JP4106190B2

JP4106190B2 - 縫糸留具

Info

Publication number: JP4106190B2
Application number: JP2000601972A
Authority: JP
Inventors: バートレット，エドウィン・クレアリー
Original assignee: バートレット，エドウィン・クレアリー
Priority date: 1999-03-02
Filing date: 1999-12-15
Publication date: 2008-06-25
Anticipated expiration: 2019-12-15
Also published as: US20020004669A1; DE69941632D1; EP1862127B1; WO2000051497A1; ATE447367T1; EP1156743A1; US6689154B2; AU764885B2; US6635074B2; EP1156743B1; CA2520411C; EP1862127A1; AU2055100A; JP4677433B2; JP2002537886A; US6682549B2; CA2520411A1; US6306158B1; US20020007196A1; DE69942283D1

Description

【０００１】
［発明の分野］
本発明は外科手術用道具に関し、さらに詳細には、縫糸を骨に取り付けることができる縫糸留具に関する。
【０００２】
［発明の背景］
人体内に損傷または疾患が生じた場合、身体組織を隣接する骨構造に強固に固着してその組織を所定の位置に固定しなければならないことが多い。例えば、断裂した腱は対応する骨に再固着されねばならない。この目的を達成するための縫糸留具が種々開発されている。これらの縫糸留具は、縫糸が固着されるべき穴に留具を設置し、次いで、縫糸を隣接する身体組織に固着させるように構成されている。一般的に、縫糸留具は骨に形成された穴に挿入される。従来、種々の縫糸留具、例えば、釣り針顎式留具、栓抜き式留具、片寄り再方位縫糸穴付き挿入式留具、および楔式留具などが知られている。これらの種々の縫糸留具の内、楔式縫糸留具が将来的に期待されている。
【０００３】
具体的に、縫糸が取り付けられた楔式留具はまず、骨の身体組織が固着されるべき場所に形成された穴に挿入具によって導入される。縫糸留具は一般的に鋭利な端部または鋭利な点からなる第１把持部を備え、骨穴に入るときまたはそこから引き出される工程において回転されるように設計されている。縫糸留具が回転するにつれて、第１把持部が骨穴の壁に食い込みまたは入り込み、さらに留具の回転が促進される。通常、縫糸留具の反対側の端部に第２把持部が設けられる。第２把持部は、縫糸留具が回転するにつれ、第１把持部の略反対側の骨穴の壁に入り込み、縫糸留具を骨穴に楔状に固着する。縫糸留具が骨穴の周囲の骨構造に対して第２把持部を中心にするよりも第１把持部を中心にして回転する度合いが大きいと、縫糸留具は着座位置に配置され、その着座位置で骨穴に係留され、次いで、隣接身体組織が縫糸留具に取り付けられる。
【０００４】
縫糸留具はあらゆる骨に適用されるように理論的に設計されていても、骨の構造は縫糸留具が取り付けられる人体の領域に依存して大きく異なる。骨は一般的にその骨の全体にわたって存在する繊維性の小柱を有している。骨髄間の導管内の繊維性小柱の間隔は骨の密度を表す良好な指標として用いられることが多い。皮質骨は肉眼で確認できるほどの隙間のない中実の骨であり、例えば、長骨の主たる柱状体である骨幹からなる。長骨の対向端の継ぎ目の周囲にある骨幹端および骨端は、長繊維状小柱構造を有する皮質殻を有している。なお、この皮質殻の量は場所によって著しく異なる。緻密骨は一般的に、短い繊維状小柱が密に配置され、その結果、硬質でかつ強靭である。一方、弱緻密骨すなわち多穴性骨は、大きい繊維状小柱が広い間隔で配置され、その結果、一般的に軟質でかつ略弱性である。この弱緻密骨は一般的に、骨髄間の導管の周囲に位置する海綿骨領域を有している。代表的な骨構造は、海綿層の上に皮質層を有し、これらの層の割合は種々異なる。骨の構造は人体の領域によって著しく異なるので、縫糸留具に必要とされる特性もまた異なる。従って、縫糸留具はあらゆる種類の骨構造内に用いられても所定の機能が発揮されねばならない。縫糸留具が緻密骨構造に移植される場合、その緻密骨の穴に縫糸留具を確実に固着するために、十分な大きさの強靭な把持縁を設ける必要がある。しかし、縫糸留具が弱緻密骨に移植される場合、比較的軟弱な骨の穴に付加される応力を分布させることによって低減させるために、骨との係合面は大きな表面積を有しているのが好ましい。
【０００５】
楔式縫糸留具の例がバートレットに付与された米国特許第５，５４０，７１８号（特許協力協力条約による国際出願番号ＷＯ−Ａ−９５／０８２９５と一致する）、５，６２６，６１２号、５，７８２，８６３号および５，８７９，３７２号に記載されている。これらの特許は、円錐、二重円錐、および円錐と円筒の組合せからなる種々の構成に基づく楔式縫糸留具を開示している。また、本発明の譲渡人であるマイテク・サージカル・プロダクツ社に譲渡されたルスコム等に付与された米国特許第５，６８３，４１８号は、三角形から四辺形に形状が略変化する楔式縫糸留具を開示している。
