JP4094146B2 - ほつれと切れに対する抵抗性が改善されたデンタルフロス - Google Patents

ほつれと切れに対する抵抗性が改善されたデンタルフロス Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、改善されたデンタルフロスに関する。本発明のフロスは、従来のフロスに比べ、ほつれと切れに対する抵抗性が改善され、歯の間を容易にスライドすることができ、歯ぐきに優しい。
【0002】
【従来の技術】
ほぼ全ての歯健康従事者はデンタルフロスを使用することを勧めている。歯科治療会議によれば、デンタルフロスは歯間のプラークの除去に80%有効であるが、合衆国の人口の約12%しか日常的にフロスを使用してない。多くの消費者は、フロスは不便であり持ちにくく、歯間に届きにくく、使用中ほつれて切れる問題があると考えている。このためフロス製造業者は、フロスがより容易にかつ快適に使用できる方法を捜している。残念なことにほとんどの解決方法は実際的に有効でなく、コスト高となる。
【0003】
ほつれと切れを減らす1つの方法は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)モノフィラメントのヤーン(糸)をフロスに使用することである。しかし、PTFEヤーンは従来のナイロンヤーンより約10倍高価であり、PTFEヤーンを使用すると消費者にとってフロスの価格が2倍以上となる。PTFEフロス製品は、ゴア(Gore)社、コルゲート(Colgate)社及びマクニール−ピーピーシー(McNEIL-PPC)社のパーソナルプロダクツカンパニー支社から供給される。これらの製品は、ほつれと切れの抵抗性についての標準を設定する。しかし、PTFEモノフィラメントフロスは、芳香剤を担持するのに十分な表面積がないので十分な芳香を付加しにくい。PTFEフロスは摩擦係数が低いので磨くとき使用者が持ちにくく、多くの使用者は、従来のマルチフィラメントフロスと同様に、歯間がきれいになったとは感じない。
【0004】
第二の方法は、ギレット(Gillette)カナダ社に譲渡された米国特許第5,226,435号、同第5,357,990号に記載されている。これらの特許は、従来のマルチフィラメントヤーンを用いた二重コートで平らな又は尖った製品を示している。これらの特許によれば、ヤーンは初めに第一のワックスでコートされ、続いて第二のワックスでコートされる。第一のワックスの融点は第二のワックスの融点より高い。第一のワックスのコーティングはマルチフィラメントヤーンのフィラメントを結合し、その後平らにするか尖らせる。第二のコーティングは芳香剤及び/又は他の添加物を含む。この製品はPTFEよりかなり安価であるが、幾つかの市販のPTFEモノフィラメントフロスより一層芳香である。これらの特許に従って製造されたフロスは、幾つかの他の従来のフロスより容易に歯間を通過するが、多くの使用者にとって薄すぎて、従来のフロスの芳香性及び、PTFEのほつれ/切れ抵抗性を有さない。
【0005】
ラニー/ディーシーピー(Ranir/DCP)社の欧州特許出願公開第EP 0 790 040号は、高分子量ポリエチレンヤーンから製造し、摩擦係数が約0.2より小さく、引張係数が約200g/デニール乃至約2500g/デニールであるデンタルフロスを示している。好ましくはこのヤーンをワックス等のコーティング物質でコートする。ラニー特許は、フロスの特性により歯間に容易に挿入できほつれや切れが少なくなることが期待できることが述べられている。我々の試験では、上記の欧州特許出願公開第EP 0 790 040号に従い製造されたフロスを歯間に通すのに必要な力は、従来のほとんどのマルチフィラメントフロスと同じであり、PTFEモノフィラメントフロスより大きいことが示された。さらに、我々の試験では、この製品がPTFE製品よりもほつれ切れることが示された。また、このフロスは、ナイロンヤーンの約6倍の価格のヤーンからできているため、従来のナイロンマルチフィラメントフロスよりかなり高価である。
【0006】
「切れる」とは、使用中にフロスのヤーンフィラメントが破断することを意味する。「ほつれる」とは、使用中にフロスの隣合うフィラメントが永久に分離することを意味する。フロスがほつれるとしばしばフィラメントが歯間に、特に修復物を含む歯間に付く。
従来のフロスの製造業者は、ほつれを防ぐためにヤーンをねじる。インチ当りのねじれの数が減ると一般にヤーンのほつれが増えることがよく知られている(例えば、「口衛生製品と実際」、モートンペイダー(Morton Pader)著、マーセルデッカー(Marcel Deckker)社、ニューヨーク、1988年、第181頁乃至第182頁)。ねじれを加えるとほつれは減るが、フロスのねじれの増加はフロスの直径を増加させ、それにより歯間を通るのが困難になる。
【0007】
ブラッグ(Bragg)(米国特許第4,151,851号)は、以下のことを示している。フロスにねじれを加えると、「ストランドの断面がほぼ円筒になり、その幅が個々のフィラメントよりずっと大きくなる。このようなフロスは、歯が互いに密接しているとき、人の歯間に挿入しにくい場合がある。ねじれがなく個々のフィラメントがストランドの長軸に平行であるなら、ストランドは平ら即ちリボン形となり、厚みは0.0005のオーダーとなりうる。このような平らなストランドは縁に沿って密接する歯間への挿入が容易となる。」ブラッグは、平らなテープ状フロスがより容易に歯間を通ることを示しているが、ヤーンの切れやほつれの防止方法は教示していない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従来のフロスの欠点の観点から、本発明の目的は、ほつれと切れに対する抵抗性が改善されたフロスを提供することである。そして本発明の他の目的は、容易に歯間をスライドし使用者に歯間が有効に清浄となった感覚を与えるフロスを提供することである。さらに本発明の他の目的は、持ちやすく指や歯ぐきに優しいフロスを提供することである。また本発明の他の目的は、大量の芳香剤及び/又は他の添加物を含むことのできるフロスを提供することである。なお、本願において「芳香剤」とはフロスに芳香を添える香料を広く意味する。そして本発明の他の目的は、上記の利点を全て有するフロスを提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、少なくとも1つのコーティングがなされているマルチフィラメントヤーンからなるデンタルフロスである。本発明のフロスを構成するヤーンは実質的にねじれてなく、約0.5インチ乃至約3.5インチの頻度で絡合節を含む。ヤーンのベース重量は約500デニール乃至約1200デニールである。ヤーンになされるコーティングは、非水溶性バインダーからなる。また、添加物又は添加芳香剤を運ぶために、フロスを、好ましくは水溶性物質、典型的にはポリマー(例えば、ポリエチレングリコール)からなる第二のコーティング物質でコートすることもできる。