JP4078565B2 - チップホルダ - Google Patents

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Description

本発明は、マイクロウェルアレイチップ等のチップを保持するためのチップホルダに関する。
従来、抗原特異的リンパ球は、例えば、96穴プレートを用いて、1穴あたり約200,000個のリンパ球を加えて3日から1週間、抗原の存在下で培養することにより検出していた。この方法では、約200,000個と言うリンパ球集団の中に抗原特異的リンパ球が存在することは確認できた。しかし、リンパ球集団中に存在する個々の抗原特異的リンパ球を同定することはできなかった。
これに対して近年、蛍光色素で標識した抗原分子をリンパ球と混ぜ合わせることにより、抗原特異的リンパ球の抗原受容体に蛍光標識抗原を結合させ、蛍光標識抗原を結合したリンパ球を、フローサイトメータを用いることにより検出する方法が開発され利用されている(Altman JD, Moss PA, Goulder PJ, Barouch DH, McHeyzer-Williams MG, Bell JI, McMichael AJ, Davis MM. Phenotypic analysis of antigen-specific T lymphocytes, Science, 274:94-96, 1996(非特許文献1))。この方法では抗原に結合する1個のリンパ球を同定することが可能である。さらに抗原に結合する1個のリンパ球を分取することも可能である。
さらに、フローサイトメータを用いずに、1つ1つのリンパ球の抗原特異性を個別に検出し、さらに検出された抗原特異的リンパ球を回収することができるマイクロウェルアレイチップが知られている(特許文献1)。
上記マイクロウェルアレイチップは、基板表面に1つのリンパ球を収納できる程度の大きさのマイクロウェルを形成したものである。このマイクロウェルアレイチップは、例えば、数センチ角の基板に数十万個の微細なマイクロウェルが多数設けられたものであり、実際の抗原特異的リンパ球を検出し、回収する操作に際しては、マイクロウェルアレイチップを保持するチップホルダに固定している(例えば、特許文献2)。
Altman JD, Moss PA, Goulder PJ, Barouch DH, McHeyzer-Williams MG, Bell JI, McMichael AJ, Davis MM. Phenotypic analysis of antigen-specific T lymphocytes, Science, 274:94-96, 1996 WO2005/069001 特開2006-10437号公報
ところが、特許文献2に記載のチップホルダは、細胞のマイクロウェルへの分注率、及び細胞の利用率が低く、さらにはマイクロウェルへの分注されなかった浮遊細胞の除去作業が困難であるという問題があった。
このような問題を解決するために、本発明者らは、細胞分注を機械化することを試みた。しかし、装置の値段が高くなり、構造が複雑で実用化が難しいのが実情であった。
そこで、さらに、上記問題の原因を解明し、解決策を探るべく、本発明者らは、特許文献2に記載のチップホルダに保持されたシリコン製マイクロウェルアレイチップの表面に細胞を含む溶液を滴下した場合に、各マイクロウェルに対して細胞がどのように分注されるかを検討した。その結果、図5の(A)の示すように、溶液は、液漏れ防止具の開口部に現れたチップ全面に広がり中央が一番高い凸レンズ形になる。このとき、ウェルアレイの中心領域aでの細胞の進入率(分注率)が高く、ウェルアレイの中心からずれた外縁領域bでの細胞の進入率(分注率)が低くなっており、中心部及び外縁部のウェルアレイに対する細胞の平均進入率(分注率)は40%程度であった。また、特許文献2に記載のチップホルダでは、ウェルアレイが形成されていない領域cも存在し、この領域面に落下吸着した細胞は利用されずに廃棄されることになるので、全体としての細胞の利用率が低下した。
一番高い溶液部分の直下の中心領域aでの細胞の進入率(分注率)が高く、外縁領域bでの細胞の進入率(分注率)が低いことから、ウェルアレイ領域での溶液の深さを増すことで、外縁領域bでの細胞の進入率(分注率)を上げることができると考えられる。しかし、試料として利用できる溶液量は限られており、溶液の滴下量を増やすことは、試料の種類によっては難しい場合がある。また、例え、溶液の滴下量を増やせたとしても、液漏れ防止具の厚みが限られており、滴下した溶液がオーバーフローしてしまうという問題がある。液漏れ防止具の厚みは、細胞分注後に、ウェルアレイ領域を洗浄する際の操作性、及び、洗浄後にカバーガラスを載せた操作があることを考慮すると、これ以上増すことはできない。また、液漏れ防止具の開口部をウェルアレイが形成されていない領域cを含まないようにすることで廃棄されることになる細胞数を低減することができると考えられる。しかし、その場合、滴下する溶液の量を少なくする必要がある。溶液の量を少なくするということは、溶液中の細胞の密度(濃度)が高まり、溶液の粘度が上昇し、操作性が低下する、という問題があった。
上記課題とは別に、特許文献2に記載のチップホルダには、以下の問題もあった。細胞をチップ上にアレイする操作の際にマイクロウェルへの分注されなかった浮遊細胞の除去を行う。しかし、特許文献2に記載のチップホルダでは、チップホルダの液漏れ防止具の底面とチップ表面との隙間を介して、水系溶媒がチップの側面方向に漏れ出しやすく、マイクロウェルへの分注されなかった浮遊細胞の除去作業が困難であるという問題もあった。
そこで本発明の目的は、細胞のマイクロウェルへの分注率、及び細胞の利用率が高く、浮遊細胞の除去作業が容易なチップホルダを提供することにある。このチップホルダは、高価な装置がなくても簡単に手作業で細胞分注ができるものであることが好ましい。