【０００６】
ルスコム等の‘４１８特許は、角のある形状に形成され、三角形から四辺形に略連続し、垂直側面を有する縫糸留具を開示している。従って、縫糸留具の周囲をなす主面の交差部は鋭利な遷移部を構成している。従って、’４１８特許に開示されている装置は、概して緻密骨構造により有用である。すなわち、この装置においては、鋭利な把持縁が緻密な骨の穴により有効に食い込まれる。しかし、鋭利な把持縁が骨内に食い込まれるので、‘４１８特許の装置は一般的に、緻密および弱緻密の両方において、留具を適切に着座させるために必要な回転を得ることが困難である。また、装置の外面をなす長い垂直面によっても、装置の回転が阻害される。
【０００７】
‘４１８特許の他の考えられる欠点は、縫糸留具を骨穴に移植するのに用いられる挿入具が、留具との界面またはその近傍において壊れやすくて移植の後に壊れることによって留具から離脱されるような部分を有する材料から形成されている点にある。変更例において、’４１８装置は摩擦嵌合によって留具の穴に係合される金属性の挿入具を用いている。これらの挿入具は両方とも欠点がある。すなわち、壊れやすい部分を有する挿入具は留具を骨穴に挿入させるだけの十分な強度を有していない。また、摩擦嵌合による挿入具は移植の後に留具から離脱するのが困難である。
【０００８】
バートレットの‘７１８特許、’６１８特許、‘８６３特許、および’３７２特許は、円錐、二重円錐、および円錐と円筒の組合せからなる種々の構成に基づく楔式縫糸留具を開示している。これらの装置は、円錐または切頭の先端を、骨内に食い込み、次いで、留具の回転中心となる縁部として用いている。しかし、円錐の先端またはその近傍の断面積が小さいので、この主要な食い込み端部は弱く、例えば、留具が緻密骨構造内に移植されるような高い応力が付加される場所では壊れる傾向がある。なお、楔式縫糸留具は一般的に留具に形成された穴を通して留具に係合される縫糸を用いて、留具の骨穴での回転および着座を促進させるように構成されている。この楔式縫糸留具は概して主要食い込み端部と挿入具が挿入される穴の間に、縫糸穴が形成されている。この場合、縫糸を用いて縫糸留具を回転させるモーメント腕が短くなる。従って、縫糸による縫糸留具の骨穴内、特に留具が回転しにくい緻密骨構造内での回転を促進する効果が小さい。一方、バートレットの装置は、留具を着座させる工程中に主要食い込み端部が高い応力を受けないような弱緻密骨においてはより有効である。さらに、留具は弱緻密骨の穴においてより大きく回転できるので、縫糸は留具の回転および着座をより効果的に促進させることができる。従って、バートレットの装置は、弱緻密な骨内においてより広範囲に回転されるので、より効果的に着座され、弱緻密骨において用いられる縫糸留具に望ましいより大きい表面積を得ることができる。
【０００９】
ペドリック氏他からミテック・サージカル・プロダクツ・インコーポレーテッドに譲渡された、特許協力条約による国際出願番号ＷＯ−Ａ−９７３７５９５にも、楔形の縫合材アンカーに係る発明が開示されている。この縫合材アンカーは、例えば、盲穴が取付器具の頭部を受けるために設けられている。盲穴は、”縫合材アンカーの基端面にて開口し、軸線に沿って縫合材アンカー内に末端方向に伸長する”。盲穴は、また、”取付器具の末端を受入れる取付開口部として機能する”、そして、”噛合い端部よりも当接面により近い位置に配置される”。さらに、”軸線は、当接面の長手方向軸線に対してわずかに交差する角度に設定することが好ましい”。縫合材アンカーを盲穴に挿入するとき、”縫合材アンカーのプラウ面は、最初に、穴の縁部に係合し、縫合材アンカーが回動して穴内に入るとき、軸の先端の末端を曲げる”。このように、ペドリック氏の装置には、取付器具を受けるための盲穴が設けられており、この盲穴は、縫合材アンカーが穴に挿入されるために縫合材アンカーが取付器具の頭部を曲げて使用されるように形成されている。この構成では、骨の穴に挿入する際に前記取付器具が縫合材アンカーに対して高い応力を伝達するかもしれず、および／または、前記取付器具が縫合材アンカーのシャフトの先端で回転するかもしれない。
このように、骨穴内に縫糸を効果的に係留させ、また、硬質な緻密骨から軟質な弱緻密骨にわたる広い範囲の異なった密度の骨に対して等しく良好に機能する縫糸留具が必要とされている。
【００１０】
［発明の要約］
上記および他の目的は、特に硬質な緻密皮質骨から軟質な弱緻密海綿骨にわたるあらゆる種類の骨内に効果的に縫糸を係留させることができる本発明による縫糸留具によって達成される。一実施態様において、縫糸留具は、一端と他端にそれぞれ先端把持縁と後端把持縁を有する骨穴当接面と、骨穴当接面と略反対側に位置して先端把持縁および後端把持縁と係合する骨穴閉鎖面を有する本体からなる。本体はさらに、本体を横方向に貫通する縫糸穴と、挿入具を受容するための挿入穴を有している。縫糸は、骨に固着される身体組織と係合するように、縫糸穴を通して縫糸留具に係合される。
【００１１】
