この発明は、全光型の、NRZ信号からRZまたはソリトン信号へのフォーマット変換回路に関するものである。また、そのようにして変換されたRZまたはソリトン信号を伝送するに適した光伝送路に関するものである。この光伝送路は、より詳細には、光ファイバ伝送路において伝送路の分散値を適切に設定することにより、長距離の伝送を安定して行う光ファイバ伝送路である。
光ファイバ伝送路を用いて行なう光通信システムには、今後、全光信号処理回路が必須になると考えられる。現在研究されている全光信号処理回路では、光時間多重との相性の良さから、光信号の形式にはRZ信号が用いられている。そして将来の超高速信号処理のために、全光型のNRZ/RZ変換技術も必要になると考えられる。
以下、NRZ信号をRZ信号へ変換する、いわゆるトランスポンダの一般的な構成について説明する。たとえば米山他、「遅延マッハツェンダ干渉計を用いた10Gbit/s、NRZ信号からの全光クロック抽出」、1998年電子情報通信学会総合大会論文集、通信2、B-10-145(文献1)に記載されているように、NRZ信号は遅延マッハツェンダ(MZ)干渉計に入力されて2分岐され、互いに長さの異なる光路を伝搬して、再度合成される。この際、遅延MZ干渉計の2つの出力ポートからは、合成和の光信号と、打ち消しあった差分の光信号とがそれぞれ出力される。このうち、差分の光信号は、入力された光信号のクロック成分を有しているので、同一周波数帯に同期範囲を持つ半導体モード同期レーザーに入力し、光注入同期を施すことで、RZクロック成分が抽出される。
しかし、この場合は光信号のRZクロック成分のみが抽出され、NRZ光信号に含まれるデジタルパターンまでは再現されない。また、上記文献1では半導体モード同期レーザー(MLLD)を用いているが、MLLDのくり返し周波数(周波数の同期範囲)は、レーザーの共振器長でほぼ決定される。現状のMLLDは、半導体チップをへき開することで共振器長を所望の長さとしており、システムの使用周波数に適合した半導体モード同期レーザーを得ることは、通常のレーザー素子よりも困難である。
次に、こうして生成されたRZ信号やソリトン信号を伝送する光ファイバ伝送路について説明する。
従来、たとえば伝送ファイバに、その伝送ファイバとは逆符号の波長分散を持つ分散補償ファイバなどを接続して構成される光伝送路が知られている。このような光伝送路中を伝搬する、いわゆる分散マネージド・ソリトンを安定化する方法として、たとえば「4x20 Gbit/s soliton WDM transmission over 2000 Km with 100 Km dispersion-compensated spans of standard fiber」、Electron. Lett. 33 No.14 p1234(1997年発行。文献2)に開示されている方法が知られている。この文献2は、光短パルスが伝送路に入射する前に該パルスにチャープを施す、いわゆるプリ・チャープ法を開示している。
しかし上記文献2に開示されるようなシステムでは、伝送路の出口では常に線形のアップ・チャープをした光パルスが伝搬することになる。従って、伝送路の出口での安定な光パルスの幅は、その光パルスが生成された直後の幅よりも広くなっている。幅の広い光パルスは、光伝送システムにおいて、より高いビット・レートを実現する際には不都合である。また、プリ・チャープ法において、必要なプリ・チャープの量は分散補償ファイバの性質により決定される。この方法を光波長多重伝送に応用する場合、分散補償ファイバに分散スロープがあると波長毎にチャープ量が変動し、伝送路設計が困難になる。
したがって、光NRZ信号を光RZ信号、さらに言えばソリトン信号に変換するための、簡単な構成で信頼性が高い光NRZ/RZ変換器が要求されている。
この発明の光信号発生回路は、第1の導波路と、第2の導波路とを有する。これら2本の導波路は、それぞれの一部が近接して結合導波路領域が形成されている。そして、この第1の導波路に、同一の波長を有する光NRZ信号と、RZパルス列とが入力される。すると、結合領域において、光NRZ信号によってRZパルス列に相互位相変調による非線型位相シフトが生じる。この結果、RZパルス列を構成する個々のRZパルスのうち、光NRZ信号に対応するRZパルスのみが、第1の導波路から出力される。
この時、光NRZ信号と、RZパルス列との波長を異ならせ、第1の導波路の出力端に光バンドパスフィルタを配置すれば、第1の導波路の出力端に漏れ出てきた光NRZ信号を除去することができる。さらに、第2の導波路の出力端に受信器を設け、光NRZ信号に対応しないRZパルスを受信して、光信号発生回路の動作をモニタすることもできる。
次に、この発明の第3の実施形態の光信号発生回路は、Y分岐光導波路を有する。このY分岐光導波路中には、信号光の基本モードおよび1次モードが伝搬する。よって、信号光の入力される点からY分岐点までの長さを適切に設定すれば、両モードの干渉により、Y分岐のいずれか一方のみに信号光が現われる。このようなY分岐光導波路に、所定の波長を有する光NRZ信号と、この所定の波長とは異なる波長を有するRZパルス列とが入力される。
すると、Y分岐光導波路において、光NRZ信号によってRZパルス列に相互位相変調による非線型位相シフトが生じる。この結果、RZパルス列を構成する個々のRZパルスのうち、光NRZ信号に対応するRZパルスのみが、Y分岐のいずれか一方に現われる。一方で光NRZ信号に対応しないRZパルスは、Y分岐の他方に現われる。この実施形態においても、出力部分に光バンドパスフィルタや、光NRZ信号に対応しないRZパルスを受信する受信器を配置するのも有効である。
