JP4073295B2 - 同期通信システムの通信タイミング制御方法及び通信モジュール - Google Patents
同期通信システムの通信タイミング制御方法及び通信モジュール Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、時分割で送受信を行ないつつ、同期を維持して通信を行なう同期通信システムに関し、より詳細にはその通信タイミングを強制的に変更するための、またそれによってネットワーク間の同期をとるための制御方法に関する。また本発明はそのような通信システムに使用される通信モジュールに関する。
【0002】
【従来の技術】
たとえばBluetooth 等の通信規格においては、通信モジュールはスロットと称される所定の時間的長さを単位とする通信期間毎に送受信の役割が決定される。通信動作にはマスタ動作とスレーブ動作とが定義されている。マスタ動作を行なうマスタ通信モジュールは、マスタ通信モジュールによる送信が可能であると定義されている通信スロットにおいてスレーブ動作を行なう任意の通信モジュールに対して送信を行なう。一方、スレーブ動作を行なうスレーブ通信モジュールは、マスタ通信モジュールによって送信を許可された通信スロット、またはその他の仕様で定義された通信スロットにおいてマスタ通信モジュールに対して送信を行なう。
【0003】
図9は従来の同期通信システムの通信タイミング制御方法を示すタイミングチャートである。
【0004】
マスタ通信モジュールはスロット1及びスロット3において送信を行ない、スレーブ通信モジュールはスロット2及びスロット4において送信を行なう。マスタ通信モジュール及びスレーブ通信モジュールのいずれも、スロット境界位置を基準として送信を開始することになっているが、この送信開始タイミングには、図9においてw1で示す範囲の時間だけの若干の誤差が認められている。
【0005】
このため、受信動作としては、相手の送信開始タイミングがスロット境界位置の時点に対して前後に若干の誤差があったとしても正常にデータを受信できるように、スロット境界位置の時点に到達する以前から受信動作を開始し、しかもスロット境界位置到達時点において相手からの送信データが確認できない場合には更に一定期間にわたって受信動作を継続するように定められているのが一般的である。このような受信開始タイミングの誤差の許容範囲を図9にw2にて示している。w1とw2との時間的長さの関係には、上述した目的から必然的にw1<w2となる。
【0006】
ところで、マスタ通信モジュール及びスレーブ通信モジュールはそれぞれに備えられている発振器が発生するクロックに基づいて1スロットの時間を独立して計測しているため、それぞれの発振器の精度の差によりスロット境界位置の計測に若干の誤差が生じることはやむをえない。この誤差は時間の経過に伴って累積されてゆき、やがては相手の受信開始タイミング誤差の許容範囲であるw2を越えてしまう場合もあり得る。このような問題を回避するために、スレーブ通信モジュールにスロット境界位置を補正する以下のような機能を持たせている。
【0007】
即ち、マスタ通信モジュールは自身の発振器で計測したスロット境界位置を基準として送受信動作を行なうこととする。これに対してスレーブ通信モジュールは自身の発振器で計測したスロット境界位置を基準として受信動作を行なうが、マスタ通信モジュールからのデータを受信した際に、マスタ通信モジュールが送信を開始した時点を新たなスロット境界位置として補正する。そして、スレーブ通信モジュールは、補正した新たなスロット境界位置を基点とする計測によって次のスロット境界位置を定めるようにしている。
【0008】
以上のような従来のスレーブ通信モジュールによる補正動作について図9を参照して説明する。
【0009】
図9において、Tmはマスタ通信モジュールが自身で独自に計測している1スロットの期間を表し、Tsはスレーブ通信モジュールが自身で独自に計測している1スロットの期間を表す。また、TmとTsとの時間差をΔtとする。スロット境界位置1において、マスタ通信モジュールからデータの送信が開始され、このデータをスレーブ通信モジュールが受信する。この際のマスタ通信モジュールの送信開始タイミング(スロット境界位置1)からTs経過後の時点(本来はスロット境界位置2と一致する時点)においてスレーブ通信モジュールが送信を開始する。そして、その時点から更にTs経過後の時点(本来はスロット境界位置3と一致する時点)をスロット境界位置としてスレーブ動作モジュールが受信動作を行なう。
【0010】
しかしこの時点(本来のスロット境界位置3)においては、マスタ動作モジュールが自身で計測したスロット境界位置3とスレーブ動作モジュールが自身で計測したスロット境界位置との間には「Δt×2(=2Δt)」の誤差が既に生じている。従って、スレーブ動作モジュールは、マスタ動作モジュールのデータ送信開始タイミング(スロット境界位置3)を新たなスロット境界位置とすることにより、既に累積している「Δt×2」の誤差を解消してマスタ通信モジュールとの間で同期をとり直してデータの送受信を行なう。
【0011】
以上のような動作を行なう通信モジュールのシステム構成を図1のブロック図を参照して説明する。なお、この図1に示す通信モジュールは後述する本発明の通信モジュールとハードウェア的な構成は同一であるが、主として通信管理部18による処理手順が異なる。
【0012】
発振器11は、基本動作クロックを発生してこの通信モジュールの各部へ供給する。なお、各通信モジュールでの1スロットの期間は各通信モジュールに備えられているこの発振器11が発生するクロックにより各通信モジュールにおいて独立して計測される。
【0013】
RF部12は、RF制御部14の変復調のON/OFF及び変復調の周波数等の指示情報に従って、送信動作時には送受信データ制御部13から送られる送信シンボルの列を変調して電波として送出し、また受信動作時には外部から電波を受信して復調した受信シンボルの列を送受信データ制御部13へ出力する。ここで、シンボルとは、変復調される情報の単位を表しており、変復調の方式により1シンボル当たりで何ビット分の情報を表現できるかが決定される。
【0014】
送受信データ制御部13は、送信動作時には、送受信データ入出力部15から送信データを読み出し、送受信タイミング制御部17から与えられる送信開始タイミングの指示情報に従って、RF部12で変調すべきシンボルの列に送信データを変換してRF部12へ送信データを送出する。また、送受信データ制御部13は、受信動作時には、送受信タイミング制御部17から与えられる受信開始タイミング指示情報に従って、RF部12から出力される受信シンボルの列から通信規格に合致する受信データを取り出し、送受信データ入出力部15へ書き込む。
【0015】
RF制御部14は、送受信タイミング制御部17から与えられる送受信開始タイミング指示情報に従って、RF部12が変復調動作を開始し、また終了できるように制御する。
【0016】
送受信データ入出力部15は、送受信データを一時的に保存しておくバッファメモリを備えており、このバッファメモリを利用して、通信管理部18により読み書きされるデータ量と、送受信データ制御部13との間で読み書きされるデータ量との差を吸収する。
【0017】
受信タイミング検出部16は、通信相手側の送信モジュールがそれ自身のクロックで計測したスロット境界位置を基準として送信してくる送信信号のタイミングと、受信モジュールが自身のクロックで計測したスロット境界位置との時間差をデータを受信したタイミングから検出する。この検出結果は通信管理部18へ送られ、通信管理部18による送受信タイミング管理、即ちスロット境界位置の補正に使用される。
【0018】
送受信タイミング制御部17は、通信管理部18から与えられるスロット境界位置情報に従って、通信規格で規定されているタイミングで送受信動作及び変復調動作を行なえるように、RF制御部14及び送受信データ制御部13等の通信動作タイミングを制御するための制御信号を生成して出力する。
【0019】
通信管理部18は、以上の説明からも明らかなように、送受信データの内容の管理、通信状態の管理、スロット境界位置の管理等を行なう。
【0020】
以上のような機能を備えることにより、時分割で同期通信を行なうことが可能な通信モジュールが構成される。
【0021】
以上に説明したような通信モジュールにマスタ通信モジュール及びスレーブ通信モジュールとしての動作をさせることにより構成されるネットワークは以下のようになる。即ち、一つのマスタ通信モジュールがスロット境界位置を決定し、一つ以上のスレーブ通信モジュールがスロット境界位置を補正しつつマスタ通信モジュールとデータの送受信を行なう、というマスタ通信モジュールに他のスレーブ通信モジュールが同期した一つのネットワークを形成する。図10にそのようなネットワークの構成例のブロック図を示す。
【0022】
図10において、M11, M12, M13はネットワークNW11に参加している通信モジュールであり、M11はマスタ通信モジュールとしての動作を、M12及びM13はスレーブ通信モジュールとしての動作をそれぞれ行なっている。また、L11は、マスタ通信モジュールM11とスレーブ動作モジュールM12との間で同期が取れていてデータを送受信するための通信路が維持されている状態、即ちリンクが存在する状態をリンクとして示している。また、L12は同様にマスタ通信モジュールM11とスレーブ動作モジュールM13との間のリンクを示している。
【0023】