縫糸留具は、好ましくは、骨穴当接面をなす最長寸法の側面を有する四辺形に形成されるとよい。先端面は骨穴当接面の一端と鋭角に交差し、先端把持縁を形成する。後端面は骨穴当接面の他端と鋭角に交差し、後端把持縁を形成する。先端把持縁と後端把持縁の構成は、留具が挿入される骨の構造によって変更されるとよい。円弧部と実質的な直線部を有する骨穴閉鎖面は、骨穴当接面の反対側において、先端面と後端面の端部と係合し、略四辺形の本体を形成する。本体はさらに、後端把持縁に隣接して配置された、本体を横方向に貫通する縫糸穴を有している。縫糸穴の寸法は種々異なってもよい。縫糸穴は縫糸と係合する。すなわち、縫糸は縫糸穴を通って、骨穴に隣接する身体組織と係合する。さらに、縫糸留具の骨穴への挿入を容易にするために、本体は挿入具を受容する挿入穴を有している。好ましくは、挿入穴は骨穴当接面に対して傾斜するように先端面から内部に延長されるとよい。さらに好ましくは、挿入穴は先端把持縁と縫糸穴の間に配置され、長さの全体にわたって均一な断面形状を有しているとよい。挿入穴は、好ましくは、非円形断面形状を有し、さらに好ましくは、略正方形状を有しているとよい。
【００１２】
また、縫糸留具の寸法および構成は、人体の疾患区域内の骨の特性と構造、および縫糸留具に要求される特性に応じて変更されるとよい。縫糸留具の本体は、好ましくは、生物学的適合性を有する材料によって、さらに好ましくは、生物学的吸収性を有する材料によって構成されるとよい。例えば、本体は、ポリ乳酸、ポリジオキサン、ポリグリコール酸などによって、最も好ましくは、ポリ乳酸によって構成されるとよい。
【００１３】
本発明のさらに他の有益な態様として、縫糸留具の変更例は身体組織を隣接する骨構造に固着するのに用いられる結び目なし留具として構成された縫糸留具の変更例が挙げられる。本発明の変更例による結び目なし縫糸留具は前述の実施態様とほぼ同様の留具構成を有し、さらに骨穴当接面に形成された切欠きと縫糸穴を通るループ状に形成された縫糸を備えている。好ましくは、縫糸は骨に固着される身体組織に係合されるとよい。身体組織に係合された後、縫糸は本体に巻き付けられて切欠きに係合される。その後、本体が骨穴に移植され、縫糸を身体組織に結び付けることなく、身体組織が骨穴に固着される。
【００１４】
本発明のさらに他の有益な態様として、縫糸留具を骨穴に挿入させるための挿入具が挙げられる。挿入具は、概して、対向する両端を有する剛直な軸とその軸の一端に係合した先端部からなる。先端部はさらに軸と操作可能に係合される近位端と縫糸留具内の挿入穴と係合される遠位端を有している。好ましくは、先端部は、ニッケル−チタン合金のような形状記憶材料からなり、本体の挿入穴の断面に対応する非円形断面を有しているとよい。また、挿入穴からの離脱を容易にするために、先端部はその長さの全体にわたって均一な断面形状を有していると有益である。さらに、先端部を非円形、さらに好ましくは、略正方形状に形成することによって、先端部の軸心を中心とする縫糸留具の回転を可能な限り小さくすることができる。このように、先端部を形状記憶材料によって形成し、また先端部の軸心を中心とする留具の回転を阻止するような形状に先端部を形成することによって、先端部の寸法を小さくすることができる。先端部の形状を小さくすることによって、挿入具と縫糸留具の骨穴内での操作を容易にし、また縫糸留具の寸法を低減させることができる。
【００１５】
本発明のさらに他の有益な態様として、縫糸を骨穴に係留させる留具セットが挙げられる。一実施態様において、留具セットは、前述の実施態様による少なくとも１つの挿入具と少なくとも１つの縫糸留具を備えている。留具セットはさらに、骨に縫糸留具を受容するに十分な穴を形成することができる少なくとも１つの穴あけ刃を備えている。
【００１６】
本発明のさらに他の有益な態様として、縫糸留具を骨穴に移植する方法が挙げられる。縫糸留具はまず、縫糸留具の骨穴当接面が骨穴の壁と係合するように、骨穴に対して傾斜して配置された挿入具を用いて骨穴に係合される。挿入具が次いで弾性変形され、骨穴当接面と骨穴の壁との係合状態が縫糸留具が挿入されたときの係合状態として維持されるように、縫糸留具が骨穴に押し込められる。その後、挿入具を骨穴の径方向において反対側に移動させることによって、縫糸留具がその先端把持縁を中心にして回転するように、縫糸留具が骨穴内で操作される。挿入具が縫糸留具から除去された後、縫糸穴を通された縫糸に引張り力を付加することによって、縫糸留具は骨穴内で着座位置に達するまでさらに回転される。このように、縫糸留具は先端把持縁を中心として挿入角度から例えば約９０°回転し、その時点で、先端把持縁と後端把持縁が骨穴の壁に係合される。後端把持縁と骨穴の壁との係合によって縫糸留具のそれ以上の回転が阻止されたとき、縫糸留具は着座位置に達するように構成されている。
【００１７】
従って、本発明の実施態様によれば、２つの面の交差によって形成される先端把持縁は円錐の先端よりも強固であり、高密度骨内への留具の移植のように高い応力が付加される場合に適した、より強靭な縫糸留具を提供することができる。また、先端把持縁と後端把持縁間に円弧状の遷移部が設けられるので、緻密な皮質構造から弱緻密な海綿構造に至る種々の骨構造の穴における縫糸留具の回転を容易にし、縫糸留具の着座能力を改善し、わずかな労力で必要な回転を得ることを可能にする。さらに、２つの面の交差によって形成される後端把持縁は、緻密骨構造に対して望ましい鋭利な把持縁として機能する。ただし、本縫糸留具は円弧部を有する骨穴閉鎖面を備えているので、縫糸留具が回転して弱緻密骨構造に対して望ましい大きな着座面を得た後、その鋭利な後端把持縁は縫糸留具を弱緻密骨構造に係合させる。従って、本発明の実施態様による縫糸留具は、縫糸を骨穴に効果的に係留させ、かつ硬質な緻密骨から軟質な弱緻密骨に至る異なった密度の骨内において均一に作用する機構を提供することができる。さらに、挿入穴/挿入具の界面の均一な非円形構成によって、先端部の軸心を中心とする縫糸留具の回転を可能な限り小さくし、また、挿入具を縫糸留具の挿入穴に確実に接続させ、かつその挿入穴から挿入具を容易に離脱させることができる。
