この発明は、被冷却物の水分を減圧下で蒸発させ、その際の気化潜熱を利用して冷却する真空冷却装置に関するものである。
周知のように、真空冷却装置は、被冷却物を収容した冷却槽を真空吸引し、減圧することによって、飽和蒸気温度を低下させ、被冷却物内の水分を蒸発させることにより、その気化潜熱を利用して被冷却物を冷却するものである。この真空冷却装置は、たとえば、食品業界において、加熱調理された食品を容器に入れて短時間で冷却する場合に使用される(たとえば、特許文献1参照。)。
このような真空冷却装置において、被冷却物を真空冷却する場合、被冷却物の表面と内
部の温度にばらつきがあるため表面のみ冷却して内部まで冷却されないことがある。そのため、被冷却物の表面から突沸が起こり、被冷却物の一部が飛散したり、吹きこぼれたりすることがある。
これらを解消するためには、被冷却物の入った容器の上面に蓋をして、かつ冷却速度を落として冷却することで被冷却物の飛散,吹きこぼれを防止できる。しかしながら、これでは通常よりも冷却時間を要してしまう。また、従来の真空冷却では被冷却物の入った容器の開放面からの水分蒸発が前提であって、容器の開放面を閉じた状態にしてしまうと、真空冷却できないという固定観念があった。
この発明が解決しようとする課題は、冷却槽内での突沸による被冷却物の飛散,吹きこぼれを防止できるとともに、冷却能力を向上することができる真空冷却装置を提供することを目的とするものである。
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、冷却槽と、前記冷却槽内に配置され被冷却物を収容する第一容器と、液体を貯留し、前記第一容器を収容する第二容器と、前記冷却槽内を減圧する減圧手段とを備えた真空冷却装置であって、前記第一容器は、その底面を波状に形成し、前記波状部の一部が前記液体に浸漬された状態で真空冷却されることを特徴としている。
請求項1の発明によれば、突沸による被冷却物の飛散,吹きこぼれを防止することができるとともに、被冷却物を収容した前記第一容器の底面を波状に形成することで、前記第一容器の底面積が増加する。そして、請求項1の発明によれば、被冷却物は表面から冷却されると同時に、前記波状部の下半分は液体に浸かり、液体の蒸発により温度低下した液体により冷却され、前記波状部の上半分は、液体の沸とうにより液体で濡れた状態となり、その液体の蒸発により冷却される。こうして、冷却を受ける底面積は、底面が平面な場合に比べて増加し、冷却能力が向上する。
請求項2に記載の発明は、冷却槽と、前記冷却槽内に配置され被冷却物を収容する第一容器と、液体を貯留し、前記第一容器を収容する第二容器と、前記冷却槽内を減圧する減圧手段とを備えた真空冷却装置であって、前記第一容器は、その底面に伝熱フィンを設け、前記伝熱フィンの一部が前記液体に浸漬された状態で真空冷却されることを特徴としている。
請求項2の発明によれば、突沸による被冷却物の飛散,吹きこぼれを防止することができるとともに、被冷却物を収容した前記第一容器の底面に前記伝熱フィンを設けることで、前記第一容器の底面積が増加する。そして、この請求項2の発明によれば、被冷却物は表面から冷却されると同時に、前記伝熱フィンの下半分は液体に浸かり、液体の蒸発により温度低下した液体により冷却される。前記伝熱フィンの上半分は、液体の沸とうにより液体で濡れた状態となり、その液体の蒸発により冷却される。こうして、冷却を受ける底面積は、底面が平面な場合に比べて増加し、冷却能力が向上する。