上述のネットワークNW11の他にもネットワーク構成としては、図10に示したネットワークNW12〜NW15のような構成が可能である。ネットワークNW12〜NW15それぞれにおいては、マスタ通信モジュール及びスレーブ通信モジュールが共に一つづつの構成であるが、通信モジュールM15及び通信モジュールM19は共に、2つのスロット境界位置を管理することにより2つのネットワークに参加している。
【0024】
たとえば、通信モジュールM15は、ネットワークNW12のマスタ通信モジュールM14とのリンクL13におけるスレーブ動作として一つのスロット境界位置を管理すると共に、ネットワークNW13のスレーブ通信モジュールM16とのリンクL14におけるマスタ通信モジュールとしての動作として更に一つのスロット境界位置を管理している。また、通信モジュールM19は、ネットワークNW14のマスタ通信モジュールM17とのリンクL15におけるスレーブ動作として一つのスロット境界位置を管理すると共に、ネットワークNW15のマスタ通信モジュールM18とのリンクL16におけるスレーブ動作として更に一つのスロット境界位置を管理している。
【0025】
ネットワークNW12〜NW15のような構成においては、通信モジュールM15にとっては、ネットワークNW12とネットワークNW13とにマスタ通信モジュールがそれぞれ存在し、両ネットワークNW12とNW13とのスロット境界位置は非同期に存在することになる。また、通信モジュールM19にとっても同様に、ネットワークNW14とネットワークNW15とのスロット境界位置は非同期に存在することになる。
【0026】
以上のような2つ以上のネットワークに参加するためには、通信の必要に応じて一定時間ごとに参加対象とするネットワークを切り換えるという手法が採られている。実際の切り換えに際しては、各ネットワークではスロット境界位置を独立して決定しているため、ネットワーク相互間では非同期であるので、ネットワーク切り換え後に新たに参加した方のネットワークのスロット境界位置の時点まで待機してから送受信を開始することになる。この待ち時間を無くすためには、各ネットワークのマスタ動作モジュールが決定するスロット境界位置を同期させればよいことになる。
【0027】
上述のような異なるネットワークにおいてそれぞれの送受信タイミングを決定するモジュール同士が同期をとるための手法としては、移動体通信システムにおいて採用されている技術が考えられる。移動体通信システムではBluetooth 規格と同様に、送受信タイミングをフレームと称される単位時間毎に区切ることによって送受信のタイミングを決定し、また各フレームの送信タイミングの決定は基地局が行なっている。従って、基地局毎にフレームのタイミングが異なることになり、各基地局が形成するネットワークは相互に非同期のフレームを持つことになる。このような問題を解決するための技術としてはたとえば特許文献1に開示されているように、移動体通信システムの基地局同士が相互のネットワークのフレームを同期させることも可能である。しかしこの特許文献1に開示されている技術では、基地局同士が識別番号を認識する必要があり、特定の基地局同士での同期のみが可能である。
【0028】
【特許文献1】
特開平7−46659号公報
【0029】
【発明が解決しようとする課題】
以上のような従来の技術によれば、あるネットワークが自身のスロット境界位置を必要に応じて他の任意のネットワークのスロット境界位置と同期させること、換言すればスロット境界位置を任意に変更するができない。従って、2つ以上のネットワークに参加しているモジュールは、参加対象とするネットワークを切り換える都度、新たに参加した方のネットワークのスロット境界位置において送信動作又は受信動作を行なう必要があるため、その時点に至るまで待機する必要があった。
【0030】
更に、一定周期で所定の通信スロットを利用するような同期データ転送を各ネットワークで行なう要求がある場合においては、たとえ同期データ転送開始時には各ネットワークにおける同期データ転送用通信スロットが同じタイミングに割り当てられていないとしても、時間の経過に伴って同期データ転送用通信スロットが同じ時点に要求されることになる。このため、このような場合にはいずれか片方のネットワークでのデータ転送を犠牲にするか、最初から片方のネットワークにおいてのみ、同期データ転送を許可する、というような制限を設けることが必要であった。
【0031】
以上のように、複数のネットワークのそれぞれのスロット境界位置が非同期であることは、通信スロット境界位置に至るまで待機する必要があるために、通信速度の向上が妨げられる原因となっており、また同期データ転送に制限が発生する原因にもなっていた。これらの問題を解決するためのネットワーク間同期手法として、上述した特許文献1に開示されているような移動体通信の基地局間の同期通信手法を適用することが考えられる。しかしこの手法においては、通信相手が登録されており、かつその相手がマスタ動作を担当している場合にのみ、自モジュールがマスタ動作を行なうネットワークのスロット境界位置を補正することのみが可能であり、この条件が整わない限りはやはり各ネットワークは同期を取ることは不可能である。
【0032】
本発明は以上のような問題点の解決のためになされたものであり、任意のネットワークに参加しているモジュールが各ネットワークでの役割には関係なしにネットワークのスロット境界位置を変更する制御を行なうことにより、各ネットワークにおいて同時に同期データの転送を可能にすること、また通信速度を向上しうる同期通信システムの通信タイミング制御方法及び通信モジュールを提供することを目的とする。
【0033】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る同期通信システムの通信タイミング制御方法は、所定の時間を一単位とする通信期間毎に送受信動作を行なう複数の通信モジュールでネットワークが構成されており、前記複数の通信モジュールは、それぞれのクロックによって規定される通信期間の境界をネットワーク全体の送受信タイミングの基準とするマスタ動作と、該マスタ動作により規定される通信期間の境界を検出して自モジュールのクロックによる送受信タイミングを補正することによりネットワーク全体の通信期間の境界に送受信タイミングを同期させるスレーブ動作とのいずれかの動作を行なうことによりネットワークの同期を維持する同期通信システムの通信タイミング制御方法において、前記複数の通信モジュール内のいずれかの通信モジュールが、通信相手の通信モジュールが受信可能な期間の範囲内であり、かつ通信期間の境界を基準とする本来の送信タイミングとは異なる任意のタイミングに送信タイミングを変更し、前記通信相手の通信モジュールが、変更された送信タイミングに応じた受信タイミングに従って通信期間の境界を変更することによりネットワークの同期を維持することを特徴とする。
【0034】
このような本発明の同期通信システムの通信タイミング制御方法では、複数の通信モジュールの内のいずれかの通信モジュールが、その通信相手の通信モジュールが受信可能な時間的範囲内であり、かつ通信期間の境界位置に基づく本来の送信タイミングとは異なる任意のタイミングに送信タイミングを変更することができる。これにより、ネットワーク内における通信期間の境界位置が補正されると共に、ネットワーク間においても同期をとることが可能になる。
【0035】
また本発明は上述の発明において、前記受信可能な期間の範囲は、前記通信期間の境界を中心として、前記ネットワークで用いられる通信規格で定められる許容範囲であることを特徴とする。
【0036】
このような本発明の同期通信システムの通信タイミング制御方法では、受信可能なタイミングの範囲が、通信期間の境界位置を中心としてネットワークで用いられる通信規格で定められる受信タイミングの許容範囲内であるため、確実に送信タイミングが変更される。
【0037】
また本発明は前述の発明において、送信タイミングを変更する通信モジュールが、通信期間の境界の変更の可否、又は通信期間の境界を変更する際の各通信モジュール間の優先順位を通信相手のモジュールと情報交換した上で送信タイミングを決定することを特徴とする。
【0038】
このような本発明の同期通信システムの通信タイミング制御方法では、好ましくは、マスタ通信動作又はスレーブ通信動作を行なうことで通信期間の境界位置を制御する通信モジュールが、通信相手の通信モジュールと交換した情報に基づいて制御の可否又は優先順位、または送信タイミングを決定するので、制御を行なうことが有効であるか否かを事前に確認した上で実際の制御が行なわれる。
【0039】
また本発明は前述の発明において、前記送信タイミングの変更は、送信タイミングを変更する通信モジュールが送信する送信シンボルの送信タイミングを基準として決定することを特徴とする。
【0040】
このような本発明の同期通信システムの通信タイミング制御方法では、送信タイミングの変更に際してシンボルタイミングを基準として送信タイミングを決定するので、通信相手の通信モジュールの受信特性には拘わらずに送信タイミングが決定される。
【0041】
また本発明は前述の発明において、前記送信タイミングの変更は、送信タイミングを変更する通信モジュールが複数の通信相手に対してマスタ動作とスレーブ動作とを時分割で行なっている場合は、自身のスレーブ動作で決定される通信期間の境界を基準として自身のマスタ動作時の送信タイミングを変更することを特徴とする。
【0042】
このような本発明の同期通信システムの通信タイミング制御方法では、通信モジュールが複数の通信相手に対してマスタ通信動作及びスレーブ通信動作を同時に又は時分割で行なっている場合に、自身のスレーブ動作で決定される通信期間の境界位置を基準にマスタ通信動作時の送信タイミングが決定される。