また、この発明の光信号発生回路は、光導波路と、この光導波路に接続された偏光子とを有する。この光導波路に、第1の偏波方向を有する光NRZ信号と、第1の偏波方向と45°異なる第2の偏波方向を有するRZパルス列とが入力される。その結果、光導波路
内において、この光NRZ信号によって生じるこのRZパルス列の相互位相変調により誘起される非線型位相シフトの非線型効果を積極的に利用することができる。この結果、RZパルス列の光ファイバ51の出射端での偏波面を、もとの偏波面からずらすことができる。したがって、このRZパルス列を偏光子に入力し、光NRZ信号に対応するRZパルスのみを抽出する。
光NRZ信号を光RZ信号、さらに言えばソリトン信号に変換するための、簡単な構成で信頼性が高い光NRZ/RZ変換器が得られる。
以下、図面を参照しながら、この発明の実施形態を説明する。
まず図1に、この発明の第1の実施形態の光信号発生回路のブロック図を示す。
第1の実施形態の光信号発生回路10は、光NRZ信号(光パルス列)が入力される入力ポート1を有する。この入力ポート1に与えられた光NRZ信号は、次いで光カプラ2に与えられる。光NRZ信号は、この光カプラ2で2分岐され、一方はクロック抽出回路3に、他方が光遅延回路4に入力される。
クロック抽出回路3は、入力された光NRZ信号からクロック成分を抽出する。このクロック抽出回路3の具体的な構成の説明は省略するが、当業者であれば、この構成は自明であろう。こうしてクロック抽出回路3から、光NRZ信号のクロック成分である正弦波が電気信号の形で出力される。このクロック成分は、EA(電界吸収型)変調器5に与えられる。EA変調器5は、このクロック信号により駆動される。
前述した光カプラ2で分岐された一方の光NRZ信号は、他方の光NRZ信号との光路長の違い、クロック抽出回路3におけるクロック抽出処理に要する時間、そしてクロック抽出回路3から電気信号として取り出された正弦波の遅延などにより、タイミングがずれる。このタイミングずれを補正するため、光カプラ2で分岐された他方の光NRZ信号を光遅延回路4に入力し、EA変調器5に入力される正弦波信号と、他方の光NRZ信号とのタイミングを調整する。
すなわち光遅延回路4は、分岐された他方の光NRZ信号の位相を調整し、前述したEA変調器5に与える。これにより図2に示すように、EA変調器5に与えられる光NRZ信号のパルスの中心と、抽出されたクロック成分の正弦波のピークとが合致するように、分岐された他方の光NRZ信号の位相が調整される。このような関係とすることで、分岐された他方の光NRZ信号の一部をEA変調器5で打ち抜くことができる。
この結果、EA変調器5の出力として光RZ信号が生成される。この出力された光RZ信号のパルス波形は、元の光NRZ信号が局所的には連続波であることから、連続波を正弦波駆動されたEA変調器に入力した場合と同様、ガウス型あるいはsec h(t)^2 型となる。こうして生成された光RZ信号は、出力ポート6から出力される。
以上のように、非常に簡単な構成で光NRZ信号を光RZ信号、さらに言えばソリトン信号に変換できる。こうして生成された光RZないしソリトン信号は、光増幅器(図示せず)で所定のレベルまで増幅された後に、光伝送路に送出される。
なお、第1の実施形態の光信号発生回路の変形例を、図3に示す。この変形例は、図1に示した光信号発生回路に、自動光出力制御(Auto-Level Control;ALC)回路7を追加した構成である。
図1に示した光信号発生回路は、光遅延回路4を用いて光カプラ2において2分岐された他方の光NRZ信号を遅延させている。この結果、EA変調器5に入力される光NRZ信号と、EA変調器を駆動する正弦波(再生されたクロック成分)とが図2に示した関係になる。しかし実際には、外気温の変化や、ファイバに加えられる曲げ応力などにより、このタイミング関係がずれる可能性がある。
EA変調器5への入力光強度が一定であり、光NRZ信号と、EA変調器5を駆動する正弦波との間に、図2に示す関係が維持されている限り、EA変調器5の光出力は常に最大になるはずである。そこで、図3に示す光信号発生回路では、EA変調器5の出力の一部を取り出し、これをALC7に与える。このALC7は、EA変調器5の光出力の変動を検出して、EA変調器5の光出力が最大になるように、光遅延回路4に対して負帰還をかけるものである。
すなわち、ALC回路7により、EA変調器5の光出力が最大になるように、光遅延回路4における遅延量が調整される。この結果、タイミングの自動調整が可能となり、図2に示すタイミング関係が常に維持される。したがって、信頼性の高い光NRZ/RZ変換器が得られる。
次に、図4に、この発明の第2の実施形態の光信号発生回路のブロック図を示す。第2の実施形態の光信号発生回路20は、方向性結合器21を有する。この方向性結合器21は、光信号の入力ポート22および23、結合導波路領域24および25、そして光信号の出力ポート26および27を有する。
この入力ポート22には、同一の波長(ここではλ0とする)を有する光NRZ信号とRZパルス列とが、同時に与えられる。これらは、方向性結合器21の結合導波路領域24に進行する。そして、この結合導波路領域24において、強度の大きい光NRZ信号により、RZパルス列に非線型位相シフトが誘起される。この結果、光NRZ信号に対応するRZパルスのみが、出力ポート26から取り出される。
このため、方向性結合器21は、たとえばシリカ・ファイバ、LiNbO3などの誘電体、あるいはInGaAs/InPを始めとする化合物半導体など、光カー効果の存在する非線型媒質を材料としている。また、その構造は入力/出力に関して全くの対称である。なお、光NRZ信号とRZパルス列とは、それぞれのRZパルスのピークが、光NRZ信号のビット・スロットの中心に位置するように、方向性結合器21の入力ポート22に与えるタイミングが調整されている。