上記課題を解消し、本発明の目的を達成できる本発明は、以下のとおりである。
[1]一方の主表面にチップを保持するためのチップ保持部と、このチップ保持部の周囲に設けられた周囲壁とを有する基板、及び
開口を有する板状物であって、前記開口の周縁から一方の主表面方向に突出する可撓性のスカート部を有する液漏れ防止枠を含むチップホルダであって、
前記チップは、一方の主表面に、複数の細胞収容用のウェルを有し、
前記スカート部は、その開口面が前記チップ保持部に保持されるチップの主表面より小さく、かつ
前記液漏れ防止枠は、前記基板の周囲壁に脱着自在に装着でき、かつ周囲壁への装着時には、前記スカート部を前記チップ保持部に保持されたチップの主表面に圧接した状態とすることができる、前記チップホルダ。
]前記基板は、スライドガラス形状であり、主表面の半分以下の部分に周囲壁を有する[1]に記載のチップホルダ。
]前記チップ保持部は、チップを保持するための複数の係止突起を有し、かつ前記周囲壁は、前記係止突起の周囲に設けられる[1]〜[]のいずれかに記載のチップホルダ。
]前記係止突起は、高さが保持するチップの厚さよりも低い[]に記載のチップホルダ。
]前記基板が有する周囲壁は、周囲壁内部の平面積が保持するチップの平面積の2倍以上である[1]〜[]のいずれかに記載のチップホルダ。
]前記液漏れ防止枠が有する開口及びスカート部で構成される開口の内部は、開口からスカート部の端面に向かって面積が小さくなる[1]〜[]のいずれかに記載のチップホルダ。
]前記液漏れ防止枠が有するスカート部で構成される開口は、チップの主表面上の細胞収容用のウェル領域と略同一である[1]〜[]のいずれかに記載のチップホルダ。
]前記液漏れ防止枠が有するスカート部は、チップと液漏れ防止枠とが、基板の周囲壁内部に組み込まれた際に、チップの主表面とスカート部の端面とが隙間なく接する高さを有する[1]〜[]のいずれかに記載のチップホルダ。
]前記液漏れ防止枠は、取り外し用の切欠きを上面の外側に少なくとも1箇所有する[1]〜[]のいずれかに記載のチップホルダ。
10]前記周囲壁内に取り外し自在に設置可能である、外周形状が基板の周囲壁の内周形状と等しい部材であり、かつ開口を有し、前記チップ保持部の上方でカバーガラスを保持するための受け部を有するカバーガラス保持具をさらに含み、受け部は、カバーガラス保持具の上面の内側2箇所に設けられた切欠き窪みである[1]〜[]のいずれかに記載のチップホルダ。
11]前記カバーガラス保持具は、前記開口の内部にチップの周辺を押さえるための複数の爪部をさらに有する[10]に記載のチップホルダ。
12]前記カバーガラス保持具が有する爪部は、カバーガラス保持具と液漏れ防止枠とが、基板の周囲壁内部に組み込まれた際に、液漏れ防止枠のスカート部の外側に位置するように設ける[10]または[11]に記載のチップホルダ。
13]前記カバーガラス保持具が有する爪部は、先端にチップを上部から押さえるための先端突起を有し、かつ先端突起以外の突起部はチップの周側面と接しない形状を有する[10]〜[12]のいずれかに記載のチップホルダ。
14]前記周囲壁は、前記チップ保持部の上方でカバーガラスを保持するための受け部を有する[1]〜[]のいずれかに記載のチップホルダ。
15]前記基板は、合成樹脂製の成形品である[1]〜[14]のいずれかに記載のチップホルダ。
16]前記液漏れ防止枠は、PDMS、又はポリプロピレン系樹脂と、一般式X−Y(但し、X:ポリスチレン系又はポリオレフィン系のポリマーブロック、Y:共役ジエンのエラストマー性ポリマーブロックである)で表記されるブロックコポリマーの水素添加誘導体とを含有する樹脂組成物製の成形品である[1]〜[15]のいずれかに記載のチップホルダ。
17]前記カバーガラス保持具は、PDMS、又はポリプロピレン系樹脂と、一般式X−Y(但し、X:ポリスチレン系又はポリオレフィン系のポリマーブロック、Y:共役ジエンのエラストマー性ポリマーブロックである)で表記されるブロックコポリマーの水素添加誘導体とを含有する樹脂組成物製の成形品である[11]〜[16]のいずれかに記載のチップホルダ。
本発明のチップホルダによれば、液漏れ防止枠が有するスカート部によってウェルアレイ領域全体の上方に柱状の溶液層を形成することができ、そのため、溶液層の高さを従来に比べて高くすることができる。(図5(B)参照)それによって、ウェルアレイの中心からずれた領域(図5(B)の領域b)でも溶液層を高く維持することができ、ウェルアレイの中心からずれた領域での細胞の分注率が高まる。その結果、内外を平均した全体としての分注率を大幅に向上させることができる。
さらに、本発明のチップホルダでは、液漏れ防止枠が有するスカート部の開口をチップのウェルアレイ領域と略同一にすることができる。スカート部の開口をチップのウェルアレイ領域と略同一にすると、液量が一定の場合、液がオーバーフローしないようなスカート部の開口部の深さを設定できる。その結果、ウェルアレイ領域以外の領域(図5(B)の領域c)での細胞の落下吸着を減少させることができ、細胞の利用率が向上し、結果として、分注率も向上することができる。
さらに、本発明のチップホルダでは、液漏れ防止枠が有する可撓性のスカート部をチップ保持部に保持されたチップの主表面に圧接した状態とすることができる。その結果、浮遊細胞の除去のための洗浄の際に、水系溶媒がチップの側面方向に漏れ出しにくく、浮遊細胞の除去作業が容易である。