【００１８】
本発明の利点をいくつか述べたが、他の利点は添付の図面（必ずしも実物に対応する縮尺率で描かれていない）に基づく以下の説明において明らかになるであろう。
【００１９】
［発明の詳細な説明］
以下、好適な実施形態が示されている添付の図面を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は多くの異なる方法で実施可能であり、ここに述べる実施例に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施例は、当業者に本発明の範囲を十分に知らしめるために、綿密かつ完全に開示されるものである。なお、すべての図面において、同一の参照番号は同一の要素を表している。
【００２０】
図１ないし図３は、参照番号１０で概括的に示される、本発明による縫糸留具の一実施の形態を開示している。縫糸留具１０は、好ましくは、生物学的適合性を有し、ポリ乳酸、ポリジオキサン、ポリグリコール酸、および類似材料またはそれらの混合物などのような生物学的吸収性のある材料からなるとよい。これらの材料は、適当な規定機関によって、人体に好適に使用可能であると認定された材料であるべきである。上記の材料として、留具が挿入される骨を強化するような材料であるのが望ましい。さらに、上記の材料として、放射線透過（例えばX線透過）のような非侵入検査が行えるような半透明または透明な材料であるのが望ましい。なお、縫糸留具は、自己移植片または自己繁殖片としての皮質骨によって構成されてもよい。一般的に、縫糸留具は、適当な生物学的適合性を有するポリマー、金属または他の材料からなるとよい（バルトレットに付与された米国特許第５，５４０，７１８号、５，６２６，６１２号、５，７８２，８６３号および５，８７９，３７２号、およびルスコム等に付与された米国特許第５、６８３、４１８号を参照）。縫糸留具１０は略四辺形であり、骨穴当接面１４、先端把持縁１６、先端面１８、骨穴閉鎖面２０、後端面２２、後端把持縁２４、挿入穴２６、および縫糸穴２８を有する本体１２からなる。骨穴当接面１４と先端面１８は鋭角に交差し、先端把持縁１６を形成している。反対側の端部において、骨穴当接面１４は後端面２２と鋭角に交差し、後端把持縁２４を形成している。先端面１８と後端面２２はさらに骨穴閉鎖面２０を介して接続されている。骨穴閉鎖面２０は骨穴当接面１４と略対向して配置され、円弧部２０ａと略直線部２０ｂから構成されている。本体１２はさらに、先端面１８に形成された挿入穴２６と、縫糸３０が通過する横縫糸穴２８を有している。
【００２１】
本発明の実施形態によれば、骨穴当接面１４は長手方向と横方向のいずれにおいても平面であればよいが、好ましくは、長手方向において平坦であり、横方向においては本体１２の端部に沿って湾曲すなわち丸みが付けられるとよい。また、本体１２は先端把持縁１６に接近するにつれて幅広になり、先端把持縁１６においてほぼ最大幅になるように構成されるとよい。すなわち、骨穴当接面１４と先端面１８が、先端把持縁１６に接近するにつれて、幅広になるように構成されるとよい。先端把持縁１６は、後述するように、より大きな表面積にわたって係留応力を分布させ、また縫糸留具１０を強化するために、幅広であるとよい。先端面１８は略平面であり、挿入穴２６を有している。挿入穴２６は、好ましくは、先端面１８が骨穴閉鎖面２０の円弧部２０ａと交差する場所の近傍に配置されるとよい。挿入穴２６は、先端面１８に対して鋭角に傾斜した状態で、骨穴当接面１４に向かって本体１２内に延設されている。
【００２２】
挿入穴２６は、好ましくは、骨穴に縫糸留具１０を移植するための挿入具５０の先端部５２を受容するように構成されるとよい。好ましくは、挿入穴２６および先端部５２は互いに対応する非円形断面を有し、それらの断面形状は長さ方向に沿って均一であるとよい。挿入具５０の先端部５２は略正方形であるのが好ましく、コーナ部は面取りされるかまたは丸められるとよい。また、挿入穴２６はそのような先端部５２を受容するような形状に形成されるとよい。一般的に、挿入具５０の先端部５２は、その先端部５２の長手方向の軸心を中心とする縫糸留具１０の回転を可能な限り小さくできるなら、どのような形状または構成であってもよい。さらに、少なくとも挿入具５０の先端部５２は、好ましくは、弾性を有する材料、さらに好ましくは、形状記憶材料のような超弾性を有する材料から形成されるとよい。先端部５２を形成する、弾性または超弾性を有する材料とは、縫糸留具１０が骨穴に挿入又は移植される間、先端部５２を実質的に永久変形させず、先端部５２を最初の形状（最初に挿入穴２６に挿入された形状と略一致する形状）に実質的に復帰させるような材料を意味する。