(1)第1の実施の形態
本発明の第1の実施の形態について図1を参照しながら説明する。
第1の形態の直流配電システムは、多入力連系電力変換装置9と風力発電機である直流電源33とを備える。
多入力連系電力変換装置9と直流電源33とは多入力連系電力変換装置9の直流電力入力端23を介して接続されている。
また、多入力連系電力変換装置9の交流電力入力端21には電圧が100V(ボルト)の単相商用電源である交流系統2が接続され、多入力連系電力変換装置9の給電端27には家庭等にはりめぐらされる屋内配線20が接続され、屋内配線20には家庭等で使用するテレビ受像機等の電力消費手段18が接続されている。
多入力連系電力変換装置9について更に説明をする。
多入力連系電力変換装置9は、整流手段11と整流電力調整手段12と直流電力調整手段13と制御手段17とよりなり、多入力連系電力変換装置9と外部との接続端である直流電力を取り扱う直流電力入力端23、給電端27および交流電力を取り扱う交流電力入力端21とを有する。
交流電力入力端21を有する整流手段11は整流電力調整手段12に接続され、整流電力調整手段12は給電端27に接続されており、直流電力入力端子23を有する直流電力調整手段は直流電力調整手段13が接続され、直流電力調整手段13もまた整流電力調整手段12と同様に給電端に接続されており、更には、整流手段11と整流電力調整手段12と給電端27と直流電力入力端23と直流電力調整手段13とにはそれぞれ制御手段17が接続されて各種信号を入出力端から出し入れして整流電力調整手段12と直流電力調整手段13との制御を行うように構成されている。
整流手段11、整流電力調整手段12、直流電力調整手段13、制御手段17の詳細につき以下に説明をする。
整流手段11は、図2に示すように、交流電力入力端21aと交流電力入力端21bの2個を一組とする交流電力入力端子21が半導体整流素子をいわゆるブリッジ構成にして交流電力の正と負の極性の全周期の電力を整流して用いるための全波整流回路の入力側に接続され、全波整流回路の出力側には全波整流して得られる電力の量が脈動する脈動電力を直流電力に変換するための平滑コンデンサが接続されるものである。
整流電力調整手段12および直流電力調整手段13は、図13に示すように、入力側と出力側と制御端を備えるステップアップ・スイッチングレギュレータであり、制御端は、信号のレベル変換を行うインターフェイスを介してトランジスタやMOSFETで構成されるスイッチを制御するPWM信号を入力されるように設けられている。
制御手段17はDSP(Digital Signal Processor)で構成され、積和演算および論理演算を行う図示しない演算部とデータやプログラムを保存する図示しないメモリ部とA・D変換器を備える図示しない入力部とPWM(Pulse Width Modulation)信号を出力する図示しない出力部とを備えている。
制御手段17の入力部は整流手段11の出力側に接続されて整流手段11の出力側の電圧V11oに応じた信号、すなわち、整流電力調整手段12の入力電圧V12iに応じた信号であるS31Vおよび出力側から流れる電流I11oに応じた信号、すなわち整流電力調整手段12の入力電流I12iに応じた信号であるS31iが入力されるようになされ、また、制御手段17の入力部は給電端27に接続されて給電端27の給電端27の電圧の値V27に応じた信号S37が入力されるようになされ、更に制御手段17の入力部は風力発電機等に設けられる温度センサに接続されて温度センサから得られる温度に応じた信号S38が入力されるようになされ、更にまた制御手段17の入力部は、直流電力入力端23の電圧に応じた信号、すなわち、直流電力調整手段13の入力電圧V13iに応じた信号S39および直流電力入力端23に流れ込む電流に応じた信号、すなわち、直流電力調整手段13の入力電流I13iに応じた信号S40が入力されるようになされている。
ここで、整流手段11の出力側から得られる電圧V11oおよび電流I11o、給電端27の電圧V27、直流電源33の出力電圧、すなわち、直流電力調整手段13の入力電圧V13iおよび直流電源33の出力電流、すなわち、直流電力調整手段13の入力電流I13i並びに温度センサから得られる信号の大きさが、制御手段17の入力部に設けられるA・D変換器の入力範囲にない場合には、V11oに応じた信号S31V、電流I11oに応じた信号S31i、給電端27の電圧の値V27に応じた信号S37、入力電圧V13iに応じた信号S39、入力電流I13iに応じた信号S40、温度に応じた信号S38は、これらの信号を分圧し、または分流して、A・D変換器が取り扱い可能である範囲内の大きさの信号となされている。
また、制御手段17の出力部は整流電力調整手段12の制御端および直流電力調整手段13の制御端に接続され、整流電力調整手段12の制御端には整流電力調整手段制御信号S32が供給され、直流電力調整手段13の制御端には直流電力調整手段制御信号S33が供給されるようになされている。
(第1の実施の形態の作用)
次に、第1の実施の形態の直流電力配電システムの作用について各手段毎に説明をする。
1)整流手段11について
交流電源系統2より入力される交流電力は整流手段11によって直流電力に変換されるが、交流電力入力端21aと交流電力入力端21bとの間に印可される単相交流電圧V11iの波形を図3(A)に、整流回路の出力側の電圧V11oの波形を図3(B)に、交流電流I11iの波形を図3(C)に示す。
ここで、半導体素子の順方向電圧損失は小さく、スイッチング損失も小さいので、整流手段11における電力損失は無視でき、交流電源系統2から入力される電力の量と整流手段11から出力される電力の量は等しいと考えることができる。
また、整流手段11は一方向にしか電流を流さないので、整流手段11の出力側から入力側へ電力が通過することはなく、直流電源33からの電力や電力消費手段18で発生する逆起電力が交流電源系統2に送り返されることを理由とする交流電源系統2における波形の歪みや力率の悪化は生じない。
しかしながら、このように整流手段11が、平滑用のコンデンサを含む場合には、図3(C)に示すように、交流電圧波形の最大振幅付近でのみ整流手段11への入力電流I11iが流れるので、電流I11iは多くの高調波を含み、このことを理由として力率は悪化することとなる。
2)整流電力調整手段12について
整流手段11からの電力は整流電力調整手段12を経て給電端27に供給されるが、整流電力調整手段12でどのように電力の調整が行われるかを以下に説明する。
まず、整流電力調整手段12の入力インピーダンスR12iについて説明する。
入力インピーダンスR12iは、整流電流調整手段12の入力電圧V12iと入力側に流れ込む電流I12iとにより、[式1]で示される。
R12i=V12i/I12i ・・・[式1]
整流電力調整手段12に用いられるステップアップ・スイッチングレギュレータは原理的に無損失であるので、出力側から取り出される電力の量は入力側から入力される電力の量と等しくなり、整流電力調整手段12を電力は通過するが消費されることはなく、 [式2]に示す関係式が成立する。
P11=P12=V12i・I12i=V12o・I12o=V12i/(R12i・R12i) ・・・[式2]
ここで、整流手段11での電力損失も無視できるので整流手段11を通過する電力の量P11と整流電力調整手段12を通過する電力の量P12の大きさは等しいと考えることができ、また、交流電源系統2のインピーダンスは通常では零と考えられる程に小さく、平滑コンデンサが、整流後の電圧の脈動を抑え、電力消費手段18における電力消費の変動を抑えることができる十分な静電容量を有しているので、[式2]に示すV12iの値は略一定の値となる。
そこで、[式2]に示すようにR12iの値を調整すれば、整流電力調整手段12を通過する電力の量P12、すなわち、整流手段11を通過する電力の量P11を調整できることになる。
すなわち、ステップアップ・スイッチングレギュレータを用いた整流電力調整手段12は入力インピーダンスR12iを変化させることにより通過する電力の量を可変とするものである。
また、ステップアップ・スイッチングレギュレータは給電端27にダイオードを介して接続されているので、ダイオードの作用により給電端27の側から整流手段11の出力側へ電力が流れることもなく、整流電力調整手段12の制御端にONデューティ零のPWM信号を与えると、給電端27の電圧が整流手段11の出力側の電圧より高いことから、実質的に給電端27と整流手段11の出力側との接続を断ったのと同様に作用する。
