JP4071101B2 - 超音波診断装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、超音波診断装置に関し、特に関心領域を設定できる超音波診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
診断対象組織の注目部分に関心領域を設定して、関心領域内のエコーデータに基づいて各種診断を行う超音波診断装置が存在する。例えば、心臓の断層画像に基づいて心腔部分の面積評価を行う際、注目する心腔部分に部分的な関心領域を設定してその関心領域内において面積演算を行うことで、所望の部位で精度の高い面積評価が可能になる(例えば、特許文献1参照)。このような超音波診断装置は、動きの鈍い心筋梗塞部位を特定するなどの診断に適している。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−210287号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
技術の進歩に伴い、三次元空間内において立体的な超音波画像を形成する三次元超音波診断装置が現実のものとなっている。三次元超音波診断装置においても、対象組織の注目部分に対して部分的な関心領域を設定する機能は有用である。例えば、心臓を含む三次元超音波画像に対して、心臓内の注目部分を指定する三次元の関心領域を設定してその関心領域内において注目部分の体積演算を行うことができれば、所望の部位で精度の高い疾患評価が可能になる。
【0005】
そこで、本発明は、三次元空間内において対象組織の部分領域を設定することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
(1)上記目的を達成するために、本発明に係る超音波診断装置は、対象組織を含む三次元空間に対して超音波を送受波して複数のボクセルデータから成るボリュームデータを形成するボリュームデータ形成手段と、前記対象組織の診断部分を囲む三次元の部分関心領域であって、前記対象組織の内部特定点から前記対象組織の外側へ三次元的に広がった形状である部分関心領域を少なくとも一つ設定する部分関心領域設定手段と、を有し、前記各部分関心領域は、前記対象組織の内部特定点を頂点とする立体錐形状領域であることを特徴とする。
【0007】
上記構成において、部分関心領域の形状は、内部特定点を頂点とする立体形状、あるいは、その立体形状内の任意部分形状などである。
【0008】
上記構成によれば、三次元空間内において対象組織の部分領域を設定することが可能になる。
【0009】
望ましくは、前記ボリュームデータに基づいて、前記対象組織の重心点の位置を演算する重心点演算部をさらに有し、前記対象組織の内部特定点は、前記演算された重心点とする。
【0010】
望ましくは、前記各部分関心領域は、前記対象組織の重心点を頂点とする立体錐形状領域とする。上記構成において、立体錐形状としては、円錐形状、三角錐形状、四角錐形状あるいはその他の多角錐形状などが挙げられる。
【0011】
望ましくは、前記立体錐形状領域は、前記対象組織全体を囲む三次元関心領域表面上の任意部分面を底面とする立体錐形状領域とする。上記構成において底面はユーザ指示に基づいて設定されてもよい。上記構成によれば任意形状の底面を有する立体錐形状領域を設定できる。
【0012】
望ましくは、前記立体錐形状領域は、頂角の角度が共にθ1の二側面が対向し、且つ、頂角の角度が共にθ2の二側面が対向して形成される四角錐形状領域とする。
【0013】
望ましくは、前記部分関心領域設定手段は、ユーザが入力するパラメータに基づいて前記四角錐形状領域の位置、θ1およびθ2を設定するものとする。
【0014】
上記構成によれば、ユーザは四角錐形状領域の位置、θ1およびθ2を表すパラメータを入力することで、三次元空間内において対象組織の部分領域を容易に設定することが可能になる。
【0015】