まず、光NRZ信号とRZパルス列と双方とも、非線型効果を生じない程度の光強度である場合の動作を以下に説明する。結合導波路領域24に進行してきた光NRZ信号とRZパルスとは、結合導波路領域24における結合導波路長をLcとし、この結合導波路長LcがLc=π/(2k)なる関係にあるとき、結合導波路領域24から結合導波路領域25に全エネルギーが遷移する。この結果、双方の光信号とも、出力ポート27から出力される。
ここでkは、結合導波路24と結合導波路25との結合の強さを表わす定数である。この値は、結合導波路24と25がそれぞれ単独で存在すると仮定した場合に、それぞれの結合導波路に誘起される導波モードの線形結合で結合部の導波モードを近似する場合の、それぞれの導波モードの重なりの程度によって決まる。すなわちkの値は、双方の結合導波路間の距離、それぞれの導波路の幅、および、それぞれの導波路と周辺部の屈折率の差に強く依存する。
次に、入力された光NRZ信号の光強度のみが、非線型効果を誘起するくらい充分に大きい場合の動作を以下に説明する。このとき結合導波路24では、この光NRZ信号によって、光NRZ信号には自己位相変調(SPM)による非線型位相シフトが、RZパルスには相互位相変調(XPM)よる非線型位相シフトが、それぞれ生じる。なお、この場合、RZパルスによって、光NRZ信号には相互位相変調が、RZパルスには自己位相変調が、それぞれ生じる。しかしここでは、RZパルス列によって生じる非線型効果は無視して考えることとする。
この時、光NRZ信号に生じる非線型位相シフトは、次の式(1)で表わされる。
φ(NRZ)=2πLc/λn2ANRZ2・・・式(1)
一方、RZパルスに生じる非線型位相シフトは、次の式(2)で表わされる。
φ(RZ)=2πLc/λan2ANRZ2・・・式(2)
ここで、n2、λ、ANRZは、それぞれ非線型屈折率、光波長、光NRZ信号の振幅の大きさを表わしている。また、aはXPMの寄与の程度を表わす定数で、0.67〜2の値をとる。a=2となるのは、光NRZ信号とRZパルス列と、2つの信号光が同じ偏波面上にある時である。以下この場合について説明する。
一般に、結合導波路領域24を進行する信号光に位相シフトが生じると、方向性結合器の対称性が崩れる。それに伴い、結合導波路領域24から結合導波路25へのエネルギー遷移が小さくなる。特に位相シフト量が下記の式(3)で示す関係になる時、結合導波路25へのエネルギー遷移がほぼ0になる。この結果、入力ポート22に与えられた光が出力ポート26より出力される。
φ=3 1/2 k Lc・・・式(3)
この原理を、この実施形態についてみると、光NRZ信号と同時に入力されることにより、RZパルス列に相互位相変調が生じる。この非線型位相シフト量が上記の式(3)で示した関係になっている時、RZパルス列は方向性結合器の出力ポート26より出力される。
ただし、この位相シフトは、光NRZ信号とRZパルス列が時間的に重なっている場合にのみ生じる。したがって、光NRZ信号の情報に対応するRZパルスのみが、出力ポート26より出力されることになる。この結果、NRZフォーマットからRZフォーマットへの変換が実現される。
なお厳密には、光NRZ信号によって、光NRZ信号にSPMによる位相シフトφ(NRZ)が生じる。したがって、出力ポート26へ光NRZ信号の漏れ込みが起きる。しかし上述したように、ここでは光NRZ信号がRZパルス列と同じ偏波面上にある場合を考えている。このような場合であれば、光NRZ信号に生じる位相シフト量は、RZパルス列に生じる位相シフト量に比べて係数aがかかっていないだけ小さい。さらに、これに加えて方向性結合器のエネルギー遷移の位相変化に対する反応は光強度の臨界強度Peに対して急峻なものとなる。よって、SPMによって光NRZ信号に生じる位相シフトは、実際上は問題ないと考えられる。
以下、第2の実施形態の光信号発生回路20の変形例について、図5を用いて説明する。この変形例の基本的な構成は、図4に示した第2の実施形態と同様である。ただし、この変形例では、出力ポート26の先に光バンドパスフィルタ(Optical Bandpass Filter:OBF)28が配置されている。
また、前述した第2の実施形態は、方向性結合器21に入力される光NRZ信号とRZパルス列とは、どちらも同じ波長(λ0)を有している。これに対し、この変形例では、両者の波長を異なるものとして構成している。すなわち、この変形例では、波長λ0を有する光NRZ信号と、波長λ1を有するRZパルス列とが、入力ポート22に同時に与えられる。
これらは、方向性結合器21の結合導波路領域24に進行する。この結合導波路領域24において、強度の大きい光NRZ信号により、RZパルス列に非線型位相シフトが誘起されるのは第2の実施形態と同様である。従って、RZパルス列は方向性結合器の出力ポート26より出力される。
ここで、光NRZ信号にもSPMによる位相シフトが生じ、出力ポート26へ光NRZ信号の漏れ込みが起きることも第2の実施形態と同様である。しかし、この変形例にあっては、出力ポート26に接続されるOBF28により、光NRZ信号が出力ポート26へ漏れ込むことを防止する。すなわちOBF28は、光NRZ信号が有する波長λ0をストップし、RZパルス列が有する波長λ1を透過させるものである。したがってこの変形例では、さらに効率良いNRZ/RZ変換装置を実現することができる。また、RZパルス列の波長を光NRZ信号の波長と一致させずともよいため、RZパルス列の波長を、この光信号発生回路に接続される光伝送路での伝送に適した波長に選定することができる。