さらに本発明のチップホルダでは、液漏れ防止枠とは別部材のカバーガラス保持具を用いることができる。カバーガラス保持具を用いることで、チップ保持部(細胞を保持するチップの表面)の上方でカバーガラスを平行に装架することができ、側方から両者の間に細胞用溶液を充填及び取り出しをすることができると共に、細胞用溶液の表面をカバーガラスの面により規制して水平にすることができ、CCDイメージャーでの読み取りが可能で、高価な装置がなくても簡単に手作業で細胞分注ができるチップホルダを提供することができる。本発明のチップホルダは、CCDイメージャー解析により多サンプルの解析チップ、臨床チップ、抗原探索チップとしてのいろいろなアプリケーションに応用できる。
[チップホルダ]
本発明のチップホルダを、図1の分解説明図並びに図2の平面図及び側面図に従って説明する。
本発明のチップホルダは、基板10、及び液漏れ防止枠30を含む。さらに、好ましくは、カバーガラス保持具20を有する。以下、カバーガラス保持具20を有する態様を例に本発明を説明する。
基板10は、一方の主表面Aに、チップを保持するためのチップ保持部11を有し、さらにこのチップ保持部11の周囲に設けられた周囲壁12を有する。チップ保持部11は、具体的には、チップを保持するための複数の係止突起13を有し、かつ前記周囲壁12は、これら係止突起13の周囲に設けられる。図1及び2に示す基板10は、チップ40の四隅41を保持するための4つの鉤形の係止突起13を有し、かつ突起13の周囲に設けられた周囲壁12を有する。係止突起13の数や形状は、チップ40の形状を考慮して適宜決定できる。係止突起は、チップ40の4つの辺を保持するような直線状のものであってもよい。また、チップ40は、例えば、平面形状が円形のものであることもでき、その場合、係止突起13は、チップ40と接する部分が弧形のものであることができ、その場合、係止突起13は、2つ以上設けることができる。
基板10は、図1及び2に記載のように、スライドガラス形状であることができ、かつ主表面Aの半分以下の部分に周囲壁12を有するものである。スライドガラス形状であることから、市販の顕微鏡などの機器でも容易に扱える。さらに、周囲壁12を有することから、周囲壁12内にチップを保持し、保持されたチップを周囲壁12に満たした溶液に浸すことができる。このようにすることで、細胞の回収の際にウェル内の細胞が乾燥することを防止できる。特に、多数の細胞を一つずつ採取するときには大きな利点である。さらに検査装置に装着しやすく、取り扱いが容易であるという利点もある。
基板10が有する突起13は、高さが保持するチップ40の厚さよりも小さいことが、細胞をウェルに分注した後、ウェルに入らなかった浮遊細胞を洗浄する際に、水系溶媒がチップ以外の場所に流れ出ることを防止できるという観点から好ましい。このような構成とした場合、チップ表面に水系溶媒を滴下しても、チップの側端に至った水系溶媒は表面張力によって、チップから流れ出すことは無い。その性質はアルコール系溶媒と比較して2倍量程度を保持できる。したがって、アレイされなかった細胞を洗浄する際に、チップ上のみを容易に洗浄することができる。突起11がチップ厚より高くなると、水系溶媒が突起と接触し、取り除かれていない細胞がチップ外に漏れ出すおそれが大きくなる。
基板10が有する突起13は、高さが保持するチップ40の厚さの20から50%の範囲であることがより好ましい。チップ保持部は、突起13に代えて、チップの外形形状と略同形の浅い凹所とすることもできる。
基板10が有する周囲壁12は、周囲壁12内部の平面積が保持するチップ40の平面積の2倍以上であることが、細胞回収時の乾燥防止という観点から好ましい。即ち、この大きさであると、チップ単独で用いる場合に比較して多くの溶液を乾燥対策に利用することができ、より長時間の細胞の扱いが可能となる。周囲壁12内部の平面積は、保持するチップ40の平面積の2〜3倍の範囲であることがより好ましい。周囲壁12の高さは、周囲壁12内部に保持する溶液の容量に応じて適宜決定できるが、例えば、2〜10mmの範囲とすることができる。基板10が有する周囲壁12は、チップ保持部の上方でカバーガラスを保持するための受け部を有することもできる。その場合には、カバーガラス保持具20を併用しなくてもカバーガラスを保持することができる。
基板10は、成形性、量産性、寸法精度、製造コスト等を考慮すると、樹脂製であることが適当である。樹脂は、射出成形可能な樹脂であることが、製造コスト等を考慮すると好ましい。射出成形可能な樹脂としては、例えば、ABS、PC、PMMA、PS、ASなどの汎用合成樹脂が好適である。
カバーガラス保持具20は、周囲壁12内に取り外し自在に設置可能である部材であり、かつ開口21を有し、さらに、前記基板10のチップ保持部11の上方でカバーガラスを保持するための受け部を有する。カバーガラス保持具20は、その外周形状が周囲壁12の内周形状と略等しくすることで、周囲壁12の内側に取り外し自在に設置可能である。カバーガラスを保持するための受け部としては、図1に示すように、切欠き窪み25を上面の内側2箇所に有することができる。そして、図3に示すように、カバーガラス保持具20の切欠き窪み25にカバーガラス50を保持することができる。
カバーガラス保持具20は、基板10及び液漏れ防止枠30と別体に形成することができる。この場合は、カバーガラス保持具20にカバーガラスの受け部を設ける。受け部は、カバーガラスをウェルアレイの上方で平行に装架することにより、溶液の表面を水平に規制しCCDによる読み取り作業を容易にする。
カバーガラス保持具20は、開口21の内部にチップ40の周辺を押さえるための複数の爪部22を有することもできる。カバーガラス保持具20が有する爪部22は、カバーガラス保持具20と液漏れ防止枠30とが、基板10の周囲壁12内部に組み込まれた際に、液漏れ防止枠30のスカート部32の外側に位置するように設けること好ましい。
