2.重量平均分子量
ポリスチレン標品を用いて作成した検量線を用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって求めた。
GPCの条件は以下の通りである。
・装置:東ソー製HLC−8020 LC−3A型クロマトグラフ
・カラム:TSKgel G1000HXL、TSKgel G2000HXLおよびTSKgel G4000HXL(いずれも東ソー製)を直列に接続して用いた。
・データ処理装置:島津製作所製CR−4A型データ処理装置
・移動相:
テトラヒドロフラン(フェニル基含有シリコーンの分析に使用)
クロロホルム(フェニル基を含有しないシリコーンの分析に使用)
・流速:1.0ml/min.
・サンプル調製法
移動相に使用する溶媒で希釈(濃度は0.5〜2重量%の範囲で適宜調節した)して分析に供した。
【0109】
3.赤外線吸収スペクトル
日本分光製FT/IR−5300型赤外分光計を用いて測定した。
4.29Si核磁気共鳴の測定
日本電子製JNM−LA400を用いて測定した。
5.塗膜硬度
JIS−K5400に準じ、鉛筆硬度(塗膜のすり傷)として求めた。
6.紫外線照射後の塗膜硬度
塗膜表面に、東芝ライテック製FL20S BLB型ブラックライトの光を7日間照射後、上記の方法(5)にて測定した。
なおこのとき、日本国トプコン製UVR−2型紫外線強度計{受光部として、日本国トプコン製UD−36型受光部(波長310〜400nmの光に対応)を使用}を用いて測定した紫外線強度が1mW/cm2となるよう調整した。
【0110】
7.塗膜表面に対する水の接触角
塗膜の表面に脱イオン水の滴を乗せ、20℃で1分間放置した後、協和界面科学製CA−X150型接触角計を用いて測定した。
塗膜に対する水の接触角が小さいほど、塗膜表面は親水性が高い。
8.紫外線照射前後の、塗膜表面の親水性(疎水性)の変化
塗膜の表面に、上記6の方法で紫外線を7日間照射した後、上記7の方法にて水の接触角を測定した。
【0111】
9.塗膜の光触媒活性
塗膜表面にメチレンブルーの5重量%エタノール溶液を塗布した後、上記6の方法にて紫外線を5日間照射した。
その後、光触媒の作用によるメチレンブルーの分解の程度(塗膜表面の退色の程度に基づき、目視で評価)に基づき、光触媒の活性を以下の3段階で評価した。
◎:メチレンブルーが完全に分解。
△:メチレンブルーの青色がわずかに残る。
×:メチレンブルーの分解はほとんど観測されず。
10.塗膜の耐候性(光沢保持率)
スガ試験器製DPWL−5R型デューパネル光コントロールウェザーメーターを使用して曝露試験(照射:60℃4時間、暗黒・湿潤:40℃4時間)を行った。曝露1000時間後の60°−60°鏡面反射率を最終的な光沢値として測定し、これを初期光沢値で割り、この値を光沢保持率として算出した。
【0112】
11.光触媒の傾斜構造の評価
試料をエポキシ樹脂(Quetol812)に包埋後、独国Reichert社製ULTRACUT−N型ミクロトームにより50〜60nmの厚さの超薄切片を作成し、支持膜を張ったメッシュに積載した。続いて5分程度のRuO4蒸気染色を施した後、カーボン蒸着を行い検鏡用試料とし、TEMにより塗膜断面の観察を実施した。
TEM観察の条件は以下の通りである。
・装置:日立製HF2000型
・加速電圧:125kV
また、光触媒酸化チタンの存在場所は、Ti元素のEDX分析により解析した。
【0113】
また、アクリルウレタン系のベースコート層を有するアルミ板上に形成させた塗膜の観察は、試料をDISCOエンジニアリングサービス製DAD321型ダイシングソーで粗切断した後、FIB(Focused Ion Beam)加工を行い、TEMによる塗膜断面の観察を実施した。
FIB加工条件は以下の通りである。
使用機器:日立製FB2000型
加工条件:加速電圧(30kV)
イオン源:Ga
また、TEM観察の条件は以下の通りである。
・装置:日立製HF2000型
・加速電圧:200kV
【0114】
12.耐衝撃性
JIS−K5400に準じ、デュポン式(500g×50cm)で評価した。13.脱臭性
サンシェードを同一車種2台の乗用車のフロントガラス内部に設置し、車両全面に太陽光が当たるよう該車両を平行に並べ、車室内においてたばこ(マイルドセブン)2本を燃焼させ、1時間後の車室内のダバコ臭を比較し、以下の3段階で評価した。