さらに、図6に示すように、出力ポート27の後段に、OBF29および受信器30を接続するのも有効である。第2の実施形態および前述した変形例は、光NRZ信号とRZパルス列が時間的に重なっている場合にRZパルス列に位相シフトが生じることを利用して、光NRZ信号の情報に対応するRZパルスを出力ポート26に導くものである。
これを逆に考えると、光NRZ信号とRZパルス列が時間的に重なっていない場合には、RZパルス列に位相シフトが生じることはない。したがってRZパルス列は、前述したように導波路領域24において全エネルギーが結合導波路領域25に遷移する。この結果、光NRZ信号の情報に対応しないRZパルス列が、出力ポート27に出力されることになる。
ここで、出力ポート26に現れるRZパルス列と、出力ポート27に現れるRZパルス列とを比較してみると、これらのRZパルス列は相互に反転した関係になっている。また出力ポート27には、位相変調を受けていない光NRZ信号も出力されている。これを、OBF29によって光NRZ信号を除去すれば、出力ポート26に現れるRZパルス列と反転したRZパルス列が得られる。このRZパルス信号を受信器30で受信すれば、光信号発生回路20の監視に用いることができる。
次に、この発明の第3の実施形態の光信号発生回路のブロック図を示す。第3の実施形態の光信号発生回路40は、Y分岐光導波路の中で生じる非線型効果を利用して、NRZ/RZ変換を行なうものである。以下、図7および図8を用いて詳細に説明する。
第3の実施形態の光信号発生回路40は、Y分岐光導波路41を有する。このY分岐光導波路41は、出力ポート42および出力ポート43を有する。Y分岐光導波路41は、第2の実施形態におけると同様、非線型効果をもつ材質で形成されている。このY分岐光導波路41内では、基本導波モードと1次導波モードとが励起される。
第3の実施形態の光信号発生回路40でも、Y分岐光導波路41に、第2の実施形態と同様、波長λ0を有する光NRZ信号と、波長λ1を有するRZパルス列とを、同時に入力する。この時、NRZ光信号とRZパルス列とのタイミングは、第2の実施形態と同様、それぞれのRZパルスのピークが、光NRZ信号のビット・スロットの中心に位置するように調整されている必要がある。
まず、Y分岐光導波路41にRZパルスのみを入力したと仮定すると、そのパルスに関する基本導波モードの波と1次導波モードの波とは、図8(a)に示すようになる。これらがY分岐の部分に到達すると、各々のモードの波が分割され、出力ポート42、また出力ポート43に導かれる。ここで出力ポート42においては、基本導波モードの波と1次導波モードの波とが相互に打ち消しあって、パルスが現れない。しかし一方、出力ポート43においては、基本導波モードの波と1次導波モードの波とが相互に強め合って、パルスが現れる。これは、Y分岐光導波路41の入力部からY分岐部分までの長さを適切に設定することで実現される。
次に、Y分岐光導波路41に光NRZ信号とRZパルスとを入力したと仮定する。この時、光NRZ信号の光強度が非線型効果を誘起するくらい充分に大きければ、この光NRZ信号によって、RZパルス列に相互位相変調が生じる。なお、この場合、RZパルスによって、光NRZ信号にも相互位相変調が生じる。しかしここでは、RZパルス列によって生じる非線型効果は無視して考えることとする。そのため、RZパルス列の強度は、RZパルス列に生じる自己位相変調、また光NRZ信号への相互位相変調が無視できる程度に設定する。
RZパルスに相互位相変調が生じた場合、その位相変化量は基本モードと1次モードとで異なる。したがって、両モードにおけるY分岐部分直前での位相関係が変化する。特に、図8(b)に示したように、Y分岐部分直前で両モードの位相差がπだけ変化した場合、出力ポート42においては、基本導波モードの波と1次導波モードの波とが相互に強め合って、パルスが現れる。一方で出力ポート43においては、基本導波モードの波と1次導波モードの波とが相互に打ち消しあって、パルスが現れない。
ここで、RZパルスに相互位相変調が生じるのは、光NRZ信号とRZパルス列が時間的に重なっている場合のみである。したがって、光NRZ信号の情報に対応するRZパルスのみが、出力ポート42より出力されることになる。この結果、NRZフォーマットからRZフォーマットへの変換が実現される。
なお、光NRZ信号によって、光NRZ信号にSPMによる位相シフトが生じるのは、第2の実施形態において述べたと同様である。しかし、光NRZ信号がRZパルス列と同じ偏波面上にあれば、光NRZ信号に生じる位相変化量は小さいものとなる。この時、光NRZ信号における基本導波モードと1次導波モードとの位相関係は、図8(a)、図8(b)の中間の状態である。したがって、光NRZ信号は出力ポート42、および出力ポート43の両方に現れる。光NRZ信号とRZパルス列との波長を異ならせ、出力ポート42にOBF44を接続すれば、この光NRZ信号の迷光は除去できる。これにより、良好なNRZ/RZ変換を実現することができる。
この第3の実施形態の変形例を、図9を用いて説明する。第3の実施形態において、出力ポート43にもOBF46を配置し、光NRZ信号の迷光を除去すれば、出力ポート42に現れるRZパルス列と反転したRZパルス列が得られる。このRZパルス信号を受信器46で受信すれば、光信号発生回路40の監視に用いることができる。
次に、この発明の第4の実施形態の光信号発生回路のブロック図を示す。第4の実施形態の光信号発生回路50は、光ファイバ中でRZパルス列に誘起されるXPMを利用してRZパルスの偏波面を回転させ、所望の偏波面のRZパルスを取り出してNRZ/RZ変換を行なうものである。以下、図10および図11を用いて詳細に説明する。