【0043】
更に本発明は前述の発明において、少なくとも一つが前記マスタ動作を行なっている複数のマスタ動作モジュールに対して時分割でスレーブ動作している通信モジュールが、前記複数のマスタ動作モジュールに対するスレーブ動作の内のいずれかによって決定される通信期間の境界を基準として、他のマスタ動作モジュールへの送信タイミングを決定することにより、前記複数のマスタ動作モジュールが属する異なるネットワーク間の同期をとることを特徴とする。
【0044】
このような本発明の同期通信システムの通信タイミング制御方法では、通信相手には複数のマスタ通信動作モジュールが存在し、かつそのマスタ通信動作モジュールの少なくとも一つが前述の発明のマスタ通信動作が可能であり、しかもマスタ通信動作モジュールに対してスレーブ通信動作を同時に又は時分割して行なっている場合は、スレーブ通信動作の内のいずれか一つによって決定される通信期間の境界位置を基準として、マスタ通信動作モジュールへの送信タイミングが決定される。
【0045】
また本発明は前述の発明において、スレーブ動作を行なっている通信モジュールと接続している状態でマスタ動作を行なう通信モジュールと新たに接続する通信モジュールが、前記スレーブ動作を行なっている通信モジュールとの間の通信期間の境界を基準として、前記マスタ動作を行なう通信モジュールとの間の新たな接続開始時の送受信タイミングを決定することを特徴とする。
【0046】
このような本発明の同期通信システムの通信タイミング制御方法では、前述の発明の通信期間の境界位置制御に際して、既にスレーブ動作を行なう通信相手が存在する状態でマスタ動作として新たに通信を開始する場合には、スレーブ通信動作における通信期間の境界位置を基準として、通信開始時の送受信タイミングが決定される。
【0047】
更に本発明は前述の発明において、複数の通信相手の通信モジュールに対してマスタ動作及びスレーブ動作を時分割して行なっている通信モジュールが、自身がマスタ動作モジュールとして動作している通信相手の通信モジュールとの接続を一旦解除し、自身がスレーブ動作モジュールとして動作している通信相手の通信モジュールとの間の通信期間の境界にマスタ動作モジュールとしての通信期間の境界を補正し、その後に前記接続を解除した通信モジュールとの接続を復帰させる場合に、マスタ動作している通信モジュールとしての通信期間の境界を任意のタイミングに制御することにより、前記接続を復帰した通信モジュールへの送信タイミングを決定することを特徴とする。
【0048】
このような本発明の同期通信システムの通信タイミング制御方法では、複数の通信相手に対してマスタ動作及びスレーブ動作を時分割して行なっている場合には、マスタ通信動作を一旦停止し、スレーブ通信動作における通信期間の境界位置にマスタ通信動作の通信期間の境界位置を合わせた後に再びマスタ通信動作の通信を開始することにより、マスタ動作における通信期間の境界位置を任意のタイミングに制御し、マスタ通信動作の際の送信タイミングが決定される。
【0049】
また本発明は前述の発明において、複数の通信モジュールがネットワークとして同期接続開始する以前に各通信モジュールが他の通信モジュールに関して通信期間の境界を示す情報が含まれる固有情報の問い合わせ及びその問い合わせに対する応答が可能な機能を有しており、各通信モジュールが接続を開始する時点での通信期間の境界を、前記固有情報に含まれる通信期間の境界を示す情報に基づいて、接続を開始する相手の通信モジュールのクロックによる通信期間の境界に一致させた状態で送受信タイミングを決定することを特徴とする。
【0050】
このような本発明では、たとえばBluetooth 規格においては、同期通信開始以前に通信モジュールの同期通信開始方法、通信モジュールのID番号等、固有情報の問い合わせ及び問い合わせに対する応答が可能な機能を有しているので、そのような固有情報の中に通信期間の境界位置を示す情報を含ませておくことにより、通信を開始する時の通信期間の境界位置を通信開始相手のクロックによる通信期間の境界位置に予め合わせた状態で通信開始時の送受信タイミングを決定する。
【0051】
更に本発明は、所定の時間を一単位とする通信期間毎に送受信動作を相互に行なうことにより同期を維持する通信モジュールにおいて、前記所定の時間を計時するためのクロックの発振回路と、該発振回路が発振するクロックに基づいて計時した前記所定の時間と、通信相手のモジュールから送信された信号の受信タイミングとの時間差を検出する受信タイミング検出部と、送受信タイミングを制御する通信管理部とを備え、前記通信管理部は、前記所定の時間によって規定されるべき該時間の計時の起点から、±α(α<w2)だけずれた時点を計時の起点に変更すると共に、変更した時点に同期して通信相手のモジュールへ送信する制御を行なうべくなしてあることを特徴とする。
但し、w2は受信タイミングの誤差の許容範囲
【0052】
このような本発明の通信モジュールはマスタ通信モジュールとして機能して、通信管理部が受信タイミング検出部が検出した時間差に基づいて、次に計時する所定の時間を通信相手のモジュールが計時した所定の時間に一致させるように制御することにより、前述のような各発明の通信期間の境界位置の変更の制御を行なう。
【0053】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
【0054】
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1として、スロット境界位置制御の方法について説明するが、これにはマスタ通信モジュール主導による制御と、スレーブ通信モジュール主導による制御とが可能であるので、最初にマスタ通信モジュール主導のスロット境界位置制御の方法を図2のタイミングチャートを参照して説明する。なお、マスタ通信モジュールの構成そのものは前述の図1に示した通信モジュールと同様である。
【0055】
図2において、Tmはマスタ通信モジュールが自身で生成しているクロックにより1スロットの時間を計測した長さを、Tsはスレーブ通信モジュールが自身で生成しているクロックにより1スロット分の時間を計測した長さをそれぞれ示している。各モジュールはそれぞれが生成しているクロックを基準として同一の長さの時間を計測してはいるものの、現実にはそれぞれのモジュールの発振器が生成するクロックの周波数の精度に差があるため、TmとTsとの間にはΔtの誤差が生じている。
【0056】
マスタ通信モジュール及びスレーブ通信モジュールは、上述のようにそれぞれが自身で生成しているクロックにより測定した1スロット長の時間を基準として基本的には従来例同様に通信規格に従った同期維持動作を行なう。即ち、送信側のモジュールは自身で計測したスロット境界位置を中心として、通信規格で定められたw1で示す許容誤差範囲内において送信を開始する。受信側は自身で計測したスロット境界位置を中心としてw2で示す許容誤差範囲内において送信側の送信開始位置の誤差を許容して受信動作を行なう。
【0057】
この場合、マスタ通信モジュールではTmの計測結果を基準として全ての送受信タイミングを決定しているが、スレーブ通信モジュールではTsの計測を基準として受信動作を行なうものの、その結果としてマスタ通信モジュールからデータを受信し、それの応答データを送信し、その次にマスタ通信モジュールからデータを受信した時点では、自身の基準のスロット境界位置に対して実際には「Δt×2(=2Δt)」だけずれていることを検出する。従って、スレーブ通信モジュール自身の計測結果に基づいて決定しているスロット境界位置から「Δt×2」だけずらせた時点を新たなスロット境界位置として補正する。この補正された新たなスロット境界位置とスレーブ通信モジュール自身のクロックによる計測結果とから次の送信タイミング(スロット境界位置)、及び次の受信タイミング(スロット境界位置)を決定する。
【0058】
以上のような同期維持動作を行なうことが可能なスレーブ通信モジュールに対して、マスタ通信モジュール側でスロット境界位置をずらせて補正するという本発明の実施の形態1のマスタ通信モジュール主導のスロット境界位置制御方法の実行の際のマスタ通信モジュールの動作を図2に示すタイミングチャートのスロット境界位置3付近のタイミングを参照して説明する。
【0059】
本来、マスタ通信モジュールはスロット境界位置3において送信を開始することになっているが、マスタ通信モジュール主導のスロット境界位置制御方法においては、スレーブ通信モジュールではなくマスタ通信モジュールがスロット境界位置をずらせることにより、スロット境界位置を制御する。
【0060】
具体的には、マスタ通信モジュールはスロット境界位置3を中心として所望の時間幅αだけタイミングをずらせて送信を開始する。この時間幅αの選択範囲は、スロット境界位置3を中心としたw2の期間内であること、即ちスレーブ通信モジュールがデータ受信タイミングのずれを許容している期間内であることが条件である。この条件を満たせば、スレーブ通信モジュールがデータを受信することが可能であるため、マスタ通信モジュールが送信開始タイミングをずらす方向はスロット境界位置3に対して+側(時間的に遅れる側)又は−側(時間的に遡る側)のいずれの方向であってもよい。但し、この時間幅αの決定においては、マスタ通信モジュールからスレーブ通信モジュールへの送信頻度を考慮する必要がある。以下にその理由を説明する。
【0061】
