JP4074707B2 - 風力発電用の垂直風洞装置および風力エネルギー誘導方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この出願に係る発明は、風力発電に利用される垂直風洞装置および風力エネルギーの誘導方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
地球温暖化対策の一環として枯渇することがない再生可能なクリーンエネルギーの利用が求められる中で、風力発電は低コストで且つ環境的にも安全な発電方法として注目されている。
【0003】
従来から、風力エネルギーを利用して機械的エネルギーや熱エネルギー、或いは電気エネルギーを得るために風車が使われている。風車にはその目的によっていろいろな形式のものがあり、それぞれ特徴がある。水平軸風車には、オランダ型風車、多翼型風車、プロペラ型風車、セイルウィング型風車などがある。また垂直軸風車には、パドル型風車、S型風車、クロスフロー型風車、サボニウス型風車、ダリウス型風車などがある。発電には、ソリディティが小さく、回転数が高いプロペラ型風車が有利で、世界的にも広く使われている。
【0004】
風力エネルギーは密度が比較的小さいので、大出力の発電を行うには直径の大きな風車が用いられる。欧米では直径が100mに達する大きなローターが用いられることもあるほどである。
【0005】
図14に示す風力発電装置は、現在欧米諸国で実証的に行われている風力発電装置の例であり、比較的大きな出力であるメガワット(MW)級の発電が可能なものである。この装置は、定格風速12m/s(平均風速では6〜7m/s)で1.2MWの定格出力を得る。ローター101aの直径は60mである。ハブ101eの地上からの高さ位置は46〜50mである。よってこの装置は全高約80mの巨大な装置になる。
【0006】
ローター面に入る風力エネルギー量は風速の3乗とローター面積の積に比例するから、強くて乱れのない風が常に得られる場所に風車が設置されるのが理想的である。欧米ではこうした設置条件に恵まれていることもあって、風力発電が比較的古くから行われており、最近の風車技術の発達で経済性が著しく改善されたこともあってその普及が顕著である。
【0007】
ローターのエネルギー吸収効率を示す出力係数(入力である風力エネルギーと出力である発電エネルギーの比)も、最近のローターでは40%を超えるものが一般的になってきている。また、軽くて強いローターにより、風車が回り始める風速(Cut-in Speed)は3m/s程度に下がり、またローターに対する強度剛性上の制限速度(Cut-out Speed)も60m/s程度にまで上がっている。こうした技術をべースに、4MW級の発電出力が得られるようになっている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしわが国は、年間を通した平均風速が比較的弱く、また地形的にも複雑で恒風に恵まれないという、一般的に風力発電には不利な地勢である。特に大直径ローターによる大型発電は、コスト的に不利で、設置にも適当な場所が得られ難いこともあって、日本では風力発電の普及が欧米に比べて遅れている。
【0009】
また、風力発電では、風の強弱に合わせてローターのピッチを変えることによりエネルギー吸収効率を向上させることが行われているが、ピッチを変更する機構は複雑であり、風力発電のコスト低減の障害になっている。
【0010】
また暴風等でローターが損傷したり、過回転で発電機が損傷したりすることを防ぐためには、ローターの制動装置や強い風圧から逃れるための強風圧回避機構も必要である。
【0011】
また、多くの風力発電では、風車が風を受けるために大気中に露出しており、そのため、風車の回転に伴って騒音や空気の乱れが発生する。
【0012】
なお、風向きの変動に係わらず効率よく、しかも比較的弱い風でも発電しようとする試みは、実開昭57-180163号、実開昭57-2279号、特開昭53-5348号などにも示されているが、これらのいずれのものよりも、大型風力発電で行われているようにローターを巨大化した方が経済的に有利であることを考えると実用的ではない。また風速を増大するために直立円筒を利用する考えが実開昭62-64882号に示されているが、発電エネルギーとしては過小であって、これも実用的ではない。