図10は、第4の実施形態の光信号発生回路50の構成を示すブロック図である。光信号発生回路50は、光ファイバ51と、この光ファイバ51に接続される偏光子52を有する。光ファイバ51には、たとえばシリカ・ファイバを用いる。なお以下では説明の簡単のために、光ファイバ51には複屈折がないものとする。
第4の実施形態の光信号発生回路50でも、光ファイバ51に、波長λ0を有する光NRZ信号と、波長λ1を有するRZパルス列とを同時に入力する。この時、NRZ光信号とRZパルス列とのタイミングは、上述の各実施形態と同様、それぞれのRZパルスのピークが、光NRZ信号のビット・スロットの中心に位置するように調整されている必要がある。
第4の実施形態では、光NRZ信号とRZパルス列とは同一の波長を有する。ただし、RZパルス列の偏波面は、光NRZ信号の偏波面と45°異ならせて光ファイバ51に入力される。この関係を図11に示す。すなわち、光ファイバ51の光軸と垂直にx軸およびy軸をとり、光ファイバ51の光軸をz軸とするとき、光NRZ信号の偏波面をたとえばx軸と合致するように光ファイバ51に入力する。このとき、RZパルス列の偏波面はx軸から45°傾けて、光ファイバ51に入力する。この結果、RZパルス列は、x−z平面内(すなわち光NRZ信号の偏波面内)と、y−z平面内とにその成分を有する。
このような状態で、RZパルス列の一方の成分の位相が他方の成分の位相に対して変化すると、その変化した方の成分は直線偏波から円偏波に変化する。したがって、その成分の光ファイバ51の出射端での偏波面を、もとの偏波面からずらすことができる。これは、光NRZ信号によってRZパルス列に相互位相変調を誘起させることにより実現される。
すなわち、光NRZ信号の光強度が非線型効果を誘起するくらい充分に大きければ、この光NRZ信号によって、RZパルス列に相互位相変調が生じる。なお、この場合、RZパルスによって、光NRZ信号に相互位相変調が生じる。しかしここでは、RZパルス列によって生じる非線型効果は無視して考えることとする。そのため、RZパルス列の強度は、RZパルス列に生じる自己位相変調、また光NRZ信号への相互位相変調が無視できる程度に設定する。
こうすると、光NRZ信号がオンとなっている時間に対応するRZパルスの両成分間には、位相差Δφが生じる。このΔφは、次の式(4)で表わされる。
Δφ=2π/n2(4/3)A2L・・・式(4)
特にΔφ=πである時には、光ファイバ51の出射端では光NRZ信号に対応して位相変調を受けたRZパルスは、入射端における偏波面と直交する直線偏波となっている。偏光子52の偏波の向きを、RZパルスの直線偏波の向きに合わせれば、偏光子52の出力として光NRZ信号と同じパターンのRZ光信号が得られる。このとき、必要な光NRZ信号のピーク強度(オンレベルの強度)をPNRZとすると、これは次の式(5)で表わされる。
PNRZ=3λAeff/(8Leffn2)・・・式(5)
ここで、Leff=(1/α)[1−exp(−αL)]であり、AeffはEffectiveCore Areaである。
たとえば、L=5Km、λ=1555nm、Aeff=50μm2、n2=2.5 x10^-20m/W、α=0.046/Kmとすると、PNRZは262mW程度となる。
また、光NRZ信号の信号光とRZパルス列の波長が異なる場合でも、ファイバの波長分散を充分に小さくしておけば、それぞれのRZパルスのピークが光NRZ信号のビット・スロットの中心に位置する関係が、しばらくの間維持される。したがって上記の効果が得られる。
この第4の実施形態の変形例を、図12を用いて説明する。この変形例では、第4の実施形態における光ファイバ51に、偏光ビームスプリッタ53が接続されている。この偏光ビームスプリッタ53は、光NRZ信号によって変換されたRZパルスの偏波を通過させる。したがって、変換されないRZパルスの偏波は反射される。ここで、偏光ビームスプリッタ53で反射されたRZパルスは、偏光ビームスプリッタ53を通過したRZパルスと、相互に反転した関係にある。よって、この反転したRZパルス信号を受信器54で受信すれば、光信号発生回路50の監視に用いることができる。
次いで図13に、第5の実施形態として、前述した光信号発生回路で発生した光RZ信号/ソリトンパルスの伝送を行なう光伝送路を示す。この光伝送路は、いわゆる"光増幅器スパン"が繰り返して接続された構成を有する。しかし図13では、説明の簡単のために、光増幅器スパンの一つについて示す。すなわち図13R>3において、図13(a)は一つの光増幅器スパンを示す図であり、図13(b)はこの光増幅器スパンの分散マップである。
図13(a)に示すように、一つの光増幅器スパンは、入力光パルスの波長で零分散となる分散シフトファイバ(DSF)61、通常分散ファイバ(SMF)を用いる伝送ファイバ62、および分散補償ファイバ(DCF)63が順次接続された光ファイバ伝送路60で構成されている。この光増幅器スパンは、光増幅器70を介して繰り返し接続される。
DSF61の分散値をD0、伝送ファイバ62の分散値をD1、そしてDCF63の分散値をD2とした時、それぞれの関係は、D0は0にほぼ等しく、D1>D0、D2<0なる関係となっている。以下の説明では、DSF61を長さ10Km(分散値0ps/nm/km)、伝送ファイバ62を長さ50Km(分散値17ps/nm/km)、DCF63を長さ10Km(分散値−82.6ps/nm/km)として説明する。この実施形態では、DSF61の分散値が0であるため、増幅器スパンの平均分散は、伝送ファイバ62の分散値とDCF63の分散値とで定義される。
この光増幅器スパンに、ソリトン伝送に必要な光強度を有する光パルスが入射した場合を考える。この場合の光パルスの状態を、図14に模式的に示す。