この発明によれば、被冷却物を前記第一容器の外周面から液体の蒸発によって間接冷却するので、突沸による被冷却物の飛散,吹きこぼれを防止でき、冷却能力を向上することができる。また、この発明によれば、被冷却物は表面から冷却されると同時に、前記波状部または前記伝熱フィンの下半分は、液体の蒸発により温度低下した液体により冷却され、前記波状部または前記伝熱フィンの上半分は、液体の沸とうにより液体で濡れた状態となり、その液体の蒸発により冷却される。こうして、冷却を受ける底面積は、底面が平面な場合に比べて増加し、冷却能力が向上する。
(実施の形態1)
この発明の実施の形態について説明する。この実施の形態は、本発明の真空冷却方法、すなわち、食品等(以下、「被冷却物」と云う。)を収容した第一容器を冷却槽内に配置し、前記冷却槽内を減圧することにより被冷却物を冷却する真空冷却方法において、前記第一容器の外周を液体と接触状態として、前記冷却槽内を減圧手段により減圧する真空冷却方法を実施する真空冷却装置である。まず、この真空冷却装置について説明する。
前記真空冷却装置は、被冷却物を収容するための冷却槽と、前記冷却槽内に配置され被冷却物を収容する第一容器と、液体を貯留し、前記第一容器の外周面が液体と接触状態となるように配置される第二容器と、前記冷却槽内を減圧する減圧手段とを備えている。
このような構成の前記真空冷却装置の作用について説明する。まず、被冷却物を収容した前記第一容器を、液体を貯留した前記第二容器の中へ配置し、これらを前記冷却槽内に収容する。そして、前記減圧手段を作動させて前記冷却槽内を減圧すると、前記第二容器内の液体が蒸発し、これにより前記第二容器が冷却され、被冷却物が間接的に冷却される。
前記冷却槽は、被冷却物等の出し入れ等が可能であって、被冷却物を真空冷却するための槽である。前記冷却槽には、減圧手段と外気導入手段を備えている。
前記減圧手段は、前記冷却槽を減圧するためのものである。前記減圧手段は、好ましくは、容積型真空ポンプ,液封式真空ポンプ,エジェクタ等で構成される。
前記外気導入手段は、真空冷却後に前記冷却槽内を大気圧に復圧するためのものである。前記外気導入手段は、好ましくは、前記冷却槽に接続された外気導入配管に、フィルタと外気導入弁を設けたものとする。前記フィルタは、前記冷却槽内へ導入する外気中のほこりや雑菌等を除去し、前記外気導入弁は、前記外気導入配管の空気量を調整して冷却の速度および復圧の速度を調整する。真空冷却は、外気導入弁の開度を小さくすることにより急冷が行われ、開度を大きくすると徐冷が行われる。
前記第一容器は、被冷却物を収容するための容器である。前記第一容器の構成について説明する。前記第一容器の大きさは、前記冷却槽へ収容可能な容器にする。前記第一容器は、前記第二容器内に収納された状態で前記冷却槽内に収容される。そのため、前記第一
容器の横断面における縦幅および横幅は、前記第二容器のそれよりも小さくする。前記第一容器の上面は、通常は開放状態であるが、上面に蓋を設けることができ、前記蓋により、閉じた状態にすることができる。ここにおいて閉じた状態とは、密閉または半密閉状態を意味し、半密閉状態とは、前記蓋を少し浮かせて装着した状態や、前記第一容器と前記蓋との間にすき間を形成して、前記蓋に小さな通気孔を設けて前記蓋を装着した状態などをいう。また、前記第一容器の材質は、好ましくは、熱伝導に優れた金属(ステンレス,銅,アルミ等)とすることが望ましい。
前記第一容器の変形例について説明する。前記第一容器は、その底面を波状に形成した波状部を有したものとすることができる。前記波状部は、その一部分(波状部の高さ方向の一部)が前記第二容器内の液体に接触するように構成される。前記第一容器を波状に形成することにより、その内底面に複数本の溝部が形成され、冷却完了後に前記第一容器から被冷却物を取り出すとき残留し易く、残留した場合には、衛生面に問題が生じる。この問題を解決するために、好ましくは、複数本の前記溝部を互いに連通する溝を設ける
