JP4098499B2 - ボールねじ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、ねじ軸に循環用の部材を設けたボールねじに関する。
【0002】
【従来の技術】
ボールねじにおいて、ボールの循環用の部材はナットに設けられる。循環方式としては、リターンチューブ式、エンドキャップ式、駒式、ガイドプレート式がある。ナット外径をコンパクトに設計するのに、最も有利な循環方式は駒式であり、外径を小さく設計するような用途では駒式を採用する場合が多い。
【0003】
図4は、従来の駒式ボールねじを示す。ボールねじ軸51とナット53とは、各々に設けられた外ねじ溝52と内ねじ溝54間のボール55を介して螺合している。ナット53の円筒胴部には、内外の周面に貫通して嵌合孔56が穿設され、この嵌合孔56に、駒部材57が嵌合している。駒部材57は、内ねじ溝54の隣合う1周部分同士を連結する連結溝58を形成した部品であり、内ねじ溝54の略1周の部分と連結溝58とで、ボール55の周回路が構成される。周回路内の内外のねじ溝52,54間に介在した多数のボール55は、ねじ溝52,54に沿って転動して、駒部材57の連結溝58に案内され、ボールねじ軸51のねじ山を乗り越えて隣接する内ねじ溝54に戻り循環可能とされている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ボールねじは、通常、ナットに循環部材を設けるため、ナットの外径が大きくなり、コンパクト化ができないという問題がある。コンパクト化のためには、上記のように循環方式として、リターンチューブ式やガイドプレート式等よりも駒式の方が有利であり、通常は駒式が採用される。
しかし、駒式においても、図4に示すように、ナット53には駒部材57を装着するための窓56が必要であり、コンパクト化にも限界がある。
【0005】
また、駒式に限らず、駒部材57等の循環部材を持ったボールねじにおいて、駒部材57等の循環部材のある位置には、負荷を受けるボールが存在しない。ボールねじの取付時に、モーメント荷重やラジアル荷重の加わる方向が予め判っている場合は、駒部材57等の循環部材を負荷の少ない位置に配置するのが有利となる。しかし、ナット回転方式で使用される場合、駒部材57等の循環部材をナットに配置していると、循環部材も回転するため、負荷の少ない位置に循環部材を配置するような設計は採れない。
【0006】
この発明の目的は、コンパクト化が可能で、ボールを循環させるための循環部材を負荷の少ない位置に容易に配置できるボールねじを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明のボールねじは、いずれもボールねじ軸側にボール循環用の手段を設けたものである。
この発明の第1の発明のボールねじは、回転不可で、かつ軸方向移動可能なボールねじ軸と、このボールねじ軸に対向して内周に内ねじ溝を有し、回転可能で、かつ軸方向移動不可なナットと、上記ボールねじ軸と内ねじ溝との間に形成された転動路に連なって配置され、上記ナットとボールねじ軸の間で力を伝達するための複数のボールとを備え、ボールねじ軸の外ねじ溝の隣合う1周部分同士を連結し、上記ボールが循環する連結溝を上記ボールねじ軸に形成し、この連結溝はボールがこの連結溝内でナットの内ねじ溝のねじ山を超えることができる深さとし、上記ボールねじ軸の上記外ねじ溝に嵌合し端面が上記連結溝の内面に続く案内面に形成されて、上記外ねじ溝の隣合う1周部分同士のうち、一方の1周部分に移動したボールを元の1周部分に戻す遮蔽部材を装着したものである。
この構成によると、ボールねじ軸にボール循環用の連結溝を形成し、この連結溝をボールがこの連結溝内でナットの内ねじ溝のねじ山を超えることができる深さとする。また、上記外ねじ溝に嵌合し端面が上記連結溝の内面に続く案内面に形成されて、上記外ねじ溝の隣合う1周部分同士のうち、一方の1周部分に移動したボールを元の1周部分に戻す遮蔽部材を装着したため、ナットにボールを循環させるための循環部材を配置する必要がなく、それだけナットの外径を小さくでき、ボールねじをコンパクトに構成できる。また、循環部材である遮蔽部材を回転不可のボールねじ軸側に設置するので、ボールねじの取付時にモーメント荷重やラジアル荷重の加わる方向が予め分かっている場合に、前記遮蔽部材を負荷の少ない位置に片寄せて配置するように容易に設計することができ、ボールねじの長寿命化が可能となる。
【0008】