光信号発生回路内で、あるいは光ファイバ伝送路60に前置される形で配置される光増幅器70で、所定の光強度にまで増幅された光パルスは、DSF61内を伝搬する際、自己位相変調によって非線型チャープを生じる(図14(a))。このチャープは、異常分散の影響を打ち消す方向になっている。このとき、前述したようにDSF61の分散値は0である。したがって、ここを伝搬する光パルスの波形には変化がなく、光パルスのスペクトルのみが変化する。
こうして非線型チャープを持った光パルスが伝送ファイバ62に入射すると、分散の影響に打ち勝って圧縮を起こす(図14(b))。この圧縮は、光パルスが非線型チャープを持つことに加え、伝送ファイバ62内での光パルスの自己位相変調による効果によっても生じる。この光パルスが伝送ファイバ62を伝搬するにつれ、損失が増大し、強度が低下する。こうなると、伝送ファイバ62の持つ異常分散の影響が光パルスに表われてくるようになり、光パルスのパルス幅が拡がる(図14(c))。この拡がりは線形的なものである。
このようにパルス幅が拡がった光パルスは、続くDCF63において線形圧縮される。この結果、DCF63の出口の部分で、入力光パルスの状態がほぼ再現される(図14(d))。この光パルスは最後に、光増幅器70に入力され、増幅される。
このような光増幅器スパンを繰り返し接続して光伝送路を構成することにより、各々の光増幅器スパンの出口、すなわち各々の光増幅器の出力において、元の光パルスからのチャープと波形変化の小さいソリトン的パルスが得られる。この結果、光パルスの安定な伝搬が実現される。
上述のファイバのパラメーターを用いて、入力パルス幅20psのガウス型パルスの伝搬に伴う波形変化、およびチャープ量の変化を計算した結果を図15に示す。第5の実施形態の光伝送路60では、通常分散ファイバ62とDCF63とで決まる平均分散値は0.2ps/nm/kmである。ここで、図15(a)はスパン内の、図15(b)は各スパンの入り口での、パルスの波形変化およびチャープ量をプロットしたものである。比較のため、プリ・チャープ法を用いた場合の波形変化およびチャープ量もプロットした。なお、この時のプリ・チャープ量は−1.0である。
図15(a)から、この発明の光伝送路はプリ・チャープ法と比較して、伝送ファイバ62内ではパルス幅の拡がり方が大きいものの、各スパンの入り口では、チャープが常にほぼ0になっていることがわかる。また図15(b)は、左の縦軸にパルス幅を、右の縦軸にチャープ量をとった図である。図15(b)から、この発明の光伝送路はプリ・チャープ法と比較して、より狭いパルス幅で安定すること、および、チャープ量がほぼ0であることがわかる。
さらに、この時のパルスピーク強度は、プリ・チャープ法が44.7mWであるのに対して、この発明の光伝送路によれば17mWと、半分以下のレベルであることも特徴の一つである。この結果、光増幅器の負担が軽減される。
図16に、この発明の第6の実施形態の光伝送路を示す。第6の実施形態の光伝送路も、基本的な構成は第5の実施形態と同様である。図16でも図13と同様、光増幅器スパンの一つについて示す。なお、第5の実施形態の光伝送路と同様の部分については同じ参照符号を付す。すなわち図16(a)は一つの光増幅器スパンを示す図であり、図16(b)はこの光増幅器スパンの分散マップである図16(a)に示すように、第6の実施形態でも、一つの光増幅器スパンは光ファイバ伝送路80により構成される。光ファイバ伝送路80は、入力光パルスの波長で正常分散を有する正常分散ファイバ(NDF:Normal Dispersion Fiber)81、通常分散ファイバ(SMF)を用いる伝送ファイバ62、および分散補償ファイバ(DCF)63を順次接続して構成されている。
ここで、NDF81の分散値をD4、伝送ファイバ62の分散値をD1、そしてDCF63の分散値をD2とした時、それぞれの関係は、D4<0、D1>0、D2<0なる関係となっている。以下の説明では、DSF61を長さ10Km(分散値−1ps/nm/km)、伝送ファイバ62を長さ50Km(分散値17ps/nm/km)、DCF63を長さ10Km(分散値−82.6ps/nm/km)として説明する。したがって図16(b)に示すように、光伝送路80全体の平均分散は、わずかプラスとなる。
第6の実施形態の光パルスの状態を、図17R>7に模式的に示す。光増幅器スパンに入力された光パルスは、NDF81内を伝搬する際、自己位相変調によって非線型チャープを生じる(図17(a))とともに、NDF81が有する正常分散によって線形のチャープも誘起される。これらの両効果はいずれもブルーチャープとなるので、NDF81を通過した光パルスの幅は拡がる。
次いで光パルスが伝送ファイバ62に入射すると、ブルーチャープと、伝送ファイバ62中で生じる自己位相変調の効果とによって圧縮を起こす(図17(b))。この圧縮効果は、主にブルーチャープの影響によるものである。第6の実施形態ではこれに加えて、NDF81中で生じた非線型チャープおよび線形チャープの効果も上乗せされ、より効果的に光パルスが圧縮される。したがって、伝送ファイバ62中で再び線形のパルス拡がりが生じても、その広がりは第5の実施形態に比較して抑制される(図17(c))。この光パルスは、続くDCF63に入力され、ここで線形圧縮される。この結果、DCF63の出口の部分で、入力光パルスの状態がほぼ再現される(図17(d))。
この第6の実施形態では、伝送ファイバ62に前置するファイバをNDFとすることにより、自己位相変調による非線形チャープに加えて線形のブルーチャープが生じる。これらのブルーチャープによって、伝送ファイバ62中でのパルス圧縮が増長され、特に伝送ファイバ62後半での線形なパルス拡がりが抑制される。この結果、DCF63に要求される分散補償量は低減する。また、NDF81を前置することで、ソリトンパルスの安定化に必要な光強度がさらに低減される。