。
また、前記第一容器の変形例として、底面を平面状に形成し、前記第一容器の底面に多数の波状または櫛歯状の伝熱フィンを設ける構造とすることができる。この変形例の前記伝熱フィンの波状部または櫛歯状部は、前記第一容器自体の底面を波状に形成した変形例と同様に、その一部が前記第二容器内の液体に浸漬される。
前記第二容器は、液体を貯留するための容器である。前記第二容器の形状について説明する。前記第二容器の大きさは、前記第一容器と同様、前記冷却槽へ収容可能な容器にする。前記第二容器の縦幅および横幅は、前記で説明したように前記第一容器よりも大きくする。また、前記第二容器の高さは、好ましくは、前記第二容器中の液体が前記第一容器内への流入を防ぐため、前記第一容器よりも低くする。また、前記第二容器は、前記冷却槽内に設けられる前記第一容器載置用の棚板自体とすることもできる。また、前記第一容器と前記第二容器とは、好ましくは、着脱自在とするが、両容器を互いに固定することもできる。さらに、前記第二容器の材質は、好ましくは、前記第一容器同様とするが、それ以外に樹脂とすることができる。
前記第二容器内の液体は、前記第一容器の外周面から被冷却物を間接冷却するための液体である。この液体は、好ましくは、最も汎用的で毒性の危険もなく、かつ低コストの観点から水とする。しかしながら、液体としてアルコールを用いることもできる。この場合、低沸点であるため蒸発が速く、液体の減少が速い等の点において、やや課題がある。
以上、説明した実施の形態1において、前記第一容器を開放状態で真空冷却する場合の作用,効果を説明する。まず、前記第一容器内の被冷却物は、容器開放部から水分が蒸発し、この蒸発に伴う蒸発潜熱によって除々に温度を低下させる。同時に、前記第二容器内に貯留されている液体が蒸発し、熱伝導で前記第二容器内の被冷却物が間接的に冷却される。その結果、被冷却物の表面部の水分蒸発のみに比べて冷却能力が大幅に向上する。また、この被冷却物の表面蒸発と底部から液体の蒸発による冷却が行われることで、被冷却物の表面部と内部に温度差が生じず、冷却が均一に進むため、突沸による被冷却物の飛散,吹きこぼれを防ぐことができる。
つぎに、前記第一容器の上面に前記蓋を設けて密閉状態で被冷却物を真空冷却する場合の作用,効果を説明する。この場合、前記第一容器の上面から被冷却物の水分蒸発は起こらない。しかしながら、前記第一容器の外周面に接触した前記第二容器内の液体の蒸発による被冷却物の間接冷却が行われる。そのため、前記第一容器を前記蓋で密閉した状態での真空冷却が可能となり、確実に突沸による被冷却物の飛散,吹きこぼれを防止すること
ができる。
つぎに、前記第一容器の上面に前記蓋を設けて半密閉状態で被冷却物を真空冷却する場合の作用,効果を説明する。この場合、前記第一容器の開放度合いに応じてわずかな被冷却物の水分蒸発が起こる。また、被冷却物の間接冷却の作用は密閉状態と同様である。そのため、冷却能力が向上し、突沸による被冷却物の飛散,吹きこぼれを防止することができる。
さらに、前記第一容器の底面が波状とした開放状態で真空冷却する場合の作用,効果について説明する。被冷却物は表面から冷却されると同時に、前記波状部の下半分は液体に浸かり、液体の蒸発により温度低下した液体により冷却される。前記波状部の上半分は、液体の沸とうにより液体で濡れた状態となり、その液体の蒸発により冷却される。こうして、冷却を受ける底面積は、底面が平面な場合に比べて増加し、冷却能力が向上する。