ねじれはほとんど無いか又は全く無く、空気絡合が最適である本発明のヤーンは、コーティング物質のかなりの量をフィラメント間に充満できる程充分ゆるく合わさっているが、切れとほつれ抵抗性を付与する程充分きつく合わさっており、それでいてしなやかな感触を与える。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のフロスは、可能な限りねじれを少なくし、繊維の空気絡合又は空気留めの量をコントロールした細いフィラメントから形成したマルチフィラメントヤーンから構成される。このヤーンを、微結晶ワックス等の非水溶性ワックスを含む結合剤又はバインダーでコートする。この結合剤またはバインダーに芳香剤と添加物を添加してもよい。また、フロスは添加した芳香剤又は添加物を運ぶために、ポリエチレングリコール等の水溶性ワックスを含む第二のコーティングでコートしてもよい。本発明で使用するヤーンは、ほとんどねじれていないか全くねじれてなく最適に空気絡合されており、かなりの量のコーティング物質をフィラメント間に充満できる程充分ゆるく合わさっているが、切れとほつれに対して抵抗性を付与できる程きつく合わさっており、それでいてしなやかな感触を有する。
【0011】
本発明のフロスはしなやかであり、このことは柔らかく曲がることができ、柔軟であることを意味する。しなやかなフロスは歯ぐきと手に優しく、持ちやすく、歯間の密接する面にフィットできるので歯間を容易にスライドする。しなやかさに影響を及ぼす因子には、フィラメントベース重量(フィラメント直径に関係する)、ねじれの程度、絡合の程度、ヤーンを製造する物質の弾性係数がある。フィラメント、ヤーン及びフロスについて本願明細書で使用する「ベース重量」の用語は、物品9000メートルの重さ(グラム)を言う。9000メートルの重さ(グラム)はしばしば「デニール」と言う。一定のベース重量のマルチフィラメントヤーンに対してフィラメント直径が減ると、個々のフィラメントが互いにスライドするので、フロスはより容易に狭い空間を通ることができるようになる。例えば、第一のフロスを、個々のフィラメントのベース重量が6デニールの630デニールのヤーンで製造してもよい。このヤーンは105のフィラメントからなる。第二のフロスを、各フィラメントのベース重量が3デニールでベース重量が630デニールの第二のヤーンで製造してもよい。第二のヤーンは210のフィラメントからなる。両方のヤーンは全体のベース重量は同じであるが、第二のヤーンからなるフロスは、直径がより小さいフィラメントがより容易に互いに通過するため、より容易に歯間を通る。また、フィラメント直径が小さくなる程、フィラメント当りの曲げ係数及びヤーン全体の曲げ係数は低くなり、その結果、フロスがより柔らかく曲がりやすくなる。ヤーンのねじれ及び/又は絡合の程度が増すと、フロスが狭い隣接空間に挿入するときフィラメントがスライドできなくなり、得られるフロスのしやなかさは減る。
【0012】
一般に、ヤーンを製造するポリマーの弾性係数が減ると、フロスはよりしなやかに、即ち柔らかく曲がりやすくなる。しかし、当業者に明らかなように、弾性係数は、フィラメントが使用中に切れること無くフロスとして機能するほど十分大きくなければならない。
しなやかさに加えて、本発明のフロスはほつれと切れに対する高い抵抗を有する。上述したように、「切れる」とは使用中のヤーンフィラメントの破断を意味する。「ほつれる」とは使用中のフロスの隣合うフィラメントの永久の分離を意味する。フロスがほつれると、しばしばフィラメントが歯間に、特に修復物があるとき付着する。
【0013】
本発明のフロスは絡合又は留めヤーンから製造される。本発明のフロスには、フロスを製造するヤーンの絡合又は留めの程度を注意深くコントロールすることにより、ほつれ及び切れの抵抗性が付与される。ヤーンは、絡合装置を通った流体、好ましくは空気をヤーンに衝突させることにより絡合される。絡合ヤーンは、長さに沿って間隔をあけて絡合した繊維の節を含む。絡合の程度、即ち、絡合節の頻度とサイズは、異なるデザインの絡合装置を用いて、さらに絡合装置を流れる流体の圧力を変えて、調整できる。フロスヤーンの絡合量が増えると、フロスのほつれと切れの抵抗性は増す。絡合量が多くなると、絡合節はより近くなりよりはっきりとしてくる。節の間隔が狭くなると、ヤーンの断面はより丸くなり、しやなかさが減り、絡合の程度が非常に高くなると節はこぶのように感じられる。フロスとして使用するには、過度に絡合したヤーンは望ましくない。本発明のフロスでは、空気絡合量が最適化される。節は、使用中にフロスが切れたりほつれたりするのを防ぐほど十分に近付いているが、フロスを厚く感じさせ歯間を通りずらくなるほど近付いてない。最適化した空気絡合を使用すると、ヤーンとそれからできるフロスが歯間の空間に適合し、フロスが容易に歯間を通るようになる。しかも同時に必要な程度の切れ抵抗性が付与される。本発明のフロスは、好ましくは、節間の平均距離で表される絡合頻度は約0.5インチ乃至約3.5インチである。より好ましくは、絡合頻度は約0.7インチ乃至約2.5インチであり、最も好ましくは、約0.9インチ乃至約1.3インチである。
【0014】
空気絡合フロスにとって最適なフィラメント直径の選択も極めて重要である。フィラメント直径はフィラメントのベース重量(デニールで表す。これはフィラメント9000メートルの重量gである。)に直接関係する。フィラメント直径が小さくなるほど、フィラメントベース重量は小さくなる。フィラメント直径が減ると、フロスはよりしなやかに感じられ歯ぐきに優しくなる。しかし、フィラメント直径が減ると、フィラメントは弱くなり使用中に破け及び/又は切れやすくなる。他方、フィラメント直径がより小さいと、空気絡合しやすく、少ない空気圧力で済み、より大きなベース重量(大きな直径)のフィラメントを使用して製造したものより、節は小さくなる。しなやかさと強度の間の最も良いバランスを得るためには、本発明のフロスを構成するフィラメントのベース重量は、約1デニール乃至約5デニールでなくてはならない。より好ましくは、フィラメントのベース重量は、約2デニール乃至約4デニールであり、最も好ましくは約2.5デニール乃至約3.5デニールである。
【0015】
フィラメントの強度は引張強さ(テナシティ)で表すことができ、フィラメントを破断するための力、即ちフィラメントベース重量(デニール)で割った破断力(グラム)として定義できる。使用中にフロスフィラメントが破断するのを防ぐために、フィラメントは少なくとも約3g/デニールの引張強さを有していなくてはならず、好ましくは少なくとも約5g/デニール、より好ましくは少なくとも約7g/デニールである。この引張強さの要求を満たし本発明のフロスに使用できる物質には、ポリアミド(例えば、ナイロン−6、ナイロン−6,6)、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)がある。
【0016】