マスタ通信モジュールとスレーブ通信モジュールとが交互に送信する状況では、マスタ通信モジュールが自身で計測するスロット境界位置とスレーブ通信モジュールが自身で計測するスロット境界位置との差は最大で「Δt×2」である。このため、「α<w2−Δt×2」であればよい。しかし、マスタ通信モジュールが送信を行なわないスロットが連続した場合、マスタ通信モジュール自身とスレーブ通信モジュール自身とがそれぞれ計測しているスロット境界位置の差、マスタ通信モジュールが送信を行なわないスロットが連続したスロット数に比例して蓄積される。このため、マスタ通信モジュールが連続して送信しなかったスロットの連続回数をNとして、「α<w2−Δt×2×(N+1)」の範囲内で決定する必要がある。
【0062】
図2は上述のNが「N=0」の場合であり、マスタ通信モジュールが自身で計測したスロット境界位置とスレーブ通信モジュールが自身で計測したスロット境界位置とのずれは「Δt×2×(0+1)=Δt×2(=2Δt)」である。
【0063】
以下、図2において「N=0」であることを前提に説明する。スレーブ通信モジュールは、マスタ通信モジュールから通常のデータを受信した場合には、スロット境界位置3に対して「Δt×2」のずれを検出するはずである。しかし、上述したように、マスタ通信モジュールはスロット境界位置3に対して時間幅αだけ送信開始タイミングをずらせて送信を行なっているため、スレーブ通信モジュールはスロット境界位置3に対して「Δt×2+α(又は、Δt×2−α)」のずれを検出する。この検出結果から、スレーブ通信モジュールはスロット境界位置を補正するために次の送信をスロット境界位置3から「Ts+α(又は、Ts−α)」経過後のタイミングで行なう。
【0064】
このスレーブ通信モジュールからの送信に対してマスタ通信モジュールは、スロット境界位置3から「Tm+α(又は、Tm−α)」経過時点を次のスロット境界位置4として受信動作を行なう。これにより、マスタ通信モジュールは通信規格通りの受信動作であるスロット境界位置2における受信動作の場合と同様に、スロット境界位置4においてスレーブ通信モジュールからのデータを正常に受信することができる。
【0065】
スロット境界位置3及びスロット境界位置4における以上のような動作の結果、マスタ通信モジュールのスロット境界位置はネットワーク全体のスロット境界位置に対して時間幅αだけずれたことになる。換言すれば、マスタ通信モジュールは、ネットワーク全体のスロット境界位置を所望の時間幅αだけずらす制御を行なったことになる。
【0066】
なお、図2に示されている例では、マスタ通信モジュールはスロット境界位置3においてスロット境界位置2から「Tm+α」の時点を新たな、即ち補正後のスロット境界位置3としている。
【0067】
以上の図2を参照して説明したようなマスタ通信モジュール主導のスロット境界位置制御方法の実行の際のマスタ通信モジュールの動作手順についてそれを示す図3のフローチャート及び図2のタイミングチャートを参照して説明する。なお、マスタ通信モジュールの構成そのものは図1に示されている従来の通信モジュールの構成と同様である。
【0068】
まず、通信管理部18はスロット境界位置制御を行なう必要があるか否かを判断する(ステップS11)。スロット境界位置制御を行なう必要があると判断された場合(ステップS11でYES)、通信管理部18は「前回の受信用スロットの先頭のスロット境界位置+Tm±α」の時点を次のスロット境界位置として決定する(ステップS12)。一方、スロット境界位置を制御する必要がない場合は(ステップS11でNO)、通信管理部18は「前回の受信用スロットの先頭のスロット境界位置+Tm」の時点を次のスロット境界位置とする(ステップS13)。
【0069】
たとえば、マスタ通信モジュールにおいて図2に示されているスロット境界位置3を制御する必要があると判断された場合、通信管理部18は、前回の受信用スロットであったスロット2の先頭のスロット境界位置2の時点から「Tm±α」経過した時点を次の補正されたスロット境界位置3として決定する。また、図2に示されているスロット境界位置3を制御する必要はないと判断された場合、通信管理部18は前回の受信用スロットであったスロット2の先頭のスロット境界位置2の時点から「Tm」経過した時点を次のスロット境界位置3として決定する。なお、この場合のスロット境界位置3は補正されていないことになる。
【0070】
なお、ステップS13の処理が行なわれた場合、通信管理部18は次に送信データの有無を判断する(ステップS14)。この結果、送信データがある場合には(ステップS14でYES)、必ず後述するステップS15へ処理が進められる。しかし、送信データがない場合は(ステップS14でNO)、通信管理部18はステップS15へ処理を進めてもよいし、ステップS11へ処理を戻してもよい。
【0071】
いずれにしろ、ステップS15へ処理が進められると、通信管理部18は送受信データ入出力部15へ送信データを書き込む(ステップS15)。但し、送信データがない場合は、通信管理部18はステップS15において空の送信データを送受信データ入出力部15へ書き込む。
【0072】
以下、スロット境界開始位置3が補正された場合、特に図2に示されているように、スロット境界位置3が「+α」だけ、即ちαだけ遅れる方向へ補正された場合について説明する。
【0073】
通信管理部18は、先のステップS12で決定した、即ち補正した次にマスタ通信モジュールとしての動作として送信を行なうスロット境界位置(この場合は補正されたスロット境界位置3)を送受信タイミング制御部17に通知して送信準備を開始するように指示する(ステップS16)。次に、送受信タイミング制御部17は、RF部12の起動が送信スロット境界位置(補正されたスロット境界位置3)の時点に間に合うように、RF制御部14に対して送信準備の指示をする(ステップS17)。
【0074】
次に、送受信タイミング制御部17は、RF制御部14に対しては変調開始を指示し、送受信データ制御部13に対しては送信シンボルの送出開始を指示する。これにより、RF制御部14はRF部12が変調動作を行なうよう制御する。また、送受信データ制御部13は送受信データ入出力部15から送信データを読み出してRF部12へ送信シンボルを送出する。また、RF部12は送受信データ制御部13から受け取った送信シンボルをRF制御部14からの指示に従って変調し、電波として送出する。以上により、データの送信が行なわれる(ステップS18)。
【0075】
この図3のステップS18における送信が終了した後に、通信管理部18がスロット境界位置情報を基準として「前回のスロット境界位置+Tm−w2/2」の時点を受信開始位置として決定する(ステップS19)。具体的には、この場合は補正された前回のスロット境界位置3を基点としてTm経過後の時点から「w2/2」だけ遡った時点、即ちスロット境界位置4から「w2/2」だけ遡った時点を受信開始位置とする。次に、通信管理部18は、送受信タイミング制御部17に対して、ステップS18で決定された受信を開始するタイミングを通知し、受信の準備を開始させるように指示する(ステップS20)。
【0076】
この通信管理部18から送受信タイミング制御部17への指示により、送受信タイミング制御部17が、RF部12の起動が受信開始位置に間に合うように、RF制御部14に対して受信準備を指示する(ステップS21)。次に、送受信タイミング制御部17が、RF制御部14に対しては復調開始を指示し、送受信データ制御部13に対しては受信シンボルの取り込み開始を指示する。これにより、RF制御部14はRF部12が復調動作を行なうように制御する。また、送受信データ制御部13はRF部12から受信シンボルを受け取り、それが通信規格で定義されたシンボル列である場合は送受信データ入出力部15へ受信データを書き込む。また、受信タイミング検出部16がスロット境界位置と受信データの先頭位置とのずれを検出し、通信管理部18へ通知する。更に、RF部12はRF制御部14の指示によって復調動作を行ない、復調後の受信シンボルを送受信データ制御部13へ送出する。以上により、データの受信が行なわれる(ステップS22)。
【0077】
次に、通信管理部18が送受信データ入出力部15内の受信データの有無を判断する(ステップS23)。送受信データ入出力部15内に受信データがある場合は(ステップS23でYES)、通信管理部18は受信データを読み出す(ステップS24)。一方、送受信データ入出力部15内に受信データがない場合は(ステップS23でNO)、ステップS11へ処理が戻され、上述した一連の処理が反復される。
【0078】
なお、スロット境界開始位置3が補正されていない場合は、上述の補正されたスロット境界位置3を基準とした処理に代えて、補正されていないスロット境界位置3を基準として同様の処理が行なわれる。具体的には、図2に示されている補正されたスロット境界位置3以降の処理状態がαだけ前倒しされて、換言すれば補正されないスロット境界位置3を基準として実行される。
【0079】
更に、以上のような本発明の実施の形態1のマスタ通信モジュール主導のスロット境界位置制御方法の実行に際しては、スレーブ通信モジュールは前述した従来技術のスレーブ通信モジュールと同様の動作を行なえばよい。
【0080】
次に、本発明の実施の形態1のスレーブ通信モジュール主導のスロット境界位置制御の方法を図4のタイミングチャートを参照して説明する。
【0081】