好ましくは、挿入具５０の先端部５２は、ＮＩＴＩＮＯＬ^TM（レイ・ケミカル）、ＴＩＮＥＬ^TM、ＳＥＮＴＩＮＯＬ^TM（ＧＡＣインターナショナル社）の商品名で市販されているようなニッケル−チタン合金から形成されるとよい。超弾性を有するこのような形状記憶材料は業界において公知である。ただし、本発明の縫糸留具１０を骨穴に適切に移植させることができる他の形状保持材料が用いられてもよい。形状記憶材料によって先端部５２を形成し、また先端部５２をその先端部５２を中心とする縫糸留具１０の回転を可能な限り小さくするような形状に形成することによって、先端部５２の寸法を小さくすることができ、縫糸留具１０を骨穴に効果的に移植することができる。また、先端部５２を小さくすることによって、より小さいな縫糸留具１０をそのような小形の縫糸留具を必要とする場所に移植することができる。
【００２３】
本発明の一実施の形態によれば、縫糸留具１０は、縫糸穴２８を通して縫糸留具１０に係合される縫糸３０を備えている。縫糸穴２８は、骨穴当接面１４と骨穴閉鎖面２０の直線部２０ｂの中間に、後端面２２および後端把持縁２４に隣接して配置される。縫糸穴２８の大きさは変更可能であり、好ましくは、縫糸３０の磨耗を避けるために、開口部の角は丸められるか面取りがなされるとよい。最も好ましくは、縫糸穴２８は、先端把持縁１６を基準にして挿入穴２６の反対側において、本体１２に配置されるとよい。すなわち、最も好ましくは、挿入穴２６は先端把持縁１６と縫糸穴２８の中間に配置されるとよい。後述するように、先端把持縁１６は縫糸留具１０の回転中心となる点である。すなわち、縫糸穴２８に通された縫糸３０に付加された引張り力によって、縫糸留具１０は先端把持縁１６を中心に回転する。この場合、縫糸穴２８が後端把持縁２４に隣接して配置されているので、縫糸３０に引張り力が付加されたとき、縫糸穴２８と先端把持縁１６間の部分が縫糸留具１０に必要な回転力を与えるより長いモーメント腕として作用する。従って、挿入穴２６の反対側でかつ先端把持縁１６に近接して配置された縫糸穴２８を有するような縫糸留具１０の構成と比較して、より大きな回動トルクを縫糸留具１０に与えることができる。一般的に、縫糸留具１０は、着座位置に達するまで骨穴内で回転され、着座位置は、縫糸留具１０が最初に骨穴に挿入された位置から、約９０°角度範囲まで回転した方位の位置であるのが好ましい。なお、縫糸留具１０の回転角は、少なくとも一部は、縫糸留具１０が移植される骨の構造に依存する。
【００２４】
骨穴閉鎖面２０と後端面２２は、各々、平坦な面でよいが、好ましくは、その長さの全体にわたって幅方向に湾曲されるか丸められるとよい。本発明の好適な方法の説明において詳述するが、挿入穴２６は挿入具５０と協同で縫糸留具１０を骨穴に導入される。縫糸留具１０が骨穴に導入されると、骨穴当接面１４は骨穴の壁に密着し、次いで、挿入具５０によって骨穴の壁に押し付けられる。骨穴閉鎖面２０、より具体的には、骨穴当接面１４と直交する方向において測定されたときに縫糸留具１０の最大幅をなす円弧部２０ａは、先端把持縁１６と径方向において反対側の骨穴の壁に隣接して配置される。その後、挿入具５０を骨穴の径方向において反対側に移動することによって、または縫糸３０に骨穴の外側に向かう引張り力を付加することによって、先端把持縁１６が骨穴の壁内に食い込むように縫糸留具１０が回転する。縫糸留具１０の回転は、好ましくは、挿入具５０を、縫糸留具１０を骨穴へ最初に導入したときに挿入具５０が挿入された骨穴の側と径方向において反対側に移動させることによって、始動されるとよい。挿入具５０が挿入穴２６から除去された後、縫糸３０に引張り力を付加して、縫糸留具１０を着座位置にまで回転させるとよい。
【００２５】
挿入具５０の骨穴の反対側への移動および/または縫糸３０への引っ張り力の付加による縫糸留具１０の先端把持縁１６を中心とする回転は、骨穴閉鎖面２０の円弧部２０ａによって容易に行われる。挿入具５０および/または縫糸３０に付加される引張り力によって、骨穴閉鎖面２０の直線部２０ｂと後端面２２の交点および/または後端把持縁２４が先端把持縁１６と反対側の骨穴の壁に食い込み始めるまで、縫糸留具１０はさらに回転される。ただし、挿入具５０が挿入穴２６から除去された後、縫糸留具１０の着座位置への回転は縫糸３０に引張り力を付加することのみによってなされる。
【００２６】
本発明の一変更例が図４および図５に示されている。この変更例は、上述の実施例とほど同様であるが、先端面１１８の構成が異なっている。先端面１１８は、骨穴当接面１４との交差縁の直前の部分に凹部１１９を有している。この凹部１１９から先端把持縁１６に至る部分はへら状をなし、そのへらの先端である先端把持縁１６、すなわち、骨穴当接面１４と先端面１１８間の交差部はより鋭角に突出する。
【００２７】