本発明のフロスを構成するヤーンの「細さ」の基準は、ヤーンベース重量である。ヤーンベース重量(デニールで表される)は、歯間の通過し易さ、歯間の清浄感、強度、歯ぐきへのフロスの優しさ等の性質に影響を与える。ヤーンの全体ベース重量が減ると、フロスは歯間をより容易に通る。しかし、このベース重量が許容値以下に減ると、フロス強度が減り、歯間洗浄感が少なくなり、歯ぐきに対して粗くなる。これらの性質のバランスをとるために、好ましくは、本発明のフロスは、ベース重量が約500デニール乃至約1200デニールのヤーンを含む。より好ましくは、ヤーンのベース重量は約550デニール乃至約850デニールであり、最も好ましくは約550デニール乃至約700デニールである。
【0017】
上述したように、従来のフロスに使用するヤーンは、ほつれを防ぐためにねじっている。一般にヤーンのほつれはヤーンのねじれが増えると減ることがよく知られている。ねじるとほつれは減るが、フロスのねじれを増やすと直径も増え、それにより歯間をフロスが通るのがより困難になる。我々は、従来技術の教示に反して、ヤーンをねじることなく、ほつれと切れに抵抗性を有する本発明のフロスを製造できることを発見した。
【0018】
本発明のフロスは実質的にねじってない。本発明のフロスを製造するための出発ヤーンは実質的にねじってない。フロスの製造の間、ヤーンは供給スプールから取り出され、種々のコーティングがなされ、再度巻かれる。ヤーンを供給スプールから取り出すとき、少しのねじれをヤーンに付与してもよい。一般には平均直線フット当り約1つのねじれ(即ち、インチ当り約0.083のねじれ)である。出発ヤーン又は仕上がりフロスを特徴づけるために本願明細書で使用する「実質的にねじってない」の用語は、直線インチ当りのねじれ(tpi)が約1.3を越えないことを意味する。本発明のフロスの効果は、フロスのねじれが約1.3tpiを越えないとき得られる。この値を越えるねじれは、フロスが密接する歯間を通るのをより困難にする。好ましくは、本発明のフロスとこのフロスを製造するためのヤーンのねじれの程度は、約0.5tpiより少ない。
【0019】
フロスの厚みは約3ミル乃至約5ミル、好ましくは約4ミルである。
歯間をより容易にスライドするために、好ましくは本発明のフロスの断面は非円形である。フロスのアスペクト比(厚みに対する幅)は、フィラメントサイズ、ねじれの程度、絡合の程度により決定する。本発明のフロスのアスペクト比は少なくとも約8:1、より好ましくは少なくとも約11:1でなくてはならない。フロスのアスペクト比は、約50:1まで可能である。
【0020】
最も典型的には、デンタルフロスはヤーンにコーティングして製造する。コーティングにより、フロスの摩擦係数を調整し、マルチフィラメント構造のフィラメントを互いに結合し、さらにコーティングは芳香剤及び/又は他の添加物のキャリアとして機能する。この小さなフィラメント直径とその結果の大きな表面積、低い程度のねじれ及び最適な程度の絡合によって、本発明のフロスは、従来のマルチフィラメントフロスおよびモノフィラメントフロスより、かなり多くのコーティングを有することができる。従来のモノフィラメントフロスは、コートしてないモノフィラメント基質の重量に基づき約25重量%以下のコーティング物質しか含まない。同様に従来のマルチフィラメントフロスは典型的に、コートしてないヤーンの重量に基づき約50重量%以下のコーティング物質しか含むことができない。これに対し、本発明のフロスを製造するために使用する実質的にねじれてないヤーンは、コートしてないヤーンの重量に基づき約100重量%以上のコーティングを含むことができる。
【0021】
本発明のフロスは、コートしてないヤーンの重量に基づき少なくとも約15重量%の付加量(add-on)でコーティングを有する。好ましくは、コーティング付加量は、コートしてないヤーンの重量に基づき約40重量%乃至約80重量%であり、より好ましくは約65重量%乃至約80重量%である。
本発明のフロスに使用するコーティングは非水溶性バインダーを含む。バインダーの例として、微小結晶ワックス等の合成ワックス、蜜ろう等の天然ワックス、数平均分子量が約1,000乃至5,000の低分子量ポリエチレン又はこのようなワックスの組合せがある。本発明のフロスのバインダーとして有用な物質の例には、ニューヨークにあるニューヨークウィトコ社石油専門グループ(Petroleum Specialties Group of Witco Corp. of New York)製造のマルチワックスW−445がある。
好ましくは、バインダーの融点は少なくとも摂氏約50度である。
【0022】
フロスのほつれ抵抗性を維持するために、バインダーの付加量は、コートされてないヤーンの重量に基づき少なくとも約15重量%、好ましくは少なくとも約25重量%、最も好ましくは少なくとも約60重量%でなければならない。
上述したように、フロスのコーティングは芳香剤又は他の添加物を含んでもよい。芳香剤は天然又は合成芳香油でもよい。芳香剤はそのままで使用してもよく、カプセルで包んでもよく、澱粉又は変性澱粉等のキャリアで支持してもよい。支持された芳香剤は、スプレイ乾燥や他の適当な技術で製造できる。本発明のフロスは従来のフロスよりかなり多くのコーティング物質を含むことができるので、本発明のフロスは従来のフロスの2倍乃至5倍の芳香剤を含むことができ、従って、使用者により多くの芳香とより良い芳香感を与える。
【0023】
本発明のフロスは、歯磨剤又は薬学的成分等の活性成分を含むことができる。活性成分はコーティングの添加物としてフロスに取り込ませることができる。
好ましくは、歯磨剤はフッ化物又はフッ化物含有化合物であり、例えば、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アンモニウム、二フッ化ナトリウム、二フッ化カリウム、二フッ化アンモニウム、ケイフッ化ナトリウム、フッ化亜鉛、フッ化スズである。他の歯磨剤には例えば、ウレアーゼ、酸フォスファターゼ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムがある。使用可能な酸フォスファターゼの例には、オルトリン酸、リン酸一ナトリウム、リン酸一カリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸一アンモニウム、リン酸ヘミナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム塩がある。
【0024】