スレーブ通信モジュールは、スロット境界位置1におけるマスタ通信モジュールからの送信データの受信動作によってスロット境界位置を補正し、その時点から時間Ts後の時点を通信規格通りの送信開始時点とする。一方、マスタ通信モジュールは、スレーブ通信モジュールからの送信データの開始位置がスロット境界位置2(スロット境界位置1から時間Tm経過後の時点)を中心として長さw2の時間範囲内でずれることを許容するよう通信規格で規定されている。従って、この範囲内においてスレーブ通信モジュールがデータ送信を開始すれば、マスタ通信モジュールはそのデータを受信することが可能である。
【0082】
スレーブ通信モジュールは、マスタ通信モジュールのこのような動作を利用して、スロット境界位置1から時間Ts後の時点を中心として許容時間幅「w2−w1」以内の所望の時点において送信を開始する。ここで、許容時間幅を「w2−w1」としたのは、時間w1が時間「Δt×2」のずれを考慮して定義されており、「w1>Δt×2」を満たす必要があるためである。
【0083】
このようなスレーブ通信モジュールからのデータ送信の開始時点に対して、マスタ通信モジュールはスロット境界位置2の時点からのずれαを検出し、このαだけずれた時点を新たな基準(補正されたスロット境界位置2)とし、この時点から時間Tm後の時点を次のスロット境界位置3とする。このスロット境界位置3を基準として、マスタ通信モジュールは次の送信動作を開始する。なお、このスロット境界位置3を基準としてマスタ通信モジュールが次の送信動作を開始すると、スレーブ通信モジュール側ではそれに対応してスロット境界位置3を補正することが可能である。
【0084】
スロット境界位置3付近におけるスレーブ通信モジュールの受信動作は、図4に示されているように通常の動作通りに、スロット境界位置1から時間「Ts×2(=2Ts)」経過後の時点を基準として行なってもよいし、マスタ通信モジュールで決定されたスロット境界位置3を基準としてもよい。その理由は、本発明では、マスタ通信モジュールはスロット境界位置3を基準として送信を開始し、本発明に対応していないマスタ通信モジュールはスロット境界位置1から時間Tm×2経過後の時点を基準として送信開始することになるが、「Δt×2<w1」であるため、各マスタ通信モジュールとしての動作時の送信タイミングの差は最大でも「(Δt×2+w2−w1)/2<w2/2」であり、いずれを基準としてしてもスレーブ通信モジュールの受信許容時間の範囲内になるためである。
【0085】
いずれにしても、この受信動作によってスレーブ通信モジュールは再びマスタ通信モジュールからの送信タイミングに従ってスロット境界位置を補正する(マスタ通信モジュールで決定したスロット境界位置3に一致させる)。このため、マスタ通信モジュールが本発明のマスタ通信モジュールとして送信動作を行なう場合には、ネットワーク全体のスロット境界位置がずれることになる。
【0086】
以上の図4を参照して説明したようなスレーブ通信モジュール主導のスロット境界位置制御方法の実行の際のマスタ通信モジュール及びスレーブ通信モジュールそれぞれの動作手順を前述の図3及び図4と、スレーブ通信モジュールでの処理手順を示す図5のフローチャートを参照して説明する。なお、マスタ通信モジュール及びスレーブ通信モジュールの構成そのものは図1に示されている従来の通信モジュールと同様である。
【0087】
まず、マスタ通信モジュールの動作手順について説明するが、基本的には前述した図3のフローチャートに示したマスタ通信モジュール主導のスロット境界位置制御方法の場合と一点を除いて同一である。その相違点とは、図3のステップS11においてスロット境界位置制御を行なうか否かを通信管理部18が判断する際、及び図3のステップS12において次のスロット境界位置を決定する際に図3のステップS22で検出した受信タイミングのずれの情報を適用することである。このずれ幅の時間をdとすると、図3のステップS12での時間幅αを、図4のスレーブ通信モジュール側の送信タイミングのずれとして示されているαとは異なる値(以下、α’とする)、即ち「α’=d」としてもよいし、「α’<d」としてもよい。
【0088】
具体的には、図4のスロット制御位置2において、スレーブ通信モジュールでは時間幅αだけずれた時点で送信を開始しているが、これを受信したマスタ通信モジュール側では時間幅「α−Δt(=d=α’)」だけずれた時点を新たなスロット境界位置2(補正されたスロット境界位置2)として決定している。
【0089】
次に、スレーブ通信モジュールの動作手順を図5のフローチャート及び前述の図4のタイミングチャートを参照して説明する。なお、この場合のスレーブ通信モジュールのハードウェア的な構成そのものは図1に示した従来の通信モジュールと同一であるが、主として通信管理部18による処理手順が異なる。
【0090】
まず、通信管理部18がスロット境界位置情報を基準として受信開始タイミングを決定する(ステップS31)。具体的には、通信管理部18は、前回の送信用スロットの先頭のスロット境界位置+Ts−w2/2」の時点を受信開始位置として決定する。
【0091】
たとえば、スレーブ通信モジュールにおいて図4に示されているスロット境界位置3を制御する必要があると判断された場合、通信管理部18は、前回の受信用スロットであったスロット2の先頭のスロット境界位置2の時点から「Ts−w2/2」経過した時点を次の受信開始位置として決定する。
【0092】
次に、通信管理部18は送受信タイミング制御部17に対して、上述のステップS31で決定したスレーブ通信モジュールとして次に受信動作を開始するタイミングを通知し、受信準備を開始するように指示する(ステップS32)。この通知を受けて送受信タイミング制御部17は、RF部12の起動が受信開始タイミングに間に合うように、RF制御部14に対して受信準備を行なう(ステップS33)。
【0093】
次に、送受信タイミング制御部17が、RF制御部14に対しては復調開始を指示し、送受信データ制御部13に対しては受信シンボルの取り込み開始を指示する。これにより、受信が行なわれる(ステップS34)。具体的には、RF制御部14は、RF部12が復調動作を行なうように制御する。また、送受信データ制御部13は、RF部12から受信シンボルを受け取り、通信規格で定義されたシンボル列であれば送受信データ入出力部15に受信データを書き込む。またこの際、受信タイミング検出部16がスロット境界位置と受信データの先頭位置とのずれを検出し、通信管理部18に通知する。通信管理部18はこの情報に従って、マスタ通信モジュールの送信開始位置、即ちスロット境界位置が実際にはどの時点であったのかを判断し、自身が計測したスロット境界位置を補正する。また、RF部12はRF制御部14からの指示に従って復調動作を行ない、復調後の受信シンボルを送受信データ制御部13へ送出する。
【0094】
次に、通信管理部18は送受信データ入出力部15内の受信データの有無を判断し(ステップS35)、受信データがある場合にのみ(ステップS35でYES)、受信データを読み出す(ステップS36)。
【0095】
次に、通信管理部18は上述の受信データにより、次の送信が許可されているか否かを判断する(ステップS37)。次の送信が許可されていない場合は(ステップS37でNO)、送信用スロットでは何もせずに時間の経過を待って(ステップS46)、ステップS31へ処理が戻される。一方、次の送信が許可されている場合は(ステップS37でYES)、通信管理部18がスロット境界位置制御の必要性を判断する(ステップS38)。
【0096】
ここで、スロット境界位置を制御する必要があると判断された場合は(ステップS38でYES)、ステップS34で補正が行なわれた「前回のスロット境界位置+Ts±α」を次のスロット境界位置とする(ステップS39)。一方、スロット境界位置を制御する必要がないと判断された場合は(ステップS38でNO)、ステップS34で補正が行なわれた「前回のスロット境界位置+Ts」を次のスロット境界位置とする(ステップS40)。
【0097】
具体的には、スレーブ通信モジュール側においてスロット境界位置2の制御が必要であると判断された場合、図4に示されているように、前回のスロット境界位置であるスロット境界位置1から時間「Ts+α」経過した時点を新たなスロット境界位置2とし、この時点を送信開始時点の基準としている。
【0098】
なお、スロット境界開始位置3が補正されていない場合は、上述の補正されたスロット境界位置2を基準とした処理に代えて、補正されていないスロット境界位置2を基準として同様の処理が行なわれる。
【0099】
ステップS40での処理が行なわれた場合には、次に通信管理部18が送信データの有無を判断する(ステップS41)。ここで、送信データがある場合には(ステップS41でYES)、必ず後述するステップS42へ処理が進められるが、送信データがない場合には(ステップS41でNO)、ステップS42へ処理が進められてもよいし、ステップS46へ処理が進められてもよい。
【0100】
ステップS46へ処理が進められた場合には、送信スロットでは何も行なわれずに時間の経過を待ってステップS31へ処理が戻される。一方、ステップS42へ処理が進められた場合には、通信管理部18が送受信データ入出力部15に対して送信データの書き込みを行なう。但し、送信データがない場合は、空の送信データが書き込まれる。
【0101】
次に、通信管理部18は、送受信タイミング制御部17に対して、マスタ通信モジュールとしての送信動作を次に行なうスロット境界位置を通知し、送信準備開始を行なうように指示する(ステップS43)。
【0102】
次に、RF部12の起動が送信スロット境界位置に間に合うように、送受信タイミング制御部17がRF制御部14に対して送信準備の指示をする(ステップS44)。
【0103】