さらに、カバーガラス保持具20が有する爪部22は、先端にチップを上部から押さえるための先端突起23を有し、かつ先端突起23以外の突起部はチップの周側面と接しない形状を有する。このチップの洗浄時には液漏れ防止枠30を取り去るが、この場合にはチップ切り出し面の特性を利用して水系溶媒を扱うことになる。この際にはチップとカバーガラス保持具20の部分の接触面を最小限に留めることにより、チップ切り出し面からの水系溶媒の流出は最小限にとどめられる。チップの周側面と接しない形状とは、図1の拡大図に示すように、先端突起23以外の突起部に切欠き24を設け、切欠き24の深さは、チップの周側面と接しない深さとすることが適当である。
CCDイメージャーによる適切な撮像のためには、チップ上の溶液層上にカバーガラスを設置し、チップのウェル面とカバーガラスの溶液側とに挟まれる空間(溶液層)の厚さが1mm以内で、望ましくは0.6-0.8 mm 程度に正確に保持され、溶液交換および、薬物刺激時もその溶液層厚の変化が10%未満、さらに望ましくは3%未満に保たれることが好ましい。カバーガラス保持具20に切欠き窪み25を設け、さらには、チップがチップ保持部11でしっかりと固定されていること、あるいはカバーガラス保持具20が有する爪部22を有する場合、爪部22で上部から押さえられることで、ウェル面とカバーガラスの下面との間が、上記間隔及び溶液層厚の変動範囲に保持される。これにより、CCDイメージャーによる適切な撮像が可能になる。
尚、カバーガラス保持具20を使用せずに液漏れ防止枠30のみで、細胞の分注した場合には、細胞分注の後、チップを洗浄した後に、カバーガラス保持具20を装着することもできる。
カバーガラス保持具20は、取り外し用の切欠き26を上面の外側に少なくとも1箇所有することができる。取り外し用の切欠き26を設けることで、カバーガラス保持具20の基板10からの取り外しが容易になる。
カバーガラス保持具20は、成形性、寸法精度、量産性、製造コスト等を考慮すると、樹脂製であることが適当である。樹脂は、射出成形可能な樹脂であることが、製造コスト等を考慮すると好ましい。射出成形可能な樹脂としては、例えば、ABS,PC,PMMA,PS,AS,などの汎用合成樹脂、PDMSやポリプロピレンとエラストマーとのポリマーアロイである後述の樹脂組成物を使用することができる。ポリプロピレンとエラストマーとの組成比は、ポリプロピレン80〜95:エラストマー20〜5が好適であり、ポリプロピレン単独のものに比べて、若干の弾性を付与することができる。カバーガラス保持具20は、後述する液漏れ防止枠30を形成する弾力性のある樹脂あるいはゴム製(エラストマー製)製であることもできる。ゴム製(エラストマー製)としては、例えば、シリコーン樹脂、PDMS、ポリプロピレン系樹脂と、一般式X−Y(但し、X:ポリプロピレン系樹脂に相溶しないポリマーブロック、Y:共役ジエンのエラストマー性ポリマーブロックである)で表記されるブロックコポリマーの水素添加誘導体とを含有する樹脂組成物を挙げることができる。
液漏れ防止枠30は、開口31を有する板状物であって、開口31の周縁から一方の主表面方向に突出する可撓性のスカート部32(図2に示す)を有し、開口31のスカート部32で区画される開口面34は、チップ40の主表面より小さい。可撓性のスカート部32のスカート部により形成される空間の深さは、スカート部により形成される空間に保持される細胞懸濁液の量を考慮して適宜決定できる。スカート部により形成される空間の深さを調整することで、細胞懸濁液の保持量をコントールでき、その結果、ウェルへの細胞の分注率、特に、中心部以外のウェルへの細胞の分注率を向上できる。
さらに、開口31のスカート部32で区画される開口面34は、本発明のチップホルダに保持されるチップ40の開口面34と対向する細胞収容用ウェル部分を含み、かつ細胞収容用ウェル部分と略同一の大きさ及び形状とすることが好ましい。開口面34の大きさ及び形状をこのようにすることで、細胞収容用ウェルが設けられていないチップ40の面上に細胞含有溶液が保持されることがなくなり、ウェルへの細胞の分注率及び利用率を大幅に向上することができる。
カバーガラス保持具20及び液漏れ防止枠30を同時に用いる場合には、この順にカバーガラス保持具20及び液漏れ防止枠30を基板10の周囲壁12に、脱着自在に装着する。また、カバーガラス保持具20を用いることなく、液漏れ防止枠30を用いることもでき、その場合には、液漏れ防止枠30のみを基板10の周囲壁12に、脱着自在に装着する。但し、液漏れ防止枠30を用いての細胞の分注後、カバーガラス使用時に、液漏れ防止枠30を取り外し、基板10の周囲壁12のカバーガラスを保持するための受け部にカバーガラスを装着することができる。
液漏れ防止枠30が有するスカート部32は、チップ40とカバーガラス保持具20と液漏れ防止枠30とが、基板10の周囲壁12内部に組み込まれた際に、チップ40の主表面Bとスカート部32の端面とが隙間なく接する高さを有することが、漏れ防止枠30 の開口31に溶液を保持した際に、溶液の保持を良好に行えるという観点から好ましい。開口31に保持される溶液の深さは、細胞の分注率を考慮すると、2〜5mm、好ましくは2〜4mmの範囲とすることが適当である。
液漏れ防止枠30が有する開口31及びスカート部32で構成される開口の内部は、開口31からスカート部32の端面に向かって面積が小さくなることが、液漏れ防止枠30にクッション性を与えてパッキン性能を向上するという観点から好ましい。但し、スカート部32の端面の開口面積は、チップ40の主表面Bに設けられたウェル範囲の面積より大きく設定する。