望ましくは、前記ボリュームデータに基づいて、前記対象組織の特定部位を抽出して前記重心点および前記抽出した特定部位を通る基準線を設定する基準線設定部をさらに有し、前記部分関心領域設定手段は、前記基準線に基づいて前記各部分関心領域を所定の位置に配置するものとする。
【0016】
上記構成によれば、対象組織の特定部位に基づいて基準線が設定されているため、対象組織の構造を反映した部分関心領域の配置が可能になる。
【0017】
望ましくは、前記部分関心領域設定手段は、前記対象組織を略等分する複数の前記部分関心領域を設定するものとする。
【0018】
上記構成によれば、部分関心領域は対象組織を略等分しているため、例えば、複数の部分関心領域の各々に囲まれた複数の診断部位相互間における比較評価に適している。
【0019】
望ましくは、前記ボリュームデータおよび前記各部分関心領域に基づいて、前記各部分関心領域内における前記対象組織の診断部分に関する所定演算を実行する演算部をさらに有するものとする。
【0020】
上記構成において、所定演算としては、例えば、診断部位の体積や体積変化率などが挙げられる。また、対象組織が心臓の場合には、所定演算として駆出率や駆出率変化率なども好適である。
【0021】
上記構成によれば、所定演算の対象が診断部分であるため、対象組織全体を演算対象とする場合に比べて、演算対象の異常結果がより顕著に表れる。また、演算結果に基づく異常部分の特定が容易になる。
【0022】
(2)また、上記目的を達成するために、本発明に係る超音波診断装置は、心臓左室を含む三次元空間に対して超音波を送受波して複数のボクセルデータから成るボリュームデータを形成するボリュームデータ形成手段と、前記ボリュームデータに基づいて、前記心臓左室の重心点の位置を演算する重心点演算部と、前記心臓左室の診断部分を囲む複数の部分関心領域を設定する部分関心領域設定手段であって、前記重心点を頂点とする四角錐形状の部分関心領域を少なくとも一つ設定する部分関心領域設定手段と、前記ボリュームデータに基づいて、前記各部分関心領域内における前記心臓左室の心腔部分の体積を演算する体積演算部と、を有するものとする。
【0023】
上記構成によれば、心臓左室の収縮拡張運動に伴う心筋の移動方向は主に重心点に向かう方向であるため、重心点を頂点とする四角錐形状は収縮拡張運動に伴う心腔部分の体積値変化を評価するのに好適である。
【0024】
望ましくは、前記ボリュームデータに基づいて、前記心臓左室の弁輪部を抽出して前記重心点および前記弁輪部を通る基準線を設定する基準線設定部をさらに有し、前記部分関心領域設定手段は、前記基準線に基づいて前記心臓左室を略等分する複数の前記部分関心領域を所定の位置に配置するものとする。
【0025】
上記構成において、心臓左室の等分数は、例えば6等分や8等分など、診断に応じて必要な等分数に設定される。
【0026】
上記構成によれば、複数の部分関心領域によって心臓左室を等分する場合に、重心点および弁輪部を通る直線を基準線として、心臓左室の構造を反映した部分関心領域の配置が可能になる。
【0027】
望ましくは、前記基準線設定部は、前記弁輪部のエコー値が周囲の部位のエコー値よりも大きいことを利用して前記弁輪部を抽出するものとする。
【0028】
(3)上記目的を達成するために、本発明に係る超音波診断装置は、心臓左室を含む三次元空間に対して超音波を送受波して複数のボクセルデータから成るボリュームデータを各時相ごとに形成するボリュームデータ形成手段と、前記各時相ごとのボリュームデータに基づいて、前記心臓左室の重心点の位置を各時相ごとに演算する重心点演算部と、前記各時相ごとのボリュームデータに基づいて、前記心臓左室の弁輪部を各時相ごとに抽出して、前記重心点および前記弁輪部を通る基準線を各時相ごとに設定する基準線設定部と、前記各時相ごとに演算された重心点の位置および前記各時相ごとに設定された基準線に基づいて、時相間における前記心臓左室の全体的な移動量を演算する移動量演算手段と、前記演算された移動量を補正しつつ各時相ごとのボリュームデータを再構成する移動量補正手段と、前記再構成されたボリュームデータにおいて、心臓左室の診断部分を囲む複数の部分関心領域を設定する部分関心領域設定手段であって、前記各時相ごとの重心点を頂点とする四角錐形状の部分関心領域を少なくとも一つ設定する部分関心領域設定手段と、を有するものとする。