【0115】
○:タバコ臭が全く感じられない
△:若干のタバコ臭が感じられる
×:タバコ臭が感じられる
【0116】
14.耐光性
サンシェードを同一車種2台の乗用車のフロントガラス内部に設置し、車両全面に太陽光が当たるよう該車両を平行に並べ、30日後に光触媒層とライナーの剥がれを外観(目視で評価)に基づき、以下の3段階で評価した。
【0117】
○:光触媒層とライナーの剥がれは無い
△:光触媒層とライナーの剥がれが若干生じる
×:光触媒層とライナーがほとんど剥がれ落ちてしまう
[参考例1]
フェニル基含有シリコーン(BP1−1)の合成。
還流冷却器、温度計および撹拌装置を有する反応器にいれたジオキサン78gにフェニルトリクロロシラン26.0gを添加した後、室温にて約10分間撹拌した。これに水3.2gとジオキサン12.9gからなる混合液を、反応液を10〜15℃に保ちながら約30分かけて滴下した後、さらに10〜15℃で約30分撹拌し、続いて反応液を60℃に昇温させ3時間撹拌した。得られた反応液を25〜30℃に降温させ、392gのトルエンを約30分かけて滴下した後、再度反応液を60℃に昇温させ2時間撹拌した。
【0118】
得られた反応液を10〜15℃に降温させ、メタノール19.2gを約30分かけて添加した。その後さらに25〜30℃にて約2時間撹拌を続行し、続いて反応液を60℃に昇温させ2時間撹拌した。得られた反応液から60℃で減圧下に溶媒を溜去することにより重量平均分子量3600のラダ−骨格を有するフェニル基含有シリコーン(BP1−1)を得た。(得られたフェニル基含有シリコーン(BP1−1)には、IRスペクトルにおけるラダ−骨格の伸縮振動に由来する吸収(1130cm-1及び1037cm-1)が観測された。)
また、29Si核磁気共鳴の測定結果より求めた上記フェニル基含有シリコーン(BP1−1)の式は、(Ph)1(OCH3)0.58SiO1.21であった。(ここでPhはフェニル基を表す。)
【0119】
[参考例2]
アルキル基含有シリコーン(BA−1)の合成。
還流冷却器、温度計および撹拌装置を有する反応器に入れたメタノール300gにメチルトリメトキシシラン136g(1モル)、及びジメチルジメトキシシラン120g(1モル)を添加した後、室温にて約10分間撹拌した。これに氷冷下で、0.05Nの塩酸水溶液12.6g(0.7モル)とメタノール63gからなる混合液を、約40分かけて滴下し、加水分解を行った。滴下終了後、さらに10℃以下で約20分、室温で6時間それぞれ撹拌した。
【0120】
その後、得られた反応液から60℃で減圧下に溶媒を溜去することにより重量平均分子量3600のアルキル基含有シリコーン(BA−1)を得た。得られたアルキル基含有シリコーン(BA−1)の構造を29Si核磁気共鳴によって測定したところ、T構造とD構造を示すシグナルが確認され、その比率はT構造:D構造=1:1であった。
また、29Si核磁気共鳴の測定結果より求めた上記アルキル基含有シリコーン(BA−1)の平均組成式は、(CH3)1.5(OCH3)0.27SiO1.12であった。
【0121】
[参考例3]
シリコーン組成物(B−1)の調整。
参考例1で合成したフェニル基含有シリコーン(BP1−1)6gと参考例2で合成したアルキル基含有シリコーン(BA−1)3gを混合したものに、トルエン14.7g、イソプロパノール29.8g、ブチルセロソルブ15.1gを添加し、室温で撹拌する事によりバインダー成分(B−1)の溶液を得た。
また、各々の組成物の平均組成式より、上記バインダー成分(B−1)の平均組成式は、(Ph)0.67(CH3)0.5(OCH3)0.47SiO1.18と計算できる。(ここでPhはフェニル基を表す。)
[参考例4]
還流冷却器、温度計および撹拌装置を有する反応器にいれたTKS−251{酸化チタンオルガノゾルの商品名(テイカ製)、分散媒:トルエンとイソプロパノールの混合溶媒、TiO2濃度20重量%、平均結晶子径6nm(カタログ値)}40gにビス(トリメチルシロキシ)メチルシランの20重量%トルエン溶液40gを50℃にて約5分かけて添加し、さらに50℃で12時間撹拌を続けることにより、非常に分散性の良好な変性光触媒オルガノゾル(A−1)を得た。この時、ビス(トリメチルシロキシ)メチルシランの反応に伴い生成した水素ガス量は23℃において718mlであった。また、得られた変性酸化チタンオルガノゾルをKBr板上にコーティングしIRスペクトルを測定したところ、Ti−OH基の吸収(3630〜3640cm-1)の消失が観測された。