この底面が波状の前記第一容器を用いて好適なのは、上面からの蒸発が活発に行われ、底面からの冷却が遅い被冷却物の場合である。この被冷却物の場合には、前記第一容器の上面に前記蓋をして真空冷却することにより、上面からの突沸による被冷却物の飛散,吹きこぼれを確実に防止することができる。また、従来のように冷却速度を落とすこと無く、半密閉または密閉状態での真空冷却が可能となる。
具体的には、真空冷却中に対流しがたい粘度の高い被冷却物(スープ,シチュー,あんのような食材)を冷却しようとした場合でも、底面が波状の前記第一容器を用いることで、粘度の高い被冷却物の内部まで短時間で真空冷却することが可能となる。また、食材自体からの水分蒸発量を抑えられるため、被冷却物の風味を損うことなく、歩留まりの高い真空冷却を行うことができる。
(実施の形態2)
前記実施の形態2は、被冷却物を収容する前記第一容器の外周面に、接触状態に設けられ液体を含浸する含浸部材を備えたことを特徴とする。
この実施の形態2において、液体を含浸した前記含浸部材を前記第一容器の外周面に接触状態に設けているので、前記含浸部材の液体が蒸発し、これにより、前記第一容器が冷却され、被冷却物が間接冷却される。
前記含浸部材は、好ましくは、含水性の良いシート状の高分子ゲルや繊維等を使用することが望ましい。前記第一容器は、液体蒸発による容器への冷却を効果的に行うことで、冷却能力を向上することができる。そして、前記第一容器は、好ましくは、冷却槽内に架台を設けて、前記架台の上に配置して収容することが望ましい。前記架台は、前記第一容器の底面の液体の蒸発を促進するためである。前記架台は、前記第一容器の底面に接し、多数の通気孔を形成した台部と、前記第一容器の底面を浮かせる脚部とから構成される。また、前記台部の前記通気孔は、網状の構造として通気させても良い。
以上のように、この実施の形態によれば、真空冷却中に対流しにくい粘度の高い被冷却物(スープ,シチュー,あんのような食材)の入った前記第一容器を開放状態で真空冷却する場合、前記第一容器の上面から被冷却物の水分蒸発による冷却と、前記第一容器の外周面の含浸部材の液体蒸発による被冷却物の間接的冷却とにより、粘度の高い被冷却物であっても冷却能力を向上することができる。
また、粘度の高い被冷却物の入った前記第一容器を前記蓋で閉じて真空冷却することに
より、突沸による被冷却物の飛散,吹きこぼれを確実に防止することができる。
以下、この発明の具体的実施例1を図面に基づいて詳細に説明する。この実施例1は、減圧手段を用いて、食品等(以下、「被冷却物」と云う。)を冷却する真空冷却処理装置に実施される。図1は、この発明の実施例1の対比例1の真空冷却装置1の概略構成を示した縦断面の説明図である。
図1において、前記真空冷却装置1は、2段の棚板2,2が設置された冷却槽3と、前記冷却槽3内に配置され被冷却物4を収容する複数の第一容器5,5,…と、水6を貯留し、前記各第一容器5の外周面が水6と接触状態となるように配置される複数の第二容器7,7,…と、前記冷却槽3内を減圧する減圧手段8と、真空冷却後に冷却槽3内を大気圧に復圧するための外気導入手段9とにより構成されている。
前記冷却槽3は、前記冷却槽3を密閉または開放する開閉扉(図示省略)を備えている。前記減圧手段8は、真空吸引配管に、前記冷却槽3側から、逆止弁,蒸気エゼクタ,熱交換器,液封式真空ポンプ(いずれも図示省略)をこの順に設けた構成としている。前記外気導入手段9は、外気導入配管に、前記冷却槽3側から、フィルタ,外気導入弁(いずれも図示省略)を設けた構成としている。
前記各第一容器5は、被冷却物4を収容しており、前記各第二容器7内に複数収納された状態で前記冷却槽3内に収容されている。前記各第一容器5は、その上面を開放した状態で真空冷却される。また、前記各第一容器5の材質は、ステンレス製を使用している。