【0013】
上記したように、風力発電が他のクリーンエネルギー利用や一般の火力、原子力発電等に比べて遜色があり、普及が遅れる原因の一つには、風力エネルギーの密度が小さいことを補うために大きな風車が必要で、このことがコスト高の原因となっており、結果的に他のエネルギー利用に比べて発電コストが高くなるということがある。また口ーターのピッチ変更機構や制動装置、強風圧回避機構などが風車全体の機構を複雑にして製造コストを上昇させ、ひいては発電コスト上昇の原因になっている。また、ローターが回転するときに発生する音や後流の乱れが環境に悪い影響をもたらし、新たな公害として指摘されている。また風車の破損事故の発生に対して、被害が第三者に及ぶ危険性が懸念されるという問題点もある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、この出願発明に係る風力発電用の垂直風洞装置は、内部に発電用風車を設けるための垂直に立設された筒状の風洞と、突き当たる地表風を誘導面で上方に偏向せしめて該風洞の下端開口から該風洞内に誘導する偏向器とを備えている(請求項1)。かかる構成によれば、誘導面によって風洞内部に誘導された風力エネルギーで風洞内の風車を回転させることができる。風車は風洞内で下向きに固定したままで、常に風に正対する。
【0015】
上記風力発電用の垂直風洞装置において、前記風洞の前記発電用風車を設ける位置にくびれ部を形成してもよい(請求項2)。かかる構成によれば、風洞内のくびれ部で風力エネルギーが濃集される。よって地表風のエネルギー密度が希薄でも風車を回転させて発電させることができる。
【0016】
また、上記風力発電用の垂直風洞装置において、前記風洞の上端開口が、前記くびれ部による風洞内部の圧力降下以上の大気圧降下が得られる高さに位置するように構成してもよい(請求項3)。かかる構成によれば、煙突効果によって風洞内を通過する風量が維持される。
【0017】
また、上記風力発電用の垂直風洞装置において、前記偏向器を前記風洞の中心軸を旋回中心として旋回可能に設けるようにしてもよい(請求項4)。さらに、地表風の風向きを検出する風向検出手段と、前記偏向器の旋回角度を制御する旋回制御装置とを備え、該旋回制御装置が、該風向検出手段によって検出された風向に応じて該偏向器の旋回角度を制御するようにしてもよい(請求項5)かかる構成によれば、地表風の向きに応じて誘導面を地表風に対向させることができる。
【0018】
また、上記風力発電用の垂直風洞装置において、前記偏向器が分割面によって複数の構成部材に分割されており、該分割面の開き角を調整することにより前記風洞内に誘導する風量を調整するようにしてもよい(請求項6)。さらに、前記風洞の下端開口近傍 又は/及び 風洞内の風速を検出する風速検出手段と、前記分割面の開き角を制御する分割制御装置とを備え、該分割制御装置が、該風速検出手段によって検出された風速に応じて該開き角を制御するようにしてもよい(請求項7)。かかる構成によれば、風速に応じて分割面を開き、地表風を偏向器の後方へ逃がして風洞に誘導する風量を調整できる。
【0019】
また、上記風力発電用の垂直風洞装置において、前記偏向器の前記誘導面に開閉窓を設け、該開閉窓の開口面積を調整することにより前記風洞内に誘導する風量を調整するようにしてもよい(請求項8)。さらに、前記風洞の下端開口近傍又は/及び 風洞内の風速を検出する風速検出手段と、前記開閉窓の開口面積を制御する開閉制御装置とを備え、該開閉制御装置が、該風速検出手段によって検出された風速に応じて該開口面積を制御するようにしてもよい(請求項9)。かかる構成によれば、風速に応じて開閉窓の開口面積を調整し、地表風を偏向器の後方へ逃がして風洞に誘導する風量を微調整できる。
【0020】
また、上記課題を解決するために、この出願発明に係る風力エネルギー誘導方法は、内部に発電用風車を設けるための垂直に立設された筒状の風洞内に、地表風のエネルギーを誘導する風力エネルギー誘導方法であって、突き当たる地表風を上方に偏向せしめる誘導面を有する偏向器で、地表風を該風洞の下端開口から該風洞内に誘導する方法である(請求項10)。かかる方法によれば、誘導面によって風洞内部に誘導された風力エネルギーで風洞内の風車を回転させることができる。風車は風洞内で下向きに固定したままで、常に風に正対する。