ここにおいて、入力インピーダンスR12iの大きさは、制御手段17からの、整流電力調整手段制御信号S32に応じて調整することができる。
すなわち、PWM信号である整流電力調整手段制御信号S32のスイッチをONとする時間と全周期との比(以下、「ONデューティ」と省略する。)の増加に従って整流電力調整手段12から給電端27へと供給される電力の量P12は単調に増加するものとなる。
なお、整流電力調整手段12は出力側から入力側に電力を伝送する機能がないので、PWM変調器への入力信号が負値を取る場合にはPWM信号のONデューティは零となるようになされている。
3)直流電力調整手段13について
直流電力調整手段13の作用は、直流電源33から給電端27へ供給される電力の量、すなわち、直流電力調整手段13を通過する電力の量P13を調整するものであり、その動作原理を以下に説明する。
直流電力調整手段13の入力インピーダンスR13iは、入力電圧V13iと入力側に流れ込む電流I13iとにより、[式3]で示される。
R13i= V13i/I13i ・・・[式3]
直流電力調整手段13に用いられるステップアップ・スイッチングレギュレータは原理的に無損失であるので、出力側から取り出される電力の量は入力側から入力される電力の量と等しくなり、直流電力調整手段13を電力は通過するが消費されることはなく、[式4]に示す関係式が成立する。
P13=V13i・I13i=V13o・I13o=V13i/(R13i・R13i) ・・・[式4]
ここで、[式3]で示す入力インピーダンスR13iは、直流電源33の負荷となるので、入力インピーダンスR13iの値を調整すれば、直流電力調整手段13を通過する電力の量、すなわち、直流電源から供給される電力の量、P13を調整できることになる。
すなわち、ステップアップ・スイッチングレギュレータを用いた直流電力調整手段13は入力インピーダンスR13iを変化させることにより通過する電力の量を可変とするものである。
また、ステップアップ・スイッチングレギュレータは給電端27にダイオードを介して接続されているので、ダイオードの作用により給電端27の側から直流電源33の側へ電力が流れることもなく、直流電力調整手段13の制御端にONデューティ零のPWM信号を与えると、給電端27の電圧が直流電源33の電圧より高いことから、実質的に給電端27と直流電源33との接続を断ったのと同様に作用する。
ここにおいて、入力インピーダンスR13iの大きさは、制御手段17からの、直流電力調整手段制御信号S33に応じて調整することができるものであり、PWM信号である直流電力調整手段制御信号S33のONデューティを小さくして、スイッチのON時間の割合を小さくすると、入力インピーダンスR13iは大きくなって電力の量P13の大きさは小さくなり、直流電力調整手段制御信号S33のONデューティを大きくして、スイッチのON時間の割合を大きくすると、入力インピーダンスR13iは小さくなって電力の量P13の大きさは大きくなるものである。しかしながら、電力調整手段13に接続される直流電源の内部インピーダンスが無視できない大きさである場合には、入力インピーダンスR13iを小さくしても電力の量P13が大きくならない場合もあるが、これについては後述する。
なお、整流電力調整手段12は出力側から入力側に電力を伝送する機能がないので、PWM変調器への入力信号が負値を取る場合にはPWM信号のONデューティは零となるようになされている。
4)制御手段17について
第1の実施の形態において、制御手段17が整流電力調整手段12および直流電力調整手段13をどのように制御するかは、どのような信号に基づき、どのような基準で制御するかという制御則により異なるものとなるので、以下に制御手段17の作用を整流電力調整手段12の作用と併せて制御則1ないし制御則4に基づき説明し、また、制御手段17の作用を直流電力調整手段13の作用と併せて制御則5ないし制御則7に基づき説明する。
(i)第1の制御則 第1の制御則は、力率の改善を目的としない簡易な制御系に用いるのに適しており、整流電力制御手段12が給電端27の電圧を目標電圧の値Vrefに保つように制御されるものである。
DSPで第1の制御則に基づく制御を行う場合について図4のフローチャートに沿って更に詳細に説明する。
まず、給電端27の電圧の値V27に応じた信号S37をA・D変換器に取り込む。
次に、給電端27の電圧の値V27に応じた信号S37の値を電圧値V27に変換し、給電端27の目標電圧の値Vrefの値から電圧V27の値を差し引いた値(以下、簡単のため、「Vref−V27」と省略する。)である誤差信号を得る演算を行う。
次に、誤差信号に位相補償定数Kp12dとゲイン定数Kg12dを掛ける演算を行う。
ここで、位相補償定数Kp12dは、制御系の応答を最適化するためのものであって定常偏差を圧縮するための低域補償と即応性を高めるための高域補償を行うものであり、DSP内部でソフトウエアによりデジタルフィルタを構成することにより実現でき、ゲイン定数Kg12dは制御系の開ループゲインを定めるものであり、DSP内部の掛け算により実現できる。
次に、DSPに設けられたPWM変調器に位相補償定数Kp12dとゲイン定数Kg12dを掛けた誤差信号であるSout1を入力して、PWM変調された整流電力調整手段制御信S32を出力する。
ここで、PWM変調器が出力するPWM信号の周期はソフトウエアにより初期設定が可能であり、可聴周波数帯を避けて50μSec(20kHz)から2μSec (500kHz)の間の値が選択されており、また、PWM変調器のメモリに一度データを格納すれば、次に変調器のメモリのデータを更新するまで同じ値のPWM信号を出力し続けるものである。
最後に、再び演算の最初のステップに戻り、A・D変換器が所定の時間毎に発行される割り込み信号により動作するのを待機する。
ここで、A・D変換器が割り込み信号により動作する所定の時間は、自然環境の変化により直流電源33の出力電力の量P13が変化する時間、電力消費手段18における消費電力の量P18が変化してコンデンサにより給電端27の電圧を保持できないようになる時間のいずれよりも短い時間であり、数十msec(ミリ秒)から数sec(秒)の間の値に設定されている。
以上は制御手段17がDSPである場合を説明したが、制御手段17はアナログ回路を用いても良く、制御部17がアナログ回路により構成される場合においては、このような、フィードバック制御は、[式5]に従うものである。
(Vref−V27)・Kg12a・Kp12a =S32 ・・・[式5]
[式5]は図5に示すブロック図のハードウエアで実現でき、[式5]の演算は、アナログ回路方式の場合には、時間的に連続して途切れることなく行われる。ここで、S32は、直流電力調整手段の制御端子に入力するONデューティが変化するPWM信号の信号レベルであり、また、Kp12aはDSPで行う位相補償と同様に低域補償と高域補償を行うものとし、Kp12aの伝達関数は、[式6]で示されるものであり、ω212>ω112である。
Kp12a=(S+ω212)/(S+ω112) ・・・[式6]
また、以上の処理はアナログ回路に限らず、アナログ信号であるV27をA・D変換器によりデジタル信号に変換し、その後の処理をデジタル回路により実現することもできる。
すなわち、第1の制御則によれば、整流電力調整手段12を通過する電力の量P12を調整して給電端27に所定の電圧を得ることができるものである。
(ii)第2の制御則 第1の制御則においては、整流手段11に入力される電圧V11iと整流手段11に流れる電流I11iとは特に関係づけられない状態で整流電力調整手段12は動作して給電端27の電圧を所定の値に保つものである。
しかしながら、このような状態で整流電力調整手段12が動作すると、上述のように交流入力電流I11iは、高調波成分を含むために力率が悪く、交流電力系統2に無効電力を流してしまうこととなる。
そこで、第2の制御則は、給電端27に所定の電圧を得ると同時に力率を略1にして、無効電力の発生がないように制御するものである。
このような制御を行うためには、まず、整流手段11には平滑コンデンサを設けないか、設けるとしてもノイズを取る程度であって電圧を平滑する作用のない小さな値として、図3(C)に示すような突入電流が流れないようにする。