前記各第二容器7は、水6が前記各第一容器5を収容した状態で、前記各第二容器7の高さの約半分の水位となるように注水される。そして、前記各第二容器7の横断面における縦幅および横幅は、前記各第一容器5よりも大きく、前記各第二容器7の高さは、前記各第一容器5よりも低い構成である。また、前記各第二容器7の材質は、前記各第一容器5と同様、ステンレス製を使用している。また、前記各第一容器5の側壁と前記各第二容器7の側壁との間および前記第一容器5,5,…同士の側壁との間は、水6の蒸発が効果的に行われるように、適度な間隔を保っている。
前記対比例1の作用について説明する。まず、前記各第二容器7内に前記各第一容器5を収容する。つぎに、前記各第一容器5内に被冷却物4を収容して、前記各第二容器7内に水6を貯留する。このとき、前記各第一容器5の外周面は、水6と接触状態となっている。そして、被冷却物4を収容した前記各第一容器5を水6を貯留した前記各第二容器7内に収容された状態で前記冷却槽3内に入れ、前記開閉扉を閉めて密閉する。つぎに、制御器(図示省略)により、前記外気導入手段9による外気導入を停止または少しずつ外気導入を行いながら、前記減圧手段8を駆動して真空冷却を開始する。前記減圧手段8の駆動により、前記冷却槽3内の圧力は徐々に低下する。
前記各第一容器5の上面が開放状態であるため、前記各第一容器5内の被冷却物4の水分が蒸発し、この蒸発に伴う蒸気潜熱によって、被冷却物4は除々に温度を低下させる。同時に、前記各第二容器7内に貯留されている水6が蒸発して、水6の温度が低下することにより、前記各第一容器5の底面,側面を冷却する。こうして、熱伝導で前記各第一容器5内の被冷却物4が間接的に冷却される。よって、被冷却物4の水分蒸発による冷却と、水6の蒸発による被冷却物4への間接冷却とが行われることで、被冷却物4の冷却が均一に進むため、冷却能力を向上でき、突沸による被冷却物4の飛散,吹きこぼれを防止することができる。
そして、被冷却物4が所定温度まで冷却されると、前記制御器は、前記減圧手段8の運転を停止し、前記外気導入手段9による前記冷却槽3内への外気導入を開始する。前記冷却槽3内が大気圧まで復圧された後に、前記開閉扉を開いて前記冷却槽3内から前記各第一容器5を前記各第二容器7ごと取り出して、真空冷却を完了する。
前記対比例1においては、前記第一容器5を開放状態として被冷却物4を真空冷却するように構成しているが、前記第一容器5を蓋10により密閉状態として被冷却物4を真空冷却するように構成した図2に示す対比例とすることができる。以下に、この発明の対比例2を図示に従い説明する。図2は、この発明の対比例2の容器を概略的に示した縦断面の説明図である。
この対比例2においては、真空冷却装置1の構成は対比例1と同様であるので、説明を省略する。図2に基づいて、前記対比例2の前記第一容器5および前記第二容器7の構成について説明する。前記第一容器5は、前記対比例1の前記第一容器5よりも深さの深い容器であり、その中に被冷却物4を収容している。そして、前記第一容器5は、前記第二容器7内に収容された状態で前記冷却槽3内に収容される。
前記第二容器7は、水6を貯留しており、前記第一容器5を収容した状態で前記冷却槽3内に収容される。この前記第一容器5を収容した状態において、前記第二容器7の高い水位まで水が注水され、真空冷却が行われる。そして、前記第二容器7の横断面における縦幅および横幅は、前記第一容器5よりも大きく、前記第二容器7の高さは、前記第一容器5よりも低い構成である。また、前記第一容器5の側壁と前記第二容器7の側壁との間隔は、数mm〜数十mm程度とする。