この発明において、上記遮蔽部材が、外ねじ溝と同じリードを有する螺旋状の線材からなり、この線材を上記ねじ軸のねじ溝に嵌合しても良い。
このように遮蔽部材を螺旋状の線材とした場合、構成が簡単で、また遮蔽部材を外ねじ溝に嵌め込むことによりボールねじ軸へ容易に装着することができる。
【0009】
この発明の第2の発明のボールねじは、回転不可で、かつ軸方向移動可能なボールねじ軸と、このボールねじ軸に対向して内周に内ねじ溝を有し、回転可能で、かつ軸方向移動不可なナットと、上記ボールねじ軸と内ねじ溝との間に形成された転動路に連なって配置され、上記ナットとボールねじ軸の間で力を伝達するための複数のボールとを備え、ねじ溝同士を連結し、上記ボールが循環する連結溝を有する駒部材を上記ボールねじ軸に装着したものである。
この構成の場合、ボール循環用の連結溝を有する駒部材をボールねじ軸に装着したため、ナットにボールを循環用の部材を配置する必要がなく、それだけナットの外径を小さくでき、ボールねじをコンパクトに構成できる。また、循環部材である駒部材を回転不可のボールねじ軸側に設置するので、ボールねじの取付時にモーメント荷重やラジアル荷重の加わる方向が予め分かっている場合には、前記駒部材を負荷の少ない位置に片寄せて配置するように容易に設計することができ、ボールねじの長寿命化が可能となる。
【0010】
上記ボールねじ軸の外ねじ溝に嵌合する係止部を上記駒部材に一体形成する。このように係止部を設けることにより、位置精度良く駒部材をボールねじ軸に装着できる。
上記駒部材は、複数条の連結溝を有するものであっても良い。この場合、ボールねじ軸に、1つの駒部材を装着するだけで、外ねじ溝を軸方向に並ぶ複数条の周回経路に分割することができる。
【0011】
また、この発明において、上記ボールねじ軸を中空とし、このボールねじ軸に内径側から上記駒部材を装着すると共に、この駒部材を塑性変形により上記ボールねじ軸に固定しても良い。このように内径側から駒部材を装着する構成とした場合、駒部材の取付けや位置決めが簡単になる。
【0012】
なお、この発明の第1および第2の発明において、ボールねじ軸を回転不可,軸方向移動可能とした構成に変えて、ボールねじ軸を回転可能,軸方向移動不可とし、かつナットを回転可能,軸方向移動不可とした構成に変えて、ナットを回転不可,軸方向移動不可としても良い。
この構成の場合、荷重の加わる方向や位置に応じて循環用の部材を配置することはできないが、コンパクト化や、その他の効果は上記各構成の場合と同様に得られる。
【0013】
【発明の実施の形態】
この発明の一実施形態を図1と共に説明する。このボールねじ20は、ボールねじ軸21と、ナット22と、複数のボール23とを備える。ボールねじ軸21は外周面に外ねじ溝24を有し、ナット22は外ねじ溝24に対向する内ねじ溝25を有する。ボール23は、ボールねじ軸21の外ねじ溝24とナット22の内ねじ溝25との間に形成された転動路26に連なって配置され、ナット22とボールねじ軸21の間で力を伝達する。
【0014】
ボールねじ軸21には、軸方向の1箇所または複数箇所に、外ねじ溝24の隣合う1周部分同士を連結する連結溝27が形成される。この連結溝27で連結される隣合う外ねじ溝24の一部には、外ねじ溝24と同じリードを有する螺旋状の線材からなる遮蔽部材28が装着される。遮蔽部材28は、その端面28aが連結溝27の内面に続くように案内面として設けられ、外ねじ溝24の隣合う1周部分同士のうち、一方の1周部分に移動したボール23を連結溝27へ案内して元の1周部分に戻す部材である。連結溝27の深さは、ボール23が、連結溝27内でナット22の内ねじ溝25のねじ山を越えることができる深さとされている。このように構成されることで、ボールねじ軸21の外ねじ溝24と連結溝27とで、1周の連続した周回経路が形成され、その周回経路をボール23が循環可能となる。ここでは、連結溝27が軸方向に並べて複数箇所設けられ、これにより外ねじ溝24は、複数条並んだ周回経路に分割される。なお、ここでは、ボールねじ軸21として中空軸を用いているが、これに限らず中実軸を用いても良い。
このボールねじ20の使用形態として、ボールねじ軸21は回転不可で、かつ軸方向に移動可能なように設置され、ナット22は回転可能で、かつ軸方向に移動不可なように設置される。
【0015】
この構成のボールねじ20によると、ボールねじ軸21に連結溝27を形成すると共に遮蔽部材28を装着して、ボール23を循環させる1周の連続した周回経路を構成したため、ナット22に周回経路を構成するための循環部材を配置する必要がない。そのため、ナット22の外径を小さくでき、ボールねじ20をコンパクトに構成できる。