フロスの中に入れることのできる他の活性成分には、過酸化物(例えば、カルシウムペルオキシド又は過酸化水素)又は過酸化水素を含む他の物質の複合体、歯酸性化剤(例えば、緩衝化又は酸性化リン酸フッ化物、モノフルオロリン酸ナトリウム)、プラークコントロール剤、歯石コントロール剤(例えば、ピロリン酸四ナトリウム)、歯槽膿漏及び歯肉炎治療用抗生物質、歯ホワイトニング及び漂白剤、pH緩衝剤、抗真菌剤、ミネラル補給剤、止血剤、免疫療法剤、イオン性及び非イオン性抗菌剤(例えば、臭化アルキルトリメチルアンモニウム、クロルヘキシジン、サングィナリア、トリクロサン(非イオン性)、硫酸亜鉛、テトラサイクリン、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼソニウム)がある。他の活性成分には、ビタミン類(例えば、ビタミンA)、界面活性剤、乳化剤がある。添加することのできる薬学的活性剤には、例えば、抗ガン剤、興奮剤、骨成長剤、抗原、ホルモン、ステロイド、抗炎症剤、鎮痛剤がある。他の実施形態では、活性剤は、フロスの使用により生じる恐れのある出血を防ぐ凝固剤でもよい。本発明のフロスは従来のフロスより出血しにくいが、使用者の歯肉組織が感受性が高いと出血する可能性がある。好ましくは、凝固剤はワックスコーティングに混合し直接歯ぐき組織に接触するようにする。凝固剤には、ビタミンK、水溶性カルシウム塩の形態のカルシウムイオン、血液凝固カスケードを開始する血液因子がある。他の凝固剤をワックスコーティング媒体に細かく分散した状態で、溶液から取り込むことも可能である。
【0025】
本発明のデンタルフロスは、非水溶性バインダーを含む少なくとも1つのコーティングを含む。この非水溶性バインダーを含むコーティングは、1以上の前述の芳香剤及び/又は他の添加物を含んでもよい。また、本発明のフロスは2以上のコーティングを有してもよい。フロスが複数のコーティングを有するならば、第一のコーティングが非水溶性バインダーを含むことが好ましい。追加のコーティングを使用しているならば、そのコーティングは好ましくは水溶性キャリア(例えば、分子量約1000乃至分子量約8000、好ましくは分子量約1000乃至分子量約3500のポリエチレングリコール又はポリビニルアルコール又はそれらの組合せ)を含む。複数のコーティングを有するなら、前述の芳香剤及び他の添加物をどのコーティングに含めてもよい。例えば、本発明のフロスは2つのコーティングを有し、第一のコーティングは、微小結晶ワックス等の非水溶性バインダーと芳香添加物を含み、第二のコーティングはポリエチレングリコールとフッ化ナトリウムを含むようにしてもよい。
【0026】
この発明のフロスに使用するヤーンは、文献に記載されいてる典型的な紡糸工程によって製造される。ヤーンは、樹脂から出発して仕上り製品で終わる単一の工程で紡糸できる。まず、樹脂を加熱して、複数孔紡糸口金ダイに押出す。ダイの各孔から原料フィラメントが生じる。フィラメントをダイの終りと引き操作をする最初のローラとの間にある空気空間に通して、フィラメントを空気冷却(固化)する。
冷却した後、毒性の無い、一般に安全と認識されている紡糸仕上げ剤を、ヤーンの重量に基づき約%1乃至2%の割合で、ヤーンに適用する。この紡糸仕上げ剤は、後に続く処理においてフィラメントを潤滑にする。
押出しの後、ヤーンを多くのゴデット又はローラの間で引く。典型的には、加熱ゴデットとその後に高速で回転する非加熱ゴデットがある。異なる速度でヤーンを引き、その引張強度を増す。対のゴデットが連続して、物質を段階的に引いてもよい。また、ヤーンを加熱オーブンで引いてもよい。本発明のフロスに使用するヤーンとするには、典型的にヤーンを元の長さの約6倍乃至7倍の引き割合まで引く。
引き操作の後、ヤーンを流体絡合ノズルに通す。空気又は適当な他の気体が好ましい絡合流体である。空気絡合ノズルでは、乱流な空気がヤーンに衝突して、まずフィラメントを分離し、次いでフィラメントを再び結合させる。フィラメントが再び結合すると、絡み合い、絡合節をヤーンの長さに沿って周期的な頻度で形成する。絡合節の頻度で示される絡合の程度は、絡合ノズルのデザイン、および流体の圧力と性質の関数である。ノズルの例として、ノースキャロライナ州、ウィンストン−セーラムのインターナショナル・マシン・セールス(International Machine Sales, Inc.)社から市販されている三角スロットジェットモデル133がある。
流体絡合の後、仕上りヤーンをスプールに巻き取る。本発明のフロスを作るのに使用され、必要とされる絡合の程度を有するヤーンは、ヤーン製造業者から得られる。
【0027】
また、ヤーンは2工程より製造してもよい。即ち、初めにヤーンを押出し、空気冷却し、その後巻き取る。その後、ヤーンを引きフレームに通し、そこで加熱、非加熱の交互のゴデットの上を通して物質を引く。巻き取る直前に、物質を空気絡合する。
【0028】
本発明のフロスの特徴、性質及び製造方法を、以下の実施例により説明するが、本発明の範囲はそれらの実施例に限定されると解釈されるべきではない。
【0029】
実施例1
本発明のフロスを、図1に示す装置を用いて、マルチワックスW−445(Witco)微小結晶ワックスのコーティングを、コートしてないヤーンに適用(塗布)することにより、製造した。オンタリオ州、ミシソーガのデュポンカナダ(DuPont Canada)社からタイプ769として得られるヤーンは以下の性質を有していた。
ヤーンベース重量:630デニール
フィラメントベース重量:3デニール
ヤーン引張強さ:7グラム(力)/デニール
ヤーン組成:ナイロン−6,6
ヤーンねじれ:0
絡合節間の平均距離:1インチ
【0030】
実施例1のフロスの製造に使用したヤーンの部分(section)顕微鏡写真を、図2に示す。この図に示すように、フロス断面は3つの小部分(subsections)41,42,43からなる。サブセクション41およびサブセクション43のヤーンからなるフィラメントの全ては、ヤーンの長軸に沿って互いにほぼ平行に走っている。サブセクション42は絡合節を含み、フィラメント群44およびフィラメント群45はヤーンの長軸に平行ではない。むしろ、フィラメント群44およびフィラメント群45はヤーン軸からはずれ、互いに絡合され、「タック(留合せ)」されてヤーンバルク(糸塊)となる。この絡合はヤーンの断面積を減らし断面の形をより丸くし、密度を増やし、フィラメントを絡合節に固定する。
【0031】
フロスは以下のように製造した。
図1に示すように、ヤーン1を供給ロール2からほどき、引張機3で引っ張り、小穴4に通した。その後、ヤーンを、ワックス(binder)を含み華氏190度の温度に加熱したバス5に通し、次に小穴6,7,8に通した。過剰のコーティングを、加熱ロール9の上を通すことによりフロスから除いた。その後、ヤーンを、華氏37度に冷やした空気を含む冷却トンネル10に通した。そのフロスを従来の巻き装置を用いて巻取ロール11に巻き取った。フロスは、平均付加量41mg/ヤードのワックスバインダーを含んでいた。これは、コートしてないヤーンの重量に基づき65%のバインダー付加量(%)であった。
【0032】
比較例1
フロスを、実施例1の方法でマルチワックスW−445をヤーンにコートすることにより製造した。ヤーンは以下の性質を有していた。
ヤーンベース重量:840デニール
フィラメントベース重量:6デニール
ヤーン引張強さ:8.6グラム(力)/デニール
ヤーン組成:ナイロン−6,6
ヤーンねじれ:1インチ当り1.7ねじれ
絡合節間の平均距離:6インチ
【0033】