次に、送受信タイミング制御部17が、RF制御部14に対しては変調開始を指示し、送受信データ制御部13に対しては送信シンボルの送出を指示する(ステップS45)。これにより、RF制御部14はRF部12が変調動作を行なうよう制御する。また、送受信データ制御部13は送受信データ入出力部15から送信データを読み出してRF部12に送信シンボルを送出する。また、RF部12は送受信データ制御部13から受け取った送信シンボルをRF制御部14の指示によって変調し、電波として送出する。その後は再びステップS31へ処理が戻される。
【0104】
以上のような手順により、ネットワークの同期を維持した状態でスロット境界位置を一定の時点の範囲内で制御、換言すれば補正することが可能となる。
【0105】
(実施の形態2)
以上のように本発明の実施の形態1では、マスタ通信モジュール又はスレーブ通信モジュールにおいて自身の送信タイミングをずらすことでネットワークのスロット境界位置を時間幅α又はα’(但し、w2/2以下)だけ所望の位置にずらすことが可能であるが、そのようなスロット境界位置制御の可否又は優先順位をマスタ通信モジュールとスレーブ通信モジュールとの間で情報を交換することにより、いずれがスロット境界位置の制御を行なうかを決定することが望ましい。
【0106】
このような目的のため、実施の形態1に記載したような動作を行なうことが出来ない通信相手が存在するとの前提で、基本的にはマスタ通信モジュール主導のスロット境界位置制御が有効であるとする。この場合、スロット境界位置を制御しようとするマスタ通信モジュールは、送信開始位置をずらす制御を行なう前に、スロット境界位置を制御する旨を送信データ内に挿入して通信相手のスレーブ通信モジュールに対して予め通知する。
【0107】
その際のマスタ通信モジュールからスレーブ通信モジュールへの通知内容としてはたとえば、強制的に自身の、即ちマスタ通信モジュールによる制御が適用されるという内容、マスタ通信モジュール側で自身が制御を行なってもよいかをスレーブ通信モジュール側に確認する内容、等が可能である。そして、スレーブ通信モジュール側では、通信相手から通知された内容が上述のようなスロット位置制御を行なうことを確認する内容である場合には、それを認めるか、または拒否するか、のいずれかの内容を相手に対して通知するようにすればよい。
【0108】
このような情報の交換の結果によって、スロット境界位置に対して送信開始位置をずらすか否かを決定し、ずらせてもよい場合にのみ実施の形態1に記載したようなスロット位置制御を行なうようにする。
【0109】
(実施の形態3)
前述の実施の形態1に記載したような送信開始位置制御を行なう場合、シンボルタイミングを基準として送信タイミングを決定することが好ましい。以下、送信開始位置におけるシンボルの送受信のタイミングの詳細を示す図6のタイミングチャートを参照して具体的に説明する。
【0110】
図6(a) に示すように、通常、受信側の通信モジュールで受信したシンボルを復調する際には、一定の遅延時間「delay 」が発生する。また、1シンボルあたりの時間Tsymbol は通信方式の仕様で定義されており、一定である。従って、送信側の通信モジュールでは、期間Tsymbol 単位で送信シンボルを決定して送信する。しかし、図1に示す通信モジュールのRF部12の受信特性のために、受信側の通信モジュールにおいて確実に復調可能であるシンボルは期間Tsymbol の内の期間βの間のみであり、その他の期間における復調の結果が、送信されたデータと同じであるという保証はない。
【0111】
受信側の通信モジュールでの受信動作においてはこのような特性を考慮して、最も信頼性が高い復調結果が得られるタイミングである受信シンボルの中心タイミングを予想し、このタイミングを中心とする期間β内で受信シンボルを取り込むことにより受信結果の信頼性を向上させる必要がある。
【0112】
このような受信動作を行なっている通信モジュールに対して実施の形態1に記載のような制御により送信開始位置をずらす場合、図6(b) に示す送信タイミングのように、「Tsymbol ×N(Nは整数であり、Tsymbol ×Nが前述の送信タイミングの範囲を満たすものとする)」だけずらすようにする。この場合の受信モジュールでの復調は図6(b) に示す受信タイミングのようになり、復調のタイミングと受信シンボルの中心位置の予想タイミングとの関係が、送信開始基準タイミングで送信した場合と同一になるので、受信結果の信頼性が保証される。
【0113】
これに対して、図6(c) に示す送信タイミングのように、Tsymbol を考慮せずに送信タイミングを任意の期間Mだけずらした場合、図6(c) に示す受信タイミングのように、送信開始基準タイミングを基準として予想した受信シンボルの中心タイミングを用いると、受信シンボルの復調結果が送信側と一致している可能性が低いタイミングでシンボルを取り込んでしまうため、受信時の信頼性が低下してしまう。
【0114】
以上のことから、スロット境界位置を制御する側の通信モジュールは、受信モジュールのシンボルの中心タイミングの予想が有効になるように、1シンボルの期間Tsymbol を基準としてその整数倍の時間だけ送信開始タイミングをずらすようにすればよい。
【0115】
(実施の形態4)
次に、実施の形態1に記載のスロット境界位置の制御方法により送信開始位置をずらす場合のネットワーク間における動作について、図7に示すネットワークを例として説明する。
【0116】
図7はネットワークの一構成例を示すブロック図であり、M1〜M5は図1に示す構成を有し、上述したようなスロット境界位置の制御を行なう通信モジュールである。
【0117】
L1は、通信モジュールM1によるスロット境界位置の計測を基準として動作している通信モジュールM3との間のリンクである。このリンクL1では、通信モジュールM1がマスタ通信モジュールとしての動作を、通信モジュールM3が通信モジュールM1に対するスレーブ通信モジュールとしての動作をそれぞれ行なうことにより一つのネットワークNW1を形成している。
【0118】
L2はL1同様に、通信モジュールM2によるスロット境界位置の計測を基準として動作している通信モジュールM3との間のリンクである。このリンクL3では、通信モジュールM2がマスタ通信モジュールとしての動作を、通信モジュールM3が通信モジュールM2に対するスレーブ通信モジュールとしての動作をそれぞれ行なうことにより一つのネットワークNW2を形成している。
【0119】
L3及びL4は、通信モジュールM3によるスロット境界位置の計測を基準として動作しているリンクである。リンクL3では、通信モジュールM3がマスタ通信モジュールとしての動作を、通信モジュールM4が通信モジュールM3に対するスレーブ通信モジュールとしての動作をそれぞれ行ない、またリンクL4では、通信モジュールM3がマスタ通信モジュールとしての動作を、通信モジュールM5が通信モジュールM3に対するスレーブ通信モジュールとしての動作をそれぞれ行なうことにより、通信モジュールM3, M4及びM5により一つのネットワークNW3を形成している。
【0120】
以上のように図7に示されている例では、通信モジュールM3を供用する形で3つのネットワークNW1, NW2, NW3が形成されているが、これらの内のマスタ通信モジュールとしての動作及びスレーブ通信モジュールとしての動作を時分割で行なう通信モジュールM3を含む通信モジュールM1及びM3にて形成されるネットワークNW1と、通信モジュールM3, M4及びM5にて形成されるネットワークNW3との2つのネットワークに着目して説明する。
【0121】
図8はネットワークNW1及びNW3での送受信動作のタイミングを示したタイミングチャートであり、通信モジュールM3におけるリンク1, リンク3及びリンク4で等しく通信スロットを割り当てている状態を示している。
【0122】
本発明によるスロット境界位置制御方法を用いない場合には、通信モジュールM1により決定されるスロット境界位置(破線にて示す)と、通信モジュールM3により決定されるスロット境界位置との位置関係は時間の経過に伴って変化し続ける。このため、図8(a) のタイミングチャートに示すように、ネットワークNW1のスロット境界位置とネットワークNW3のスロット境界位置とが一致していることはほとんどない状態で通信が行なわれることになる。この図8(a) に示すタイミングチャートの場合、通信モジュールM3をネットワークNW1における動作からネットワークNW3における動作へ切り換えるとすると、ネットワークNW1におけるスロット境界位置とネットワークNW3におけるスロット境界位置との間の時差のために待ち時間sw1が必要になる。
【0123】
同様に、ネットワークNW3からネットワークNW1への切り換えにおいても、両者のスロット境界位置の時差のために待ち時間sw2が発生する。ここではネットワークNW1とネットワークNW3との切り換えについて説明したが、更にネットワークNW2をも加えて3個のネットワーク間での切り換えも可能である。このように、通信モジュールが参加対象とするネットワークが多くなるに伴って、ネットワーク切り換えの際に必要になる待ち時間が増加することになるが、本実施の形態においてはネットワークNW1とネットワークNW3の切り換えに着目して説明する。
【0124】
上述したsw1、sw2のような待ち時間が発生する場合において、本発明の送信タイミングを変更する制御を通信モジュールM3がマスタ通信モジュールとしての動作時に行なうことにより、図8(b) に示すタイミングチャートのような迅速な移行及び動作タイミングの維持が可能である。
【0125】