【0029】
上記構成において、心臓左室の全体的な移動量とは血液循環に直接関係のない運動に伴う移動量である。心臓左室は、収縮拡張運動やねじれ運動といった血液循環のための運動と、肺などの運動に伴い身体に対して並進運動や回転運動を行っている。
【0030】
上記構成によれば、心臓左室の全体的な移動量を補正して、望ましくは完全にキャンセルして左室の循環機能評価が可能になる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0032】
図1には、本発明に係る超音波診断装置の好適な実施形態が示されており、図1はその全体構成を示すブロック図である。
【0033】
送受信部12は、プローブ10を介して対象組織、例えば心臓左室を含む空間内に超音波を送受波することで各時相ごとのボリュームデータを取得して、三次元データメモリ(3Dデータメモリ)14へ出力する。各時相ごとに得られたボリュームデータは、座標変換部16において表示座標系に変換された後、各時相ごとに二値化処理部20および表示画像形成部74に出力される。
【0034】
二値化処理部20は、座標変換部16から出力されるボリュームデータに基づいて、各時相ごとに対象組織のボリュームデータを抽出する。ボリュームデータは複数のボクセルデータが規則的に配列されたものである。二値化処理部20は、ボクセルデータに対して二値化処理を施すことで、ボリュームデータを構成する複数のボクセルを、対象組織に対応するボクセル(対象組織ボクセル)と対象組織以外の部位に対応するボクセル(非対象組織ボクセル)とに分別した二値化画像を生成する。
【0035】
重心・基準軸設定手段22は、対象組織の特定部分領域を設定する際の基準となる、対処組織に関する重心および基準軸を設定する。ここで、図2を利用して重心・基準軸設定手段22について説明する。
【0036】
図2は、重心・基準軸設定手段の内部構成を示すブロック図である。左室腔用ROI(関心領域)発生器30は、対象組織である心臓左室の心腔部を取り囲む左室腔用ROIの座標を発生する。左室腔用ROIは、例えば楕円体形状であり、ユーザは超音波画像を見ながら楕円体の長軸や短軸の長さ、中心点の位置、楕円体の傾きなどの左室腔用ROIパラメータを設定して、左室腔用ROIの中に左室腔の画像が収まるように設定。この際、ユーザは超音波画像を見ながら一心拍分の運動を観察した上で、全ての時相において左室腔用ROIが左室腔を取り囲むように、トラックボールなどを操作して左室腔用ROIパラメータを決定する。左室腔用ROIの設定はユーザによるマニュアル設定に限られるものではなく、左心室の動きに応じて、つまり左室腔の形状変化に応じて装置設定されるものでもよい。
【0037】
左室腔用ゲート回路32は、左室腔用ROI内のボクセルデータのみを通過させる回路である。つまり、左室腔用ゲート回路32の一方の入力端子には左室腔用ROI発生器30から出力される左室腔用ROIの座標が入力され、他方の入力端子に入力される二値化画像において左室腔用ROI内に属する座標のボクセルデータのみを抽出し、左室腔抽出部34に出力する。左室腔抽出部34は、左室腔用ROI内の二値化画像から左室腔画像を抽出する。心室重心演算部36は、左室腔抽出部34から出力される左室腔画像における重心点の座標を左室重心点として各時相ごとに算出する。算出された左室重心点の座標は基準軸設定部50に出力される。
【0038】
弁輪部ROI(関心領域)発生器40は、左室腔端に位置する弁輪部を取り囲む弁輪部ROIの座標を発生する。弁輪部ROIは、例えば楕円体形状であり、ユーザは超音波画像を見ながら楕円体の長軸や短軸の長さ、中心点の位置、楕円体の傾きなどの弁輪部用ROIパラメータを、弁輪部ROIの中に弁輪部の画像が収まるように設定する。この際、ユーザは超音波画像を見ながら一心拍分の運動を観察した上で、全ての時相において弁輪部ROIが弁輪部を取り囲むように、トラックボールなどを操作して弁輪部用ROIパラメータを決定する。ROIの設定はユーザによるマニュアル設定に限られるものではなく、弁輪部の動きに応じて装置設定されるものでもよい。