また、前記周回経路を構成する循環部材である遮蔽部材28を回転しないボールねじ軸21側に設置するので、ボールねじ20の取付時にモーメント荷重やラジアル荷重の加わる方向が予め分かっている場合には、前記遮蔽部材28を負荷の少ない位置に片寄せて配置するように容易に設計することができ、これによりボールねじ20の長寿命化が可能になる。
また、この実施形態では、遮蔽部材28が、ボールねじ軸21の外ねじ溝24と同じリードを有する螺旋状の線材からなるので、外ねじ溝24に嵌合させることによりボールねじ軸21へ容易に遮蔽部材28を装着することができる。遮蔽部材28としては、このほかブロック状のものを用いてボールねじ軸21に接着等で固定して、外ねじ溝24の一部を塞ぐようにしても良い。
【0016】
図2は、この発明の第2の実施形態にかかるボールねじを示す。この実施形態のボールねじ20Aは、第1の実施形態において、ボールねじ軸21に連結溝27を形成する構成、および遮蔽部材28を設ける構成に変えて、表面に連結溝27Aを有する駒部材29をボールねじ軸21に装着したものである。駒部材29の連結溝27Aは、外ねじ溝24の隣合う1周部分同士を連結する溝であり、第1の実施形態における遮蔽部材28の端面28aで形成される案内面を兼ねる。ボールねじ軸21には中空軸が用いられ、駒部材29を装着する駒部材嵌合用開口30が内外の周面に貫通して形成されている。
【0017】
駒部材29には、ボールねじ軸21の外ねじ溝24の一部に嵌合する係止部29aが一体形成されており、この係止部29aを外ねじ溝24に嵌合させることで、位置精度良く駒部材29をボールねじ軸21に装着できる。駒部材29はボールねじ軸21に対して複数個が軸方向に並べて設けてあり、これによりボールねじ軸21の外ねじ溝24は、複数条並んだ周回経路に分割される。この実施形態におけるその他の構成は第1の実施形態と同じである。
【0018】
この構成のボールねじ20によると、ボールねじ軸21に連結溝27を有する駒部材29を装着し、ボール23を循環させる周回経路を構成したため、ナット22に前記周回経路を構成するための循環部材を配置する必要がない。そのためナット22の外径を小さくでき、ボールねじ20をコンパクトに構成できる。
この実施形態の場合も、駒部材29を回転しないボールねじ軸21側に設置するので、ボールねじ20の取付時にモーメント荷重やラジアル荷重の加わる方向が予め分かっている場合には、前記駒部材29を負荷の少ない位置に片寄せて配置するように容易に設計することができ、これによりボールねじ20の長寿命化が可能となる。また、駒部材29には、ボールねじ軸21の外ねじ溝24に嵌合する係止部29aを一体形成しているので、位置精度良く駒部材29をボールねじ軸21に装着できる。
【0019】
なお、この実施形態において、駒部材29の係止部29aは必ずしも設けなくても良い。係止部29aを設けない場合は、駒部材29aを駒部材嵌合用開口30に内側から嵌合させることができるため、係止部29aを設けるか否かで、組立方法が変わる。
係止部29aを設ける場合は、駒部材29を軸外側から嵌め込み、中空穴31側から加締または接着等で駒部材29をボールねじ軸21に固定するようにすることが好ましい。これにより容易にかつ堅固に固定が行える。
係止部29aを設けない場合は、駒部材29を、ボールねじ軸21の中空穴31内に挿入して、内側から駒部材嵌合用開口30に嵌合させて接着することにより、駒部材29をボールねじ軸21に装着できる。この他の組立方法として、上記した手順で駒部材嵌合用開口30に駒部材29を嵌合させた後に、中空穴31内から駒部材嵌合用開口30の底部に埋め栓(図示せず)を設けることで、駒部材29を装着しても良い。
【0020】
図3はこの発明の第3の実施形態を示す。この実施形態は、図2の実施形態において、1本の連結溝27Aを有する駒部材29を設けた構成に変えて、複数本の連結溝27Aを有する駒部材29Bを用いたものである。駒部材29の各連結溝27Aは、外ねじ溝24の隣合う1周部分同士を連結する溝である。この実施形態におけるその他の構成は図2の実施形態と同じである。
【0021】
この構成のボールねじ20Bの場合、ボールねじ軸21に1つの駒部材29Bを装着するだけで、外ねじ溝24を軸方向に並ぶ複数条(図示の例では3条)の周回経路に分割することができる。
【0022】