【0021】
また、上記風力エネルギー誘導方法において、前記風洞の前記発電用風車を設ける位置にくびれ部を形成し、該くびれ部の位置で、該風洞内に取り込んだ地表風の風力エネルギーを濃集するようにしてもよい(請求項11)。かかる方法によれば、風洞内のくびれ部で風力エネルギーが濃集される。よって地表風のエネルギー密度が希薄でも風車を回転させて発電させることができる。
【0022】
また、上記風力エネルギー誘導方法において、前記偏向器を前記風洞の中心軸を旋回中心として旋回可能に設け、地表風の風向きに応じて該偏向器を旋回させるようにしてもよい(請求項12)。かかる方法によれば、地表風の向きに応じて誘導面を地表風に対向させることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本願発明の一実施形態を説明する。図1は本願発明に係る垂直風洞装置Aの斜観図、図2はその正面図、図3はその側面図である。また、図4、図5、図6はそれぞれ図2のL−L線矢視断面図、M−M線矢視断面図、N−N線矢視断面図である。図中の矢印Kは、地表風の風向きを示す。
【0024】
垂直風洞装置Aは、主に、基底面Bたる地上面に垂直に立設された筒状の風洞1と、風洞1の下方に設けられた偏向器2とで構成されている。
【0025】
風洞1は、パネル構造で構成されている。すなわち、6本の鉄柱hを立設し、鉄柱hの間に規格化された大きさのパネルをはめこんでパネル壁1aを形成することにより構成されている。パネル構造としたのは風洞1を安価に建設するためである。パネル構造を採用したため、風洞1の横断面形状は6角形となっているが、風洞1の機能を奏するためにはその横断面形状を特に多角形とする必要はなく、例えば円形であってもよい。風洞1の寸法は、図2に記載されている通りである。風洞1の下端開口1cから上端開口1dまでの長さは42mである。下端開口1cは基底面Bたる地上面から約17mの高さに位置しているので、上端開口1dは基底面Bから約59mの高さ位置にある。
【0026】
風洞1はその高さ方向の中間部にくびれ部1bが形成されている。このくびれ部1bは下端開口1cから25mの位置に形成されており、その内側には発電用風車たるローターRが取り付けられている。このローターRは図示しない発電機に連結されている。ローターRは直径12.9mであり、例えば図14に示すローター101aに比べて非常に小型である。風洞1の下端開口1cの面積(Ac)は約400m2であり、くびれ部1bの部分の断面積(Ab)に対する比(λ=Ac/Ab)は、約3である。風洞1の下方には偏向器2が設けられている。
【0027】
図7は偏向器2の斜観図であり、図8はその平面図である。図9は、偏向器2を構成する4つの構成部材21、22、23、24の斜観図である。偏向器2の形状は、平面視において略半円形であり、円弧状に湾曲した縦断面を有する外殻部2aを有する。この外殻部2aの内側の空間は風室として機能するのであるが、ここには複数のフィンfが並設されている。外殻部2aの内側面2bは、地表風を上方に偏向せしめて風洞1の下端開口1cから風洞1内に誘導する誘導面として機能する。
【0028】
基底面Bには環状のリングレール3が敷設されている。そして、偏向器2の下にはローラが取り付けられておりこのローラがリングレール3上に載っている。そして、偏向器2は旋回中心軸4を中心としてリングレール3上を旋回できるように構成されている。この旋回中心軸4は風洞1の中心軸に一致している。偏向器2は分割構造になっており、旋回中心軸4から外方へ向かう分割面S1、S2、S3によって4つの構成部材21、22、23、24に分割される。各分割面S1、S2、S3の開き角は自由に調整できるようになっている。構成部材22、23には開閉窓wが形成されている。この開閉窓wは、開閉度合いによってその開口面積を調整できるように構成されている。
【0029】
図10は、分割面S2を開いた状態の偏向器2の斜観図であり、図11はその平面図である。このように分割構造を採用すると、後述するように風洞1へ誘導する風量の調整に資するだけでなく、分割して輸送できるという点でも都合がよい。
【0030】