即ち、通信モジュールM3におけるネットワークの切り換えのためのスロット境界位置の時差調整時間であるsw1及びsw2の内の短い方の時間をより短くする方向へ送信開始タイミングを変更する。図8(a) に示す例の場合、sw1の方が短いため、図2における時間幅αが負の値をとる方向へ送信開始タイミングを変更すれば、前述した実施の形態1における制限「α<w2−Δt×2」にあるように一定の範囲内でsw1が短縮される。スロット境界位置のずれが存在する限り、sw1を短くする方向の制御を行なえば、図8(b) に示すような状態の動作タイミングになる。
【0126】
しかし、一旦図8(b) に示すような状態の動作タイミングになったとしても、時間の経過に伴って必ず通信モジュールM3のスレーブ通信モジュールとしての動作によるネットワークNW1への同期維持動作により、ネットワークNW1とネットワークNW3とのスロット境界位置にずれが発生する。このずれはクロックの精度に起因するずれであって本来の規格の想定内のずれであるため、一回のスロット境界位置制御動作によって補正して再び図8(b) に示す状態の動作タイミングに戻すことが可能である。そして、一旦図8(b) に示す状態の動作タイミングになった後であれば、上述の補正動作のみでスロット境界位置はほぼ同一タイミングで維持可能になるため、通信モジュールM3のネットワーク切り換え動作において待ち時間が発生する可能性は小さくなる。
【0127】
なお、上述の説明においては、図8(b) に示す状態の動作タイミングに効率よく制御するためにsw1を短くする方向としたが、逆に長くする方向に制御を反復してもいずれは図8(b) に示す状態の動作タイミングになる。更には、特段のスロット境界位置の制御は行なわずにクロック精度の違いによるスロット境界位置のずれが累積することにより図8(b) に示す状態の動作タイミングになるのを待ち、その状態になってからスロット境界位置制御動作を開始してもよい。
【0128】
(実施の形態5)
この実施の形態5では、実施の形態1に記載したスロット境界位置の制御により送信開始位置をずらす場合に、図7において複数のマスタ動作モジュールが存在する通信モジュールM1, M3によるネットワークNW1と、通信モジュールM2, M3によるネットワークNW2とに着目して説明する。
【0129】
通信モジュールM3においては、ネットワークNW1に対しての同期動作及びネットワークNW2に対しての同期動作の双方が時分割で行なわれるため、ネットワークNW1のスロット境界位置とネットワークNW2のスロット境界位置との位置関係は、常に時間の経過に伴って変化している。
【0130】
この場合、一方のネットワークを基準とし、他方のネットワークにおいて実施の形態1におけるスレーブ通信モジュール主導によるスロット境界位置制御を行なえば、2つのネットワークNW1及びNW2のスロット境界位置を一致させることができる。これは、前述した実施の形態4においてマスタ通信モジュールとして動作する側の通信モジュールでスロット境界位置制御動作を行なっていた部分を単純にスレーブ通信モジュールとして動作する側の通信モジュールでスロット境界位置制御動作を行なうことにより実行可能である。
【0131】
(実施の形態6)
実施の形態6は、既にスレーブ通信モジュールとしての動作を行なっている状態で新たにマスタ通信モジュールとしての動作で接続を開始する場合における動作である。これは、たとえば前述の図10に示した通信モジュールM15においてリンクL13のみが存在し、新たにリンクL14を追加するという状態に相当する。通常、マスタ通信モジュールとしての動作で接続を開始する際には、その通信モジュールは自身のクロックによるスロット境界位置を基準として送信開始タイミングを決定する。しかし、スレーブ通信モジュールとしての動作でリンクが既に形成されている場合、スレーブ通信モジュールとしての動作での相手(マスタ通信モジュール)のスロット境界位置を基準として送信タイミングを決定することとする。
【0132】
図10の通信モジュールM15においてはネットワークNW12のみが存在し、リンクL14の形成を開始する、即ちネットワークNW13を構成するに先立って、ネットワークNW13のスロット境界位置をネットワークNW12のスロット境界位置に一致させた状態にしておく。これにより、接続開始の時点で既にマスタ通信モジュールとしての動作及びスレーブ通信モジュールとしての動作におけるスロット境界位置が一致していることになるため、実施の形態4に記載のスロット境界位置を一致させたままで維持する手法が直ちに適用できる。
【0133】
(実施の形態7)
一つの通信モジュールが複数の通信相手に対してマスタ通信モジュールとしての動作及びスレーブ通信モジュールとしての動作を行なっている場合に、実施の形態4と同様に一定の範囲内でマスタ通信モジュールとしての動作のスロット境界位置をずらす動作を反復することにより、スレーブ通信モジュールとしての動作におけるスロット境界位置に段階的に近付けていくことも可能である。しかし、マスタ通信モジュールとしての動作での接続がなければ相手のスレーブ通信モジュールとしての動作に対する配慮の必要はない。従って、このような場合には一度の制御で大きくスロット境界位置をずらしたとしても問題は生じない。
【0134】
このことから、この実施の形態7ではマスタ通信モジュールとしての動作を行なわなくてもよい状況に一旦した上で、スロット境界位置をスレーブ通信モジュールとしての動作におけるスロット境界位置に一致させ、その後にマスタ通信モジュールとしての動作を再び行なう際にスレーブ通信モジュールとしての動作におけるスロット境界位置に一致しているマスタ通信モジュールとしての動作のスロット境界位置を基準として、送信開始を行なう構成とする。
【0135】
マスタ通信モジュールとしての動作を行なわなくてもよい状況にするためには、接続を一旦終了させた後に再度接続を開始するか、Bluetooth 規格等においては、マスタ通信モジュールとしての動作とスレーブ通信モジュールとしての動作とを入れ換える手順を用いることが考えられる。マスタ通信モジュールとしての動作とスレーブ通信モジュールとしての動作とを入れ換える手順を用いる場合には以下のような手順となる。
【0136】
まず、図10に示した通信モジュールM15のようにマスタ通信モジュールとしての動作を行なうリンクとスレーブ通信モジュールとしての動作を行なうリンクとの双方が形成されている状態であるとする。この状態では、マスタ通信モジュールとして動作する側のネットワークNW13のスロット境界位置を大きくずらすことはできない。このため、この通信モジュールM15のマスタ通信モジュールとして動作する側のリンクにおいて役割の入れ換えを規格の手順に従って行なう。
【0137】
これにより、通信モジュールM15自身は複数のマスタ通信モジュールに対してスレーブ通信モジュールとしての動作を行なうのみになる。これは図10に示す通信モジュールM19と全く同じ状態である。この状態では、マスタ通信モジュールとしての動作に用いるスロット境界位置は任意に変更しても全く問題がない。この状態である場合に、通信モジュールが自身のクロックによるスロット境界位置を本来はスレーブ通信モジュールとしての動作を行なっていた方(通信モジュールM14とのリンク)のスロット境界位置に合わせる。
【0138】
その後、先に役割の入れ換えを行なった接続において役割の入れ換えを再び行ない、本来の接続形態に戻す。この入れ換えの後には、既にマスタ通信モジュールとしての動作とスレーブ通信モジュールとしての動作とにおけるスロット境界位置が一致した状態からの同期の維持を行なえばよいため、実施の形態4に記載のスロット境界位置の制御方法による同期の維持を行なうのみでよい。一旦接続を解除する手順を用いる場合には、再接続の際に実施の形態6の手法をそのまま用いることが可能である。
【0139】
(実施の形態8)
Bluetooth 規格等においては、同期通信を行なう前に特定の送受信手続きを行なうことで通信可能範囲にある他モジュールのID番号等の固有情報を取得することが可能である。この実施の形態8では、このような他モジュールの固有情報を問い合わせるか、又は問い合わせに応答するかの特定の送受信手続きにおいて、問い合わせへの応答の送信の際に、通常の応答内容に加えて応答するモジュールが自身のクロックにより決定されるスロット境界位置の情報も送信するように構成する。
【0140】
スロット境界位置情報の追加方法としては、たとえば、以上に説明した手順との互換性を考慮して送信列の最後尾に付加することにより情報の追加を行なうこととする。また、スロット境界位置情報の内容の決め方としては、たとえば問い合わせ側の送信開始位置からスロット境界位置までの時間で示すことにするか、問い合わせへの応答の送信開始位置からスロット境界位置までの時間で示すことにする、等の幾つかが可能である。ここに示したスロット境界位置情報を決定する例においては、問い合わせ側のモジュールで問い合わせの送信タイミング又は応答の受信タイミングと付加情報とを用いることで、応答側のモジュールのスロット境界位置を求めるようにしている。
【0141】
このようにして求めたスロット境界位置を自身のスロット境界位置として接続を開始することにより、問い合わせに応答したモジュールが既に他のネットワークに参加していた場合においても接続開始直後に既にスロット境界位置が既存のネットワークと丁度、またはほぼ一致している状態となるように配慮した接続開始動作を行なうことになる。問い合わせへの応答モジュールにおいて、以上のような配慮が含まれた状態で接続を開始した場合には、実施の形態4に記載の補正方法による同期の維持のみでネットワーク間の同期を維持することが可能になる。