前記対比例2の作用について説明する。前記第一容器5の外周面に接触した前記第二容器7内の水6が沸とう蒸発し、これにより前記第一容器5の側壁が冷却される。この冷却により、被冷却物4が間接冷却される。
この対比例2によれば、前記第一容器5内の被冷却物4は、前記第二容器7内の水6の蒸発による間接冷却により、前記第一容器5を前記蓋10による密閉状態での真空冷却が可能となる。さらに、従来の何も施さない密閉容器を用いた真空冷却に比べて、冷却能力が向上する。そして、前記第一容器5に前記蓋10を密閉状態に設けることで、突沸による被冷却物4の飛散,吹きこぼれを防止することができる。
つぎに、この発明の実施例1を以下に説明する。この実施例1は、前記第一容器5の底面を波状に形成して、前記冷却槽3内で冷却する実施例である。図3は、この発明の実施例1の容器を概略的に示した縦断面の説明図である。
この実施例1においても、真空冷却装置1の構成は、前記対比例1と同様であるので、説明を省略する。図3に基づいて、この実施例1の前記第一容器4および前記第二容器7の構成について説明する。前記第一容器4は、容器の底面を波状に形成した波状部11を有している。この実施例1において、前記第一容器5は、その上面を開放した状態で真空冷却されるが、蓋(図示省略)により密閉状態として冷却することもできる。
前記第二容器7は、水6を貯留しており、前記第一容器5を収容した状態で前記冷却槽3内に収容される。前記第二容器7内の水6は、前記第一容器5を収容して、前記第一容器5の前記波状部11の下半分の水位まで注水されている。そして、前記第二容器7の横断面における縦幅および横幅は、前記第一容器5よりも大きく、前記第二容器7の高さは、前記第一容器5よりも低い構成である。また、前記第一容器5の側壁と前記第二容器7の側壁との間は、水6の蒸発が効果的に行われるように、適度な間隔を保っている。
ここで、前記実施例1の作用について説明する。前記第一容器5内の被冷却物4は、開放状態であるため、被冷却物4の表面から水分の蒸発により冷却される。同時に、前記第一容器5の底面は、波状で形成されて、前記波状部11の下半分は前記第二容器7内の水6に浸かるため、水6の蒸発により温度低下することで冷却される。また、前記波状部11の上半分は、水6の真空冷却による沸とうにより、水6で濡れた状態となる。そして、前記波状部11の上半分に付着した水6は、蒸発することで前記第一容器5の側壁を冷却し、間接的に被冷却物4を冷却する。
この実施例1によれば、前記第一容器5の底面が平面な場合の前記実施例1に比べて、前記第一容器5の底面積が大幅に増加していることで、冷却能力が向上する。
また、前記実施例1の変形例である実施例2を図4に基づいて説明する。図4は、この発明の他の実施例2の容器を概略的に示した縦断面の説明図である。この実施例2は、前記第一容器5の底面を平面状に形成し、前記第一容器5の底面には、多数の櫛歯状の伝熱フィン12を設けている。また、前記第一容器5と前記伝熱フィン12は、切り離し可能な構成としているが、接着等により一体的な構成とすることができる。実施例2においては、前記第一容器5自体の底面を波状に形成した前記実施例1と同様に、櫛歯状部の下半分が前記第二容器7内の水6に浸漬されているので、前記実施例1と同様の冷却効果が得られる。
前記実施例1,2において、前記第二容器7は前記冷却槽3内の前記各棚板2自体を前記第二容器7とすることもできて、前記冷却槽3内の省スペース化も考えられる(図示省略)。
さらに、対比例3について説明する。図5は、この発明の対比例3の真空冷却装置1の概略構成を示した縦断面の説明図である。対比例3は、被冷却物4を収容した複数の第一容器5,5,…の外周面に水6を含浸した高分子ゲルからなる冷却シート13,13…を接触させて、冷却槽3内で冷却するものである。