上述した第5、第6の実施形態の光伝送路は、単波長の光信号を伝送するのみならず、波長多重光通信のためにも用いることができる。すなわち、相互に波長の異なる複数の信号光を、合波カプラやAWG(Arrayed Waveguide Grating)などによって合波し、伝送路に入力する。
光ファイバには分散スロープが存在するため、光波長多重伝送では、個々の波長(チャンネル)で分散値が異なる。一般に、信号光の波長が長くなるにつれて、生じる分散が大きくなる。しかし、第5の実施形態におけるDSF61、あるいは第6の実施形態におけるNDF81で生じる自己位相変調効果は、分散を打ち消す方向に働く。このため、入力される各波長の光パルスの光強度を調整することにより、それぞれのチャンネル毎に最もパルスが安定するように設定することができる。
たとえば第5の実施形態の光伝送路を用い、これに4波長を多重した通信を行なうことを考える。伝送路が0.7ps/nm/kmの分散スロープを有するとした場合に、各波長(チャンネル)毎に最適化された光強度で伝搬するパルスについて、伝送距離に対するパルス幅の変化の様子を図18に示す。図18も、左の縦軸にパルス幅を、右の縦軸にチャープ量をとった図である。
伝送路の平均分散は最も短波長側から順に0.1ps、0.17ps、0.24psおよび0.31ps(/nm/km)とし、各チャンネル間の波長間隔は1nmとする。図18に示した各チャンネルの光強度は、短波長側から順に9.0mW、15.5mW、21.7mW、28.2mWであり、いずれも若干のパルス幅揺らぎがあるものの、安定した伝搬状態になっている。これは、分散が異なる場合でも、光強度を適切に設定することで最適な状態に調整できることを示しており、実効的に分散スロープの影響を低減している。これは同一の条件でプリ・チャープ法による最適条件が短波長側から順に26.4mW、41.3mW、48.7mW、69.8mWであることと比較すると、より低いレベルで済む。このことは、この発明によれば、光波長多重伝送方式において、光増幅器への負担を大幅に低減できることを示している。
図19に、この発明の第7の実施形態の光伝送路を示す。第7の実施形態の光伝送路も、基本的な構成は第6の実施形態と同様である。図19でも図16と同様、光増幅器スパンの一つについて示す。すなわち図19(a)は一つの光増幅器スパンを示す図であり、図19(b)はこの光増幅器スパンの分散マップである図19(a)に示すように、第7の実施形態でも、一つの光増幅器スパンは光ファイバ伝送路90により構成される。光ファイバ伝送路90中、ファイバ91およびファイバ92の一組で、入力光パルスの波長で正常分散を有するように構成されている。ファイバ91およびファイバ92の後段には、通常分散ファイバ(SMF)を用いる伝送ファイバ62、および分散補償ファイバ(DCF)63を順次接続して、光ファイバ伝送路90が構成されている。
ここで、ファイバ91を通常分散ファイバ、ファイバ92を分散補償ファイバとして説明する。すなわち、ファイバ91の分散値をD5、ファイバ92の分散値をD6、伝送ファイバ62の分散値をD1、そしてDCF63の分散値をD2とした時、それぞれの関係は、D5>0、D6<0、D1>0、そしてD2<0なる関係となっている。以下の説明では、ファイバ91の分散値を16ps/nm/km、ファイバ92を、ファイバ91の分散を補償する分散補償ファイバ、伝送ファイバ62を長さ50Km(分散値16ps/nm/km)、DCF63を長さ9.375Km(分散値−85.0ps/nm/km)として説明する。したがって図19(b)に示すように、光伝送路90全体の平均分散は、わずかプラスとなる。
第7の実施形態の光パルスの状態を、図20R>0に模式的に示す。この第7の実施形態においては、光増幅器スパンに入力する光パルスは、その挙動を安定させるため、わずかにアップ・チャープしているものを用いる。光増幅器スパンに入力された光パルスは、ファイバ91およびファイバ92内を伝搬する際、自己位相変調により非線型チャープを生じる。このとき、ファイバ91とファイバ92との組では、残留分散はゼロとなっている。しかし、局所的には分散が存在しているので、ファイバ91および92の組から出力された光パルス(図20(a))は、自己位相変調によるチャープと、あらかじめ持っているブルーチャープ(プリ・チャープ)とを併せ持つ、入力された光パルスからは僅かに変化した波形となる。
次いで光パルス(図20(a))が伝送ファイバ62に入射すると、分散の影響にうち勝って圧縮を起こす(図20(b))。この圧縮には、伝送ファイバ62中での自己位相変調による効果も含まれている。この光パルスが伝送ファイバ62を伝搬するにつれ、損失が増大し、強度が低下する。こうなると、伝送ファイバ62の持つ異常分散の影響が光パルスに表われてくるようになり、光パルスのパルス幅が拡がる(図20(c))。
この拡がりは線形的なもので、光パルスが続いて続くDCF63に入射した際、DCF63内で線形圧縮される。この結果、DCF63の出口の部分で、入力光パルスの状態がほぼ再現される(図20(d))。このパルスは最後に、光増幅器70に入力され、増幅される。
このような光増幅器スパンを繰り返し接続して光伝送路を構成することにより、各々の光増幅器スパンの出口、すなわち各々の光増幅器の出力において、元の光パルスからのチャープと波形変化の小さいソリトン的パルスが得られる。この結果、光パルスの安定な伝搬が実現される。
この実施形態では、ファイバ91およびファイバ92の長さ、および分散量を種々に変更することによって、光伝送路に入力する光パルスのプリ・チャープ量、また伝送路62内を伝送する光パルスのパワーを、より自由度高く設定することができる。またこの実施形態では、伝送ファイバに前置する分散補償手段を2本1組のファイバで構成しているため、光パルスのパワー、チャープ量等に関して、よりトレランスの大きい光伝送路を構成することができる。