フロスは、ヤード当り29mgの付加量でワックスバインダーを含んでいた。これは、コートしてないヤーンの重量に基づき35%のバインダー付加量(%)であった。
表1及び表2にそれぞれ実施例1と比較例1のフロスの特性と使用者の好感の比較を示す。
【0034】
表1 フロスの特性
フロスの特性 実施例1のフロス 比較例1のフロス
ヤーンベース重量 630 840
(デニール)
フィラメントベース重量 3 6
(デニール)
ヤーン引張強さ 7 8.6
(グラム(力)/デニール)
ヤーン組成 ナイロン−6,6 ナイロン−6,6
ヤーンねじれ 0 1.7
(ねじれ/インチ)
絡合節間の平均距離 1 6
(インチ)
フィラメント引張強度 21 52
(グラム力)
バインダー付加 41 29
(mg/ヤード)
バインダー付加量 65 35
(コートしてないヤーンの
重量に基づく重量%)
【0035】
実施例1と比較例1の各フロスの試料を、2週間テストのために50人のテストパネリストに与えた。パネリストの半分は、実施例1のフロスを第1週目に使用し、その後比較例1のフロスを第二週目に使用することを指示された。パネリストの他の半分は、初め比較例1のフロスを使用し、その後実施例1のフロスを使用することを指示された。50人のパネリストの内46人が好感を表し、それは表2に要約されている。
【0036】
Figure 0004094146
【0037】
実施例1のフロスを形成するフィラメントの引張強度が比較例1のフロスのものの半分以下であっても、驚くべきことに、ほつれと切れについてフロスの一方又は他方に好感を持つパネリストのうちの4分の3が、比較例1のフロスよりも本発明のフロス、即ち実施例1のフロスを好んだ。
【0038】
前述したように本発明のフロスはしやなかであり、このことは柔らかく、曲がりやすく、柔軟であることを意味する。しなやかなフロスは、歯ぐきと手に優しく、持ちやすく、密接する隣接歯間の空間にフィットする程十分に柔順であるので、歯間を容易にスライドする。しなやかさに影響する因子には、フィラメントベース重量(フィラメント直径と関係する)、ねじれの程度、絡合の程度、ヤーンを製造する物質の弾性係数がある。一定のベース重量のヤーンに対し繊維直径が減ると、個々のフィラメントが互いにスライドするので、フロスは狭い空間をより容易に通過できる。また、繊維直径が小さくなると、フィラメント当りの曲げ係数及びヤーン全体の曲げ係数は低くなり、従ってフロスは柔らかく曲がりやすくなる。実施例1のフロスのフィラメントベース重量が低いことが、比較例1のフロスに比べ、パネリストが感じるしなやかな特性をもたらしていると考えられる。
【0039】
一般にヤーンのねじれ及び/又は絡合の程度が増えると、フロスを狭い歯間空間に挿入してもフィラメントがスライドできないので、得られるフロスのしなやかさは減る。
実施例1のフロスは比較例1のフロスよりねじれが少ないが、絡合の程度は高い。表2のパネル好感は、実施例1のフロスのねじれ及びフロスの絡合の程度が、比較例1のフロスに比べて、良好なほつれ抵抗としなやかさの組合せをもたらし、実施例1のフロスの全体の好感に結び付くことを示している。
【0040】
実施例2と比較例2−芳香付きフロス
本発明の他のフロスを非水溶性バインダー、芳香剤、甘味料を含むコーティングを実施例1のヤーンに適用することにより、製造した。バスを使用する代りに、必要量のコーティング物質を注入したダイによってコーティングをヤーンに適用することを除いて、概ね実施例1と図1の装置と方法を用いてフロスを製造した。実施例2と比較例2のフロスを製造するために使用したコーティング物質の組成を、表3に示す。
【0041】
Figure 0004094146
【0042】
実施例2と比較例2のフロスは以下の表4に示す特性を有する。
表4 フロス特性
フロス特性 実施例2のフロス 比較例2のフロス
ヤーンベース重量 630 840
(デニール)
フィラメントベース重量 3 6
(デニール)
ヤーン引張強さ 7 5
(グラム(力)/デニール)
ヤーン組成 ナイロン−6,6 ナイロン−6
ヤーンねじれ 0 1.7
(ねじれ/インチ)
絡合節間の平均距離 1 絡合してない
(インチ)
フィラメント引張強度 21 30
(グラム力)
コーティング付加量 52 31
(mg/ヤード)
コーティング付加量 79 37
(コートしてないヤーンの
重量に基づく重量%)
バインダー付加量 44 26
(mg/ヤード)
バインダー付加量 66 31
(コートしてないヤーンの
重量に基づく重量%)
【0043】
実施例2と比較例2のフロスを、53人のテストパネリストに与えた。そのうち49人のパネリストが回答した。比較評価を上述したように行った。比較結果を表5に示す。
Figure 0004094146
【0044】
上述したしなやかさ並びに切れとほつれ抵抗の特性に加え、実施例2のフロスは、比較例2に比べ、正しい量の芳香剤に対し使用者がより多くの好感を知覚する。実施例2のフロスの芳香についての好感は、少なくとも一部は、本発明のフロスを製造するために使用する実質的にねじれていないヤーンが、従来のフロスに使用するねじれたヤーンに比べ、コーティング物質をより多く含むことによる。
【0045】
実施例3
本発明の他のフロスを、実施例2の方法で、マルチワックスW−445非水溶性バインダーのコーティングをポリプロピレンヤーンに適用することにより製造した。コーティングは華氏185度乃至華氏190度の温度でヤーンに適用した。フロスと、フロスを製造するために使用するヤーンの特性を表6に示す。
【0046】
表6 フロスの特性
フロス特性 実施例3のフロス
ヤーンベース重量 620
(デニール)
フィラメントベース重量 3
(フィラメント当りのデニール)
ヤーン引張強さ(テナシティ) 5
(グラム(力)/デニール)
ヤーン組成 ポリプロピレン
ヤーンねじれ 0
(ねじれ/インチ)
絡合節間の平均距離 0.7
(インチ)
フィラメント引張強度 15
(グラム力)
コーティング付加量 36
(mg/ヤード)
コーティング付加量 58
(コートしてないヤーンの
重量に基づく重量%)
バインダー付加量 36
(mg/ヤード)
バインダー付加量 58
(コートしてないヤーンの
重量に基づく重量%)
【0047】
パネリストに上述した方法で実施例1のフロスと比較して実施例3のフロスの評価をすることを依頼した。比較の結果を表7に示す。
Figure 0004094146
【0048】
パネリストは、歯間のスライドの容易性という特性で、実施例1のフロスが好ましいということを除いて、どちらのフロスにも統計的に有意な好感を持たなかった。実施例3のフロス(節間0.7インチ)は実施例1のフロス(節間1.0インチ)より絡合の程度が幾らか高い。高い絡合度により、実施例3のフロスは実施例1のフロスより約0.0005インチ厚く、この厚さの違いが歯間のスライドの容易性の認識の違いをもたらしたと考えられる。
【0049】
シュミレート(模擬)フロス使用テスト