【0142】
【発明の効果】
以上に詳述したように、本発明によれば、複数の通信モジュール間での通信の同期を維持しつつスロット境界位置を一定幅以内のではあるが任意のタイミングに変更する制御を行なうことが可能になる。
【0143】
また本発明によれば、複数の通信モジュールと接続する通信モジュールが、自身のスロット境界位置の制御が有効であるか否かを確認した上で制御を実行することが可能になるので、制御が有効でないことが明白な場合には無駄な制御動作を行なわずに済む。
【0144】
また本発明によれば、通信相手の通信モジュールの受信特性に拘わらずに、スロット境界位置の制御を行なうことが可能となる。
【0145】
更に本発明によれば、通信モジュールが参加している複数のネットワークを同期させるように制御することが可能となり、ネットワーク切り換え時の無駄な待ち時間を短縮できるので、各リンクにおける通信速度を向上させることが可能となる。また、一定周期で定められた通信スロットを使用するような同期通信を複数のネットワークでそれぞれ行なうことは、ネットワーク同士が非同期である場合には、各ネットワークで定められた通信スロットがいずれは同じタイミングで必要になるために不可能であったが、本発明によればネットワーク同士の同期を維持している場合には、同期通信開始の時点で各ネットワークにおける通信スロット使用位置が異なっていれば、そのまま各ネットワークでの同期通信を維持することが可能になる。
【0146】
また本発明によれば、通常の通信中においては、徐々にスロット境界位置をずらせてゆくことによりネットワーク間のスロット境界位置同士を一致させる必要はなく、短期間でスロット境界位置を一致させることが可能になり、無駄な待ち時間を極力短縮することが可能になる。
【0147】
また、本発明によれば、接続開始時点において既にネットワーク間のスロット境界位置が一致した状態で通信を行なうことが可能になり、接続開始時から無駄のない通信スロットの利用が可能になる。
【0148】
更に本発明によれば、上述のようなスロット境界位置の制御を、自身で計時したスロット境界位置と通信相手の通信モジュールから送信される送信信号の受信タイミングとの誤差を検出する受信タイミング検出部で検出した誤差タイミングに基づいて、次に自身が計時するスロット境界位置を通信相手の通信モジュールが計時したスロットの期間に一致させるように制御する通信管理部を備えた通信モジュールで実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の通信モジュールの構成を示す図である。
【図2】本発明の同期通信システムの通信タイミング制御方法のマスタ通信モジュール主導によるスロット境界位置制御のタイミングを示すタイミングチャートである。
【図3】本発明の同期通信システムの通信タイミング制御方法のマスタ通信モジュール主導によるスロット境界位置制御の手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の同期通信システムの通信タイミング制御方法のスレーブ通信モジュール主導によるスロット境界位置制御のタイミングを示すタイミングチャートである。
【図5】本発明の同期通信システムの通信タイミング制御方法のスレーブ通信モジュール主導によるスロット境界位置制御の手順を示すフローチャートである。
【図6】本発明の同期通信システムの通信タイミング制御方法のシンボルタイミングを基準として送信タイミングを決定する場合のタイミングを示すタイミングチャートである。
【図7】同期通信システムのネットワークの構成例を示すブロック図である。
【図8】ネットワーク間の非同期動作及び同期動作のタイミングを示すタイミングチャートである。
【図9】 従来の同期通信システムの通信タイミング制御方法を示すタイミングチャートである。
【図10】同期通信システムのネットワークの構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
M1, M5… 通信モジュール
NW1, NW2… ネットワーク
11 発振器
16 受信タイミング検出部
18 通信管理部
Claims (10)
- 所定の時間を一単位とする通信期間毎に送受信動作を行なう複数の通信モジュールでネットワークが構成されており、前記複数の通信モジュールは、それぞれのクロックによって規定される通信期間の境界をネットワーク全体の送受信タイミングの基準とするマスタ動作と、該マスタ動作により規定される通信期間の境界を検出して自モジュールのクロックによる送受信タイミングを補正することによりネットワーク全体の通信期間の境界に送受信タイミングを同期させるスレーブ動作とのいずれかの動作を行なうことによりネットワークの同期を維持する同期通信システムの通信タイミング制御方法において、
前記複数の通信モジュール内のいずれかの通信モジュールが、通信相手の通信モジュールが受信可能な期間の範囲内であり、かつ通信期間の境界を基準とする本来の送信タイミングとは異なる任意のタイミングに送信タイミングを変更し、
前記通信相手の通信モジュールが、変更された送信タイミングに応じた受信タイミングに従って通信期間の境界を変更することによりネットワークの同期を維持すること
を特徴とする同期通信システムの通信タイミング制御方法。 - 前記受信可能な期間の範囲は、前記通信期間の境界を中心として、前記ネットワークで用いられる通信規格で定められる許容範囲であることを特徴とする請求項1に記載の同期通信システムの通信タイミング制御方法。
- 送信タイミングを変更する通信モジュールが、通信期間の境界の変更の可否、又は通信期間の境界を変更する際の各通信モジュール間の優先順位を通信相手のモジュールと情報交換した上で送信タイミングを決定することを特徴とする請求項1に記載の同期通信システムの通信タイミング制御方法。
- 前記送信タイミングの変更は、送信タイミングを変更する通信モジュールが送信する送信シンボルの送信タイミングを基準として決定することを特徴とする請求項1に記載の同期通信システムの通信タイミング制御方法。
- 前記送信タイミングの変更は、送信タイミングを変更する通信モジュールが複数の通信相手に対してマスタ動作とスレーブ動作とを時分割で行なっている場合は、自身のスレーブ動作で決定される通信期間の境界を基準として自身のマスタ動作時の送信タイミングを変更することを特徴とする請求項1に記載の同期通信システムの通信タイミング制御方法。
- 少なくとも一つが前記マスタ動作を行なっている複数のマスタ動作モジュールに対して時分割でスレーブ動作している通信モジュールが、前記複数のマスタ動作モジュールに対するスレーブ動作の内のいずれかによって決定される通信期間の境界を基準として、他のマスタ動作モジュールへの送信タイミングを決定することにより、前記複数のマスタ動作モジュールが属する異なるネットワーク間の同期をとることを特徴とする請求項1に記載の同期通信システムの通信タイミング制御方法。
- スレーブ動作を行なっている通信モジュールと接続している状態でマスタ動作を行なう通信モジュールと新たに接続する通信モジュールが、前記スレーブ動作を行なっている通信モジュールとの間の通信期間の境界を基準として、前記マスタ動作を行なう通信モジュールとの間の新たな接続開始時の送受信タイミングを決定することを特徴とする請求項1に記載の同期通信システムの通信タイミング制御方法。
- 複数の通信相手の通信モジュールに対してマスタ動作及びスレーブ動作を時分割して行なっている通信モジュールが、自身がマスタ動作モジュールとして動作している通信相手の通信モジュールとの接続を一旦解除し、自身がスレーブ動作モジュールとして動作している通信相手の通信モジュールとの間の通信期間の境界にマスタ動作モジュールとしての通信期間の境界を補正し、その後に前記接続を解除した通信モジュールとの接続を復帰させる場合に、マスタ動作している通信モジュールとしての通信期間の境界を任意のタイミングに制御することにより、前記接続を復帰した通信モジュールへの送信タイミングを決定することを特徴とする請求項1に記載の同期通信システムの通信タイミング制御方法。
- 複数の通信モジュールがネットワークとして同期接続開始する以前に各通信モジュールが他の通信モジュールに関して通信期間の境界を示す情報が含まれる固有情報の問い合わせ及びその問い合わせに対する応答が可能な機能を有しており、各通信モジュールが接続を開始する時点での通信期間の境界を、前記固有情報に含まれる通信期間の境界を示す情報に基づいて、接続を開始する相手の通信モジュールのクロックによる通信期間の境界に一致させた状態で送受信タイミングを決定することを特徴とする請求項1に記載の同期通信システムの通信タイミング制御方法。
- 所定の時間を一単位とする通信期間毎に送受信動作を相互に行なうことにより同期を維持する通信モジュールにおいて、
前記所定の時間を計時するためのクロックの発振回路と、
該発振回路が発振するクロックに基づいて計時した前記所定の時間と、通信相手のモジュールから送信された信号の受信タイミングとの時間差を検出する受信タイミング検出部と、
送受信タイミングを制御する通信管理部とを備え、
前記通信管理部は、前記所定の時間によって規定されるべき該時間の計時の起点から、±α(α<w2)だけずれた時点を計時の起点に変更すると共に、変更した時点に同期して通信相手のモジュールへ送信する制御を行なうべくなしてあることを特徴とする通信モジュール。
但し、w2は受信タイミングの誤差の許容範囲
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