図21に、この発明の第8の実施形態の光伝送路を示す。図22でも図19と同様、光増幅器スパンの一つについて示す。第8の実施形態の光伝送路も、基本的な構成は第7の実施形態と同様である。しかし第8の実施形態では、伝送ファイバ62の直前に、可変光減衰器93を新たに設けている点で異なる。
可変光減衰器93は、伝送ファイバ62に挿入される光パルスの強度を減衰させる。ただし、可変光減衰器93を通過した光パルスの波形自体は、そのままに保たれている。なお、図21に示した光増幅器スパンは、可変光減衰器93を挿入している以外は第7の実施形態と同様であるので、分散マップは省略する。すなわち図21は、一つの光増幅器スパンを示す図である。
第8の実施形態の光パルスの状態は、図20R>0に示した第7の実施形態におけるとほぼ同様である。すなわち光増幅器スパンに入力された光パルスは、ファイバ91およびファイバ92内を伝搬する際、自己位相変調により非線型チャープを生じる。そして、ファイバ91および92の組から出力された光パルス(図20(a)参照)は、自己位相変調によるチャープと、あらかじめ持っているブルーチャープ(プリ・チャープ)とを併せ持つ、入力された光パルスからは僅かに変化した波形となる。
次いで光パルス(図20(a)参照)は、光減衰器93で光強度が減衰した後、伝送ファイバ62に入射する。光パルスはここで、分散の影響にうち勝って圧縮を起こす(図20(b)参照)。このとき、光減衰器93で十分に光強度が抑制されていれば、伝送ファイバ62中での非線形性も抑制される。結果として、伝送ファイバ62中での自己位相変調効果は、より小さくなる。
この光パルスは、第7の実施例と同様、異常分散の影響により、パルスは広がる(図20(c)参照)。次いで光パルスがDCF63に入力され、線形圧縮されることにより、入力光パルスの状態がほぼ再現される(図20(d)参照)。
以上説明したように、伝送ファイバ62の直前に可変光減衰器93を挿入した点が第8の実施形態の特徴である。可変光減衰器93により、その光強度を減衰させられた光パルスは、伝送ファイバ62中での自己位相変調効果が抑制される。その結果、たとえ異常分散の影響でパルス拡がりが生じ、隣接するパルス同士がかさなったとしても、非線形性に起因する相互作用が低減される。
ここで、第7の実施形態において(図21参照)、伝送ファイバ中の非線形性が無い場合でも、光パルスにわずかなプリ・チャープを施し、かつ、前置するファイバ91および92中の自己位相変調効果により、ほとんどパルス形状に変化のないソリトン的な伝搬が可能であることが示されている。よって第8の実施形態において、光減衰器93による光強度の減衰があったとしても、第7の実施形態と同様の伝搬が実現されることは明らかである。
図23は、光減衰器93における減衰量を変えた場合に、伝送ファイバ62中の非線形性に起因するパルス間相互作用による時間ジッタがどの程度低減されるかを計算した結果である。図23では、信号列のビット・レートを40Gbit/sとし、入力光パルスとして、半値全幅7.5psのガウス形を仮定した。また図23では比較のため、伝送ファイバ中での非線形性を全く無視した場合についても示した。
これによると、光減衰器11における減衰量を3、5、7.5dBと大きくしていくことで、伝搬に伴う時間ジッタの累積が低減され、非線形性を無視した場合に近づいていくことがわかる。さらに、伝送ファイバ62中での過剰な自己位相変調効果が抑制されるために、プリ・チャープ量、及び最適光強度ともに小さくできることも第8の実施形態の特徴的な性質である。
第1の実施形態の光信号発生回路を示すブロック図である。
光NRZ信号と、抽出されたクロック成分との関係を示す図である。
第1の実施形態の光信号発生回路の変形例を示すブロック図である。
第2の実施形態の光信号発生回路を示すブロック図である。
第2の実施形態の光信号発生回路の変形例を示すブロック図である。
第2の実施形態の光信号発生回路の別の変形例を示すブロック図である。
第3の実施形態の光信号発生回路を示すブロック図である。
第3の実施形態での各モードの伝搬状態を説明する図である。
第3の実施形態の光信号発生回路の変形例を示すブロック図である。
第4の実施形態の光信号発生回路を示すブロック図である。
第4の実施形態の動作原理を説明する図である。
第4の実施形態の光信号発生回路の変形例を示すブロック図である。
第5の実施形態の光伝送路を示す図である。
第5の実施形態の光伝送路における光パルスの状態を示す図である。
第5の実施形態の光伝送路におけるパルスの伝搬に伴う波形変化、およびチャープ量の変化を示す図である。
第6の実施形態の光伝送路を示す図である。
第6の実施形態の光伝送路における光パルスの状態を示す図である。
第5の実施形態の光伝送路にて光波長多重伝送を行なった場合の、パルスの伝搬に伴う波形変化、およびチャープ量の変化を示す図である。
第7の実施形態の光伝送路を示す図である。
第7の実施形態の光伝送路における光パルスの状態を示す図である。
第8の実施形態の光伝送路を示す図である。
第8の実施形態における、時間ジッタの変化量を示す図である。
符号の説明
3・・・・クロック抽出回路
4・・・・光遅延回路
5・・・・EA変調器
22、23・・・入力ポート
26、27・・・入力ポート
24・・・結合導波路領域
28、29、44、45・・・光バンドパスフィルタ
30、46、54・・・受信器
41・・・Y分岐光導波路
60、80、90・・・光ファイバ伝送路
61・・・DSF
62・・・伝送ファイバ
63・・・DCF
81・・・NDF
93・・・可変光減衰器