その替わりとして、整流電力調整手段12を構成する図13に示すステップアップ・スイッチングレギュレータのコンデンサの容量を大きくして全波整流の周期の電圧の脈動および電力消費手段18における消費電力の変動を十分に吸収可能となるようにする。
このようにすれば、整流手段11に平滑手段を用いないので、整流手段11の出力側の電圧V11o、すなわち、整流電力調整手段11の入力側の電圧V12i、の波形は図7(A)に示すように整流手段11の入力電圧波形V11iの絶対値を取ったものになる。
DSPで第2の制御則に基づき制御を行う場合について図6のフローチャートに従って詳細に説明する。
まず、給電端27の電圧の値V27に応じた信号S37、電流I11oに応じた信号S31iおよびV11oに応じた信号S31Vを所定の割り込み時間毎にA・D変換器を介してDSPに取り込む。
ここで、交流電源系統2からの入力電圧V11iと入力電流I11iのように正負に変化する交流信号ではなく、これらの絶対値信号である電流I11oに応じた信号S31iおよびV11oに応じた信号S31Vを用いるのは、A・D変換器が一般に正側の電圧のみしか受け付けないことと、正負に信号が変化すると、極性に応じてフィードバック制御とフィードフォワード制御が交互に繰り返される為にこれを考慮した複雑な制御演算を行わなければならないことから、これを避けて演算処理を簡単にするためである。
次に、給電端27の電圧の値V27に応じた信号S37からV27、V11oに応じた信号S31VからV11oすなわちV12i、電流I11oに応じた信号S31iからI11oすなわちI12i、の各々の値を求める演算を行った後、目標電圧の値Vrefの値からV27の値を差し引き誤差信号を得る演算を行う。
次に、誤差信号に位相補償定数Kpldとゲイン定数Kgldとを掛ける。
ここで、位相補償定数Kpldは全波整流の周期より長い周期の信号のみを通過させる低域濾波特性を有するものであり、このように、誤差信号を低域濾波器に通過させた低域誤差信号を用いることにより、制御系が交流電源の周期では応答することがなくなり、電圧と電流とが相似形を保つ制御が可能となるものである。
次に、低域誤差信号と電圧V12iの値とゲイン定数Kgldとを掛ける演算を行う。
次に、その演算結果より電流I12iの値を引き算する。
次に、この引き算された信号に位相補償定数Kp12dとゲイン定数Kg12dを掛ける演算を行う。
ここで、位相補償定数Kp12dは、制御系の応答を最適化するためのものであり、定常偏差を圧縮するための低域補償と即応性を高めるための高域補償を行うものであり、ゲイン定数Kg12dは制御系の開ループゲインを定めるものである。
次に、DSPに設けられたPWM変調器に位相補償定数Kp12dとゲイン定数Kg12dが掛けられた信号であるSout2を入力して、PWM変調された整流電力調整手段制御信S32を出力する。
最後に、再び演算の最初のステップに戻り、A・D変換器が所定の時間毎に発行される割り込み信号により動作するのを待機する。
ここで、A・D変換器が割り込み信号により動作する所定の時間とは、全波整流した波形の周期よりも短い時間であり、例えば、数十μsec(マイクロ秒)から数百μsec(マイクロ秒)の間である。
このような第2の制御則により制御を行えば、図7(A)に示すように、Vref−V27の値が大きい場合、すなわち給電端27の電圧が大きく低下するときには、I12i(a)と図中で示すように、大きな電流が流れ、Vref−V27の値がより小さい場合にはI12i(b)と図中で示すように、より小さな電流が流れて、給電端27の電圧を所定の値に維持する制御が行われる。
このとき、図7(B)に示すように、給電端27の電圧が大きく低下するときには、交流入力電流I11iの大きさは、I11i(a)と図中で示すように、大きな電流が流れ、Vref−V27の値がより小さい場合にはI11i(b)と図中で示すように、より小さな電流が流れて、給電端27の電圧を所定の値に維持しながら、交流電力系統2の電圧V11iと交流電力系統2から直流配電システムに流れ込む電流I11iとは、相似形となるので両者の位相差φは零であり、Cosφ(コサインφ)で定義される力率の値は1となる。
なお、自然環境の変化により直流電源33の出力電力の量P13が変化する時間および電力消費手段18における消費電力の量P18が変化して給電端27に設けられる平滑コンデンサの両端の電圧が変化する時間は、全波整流波形の周期より十分に大きい数百mSec(ミリ秒)から数Sec(秒)単位であるので、制御系のループ内に低域濾波特性の位相補償Kpldを施したとしても、制御系はこのような給電端27の電圧変化には応答が可能であって所定の電圧を維持できるものである。
第2の制御則はアナログ回路方式でも実現でき、制御部17がアナログ回路により構成される場合においては、このような、フィードバック制御は、[式7]に従うものである。
(((Vref−V27)・ Kpla・ Kgla)・V12i −I12i)・ Kp12a・ Kg12a=S32 ・・・[式7]
[式7]の制御演算は、図8に示すブロック図で実現され、アナログ回路方式の場合には、時間的に連続して途切れることなく行われる。
ここで、Kplaは位相補償定数であり、伝達関数は、[式8]で示される100 Hz以下の低域濾波特性を示すものである。
Kpla=/(S+ωl) ・・・[式8]
また、デジタル回路で実現する場合には、給電端27の電圧の値V27に応じた信号S37、電流I11oに応じた信号S31iおよび電圧V11oに応じた信号S31VをA・D変換器を介してデジタル信号として、その後の処理をデジタル回路で行えば良いものである。
すなわち、第2の制御則によれば、整流電力調整手段12を通過する電力の量P12を調整して、交流電力系統からの入力電圧波形と入力電流波形とを相似形となして略1となる力率を実現しながら、同時に給電端27の電圧を所定の値に維持することができるものである。
(iii)第3の制御則
第3の制御則は、力率の改善を目的としない簡易な制御系に用いるのに適しており、整流電力調整手段12は予め定める所定の電力の量を伝送するものである。
DSPで実現するためのフローチャート、ハードウエアで実現するためのブロック図は省くが、演算則は[式9]に基づく。
(P12ref−V12i ・ I12i)・ Kp12・ Kg12=S32 ・・・[式9]
[式9]に示す演算は、目標値である所定の電力の量P12refから瞬時の電力の量P12、すなわち、電圧V12i と電流 I12iとの積の値を引き、その結果に位相補償とゲイン補償を施した値であるSout3をPWM変調器への入力信号とし、PWM変調器で変調して整流電力調整手段制御信号S32を得るものである。
ここで、位相補償定数Kp12およびはゲイン定数Kg12はDSPによるソフトウエアやアナログ回路やデジタル回路で設定されるものである。
すなわち、第3の制御則によれば、整流調整手段12を通過する電力の量P12は、所定の量P12refと等しくなるように制御されるものである。
(iv)第4の制御則
第4の制御則は、力率の改善を目的とする制御系に用いるのに適しており、整流電力調整手段12は予め定める所定の電力の量P12refを交流電圧V11iの波形と交流入力電流I11iの波形とを相似形に保つようにしながら伝送するものである。
DSPで実現するためのフローチャート、ハードウエアで実現するためのブロック図は省くが、演算則は[式10]に基づくものである。
((P12ref−V12i・I12i)・ Kpl・ Kgl・V12i −I12i)・ Kp12a・ Kg12a=S32
・・・[式10]
[式10]に示す演算は、目標値である所定の電力の量P12refから瞬時の電力の量P12、すなわち、V12i ・ I12iの値を引き、その結果の低域成分にゲインと整流電力調整手段12の入力電圧の値V12iとを掛けた後に整流電力調整手段12の入力電流の値I12iを引き、その結果に位相補償とゲイン補償を施した値であるSout4をPWM変調器への入力信号とし、PWM変調器で変調して整流電力調整手段制御信号S32を得て制御を行うものである。
ここで、位相補償定数Kpl、Kp12およびゲイン定数Kgl、Kg12はDSPによるソフトウエアやアナログ回路やデジタル回路で設定されるものであり、Kglは全波整流の周波数(関東では100Hz、関西では120Hz)以下の周波数しか通過させないので、電圧V12iの波形と電流I12iの波形とは相似形となるものである。