図5において、前記真空冷却装置1は、2段の棚板2,2が設置された前記冷却槽3と、前記各棚板2の上に載置される架台14,14と、前記各架台14の上に載置された被冷却物4を収容した前記各第一容器5と、前記各第一容器5の外周面に接着等により接触状態に装置させた前記各冷却シート13と、前記冷却槽3内を減圧する減圧手段8と、真空冷却後に冷却槽3内を大気圧に復圧するための外気導入手段9とにより構成されている。
前記冷却槽3の構成の説明は、前記対比例1と同様であるため省略する。前記各第一容器5は、水6を含浸可能な前記各冷却シート13が、前記各第一容器5の外周面を覆うように装置されている。前記各第一容器5は、被冷却物4を収容して、前記冷却槽3内に複数収容されている。また、前記各第一容器5は、上面を開放した状態で真空冷却されるが、必要に応じて前記対比例2のように、前記蓋10を装置して真空冷却することができる。
前記各架台14は、前記各冷却シート13が含浸する水6の蒸発を促進させるために、通気性を有する構造に形成されている。具体的には、前記各架台14は、多数の通気孔15をもつ網状の構造の台部16と、前記台部16を支える脚部17とで構成される。また、前記各架台14は、前記台部16に前記各第一容器5を置いて、前記脚部17で前記各第一容器5を底上げしている。
対比例3における構成の前記真空冷却装置1の作用について説明する。まず、前記冷却槽3内の前記各棚板2に前記各架台14を載置する。つぎに、前記各冷却シート13に、水6を含浸させる。前記各第一容器5内に被冷却物4を収容し、前記各第一容器5を前記処理槽3内の前記各架台14の上に載置して、前記冷却槽3を密閉する。この状態で前記実施例1と同様に前記冷却槽3内を減圧して、真空冷却を開始する。
真空冷却が開始されると、前記各第一容器5の上面が開放状態であるため、被冷却物4の水分蒸発が起こり、被冷却物4の冷却が行われる。同時に、前記各第一容器5の外周面は、水6を含浸した前記各冷却シート13により濡れた状態であるため、水6が蒸発することにより、前記各第一容器5の外周壁を通して被冷却物4が効果的に間接冷却される。
対比例3によれば、被冷却物4は、前記各第一容器5の上面から被冷却物4の水分蒸発と、前記各第一容器5の外周面が水蒸発によって冷却されることで、被冷却物4内での温度差を低減した状態で、均一に冷却される。そのため、突沸による被冷却物4の飛散,吹きこぼれを確実に防止することができる。
前記対比例3の作用結果を実験例に基づいて説明する。粘度の高い(粘度=85mPa・s)被冷却物4(例えば、コーンスターチ。初期重量3000g)を前記第一容器5に入れて、70℃から15℃まで徐冷(空気導入量30〜50L/min)をしながら真空冷却した場合、従来の何も施さない容器を用いての冷却時間は、約1時間であった。これに対して、水6(含水量150g)を含浸した前記冷却シート13を接触させた前記各第一容器5を用いて、徐冷をしながら真空冷却した場合、この冷却時間は、25分となり、大幅に冷却時間を短縮することができた。その際、被冷却物4の飛散,吹きこぼれは生じなかった。
この発明の対比例1の真空冷却装置1の概略構成を示した縦断面の説明図である。
この発明の他の対比例2の容器を概略的に示した縦断面の説明図である。
この発明の実施例1の容器を概略的に示した縦断面の説明図である。
この発明の他の実施例2の容器を概略的に示した縦断面の説明図である。
この発明の対比例3の真空冷却装置1の概略構成を示した縦断面の説明図である。
符号の説明
3 冷却槽
4 被冷却物
5 第一容器
6 水(液体)
7 第二容器
8 減圧手段
10 蓋
11 波状部
12 伝熱フィン