図12は、垂直風洞装置Aの制御系統と電力系統とを示すブロック図である。制御信号の流れは実線で、電力の流れは点線で示されている。垂直風洞装置Aは地表風の風向きを検出する風向検出手段たる風向検出部31を備えている。また、風速を検出する風速検出手段たる風速検出部32を備えている。風速検出部32は、下端開口1cの風速と風洞1内のローターRの上流側の風速とを検出している。これら検出部31、32からの検出信号が制御回路30に送出される。制御回路30はこれらの検出信号に基づいて、旋回制御装置33や分割制御装置34や開閉制御装置35に制御信号を送出する。この信号に基づいて、旋回制御装置33は偏向器2の旋回角度を制御し、分割制御装置34は偏向器2の分割面S1、S2、S3の開き角を制御し、開閉制御装置35は開閉窓wの開口面積を制御する。
【0031】
発電機41はローターRに連結されており、ここで発生した電力は電圧調整部42で電圧が調整されて送電系統43に送出されるとともに、電源調整部40に送出される。電源調整部40は受電系統44からも電力供給を受けている。電源調整部40は、制御回路30、風向検出部31、風速検出部32、旋回制御装置33、分割制御装置34、開閉制御装置35にその動作に必要となる電力を供給している。ローターRが回転して発電機41が十分な電力を発生しているときは電源調整部40から出力される電力は電圧調整部42からの電力でまかなわれ、ローターRが十分に回転せず発電機41が十分な電力を発生できないときは電源調整部40から出力される電力は受電系統44からの電力でまかなわれる。
【0032】
垂直風洞装置Aは、概略、以上のように構成されている。以下にこの垂直風洞装置Aの作用を説明する。制御回路30は、地表風の風向きを検知して、図1、図7のように、偏向器2の誘導面2bが地表風に対面するように偏向器2を旋回させる。誘導面2bに突き当たった地表風は、誘導面2bによって上方に偏向され、風洞1の下端開口1cから風洞1内に取り込まれる。そしてその風力エネルギーはくびれ部1bの部分で濃集されて、ローターRを回転させる。風洞1内では風の方向は常に上向きになる。よって、ローターRは風洞1内で下向きのまま固定されているのであるが常に風に正対する。くびれ部1bに生じる風力エネルギー密度の増加は、下端開口1cの開口面積Acとくびれ部1bの断面積Abの比(λ)の3乗に比例する。くびれ部1bに生じた高エネルギー密度流の中でローターRの回転は促進されるので、ローターRとしては比較的小型のものを採用できる。このことは発電コストの低減に繋がる。
【0033】
一方、くびれ部1bで風力エネルギー密度を増加させると、それに伴って圧力降下を生じるために、λが大きいと充分な風量を維持できなくなる。これを防止するために上端開口1dの高さ位置を高めて、大気圧傾斜によって上端開口1dでの圧力降下を得ている。この垂直風洞装置AのローターRは定格風速12m/sで1.2MWの定格出力が得られるものであるが、定格運転時において、くびれ部1bでの圧力低下量は取り込み口たる下端開口1cでの圧力に比べて0.2〜0.3%である。これを大気圧傾斜で補うようにするためには、下端開口1cから上端開口1dまでの長さが約25m以上あればよいのであるが、本実施形態ではその長さが42mである。上端開口1dは地表境界層の外に出ており、煙突効果を有効に得ることができるので、くびれ部1bを通過して上端開口1dから空気流が排出されるまでのエネルギー損を大気圧傾斜で補うに十分である。このようにして風洞1内を通過する風量が維持される。さらに、くびれ部1bから上端開口1dまでは徐々に断面積が拡大しているので、ロ−ターRを通過した空気流は、拡散効果によって圧力回復が促進される。このように風洞1内の圧力低下を補うに十分な高さに設計しても、なお、図14の風力発電装置に比べると小型である。
【0034】
ローターRによる発電の効率化のためには、運転状態を定格運転状態に近づけ、その状態を維持することが望ましい。そのために、この垂直風洞装置Aは、種々の調整手段を備えている。かかる調整手段の一つとして、偏向器2を旋回制御する旋回制御装置33がある。例えば、地表風のエネルギーを最も有効に利用するために、制御回路30は地表風の風向を検知して誘導面2bが地表風に対向するように偏向器2の旋回角度を設定する。よって地表風の風向に対して全方位で対応可能であり、風速が弱くても、このエネルギーを最大限に利用できる。また別の調整手段として、分割制御装置34がある。例えば、風速が強すぎるときは、制御回路30は、分割面S1、S2、S3を開いて地表風を偏向器2の後方へ逃がし、風洞1内に誘導する風量を制限する。分割面S1、S2、S3の開き角は独立して調整できる。さらに別の調整手段として、開閉制御装置35がある。制御回路30は、開閉窓wの開口面積を調整することにより、偏向器2の後方へ逃がす風量を微妙に調整できる。つまり、風洞1内に誘導する風量の微調整が可能となる。