すなわち、第4の制御則によれば、力率を略1に保ちながら、整流調整手段12を通過する電力の量P12は、所定の量P12refと等しくなるように制御されるものである。
(v)第5の制御則
第5の制御則は、直流電力調整手段13を調整して、直流電源33から可能な限り大きな電力の量を取り出すものである。
まず、直流電源33から取り出す電力の量P13をどのようにして最大にするかにつき説明する。
入力インピーダンスR13iを小さくすると、[式4]に示す電力の量P13の値は大きくなるが、更に入力インピーダンスR13iを小さくすると、ある値を限界として、こんどは電力の量P13の値は小さくなってしまう。
その理由は、直流電源33は内部インピーダンスR33を有しており、内部インピーダンスで発電電力の一部は損失され、[式4]に示す電圧V13iの値も小さくなるからである。
電力の量P13が最大となる電力の量を最大有能電力と称するが、電力の量P13が最大となる条件は、[式11]で表される。
R33=R13i ・・・[式11]
なお、内部インピーダンスR33が複素数の場合には、最大有能電力を取り出すための入力インピーダンスR13iの値は、共役複素数となることは公知の事実である。
従って、直流電源33から最大電力を取り出すことを目的として動作させる場合には、直流電源の内部インピーダンスR33を知る必要がある。
直流電源の内部インピーダンスR33の検知は、制御手段17を構成するDSPにより図9に示すフローチャートに従って行うことができる。
まず、流電力調整手段制御信号S33のONデューティを零としPWM変調器に出力する。
次に、直流電力入力端23からの電力の量P13を零とした場合の直流電力入力端23の電圧の値V13iopenに応じた信号S39をA・D変換器を介して取りこむ。
次に、直流電力調整手段制御信号S33のONデューティを任意の所定の値に設定してPWM変調器に出力する。
次に、その時の、直流電力入力端23の電圧の値V13iに応じた信号S39と直流電力入力端23からの電流の値I13iに応じた信号S40とをA・D変換器を介して取りこむ。
最後に、DSPの内部で、V13iopen、V13i、I13iの値を求めた後、 [式12]に示す演算を行い内部インピーダンスR33の値を求める。
R33=(V13iopen−V13i)/I13i ・・・[式12]
内部インピーダンスR33の値が決定したので、次に、直流電力調整手段13の入力インピーダンスR13iを内部インピーダンスR33にどのようにして合わせるかについて図10のフローチャートに沿って説明する。
まず、直流電力入力端23の電圧の値V13iに応じた信号S39と直流電力入力端23からの電流の値I13iに応じた信号S40とをA・D変換器を介して順次取りこみ、 [式3]の計算式に基づき、入力インピーダンスR13iを計算する。
次に、R33−R13iの差を計算して誤差信号を得る。
次に、誤差信号に位相補償定数Kp13dとKg13dとを掛ける。
ここで、位相補償定数Kp13dとKg13dとは、制御系を最適化するためのもので、DSPでデジタルフィルタを構成することにより実現でき、位相補償定数Kp13dは、低域ゲインを持上げて定常偏差を圧縮するための低域補償と、高域での位相遅れを回復して応答特性を改善する高域補償からなるものであり、ゲイン定数Kg13dは、制御系の開ループゲインを定めるものであり、同様にDSPで設定するものである。
次に、DSPに設けられたPWM変調器に掛け算の結果の信号であるSout5を入れ、PWM信号を出力する。
最後に、再び最初のステップに戻り、A・D変換器に所定の時間毎に割り込み信号が発行されるのを待機する。
ここで、割り込み信号が発行される所定の時間とは、自然環境の変化により直流電源33の出力電力が変化する時間または電力消費手段18に供給される電力の量P18の変化量が大きなってコンデンサで一定の電圧を保持できなくなる時間のいずれよりも短い時間であって数十msec(ミリ秒)から数sec(秒)の間の値に設定されている。
また、内部インピーダンスR33は、初期設定により固定値とするか、もしくは、所定の時間毎に、図9のフローチャートで示される演算より求める更新するものとする。
ここで、所定の時間とは、内部インピーダンスの変化が生じる時間であり、例えば、数時間から数日の時間である。
一方、アナログ回路方式では、図11に示すフィードバック制御系を構成することにより第5の制御則に基づく直流電力調整手段13の制御が実現できる。
この場合の制御則は、[式13]に示すようになる。
(R33−V13i/I13i)・Kg13a・Kp13a=S33 ・・・ [式13]
ここで、S33は、直流電力調整手段13の制御端子に入力するONデューティが変化するPWM信号の信号レベルであり、またKp13aは位相補償定数であり、伝達関数は、[式14]で示されるものであり、ω213>ω113である。
Kp13a=(S+ω213)/(S+ω113) ・・・[式14]
また、デジタルのハードウエア方式では、A・D変換器を前置することにより、その後の演算をデジタル処理することにより目的を達するフィードバック系を実現することができる。
すなわち、第5の制御則に基づく制御系は、直流電源調整手段13を調整して直流電源33の内部抵抗と直流電力調整手段13の内部インピーダンスとが等しくなるように働くので直流電源33から最大有能電力を取り出すことができるものである。
(vi)第6の制御則
第5の制御則では、最大有能電力を直流電源33から取り出すものであったが、最大有能電力を取り出す前に、風力発電機の巻線温度が上昇して機器が破壊に至る場合もある。
このような場合には、風力発電機の巻線に温度センサを設けて、温度センサの温度に応じた信号S38が所定の値に達したら、直流電源33からの電力の量P13の量を減じて風力発電機の巻線の温度上昇を所定の範囲とする制御を行うことができる。
DSPで制御する場合には、以下の順序で処理を行う。
まず、温度センサの温度に応じた信号S38をA・D変換器を介してDSPに取り込む。
次に、温度に応じた信号S38から温度Θに変換する演算を行う。
次に、Θref−Θの演算を行う。
ここで、Θrefは温度の目標値である。
次に、誤差信号に位相補償定数Kp13dとゲイン定数Kg13dと掛ける演算を行う。
次に、PWM変調器にその演算結果であるSout6を送る。
最後に、最初のステップに戻り、A・D変換器に割り込み信号が発行されるのを待つ。
以上により第6の制御則は実現される。
また、A・D変換器の割り込み時間は、風力発電機の巻線温度の変化が生じる時間より短い時間であり、例えば、数sec(秒)から数十min(分)の間である。
一方、アナログ回路方式においては、第2の制御則は図12のブロック図で示す構成で実現され、制御系の演算則は[式15]で示される。
(Θref−Θ)・Kg13a・Kp13a=S33 ・・・[式15]
Kp13aは位相補償定数であり、Kg13aはゲイン定数であり、アナログからPWM変換のゲインを含むものである。
なお、第6の制御則における目標値は、所定の温度Θrefに限らず、風力発電機の所定の回転数ωref等、自由に定め得るものである。
すなわち、第6の制御則に基づく制御系は、直流電源調整手段13を調整して直流電源33の動作を所定の状態に維持しながら電力を取り出すことができるものである。
(vii)第7の制御則
第7の制御則では、直流電力調整手段13は給電端27の電圧V27が目標電圧の値Vrefとなるように制御されるものである。
DSPで実現するためのフローチャート、ハードウエアで実現するためのブロック図は省くが、演算則は [式16]に基づくものである。
(Vref−V27)・Kg13・Kp13=S33 ・・・[式16]
[式16]に示す演算は、目標電圧の値Vrefから給電端27の電圧を差し引き、その結果に位相補償とゲイン補償を施した値であるSout7をPWM変調器への入力信号とし、PWM変調器で変調して直流電力調整手段制御信号S33を得て制御を行うものである。
ここで、位相補償定数Kp13およびゲイン定数Kg13はDSPによるソフトウエアやアナログ回路やデジタル回路で設定されるものである。
すなわち第7の制御則に基づく制御は、直流電源調整手段13を調整して給電端27の電圧の値を目標電圧の値Vrefに保つものである。