【0122】
また、図1、図2にそれぞれ変性処理前のTKS−251及び得られた変性光触媒オルガノゾル(A−1)の粒径分布を示す。得られた変性光触媒オルガノゾル(A−1)の粒径分布は単一分散(数平均粒子径は25nm)であり、さらに変性処理前のTKS−251の単一分散(数平均粒子径は12nm)の粒径分布が完全に消失していることが分かる。
続いて、参考例3で調整したシリコーン成分(B−1)の溶液68gに上記変性光触媒オルガノゾル(A−1)20gを室温にて撹拌下において添加し、さらに硬化触媒(ジラウリル酸ジブチル錫)0.5gを攪拌下に添加して光触媒組成物(C−1)を得た。
【0123】
50mm×60mmに裁断した厚さ1mmのアルミ板(JIS,H,4000(A1050P))にマイティラック白{アクリルウレタン樹脂塗料(2液混合型)の商品名(日本ペイント製)}をスプレー塗布し、室温にて3日間乾燥した。得られたアクリルウレタン塗装を行ったアルミ板に上記光触媒組成物(C−1)を膜厚が2μmとなるようにスプレー塗布した後、室温で1時間乾燥し、150℃で30分加熱する事により、光触媒塗膜を有する試験板(D−1)を得た。
【0124】
得られた光触媒塗膜を有する試験板(D−1)をFIB加工し、TEMによる塗膜断面の観察を行った結果を図3(a)の写真に示す。また、図3(a)の写真のイラストレーションが図3(b)である。変性光触媒粒子(図3(b)中の参照番号1で示す)を含む光触媒塗膜(図3(b)中の参照番号2で示す)と、基材である、顔料酸化チタン(図3(b)中の参照番号4で示す)を含むアクリルウレタン皮膜(図3(b)中の参照番号3で示す)との界面には変性光触媒粒子は存在せず、光触媒塗膜表面は全て変性光触媒粒子で覆われていることが観察された。
【0125】
得られた光触媒塗膜を有する試験板(D−1)の鉛筆硬度はHであり、水との接触角は105゜であった。また、耐衝撃性試験は合格した。
また、得られた光触媒塗膜を有する試験板(D−1)の紫外線(ブラックライト)照射後の鉛筆硬度は5H以上であり、水の接触角は0゜であった。さらに光触媒活性評価の結果も非常に良好(◎)であった。
さらに、デューパネル光コントロールウェザーメーターによる曝露試験(1000時間後)による光沢保持率は98%であり、非常に良好な耐候性を示した。
【0126】
続いて、光触媒組成物(C−1)をエポキシ樹脂(Quetol812)上にスプレー塗布した後、室温で2日間乾燥し、続いて50℃にて3日間加熱することにより平滑な光触媒塗膜を有するエポキシ樹脂(D−2)を得た。
得られた光触媒塗膜を有するエポキシ樹脂(D−2)をエポキシ樹脂(Quetol812)に包埋後、ミクロトームにより50〜60nmの厚さの超薄切片を作成し、RuO4でフェニル基含有シリコーン(BP1−1)を染色した後、TEMによる塗膜断面の観察を行った結果を図4(a)の写真に示す。また、図4(a)の写真のイラストレーションが図4(b)である。
【0127】
変性光触媒粒子(図4(b)中の参照番号1で示す)を含む光触媒塗膜(図4(b)中の参照番号2で示す)と基材であるエポキシ樹脂(図4(b)中の参照番号5で示す)との界面には変性光触媒粒子はほとんど存在せず、光触媒塗膜表面は全て変性光触媒粒子で覆われていることが観察された。
また、図4(b)中の参照番号5(b)で示す部分が、変性光触媒粒子相1と変性光触媒粒子を含まないバインダー相7との境界部分で、その部分を拡大した写真が図5(a)である。また、図5(a)の写真のイラストレーションが図5(b)である。
【0128】
図5(a)には、変性光触媒粒子(図5(b)中の参照番号1で示す)を含むバインダー相と変性光触媒粒子を含まないバインダー相(図5(b)中の参照番号7で示す)が存在することが観察できる。また、変性光触媒粒子を含まないバインダー相(図5(b)中の参照番号7で示す)では、RuO4で染色されたフェニル基含有シリコーンと染色されていないアルキル基含有シリコーンがミクロ相分離構造を有して存在していることが観察できる。