本発明の他の変更例が図６および６Ａに示されている。図６に示されるように、先端面２１８は、挿入穴２６と先端把持縁２１６間において、下向きに段がつけられている。さらに、骨穴当接面２１４は、先端面２１８の先端把持縁２１６と交差する部分の幅が狭くなっている。すなわち、先端把持縁２１６の幅が狭くなっている。先端把持縁２１６の幅を狭くすることによって、例えば、緻密骨に縫糸留具１０を取り付ける場合、先端把持縁２１６のより小さくかつ鋭利な構造によって、その先端把持縁２１６を容易に骨穴の壁に食い込ませることができるという利点がある。図６Ａにさらに示されるように、縫糸留具１０の各寸法を特定の用途に好適な特性が得られるように変更することができる。例えば、寸法ＢＷおよびＯＷを大きくすることによって、より大きくかつより強靭な縫糸留具１０を得ることができる。そのようなより大きな縫糸留具１０を挿入するには、骨により大きい穴を形成する必要がある。これらの特性、すなわち、寸法ＢＷおよびＯＷを大きくすることにもたらされる特性は、例えば、より大きな骨構造が移植の対象となった場合および/またはそのより大きな骨に固着される身体組織がその取り付け部により高い応力を付加することが予期される場合に利点がある。具体的には、この場合、より大きくかつより強靭な縫糸留具１０を好ましく用いることができる。このように、本発明の実施例においては、縫糸留具１０の寸法と構成は、特定の用途の要求事項を満たすような縫糸留具１０が得られるように変更することができる。
【００２８】
本発明の実施形態による骨穴に縫糸留具１０を移植する方法が図７ないし図１４に示されている。図７に示されるように、まず穴あけ刃５４を用いて骨に穴があけられる。一般的に、穴は緻密骨部（皮質層）の外層を貫通してさらに内部の弱緻密骨部（海綿層）の内層に達するように形成される。穴が形成された後、穴あけ刃５４が除去される。次いで、挿入具５０の先端部５２を挿入穴２６内に挿入して、縫糸留具１０の挿入準備を行う。なお、縫糸留具１０の縫糸穴２８内に、通常、縫糸３０が通されている。先端部５２が挿入穴２６に挿入された後、縫糸３０が絡まないようにまたは挿入プロセスを阻害しないように固定するために、縫糸３０の自由端が挿入具５０に留められる。図８に示されるように、縫糸留具１０は、骨穴当接面１４が骨穴の壁と係合するように、骨穴内に導入される。この位置において、挿入具５０は原形（略直線形状）を保ち、その先端部５２が挿入穴２６に骨穴の軸線に対して傾斜して挿入される。ここで、図示されるように、骨穴の径は骨穴当接面１４から鉛直方向の最大寸法として定められる縫糸留具１０の最大径とほぼ一致する。さらに具体的には、この縫糸留具１０の最大径は、骨穴当接面１４から鉛直方向に延長して本体１２の一部である骨穴閉鎖面２０の円弧部２０ａを通過する直線に略沿った縫糸留具１０の径である。従って、縫糸留具１０が骨穴に導入されると、骨穴当接面１４は好ましくは骨穴の壁と接触し、縫糸留具１０の最大幅を定める点（円弧部２０ａ）は骨穴当接面１４と径方向において対向する骨穴の壁に少なくとも近接する。
【００２９】
図９に示されるように、骨穴の軸線に沿って内側に向かう力が挿入具５０に付加され、縫糸留具１０が骨穴内に押し込められる。挿入具５０が皮質骨部の外層と接触すると、挿入具５０に屈曲力が作用し、先端部５２の遠位端は挿入穴２６に保持された状態で、先端部５２の縫糸留具１０の外部に位置する部分が骨穴の壁に沿うように屈曲、すなわち、変形される。この時点で、縫糸留具１０は先端把持縁１６が緻密な皮質骨層を通過するに十分深く骨穴に挿入されていないので、骨穴当接面１４はいまだその皮質骨層と接触している。挿入具５０の先端部５２によって付与される力によって、骨穴当接面１４は骨穴の壁に密着している。
【００３０】
図１０は、骨穴の軸線に沿って内側に向かう力がさらに挿入具５０に付加された後の縫糸留具１０を示している。縫糸留具１０は、骨穴に十分な距離だけ挿入されて骨の表面層である緻密な皮質骨層を通過した後、骨の内層である弱緻密の骨部分（海綿層）に入り込む。海綿層は弱緻密でかつ皮質骨よりも弱いので、挿入具５０を構成する形状記憶材料の効果によって原形に戻ろうとする挿入具５０の先端部５２によって付加される力に応じて、縫糸留具１０は骨穴で回動または回転を開始する。縫糸留具１０が回転すると、先端把持縁１６は骨穴の壁の海綿層からなる部分内に押し込められる。その先端把持縁１６と径方向において対向する円弧部２０ａは骨穴の壁に押し付けられる。ここで、縫糸留具１０の回転が進行するにつれて、円弧部２０ａと壁との係合が、直線部２０ｂと壁との係合、さらに後端面２２と壁との係合に移行する。すなわち、縫糸留具１０は先端把持縁１６が骨穴の壁と係合する点を略中心に回転する。
【００３１】
図１１に示されるように、縫糸留具１０の回転は、挿入具５０の先端５２が原形に戻って骨穴の入口の壁に接触して静止するまで、継続される。なお、上記の縫糸留具１０に関する説明は、例えば、人体の肩の（体液による大粗面として知られている）「回旋腱板」域に見られるような皮質層の内側に海綿層を有する骨構造内にその骨構造と相互に関連させて縫糸留具を移植する方法を例にしてなされている。しかし、本発明の実施例による縫糸留具１０は、例えば、肩の杯状窪み域すなわち関節窪み域に見られるような内側の海綿層がほとんどまたはまったくない皮質層を主体とする緻密骨域に対しても適用される。本発明の実施例による縫糸留具１０は皮質骨層内において、海綿層内におけるほど自在に、すなわち、大きく回転されないが、緻密な皮質骨と弱緻密な海綿骨の両方の構造に概して適用させることが可能な以下に述べる特徴を有している。
【００３２】