液漏れ防止枠30は、スカート部32の端面とチップ40の主表面Bとが隙間なく接し、かつその状態を維持し易いという観点から、弾力性のある樹脂あるいはゴム製(エラストマー製)であることが好ましい。弾力性のある樹脂あるいはゴム製(エラストマー製)としては、例えば、シリコーン樹脂、PDMS、ポリプロピレン系樹脂と、一般式X−Y(但し、X:ポリプロピレン系樹脂に相溶しないポリマーブロック、Y:共役ジエンのエラストマー性ポリマーブロックである)で表記されるブロックコポリマーの水素添加誘導体とを含有する樹脂組成物を挙げることができる。この樹脂組成物は、転写性に優れている。ここで、転写性に優れているとは、マイクロウエルアレイチップ等においては微細加工されたスタンパの凹凸形状を射出成形にて精密転写することができ、ピペットチップ等の微細孔部品においては、スタンパの凹凸形状又は金型形状を精密に転写できることをいう。また、この樹脂組成物は、精密転写性に優れており、スカートの先端部の微細加工に適している。
さらに、上記樹脂組成物によって液漏れ防止枠を成形したので、液漏れ防止枠が細胞を壊死させたり、傷つけたりしないので、細胞の利用率の低下を防止することができる。
ここで、ポリマーブロックXは、ポリプロピレン系樹脂に相溶しないポリマーブロックであり、ポリマーブロックYは、共役ジエンのエラストマー性ポリマーブロックである。ポリプロピレン系樹脂としては、ホモポリマー又は、エチレン、ブテン−1、ヘキセン−1などのα−オレフィンを含むランダムコポリマーを用いることができる。ポリマーブロックXとして、ビニル芳香族モノマー(例えばスチレン)、エチレン又はメタクリレート(例えばメチルメタクリレート)等の重合したポリマーがある。なお、一般式X−Yで表記されるブロックコポリマーの水素添加誘導体には、(X−Y)n において n = 1〜5の範囲にあるものや、X−Y−X、Y−X−Y等が含まれる。
水素添加誘導体のポリマーブロックXとしては、ポリスチレン系とポリオレフィン系のものがあり、ポリスチレン系のものは、スチレン、α−メチルスチレン、ο−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンのうちから選択された1種又は2種以上のビニル芳香族化合物をモノマー単位として構成されるポリマーブロックが上げられる。
また、ポリオレフィン系のものは、エチレンと炭素数3〜10のα−オレフィンの共重合体がある。
更に非共役ジエンが共役重合されていても良い。
前記オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン等である。
前記非共役ジエンとしては、例えば、1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,5−ヘキサジエン、1,4−オクタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、シクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボネル、5−ブチリデン−2−ノルボネル、2−イソプロペニル−5−ネルボルネン等がある。
共重合体の具体例としては、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−プロピレン−1,4−ヘキサジエン共重合体、エチレン−プロピレン−5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体等が挙げられる。
ポリマーブロックYの水素添加前のものとして、2−ブテン−1,4−ジイル基及びビニルエチレン基からなる群から選択される少なくとも1種の基をモノマー単位として構成されるポリブタジエンや、また2−メチル−2−ブテン−1,4−ジイル基、イソプロペニルエチレン基及び1−メチル−1−ビニルエチレン基からなる群から選択される少なくとも1種の基をモノマー単位として構成されるポリイソプレンが挙げられる。
更に水素添加前のポリマーブロックYとして、イソプレン単位及びブタジエン単位を主体とするモノマー単位からなるイソプレン/ブタジエン共重合体で、イソプレン単位が2−メチル−2−ブテン−1,4−ジイル基、イソプロペニルエチレン基及び1−メチル−1−ビニルエチレン基からなる群から選ばれるすくなくとも1種の基であり、ブタジエン単位が2−ブテン−1,4−ジイル基及び/又はビニルエチレン基であるものが挙げられる。
ブタジエン単位とイソプレン単位の配置は、ランダム状、ブロック状、テーパブロック状のいずれの形態になっても良い。
また、ポリマーブロックYの水素添加前のものとして、ビニル芳香族化合物単位及びブタジエン単位を主体とするモノマー単位からなるビニル芳香族化合物/ブタジエン共重合体で、ビニル芳香族化合物単位が、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンのうちから選択された1種のモノマー単位であり、ブタジエン単位が、2−ブテン1,4−ジイル基及び/又はビニルエチレン基である共重合体が挙げられる。ビニル芳香族化合物単位とブタジエン単位の配置は、ランダム状、ブロック状、テーパブロック状のいずれの形態になっても良い。
上記のようなポリマーブロックYにおける水素添加の状態は、部分水素添加であっても、また完全水素添加であっても良い。
上記樹脂組成物においては、水素添加誘導体のポリマーブロックXがポリスチレンであり、ポリマーブロックYの水素添加前のものが1,2結合、3,4結合及び/又は1,4結合のポリイソプレンであると原材料を入手しやすい。
スチレン成分はポリプロピレン系樹脂等との相溶性が低いので、その割合が高くなるとポリプロピレンとの混合に時間を要するので、スチレン成分の多い水素添加誘導体を用いるときはマスターバッチ化し、予め十分に混合しておくのが良い。
水素添加誘導体のポリマーブロックXがポリスチレンであり、ポリマーブロックYの水素添加前のものが1,2結合及び/又は1,4結合のポリブタジエンである場合も原材料が入手しやすい。上記樹脂組成物としては、ポリプロピレン40〜70:エラストマー60〜30の組成比のものを適用することができ、50:50のものが好適である。この樹脂組成物を用いて射出成形すると、型の微細形状を精密に転写することができ、液漏れ防止枠のスカート部の先端形状を任意に設計することができ、より優れた液密構造を採用することができる。また、上記樹脂組成物で成形した成形品は、生体適合性に優れており、細胞と接触しても細胞を壊死させたり、損傷したりすることがない。