【発明の効果】
この発明の第1の発明のボールねじは、ボールねじ軸に、外ねじ溝の隣合う1周部分同士を連結する連結溝を形成し、この連結溝はボールがこの連結溝内でナットの内ねじ溝のねじ山を超えることができる深さとし、上記ボールねじ軸の上記外ねじ溝に嵌合し端面が上記連結溝の内面に続く案内面に形成されて、上記外ねじ溝の隣合う1周部分同士のうち、一方の1周部分に移動したボールを元の1周部分に戻す遮蔽部材を装着したため、ナットの外径を小さくでき、ボールねじをコンパクトに構成できる。また、ボールねじ軸を回転不可とし、この回転不可のボールねじ軸側に遮蔽部材を設置するので、ボールねじの取付時に偏荷重が加わることが予想される場合には、前記遮蔽部材を負荷の少ない位置に片寄せて配置するように容易に設計することができ、長寿命化が可能となる。
遮蔽部材が、外ねじ溝と同じリードを有する螺旋状の線材からなる場合は、遮蔽部材の構成が簡単で、また遮蔽部材をねじ溝に嵌め込むことによりボールねじ軸へ容易に装着することができる。
この発明の第2の発明のボールねじは、ボールねじ軸に、連結溝を有する駒部材を装着したため、ナットの外径を小さくでき、ボールねじをコンパクトに構成できる。また、駒部材を回転不可のボールねじ軸側に設置するので、ボールねじの取付時に偏荷重が加わることが予想される場合には、前記駒部材を負荷の少ない位置に片寄せて配置するように容易に設計することができ、長寿命化が可能となる。
上記ボールねじ軸の外ねじ溝に嵌合する係止部を駒部材に一体形成したため、位置精度良く駒部材をボールねじ軸に装着できる。また、ボールねじ軸を中空とし、この内径側から上記駒部材を装着すると共に、この駒部材を塑性変形により上記ボールねじ軸に固定した場合は、塑性変形処理をボールねじ軸の中空穴側から行えるので、駒部材の取付けを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A),(B)は、各々この発明の一実施形態にかかるボールねじの断面正面図および破断側面図である。
【図2】(A),(B)は、各々この発明の他の実施形態にかかるボールねじの断面正面図および破断側面図である。
【図3】同ボールねじの変形例を示す断面正面図である。
【図4】従来例の破断正面図である。
【符号の説明】
20,20A,20B…ボールねじ
21…ボールねじ軸
22…ナット
23…ボール
24…外ねじ溝
25…内ねじ溝
26…転動路
27,27A…連結溝
28…遮蔽部材
28a…端面
29,29B…駒部材
29a…係止部
30…駒部材嵌合用開口
31…中空穴
Claims (5)
- 回転不可で、かつ軸方向移動可能なボールねじ軸と、このボールねじ軸に対向して内周に内ねじ溝を有し、回転可能で、かつ軸方向移動不可なナットと、上記ボールねじ軸と内ねじ溝との間に形成された転動路に連なって配置され、上記ナットとボールねじ軸の間で力を伝達するための複数のボールとを備え、ボールねじ軸の外ねじ溝の隣合う1周部分同士を連結し、上記ボールが循環する連結溝を上記ボールねじ軸に形成し、この連結溝はボールがこの連結溝内でナットの内ねじ溝のねじ山を超えることができる深さとし、上記ボールねじ軸の上記外ねじ溝に嵌合し端面が上記連結溝の内面に続く案内面に形成されて、上記外ねじ溝の隣合う1周部分同士のうち、一方の1周部分に移動したボールを元の1周部分に戻す遮蔽部材を装着したことを特徴とするボールねじ。
- 上記遮蔽部材が、外ねじ溝と同じリードを有する螺旋状の線材からなり、この線材を上記ボールねじ軸のねじ溝に嵌合した請求項1に記載のボールねじ。
- 回転不可で、かつ軸方向移動可能なボールねじ軸と、このボールねじ軸に対向して内周に内ねじ溝を有し、回転可能で、かつ軸方向移動不可なナットと、上記ボールねじ軸と内ねじ溝との間に形成された転動路に連なって配置され、上記ナットとボールねじ軸の間で力を伝達するための複数のボールとを備え、ねじ溝同士を連結し、上記ボールが循環する連結溝を有する駒部材を上記ボールねじ軸に装着し、上記ボールねじ軸の外ねじ溝に嵌合する係止部を上記駒部材に一体形成したことを特徴とするボールねじ。
- 上記ボールねじ軸を中空とし、このボールねじ軸に内径側から上記駒部材を装着すると共に、この駒部材を塑性変形により上記ボールねじ軸に固定した請求項3に記載のボールねじ。
- 上記駒部材は、複数条の連結溝を有する請求項3または請求項4に記載のボールねじ。
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