以上の第1ないし第7の制御則の組み合わせにより第1の実施の形態においては、整流電力調整手段12および直流電力調整手段13が制御手段17により制御され、整流手段11から給電端27に供給される電力の量P12と直流電源33から給電端27に供給される電力の量P13とを所定の割合となるようにして、給電端27の電圧を所定の電圧に保つことができるものである。
電力消費手段18に供給される電力の量P18は[式17]で表される。
P18=P11+P13=P12+P13 ・・・[式17]
給電端27の電圧を所定の電圧に保つ制御を行うもっとも簡単な組み合わせは、整流電力調整手段12または直流電力調整手段13を制御する制御則のいずれかが給電端27の電圧を目標電圧の値Vrefに合わせるようにする制御則を用いるものである。
すなわち、整流電力調整手段12が第1の制御則により制御され、直流電力調整手段13が第5の制御則により制御される場合には、直流電源33から最大有能電力に対応する電力の量P13を取りだし、交流電力系統2からの電力の量P12の割合を調整して給電端27の電圧を所定の電圧のV27に制御できるものである。
また、整流電力調整手段12が第1の制御則により制御され、直流電力調整手段13が第6の制御則により制御される場合には、直流電源33から所定の動作状態を維持する電力の量P13を取りだし、交流電力系統2からの電力の量P12の割合を調整して給電端27の電圧を所定の電圧のV27に制御できるものである。
また、整流電力調整手段12が第2の制御則により制御され、直流電力調整手段13が第5の制御則により制御される場合には、力率が略1の条件下で、直流電源33から最大有能電力の量P13を取りだし、交流電力系統2からの電力の量P12の割合を調整して給電端27の電圧を所定の電圧のV27に制御できるものである。
また、整流電力調整手段12が第2の制御則により制御され、直流電力調整手段13が第6の制御則により制御される場合には、力率が略1の条件下で、直流電源33から所定の動作状態を維持する電力の量P13を取りだし、交流電力系統2からの電力の量P12の割合を調整して給電端27の電圧を所定の電圧のV27に制御できるものである。
また、整流電力調整手段12が第3の制御則により制御され、直流電力調整手段13が第7の制御則により制御される場合には、交流電力系統2から所定の電力の量P12を取り出て、直流電源33からの電力の量P13の割合を調整して給電端27の電圧を所定の電圧のV27に制御できるものである。
また、整流電力調整手段12が第4の制御則により制御され、直流電力調整手段13が第7の制御則により制御される場合には、力率が略1の条件下で、交流電力系統2から所定の電力の量P12を取り出て、直流電源33からの電力の量P13の割合を調整して給電端27の電圧を目標電圧の値Vrefに維持するように制御できるものである。
更に、整流電力調整手段12および直流電力調整手段13を制御する制御則の両方が給電端27の電圧を目標電圧の値Vrefに合わせるようにする制御則を用いても給電端27の電圧を目標電圧の値Vrefに維持することができるので、整流電力調整手段12が第1の制御則により制御され、直流電力調整手段13が第7の制御則により制御されても良く、また、整流電力調整手段12が第2の制御則により制御され、直流電力調整手段13が第7の制御則により制御されても良いものである。
更にまた、整流電力調整手段12が、第1ないし第4の制御則により得られる制御信号Sout1ないしSout4の関数である信号Sout12をPWM変調の信号として制御される[式18]に示すようなものであり、直流電力調整手段13が、第5ないし第7の制御則により得られる制御信号Sout5ないしSout7の関数である信号Sout13をPWM変調の信号として制御され[式19]に示すようなものであっても良いものである。
Sout12=F(Sout1、Sout2、Sout3、Sout4) ・・・[式18]
Sout13=F(Sout5、Sout6、Sout7) ・・・[式19]
[式18]、[式19]で示される一般式のうち、最も簡単なのは、Sout1ないしSout4およびSout5ないしSout7を線形結合するもので、[式20]および[式21]で表されるものであり、KIないしK7は重みづけ係数である。
Sout12=K1・Sout1+K2・Sout2+K3・Sout3+K4・Sout4 ・・・[式20]
Sout13=K5・Sout5+K6・Sout6+K7・Sout7 ・・・ [式21]
ここにおいて、K1ないしK7の重みづけ係数は、零も含む正値であり、重みづけ係数の値が大きい程、制御に占める影響が大きくなるが、K1、K2、K7のいずれかが零でないことが給電端27を所定の電圧に保つための条件となる。
(第1の実施の形態の変形例)
上述した第1の実施の形態の直流電力配電システムは上述のものに限られず、以下に述べる種々の変形例が可能である。
直流電源33は、風力発電機に限らず、小型水力発電機、太陽光発電機、バイオマス発電、燃料電池、等の自然エネルギーを利用したものであっても良く、また、エンジン発電機、電池等の自然エネルギーを利用しないものであっても良い。
また、第1の実施の形態の多入力連系電力変換装置9は、整流手段11および整流電力調整手段12を、複数個設けるものであっても良く、例えば、電圧の異なる複数の交流電力系統2が多入力連系電力変換装置9に接続される場合には、交流電力系統2の数に対応した数の整流手段11および整流電力調整手段12を設けるものである。
また、直流電源33の個数は1個に限らず複数個備えても良く、直流電源33を複数個備える場合には、直流電力調整手段13は、直流電源33の数に対応した数だけ設けるものである。
なお、整流電力調整手段12を複数個備える場合には、各々の整流電流調整手段12は、各々別個の、制御則1ないし制御則4のいずれかの制御則またはこれらの組み合わせの制御則で制御され、直流電力調整手段13を複数個備える場合には、各々の整流電流調整手段13は、各々別個の、制御則5ないし制御則7のいずれかの制御則またはこれらの組み合わせの制御則で制御されるものであっても良いものである。
更に、給電端27についても、1個のみならず、複数個設けて、別個独立の電圧を出力する複数系統の屋内配線を設けるものであっても良い。
すなわち、これらの、数の組み合わせ方は、直流電力配電システムの規模や家庭等の広さに応じて本発明の技術的な効果を生じる範囲で任意に選択することができるものである。
また、交流電力入力端21、直流電力入力端23、給電端27は、線材を接続または取り外しするのに適した端子構造に限らず、多入力連系電力変換装置9における該当回路部に直接に線材を溶接等したものであっても良い。
また、多入力連系電力変換装置9の各部は以下のような構成であっても良いものである。
整流手段11は、全波整流回路に限らず、半端整流回路であっても良い。また、3相交流電源を電力系統2として用いる場合には、全波整流を行えば電力が零となる時間が生じることが無く平滑コンデンサを用いなくとも良い。
また、整流電力調整手段12または直流電力調整手段13はステップアップ・レギュレータに限らず、入力側の電圧の値が目標電圧の値Vrefの値より大きい場合にはステップダウン・スイッチングレギュレータであっても良く、入力側の電圧が広範囲に変化する場合にはステップダウン・スイッチングレギュレータとステップアップ・スイッチングレギュレータとを組み合わせて電圧可変範囲を拡大したものであっても良い。
更に整流電力調整手段12または直流電力調整手段13は極性反転スイッチングレギュレータであっても、トランス方式コンバータを用いて、巻線とダイオードの極性の選択により極性を反転するものであっても良い。
なお、図14にステップ・ダウン・スイッチング・レギュレータの構成図を示し、図15にON・OFF・コンバータの構成図を示し、図16にON・ON・コンバータの構成図を示す。ここで、図15、図16における巻線に付加された黒丸は起電力の方向を示す記号である。
ここにおいて、一部の回路部分を他の回路部分と分離する目的にあっては、トランス方式コンバータが好適である。しかしながら、例えば、図15、図16に示すように、直流電源33が2つの直流電源から構成される場合においてはスイッチ1とスイッチ2とのONが重ならないことが電力の加算ができる条件となり、2個以上の複数個の直流電源を用いる場合についても同様に複数のスイッチが同時にONしないことが動作を保証する条件となる。