本発明のチップホルダに保持されるチップ40は、一方の主表面に、複数の細胞収容用ウェルを有するチップであることができ、例えば、特許文献1に記載のマイクロウェルアレイチップであることができる。但し、このチップに限定さることはなく、例えば、フロー型チップ等のチップであってもよい。さらにチップホルダに保持されるチップは、シリコン製、樹脂製等であることができる。チップに設けられるウェルの数や、ウェル領域の形状(平面形状)は特に制限はない。ウェルの数は、例えば、1000〜100万個の範囲とすることができる。ウェル領域の形状(平面形状)は、例えば、正方形、長方形、多角形(例えば、六角形)、円形、半円形等であることができる。また、ウェル領域は、所定の数のウェルからなるクラスターを複数個設けることもできる。例えば、nの2乗(nは、例えば、2〜100個の範囲)個のウェルからなるクラスターを2〜100個の範囲で設けることができる。また、チップに設けられるウェル領域の形状(平面形状)に応じて、液漏れ防止枠30のスカート部32で区画される開口面34の形状は決定されることが好ましい。例えば、ウェル領域の形状(平面形状)が円形である場合には、開口面34の形状も円形であるであることが好ましい。
以下本発明のチップホルダについて、本発明のチップホルダに保持されるマイクロウェルアレイチップ40としてシリコンチップを用いる場合を、さらに具体的に説明する。
[基板10]
シリコンチップ40をホルダの基板10上に載せる。シリコンチップをホルダの基板10上に載せてホルダ底面上の鉤形突起13で固定する(4点押さえ)。この突起13は、シリコンチップ40の移動を制限する。さらに、鉤形突起13の上面は、シリコンチップ40の切り出し縁より低い位置になるように設ける。これにより、水性溶液をシリコンチップ40に滴下したときに、シリコンチップ40上からシリコンチップ40の外周部へ水性溶液が、流出しないようにできる。このように水性溶液をシリコンチップ40上に保持できることで、シリコンチップ40上に設けたウェル範囲に表面張力による水性溶液の半球の形成が可能である。
[カバーガラス保持具20]
カバーガラス保持具20は、基板10上に載せたシリコンチップ40を抑える機能がある。その際にシリコンチップの持つ素材あるいは切り出し面の形状の特性(表面張力)を最大限に活用するために、シリコンチップとカバーガラス保持具20の接触面を最小限にとどめることが好ましい。そのため、接触部をカバーガラス保持具20の爪部21の末端4点にとどめ、シリコンチップ40の固定を行う。また、シリコンチップ末端部において水系溶媒の底面への流出を極力抑えるために、爪部21の先端突起23のシリコンチップへの接触部位はシリコンチップ上面に対してのみとし、シリコンチップ40の切り出し側面とは接触しないようにすることが好ましい。これにより、水系溶液がカバーガラス保持具に接触しても、基板10の底面に流れ出す可能性を最小限に留めることができる。
カバーガラス保持具20の長辺上の中央部に、カバーガラス50設置用の切り欠き窪み25を有する。この切欠き窪み25は、設置されるシリコンチップ40の上面とカバーガラス50の間の距離を規定するものである。シリコンチップ上面とカバーガラスの間の距離を適切に保つことにより、シリコンチップとカバーガラスの間に、表面張力の力で溶媒を保持することができ、溶液を交換したり、チップ上で潅流することもできる開放系流路としての機能を付与することができる。開放系流路とすることで、洗浄が容易になり、浮遊細胞の除去を確実に行うことができる。
カバーガラス50は、測定時にかぶせておくが、測定後ははずす。チップホルダ(基板10およびカバーガラス保持具20を含む)は、取付けられたシリコンチップ40を、溶液の内部に浸すことのできるような容器型の構造になっており、測定を終えたあとのマイクロウェルアレイチップから目的の細胞を回収する際に、マイクロウェル内の細胞の乾燥を防止する役割を果たす。また、適切な量の溶液が入れられたあとは、溶液の水面の曲率がウェル位置でほとんど無視できるほど平坦になるように設計され、光学的な自動ウェル位置認識などに影響を及ぼさないように配慮されている。
[液漏れ防止枠30]
液漏れ防止枠30は、リンパ球などの細胞を、シリコンチップ40に効率的にアレイする目的で使用する。液漏れ防止枠30は、シリコンチップ40の細胞アレイウェル領域の中で、該当するウェルに適切に目的の細胞をアレイする機能を有し、液漏れ防止枠30をカバーガラス保持具20の開口21に取り付けることにより、効率的に分注率、利用率が向上することができる。また、細胞懸濁液を細胞アレイウェル領域に滴下した際に、液漏れ防止枠30を用いることにより、目的の細胞アレイウェル領域に適切に細胞を適用することができ、実際の細胞の利用効率のアップにつながる。液漏れ防止枠30を用いないと、細胞懸濁液がシリコンチップ表面に薄く広がってしまい、ウェル領域以外の細胞は無駄になり、細胞を効率的に利用することは難しい。
細胞を効率的に利用する際には、シリコンチップ40と液漏れ防止枠30の間のパッキン性が重要となる。そこで、液漏れ防止枠30は、周囲壁12に周辺部が若干埋め込形となり、持続的に押し付け圧力を加えることができるような構造になっていることが適当である。一方、液漏れ防止枠30とシリコンチップ40表面の接触面は、効率的なパッキン性能を発揮できる素材および形状を有することが好ましい。そうすることで、細胞がウェル領域内に適切にとどまるような機能に寄与することができる。
[その他]
カバーガラス保持具20及び液漏れ防止枠30中は、それぞれ切欠き26及び切欠き33を有し、容易に取り外しが可能である。シリコンチップを容易に回収し、異なるアプリケーションに用いることができる。