【0035】
このように、ローターRを定格運転するための調整手段が設けられているので、ローターRとしては固定ピッチのものを使用すれば十分である。ローターのピッチ変更機構や制動装置が不要となると、発電コストの低減にも繋がる。
【0036】
図13は、風洞1内に地表風が誘導されないようにして、垂直風洞装置Aを保護する状態を示している。図13中の矢印Kは、地表風の風向きを示す。暴風のように地表風が強すぎるときに、風洞1内に地表風を誘導するとローターRの過回転を招き、装置が破損する恐れがある。また、風洞1内に異物が突入する可能性もある。よって、地表風の風速が強すぎるときは、制御回路30は旋回制御装置33を制御して、図13のように偏向器2の誘導面2bが地表風の下流を向くようにするのである。このような状態に制御できるので、強風圧回避機構は不要となり、ひいては発電コストの低減に繋がる。
【0037】
また、垂直風洞装置AはローターRを風洞1内に設置するので、ローターRの発する音が外部に漏れにくい。また、後流の乱れの問題も生じない。さらに、仮に風洞1内に異物が突入してローターRが破損しても、風洞1がその破片の飛散を防止するので、安全である。
【0038】
以上のように、垂直風洞装置Aによると、弱い自然風でも有効利用できるので設置場所の自由度が上がり、多数の地点での風力発電が可能となる。特にわが国のように比較的年間平均風速が低い地勢でも、全国的に普及できるので、年間の発電量を増やすことが期待できる。また、石油系火力発電の一部代替として地球温暖化対策としての効果も期待でき、より安価な電力供給の可能性を秘めている。 以上、本願発明の一実施形態を説明した。上記実施形態では、垂直風洞装置Aの基底面Bを地表面としたが、地表面よりも高い位置を基底面として垂直風洞装置Aを構成することもできる。また、上記実施形態では縦断面が円弧状の外殻部2aの内側面2bが誘導面となっているので誘導面は円弧状の湾曲面になっているが、誘導面は地表風を上方へ偏向させることができるような形状であればどのような形状でもよい。例えば、平面状の傾斜面であってもよい。
【0039】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したような形態で実施され、以下に記載されるような効果を奏する。
【0040】
(1)風洞内ではローターが常に風に正対するので、地表風の方位に応じてローターや発電機を旋回させる必要がない。よって、構造が簡単になる。また、騒音が低減され、後流の乱れを生じさせることもない。また、ローターの破損事故が生じても、その破片が飛散されず安全である。
【0041】
(2)垂直に立設される風洞にくびれ部を形成すると、くびれ部の部分で風力エネルギーが濃集され、希薄な密度の地表風の風力エネルギーを有効に利用して発電することができる。特に強い地表風が吹かない地域で有効となる。
【0042】
(3)風洞の上端開口が、くびれ部による風洞内部の圧力降下以上の大気圧降下が得られる高さに位置するようにすると、煙突効果によって風洞内を通過する風量を維持できる。
【0043】
(4)旋回可能な偏向器を用いると、全方位の地表風の風力エネルギー流を効率よく上方に偏向して風力発電に利用できる。
【0044】
(5)偏向器を分割構造とし、または、開閉窓を設けるようにすると、風洞に誘導する風量を調節しやすくなる。ひいては、固定ピッチの風車の採用も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】垂直風洞装置の斜観図である。
【図2】垂直風洞装置の正面図である。
【図3】垂直風洞装置の側面図である。
【図4】図2のL−L線矢視断面図である。
【図5】図2のM−M線矢視断面図である。
【図6】図2のN−N線矢視断面図である。
【図7】偏向器の斜観図である。
【図8】偏向器の平面図である。
【図9】偏向器の構成部材の斜観図である。