更に、図17に示すように、スイッチングレギュレータとトランス方式コンバータとを組合わせても良く、この場合には、単相商用電源を21aおよび21bの端子から入力し、整流手段11で整流した後、整流電力調整手段12としてトランス方式コンバータを用い、トランス方式コンバータの二次側にスイッチングレギュレータにより構成される直流電力調整手段13の出力側を接続し、直流電力調整手段13の入力側には直流電源入力端23aおよび直流電源入力端23bを介して直流電源33を接続し、制御手段17と整流電力調整手段12とのインターフェイスとしてフォトカプラ50を用いて、制御手段17から整流電力調整手段12への信号の伝達を行いながらも、制御手段17と整流電力調整手段12との電気的な接続の分離をするものである。
このように、フォトカプラー50とトランスによって商用交流電源である交流電力系統2を他の部分から接続することなく分離して、回路部や給電端27aおよび給電端27bのいずれに人体が触れても感電することを防止でき、またスイッチON時間が重なることを防止することによる時分割電力伝送に基づく効率の悪化も生じないようにできるものである。
なお、交流電力系統2は商用電源に限らず、列車を動かす交流電力系統であっても良く、公衆に利用されるものに限らず、家庭等で、交流発電機によるシステムを構成したものであっても良く、船舶や航空機において、多数の機器が接続される交流電力配電システムであっても良い。
また、電力消費手段18はテレビ受像機に限らず、直流モータ、電熱器等のみならず、近年は多くの機器が、交流から直流に変換して電子回路で制御されるのでその範囲は広く、インバータ方式の冷暖房機、冷蔵庫、蛍光灯、テレビ受像機などの直流で動作する種々の機器であっても良い。
また、電力消費手段18は直接に屋内配線20に接続されるのみでなく、電力消費手段18を屋内配線20に着脱可能とする図示しないコンセントとプラグを介して接続されていても良い。
また、交流電力入力端21は交流電力系統2に直接接続されていても、図示しないコンセントとプラグを介して接続されていても良い。
(第1の実施の形態の効果)
本発明の第1の実施の形態ないし第1の実施の形態の変形例が奏する効果は以下のものである。
整流手段11は一方向に電力を通過させるので、整流手段11により変換された直流電力が交流電力系統に逆流することがなく、これを原因とする力率の悪化は生じない。
また、日照条件に応じて、その出力電圧およびその出力電力が刻々異なる太陽電池を用いる場合や、最適なスタック構成により得られる電圧が屋内配線20に供給される所望の電圧と等しくはない燃料電池を用いる場合や、出力電圧および出力電力が風向きおよび風速により大きく変化する風力発電装置を用いる場合にもそれらからの電力を所定の電圧に保って屋内配線20に供給することが可能となる。
また、直流電源33から最大有能電力を取り出すことや直流電源33の運転状態に応じた電力の量を取り出すことができ、交流電圧の波形と入力交流電流波形とを相似形とすることができるので力率の改善が行える。
なお、屋内配線20に供給される電力を直流電力としたことによる効果としては以下のものがある。
屋内配線20は屋内に縦横に張り巡らされているために、従来の交流電力を用いる方式では、配線から発生する交番電磁界の影響で、音響機器等にハムと称されるバズ音を生ずるのに対し、直流電力を家庭等で使用する場合においてはこの様な現象は生じないという効果も生じる。
また、屋内配線20を信号通信の手段として使用する場合にも通信信号と商用交流との帯域分割フィルターの使用や、通信信号の変調方式に対する制約もない。
また、電力消費手段18の1つである、近年、直流化が進んでいる家庭電化製品への対応が容易であり、将来直流により家庭電化製品に給電する方式が一般化すれば、これらの家庭電化製品の内部に整流回路を設ける必要もなくなる。この場合においては、整流回路を不要とすることにより家庭電化製品のコストダウンを図ることができる。
また、このような家庭電化製品を交流と直流の両方の電力に対応可能とするために、整流回路を設ける場合においても、交流電力によって動作させる場合に比較して、直流電力で動作させる場合には、整流回路に用いられる整流素子の流通角は大きくなるので、整流素子で発生する損失も小さい上に、流通角が大きいので、所謂スイッチングノイズも発生しないという効果がある。
(2)第2の実施の形態
第1の実施の形態および第1の実施の形態の変形例においては、直流電力調整手段13から供給される電力の量P13と整流電力調整手段12から供給される電力の量P12との割合を調整して給電端27の電圧を所定の電圧に保つものである。
しかしながら、直流電力調整手段13から供給される電力の量P13は風力発電機である直流電源33においては風速に依存して大きく変化し、給電端27から供給される電力消費手段18に必要な規定の電力量P18を上回る場合がある。
このような場合に風力発電機から取り出す電力量を少なくして余剰電力が発生しないようにすることもできるが、そうすると、折角の発電電力が無駄になるので、第2の実施の形態ではこのような電力を無駄にせずに蓄えることができるものである。
また、給電端27に供給される電力の一部を蓄えることができれば、夜間の低料金の電力を積極的に熱湯として蓄え、昼間にその熱湯を使用して、電力使用の平均化を図ることができるが、第2の実施の形態ではこのようなことも可能にするものである。
本発明の第2の実施の形態について図18を参照しながら説明する。
なお、第1の実施の形態および第1の実施の形態の変形例におけるものと同一の構成および作用を奏する部分については、第1の実施の形態および第1の実施の形態の変形例の説明におけると同一の符号を付してあるいは符号を付さずに説明を省略する。
第2の実施の形態の直流配電システムは、第1の実施の形態および第1の実施の形態の変形例の直流配電システムに加えてエネルギー蓄積手段34を備えるものである。
エネルギー蓄積手段34は、充放電が可能な二次電池や、水を貯蔵する容器にヒータを備えてヒータに電力を供給することのより、熱湯としてエネルギーを蓄積するものであるが、これに限らず電力を化学変化、物理変化の形で蓄えるいかなる手段であっても良いものである。
このエネルギー蓄積手段34は多入力連系電力変換装置10と直流電力入力端24を介して接続されている。
多入力連系電力変換装置10について更に説明をする。
多入力連系電力変換装置10は、第1の実施の形態における多入力連系電力変換装置9の構成に加えて余剰電力調整手段14を備えるものである。
余剰電力調整手段14および制御手段の第1の実施の形態および第1の実施の形態の変形例との異なる部分について詳細に説明する。
余剰電力調整手段14は図13に示すように、入力側と出力側と制御端を備えるステップアップ・スイッチングレギュレータであり、制御端は、信号のレベル変換を行うインターフェイスを介してトランジスタやMOSFETで構成されるスイッチを制御するPWM信号を入力されるように設けられている。
余剰電力調整手段14の入力側は給電端27に接続され、余剰電力調整手段14の出力側は直流電力出力端24に接続されている。
制御手段17の入力部は、第1の実施の形態に示す、電圧V11oに応じた信号S31V、給電端27の電圧の値V27に応じた信号S37、温度に応じた信号S38、入力電圧V13iに応じた信号S39、入力電流I13iに応じた信号S40が入力されるのに加えて、制御手段17の入力部は余剰電力調整手段14の出力端24に接続されて直流電力出力端24の電圧V14oに応じた信号S41および直流電力出力端24から流れ出す電流I14oに応じた信号S42が入力されるようになされている。
制御手段17の出力部は、第1の実施の形態の整流電力調整手段12の制御端および直流電力調整手段13の制御端との接続に加え、更に、余剰電力調整手段14の制御端が接続されており、余剰電力調整手段14の制御端には余剰電力調整手段制御信号S34が供給されるようになされている。
ここで、余剰電力とは、給電端27に供給される電力のうち給電端27より取り出されて電力消費手段18が消費する規定の電力量を上回る電力の量であり、余剰電力が発生する場合にそのまま放置すると給電端27の電位は上昇して、その結果として電力消費手段18において規定以上の電力を消費してしまい機器の動作不良や寿命の短縮化や機器の故障を引きおこしてしまうものである。