[シリコンチップ40]
シリコンチップ40の上には、ウェル位置および傾きなどの自動認識に最適なサイズおよび形状のパターンマーキングを設けることができる。パターンマーキングを設けることで、検出器を用いて容易に作業空間での微小位置調整が可能である。シリコンチップのウェル範囲の縦横のクラスター数およびシリコンチップの外形寸法に関しては、分注率、利用率の効率が高くなる寸法を実験的に見出した。また、CCDイメージャーの撮影性能を考慮して決めることができる。
[操作法]
以下に上記ホルダの実際の操作法を、図4を参照しながら具体的に説明する。尚、図4は、シリコンチップ40を保持した本発明のホルダの長手方向に対して垂直な部分(チップ保持部を含む部分)の断面図である。
使用する細胞は、細胞の種類に応じて1x106〜1x107個/ml 程度の濃度で、適度の血清あるいはBSAなどの成分を含む細胞培養用の培地などに懸濁しておく。
(前処理)
まずチップホルダにシリコンチップ40、カバーガラス保持具20、液漏れ防止枠30それぞれを組み込みチップ上開口部からアルコール系溶媒を含むシリコン表面コーティング剤あるいは水系のコーティング剤を滴下し、必要に応じて印圧チャンバーなどの中でチップ上の個々のウェルの中に入った空気を脱気する。アルコール系コーティング剤は即座にウェル表面をコートすることができるので、残ったコーティング剤を回収し、アルコールを滴下、洗浄する。2−3回繰り返した後、アルコールを回収する。
(ステップ1)
上記前処理したチップ上に細胞を懸濁したものと同じ溶液を添加し、アルコールを水系溶媒で置換する。3−5回洗浄し十分にアルコールが取り除かれたら、細胞懸濁液を添加する。
加えた細胞懸濁液は、底面のシリコンチップ表面に重層する形で沈殿するので、低濃度の細胞懸濁液を用いても高効率にマイクロウェル面へのアレイが可能となる。高濃度の細胞縣濁液を用いることができればなおアレイ効率が向上する。
(ステップ2)
アレイ作業終了後、細胞懸濁液を回収し、細胞用溶液(緩衝液等)でアレイされなかった細胞を十分に取り除く。特に端の方に細胞がたまりやすいので、注意して作業を進める。ある程度、チップ上の表面がきれいな状態になるまで行う。
(ステップ3)
表面がきれいな状態になったら、液漏れ防止枠30を取り外す。取り外し後、細胞チップの表面には、カバーガラス保持具20の爪部22のシリコンチップとの接点周辺にまだアレイされていない細胞が残っているので、細胞用溶液をシリコンチップ上に滴下し、浮遊細胞をきれいに取り除く。この場合、細胞用溶液はシリコンチップ上に表面張力で水滴のように保持され、シリコンチップの縁から外に漏れ出しにくい。
(ステップ4及び5)
浮遊細胞を取り除いたら、細胞用溶液が乗っていない状態で、チップ押さえ20にもうけたカバーガラス用切り欠き25にカバーガラス50(18x14mm)を乗せる。
(ステップ5)
カバーガラス50とシリコンチップ40の隙間に細胞用溶液を滴下し、カバーガラス50とシリコンチップ40との間に溶液を表面張力で保持させる。溶液の粘度等によりカバーガラス50とシリコンチップ40の距離(高さ)と、溶液が保持されるシリコンチップおよびカバーガラス上の面積が決定される。適切な寸法に保ち、カバーガラス50とシリコンチップ40の間の面と面に働く表面張力を利用することにより、吸引や溶液送出などを行った際に、滞りなく溶液交換、チップ面での溶液灌流などの作業が可能になる。
(ステップ6)
特定のチップ上の細胞の刺激等の一連の操作を行った後、測定を行う。
(ステップ7)
細胞採取を行う際には、まずカバーガラス50とシリコンチップ40の間の溶液を吸引し、チップ面との間に力学的な関係が無いような状態にしてからカバーガラスを取り外す。あるいは、溶液を過剰に加えながらそれと同時にカバーガラスを取り外す。このとき、チップ面にアレイしている細胞に、余計な吸引圧力をかけて細胞がウェルから飛び出してしまわないように注意することが好ましい。
(ステップ8)
カバーガラスを取り外す。図では、カバーガラス保持具20が示されているが、カバーガラス保持具20はカバーガラスと一緒に取り外してもよい。カバーガラス保持具20を取り外すことで、保持できる細胞用溶液量を多くすることができる。
(ステップ9)
カバーガラスを取り外したあとで、図では、カバーガラス保持具20が示されているが、カバーガラス保持具を取り外してチャンバー内を広くし、チップ面が乾燥しないように細胞用溶液をウェル部の側方部から静かに滴下する。その後、シリコンチップ自体が外周部に囲まれ周囲壁内に沈み込む様に、細胞用溶液を静かに加える。液面は周囲壁12の高さにすりきりの状態になるように入れ、液面の曲率が最小限になるように留意する。これは光学的な検出を行うに当たって検出部位が曲率によりゆがみ、画像認識がしにくくなるのを最小限に抑えるためである。本チップホルダにおいても、ある程度溶液の乾燥が起こっても、曲率の変化が最小限になるように留意する。
液漏れ防止枠を取り外したチップ上に、吸引や送液用のアタッチメントを付け、チャンバー内細胞用溶液量の自動調整を行うことができる構造にすることにより、乾燥やの曲率の変化の状態を最小限に抑えることもできる。
(ステップ10)
ウェル内の細胞を抗原で刺激し、CCDイメージャーで検出された特異的な細胞をキャピラリーで採取する。抗原に反応した細胞の回収を行うときなどは、溶液の乾燥に留意する必要がある。そのため、このチップホルダの周囲壁が乾燥低減用のチャンバー構造になっている。
[アプリケーション]
本発明のチップホルダを用いたアプリケーションについて以下に説明する。これらのアプリケーションは、単なる例示である。
チップデザイン(多サンプル解析型チップ)