【0129】
[参考例5]
変性光触媒オルガノゾル(A−1)20gの代わりに変性処理をしていないTKS−251の10gを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い光触媒組成物(C−2)を得た。
得られた光触媒組成物(C−2)を用い、参考例4と同様の操作を行って光触媒塗膜(酸化チタン含量は参考例4と同量)を有する試験板(D−3)を得た。
得られた光触媒塗膜を有する試験板(D−3)の鉛筆硬度はHであり、水との接触角は97゜であった。
また、得られた光触媒塗膜を有する試験板(D−3)の紫外線(ブラックライト)照射後の鉛筆硬度は3Hであり、水の接触角は94゜であった。さらに光触媒活性評価は悪い結果(×)であった。
さらに、デューパネル光コントロールウェザーメーターによる200時間の曝露試験で、光沢保持率は10%以下となり、チョーキング現象が観察された。
【0130】
続いて、上記光触媒組成物(C−2)をエポキシ樹脂(Quetol812)上にスプレー塗布した後、室温で2日間乾燥し、続いて50℃にて3日間加熱することにより平滑な光触媒塗膜を有するエポキシ樹脂(D−4)を得た。
得られた光触媒塗膜を有するエポキシ樹脂(D−4)をエポキシ樹脂(Quetol812)に包埋後、ミクロトームにより50〜60nmの厚さの超薄切片を作成し、RuO4でフェニル基含有シリコーン(BP1−1)を染色した後、TEMによる塗膜断面の観察を行った結果を図6(a)の写真に示す。また図6(a)の写真のイラストレーションが図6(b)である。
変性光触媒粒子(図6(b)中の参照番号1で示す)を含む光触媒塗膜(図6(b)中の参照番号2で示す)と、基材であるエポキシ樹脂(図6(b)中の参照番号5で示す)との界面には変性光触媒粒子が多く存在し、光触媒塗膜の露出表面は全て変性光触媒粒子の存在しないアルキル基含有シリコーン(図6(b)中参照番号8で示す)で覆われており、光触媒活性の発現が期待できないことが観察された。
【0131】
[実施例1]
サンシェードに参考例4で調整した光触媒組成物(C−1)をスプレーコーティング法にて約3μmの膜厚で塗布し、120℃で10分間熱処理し、機能性サンシェ−ド(E−1)を作成した。
【0132】
この試料(E−1)の脱臭性を評価したところ、非常に良好な結果(○)となった。また、耐光性も非常に良好(○)であった。また、耐光性試験後の試料(E−1)の脱臭性も非常に良好な結果(○)であった。
【0133】
[比較例1]
未処理のサンシェードの脱臭性を評価したところ、非常に悪い結果(×)であった。
【0134】
[比較例2]
参考例4で調整した光触媒組成物(C−1)の代わりに参考例5で調整した光触媒組成物(C−2)を使用した以外は実施例1と同様に実施し、機能性サンシェード(E−2)を得た。
この試料(E−2)の脱臭性を評価したところ、悪い結果(△)であった。また、耐汚光性は非常に悪い結果(×)であり、耐光性試験後の試料(E−2)の脱臭性も悪い結果(×)であった。
【0135】
[比較例3]
参考例4で調整した光触媒組成物(C−1)の代わりに市販の光触媒コーティング液であるST−K03(石原産業(株)製)を使用した以外は実施例1と同様に実施し、機能性サンシェード(E−3)を得た。
この試料(E−3)の脱臭性を評価したところ、非常に良好な結果(○)を示した。しかし、耐光性は非常に悪い結果(×)であった。また、耐光性試験後の試料(E−3)の脱臭性は非常に悪い結果(×)であった。
【0136】
【発明の効果】
本発明は、生活環境下の光により、サンシェード基材自体を劣化すること無しに、長期間にわたり優れた脱臭性を発現する機能性サンシェ−ドを、煩雑な工程を必用とせずに提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、変性処理前のTKS251(市販の酸化チタンオルガノゾル)の粒径分布を、湿式粒度分析計を使用して測定した結果を示す図である。
【図2】図2は、参考例4で上記TKS−251を変性処理して得られた変性光触媒オルガノゾル(A−1)の粒径分布を、湿式粒度分析計を使用して測定した結果を示す図である。
【図3】図3(a)は、参考例4で得られた光触媒含有塗膜を有する試験板(D−1)の断面のTEM写真である。