図１２に示されるように、骨穴の軸線に沿って外側に向かう力を縫糸３０に付加しおよび/または挿入具５０を骨穴の径方向における反対側に押すことによって、縫糸留具１０はさらに回転する。縫糸３０および/または挿入具５０に付加される力によって、先端把持縁１６は骨穴の壁内にさらに食い込み、すなわち、入り込み、縫糸留具１０はその先端把持縁１６を中心にして回転する。骨穴の反対側の壁では、後端把持縁２４が骨穴の壁に入り込み始める。図１３は、縫糸３０および/または挿入具５０に付加される力によって縫糸留具１０がさらに回転し、挿入具５０が最初骨穴に挿入された側とほぼ反対側の壁と接触するに至った状態を示している。この時点で、縫糸留具１０の挿入穴２６の軸線に沿って外側に向かう引張り力によって挿入具５０を引抜くことによって、挿入具５０が挿入穴２６から除去される。
【００３３】
図１４に示されるように、挿入具５０が除去された後、さらに縫糸３０に引張り力を付加することによって、縫糸留具１０は骨穴内で着座位置に達するまで回転する。着座位置において、縫糸留具１０は、好ましくは、骨穴に挿入された方向から約９０°回転された状態にある。図１４に示されるように、海綿骨内において、着座位置にある縫糸留具１０は、好ましくは、骨穴当接面１４が骨穴の軸線に対して略直交するように配置されている。先端把持縁１６と後端把持縁２４は両方とも骨穴の壁内に入り込んでいる。さらに、先端面１８と後端面２２は裾広がりに傾斜し、骨穴当接面１４に近づくにつれて、骨穴着座位置において骨穴と係合している縫糸留具１０の表面積が大きくなる。従って、弱緻密の海綿骨層において、本発明の実施例による縫糸留具１０は、骨穴の軸線に沿って外側に向かう力が分布する表面積を大きくすることができる。好ましくは、縫糸留具１０の寸法と構成は、縫糸留具１０が移植される特定の骨構造に対して最適の有効表面積を与えるように変更される。縫糸留具１０のこのような特徴は、皮質骨層が比較的薄くて骨の強度に大きく貢献しないような個所において、特に利点がある。着座位置において大きな有効表面積を有する縫糸留具１０は、海綿骨層に応力を比較的大きな面積にわたって分布させ、骨穴の近傍における骨の損傷および骨から引抜かれる縫糸留具１０の損傷を低減させることができる。
【００３４】
縫糸留具１０が緻密な皮質構造に移植される場合、先端把持縁１６および後端把持縁２４は骨穴の壁に入り込むのが困難であり、従って、縫糸留具１０は海綿骨構造におけるほど大きく回転しない。この場合、本発明の実施例による縫糸留具１０は、骨穴の径よりもわずかに小さく設計されるとよい。そのような小径の縫糸留具１０が前述の方法と同じ方法で骨穴に挿入された後、縫糸３０に引張り力を付加するかまたは挿入具５０を骨穴の反対側に向かって押すことによって、縫糸留具１０が回転する。骨穴は縫糸留具１０の最大径よりも大きいので、骨穴内での縫糸留具１０の回転は容易であり、先端把持縁１６および後端把持縁２４は骨穴の壁に良好に入り込むことができ、縫糸留具１０を固定することができる。挿入具５０が縫糸留具１０から除去された後、縫糸３０に引張り力を付加することによって縫糸留具１０をさらに回転させて、海綿骨内の穴における着座位置に縫糸留具１０を着座させる。この場合、回転角度は、好ましくは、縫糸留具１０が骨穴に挿入された方向から約９０°であるとよい。
【００３５】
縫糸留具１０が移植された後、その縫糸留具１０と縫糸穴２８を通して係合している縫糸３０は、図１５に示されるように、当該骨に固着される身体組織に近づけられる。例えば、縫糸留具１０は、膀胱懸架処置の取付け点となる骨盤領域や、回旋腱板の再取付け用肩領域、あるいは腱の再取付けを補助する脚および/または膝などに用いられる。好ましくは、本発明の実施例による縫糸留具１０は、留め力（骨穴から着座された縫糸留具１０を引き出すのに必要な力）が縫糸留具１０の穴を通っている縫糸３０の引張り力に匹敵するように、骨穴内に着座されると良い。特に有益な一実施例によれば、縫糸留具１０および固着された縫糸３０は、縫糸留具１０が骨穴から引き出されずまたは破断せずに、約３０ポンドの力に耐えることができる。通常、本発明の実施例による縫糸留具１０を適用するのに、最小限度の工具が必要である。図１６および図１７に示されるように、縫糸留具１０を適用するのに用いられる代表的な工具として、図１６に示されるような形状記憶材料からなる先端部５２を有する挿入具５０および図１７に示されるような穴あけ刃５４が挙げられる。従って、本発明の有益な一態様による留具セットは、少なくとも１つの縫糸留具１０と、少なくとも１つの対応する穴あけ刃５４と、少なくとも１つの対応する挿入具５０からなり、このような留具セットを用いることによって、縫糸留具１０が移植される特定の骨構造に好適な縫糸留具１０の構成を容易に選択することができる。
【００３６】
本発明のさらに有益な一態様である本発明の変形例が図１８に示されている。この変形例は前述の実施例と類似しているが、以下の点において異なっている。すなわち、図１８に示される縫糸留具１０はさらに骨穴当接面１４から本体１２内に傾斜して切れ込んだノッチ６０を備えている。骨穴当接面１４に沿ってノッチ６０の位置を変更することが可能である。縫糸留具１０がさらにループ状の縫糸３３０を備える場合、結び目のない縫糸留具１０を得ることができる。ループ状の縫糸３３０は、縫糸留具１０に巻き付けられてノッチ６０と係合する前に、縫糸留具１０によって固着される対象の身体組織の周囲に巻き付けられるかまたは係合される。縫糸３３０がノッチ６０と係合した後、縫糸留具１０は前述した方法に準じて隣接する骨穴に移植される。縫糸留具１０の移植手順が完了したとき、身体組織はすでに該当する隣接骨に固着されているので、縫糸３３０を結ぶ必要がない。