たとえば細胞チップのクラスター部を大きく4分割したチップを用意する。これは、30x30の微小クラスターが集まったたとえば正方25クラスター(5x5クラスター)のものが4つ合わさった程度のものであることができる。このチップを臨床チップに用いる場合、異なる4人分の患者の血液を一度に測定することができる。
このチップを用いる場合、液漏れ防止枠の開口を個別に4箇所とし、4箇所の各開口が、チップの5x5クラスター分の正方クラスターの領域に対応するようにする。こうすることで、個々の開口を細胞チップ上のクラスターと密着させることができる。すると、簡便な4スロット型の、4サンプル同時測定用のチップを作成することができる。スロットの数は細胞チップと液漏れ防止枠の変更によって自由に変えられる。
本発明は、細胞チップを扱う種々の分野、例えば、リンパ球を扱う分野に有用である。
本発明のチップホルダの分解説明図。 本発明のチップホルダの平面図及び側面図。 本発明のチップホルダの分解説明図。 本発明のチップホルダを用いた細胞採取方法の説明図。 従来のチップホルダ(A)と本発明のチップホルダ(B)の断面説明図。
符号の説明
10 基板
11 チップ保持部
12 周囲壁
13 係止突起
20 カバーガラス保持具
21 開口
22 爪部
23 先端突起
24 切欠き
25 切欠き窪み
26 取り外し用切欠き
30 液漏れ防止枠
31 開口
32 スカート部
33 取り外し用切欠き
34 開口面
40 チップ
41 チップの四隅

Claims (17)

  1. 一方の主表面にチップを保持するためのチップ保持部と、このチップ保持部の周囲に設けられた周囲壁とを有する基板、及び
    開口を有する板状物であって、前記開口の周縁から一方の主表面方向に突出する可撓性のスカート部を有する液漏れ防止枠を含むチップホルダであって、
    前記チップは、一方の主表面に、複数の細胞収容用のウェルを有し、
    前記スカート部は、その開口面が前記チップ保持部に保持されるチップの主表面より小さく、かつ
    前記液漏れ防止枠は、前記基板の周囲壁に脱着自在に装着でき、かつ周囲壁への装着時には、前記スカート部を前記チップ保持部に保持されたチップの主表面に圧接した状態とすることができる、前記チップホルダ。
  2. 前記基板は、スライドガラス形状であり、主表面の半分以下の部分に周囲壁を有する請求項1に記載のチップホルダ。
  3. 前記チップ保持部は、チップを保持するための複数の係止突起を有し、かつ前記周囲壁は、前記係止突起の周囲に設けられる請求項1〜2のいずれか1項に記載のチップホルダ。
  4. 前記係止突起は、高さが保持するチップの厚さよりも低い請求項3に記載のチップホルダ。
  5. 前記基板が有する周囲壁は、周囲壁内部の平面積が保持するチップの平面積の2倍以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載のチップホルダ。
  6. 前記液漏れ防止枠が有する開口及びスカート部で構成される開口の内部は、開口からスカート部の端面に向かって面積が小さくなる請求項1〜5のいずれか1項に記載のチップホルダ。
  7. 前記液漏れ防止枠が有するスカート部で構成される開口は、チップの主表面上の細胞収容用のウェル領域と同一である請求項1〜6のいずれか1項に記載のチップホルダ。
  8. 前記液漏れ防止枠が有するスカート部は、チップと液漏れ防止枠とが、基板の周囲壁内部に組み込まれた際に、チップの主表面とスカート部の端面とが隙間なく接する高さを有する請求項1〜7のいずれか1項に記載のチップホルダ。
  9. 前記液漏れ防止枠は、取り外し用の切欠きを上面の外側に少なくとも1箇所有する請求項1〜8のいずれか1項に記載のチップホルダ。
  10. 前記周囲壁内に取り外し自在に設置可能である、外周形状が基板の周囲壁の内周形状と等しい部材であり、かつ開口を有し、前記チップ保持部の上方でカバーガラスを保持するための受け部を有するカバーガラス保持具をさらに含み、受け部は、カバーガラス保持具の上面の内側2箇所に設けられた切欠き窪み(25)である請求項1〜9のいずれか1項に記載のチップホルダ。
  11. 前記カバーガラス保持具は、前記開口の内部にチップの周辺を押さえるための複数の爪部をさらに有する請求項10に記載のチップホルダ。
  12. 前記カバーガラス保持具が有する爪部は、カバーガラス保持具と液漏れ防止枠とが、基板の周囲壁内部に組み込まれた際に、液漏れ防止枠のスカート部の外側に位置するように設ける請求項10または11に記載のチップホルダ。
  13. 前記カバーガラス保持具が有する爪部は、先端にチップを上部から押さえるための先端突起を有し、かつ先端突起以外の突起部はチップの周側面と接しない形状を有する請求項10〜12のいずれか1項に記載のチップホルダ。
  14. 前記周囲壁は、前記チップ保持部の上方でカバーガラスを保持するための受け部を有する請求項1〜9のいずれか1項に記載のチップホルダ。
  15. 前記基板は、合成樹脂製の成形品である請求項1〜14のいずれか1項に記載のチップホルダ。
  16. 前記液漏れ防止枠は、PDMS、又はポリプロピレン系樹脂と、一般式X−Y(但し、X:ポリスチレン系又はポリオレフィン系のポリマーブロック、Y:共役ジエンのエラストマー性ポリマーブロックである)で表記されるブロックコポリマーの水素添加誘導体とを含有する樹脂組成物製の成形品である請求項1〜15のいずれか1項に記載のチップホルダ。
  17. 前記カバーガラス保持具は、PDMS、又はポリプロピレン系樹脂と、一般式X−Y(但し、X:ポリスチレン系又はポリオレフィン系のポリマーブロック、Y:共役ジエンのエラストマー性ポリマーブロックである)で表記されるブロックコポリマーの水素添加誘導体とを含有する樹脂組成物製の成形品である請求項10〜16のいずれか1項に記載のチップホルダ。
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