なお、余剰電力が発生しているか否かは給電端27の電位が目標電圧の値Vrefに保たれているかどうかを検知することにより容易に知ることができるものである。
(第2の実施の形態の作用)
次に、第2の実施の形態の直流電力配電システムの作用について各手段毎に説明をする。
1)余剰電力制御手段14について
以下に余剰電力調整手段14の作用を簡単に説明する。
余剰電力調整手段14の入力側の電圧をV14iとして、入力側に流れ込む電流をI14iとすれば入力インピーダンスR14i は[式22]で表される。
R14i= V14i/I14i ・・・[式22]
余剰電力調整手段14に用いられるステップアップ・スイッチングレギュレータは原理的に無損失であるので、出力側から取り出される電力の量は入力側から入力される電力の量と等しくなり、余剰電力調整手段14を通過する電力は消費されることはない。従って[式23]に示す関係式が成立する。
P14=V14i・I14i=V114o・I14o= V14i/(R14i・R14i) ・・・[式23]
ここで、[式22]で示す入力インピーダンスR14iは、整流電力調整手段12および直流電力調整手段13の負荷となるので、入力インピーダンスR14iの値を調整すれば、整流電力調整手段12の電力の量P12および直流電力調整手段13からの電力の量P13の総和の一部である電力の量P14を余剰電力として取り出して蓄積できることになる。
また、ステップアップ・スイッチングレギュレータはエネルギー蓄積手段34にダイオードを介して接続されているので、ダイオードの作用によりエネルギー蓄積手段34の側から給電端27の側へ電力が流れることもなく、余剰電力調整手段14の制御端にONデューティ零のPWM信号を与えると、給電端27の電圧が直流電源33の電圧より低いことから、実質的に給電端27とエネルギー蓄積手段34との接続を断ったのと同様に作用する。
すなわち、ステップアップ・スイッチングレギュレータを用いた余剰電力調整手段14は入力インピーダンスR14iを変化させることにより通過する電力の量を可変とするものである。
ここにおいて、入力インピーダンスR14iの大きさは、制御手段17からの、余剰電力調整手段制御信号S34に応じて調整することができる。
すなわち、PWM信号である直流電力調整手段制御信号S34のONデューティを小さくして、スイッチのON時間の割合を小さくすると、入力インピーダンスR14iは大きくなって電力の量P14の大きさは小さくなり、余剰電力調整手段制御信号S34のONデューティを大きくして、スイッチのON時間の割合を大きくすると、入力インピーダンスR14iは小さくなって電力の量P14の大きさは大きくなる。
なお、余剰電力調整手段14は出力側から入力側に電力を伝送する機能がないので、PWM変調器への入力信号が負値を取る場合にはPWM信号のONデューティは零となるようになされている。
また、整流手段11から供給される電力の量P12と直流電源から供給される電力の量P13と余剰電力の量P14と消費電力の量P18との関係は[式24]で表される。
P14=P12+P13−P18 ・・・[式24]
2)制御手段17について
第2の実施の形態における余剰電力制御手段14の作用は、制御手段17がどのような信号に基づき、どのような基準で余剰電力制御手段14を制御するかの制御則により異なるものとなるので、制御則毎に分けて以下に説明をする。
(i)第8の制御則
第8の制御則に基づき、余剰電力調整手段34をDSPで制御する場合について図19のフローチャートに沿って説明する。
この演算則は図4に示すものと基本的に同様のものであるが、給電端の電圧値V27と目標電圧の値Vrefとの値の大小によって整流電力調整手段12を制御するか、余剰電力調整手段14を制御するかに分岐するものである。
まず、給電端27の電圧の値V27に応じた信号S37をA・D変換器に取り込む。
次に、DSP等の内部で、実際の値に変換し、目標電圧の値Vrefの値からV27の値を差し引いた誤差信号を得る演算を行う。
次に、誤差信号が正である場合には、誤差信号の値としてVref−V27を採用して、図4において説明した直流電源33の制御ルーチンに分岐し、余剰電力調整手段14は制御されず、一方、誤差信号が負である場合には、誤差信号の値としてV27−Vrefを代入して余剰電力調整手段14を制御するルーチンに分岐して、以下の処理を行う。
次に、誤差信号に位相補償定数Kp14dとゲイン定数Kg14dを掛ける演算を行う。
ここで、位相補償定数Kp14dは、制御系の応答を最適化するためのものであって定常偏差を圧縮するための低域補償と即応性を高めるための高域補償を行うものであり、ゲイン定数Kg14dは制御系の開ループゲインを定めるものであるが、位相補償の設計方法は、Kp12d、Kp13dとなんら異なる点はなく、個別具体的に余剰電力調整手段14の特性に合わせて最適化が図られている。
次に、DSPに設けられたPWM変調器に位相補償定数Kp14dとゲイン定数Kg14dとが掛けたられた誤差信号であるSout8を入力して、PWM変調された余剰電力調整手段制御信S34を出力する。
ここで、PWM変調器が出力するPWM信号の周期はソフトウエアにより初期設定がされており、可聴周波数帯を避けて50μSec(20kHz)から2μSec (500kHz)の間が通常は選択されるものであり、また、PWM変調器のメモリに一度データを格納すれば、次の周期まで同じ値のPWM信号を出力し続けるものである。
最後に、再び演算の最初のステップに戻り、A・D変換器に対して所定の時間毎の割り込み信号が発行されるのを待機する。
ここで、A・D変換器に発行される割り込み信号の所定の時間とは、自然環境の変化により直流電源33の出力電力の量P13が変化する時間、電力消費手段18における消費電力の量P18が変化してコンデンサにより給電端27の電圧を保持できないようになる時間のいずれよりも短い時間であり、数十msec(ミリ秒)から数sec(秒)の間に設定される。
一方、制御部17がアナログ回路により構成される場合においては、このような、フィードバック制御の制御則は、[式25]に従うものである。
(V27−Vref)・Kg14a・Kp14a =S34 ・・・[式25]
ここで、S34は、直流電力調整手段12の制御端子に入力するONデューティが変化するPWM信号の信号レベルであり、上述の制御則は、図5に示すブロック図で、給電端27の電圧の値V27と目標電圧の値Vrefとを加算する加算器の極性を入れ替え、Kg13aをKg14aに、Kp13a をKp14a に、S33をS34に入れ替えたものと同じものである。
[式25]の演算は、アナログ回路方式の場合には、時間的に連続して途切れることなく行われる。
すなわち、第8の制御則は、余剰電力をエネルギー蓄積手段34に蓄積しながら給電端27の両端の電圧を所定の値に維持するものである。
(ii)第9の制御則
第9の制御則は、直流電源33が供給する電力の量P13が電力消費手段18に供給する電力の量P18を下回るか否かに関わらず、エネルギー蓄積手段34に所定の電力を蓄積するものである。
このような制御を行えば、価格の安い、いわゆる深夜電力料金を利用して夜間に電気エネルギーを熱湯に変換して、昼間に使用することができる。
第10の制御則における作用を図20に示すフローチャートに沿って詳細に説明する。
まず、A・D変換器で直流電力出力端24の電圧V14oに応じた信号S41および直流電力出力端24から流れ出す電流I14oに応じた信号S42を検出する。
次に、余剰電力として取り出される電力の量P14の計算をする。
ここで、信号S41および信号S42から変換する直流電力出力端24の電圧、すなわち余剰電力調整手段14の出力側の電圧をV14oと、直流電力出力端24から流れ出す電流、すなわち余剰電力調整手段14の出力側から流れ出す電流I14oとから余剰電力として取り出される電力の量P14は[式26]で計算されるものである。
P14= V14o・I14o ・・・[式26]
次に、目標値である所定の電力の量P14refから演算した電力の量P14を減算して誤差信号を得る。
次に、誤差信号に位相補償定数Kp14dとゲイン定数Kg14dを掛ける演算を行う。
次に、DSPに設けられたPWM変調器に位相補償定数Kp14dとゲイン定数Kg14dとが掛けられた誤差信号であるSout9を入力して、PWM変調された余剰電力調整手段制御信S34を出力する。