模擬使用テストは、製品の効果を定義しフロスの性質の変数を処理するために、また本発明により製造されたフロスの性質を、他のフロスと定量的に区別するために開発された。模擬使用テストは、密接する歯間にフロスを挿入するのに必要な力(歯間のスライドの容易性に関係する)の指標及びフロスのほつれと切れの抵抗の指標を提供する。これらの測定を実施する装置の概略を図3及び図4に示す。装置は、ニューヨーク州、ロングアイランドシティのコロンビア・デントフォーム(Columbia Dentoform Corp.)社から入手できる一対の人工イボリン(Ivorine)(商標)歯21,22(歯番号2および歯番号3、すなわち2番目および3番目の右上の臼歯)を有する。イボリン歯は、製造業者によると、解剖学的に正確であり天然の歯と切断特性が同様である。歯を組立体23に取り付け、歯間の圧縮力をスプリング24で1ポンド乃至2ポンドの間の値に調整する。組立体23をロードセル25に取り付け、それを今度は二重作動空気シリンダー26に取り付ける。フロス試料27を固定アンカーピン28、ガイド29,30、アンカーピン31の周りで包む。ピン31を、空気シリンダー33に連結しているブロック32に固定する。空気シリンダー33は約1ポンドり張力をフロスにかける。フロス使用の「サイクル(周期)」は空気シリンダー26へ空気圧力を加えることによりシュミレートする。これにより組立体23が上がり、初めに歯がフロスに接触し、続いてフロスが隣接歯間空間34を通る。歯間にフロスを挿入するのに必要な力をロードセル25で測定する。空気シリンダー26への圧力を逆にすると、組立体23が下がり、それによりフロスが隣接歯間空間から除かれる。各試料にこのようなサイクルを20サイクル行なう。フロス挿入力は、最初の5サイクルで測定した挿入力の平均とする。
【0050】
切れは、未使用のフロスと上記の20挿入サイクル経過後のテスト試料との間の張力の変化(%)により示される。未使用のフロスと模擬使用テストを受けたフロス間の張力の変化(%)は、使用テスト中のフィラメントの摩耗および破断をもたらす。従って、使用と未使用のフロスの張力強度の変化(%)は、実際の使用で予想される切れの度合いの指標となる。
【0051】
表8は、模擬使用テストにより測定された本発明のフロスと他の市販のフロスの切れの程度を示す。市販製品として、オーラル−Bミント(Oral-B Mint)、CVSワックスド(CVS Waxed)、ライトエイド・ハイテクミント(RiteAid Hi-Tech Mint)、ライトエイド・ワックスド(RiteAid Waxed)およびグライド(Glide)を用いた。
【0052】
Figure 0004094146
【0053】
表8のデータが示すように本発明のフロスは、比較例に比べ、模擬使用テストで示される優れた切れ抵抗性を有する。また、これらは他の市販のマルチフィラメントフロスより優れているか又は同等である。
【0054】
また、模擬使用テストは、歯間にフロスを挿入するのに必要な力についてのデータも提供する。これらのデータを以下の表9に示す。
【0055】
表9 フロス挿入力データ*
フロス 平均挿入力(g)と(標準偏差)
実施例1のフロス 602(32)
実施例2のフロス 603(32)
実施例3のフロス 676(31)
比較例1のフロス 642(19)
比較例2のフロス 682(13)
オーラル−Bミント 437(22)
CVSワックスド 680(13)
ライトエイド・ 765(52)
ハイテクミント
ライトエイド・ 664(11)
ワックスド
グライド 493(56)
(モノフィラメント)
*圧縮力2ポンドの歯負荷
【0056】
本発明のフロスは、PTFEモノフィラメント製のグライドフロスより挿入力が高い。また、それらは、オーラル−B製品より挿入力が高い。しかし、表8に示すように、本発明のフロスはオーラル−B製品より切れ抵抗が優れている。従って、本発明のより好ましい実施形態(実施例1および実施例2)は、従来製品に比べ、歯間の容易なスライド性と切れ特性において最も良好なバランスを示す。
【0057】
本発明のフロスはねじれと絡合度に関しても、従来の選択されたフロスに対し特徴付けられた。これらのデータを表10に示す。
【0058】
Figure 0004094146
【0059】
先に示したように、フロスのほつれの問題に対する従来の解決方法として、フロスを製造するヤーンをねじることがあった。CVSワックスド製品およびライトエイド・ワックスド製品は、ヤーンをねじることにより、ほつれ抵抗性を得ている。表8および表10のデータは、本発明のフロスが、従来の解決方法によらず、即ちヤーンをねじることなく、最も優れた従来のマルチフィラメントフロスに匹敵する切れ抵抗性を有することを示している。これらのデータはむしろ、実質的にねじれていないヤーンを用いても、ヤーンの絡合度を上述した値にコントロールすることにより、従来のものに匹敵する切れ抵抗性が得られる可能性を示している。
【0060】
実施例4および実施例5−複数のコーティング
これらの実施例のフロスは実施例2のヤーンを用いて実施例2のコーティング方法により製造した。第一のコーティング工程で、ヤーンは供給スプールからほどかれ、マルチワックスW−445でコートされ、再び巻かれた。ヤーンに適用するマルチワックスバインダーの量を変えて、2つのフロスを製造した。バインダー付加の量は、バインダーのコーティングダイへの供給を規制してコントロールした。第二のコーティング工程では、第一のコーティングを含む各ヤーンを、以下の組成を有するコーティング物質で、同じ装置と方法を用いて、再びコートした。
成 分 重量%
ポリエチレングリコール1450 42
ポリエチレングリコール1000 42
スプレイ乾燥芳香剤 15
サッカリンナトリウム 1
【0061】
得られたフロスの特性を以下の表11に示す。
表11 フロス特性
フロス特性 実施例4のフロス 実施例5のフロス
ヤーンベース重量 630 630
(デニール)
フィラメントベース重量 3 3
(デニール)
ヤーン引張強さ(テナシティ) 7 7
(グラム(力)/デニール)
ヤーン組成 ナイロン−6,6 ナイロン−6,6
ヤーンねじれ 0 0
(ねじれ/インチ)
絡合節間の平均距離 1 1
(インチ)
フィラメント引張強度 21 21
(グラム力)
第一のコーティング(バインダー) 7 14
の付加量(mg/ヤード)
第一のコーティング(バインダー) 11 22
の付加量(コートしてないヤーンの
重量に基づく重量%)
第二のコーティング付加量 19 19
(mg/ヤード)
第二のコーティング付加量 30 30
(コートしてないヤーンの
重量に基づく重量%)
【0062】
実施例4および実施例5のフロスを上述の模擬使用テストにかけ、20サイクルの後、試料の写真を撮った。模擬使用テスト後の実施例4のフロスの顕微鏡写真は、フロス表面のゆるい繊維を示し、これは使用中に破断する恐れがある。これに対し、実施例4のバインダーの量の2倍を含む実施例5のフロスの顕微鏡写真は、実施例4のフロスに比べて、表面フィラメントがよりきつくフロスのバルクに付着していて切れ抵抗性がより高く、使用中に歯間に付くことが少ないことを示した。