【0039】
弁輪部ゲート回路42は、弁輪部ROI内のボクセルデータのみを通過させる回路である。つまり、弁輪部ゲート回路42の一方の入力端子には弁輪部ROI発生器40から出力される弁輪部ROIの座標が入力され、他方の入力端子に入力される二値化画像において弁輪部ROI内に属する座標のボクセルデータのみを抽出し、弁輪部抽出部44に出力する。弁輪部抽出部44は、弁輪部ROI内の二値化画像から弁輪部画像を抽出する。弁輪部画像はその周囲の画像に比べてその輝度値が高いため、弁輪部に対応する輝度値と弁輪部以外の部位に対応する輝度値との間に閾値を設定して、この閾値に基づいて弁輪部に相当するボクセルデータを判定して弁輪部画像を抽出する。弁輪部重心演算部46は、弁輪部抽出部44から出力される弁輪部画像に対して弁輪部の重心点の座標を各時相ごとに算出する。算出された弁輪部重心点の座標は基準軸設定部50に出力される。
【0040】
基準軸設定部50は、左室重心演算部36から出力される左室重心点の座標、および、弁輪部重心演算部46から出力される弁輪部重心点の座標に基づいて、左室重心点および弁輪部重心点を通る直線を演算してこれを基準軸として設定し、設定した基準軸および左室重心点の座標を出力する。以上のようにして、重心・基準軸設定手段22は、左室重心点および基準軸をROI生成部(図1の符号60)に出力する。
【0041】
ROI生成部(図1の符号60)は、重心・基準軸設定手段(図1の符号22)が出力する左室重心点、基準軸およびユーザから入力されるROI設定パラメータに基づいて、対象組織である心臓左室の部分領域を指定する三次元部分ROI(関心領域)を生成する。
【0042】
ここで、図3を利用してROI生成部(図1の符号60)の動作について説明する。なお、図1に記載した部分については図1の符号を付して説明する。図3は、ROI生成部60で生成される三次元部分ROIを示している。図3に示す三次元部分ROIは、予め設定されている対象組織全体を取り囲む楕円体ROI64の一部を切り出した四角錐形状ROI62であり、頂角の角度が共にθ1の二側面が対向し、且つ、頂角の角度が共にθ2の二側面が対向して形成される。つまり、図3において四角錐形状ROI62をA方向からみた側面(A方向からのビュー)およびこの側面に対向する側面は頂角の角度が共にθ1であり、B方向からみた側面(B方向からのビュー)、すなわちA方向からみた側面に隣り合う二側面は頂角の角度が共にθ2である。そして、角度θ1, θ2はユーザによって設定される。また、四角錐形状ROI62の頂点は、重心・基準軸設定手段22から出力される心室重心点に一致する。四角錐形状ROI62の底辺の位置、すなわち、楕円体ROI64表面上における位置はユーザにより設定される。つまり、ユーザは楕円体ROI64内の任意の位置に四角錐形状ROI62を設定することができる。四角錐形状ROI62はその頂点周り、図3におけるθ3方向に回転可能であってもよい。
【0043】
さらに、四角錐形状ROI62を複数設定し、各四角錐形状ROI62の頂角の角度θ1, θ2を適当に設定することで、楕円体ROI64内を当分してもよい。例えば、重心・基準軸設定手段22が出力する基準軸を基準として、楕円体ROI64内に6つの四角錐形状ROI62を設定して楕円体ROI64内を6等分してもよい。
【0044】
このように、ROI生成部60は三次元部分ROIを生成するが、三次元部分ROIは四角錐形状に限定されるものではなく、三角錐形状、円錐形状あるいはその他の立方体形状など、様々な形状が考えられる。
【0045】
図1に戻り、ROI生成部60で生成された三次元部分ROIは、ROIゲート回路70に出力されROIゲート回路70において三次元部分ROI内の対象組織画像が抽出される。つまり、ボリュームメモリ72には二値化処理部20から出力される二値化画像(対象組織ボクセルと非対象組織ボクセルとに分別された画像)が各時相ごとに記録されており、ROIゲート回路70はボリュームメモリ72から各時相ごとに出力される二値化画像、および、ROI生成部60から出力される三次元部分ROIに基づいて、三次元部分ROI内の対象組織ボクセルデータのみを通過させ、設定領域表示処理部72および体積演算部80に出力する。