【００３７】
このように、本発明の実施例は従来技術と異なった利点をもたらすことが可能である。２つの面の交差によって形成される先端把持縁は、円錐の先端よりもさらに強固な構造を与えることができ、より緻密骨内に移植される縫糸留具のように高応力が付加される縫糸留具の強度を高めることができる。さらに、先端把持縁および後端把持縁間の骨穴閉鎖面の円弧部によって、緻密な皮質構造から弱緻密の海綿構造にわたる種々の骨構造の骨内において、縫糸留具が容易に回転され、縫糸留具の着座性を改善し、また、最小の労力で必要な縫糸留具の回転を得ることができる。また、２つの面の交差によって形成される後端把持縁は、緻密な骨構造内において有効に作用する鋭利な把持縁として機能することができる。さらに、骨穴当接面に円弧部を設けることによって、縫糸留具が回転した後、上記の鋭利な後端把持縁は弱緻密の骨構造内の穴と係合し、縫糸留具は弱緻密の骨構造に対して好適な着座断面を得ることができる。このように、本発明の実施例による縫糸留具は、骨穴内に有効に縫糸を係留させ、また、緻密骨から弱緻密の骨に至る種々の密度の骨に対して等しく機能する機構をもたらすことができる。さらに、挿入穴と挿入具の界面が均一な非円形に構成されているので、先端部の軸線回りの縫糸留具の回転を可能な限り小さくすると共に、挿入具の縫糸留具との係合を強化しかつ離脱を容易にすることができる。
【００３８】
上記の説明および関連する図面によって得られる示唆に基づいて、当業者が本発明の上記以外の実施例および種々の変更例をなすことは容易である。従って、本発明はここに開示された特定の実施例に限定されるもではなく、他の実施例および変更例は請求の範囲に包含されると理解されるべきである。また、上記の実施例における具体的な用語は包括的かつ記述的に用いられたものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【図１】縫糸に係合する縫糸留具、及びこれに対応する挿入具を示す本発明の一実施の形態を示す斜視図である。
【図２】図１に示される本発明の実施形態を示す側面図である。
【図３】図１に示される本発明の実施形態を示す背面図である。
【図４】縫糸に係合する縫糸留具、及びこれに対応する挿入具を示す本発明の他の実施形態を示す斜視図である。
【図５】図４に示される本発明の他の実施形態を示す側面図である。
【図６】本発明のさらに他の実施形態を示す複数の図である。
【図６Ａ】本発明のさらに別の実施形態を示す複数の図である。
【図７〜図１４】本発明の実施形態に基づいて縫糸留具を骨穴に挿入する一連の工程を示す断面図である。
【図１５】本発明の実施形態に基づいて縫糸留具によって骨穴に係留された縫糸を介して骨に取り付けられた身体組織を示す断面図である。
【図１６】本発明の一実施形態による縫糸留具を骨穴に挿入するための挿入具を示す図である。
【図１７】本発明の一実施形態による骨に縫糸留具が移植される穴を形成するための穴あけ工具を示す図である。
【図１８】結び目のない縫糸留具に関する本発明の他の実施例を示す図である。

Claims

骨に形成された穴に楔状に押し込められ縫糸を骨に固着する移植可能な結び目なし縫糸留具において、
前記縫糸留具は略四辺形の側断面を有する本体からなり、
前記本体は、
対向する両端を有する骨穴当接面と、
前記骨穴当接面の一端において先端面と前記骨穴当接面が鋭角に交差することによって形成される先端把持縁と、
前記骨穴当接面の他端において後端面と前記骨穴当接面が鋭角に交差することによって形成される後端把持縁と、
円弧部と実質的な直線部を有する骨穴閉鎖面であって、前記円弧部は前記先端面と係合して前記実質的な直線部は前記後端面と係合し、それによって前記本体は略四辺形をなし、前記骨穴閉鎖面は骨内での前記先端把持縁を中心とする前記本体の回転を容易にするために前記骨穴当接面と略反対側に配置される骨穴閉鎖面と、
を備え、
前記本体はさらに
前記後端把持縁に隣接する位置において前記本体を横方向に貫通するように設けられた縫糸穴と、
前記先端把持縁と前記縫糸穴の間の位置に設けられた挿入具を受容するための挿入穴と、
前記骨穴当接面に設けられた切欠きと、
前記縫糸穴に操作可能に係合される縫糸であって、前記縫糸穴を通るループ状に形成され、骨に固着される身体組織と係合された後、前記縫糸留具が骨穴に挿入される前に前記本体の周囲に巻き付けられて前記切欠きと係合される縫糸と
を備えたことを特徴とする縫糸留具。
前記挿入穴は、前記骨穴当接面に対して傾斜するように前記先端面から内部に延長して形成されたことを特徴とする請求項１に記載の結び目なし縫糸留具。
前記本体はポリ乳酸からなることを特徴とする請求項１に記載の結び目なし縫糸留具。
前記挿入穴はその長さの全体にわたって均一な形状に形成されたことを特徴とする請求項１に記載の結び目なし縫糸留具。
前記挿入穴は非円形であることを特徴とする請求項４に記載の結び目なし縫糸留具。
前記挿入穴は略正方形であることを特徴とする請求項５に記載の結び目なし縫糸留具。