【0063】
好適な実施態様を以下に示す。
(A) ヤーンと、前記ヤーンに適用する少なくとも第一のコーティングを含み、前記ヤーンは複数のフィラメントからなり実質的にねじれてなく、
前記ヤーンは約0.5インチ乃至約3.5インチの絡合頻度を有し、
前記ヤーンのベース重量は約500デニール乃至約1200デニールであり、
前記第一のコーティングは非水溶性バインダーを含むデンタルフロス。
(1)前記絡合頻度が約0.5インチ乃至約3.5インチである実施態様(A)記載のデンタルフロス。
(2)前記絡合頻度が約0.7インチ乃至約2.5インチである実施態様(1)記載のデンタルフロス。
(3)前記絡合頻度が約0.9インチ乃至約1.3インチである実施態様(2)記載のデンタルフロス。
(4)前記フィラメントのベース重量が約1デニール乃至約5デニールである実施態様(A)記載のデンタルフロス。
(5)前記フィラメントのベース重量が約2デニール乃至約4デニールである実施態様(4)記載のデンタルフロス。
【0064】
(6)前記フィラメントのベース重量が約2.5デニール乃至約3.5デニールである実施態様(5)記載のデンタルフロス。
(7)前記フィラメントのテナシティが少なくとも約3g/デニールである実施態様(A)記載のデンタルフロス。
(8)前記フィラメントのテナシティが少なくとも約5g/デニールである実施態様(7)記載のデンタルフロス。
(9)前記フィラメントのテナシティが少なくとも約7g/デニールである実施態様(8)記載のデンタルフロス。
(10)前記ヤーンは、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステルから選択されるポリマーである実施態様(A)記載のデンタルフロス。
【0065】
(11)前記ポリアミドはナイロン−6、ナイロン−6,6から選択される実施態様(10)記載のデンタルフロス。
(12)前記ヤーンのベース重量が約550デニール乃至約850デニールである実施態様(A)記載のデンタルフロス。
(13)前記ヤーンのベース重量が約550デニール乃至約700デニールである実施態様(12)記載のデンタルフロス。
(14)前記ヤーンはねじれの程度は、約1.3ねじれ/直線インチより少ない実施態様(A)記載のデンタルフロス。
(15)前記ヤーンはねじれの程度は、約0.5ねじれ/直線インチより少ない実施態様(14)記載のデンタルフロス。
【0066】
(16)前記フロスの厚みは約3ミル乃至約5ミルである実施態様(A)記載のデンタルフロス。
(17)前記フロスの厚みは約4ミルである実施態様(16)記載のデンタルフロス。
(18)前記フロスのアスペクト比は約8:1より大きい実施態様(A)記載のデンタルフロス。
(19)前記バインダーは、天然ワックス、合成ワックス、それらの混合物から選択される実施態様(A)記載のデンタルフロス。
(20)前記ワックスは、微小結晶ワックス、蜜ろう、数平均分子量が約1,000乃至約5,000である低分子量ポリエチレン、それらの混合物から選択される実施態様(19)記載のデンタルフロス。
【0067】
(21)前記バインダーの融点が少なくとも摂氏約50度である実施態様(A)記載のデンタルフロス。
(22)前記バインダーが前記ヤーンの重量に基づき少なくとも約15重量%のレベルで前記フロスに存在する実施態様(A)記載のデンタルフロス。
(23)前記バインダーが前記ヤーンの重量に基づき少なくとも約25重量%のレベルで前記フロスに存在する実施態様(22)記載のデンタルフロス。
(24)前記バインダーが前記ヤーンの重量に基づき少なくとも約60重量%のレベルで前記フロスに存在する実施態様(23)記載のデンタルフロス。
(25)前記フロスが任意に第二のコーティングを有する実施態様(A)記載のデンタルフロス。
【0068】
(26)前記第二のコーティングは水溶性キャリアを含む実施態様(25)記載のデンタルフロス。
(27)前記水溶性キャリアは、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、それらの混合物から選択されるポリマーを含む実施態様(26)記載のデンタルフロス。
(28)前記フロスはさらに、芳香剤、歯磨剤、過酸化物、プラークコントロール剤、歯石コントロール剤、抗生物質、歯ホワイトニング及び漂白剤、pH緩衝剤、抗真菌剤、ミネラル補給剤、止血剤、抗菌剤、ビタミン類、界面活性剤及び乳化剤、鎮痛剤から選択される少なくとも1つの添加物を含む実施態様(25)記載のデンタルフロス。
(29)前記少なくとも1つの添加物が、前記第一のコーティング、前記第二のコーティング、又は前記両方のコーティングに存在する実施態様(28)記載のデンタルフロス。
(30)前記コーティングは、前記ヤーンの重量に基づき約15重量%乃至約100重量%の付加量で、前記フロスに存在する実施態様(25)記載のデンタルフロス。
【0069】
(31)前記コーティングは、前記ヤーンの重量に基づき約40重量%乃至約80重量%の付加量で、前記フロスに存在する実施態様(25)記載のデンタルフロス。
(32)前記コーティングは、前記ヤーンの重量に基づき約65重量%乃至約100重量%の付加量で、前記フロスに存在する実施態様(25)記載のデンタルフロス。
(B) ヤーンと、前記ヤーンに適用する少なくとも第一のコーティングを含み、前記ヤーンは複数のフィラメントからなり実質的にねじれてなく、
a)前記ヤーンは約0.5インチ乃至約3.5インチの絡合頻度を有し、
b)前記ヤーンのベース重量は約500デニール乃至約1200デニールであり、テナシティは少なくとも約3g/デニールであり、
c)前記第一のコーティングは非水溶性バインダーを含み、前記バインダーは前記ヤーンの重量に基づき少なくとも約15重量%のレベルでデンタルフロスに存在し、
d)前記各フィラメントのベース重量は約1デニール乃至約5デニールであるデンタルフロス。
(C) ヤーンと、前記ヤーンに適用する少なくとも第一のコーティングを含み、前記ヤーンは複数のフィラメントからなり、
a)前記ヤーンは約0.5インチ乃至約2.5インチの絡合頻度を有し、
b)前記ヤーンのベース重量は約500デニール乃至約1200デニールであり、
c)前記第一のコーティングは非水溶性バインダーを含むデンタルフロス。
【0070】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、切れとほつれの抵抗性が改善されたデンタルフロスを提供できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のフロスを製造するのに使用する装置の概略図である。
【図2】 本発明のフロスを構成するヤーンの絡合節を示す20倍の拡大顕微鏡写真である。
【図3】 使用中のフロスの切れ及びほつれの抵抗性を測定する試験装置の前面図である。
【図4】 図3の装置に使用する歯固定具の側面図である。