【0046】
設定領域表示処理部72は、三次元部分ROI内の二値化画像に対して、三次元超音波画像内における三次元部分ROIの位置を明示するための表示処理を施す。表示処理としては様々な手法が可能である。例えば、三次元部分ROIが四角錐形状の場合には側面の陵(4本)と底辺の外縁を明示する、あるいは、三次元部分ROI内の対象組織に色付け処理を施すなどである。何れかの手法により、表示処理を施された三次元部分ROI内の二値化画像は表示画像形成部74に出力され、座標変換部16から出力されるボリュームデータ(三次元超音波画像)と合成される。表示画像形成部74は、合成した三次元超音波画像に対して表示画像処理を施して二次元表示画像を形成する。
【0047】
表示画像形成部74が施す表示画像処理としては、例えばボリュームレンダリング法に基づくレンダリング演算を行うことで対象組織である左室内部を透過表示した二次元表示画像の形成が挙げられる。ボリュームレンダリング法に基づくレンダリング演算は、例えば特開平10−33538号公報に示される手法が好適である。上記公報記載の手法は次の通りである。三次元空間に対して複数のレイ(例えば超音波ビームに一致)が設定される。各レイ毎にエコー値が順番に参照され、各エコー値毎にレンダリング演算が逐次的に実行される。これと並行して各オパシティ(不透明度)の積算が行われ、この値が1以上になった場合に当該レイについてのレンダリング演算を終了する。この時点でのレンダリング演算結果が当該レイに対応する二次元表示画素値として決定される。各レイ毎に画素値を決定することでその集合として左室内部を透過表示した二次元表示画像が形成され、ディスプレイ76に表示される。
【0048】
ROIゲート回路70から出力される三次元部分ROI内の二値化画像は体積演算部80にも出力される。体積演算部80は、三次元部分ROI内の二値化画像に基づいて、三次元部分ROI内の対象組織ボクセル数をカウントすることで三次元部分ROI内の対象組織の体積値を演算する。体積の演算は各時相ごとに実施される。
【0049】
基準体積判定部82は、体積演算部80から出力される各時相ごとの体積値から、特定時相における体積値を基準体積値として抽出する。対象組織が心臓左室の場合、基準体積判定部82には心電波形が入力され、拡張末期時点に発生するR波に基づいて拡張末期時点の体積を基準体積値として抽出する。
【0050】
駆出率(EF)演算部84は、体積演算部80から出力される各時相ごとの体積値と基準体積判定部82が抽出した基準体積値との比較に基づいて駆出率(EF)を演算する。基準体積値(拡張末期時点の心腔体積値)をEDV、時相iにおける体積値(心腔体積値)をV(i)とすると、ある時相iにおける駆出率EF(i)は次式で算出される。
【数1】
EF(i)=[EDV−V(i)]/EDV×100(パーセント)
駆出率演算部84で演算された各時相ごとの駆出率EF(i)はグラフ形成部86に出力される。
【0051】
ここで、図4および図5を利用してグラフ形成部(図1の符号86)において生成されるグラフについて説明する。なお、図1に記載した部分については図1の符号を付して説明する。
【0052】
図4は、グラフ形成部86で形成されるEFのグラフ表示を示す図である。図4は横軸に時刻を縦軸にEF値を表示したものであり、ROI生成部60において三次元部分ROIを同時に4箇所設定し、設定した4箇所の三次元部分ROI内におけるEFを同時に表示したものである。このように、ユーザは三次元部分ROIを所望の位置に所望の個数設定して、複数の三次元部分ROI内部における対象組織のEF値の様子を同時に評価することができる。さらに、図4では心電図波形が併記されており、ユーザは心拍中のどのタイミングにおけるEF値なのかを知ることができる。