図3(b)は、図3(a)のイラストレーションである。
【図4】図4(a)は、参考例4で得られた光触媒含有塗膜を有するエポキシ樹脂(D−2)の断面のTEM写真である。
図4(b)は、図4(a)のイラストレーションである。
【図5】図5(a)は、図4(a)のTEM写真の一部を拡大した写真である。
図5(b)は、図5(a)のイラストレーションである。
【図6】図6(a)は、参考例5で得られた光触媒含有塗膜を有するエポキシ樹脂(D−3)の断面のTEM写真である。
図6(b)は、図6(a)のイラストレーションである。
【符号の説明】
1 変性光触媒粒子
2 光触媒含有皮膜
3 アクリルウレタン皮膜
4 顔料である酸化チタン
5 エポキシ樹脂
5(b) 変性光触媒粒子相1と変性光触媒粒子を含まないバインダー相7との境界部分で、その拡大図を図5(b)に示す
6 包埋用エポキシ樹脂
7 変性光触媒粒子を含まないバインダー相
8 アルキル基含有シリコーン
Claims (19)
- 光触媒(A)及び相分離構造を形成しているバインダー成分(B)を含む塗膜を備えたサンシェードであって、該塗膜中における光触媒(A)の濃度がサンシェード基材に接する面から露出面に向かって高くなることを特徴とする機能性サンシェード。
- 光触媒(A)及び相分離構造を形成しているバインダー成分(B)を含む塗膜を有するフィルムを備えたサンシェードであって、該塗膜中における光触媒(A)の濃度が、フィルム基材に接する面から露出面に向かって高くなることを特徴とする機能性サンシェード。
- 該塗膜が、光触媒(A)及び相分離構造を形成しているバインダー成分(B)を含む光触媒組成物(C)から形成されることを特徴とする請求項1または2記載の機能性サンシェード。
- 該光触媒(A)が、式(1)で表されるトリオルガノシラン単位、式(2)で表されるモノオキシジオルガノシラン単位、式(3)で表されるジオキシオルガノシラン単位、及びフッ化メチレン(−CF2 −)単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の構造単位を有する化合物類よりなる群から選ばれる少なくとも1種の変性剤化合物(b)で変性処理された変性光触媒(A1)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の機能性サンシェード。
R3 Si− (1)
(式中、Rは各々独立に直鎖状または分岐状の炭素数1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数1〜30個のフルオロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜30個のアルケニル基、フェニル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、又は水酸基を表す)
−(R2 SiO)− (2)
(式中、Rは式(1)で定義した通りである。)
- 該バインダー成分(B)が、下記式(4)で表されるフェニル基含有シリコーン(BP)を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の機能性サンシェード。
R1 p R2 q Xr SiO(4-p-q-r)/2 (4)
(式中、各R1 はフェニル基を表し、R2 は各々独立に直鎖状または分岐状の炭素数1〜30のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、又は直鎖状または分岐状の炭素数2〜30個のアルケニル基を表し;
Xは、各々独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアシロキシ基、アミノキシ基、炭素数1〜20のオキシム基、ハロゲン原子を表す。そしてp、q及びrは、0<p<4、0≦q<4、0≦r<4、及び0<(p+q+r)<4であり、そして0.05≦p/(p+q)≦1である。) - 該フェニル基含有シリコーン(BP)が、下記式(5)で表される、アルキル基を含有しないフェニル基含有シリコーン(BP1)であることを特徴とする請求項5に記載の機能性サンシェード。
R1 s Xt SiO(4-s-t)/2 (5)