【符号の説明】
1 ヤーン
44,45 フィラメント

Claims (34)

  1. ヤーンと、前記ヤーンに適用する少なくとも一つのコーティングを含み、前記ヤーンは複数のフィラメントからなり実質的にねじれてなく、
    前記ヤーンは流体絡合ノズルにヤーンを通すことによって得られた絡合節を備え、
    前記ヤーンは、絡合節間の平均距離で表される絡合頻度が、0.5インチ乃至3.5インチ(換算値は1.3cm乃至8.9cm)であり、
    前記ヤーンのベース重量は500デニール乃至1200デニールであり、
    前記コーティングは非水溶性バインダーを含むデンタルフロス。
  2. 前記絡合頻度が0.7インチ乃至2.5インチ(換算値は1.8cm乃至6.4cm)である請求項1記載のデンタルフロス。
  3. 前記絡合頻度が0.9インチ乃至1.3インチ(換算値は2.3cm乃至3.3cm)である請求項2記載のデンタルフロス。
  4. 前記フィラメントのベース重量が1デニール乃至5デニールである請求項1〜3のいずれかに記載のデンタルフロス。
  5. 前記フィラメントのベース重量が2デニール乃至4デニールである請求項4記載のデンタルフロス。
  6. 前記フィラメントのベース重量が2.5デニール乃至3.5デニールである請求項5記載のデンタルフロス。
  7. 前記フィラメントのテナシティが少なくとも3g/デニールである請求項1〜6のいずれかに記載のデンタルフロス。
  8. 前記フィラメントのテナシティが少なくとも5g/デニールである請求項7記載のデンタルフロス。
  9. 前記フィラメントのテナシティが少なくとも7g/デニールである請求項8記載のデンタルフロス。
  10. 前記ヤーンは、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステルから選択されるポリマーである請求項1〜9のいずれかに記載のデンタルフロス。
  11. 前記ポリアミドはナイロン−6、ナイロン−6,6から選択される請求項10記載のデンタルフロス。
  12. 前記ヤーンのベース重量が550デニール乃至850デニールである請求項1〜11のいずれかに記載のデンタルフロス。
  13. 前記ヤーンのベース重量が550デニール乃至700デニールである請求項12記載のデンタルフロス。
  14. 前記ヤーンはねじれの程度は、1.3ねじれ/直線インチ(換算値は0.51ねじれ/直線cm)より少ない請求項1〜13のいずれかに記載のデンタルフロス。
  15. 前記ヤーンはねじれの程度は、0.5ねじれ/直線インチ(換算値は0.20ねじれ/直線cm)より少ない請求項14記載のデンタルフロス。
  16. 前記フロスの厚みは3ミル乃至5ミル(換算値は76μm乃至130μm)である請求項1〜15のいずれかに記載のデンタルフロス。
  17. 前記フロスの厚みは4ミル(換算値は100μm)である請求項16記載のデンタルフロス。
  18. 前記フロスのアスペクト比は8:1より大きい請求項1〜17のいずれかに記載のデンタルフロス。
  19. 前記バインダーは、天然ワックス、合成ワックス、それらの混合物から選択される請求項1〜18のいずれかに記載のデンタルフロス。
  20. 前記ワックスは、微小結晶ワックス、蜜ろう、数平均分子量が1,000乃至5,000である低分子量ポリエチレン、それらの混合物から選択される請求項19記載のデンタルフロス。
  21. 前記バインダーの融点が少なくとも摂氏50度である請求項1〜20のいずれかに記載のデンタルフロス。
  22. 前記バインダーが前記ヤーンの重量に基づき少なくとも15重量%のレベルで前記フロスに存在する請求項1〜21のいずれかに記載のデンタルフロス。
  23. 前記バインダーが前記ヤーンの重量に基づき少なくとも25重量%のレベルで前記フロスに存在する請求項22記載のデンタルフロス。
  24. 前記バインダーが前記ヤーンの重量に基づき少なくとも60重量%のレベルで前記フロスに存在する請求項23記載のデンタルフロス。
  25. 前記フロスが任意に第二のコーティングを有する請求項1〜24のいずれかに記載のデンタルフロス。
  26. 前記第二のコーティングは水溶性キャリアを含む請求項25記載のデンタルフロス。
  27. 前記水溶性キャリアは、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、それらの混合物から選択されるポリマーを含む請求項26記載のデンタルフロス。
  28. 前記フロスはさらに、芳香剤、歯磨剤、過酸化物、プラークコントロール剤、歯石コントロール剤、抗生物質、歯ホワイトニング及び漂白剤、pH緩衝剤、抗真菌剤、ミネラル補給剤、止血剤、抗菌剤、ビタミン類、界面活性剤及び乳化剤、鎮痛剤から選択される少なくとも1つの添加物を含む請求項25記載のデンタルフロス。
  29. 前記少なくとも1つの添加物が、前記コーティング、前記第二のコーティング、又は前記両方のコーティングに存在する請求項28記載のデンタルフロス。
  30. 前記コーティングは、前記ヤーンの重量に基づき15重量%乃至100重量%の付加量で、前記フロスに存在する請求項25記載のデンタルフロス。
  31. 前記コーティングは、前記ヤーンの重量に基づき40重量%乃至80重量%の付加量で、前記フロスに存在する請求項25記載のデンタルフロス。
  32. 前記コーティングは、前記ヤーンの重量に基づき65重量%乃至100重量%の付加量で、前記フロスに存在する請求項25記載のデンタルフロス。
  33. ヤーンと、前記ヤーンに適用する少なくとも一つのコーティングを含み、前記ヤーンは複数のフィラメントからなり実質的にねじれてなく、絡合節を備え、
    a)前記ヤーンは、流体絡合ノズルにヤーンを通すことによって得られた、絡合節間の平均距離で表される絡合頻度が、0.5インチ乃至3.5インチ(換算値は1.3cm乃至8.9cm)であり、
    b)前記ヤーンのベース重量は500デニール乃至1200デニールであり、テナシティは少なくとも3g/デニールであり、
    c)前記コーティングは非水溶性バインダーを含み、前記バインダーは前記ヤーンの重量に基づき少なくとも15重量%のレベルでデンタルフロスに存在し、
    d)前記各フィラメントのベース重量は1デニール乃至5デニールであるデンタルフロス。
  34. ヤーンと、前記ヤーンに適用する少なくとも一つのコーティングを含み、前記ヤーンは複数のフィラメントからなり、流体絡合ノズルにヤーンを通すことによって得られた絡合節を備え、
    a)前記ヤーンは、絡合節間の平均距離で表される絡合頻度が、0.5インチ乃至2.5インチ(換算値は1.3cm乃至6.4cm)であり、
    b)前記ヤーンのベース重量は500デニール乃至1200デニールであり、
    c)前記コーティングは非水溶性バインダーを含むデンタルフロス。
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