【0053】
図5は、グラフ形成部86で形成される体積値のグラフ表示を示す図である。グラフ形成部86には体積演算部80から各時相ごとの対象組織の体積値が入力されており、横軸を時刻として各時刻における体積値をプロットして、図5に示すグラフを形成する。なお、図5は、ROI生成部60において三次元部分ROIを同時に4箇所設定し、設定した4箇所の三次元部分ROI内における体積値を時相ごとに演算した結果を示している。このように、ユーザは三次元部分ROIを所望の位置に所望の個数設定して、複数の三次元部分ROI内部における対象組織の体積値の様子を同時に評価することができる。さらに、図5では心電図波形が併記されている。グラフ形成部86で形成されたグラフは、表示画像形成部74を経由してディスプレイ76に表示され、ユーザは心拍中のどのタイミングにおける体積値なのかを知ることができる。なお、グラフ形成部86は、駆出率(EF)や体積値に基づいて、EF変化率や体積値変化率のグラフを形成してもよい。
【0054】
図1に示した実施形態において、座標変換部16の直後に並進回転移動キャンセル処理部が挿入されるとさらに好適である。
【0055】
図6は、並進回転移動キャンセル処理部87の内部構成を示すブロック図である。並進回転移動キャンセル処理部87には座標変換部16から出力されるボリュームデータが入力され、心室抽出部88において、対象組織に対応するボクセル(対象組織ボクセル)と対象組織以外の部位に対応するボクセル(非対象組織ボクセル)とに分別された二値化画像が形成される。
【0056】
心室用ROI(関心領域)発生器90は、対象組織である心臓心室の外縁を成すROIの座標を発生する。心室用ROIは、例えば楕円体形状であり、ユーザは超音波画像を見ながら楕円体の長軸や短軸の長さ、中心点の位置、楕円体の傾きなどの初期値を、ROIの中に心室の画像が収まるように設定する。この際、ユーザは超音波画像を見ながら一心拍分の運動を観察した上で、全ての時相においてROIが心臓左室を含むように、トラックボールなどを操作して初期値を決定する。ROIの設定はユーザによるマニュアル設定に限られるものではなく、心室の動きに応じて装置設定されるものでもよい。
【0057】
心室用ゲート回路92は、心室用ROI内のボクセルデータのみを通過させる回路である。つまり、心室用ゲート回路92の一方の入力端子には心室用ROI発生器90から出力されるROIの座標が入力され、他方の入力端子に入力される二値化画像において心室用ROI内に属する座標のボクセルデータのみを抽出し、心腔抽出部94に出力する。心腔抽出部94は、ROI内の二値化画像から心室内部の心腔画像を抽出する。心室重心演算部96は、心腔抽出部94から出力される心室内部画像における重心点の座標を各時相毎に算出する。算出された心室重心点の座標は読み出しアドレス発生器112および心室重心点メモリ98に出力される。
【0058】
弁輪部用ROI(関心領域)発生器100は、心室端に位置する弁輪部の外縁を成すROIの座標を発生する。弁輪部用ROIは、例えば楕円体形状であり、ユーザは超音波画像を見ながら楕円体の長軸や短軸の長さ、中心点の位置、楕円体の傾きなどの初期値を、ROIの中に弁輪部の画像が収まるように設定する。この際、ユーザは超音波画像を見ながら一心拍分の運動を観察した上で、全ての時相においてROIが弁輪部を含むように、トラックボールなどを操作して初期値を決定する。ROIの設定はユーザによるマニュアル設定に限られるものではなく、弁輪部の動きに応じて装置設定されるものでもよい。
【0059】
弁輪部ゲート回路102は、弁輪部用ROI内のボクセルデータのみを通過させる回路である。つまり、弁輪部用ゲート回路102の一方の入力端子には弁輪部用ROI発生器100から出力されるROIの座標が入力され、他方の入力端子に入力される二値化画像において弁輪部用ROI内に属する座標のボクセルデータのみを抽出し、弁輪部抽出部104に出力する。弁輪部抽出部104は、ROI内の二値化画像から弁輪部画像を抽出する。弁輪部重心演算部106は、弁輪部抽出部104から出力される弁輪部画像に対して弁輪部の重心点の座標を各時相毎に算出する。算出された弁輪部重心点の座標は読み出しアドレス発生器112よび弁輪部重心点メモリ108に出力される。