(式中、R1 はフェニル基を表す。Xは各々独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアシロキシ基、アミノキシ基、炭素数1〜20のオキシム基、ハロゲン原子を表す。s及びtは、0<s<4、0≦t<4、そして0<(s+t)<4である。) - 該バインダー成分(B)が、下記式(6)で表されるアルキル基含有シリコーン(BA)を更に含有することを特徴とする請求項5に記載の機能性サンシェード。
R2 u Xv SiO(4-u-v)/2 (6)
(式中、R2 は各々独立に直鎖状または分岐状の炭素数1〜30のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、又は直鎖状または分岐状の炭素数2〜30個のアルケニル基を表す。Xは、各々独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアシロキシ基、アミノキシ基、炭素数1〜20のオキシム基、ハロゲン原子を表す。そしてu及びvは、0<u<4、0≦v<4、そして0<(u+v)<4である。) - 該バインダー成分(B)が、式(5)で表される、アルキル基を含有しないフェニル基含有シリコーン(BP1)と式(6)で表されるアルキル基含有シリコーン(BA)を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の機能性サンシェード。
R1 s Xt SiO(4-s-t)/2 (5)
(式中、R1 はフェニル基を表し、Xは各々独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアシロキシ基、アミノキシ基、炭素数1〜20のオキシム基、ハロゲン原子を表す。s及びtは、0<s<4、0≦t<4、そして0<(s+t)<4である。)
R2 u Xv SiO(4-u-v)/2 (6)
(式中、R2 は各々独立に直鎖状または分岐状の炭素数1〜30のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、又は直鎖状または分岐状の炭素数2〜30個のアルケニル基を表し、Xは、各々独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアシロキシ基、アミノキシ基、炭素数1〜20のオキシム基、ハロゲン原子を表す。
u及びvは、0<u<4、0≦v<4、そして0<(u+v)<4である。) - 該フェニル基含有シリコーン(BP)と該アルキル基含有シリコーン(BA)について相分離構造を有する塗膜であることを特徴とする請求項7〜9のいずれか一項に記載の機能性サンシェード。
- 光触媒(A)が該アルキル基含有シリコーン(BA)相に存在することを特徴とする請求項10に記載の機能性サンシェード。
- 該変性光触媒(A1)の数平均粒子径が400nm以下であることを特徴とする請求項4に記載の機能性サンシェード。
- 該変性剤化合物(b)が、式(9)で表されるSi−H基含有ケイ素化合物(b1)であることを特徴とする請求項4に記載の機能性サンシェード。
Hx Ry SiO(4-x-y)/2 (9)
(式中、Rは各々独立に直鎖状または分岐状の炭素数1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数1〜30個のフルオロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜30個のアルケニル基、フェニル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、又は水酸基を表す。x及びyは、0<x<4、0<y<4であり、そして(x+y)≦4である。) - 該Si−H基含有ケイ素化合物(b1)が、式(10)で表されるモノSi−H基含有化合物、式(11)で表される両末端Si−H基含有化合物、式(12)で表されるHシリコーンよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項13に記載の機能性サンシェード。
−O−(R4 2SiO)m −SiR4 3・・・(13)