最後に、再び演算の最初のステップに戻り、A・D変換器に対して所定の時間毎の割り込み信号が発行されるのを待機する。
ここで、A・D変換器に発行される割り込み信号の所定の時間とは、エネルギー蓄積手段34の動作条件が変化するよりも短い時間であり、数十msec(ミリ秒)から数min(分)の間である。
ハードウエアで実現するためのブロック図は省くが、演算則は[式27]に基づくものである。
(P14ref−V14o ・ I14o)・ Kp14・ Kg14=S34 ・・・[式27]
[式27]に示す演算は、目標値である所定の電力の量P14refから瞬時の電力の量P14、すなわち、V14o ・ I14oの値を引き、その結果に位相補償とゲイン補償を施した値であるSout9をPWM変調器への入力信号とし、PWM変調器で変調して整流電力調整手段制御信号S34を得るものである。
なお、上述の第9の制御則に基づく制御は、深夜のみ行い、昼間は、第9の制御則に基づく制御に切替えても良く、更に、P14refの値を時間と共に所定のパターンに合わせて変えても良いものである。
すなわち、第9の制御則は所定の余剰電力をエネルギー蓄積手段34に蓄積しながら給電端27の両端の電圧を所定の値に維持するものである。
第2の実施の形態においては、第1の実施の形態および第1の実施の形態の変形例をすべて含み、更に、第8および第9の制御則に基づき制御手段17が余剰電力制御手段14を制御して整流手段11から給電端27に供給される電力の量P12と直流電源33から供給される電力の量P13とエネルギー蓄積手段34に蓄えられる余剰電力の量P14とを所定の割合となるように調整することができるので、以下のような種々の制御則の組み合わせが可能である。
すなわち、制御手段17が第1の実施の形態の制御則に基づく制御を行うと同時に、加えて、第8の制御則に基づき余剰電力制御手段14を制御して給電端27の電圧を所定の値に維持することができ、また、第1の実施の形態の制御則に基づく制御を行うと同時に、加えて、第9の制御則に基づき余剰電力制御手段14を制御して給電端27の電圧を所定の値に維持することができる。
更に、制御手段17が第1の実施の形態の第3制御則または第4の制御則に基づき整流電力調整手段12を制御し、第1の実施の形態の第5制御則または第6の制御則に基づき直流電力調整手段13を制御し、第8の制御則に基づき余剰電力調整手段14を調整して給電端27の電圧を所定の値に維持することができる。
更にまた、一般的には、[式18]に示すように整流電力調整手段12が、第1ないし第4の制御則により得られる制御信号Sout1ないしSout4の関数である信号Sout12をPWM変調の信号として制御されるもので、[式19]に示すように直流電力調整手段13が、第5ないし第7の制御則により得られる制御信号Sout5ないしSout7の関数である信号Sout13をPWM変調の信号として制御されるもので、[式28]に示すように余剰電力調整手段14が、第8ないし第9の制御則により得られる制御信号Sout8およびSout9の関数である信号Sout14をPWM変調の信号として制御されるものであっても良いものである。
Sout14=F(Sout8、Sout9) ・・・[式28]
[式18]、[式19]、[式28]のうち、最も簡単なのは、Sout1ないしSout4およびSout5ないしSout7およびSout8とSout9とを線形結合するもので、[式20]、[式21]および[式29]で表されるものであり、K8およびK9は重みづけ係数である。
Sout14=K8・Sout8+K9・Sout9 ・・・[式29]
ここにおいて、K1ないしK9の重みづけ係数は、零も含む正値であり、重みづけ係数の大きい信号程、制御に占める影響が大きくなるものであり、K1、K2、K7、K8のいずれかが零でないことが給電端27を所定の電圧に保つための条件となる。
(第2の実施の形態の変形例)
上述の第2の実施の形態の直流電力配電システムは上述の形態並びに第1の実施の形態および第1の実施の形態の変形例に示されたものに限られず、以下の変形例であっても良いものである。
エネルギー蓄積手段34の個数は1個に限らず複数個備えても良く、複数個からなる場合には、余剰電力調整手段14は、その数に対応した数だけ設けるものであり、この場合、余剰電力調整手段の制御則としては、各々について、別個に第8の制御則または第9の制御則または第8の制御則と第9の制御則を組み合わせて良いものである。
また、図21に示すように、機器の小型化を図るためにエネルギー蓄積手段34は直流電源33と同一のものであって、直流電源33とエネルギー蓄積手段34の作用を可逆的に行う可逆的電源35であっても良い。
このような可逆的電源35としては、二次電池であっても良く、燃料電池を可逆的に使用するものであっても良く、この場合には直流電力入力端23と直流電力出力端24とが可逆的電源35に接続される。
また、直流電力出力端24は、線材を接続または取り外しするのに適した端子構造に限らず、多入力連系電力変換装置10における該当回路部に直接に線材を溶接等したものであっても良い。
また、余剰電力調整手段14はステップアップ・レギュレータに限らず、入力側の電圧が出力側に設けられる給電端27の所望とされる電圧より高い場合にはステップダウン・スイッチングレギュレータであっても良く、入力側の電圧が広範囲に変化する場合にはステップダウン・スイッチングレギュレータとステップアップ・スイッチングレギュレータとを組み合わせて電圧可変範囲を拡大したものであっても良い。
更に余剰電力調整手段14は入力側と出力側との極性を反転する場合には、極性反転スイッチングレギュレータであっても、トランス方式コンバータを用いて、巻線とダイオードの極性の選択により極性を反転するものであっても良い。
(第2の実施の形態の効果)
本発明の第2の実施の形態および第2の実施の形態の変形例が奏する効果は以下のものである。
整流手段11は一方向に電力を通過させるので、整流手段11により変換された直流電力が交流電力系統に逆流することがなく、これを原因とする力率の悪化は生じない。
また、日照条件に応じて、その出力電圧およびその出力電力が刻々異なる太陽電池を用いる場合や、最適なスタック構成により得られる電圧が屋内配線20に供給される所望の電圧と等しくはない燃料電池を用いる場合や、出力電圧および出力電力が風向きおよび風速により大きく変化する風力発電装置を用いる場合にもそれらからの電力を所定の電圧に保って屋内配線20に供給することが可能となる。
また、直流電源33から最大有能電力を取り出すことや直流電源33の運転状態に応じた電力の量を取り出すことができ、交流電圧の波形と入力交流電流波形とを相似形とすることができるので力率の改善が行える。
更に、エネルギー蓄積手段34を備えるため、余剰電力を吸収して蓄積することができるのみならず、所定の余剰電力を吸収して給電端27において、安定した給電端電圧を確保できる。
なお、屋内配線20に供給される電力を直流電力としたことによる効果としては以下のものがある。
直流電力は余剰電力を容易に二次電池等のエネルギー蓄積手段34に蓄え得るという効果があるのみならず、屋内配線20は屋内に縦横に張り巡らされているために、従来の交流電力を用いる方式では、配線から発生する交番電磁界の影響で、音響機器等にハムと称されるバズ音を生ずるのに対し、直流電力を家庭等で使用する場合においてはこの様な現象は生じないという効果も生じる。
また、屋内配線20を信号通信の手段として使用する場合にも通信信号と商用交流との帯域分割フィルターの使用や、通信信号の変調方式に対する制約もない。
また、電力消費手段18の1つである、近年、直流化が進んでいる家庭電化製品への対応が容易であり、将来直流により家庭電化製品に給電する方式が一般化すれば、これらの家庭電化製品の内部に整流回路を設ける必要もなくなる。この場合においては、整流回路を不要とすることにより家庭電化製品のコストダウンを図ることができる。
また、このような家庭電化製品を交流と直流の両方の電力に対応可能とするために、整流回路を設ける場合においても、交流電力によって動作させる場合に比較して、直流電力で動作させる場合には、整流回路に用いられる整流素子の流通角は大きくなるので、整流素子で発生する損失も小さい上に、流通角が大きいので、所謂スイッチングノイズも発生しないという効果がある。