【0060】
心室重心点メモリ98には心室の拡張末期時の心室重心点の座標が記憶される。拡張末期を知らせるトリガとしては心電波形のR波を利用する。つまり、拡張末期時に得られるR波をトリガとして、心室重心演算部96から出力される心室重心点の座標を拡張末期時の心室重心点の座標として記憶しておく。同様にR波をトリガとして拡張末期時の弁輪部重心点の座標が、弁輪部重心演算部106から弁輪部重心点メモリ108に記憶される。
【0061】
読み出しアドレス発生器112及びメモリ制御部114は、各時相のボリューム間における心室の並進移動量及び回転移動量をキャンセルした超音波画像を形成すべく、ボリュームメモリ116からボクセルデータを読み出す。つまり、読み出しアドレス発生器112は、心室重心点メモリ98から拡張末期時の心室重心点の座標を取得し、また、弁輪部重心点メモリ108から拡張末期時の弁輪部重心点の座標を取得する。さらに、心室重心演算部96から現ボリュームにおける心室重心点の座標を取得し、また、弁輪部重心演算部106から現ボリュームにおける弁輪部重心点の座標を取得する。
【0062】
読み出しアドレス発生器112は、現ボリュームの心室重心点が拡張末期時の心室重心点に重なるように、かつ、現ボリュームにおける心室重心点と弁輪部重心点を通る直線が、拡張末期時における心室重心点と弁輪部重心点を通る直線に重なるような読み出しアドレスを演算する。
【0063】
ボリュームメモリ116には座標変換部(図1の符号16)から出力されたボクセルデータが原画像のアドレスのままボリューム毎にコピーされており、メモリ制御部114は、読み出しアドレス発生器112が算出した読み出しアドレスに従ってボリュームメモリ116からボクセルデータを読み出して、表示画像形成部(図1の符号74)および二値化処理部(図1の符号20)に出力する。この結果、ボリュームメモリ116から出力されるボクセルデータに基づいた超音波画像は、対象組織である心臓左室の身体全体に対する相対的な並進移動および回転移動がキャンセルされた超音波画像となる。
【0064】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る超音波診断装置により三次元空間内において対象組織の部分領域を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る超音波診断装置の好適な実施形態を示すブロック図である。
【図2】 図1における重心・基準軸設定手段の内部構成を示すブロック図である。
【図3】 図1におけるROI生成部で生成される三次元部分ROIを示す図である。
【図4】 グラフ形成部で形成されるEFのグラフ表示を示す図である。
【図5】 グラフ形成部で形成される体積値のグラフ表示を示す図である。
【図6】 並進回転移動キャンセル処理部の内部構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
22 重心・基準軸設定手段、36 左室重心演算部、46 弁輪部重心演算部、50 基準軸設定部、60 ROI生成部、72 設定領域表示処理部、80 体積演算部、82 基準体積判定部、84 EF演算部、86 グラフ形成部、87 並進回転移動キャンセル処理部。
Claims (12)
- 対象組織を含む三次元空間に対して超音波を送受波して複数のボクセルデータから成るボリュームデータを形成するボリュームデータ形成手段と、
前記対象組織の診断部分を囲む三次元の部分関心領域であって、前記対象組織の内部特定点から前記対象組織の外側へ三次元的に広がった形状である部分関心領域を少なくとも一つ設定する部分関心領域設定手段と、
を有し、
前記各部分関心領域は、前記対象組織の内部特定点を頂点とする立体錐形状領域であることを特徴とする超音波診断装置。 - 請求項1記載の超音波診断装置であって、
前記ボリュームデータに基づいて、前記対象組織の重心点の位置を演算する重心点演算部をさらに有し、