(式中、R4 はそれぞれ独立に直鎖状または分岐状の炭素数が1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数が1〜30個のフルオロアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜30個のアルケニル基、又はフェニル基を表す。また、mは整数であり、0≦m≦1000である。))
H−(R3 2SiO)n −SiR3 2−H ・・・(11)
(式中、R3 は式(10)で定義した通りである。nは整数であり、0≦n≦1000である。)
(R3 HSiO)a (R3 2SiO)b (R3 3SiO1/2 )c ・・・(12)
(式中、R3 は式(10)で定義した通りであり、aは1以上の整数であり、bは0以上の整数であり、(a+b)≦10000であり、そしてcは0又は2である。但し、(a+b)が2以上の整数であり且つc=0の場合、式(12)の該Hシリコーンは環状シリコーンであり、c=2の場合、式(12)の該Hシリコーンは鎖状シリコーンである。) - 該塗膜に含まれる光触媒(A)のバンドギャップエネルギーよりも高いエネルギーの光を照射することにより光触媒活性を示すことを特徴とする請求項1または2に記載の機能性サンシェード。
- 該塗膜に含まれる光触媒(A)のバンドギャップエネルギーよりも高いエネルギーの光を照射することにより、該光触媒(A)粒子の近傍に存在する珪素原子に結合した有機基の少なくとも一部が水酸基及び/又はシロキサン結合に置換されてなることを特徴とする請求項4、5、7、8のいずれか一項に記載の機能性サンシェード。
- 光触媒(A)とバインダー成分(B)を含む光触媒組成物(C)であって、該バインダー成分(B)が、下記式(4)で表されるフェニル基含有シリコーン(BP)と、下記式(6)で表されるアルキル基含有シリコーン(BA)を含有し、相分離構造を形成することを特徴とするサンシェード被覆用光触媒組成物。
R 1 p R 2 q X r SiO (4-p-q-r)/2 (4)
(式中、各R 1 はフェニル基を表し、R 2 は各々独立に直鎖状または分岐状の炭素数1〜30のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、又は直鎖状または分岐状の炭素数2〜30個のアルケニル基を表し;
Xは、各々独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアシロキシ基、アミノキシ基、炭素数1〜20のオキシム基、ハロゲン原子を表す。そしてp、q及びrは、0<p<4、0≦q<4、0≦r<4、及び0<(p+q+r)<4であり、そして0.05≦p/(p+q)≦1である。)
R 2 u X v SiO (4-u-v)/2 (6)
(式中、R 2 は各々独立に直鎖状または分岐状の炭素数1〜30のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、又は直鎖状または分岐状の炭素数2〜30個のアルケニル基を表す。Xは、各々独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアシロキシ基、アミノキシ基、炭素数1〜20のオキシム基、ハロゲン原子を表す。そしてu及びvは、0<u<4、0≦v<4、そして0<(u+v)<4である。) - 該フェニル基含有シリコーン(BP)が、下記式(5)で表される、アルキル基を含有しないフェニル基含有シリコーン(BP1)であることを特徴とする請求項17に記載のサンシェード被覆用光触媒組成物。
R1 s Xt SiO(4-s-t)/2 (5)
(式中、R1 はフェニル基を表す。Xは各々独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアシロキシ基、アミノキシ基、炭素数1〜20のオキシム基、ハロゲン原子を表す。s及びtは、0<s<4、0≦t<4、そして0<(s+t)<4である。)
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JPH06169180A (ja) * | 1992-11-30 | 1994-06-14 | Hitachi Ltd | 筐体構造と分解方法 |
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