【図10】分割面を開いた状態の偏向器の斜観図である。
【図11】分割面を開いた状態の偏向器の平面図である。
【図12】垂直風洞装置の制御系統と電力系統とを示すブロック図である。
【図13】風洞内に地表風が誘導されないようにして垂直風洞装置を保護する状態の、偏光器の斜観図である。
【図14】欧米諸国で実証的に行われている風力発電装置の正面図である。
【符号の説明】
A 垂直風洞装置
B 基底面
R ローター
1 風洞
h 鉄柱
1a パネル壁
1b くびれ部
1c 下端開口
1d 上端開口
2 偏向器
w 開閉窓
2a 外殻部
2b 誘導面
21,22,23,24 構成部材
S1,S2,S3 分割面
3 リングレール
4 旋回中心軸
30 制御回路
31 風向検出部
32 風速検出部
33 旋回制御装置
34 分割制御装置
35 開閉制御装置
40 電源調整部
41 発電機
42 電圧調整部
43 送電系統
44 受電系統
Claims (11)
- 内部に発電用風車を設けるための垂直に立設された筒状の風洞と、突き当たる地表風を誘導面で上方に偏向せしめて該風洞の下端開口から該風洞内に誘導する偏向器とを備え、前記偏向器が分割面によって複数の構成部材に分割されており、該分割面の開き角を調整することにより前記風洞内に誘導する風量を調整するようにした、風力発電用の垂直風洞装置。
- 前記風洞の下端開口近傍又は/及び風洞内の風速を検出する風速検出手段と、前記分割面の開き角を制御する分割制御装置とを備え、該分割制御装置は、該風速検出手段によって検出された風速に応じて該開き角を制御する、請求項1記載の風力発電用の垂直風洞装置。
- 前記風洞の前記発電用風車を設ける位置にくびれ部が形成された、請求項1又は2記載の風力発電用の垂直風洞装置。
- 前記風洞の上端開口が、前記くびれ部による風洞内部の圧力降下以上の大気圧降下が得られる高さに位置する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の風力発電用の垂直風洞装置。
- 前記偏向器が前記風洞の中心軸を旋回中心として旋回可能に設けられた、請求項1〜4のいずれか1項に記載の風力発電用の垂直風洞装置。
- 地表風の風向きを検出する風向検出手段と、前記偏向器の旋回角度を制御する旋回制御装置とを備え、該旋回制御装置は、該風向検出手段によって検出された風向に応じて該偏向器の旋回角度を制御する、請求項5記載の風力発電用の垂直風洞装置。
- 前記偏向器の前記誘導面に開閉窓を設け、該開閉窓の開口面積を調整することにより前記風洞内に誘導する風量を調整するようにした、請求項1〜6のいずれか1項に記載の風力発電用の垂直風洞装置。
- 前記風洞の下端開口近傍又は/及び風洞内の風速を検出する風速検出手段と、前記開閉窓の開口面積を制御する開閉制御装置とを備え、該開閉制御装置は、該風速検出手段によって検出された風速に応じて該開口面積を制御する、請求項7記載の風力発電用の垂直風洞装置。
- 内部に発電用風車を設けるための垂直に立設された筒状の風洞内に、地表風のエネルギーを誘導する風力エネルギー誘導方法であって、突き当たる地表風を上方に偏向せしめる誘導面を有する偏向器で、地表風を該風洞の下端開口から該風洞内に誘導し、分割面によって複数の構成部材に分割された前記偏向器の該分割面の開き角を調整することにより前記風洞内に誘導する風量を調整する、風力エネルギー誘導方法。
- 前記風洞の前記発電用風車を設ける位置にくびれ部を形成し、該くびれ部の位置で、該風洞内に取り込んだ地表風の風力エネルギーを濃集する、請求項9記載の風力エネルギー誘導方法。
- 前記偏向器を前記風洞の中心軸を旋回中心として旋回可能に設け、地表風の風向きに応じて該偏向器を旋回させる、請求項9又は10記載の風力エネルギー誘導方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP15134398A JP4074707B2 (ja) | 1998-06-01 | 1998-06-01 | 風力発電用の垂直風洞装置および風力エネルギー誘導方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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