前記対象組織の内部特定点は、前記演算された重心点であることを特徴とする超音波診断装置。 - 請求項1記載の超音波診断装置であって、
前記立体錐形状領域は、前記対象組織全体を囲む三次元関心領域表面上の任意部分面を底面とする立体錐形状領域であることを特徴とする超音波診断装置。 - 請求項1記載の超音波診断装置であって、
前記立体錐形状領域は、頂角の角度が共にθ1の二側面が対向し、且つ、頂角の角度が共にθ2の二側面が対向して形成される四角錐形状領域であることを特徴とする超音波診断装置。 - 請求項4記載の超音波診断装置であって、
前記部分関心領域設定手段は、ユーザが入力するパラメータに基づいて前記四角錐形状領域の位置、θ1およびθ2を設定することを特徴とする超音波診断装置。 - 請求項2記載の超音波診断装置であって、
前記ボリュームデータに基づいて、前記対象組織の特定部位を抽出して前記重心点および前記抽出した特定部位を通る基準線を設定する基準線設定部をさらに有し、
前記部分関心領域設定手段は、前記基準線に基づいて前記各部分関心領域を所定の位置に配置することを特徴とする超音波診断装置。 - 請求項6記載の超音波診断装置であって、
前記部分関心領域設定手段は、前記対象組織を略等分する複数の前記部分関心領域を設定することを特徴とする超音波診断装置。 - 請求項1から7のいずれか1項記載の超音波診断装置であって、
前記ボリュームデータおよび前記各部分関心領域に基づいて、前記各部分関心領域内における前記対象組織の診断部分に関する所定演算を実行する演算部をさらに有することを特徴とする超音波診断装置。 - 心臓左室を含む三次元空間に対して超音波を送受波して複数のボクセルデータから成るボリュームデータを形成するボリュームデータ形成手段と、
前記ボリュームデータに基づいて、前記心臓左室の重心点の位置を演算する重心点演算部と、
前記心臓左室の診断部分を囲む部分関心領域を設定する部分関心領域設定手段であって、前記重心点を頂点とする立体錐形状の部分関心領域を少なくとも一つ設定する部分関心領域設定手段と、
前記ボリュームデータに基づいて、前記各部分関心領域内における前記心臓左室の心腔部分の体積を演算する体積演算部と、
を有することを特徴とする超音波診断装置。 - 請求項9記載の超音波診断装置であって、
前記ボリュームデータに基づいて、前記心臓左室の弁輪部を抽出して前記重心点および前記弁輪部を通る基準線を設定する基準線設定部をさらに有し、
前記部分関心領域設定手段は、前記基準線に基づいて前記心臓左室を略等分する複数の 前記部分関心領域を所定の位置に配置することを特徴とする超音波診断装置。 - 請求項10記載の超音波診断装置であって、
前記基準線設定部は、前記弁輪部のエコー値が周囲の部位のエコー値よりも大きいことを利用して前記弁輪部を抽出することを特徴とする超音波診断装置。 - 心臓左室を含む三次元空間に対して超音波を送受波して複数のボクセルデータから成るボリュームデータを各時相ごとに形成するボリュームデータ形成手段と、
前記各時相ごとのボリュームデータに基づいて、前記心臓左室の重心点の位置を各時相ごとに演算する重心点演算部と、
前記各時相ごとのボリュームデータに基づいて、前記心臓左室の弁輪部を各時相ごとに抽出して、前記重心点および前記弁輪部を通る基準線を各時相ごとに設定する基準線設定部と、
前記各時相ごとに演算された重心点の位置および前記各時相ごとに設定された基準線に基づいて、時相間における前記心臓左室の全体的な移動量を演算する移動量演算手段と、
前記演算された移動量を補正しつつ各時相ごとのボリュームデータを再構成する移動量補正手段と、
前記再構成されたボリュームデータにおいて、心臓左室の診断部分を囲む部分関心領域を設定する部分関心領域設定手段であって、前記各時相ごとの重心点を頂点とする立体錐形状の部分関心領域を少なくとも一つ設定する部分関心領域設定手段と、
を有することを特徴とする超音波診断装置。
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